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8月10日(月) 東京都知事選を振り返って―来るべき総選挙に向けて市民と野党の共闘が大きく発展(その2) [コメント]

〔以下の論攷は「九条の会東京連絡会」が発行する機関誌『生きいき憲法』No.68、2020年7月28日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 山本太郎氏立候補で票が割れた野党側

 第2の不利な条件は、一つにまとまった与党側とは逆に、前回は鳥越俊太郎候補で一本化していた野党側が分裂し、「小池批判」の票が割れてしまったことです。とりわけ野党共闘を断って「後出しジャンケン」のような形で突然立候補した山本太郎候補の行動には大きな問題がありました。
 宇都宮候補が得た得票は、前回の野党統一候補だった鳥越候補の134万票から50万票の減になります。この分は山本候補の獲得した66万票に含まれ、前回の統一候補が獲得した票は宇都宮さんと山本さんに分かれてしまったのです。市民と野党が固く団結して手を握らなければ勝利の展望を切りひらけないということが、今回の都知事選での最大の教訓です。

 封じられた「サンダース型」選挙運動の可能性

 そして、第3に、新型コロナウイルスの感染拡大によって選挙活動が大きく制約され、手足を縛られたような形で闘わざるを得なかったことです。「密閉」や「密集」を避けるために大規模な屋内集会は開けず、街頭演説の時間や場所も広く告知できませんでした。
 70代でリベラル左派の宇都宮候補は「日本のサンダース」と呼ばれています。それにふさわしく、小池候補に次いで10代・20代の若者層の支持が多く、70代の候補者と若者との連携という「サンダース型」の選挙運動の可能性が生まれました。これを生かせず、ネットを通じた取り組みに加えて街頭演説に若者が殺到して「ブーム」を巻き起こすことができなかったのはかえすがえすも残念です。

3、跳ね返したのは共闘の力

 市民と野党の共闘が大きく発展

 このような不利な条件があったにもかかわらず、宇都宮候補はそれを跳ね返して84万票を獲得し善戦健闘しました。その力を生みだしたのは市民と野党の共闘によるものです。それは多くの点でこれまでにない発展を示しました。
 第1に、中央段階での共闘の進展です。立憲民主・共産・社民・新社会・緑の党の支援だけでなく小沢一郎さんや原口一博国対委員長、平野博文幹事長などの国民民主党の幹部も支援に加わり、社会保障を立て直す国民会議の野田佳彦元総理や岡田克也元副総理が応援演説し、無所属の中村喜四郎さんまで激励に駆け付けています。野党5党派の国対委員長を共同世話人とする「宇都宮けんじ議員勝手連」も結成されました。
 第2に、都レベルでの共闘の動きです。昨年暮れから立憲・国民・共産・社民・新社会・緑の党などの代表者による会議が毎月開かれ、共闘に向けての相談がなされていたのです。国民民主党は「連合東京」との関係もあって最終的には「自主投票」になりましたが、この会議には出席していました。革新都政をつくる会による2回の要請活動にも対応し、6月3日の革新都政をつくる会呼びかけ人会議の集会にも岸本周平選挙対策委員長が出席してあいさつしています。欠席した山内れい子生活者ネットワーク共同代表も参加予定でした。

 来るべき総選挙に向けての「予行演習」

 第3に、東京の衆院小選挙区での草の根レベルでの共闘の成立です。25の全ての小選挙区で市民と野党の市民選対が立ち上がり、自主的に選挙活動に取り組みました。政党系列での上意下達ではなく、直接、宇都宮選対と連絡を取って「勝手に(自主的に)」ビラの配布や駅頭でのスタンディングなどが行われました。これらはすべて、来るべき国政選挙での地域レベルでの共闘態勢を準備する意味を持ったのではないでしょうか。
 これらの運動上の発展に加えて、第4に政策面での共闘の広がりも注目されます。コロナ禍の下で、立憲民主党の枝野代表は政権構想私案を発表し、国会質疑でも自己責任論の問題点を指摘しながら政治のあり方として真っ向から新自由主義にNOを突きつけました。当初、都立・公社病院の独立行政法人化に賛成していた立憲民主党の都議が反対に転ずるという変化も生まれています。
 市民と野党との共闘という点で今回の都知事選挙は来るべき総選挙に向けての「予行演習」としての役割を果たし、共闘体制の確立に向けての準備作業として大きな意味を持ったと思います。この点でも「活路は共闘にあり」という教訓を、今一度、しっかりと噛みしめることが必要なのではないでしょうか。


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