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7月3日(水) 安倍首相による憲法論議の争点化は9条改憲という真の争点を隠すためのごまかしだ [参院選]

 参議院選挙に向けて、安倍首相は新しいごまかしを画策し始めたようです。それは憲法論議の争点化です。

 通常国会が会期末を迎えた最終日の6月26日、安倍首相は記者会見を開いて「憲法の議論すらしない政党を選ぶのか、国民の皆さまにしっかり考えを示し議論を進めていく政党や候補者を選ぶのか、それを決めていただく選挙でもある」と発言しました。また、 与野党6党首が6月30日にインターネット動画サイトの討論番組に出演して論戦を交わした際、憲法改正について「しっかり議論するのか、しないのかを問うのがこの参院選だ」と述べています。
 こうして安倍首相は、憲法の議論をする政党か、議論すらしない政党か選ぶことを参院選の主要な争点にする考えを打ち出しました。改憲論議の争点化です。
 しかし、果たしてそれが争点になるのでしょうか。別にある真の争点から国民の目を逸らすために、安倍首相がひねり出したごまかしなのではないでしょうか。

 この安倍首相の主張に対して、同じ与党である公明党の山口那津男代表は7月1日の日本経済新聞などのインタビューで「争点としての熟度が浅い。議論しないと公然と主張する政党はあまりない」と述べ。参院選後、改憲に前向きな勢力だけで議論することにも「数の力で押し切るのは良くない」と語ったそうです。その通りではありませんか。
 安倍首相が言う「憲法の議論すらしない政党」は存在していません。与野党6党首が6月30日にインターネット動画サイトの討論番組でも、安倍首相を含めて憲法についての議論がなされたではありませんか。
 「憲法の議論すらしない」ということで、席を立った政党はいませんでした。このような党首も政党も存在しないのに選べと言われても、存在しないものを選ぶことはできません。

 それなのに、「憲法の議論すらしない政党」があたかも存在するかのように強弁しているのは、安倍首相が二つのすり替えとごまかしを行っているからです。改憲問題についても、相変わらずの「隠す、ごまかす、嘘をつく」という3原則が貫かれているということでしょうか。
 一つのすり替えは、憲法論議の場を国会内に限定し、さらにそれを憲法審査会に狭めていることです。憲法論議の場は国会内や憲法審査会だけに限られず、街頭演説やテレビの討論会など沢山ありますが、憲法審査会での議論に参加しなければ「憲法の議論すらしない政党」だというのが安倍首相の言いたいことなのです。
 もう一つのすり替えは、憲法論議の内容を改憲賛成意見だけに限定し、さらにそれを自民党の改憲4項目や9条改憲への賛成に狭めていることです。憲法論議の内容は9条改憲への賛成論だけに限られず、それに反対する議論もありますが、改憲賛成の立場でなければ「憲法の議論すらしない政党」だというのが安倍首相の言いたいことなのです。

 実際には、改憲論を主張する自民党や維新の会以上に、改憲に反対し立憲主義を主張する野党の方が積極的に論陣を張り、9条改憲に反対する3000万人署名をもって国民的な議論を巻き起こしてきました。街頭や各家を回っての署名活動、演説やスタンディング、討論会や学習会などを通じて、草の根での地道な「憲法論議」を巻き起こしてきたからこそ、安倍首相の下での改憲には反対だ、9条を守れと言う声が多数になり世論を変えてきたのではありませんか。
 憲法論議を国会の内外で最も活発に展開してきたのは立憲野党です。自民党改憲4項目を支持する言論活動を行ってきたのは自民党の中でも安倍首相の周辺に限られます。
 安倍首相にしても、これまでの国政選挙では公約に改憲を掲げてあるのに演説ではほとんど触れてきませんでした。2020年改憲志向の表明にしても、国会内での答弁などではなく日本会議関連の改憲団体へのビデオメッセージにすぎなかったではありませんか。

 その安倍首相が今になって突然、憲法論議の是非を争点に押し出してきたのは、自民党改憲4項目にある9条への「自衛隊明記」の評判が悪く、改憲論議の必要性の方が多くの支持を得られると判断したからです。9条改憲の是非を憲法論議の是非にすり替え、9条に自衛隊を書き込むべきか、書き込んではならないかという真の争点を隠し、ごまかすためなのです。
 共同通信社は参院選の立候補予定者を対象に政策アンケートを実施し、6月30日までに269人から回答を得ましたが、9条への自衛隊明記には55.4%が反対し、賛成した30.1%を大幅に上回りました。また、改憲論議の是非については「必要」が62.5%で、「不要」の30.5%の倍以上となり、参院選後に優先すべき政策課題(複数回答)でも最多だったのは社会保障改革の54.6%で、憲法改正は7.1%にとどまっています。
 安倍首相の方針転換の背後には、このような現実があったのです。さし当り、9条改憲を含む改憲そのものより改憲についての議論への賛否を争点にした方が、有権者の支持を得られるという計算が働いたにちがいありません。

 そのために、巧妙なすり替えを行ったというわけです。このようなすり替えやごまかしに騙されてはなりません。
 憲法についての議論の是非は選挙の争点にはならないのです。憲法論議に反対する政党が存在しないのですから。
 真の争点は9条を含む現行憲法を変えるのか否か、特定の立場から自民党改憲4項目を押し付け、9条を無きものとしようと狙っている安倍首相の野望を許すかどうかという点にあります。この真の争点に対する審判をキッパリと下すことによって安倍首相の改憲策動を打ち砕くことこそ、今度の参院選の最大の課題にほかなりません。

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