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10月15日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月15日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「批判されると組織潰し “ゴロツキ”みたいな官邸と自民党」

 任命拒否問題をめぐり、静岡県の川勝知事が「菅義偉という人物の教養のレベルが図らずも露見したということではないか」と喝破したが、これは自民党にも当てはまる。真正面からの批判に、県議会最大勢力の自民党会派は「学歴差別につながる発言だ」と大騒ぎ。教養と学歴はイコールなのか。これこそ右へならえの論点ズラシで、自民党出身の県議会議長も「公の場で個人の資質に言及するのは遺憾だ」と同調し、知事への申し入れを決定するナンセンス。もっとも、川勝も「訂正する必要は全くないと思っている」と一歩も引かず、「大切なのは学歴ではなく学問。菅首相が学問を本当に大切にしている人かどうかについて疑問を持った」と反論。「6人を入れないのは学問的な理由でなければならない。もし政治的、イデオロギー的な理由なら言語道断だ」と任命拒否の理由を明らかにするよう改めて求めた。

 批判の言論も許さない自民党の傍若無人ぶりは、「劣化」どころかただの「ゴロツキ」である。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。

 「菅政権のやり方、党内から次々に上がる発言。どれを取っても、自民党はマトモな政党ではありません。時代にそぐわないどころか、逆行している。学問の自由を阻害する危うさもわからない政治家がこれほどいるとは。菅政権の暴走を許せば、日本の学術的発展は望めず、この国の学問は死んでしまいますよ」


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10月13日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月13日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「金持ちだけが浮かれる「Go To」…庶民はカネも暇もなし」

 コロナ拡大下で、この国の未来を支える子どもたちの将来を左右しかねない綻びが顕在化しているのに、菅政権はハンコ撲滅に血道を上げるトンチンカン。リモート社会から、こぼれ落ちそうな経済弱者の暮らしなど見向きもしない。

 「デジタル化推進やマイナンバーカード普及のメリットは、パソコンやスマホの所持が大前提。そんな余裕のない人々は、制度の対象外として切り捨てる冷酷さです」(斎藤満氏=前出)

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)もこう言う。

 「菅首相は、学術会議への人事介入も当初は『そんなに問題なのか』と周囲に漏らしたそうですが、恐ろしいほど他者への想像力が欠落しています。旅行や外食に充てるだけの休暇もお金も得られない弱者の暮らしなど眼中にないのです。政治の恩恵にあずかれる対象は、自分のように『自助』で、のし上がった勝ち組のみ。大半の人々は菅首相のような人生を送れないのに『自己責任』で切り捨ててしまう。冷徹、冷淡、冷血な首相です」

 かくして、このコロナ禍で庶民は休みも金も、希望もなく、馬車馬のように働くしかない。


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10月10日(土) 日本学術会議の名簿で6人の名前を削ったのは誰なのか [首相]

 菅首相は昨日、内閣記者会のインタビューに応じて日本学術会議を行政改革の対象とする方針を示しました。問題の論点をすり替えるとともに、真の狙いをあけすけに語ったわけです。
 また、首相は自身が任命を決裁する段階で学術会議が推薦した6人は既に除外され、99人だったと説明しました。推薦段階の名簿は「見ていない」というのです。

 この発言には驚きました。自らの責任を逃れるために、「僕ちゃん、知らないもんね」と言い出したのです。
 それなら、誰が名前を削ったのでしょうか。安倍前首相からの引き継ぎは「ない」と否定しましたが、引き継いだ「誰か」が手を下したのではないでしょうか。
 首相以外が判断したのなら任命権の行使であり、学術会議法違反ではありませんか。そもそも名前も見ないで、「総合的俯瞰的な観点」から判断することができるのでしょうか。

 この菅首相の発言は、今回の決定への疑問をさらに深め、その不当性をさらに強めるものだと言えるでしょう。菅首相は日本学術会議の6人の任命拒否によって「墓穴」を掘ったように見えます。
 その後の対応は、自ら穴を掘り進み、ますます深くしているようなものではありませんか。そのうち、上の方の土が崩れて埋もれてしまうかもしれません。
 「見ていない」と言う発言は、最初の土砂崩れのような気がします。首相が判断したのではなかったのか、それなら誰がどのような判断で行ったのか、首相は削られた名簿をただ決裁しただけなのか、首相が任命するという法律に反するのではないか、などの数々の疑問を呼び起こしたからです。

