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9月25日(水) 再生可能エネルギーへの転換こそ気候変動対策とエネルギー問題解決のカギだ [国際]

 「気候変動問題に取り組むことは、きっと楽しくクールでセクシーでしょう」という小泉進次郎環境相の発言が問題になっています。「セクシー」という言葉が政治家として適切だったのかというのです。
 「適切ではなかった」と、私も思います。しかし、それ以上に問題なのは、この言葉によって気候変動問題に対する日本政府の無策がごまかされ、具体的な解決策のなさが隠蔽されてしまったことです。

 国連気候行動サミットで小泉環境相をはじめとした各国首脳の前で演説したスウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんは「あなたたちは目を背け続け、目に見える何の政策も解決策もなく、よくもここに来られたものですね」と皮肉り、「あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢と子供時代を奪い去った」と厳しく批判しました。
 この言葉は、そのまま小泉環境相に向けられたものです。「楽しくクールでセクシー」という小泉さんの発言こそ、まさに「空っぽの言葉」にほかならないのですから。
 ロイター通信が配信したそうですから、この言葉はグレタさんの耳に届くでしょうし、そうなれば、こう言われるにちがいありません。「目に見える何の政策も解決策もなく、よくもここに来られたものですね」と。

 グレタさんの批判を正面から受け止めるなら、日本はエネルギー政策を転換しなければなりません。火力発電所の建設を止め、再生可能エネルギーへの転換を進めることです。
 それは脱原発のためにも必要なことです。原発は制御できない技術であり、いったん事故が起きれば大きな災害をもたらすことは東日本大震災の際の原発事故で実証されました。
 さらに、再生可能エネルギーへの転換は温室効果ガスの削減や脱原発の点から必要とされているだけではありません。それは自然災害への備えや農林漁業の振興のためにも重要な意味があります。

 台風15号による千葉県の長期大規模停電の原因は、倒木や電柱の倒壊によって送電網が寸断されてしまったことにあります。北海道地震で生じたブラック・アウトも火力発電所の被害によるものでした。
 このような事故を防ぐためには、電源を分散して寸断されても被害を最小に抑えるようにすることが必要です。特定の巨大電源に電力を依存すればするほど、電源の被害や送電網の破壊による脆弱性が増すからです。
 日本のように地震が多発し台風がやってくる国では、電源を小規模化して分散することが必要です。それは災害対策やライフラインの確保としても有効であり、それによって被害を最小限にとどめるようにしなければなりません。

 再生可能エネルギーによる電源の小規模分散化は、農林漁業などの経営安定化にも役立てることができます。「畑や水田の上にソーラーパネルを設置し、農業と発電を一緒にこなす『ソーラーシェアリング』」が始まっており、「耕作放棄地の再生や農業経営の下支えとして期待される」(『朝日新聞』9月19日付夕刊)からです。
 同じように、林業でも間伐材のチップや下草などによる発電、牧畜では牛などの家畜の糞から出るメタンガスによる発電、漁業では潮流を利用した水力発電や海辺や海上での風力発電などが考えられます。これらの発電事業によって農林漁業を下支えすることができれば、エネルギーの地産地消だけでなく収入を補填して経営を安定させることもできるようになります。
 問題は、「電力の買い取り価格が徐々に下落し」ていることにあります。国や自治体、電力会社などが一体となって再生可能エネルギーへの転換を後押しする政策を推進しなければなりません。

 小泉環境相の問題点は、言葉の使い方にあるよりもむしろ気候変動対策やエネルギー問題についての具体策を提示できなかったことにあります。別の記者会見では、外国人記者から「環境省では化石燃料脱却にむけどのように取り組むつもりですか」と質問され「減らす」と答えたものの、さらに「どうやって?」と具体策を問われると、長い間沈黙した後、「私は先週環境大臣になったばかりで同僚や省内の職員と話し合っている」と答えました。
 質問に答える知識も能力もなく、具体的な政策も持たずにニューヨークにやってきたことを明らかにしてしまったわけです。グレタさんならずとも、再び小泉さんにこう問いたくなります。
 あなたは「目に見える何の政策も解決策もなく、よくもここに来られたものですね」と。

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