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4月30日(火) 改元と天皇代替わりのバカ騒ぎによって私たちは何を失おうとしているのか [天皇]

 今日4月30日で今の天皇が退位し、明日5月1日に新しい天皇が即位します。これにともなって「平成」は今日で終わり、明日からは新元号の「令和」が用いられることになります(ただし、私は使いません)。
 「新しい時代の到来」とされていますが、今日と明日の何が変わるのでしょうか。それに伴って、私たちの生活の何が変化するのでしょうか。

 4月1日の新元号「令和」の発表以来、「元号フィーバー」とも言うべき大騒ぎが続きました。最近では天皇と皇后の退位についての報道が目白押しで、NHKニュースは新しい情報を後回しにし「ニュース」番組ではなくなっています。
 今日のテレビは一日中、朝から晩まで退位についての特別番組が組まれており、明日からは新しい天皇と皇后についての報道があふれるにちがいありません。まるで公共の電波が天皇制によってハイジャックされてしまったようです。
 今日の『朝日新聞』まで退位に関連した特別の表紙を付けたりして、まったくウンザリしてしまいます。このような改元と天皇代替わりをめぐる大騒ぎによって、私たちは何を失おうとしているのでしょうか。

 まず第1に、国民と社会の冷静さが失われ「祝賀ムード」に踊らされてしまっています。その最たるものはマスメディアです。
 NHKテレビの特番の表題が「ゆく時代くる時代」とされているように、もう一つの「年末・年始」のような気分を高め「祝賀ムード」に便乗して視聴率を稼いだり売り上げを伸ばしたりしようとする商売根性が、その背景にあります。それが、安倍政権にうまく利用されているということでしょう。
 もともと5月1日に代替わりを設定したのは、この日を祝日にすれば10連休になるからで、それによって国民を喜ばせてお祝いムードを盛り上げようとしたからです。しかし、時事通信の世論調査で「嬉しくない」という意見が4割で「嬉しい」よりも多く、75%の人が「お金がないから自宅で過ごす」と答えているように、安倍首相の狙い通りにはなっていません。「10連休、行くところなし、金もなし」というのが庶民の現実です。

 第2に、象徴天皇制が憲法上の制約の下に置かれているという立憲主義的視点が忘れられていることです。天皇には憲法で規定された国事行為、象徴としてのあり方から生ずる公的行為、天皇個人の生活や祭祀に関する私的行為が区別されますが、このうちの公的行為の範囲が拡大されてきたことに注目する必要があります。
 今の天皇は癒しと励ましによって国民に受け入れられ、国民に寄り添う象徴としてのあり方を模索し、戦没者の慰霊や被災者のお見舞いの旅が評価されています。しかし、それによって憲法で規定された国事行為以外の天皇制の機能と役割が拡大され、象徴天皇制の浸透と定着が図られてきたことに注意しなければなりません。
 今回の新元号制定にあたって安倍首相が事前に新天皇となる皇太子に説明したことも、元号の制定を天皇から切り離した元号法の運用を誤った新天皇の政治利用であり、違憲の疑いがあります。代替わりに関連する行事についても、私的行為である宮中祭祀などの宗教的儀式との兼ね合いや公費の支出など、憲法の政教分離原則に反する疑いがないか厳しく検証されなければなりません。

 第3に、主権者は国民であるという自覚を失い民主主義が損なわれようとしていることです。新元号の発表と退位、新天皇の即位という一連の行事を通じて、日常の生活には何の変化もないのに、あたかも「新しい時代」が始まるかのように感じさせられ、まさに時間と時代が支配されるような状況が生まれました。
 「平成時代」を通じて、戦争犠牲者の慰霊、被災者の救済や癒し、憲法擁護に至るまで天皇に期待しお任せするという「お任せ民主主義」の天皇版が生じたと言えるでしょう。最近では、強まりつつある格差と分断、対立の天皇による緩和や是正、国民統合による民主主義の土台や基盤の維持を評価する「天皇制民主主義」の効用論まで登場しているようです。
 天皇の存在や行為をありがたく神聖であるかのように感じ、圧力もないのに自ら進んで同調し一体化してしまう心のあり方も、知らず知らずのうちに強まっているようです。これらの総体が、かつてあった「天皇制ファシズム」との共通基盤や類似性を生み出していることに注目せざるを得ません。

 このような「時代の空気」に惑わされたり取り込まれたりしないためには、どうすれば良いのでしょうか。まず、改元と代替わりに関わるメデイアのバカ騒ぎを冷静な目で見極め、安易に巻き込まれたりしないように自制することが必要です。
 次に、この騒ぎを利用して一儲けしようとする便乗商法に踊らされないように気を付けることです。まして、詐欺事件などに騙されないよう警戒しなければなりません。
 常に象徴天皇制に対する憲法上の制約を意識し、そこからの逸脱がないかを厳密に判断する批判的視点を忘れないようにすることも必要です。マスメディアも国民主権の視点から行事や報道を検証し、改元と代替わりへの批判論や同調しない人々にも目配りして異論の存在をきちんと報道してもらいたいものです。

 天皇をむやみにありがたがったりあがめたり、リベラル性を過大に評価して期待するような見方を改めなければなりません。主権者は国民であり、平和や民主主義は国民自身の力によって守るという自覚を高めることが、天皇制イデオロギーが復活しつつある今こそ必要なのではないでしょうか。

 なお、5月2日に秋田市で、3日には宇都宮市で講演します。その後、故郷の新潟に帰省しますので、連休明けまでブログをお休みします。
 それ以降も、以下のような講演の予定が入っています。関係者の方やお近くの方に足を運んでいただければ幸いです。

5月2日(木)午後1時半 秋田県児童会館けやきシアター:秋田憲法センター
5月3日(金)午後1時半 宇都宮市東図書館市民センターホール:栃木革新懇
5月8日(水)午後6時 日野生活市民センター:日野革新懇
5月11日(土)午後3時 和歌山市立勤労者総合センター:和歌山革新懇
5月17日(金)午後6時半 国分寺労政会館:三多摩革新懇
5月31日(金)午後2時 国分寺労政会館:三多摩高齢者運動連絡会


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