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6月11日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

 〔以下のコメントは6月9日付の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「「2000万円貯めろ」年金詐欺内閣が吹っ飛ばない摩訶不思議」
 しかし、「65歳までに2000万円貯蓄しろ」などと気軽に提言しているが、実現できる国民がどれほどいると思っているのか。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「多くの国民は、日々の暮らしに精いっぱいで、貯蓄ゼロ世帯は30%を超えている。2000万円も貯めるなど、どだい無理な話です。年収300万円以下の労働者は40%もいる。年収300万円でどうやって2000万円も貯めるのか。そもそも、国民は<100年安心>という政府の説明を信じて年金保険料を払ってきたのに、いまごろ『自助でなんとかしろ』とは国家的詐欺ですよ。国民の老後を公的年金で保障するのは、当たり前のこと。国民に自助を求めるなら国家は要らなくなる。だったら税金も払わない、となってしまいますよ」

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6月10日(月) 労働資料館の役割を考える(その2) [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、日本鉄道福祉事業協会・労働資料館が発行する『労働資料館ニュース』No.2、2019年6月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

●戦災を越えて残す努力

 私はハーバード大学に留学した後、海外の労働関係資料館を訪問して『この目で見てきた世界のレイバー・アーカイヴス――地球一周:労働組合と労働資料館を訪ねる旅』(法律文化社, 2004年)という本にまとめました。それは私の勤務していた大原社会問題研究所が労働史研究機関国際協会(IALHI)という団体に入っていたからです。日本で加盟しているのは大原研究所だけですから、そういう意味で日本の資料館事業は不十分だと感じました。特に、ナショナルセンターや労働組合の本部が意識的に自分たちの資料を残していくという点では、海外の方が進んでいると思います。
 アメリカではシステムを整えて系統的に収集・保存しています。私の訪問したジョージ・ミーニー・センターは、AFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)直轄の資料館でした。AFL-CIOの会長だった人の名前を冠した資料館で、各産業別組合が大会資料などをそこに送るように義務付けられています。日本の連合にあたるところですが、連合は各単産の資料を系統的に集めているのでしょうか。
 それぞれの単産でも、大会資料などは残していますが、県本部や下部組織の資料まで残すということはしていないでしょう。場所、金、人、時間などの制約があるからです。
 大原社会問題研究所は、戦前から社会・労働問題関係資料を収集しており、これは世界に誇れる水準にあると思います。戦前からやっているところは国際的に見ても多くありません。欧州では戦争もありましたし、ナチスによる迫害や焚書もありました。
 その中で、オランダの国際社会史研究所は、ナチスの弾圧を逃れるためにドイツをはじめオーストリア、スペインなどから資料を受け容れ、社会・労働関係資料を守り抜きました。そういう歴史が欧州にあるのです。
 大原研究所でも戦前の貴重な資料は土蔵にしまってありました。偶然ではなく火災から守ろうと考えたのだと思います。そのため、1945年5月の「山の手大空襲」を受けた時に、火災に強い土蔵の中で貴重な戦前の資料が燃え残りました。

