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6月22日(月) 安倍政権のコロナ対策を検証する(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』No.803 、2020年7月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

3、「ポストコロナ社会」に向けて

 感染者数の減少とともに、各国において収束後に向けての「出口戦略」や「ポストコロナ社会」についての議論がはじまっています。感染防止と経済再建は「命」にかかわる問題としては共通しています。両者を結合してバランスを取りつつ、感染状況に応じて対策の重点が変化することになるでしょう。
 第1に、当面の対策が重要です。これについては、PCR検査を拡充し、希望する人は誰でも検査を受けられるようにしなければなりません。また、医療関係者に対する支援を強め、「医療崩壊」を招かないようにすることも大切です。さらに、自粛や休業の長期化による生活苦や経営難にたいする補償も欠かせません。そのための第2次補正予算の成立は急務です。情報通信技術(ICT)を利用したテレワークはすでに始まっており、それは今後も続くでしょうが、「現場」を持つ仕事や直接「人」に向き合う感情労働などでは限界があります。
 第2に、新自由主義的政策やアベノミクスの見直しが急務です。コロナ禍は現代社会における貧困化や格差、社会的弱者の存在を可視化しました。その多くは新自由主義の下で蓄積されてきたものです。アベノミクスの下での金融緩和や非正規化の推進、消費増税などによって、問題は解決されるどころか深刻の度を増してきました。大型開発優先で福祉や医療を軽視し、収益性や効率性だけで評価するような政策判断を是正する必要があります。
 第3に、長期的には資本主義的な経済システム自体が変革の対象とならざるを得ません。貧困化と格差、自然環境の悪化、未知の感染症の拡大など、人類が直面する大きな問題の解決に無力なだけでなく、それを拡大し促進してしまうからです。地球規模で深刻な「コロナ恐慌」が襲い、日本も2四半期連続でマイナス成長となっている現在、そこから脱け出すだけでなく、これらの問題を解決し国連のかかげる持続可能な開発目標(SDGs)を達成できる新しい経済社会システムが模索されなければなりません。
 今、問われているのは「元通りの社会」を取り戻すことではなく、これを好機として「より良い社会」への扉を開くことです。利潤やお金儲けより健康や命を大切にし、富の集中を是正して自然環境の保全や人に投資する社会へと作り替えていくことが必要です。経済効率最優先ではなく福祉の充実、医療・介護・教育・保育などが優先される社会への転換こそが求められているのではないでしょうか。

むすび

 コロナ禍の下で新たな社会の姿が生まれています。感染防止のための行動制限、感染ルートを特定するための監視と統制、「自粛警察」などという同調強制の動きも生じました。人々はお互いの接触を避け、国々は国境を閉ざして交流を遮断し、都市封鎖によって自宅に閉じこもりました。米中間の対立が激化し、分断と孤立の新しい社会と行動様式が現れたのです。
 しかし、他方で、コロナの恐怖にさらされながら患者を救済する医療関係者の奮闘、それへの感謝と連帯、自粛と休業によって生活と営業の危機に直面する弱者や小零細企業への支援、文化・芸術関係者や個人事業者への援助、新型コロナウイルスに対するワクチン製造をめざす国際協力などの動きもあります。連帯と共同の新しい行動様式の萌芽も生じたのです。
 また、労働や教育、文化・芸術活動などでのインターネットの利用拡大が新しい可能性を開いています。政治や社会運動の面でもツイッターなどによる「ネット・デモ」が注目を集め、定年延長という人事によって検察支配をねらった検察庁法改定案の成立を断念させました。ネットなどによって可視化された民の声が政治を動かしたのです。
 コロナ以前に戻るのか、新たな社会へと踏み出すのか。分断と孤立か。連帯と共同か。強いリーダシップを求める強権的な政治か、個人がイニシアチブを発揮する新しい市民社会か。「ポストコロナ社会」のあり方として、どちらをめざすのかが問われています。その答えを出すのは私たちです。未来の社会に向けての選択は、主権者である国民1人1人に委ねられているのですから。

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