 この内閣記者会によるインタビューという形式は2回目になります。このようなやり方も、菅首相の自信のなさの表れではないでしょうか。
 国民を納得させる説明ができないから、質問に応えたくないのでしょう。自分が削ったのでなければ、理由を説明できないのは当たり前です。
 内閣記者会はインタビューではなく正式の記者会見を求め、これらの疑問点について正さなければなりません。それがメディアとしての責任ではないでしょうか。

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10月9日(金) 学術会議会員6人の任命拒否の理由を明らかにして取り消すべきだ [教育]

 日本学術会議会員の任命拒否事件についての初の国会質疑が、衆参両院の内閣委員会で行われました。菅首相が6人を除外した判断の基準や背景が焦点でしたが、具体的な説明はなく「ゼロ回答」に終わりました。
 のらりくらりと言い逃れをして時間稼ぎを図り、国民が忘れるのを待つというこれまでのやり方は許されません。菅首相は学術会議会員6人の任命拒否の理由を明らかにして取り消すべきです。

 1983年に中曽根首相は「政府が行うのは形式的任命にすぎない。学問の自由独立はあくまで保障される」と答弁していました。もし、形式的ではなく、実質的な任命がなされれば、「学問の自由独立は保障され」なくなると言っていたのです。今回がそれに当たります。
 同じ83年の参議院文教委員会で内閣官房総務審議官は「推薦されたうちから総理が良い人を選ぶのじゃないかという感じがしますが、形式的に任命を行う。実質的なものだというふうには理解しておりません」と答弁しています。「総理が良い人を選ぶ」ことはない、つまり今回のようなことはしないと約束していたのです。
 丹羽兵助総務長官はもっとはっきりと「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否しない。その通りの形だけの任命をしていく」と答弁しています。「拒否しない」と言っていたのに、今回は6人について「拒否」しています。

 国会での審議では「解釈は変えていない」と言う答弁が相次ぎました。当時から、今回のような任命拒否が可能だと解釈されていたのなら、これらの答弁との整合性が問題になります。
 83年当時の関係者が皆、嘘を言ってごまかしていたのでしょうか。当時と変わっていないと言えば言うほど、これらの答弁を行った中曽根元首相などを貶め、名誉を損なうことになります。
 当時から解釈を変えたとすれば、変わっていないという国会での答弁は嘘だということになります。それは、いつ、何故なのでしょうか。

 『毎日新聞』10月8日付に興味深い記事が出ていました。「14年10月以降のある時点で、官邸側から『最終決定する前に候補者を説明してほしい』と要求されていたという」のです。
 「14年10月以降のある時点」から、「官邸側」は学術会議の人事に関与する姿勢を示していたことになります。この「14年」という年が一つのポイントではないでしょうか。
 13年から14年にかけて、それまでの慣例を破る形での官邸側による人事介入が相次いでいたからです。安倍首相は13年には内閣法制局長官に外交官の小松一郎駐仏大使を任命し、NHKの経営委員に「お友だち」の百田尚樹・長谷川三千子さんを押し込み、翌年の14年1月にはNHK会長に籾井勝人さんを起用し、この年の5月には内閣人事局が設置されました。

 もう一つ、興味深い事実があります。14年5月15日に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が内閣に対して“集団的自衛権の行使は認められるべきだ”とする報告書を提出し、この日の記者会見で安倍首相は 集団的自衛権が必要な具体例として親子のパネルを示して説明していました。
 他方で、3月には「戦争をさせない1000人委員会」、4月には「立憲デモクラシーの会」が発足し、これ以降翌年の9月まで、学者・研究者も加わって激しい反対運動が展開されます。「官邸側」が学術会議の人事に関与する姿勢を示していた「14年10月以降のある時点」は、まさにこのような反対運動が盛り上がり始めていた頃に当たります。
 この様子を眺めていた官邸側は「何とかしたい」と考えたのかもしれません。その具体的な現れは「16年の補充人事で学術会議が推薦候補として事前報告した2ポストの差し替えを官邸が要求」(『毎日新聞』10月8日付)という形で生じ、以後、今日まで繰り返されてきました。