●資料を有効に生かすネットワーク

 日本政府についていうと、公文書を残すための公文書館をきちんと位置づける公文書館法を作ろうという動きが出てきたのは福田康夫内閣の時です。法律は2009年に成立しました。日本の政府や公的機関も資料を公的財産だと位置づけて組織的に残すという考え方が外国より弱いと思います。
 昔の資料は正倉院などで一定程度残っていますが、歴代天皇が公的な決定などを行った際の文書は公的機関が残してきたわけではありません。冷泉家のような公家が代わりにやっていただけです。徳川幕府に関してもそれなりに資料が残っていますが、地方の行政文書は庄屋の蔵やお寺など私的な場所に残っている場合が多いのです。
 欧州では書記が重要な役割を担っており、その長である「書記長」が最高権力を持つ例が見られます。エジプトにも書記の像があります。書記という記録を残す仕事は大切なものだというこだわりがあったのではないでしょうか。
 また、日本ではアジア・太平洋戦争が終わった時、軍部が資料の多くを燃やしてしまいました。自分たちは悪くないと弁解するための資料まで燃やしてしまったのです。それに比べて、ソ連が崩壊した後にも悪逆非道な粛清の記録まですべて残されています。資料を大切にして後世に判断を仰ごうという意識の表れではないでしょうか。
 皆さんの労働資料館の資料は、正しい歴史を知り過去を検証する上で重要な意味を持っています。何があったのかを記録に残し、その意味を検証できるようにしておくことです。それは主として研究者の役割だと思いますが、過ちを繰り返さないための教訓を引き出していく上でも役に立つでしょう。あるいは、今後の進路を検討するための材料にもなると思います。
 皆さんのところには国鉄動力車労働組合(動労)の資料があると聞いていますが、大原研究所にも国鉄関係の資料がたくさんあります。主に国鉄労働組合(国労)からのもので、相互に補完しあう関係にあると思います。動労と国労の両方の資料を突き合わせることで、国鉄労働運動史の全景が浮かびあがってくるのではないでしょうか。
 先ほども言いましたが、どの資料館もスペースや資金、人材などの制約に悩んでいます。したがって、資料の収集や保管などを有効に生かすためには相互に連携するネットワークが必要になります。1986年に設立された社会・労働関係資料センター連絡協議会(労働資料協)がそういう役割を果たしつつあり、その存在は重要です。

 追記 日本鉄道福祉事業協会・労働資料館は2019年4月、「労働資料協」に正式加盟しました。

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6月9日(日) 労働資料館の役割を考える(その1) [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、日本鉄道福祉事業協会・労働資料館が発行する『労働資料館ニュース』No.2、2019年6月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

●資料は歴史を確定する手段

 社会問題や労働問題の資料を収集・整理し公開していくことは大切な事業です。そのことがどういう意味を持つのかについて、まずお話しします。
 歴史というのは過去の事実が積み重なったものです。それを確定する上で重要なのは「記憶」と「記録」です。記憶に基づいて歴史を語る「オーラル・ヒストリー」は最近よく目にするようになりましたが、人間の記憶は曖昧なものです。加えて、嫌なことや苦しかったこと、不利になるようなことは忘れてしまうという機能が働きます。
 こういう「主観的」なバイアスだけでなく、「客観的」なバイアスもあります。自分が見たり聞いたりしたこと、経験したことしか記憶していません。近くで起きても、見聞しなかったために記憶に留まらないということもあります。
 したがって、記憶だけで歴史を確定するわけにはいきません。それが正しいいものであるかを確定するために、客観的に確認できる「資料」が必要になります。
 資料にもいろいろありますが、基本となるのは文書資料です。人によって書かれたもの、文字として残されているものです。この文書資料にも、出版物として大量に出ているものと、個人のメモや日記のように一つしかないもの(一点物)があります。
 大量に出まわっているものは比較的簡単に入手できますが、一点物は入手が難しく無くなったら取り返しがつきません。まして、資料を書き換えて、あったことが無かったことにされてしまうなどというのはとんでもないことです。森友・加計学園疑惑などで問題になっているような、隠すとか書き換えるというようなことが起こると、歴史が消されたり歪められたりすることになります。
 とりわけ、公的な文書は国民の財産です。権力が何をやってきたのかを検証するための手段となり、国民の知る権利を担保するものです。したがって、文書資料、書かれた資料は、歴史を確定する際の根幹をなす極めて重要なものなのです。

