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5月26日(火) 後手後手招いた政府の姿勢 知事選は暮らし守る選択 [論攷]

〔以下のインタビューは『東京民報』第2134号、5月17日付に掲載されたものです。〕

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急事態宣言を、5月31日まで延長しました。自粛要請に伴う補償でも、医療崩壊を防ぐ対策でも、国の対応が遅れ、収束への道は見えていません。コロナ対策は、1カ月後に迫る都知事選(6月18告示、7月5投票を予定)でも大きな争点になります。政治学が専門の五十嵐仁法政大学名誉教授(「市民と野党の共闘の実現で都政の転換をめざす呼びかけ人会議」呼びかけ人)に、政府と都の対応について聞きました。(荒金哲)

 安倍政権が4月7日に緊急事態宣言を発出しなければならなかったこと自体が、コロナ感染対策の失敗を示しています。当初の水際対策などがうまくいっていれば、感染拡大を抑えこめた可能性もあったのですから。
 しかも、当初の宣言の期間で収束できず、約1カ月延長することになった。二重の失敗です。
 現状は、感染拡大のピークを過ぎたとも言われていますが、予想したまでの減少にはなっていない。宣言に伴う自粛への、きちんとした補償のメッセージが届いていないことが一番の問題です。
 安倍政権が目玉政策として打ち出したマスク2枚すらも、多くの国民には届いていない。10万円の支給も、6月に延びるところもある。政策の中身も貧弱ですが、スピード感がまったく欠けています。
 この間の安倍政権の対応は後手後手だ、無能だと厳しく批判されていますが、「その通り」と言わざるを得ません。

 なぜ、こういう事態になっているのか。命と健康を第一に、正面からコロナ感染の危機を受け止めて政策を総動員するという姿勢を貫けなかったためです。
 初動の水際対策の遅れは、中国など外国からのインバウンド(訪日観光)への配慮を優先したことによるものでした。その後は、東京五輪・パラリンピック開催への悪影響を恐れ、感染対策が後手にまわりました。
 その後、取り組まれてきた政策も、経済活動を優先する姿勢が見え隠れします。そもそも、コロナ感染への対応策が、「緊急感染対策」ではなく「緊急経済対策」で、担当が経済再生担当相ですから。補正予算も、コロナ収束後の消費喚起策に1・7兆円もの予算を盛り込む一方、感染爆発や医療崩壊を防ぐ予算はまったく足りません。

◇補償は待ったなし

 安倍政権は、感染の実態把握にも失敗しました。
 感染の有無を調べるPCR検査の数が少なく感染者はもっと多い。死者数も実態を反映していない。諸外国からも不信の目で見られています。
 求められる対策は三つです。一つは、正確な感染者数を把握し、実態を明らかにすること。医師が必要と判断した人はすべてPCR検査を受けられるよう、体制を強化しなければなりません。
 二つ目は、医療現場への支援体制強化です。第二次補正予算も組み、医療崩壊を防ぐ財政措置を強める必要があります。
 三つ目は、緊急事態宣言にともなう国の責任を果たすことです。外出自粛や休業要請への補償をきちんと行う必要がある。この1カ月、多くの中小企業や商店、労働者が歯を食いしばって頑張ってきた。さらに1カ月など、とても無理です。安心して休業できるようにしなければなりません。

◇都政の役割重要に

 東京都知事や大阪府知事の対策を評価する声があります。安倍首相のあまりにお粗末な対策に比べると、相対的にましに見えるためです。
 そういう状況を利用して、都知事選を間近にひかえた小池知事は、自らを前面に出した都のテレビスポットを流し、記者会見を繰り返して売り込みを図っています。
 しかし、財政力の大きさや、本社機能が集中する経済の中心地であることを考えれば、都の対策は極めて不十分です。
 この間、新自由主義的な自己責任論で医療福祉体制が大きく削られてきました。特に、都が進める、公的な医療の後退を招く都立病院の独立行政法人化は都知事選でも大きな争点になります。
 地方自治体が住民の生命や暮らし、営業を守るためにいかに大事な役割を担っているか、どんなトップを選ぶかが私たちの命と生活にとってどれだけ重要か、コロナ禍が浮かび上がらせました。この意味でも、都知事選は極めて大切な選択の機会になっています。

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