 自民党や政府にとって学術会議は以前から煙たい存在で、できれば廃止するか少なくとも従順な機関へと変質させたいと考えていたはずです。それが、具体的な人事介入という形をとるようになった背景には特定秘密保護法や安保法制に対する反対運動があり、これらの法制定との関係で軍事研究を加速させる必要性が生じたからではないでしょうか。
 そのために、2018年に首相が推薦通りに会員を任命する義務はないとする内部文書を作成して準備を進めてきたのだと思われます。この時点で法解釈の変更がなされたことは明らかですが、政府はそのことを認めていません。
 認めれば、勝手に解釈を変えたのに公表していなかったことになり、立法権を侵害してしまうからです。そのために、「総合的・俯瞰的」という抽象的で理解不能な言葉を繰り返すしかなくなってしまいました。

 「総合的・俯瞰的」観点から6人を任命しなかったとすれば、この6人はその資格や資質が無いということになります。しかし、その理由は明らかにされていませんから、一方的に投げかけられた侮辱であり名誉を大きく棄損するものです。
 国会でのやり取りは国民が見ているだけでなく、世界の人々も見ています。まるで、日本語が通用しなくなってしまったようなやり取りを。
 森友・加計学園疑惑や桜を見る会、黒川検事長の定年延長問題などでも目にしたおなじみの光景ではありますが、情けないったらありゃしません。こんなたわごとを言わされている官僚も気の毒です。


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10月8日(木) 学術会議人事介入の狙いは大学と学術研究を権力のしもべに変え戦争に協力させることにある [教育]

 「今回の個別の人事案件とは別に、政策決定におけるアカデミアの役割という切り口から議論していく必要性がある」
 自民党の下村博文政調会長は6日午前に党本部で開かれた会議のあいさつで学術会議をめぐる問題についてこう述べ、「政治と学術の関係について前向きなものを打ち出したい」と語りました。昨日の記者会見でも下村政調会長は「日本学術会議」のあり方を検討するプロジェクトチーム(PT)を新設する方針を表明し、次のように述べてきます。
 「学術会議としての活動が見えない。いろいろな課題があるのではないか」「果たすべき役割が果たされているのかを議論をしていく必要がある」

 今回の人事介入の目的はここにあったのです。政府の言うことを聞かない学術会議をぶっ壊すこと、少なくとも変質させることによって大学と学術研究を権力のしもべに変え、戦争と軍事に協力させようとしているのです。
 そのために、秘かに人事介入を準備し、知られないようにしながら安倍政権の下で実行してきました。それが、今回、明るみに出てしまったわけです。
 それを逆手にとって、いよいよ牙を剥いて学術会議に襲いかかろうというのが、自民党プロジェクトチーム新設の意味なのです。下村さんは、その狙いをはっきりと口にしました。

 その狙いは安倍前首相が進めてきた教育改革や大学改革と共通しています。安倍教育改革の目的は、道徳の教科化と愛国心教育の強化によって、権力に従順で自ら進んで「お国ため」に戦う人材を育成することにありました。学術会議への介入は、その大学版です。
 権力に手向かわず、戦争に反対せず、軍事研究に協力する大学と学術に変質させることを目的にしています。大学法人化や管理運営体制への民間人登用、教授会自治の切り崩し、補助金の削減と科学研究費の配分などを通じて、これまでも大学の自治と学問の自由は侵され、軍事研究への協力を強いられてきました。
 学術会議が目の敵にされるのは、このような大学改革や学術研究への介入に対する防波堤となって軍事研究に反対し、大学の自治と学問の自由を守ろうとしてきたからです。いよいよ自民党はこの学術会議に挑戦状をたたきつけ、87万人の学者・研究者を敵に回すことを宣言したことになります。