●何でもかんでも残していくこと

 もちろん、文書以外の資料もあります。書かれていないものは、大原社会問題研究所では「現物資料」と呼んでおり、海外では「三次元資料」と呼ばれています。
 現物資料には、労働運動で言えば、旗、バッジ、鉢巻き、ゼッケン、プラカード、横断幕、看板、ポスター等々、あるいは音声・映像などが含まれます。これらは、事実を確定し、実際に何が起きたのかを知る上で重要な意味を持ちます。
 とりわけ社会運動、労働運動の場合、参加した人たちにとっては「生きた証」ともいえるものです。単に歴史を明らかにすることに留まらない、一人ひとりの思い入れがそれらには込められています。
 ただし、この「思い入れ」は当事者にしかわからないことが多く、個人に関わるものは私蔵される場合がほとんどです。その当事者が亡くなると、「お祖父ちゃん、変なものをたくさん残していったわね」ということで、「ゴミ」として処分されたりしがちです。そういう事情も踏まえて、資料館は意識的に残す努力をしなければなりません。
 この場合、何をどのように残していくのかが重要になります。資料を収集する立場からすると、何でもかんでもできるだけ多く残していくというのが基本です。その時点で価値がよくわからなくても、時間が経ってから、これは重要なものだということが明らかになったり、位置づけられたりすることがあるからです。だから、できるだけたくさん、そのまま残した方がいいと思いますが、スペースやお金の面で制約がありますから難しいところです。
 もう一つ忘れてならないのは、一点物は価値がはっきりしますが、世の中に大量に出回ったものはそうであるがために残りにくいということです。ポスターやパンフレット、ビラなどがそうです。
 「本」であれば国会図書館に残りますし、大会資料や機関誌紙はそれぞれの組織が自分たちで保存します。パンフレットやビラは運動を広めるために大量に発行されますが、あっという間になくなってしまいます。誰もとっておかないのが普通です。
 しかし、皆さんも経験があると思いますが、運動を振り返るうえでは、これらが重要な意味をもつこともあります。ですから、大会資料などの機関会議の資料、機関誌紙のように定期的に発行されている資料を残すことはもちろん大切ですが、一点物である役員や幹部のメモや日記、ポスター、ビラやパンフレットなども、できるだけ残して後世に伝えていってもらいたいものです。

●資料を大切にする欧米の精神

 とりわけ、公職に就いている人は、こういうことを意識的にやらなければなりません。たとえ個人の物として作成されたものであっても、公職についている限りは公的な役割を担って作成されていることが多いのです。職務や仕事、決定などが正当なものであったかどうかを、後々検証できるようにするのが公職に就いた人の義務です。
 アメリカでは、大統領が引退したら大統領個人の図書館を作ります。ケネディであれば出身地のボストンにケネディ・ライブラリーを作り、大統領在職中の関連資料をすべてそこに残すのです。また、大統領経験者は回想録を書くことが義務のようになっています。
 日本でも、総理大臣は自らに関わる資料をきちんと保存し、回想録を書くようにすべきだと思います。総理大臣に関係する公文書や記録が残されていなかったり、書き換えられたりするのは、まったく論外のことです。
 また、後世に残る資料は多くの場合「勝者」のもので、「敗者」の記録は残らないのが普通です。そうすると歴史は「勝者の歴史」として書かれ、自らの業績を美化したり、正当化したりして歴史が歪められてしまいます。歴史の歪曲を許さないためには、敗者の側の資料も残さなければなりません。
 しかも、敗者というのは実は「多数派」です。支配する者より支配される者の方が数は多い。被支配者の側の記録こそ、総体としての歴史の真実を示すものです。そして、支配される者、虐げられた者、さらにその中の少数者の記録も残すことによって、多様性を持った全体としての「歴史の実像」が正しく伝えられ、いろいろな側面から見た歴史の真実が伝えられていくと思います。
 そういう点で、敗北した者や少数者のものであっても資料的価値はあります。大量に出回っていても、それを誰かが残していくわけではありません。やがて消えて行ってしまいます。ですから、できる範囲で可能な限り、文書に限らずいろいろな形の資料を、映像や音声を含めて残しておくことが重要だと思います。

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6月7日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

 〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕
 
*6月5日付巻頭特集「「このままでは野党は全滅」小沢一郎の予言はその通り」
 腐臭漂う安倍政権の内閣支持率がまた上がった。それも、説明のつかない高支持率だ。JNNの世論調査(1、2日実施)によると、内閣支持率は59.1%にアップ。前回5月調査から1.7ポイント上昇した。支持する理由は「特に理由はない」がトップの37.2%だというから、わけが分からない。3月末に今年度予算が成立して以降、国政全般を審議する予算委員会は衆院で3カ月以上、参院で2カ月以上も開かれていない。その間の出来事といえば、新元号「令和」の発表、天皇の代替わり、最長10日間の大型連休、「令和初の国賓」として大歓待したトランプ米大統領の来日ツアーである。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。

 「安倍首相の作戦勝ちです。国会では野党が求める予算委の開催から逃げ回り、審議らしい審議がなされていない。その一方で、皇室も外交も政治利用して安倍首相自身をもり立てるようなイベントを連発している。国会が開店休業状態で、安倍政権が抱える数々の問題がクローズアップされない状況だからこそ、高支持率をキープできている。安倍首相のもくろみ通りです」

*6月6日付巻頭特集「“やっているふり”で解決するのか どんどん荒む令和の世相」
 本来であれば、政府がこうした企業の採用方法や雇用の在り方を問題視し、もっと早めに手を打つべきだったのに、大企業や経団連ベッタリの歴代自民党政権は献金目当てに見て見ぬフリ。安倍政権にいたっては裁量労働制や高度プロフェッショナル制度など、さらなる「労働者イジメ」「雇用破壊」の政策を進めているからムチャクチャだ。それでいて「集中支援プログラム」だ、「ひきこもり地域支援センター」だ、なんてどのツラ下げて言っているのか。

 労働法制に詳しい法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「『8050問題』はずっと以前から指摘されていたことで、歴代自民党政権は対応をずっと先送りしてきたのです。それが積もり積もって、とうとう、殺傷事件という最悪の形になって噴出してきた。今さら慌てて寄せ集めの施策を講じ、『やってるふり』をしたところで効果は期待できない。今後も同様の事件が起こり得ることを覚悟した方がいいと思います」


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6月5日(水) 「ジャイアン」との仲の良さを見せつける「スネ夫」のような日本は「町内」から尊敬されるのか [国際]

 トランプ大統領は「ジャイアン」で、安倍首相は「スネ夫」ではないのか。こう書くと、「ドラえもん」のファンに叱られるかもしれません。
 ジャイアンはトランプ大統領ほど酷くはないし、スネ夫は安倍首相ほど卑屈ではないと。でも、この間のトランプ米大統領への安倍首相の「おもてなし」を見ていると、どうしてもジャイアンとスネ夫との関係に見えてしまいます。

 5月23日のワシントンポストの「世界中で安倍首相ほどトランプ大統領へのおべっかに励んできた指導者は恐らくいないだろう」という記事を引用しながら、『毎日新聞』6月3日付夕刊は、「『安倍外交』ここがすごい」という見出しで「安倍応援団」の評価を報じています。なるほど、その意見も「すごい」ものでした。
 安倍首相としばしば会食して「寿司友」とか「寿司郎」とか呼ばれているジャーナリストの田崎史郎さんは「世界の指導者でトランプさんとうまくいっているのは安倍さん一人なんですよ」と弁護しつつ、フィリピンのドゥテルテ、トルコのエルドアン、ロシアのプーチンなど「こういう毛色の変わった人と合わせるのがうまいんです」と強調しています。これについて、記事は「独裁的」との「批判を浴びることの多い顔ぶれ」と馬が合うのも「さすが安倍首相ということらしい」と書いています。
 もう一人の政治評論家の八幡和郎さんは「何度もゴルフしたりする関係が大事なんです。トランプさんは安倍さんのことを信頼しているし、それで意地悪されずに済んでいるんだから」と力説しています。ということは、八幡さんもトランプ大統領が他の国に「意地悪」するような人だということは知っているようです。