 学術会議を変質させて言うことを聞かせようとする手段も、安倍首相に指示され菅官房長官が実行してきたものと同じです。人事に関与したり介入したりすることで恫喝し、忖度させたり言うことを聞かせたりしようというのです。
 内閣人事局の新設によって官僚全体を統制下におき、それまで認められないとされてきた集団的自衛権の一部容認を実現するために内閣法制局長官を交代させ、アベノミクスに協力させるために都合の良い人物を日銀総裁に据え、NHKを支配するために会長や経営委員にお友だちを送り込み、気に入らないテレビ報道番組のキャスターなどを交代させ、「官邸の守護神」を守るために検察庁の人事や定年制度さえ歪めようとしてきました。学術会議への人事介入も陰で秘かに実施されていたもので、今回が初めてではなかったのです。
 特定の政治目的を達成するために人事に介入するという安倍政権による常套手段が繰り返され、それが明るみに出たというのが今回の事件です。安倍政治の「闇」が、それを担ってきた人物が首相になった途端にばれてしまったというのも歴史の皮肉でしょうか。

 いわば二つの「闇」の流れが交錯するところに、今回の事件が露わになったと言うべきでしょう。一つは教育の国家統制をめざす安倍教育改革の一環として進められてきた大学の自治と学問の自由の侵害という流れ、もう一つは特定の政治目的を実現するための人事介入による官邸支配の強化という流れです。
 このいずれも「安倍政治」の「闇」であり、これを継承するところに安倍なき安倍政治たる菅後継政権の本質があります。日本の教育と大学・学術の自治と自由、民主主義と平和を守るために、菅政権を打倒することは急務になっています。

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10月7日(水) 学術会議への人事介入 [コメント]

〔以下のコメントは『しんぶん赤旗』10月5日付に掲載されたものです。〕

 菅政権の官邸強権政治

 「官邸による強権政治は、安倍政権が常習的に行ってきたことです。菅氏はその中枢にいて、人事権を振りかざして官僚にいうことを聞かせたり、あるいは、マスコミに介入したり、今まで同じことをやってきました」
 こう指摘するのは、法政大学名誉教授の五十嵐仁さん。その典型が、集団的自衛権の行使容認のため、政府の解釈変更はできないとしてきた内閣法制局長官を更迭したことです(2013年)。後任には内部昇格の慣例を破って、行使容認に積極的な外務官僚を起用し、翌年に政府解釈を変更しました。今年1月には、「官邸の番人」といわれた黒川弘務東京高検検事長の定年を延長し、検事総長につけることを狙いました。そのために、「国家公務員法の定年延長は検察官には適用されない」との法解釈を変更し、黒川氏の定年延長を閣議決定。それをあとづけるように検察庁法まで改悪しようとしました。

 菅氏は強権政治を行うことで官僚を支配し、メディアも支配し、科学の世界も支配できると思ったのかもしれません。しかし、ことは首相の思惑の逆をいっています。
 五十嵐氏はいいます。「今回、首相は虎の尾を踏んだ。これはだれがみてもおかしい。菅氏はそんな人だったんだと多くの国民が思う。安倍首相の陰に隠れて、強権政治を担ってきた菅氏の本質・地金が明らかになった」

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10月6日(火) 菅新政権をどう見るか―安倍なき「安倍政治」を受け継ぐ亜流政権(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、東京土建一般労働組合の機関紙『かんせつ』第2331号、2020年10月2日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 「負の遺産」を受け継ぐ
 改憲への憲法審査会に意欲

 菅新政権は「安倍政治」が残した「負の遺産」まで継承しようとしています。長期政権の驕りや強権政治、政治の私物化として大きな批判を浴びた「森友・加計」「桜を見る会」や河井夫妻の大量買収事件など、「安倍政治」の闇を支えてきたのが菅官房長官だったからです。
 総裁選に際しても、森友問題などへの再調査を拒否し、官僚の忖度を強めた内閣人事局を見直さないばかりか、政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「移動してもらう」と明言しました。改憲と立憲主義の破壊についても、安倍首相の改憲路線を受け継いで憲法審査会を動かすことに意欲を示しています。
 また、総裁選で首相の国会出席について問われた菅さんは「大事なところで限定して行われるべき」だと主張しています。官房長官時代、憲法53条に基づく臨時国会召集要求を拒んだ安倍首相を支え、記者の質問にまともに答えようとしなかった菅さんらしい対応だと言えるでしょう。
 森友や河井夫妻の事件については裁判が進行中で、今後、新たな事実が出てくる可能性があります。再調査を実施し、記録の保存と公文書管理の適正化を図り、政策形成過程の事後検証が可能なようにしなければなりません。国民の知る権利と報道の自由を阻害してきた官邸支配とマスコミ統制をやめ、内閣人事局の運用改善と恣意的人事の防止にも、ぜひ取り組んでもらいたいものです。