 田崎さんは世界で「独裁的」と批判を浴びるような「毛色の変わった人」と仲良くできることを評価し、八幡さんはだから「意地悪されずに済んでいる」と持ち上げています。やはり、ジャイアンとスネ夫の関係を彷彿とさせるではありませんか。
 乱暴者で町内から嫌われている人物のご機嫌を取り、「おべっかに励んで」仲良くすることで「意地悪されずに済んでいる」というのですから。「ここがすごい」と「応援団」は評価するのかもしれませんが、日本の外交として誇れることなのでしょうか。
 そのトランプ大統領は日本から帰国してすぐにメキシコへの5%の追加関税を発表するという身勝手な行動をとり、その後のイギリス訪問では大きな抗議行動に直面しました。トランプさんの政策や差別的な言動などに反発する人々によるもので、「トランプを歓迎しない」「人種差別にノー」などのプラカードを掲げた人々が抗議の声を上げています。

 まさに田崎さんが指摘しているように、「トランプさんとうまくいっているのは安倍さん一人」にすぎません。それは誇るべきことなのでしょうか。
 ともに、「町内」の嫌われ者になってしまうリスクの方が大きいのではないでしょうか。その「町内」とのお付き合いでは、すでに隣の韓国や北朝鮮ともうまくいかず、ロシアや中国との関係もギクシャクしています。
 北朝鮮との拉致問題の解決についてはアメリカ頼りに終始し、「正面から向き合う」と言ってみても「図々しい」と一蹴されるだけです。アメリカにすり寄ればすり寄るほど、ロシアは日米安保への警戒感を強めて北方領土問題の解決は遠ざかるばかりではありませんか。

 安倍さんの「寿司友」である田崎さんの目から見ても「毛色の変わった人」であるトランプ大統領に、ただひたすらすり寄っておべっかに励んでいると言われることが日本にとってプラスなのでしょうか。今や国際秩序の最大のかく乱要因となっているトランプ大統領にただついていくだけの国と見られることは、かえって日本の国際的な評価を低め、国際社会からの尊敬を失うことになるのではないでしょうか。

 なお、6月7日(金)の正午から新宿駅西口での街頭演説で話をすることになりました。翌8日(土)午後1時から全労連会館で開かれる労働者教育協会の総会でも発言する予定です。
 また、6月の講演の予定は、以下のようになっています。お近くの方や関係者の方に足を運んでいただければ幸いです。

6月15日(土)午後1時半 テクノプラザ葛飾:安倍改憲NO!憲法を生かす葛飾のつどい
6月18日(火)午後2時 福井県教育センター:福井県退職教職員のつどい
6月21日(金)午後6時半 江戸川区総合文化センター:戦争させない江戸川の会
6月22日(土)午後1時半 藤沢公民館・労働会館:湘南学習会議市民講座


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6月3日(月) 米国の本音むき出し 「TPPに縛られない」トランプ氏〝戦闘宣言〟  [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、農協協会が発行している『農業協同組合新聞』5月30日号、に掲載されたものです。記事のリードとインタビューの部分をアップさせていただきます。〕

 米国のトランプ大統領が来日し5月27日、日米首脳会談が行われた。トランプ大統領は会談前に貿易問題で進展があるとし、とくに農業と牛肉に期待を寄せていることを自身のツイッターに書き込み、成果は7月の参院選後まで待つとし「大きな数字を期待している」と早期妥結への意欲を表明した。また、記者会見では「TPPには参加していない。アメリカは縛られていない」と強調、農業分野でTPP(環太平洋連携協定)を念頭に昨年9月の日米共同声明では「過去の経済連携の内容が最大限」と両国で合意した内容と食い違う認識も示した。
 この日米交渉をどうみるか、今回は政治学の五十嵐仁法政大名誉教授に聞いた。

-どんな印象を持ちましたか。

 「中身はそれほどなかったが、貿易問題がやはりかなり中心的な争点であるということが、そこはかとなく分かるような記者会見だったと思います。首脳会談全体が1時間延びたということですが、少人数会合が1時間以上かかったという。こうした経過から浮かび上がってくるのは、やはりトランプが農産物問題を持ち出したということでしょう。
 安倍首相は議論の加速とウィンウィンの関係となることをめざすと言いましたが、トランプ大統領は対日貿易赤字の削減を明確に打ち出し、8月に合意できるだろうといいました。しかし、安倍首相はそれには何も応えず、防戦一方の印象でした」。

--TPPには縛られないとの発言も飛び出しました。

 「TPPには参加していないのだから、当然、無視していいんだということを言いたかったのでしょう。戦闘宣言だともいえます。
 それから、トランプ大統領が8月合意にこだわるのは自身の大統領選挙があるからです。合意が延びてしまうと選挙に影響してくる。しかし、安倍首相は参院選前に選挙に不利なる合意はできない。両方の条件を絞ったところ8月となった。つまり、日本の参議院選挙とアメリカの大統領選挙がこんなところで深くつながっているわけです。
 今回の訪日は天皇の代替わりに対する表敬訪問として位置づけられましたが、実際は日米貿易交渉が非常に重要な局面にあることがかいまみえました」
 
◆防衛費で赤字削減

--トランプ大統領は記者会見のなかで貿易赤字の削減には日本による軍事品の購入も貢献することを強調し、F35戦闘機を105機も保有する「米国以外ではもっとも保有する国だ。防衛装備品では日本は最大の買い手」とも強調しました。

 「まさに安全保障のためにではなく貿易のためです。トランプの機嫌をとろうとして防衛装備品を購入することにし、5年間で27兆円もの防衛予算を確保しています。
 しかし、F35は洋上で消息不明になる事故があったように性能に疑問があるとされています。それでも性能はどうでもいいから買うということでしょうか。これは防衛整備計画からしてもいびつになってしまうし、何より性能に不安な戦闘機に自衛隊員が乗るということです。予算も防衛装備費にとられて自衛隊員の待遇面も悪化してしまうのではないか。これは防衛費でもなくアメリカとの交際費ではないですか」
 
◆交渉方針 隠すな

--今後、どのようなことが求められるでしょうか。

 「トランプ大統領は嘘つきですから、本当にどうなるか分かりません。ワシントンポストの調査では2年間で8000回の嘘をついたといいます。その後も嘘をついて今や1万回を超え、1日平均16.5回になるといいます。
 ただ、参院選まで待つということを明らかにしたということは、これは弱みを握られたことになりますから、まさに攻勢を跳ね返すことができなくなってしまうのではないか。待ってやったじゃないか、というわけです。
 安倍首相は米国との友情、絆を世界にアピールしていますが、トランプ大統領はそんなことはまったく気にかけていません。やるべきことはやる。交渉に立ち向かうには当たり前のことですから交渉方針をしっかり持つことです。そのすべてを国民に明らかにすることは交渉ですからできないとしても交渉方針を隠したまま選挙をするということは考えられない。しかし、そうなりかねません。地方で農家を守れるのはJAしかない。JAもおそれずに政権に立ち向かってほしいと思います」


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6月1日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

 〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月30日付に掲載されたものです。〕
 
*巻頭特集「歴史的転換の政治ショー 自衛隊はトランプの軍隊なのか」
 「3泊4日をゴルフと相撲の物見遊山で終わらせたら、さすがにトランプ大統領も支持者から『遊びに行ったのか』と批判されてしまう。最初から『8月には大きな発表がある』と、訪日の成果を誇るつもりだったのでしょう。恐らく、6月に行われる首脳会談でも同じことを口にするつもりだと思う。公式の場で2回も明言されたら、安倍首相も逃げられない。参院選後、日本が大幅譲歩するのは間違いないでしょう」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

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