 総選挙で決着つけ政治をグレートリセット

 今回の自民党総裁選に立候補した石破元幹事長は、「納得と共感」をスローガンに「グレートリセット」を主張していました。しかし、総裁選で示されたのは、このような主張を受け入れる余地が今の自民党にはないということです。もはや自民党は、歴史的役割を終えたことになります。
 大きくリセットしたのは野党の方です。大きな塊として新たに立憲民主党が発足し、市民と野党の共闘における新たな可能性が生まれました。「安倍政治」の継承を許さないために、総選挙で決着をつけ、日本政治の「グレートリセット」を実現することが求められています。

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10月5日(月) 菅新政権をどう見るか―安倍なき「安倍政治」を受け継ぐ亜流政権(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、東京土建一般労働組合の機関紙『けんせつ』第2331号、2020年10月2日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 密室談合で幕開け前に終了
 変えないことを約束

 菅義偉新政権が発足しました。この政権の発足によって、何が変わるのでしょうか。基本的には何も変わりません。変えないことを約束しての政権樹立だったのですから。
 菅さんを担ぎ出したのは二階幹事長でした。それは、石破茂元幹事長の総裁選出を阻止するためです。地方票の比重が低くなる投票方法を採用したのも同じ狙いからでした。
 その後の経過は、二階さんのシナリオ通りの展開となりました。「勝ち馬」と見られた菅候補に主要5派閥の支持が集まり、アッという間に菅優位という構図が出来上がりました。密室での談合によって、幕が上がる前にドラマは終わっていたのです。 

 前政権3本柱が残留
 新入閣わずか5人に止まる

 「思い切った人事を宣言しながら、留任や横滑りが多く代わり映えしない顔ぶれだ。これで国民の支持が高まるのか」。自民党の中で、このような「先行きを、不安視する声」が上がっているそうです(『朝日新聞』9月16日付朝刊)。それもそうでしょう。安倍亜流政権の亜流人事にすぎないのですから。
 第1に、政権の骨格に変化はありませんでした。安倍政権を支えてきた「3本柱」がそのまま残ったからです。菅さんは首相になり、二階俊博幹事長と麻生太郎副総理兼財務相は留任しました。自民党役員では森山裕国対委員長、主要閣僚では、茂木敏充外相、萩生田光一文科相、梶山弘志経産相、赤羽一嘉国交相、西村康稔経済再生相、橋本聖子五輪相の5人が留任し、加藤勝信官房長官、河野太郎行革担当相、武田良太総務相はポストを変えての再任です。
 第2に、党の役員や閣僚として安倍政権を支えた議員の再入閣も目立ち、新入閣はたったの5人でした。上川陽子法相、田村憲久厚労相、小此木八郎国家公安委員長、平井卓也デジタル担当相の4人は安倍政権で閣僚になった経験があります。
 第3に、菅新首相自身は無派閥出身ですが、5つの主要派閥に支持されたことを反映して、各派閥への目配りもなされています。派閥均衡がはっきりと示されているのは自民党4役の人事で、二階幹事長(二階派)と森山国対委員長(石原派)をはじめ、佐藤勉総務会長(麻生派)、下村博文政調会長(細田派)、山口泰明選挙対策委員長(竹下派)が選任されました。閣僚ポストも各派閥にほぼ均等に配分されています。

 従米外交、コロナ対策、消費税
 難題は山積するまま

 新政権の前途には難題が山積しています。本来であれば、政権交代を機に新たな方針を打ち出して新政権への期待を高めることもできたはずです。しかし、今回は「振り子の論理」も働かず、独自の国家観やビジョンが不明な菅さんが後を引き継ぐことになりました。政策転換のチャンスを自ら放棄したことになります。
 安倍首相が得意とし、一般的には評価の高い外交ですが、実態は散々なものです。日米関係を重視するからといって、一方的に従う必要はありません。譲るばかりの従米外交から対等平等な関係に変え、外交・安全保障政策を刷新することが求められています。
 具体的には、日米地位協定の改定、沖縄・辺野古での土砂投入の中止、武器爆買いの見直しなどに着手すべきです。憲法違反の敵基地攻撃論ではなく専守防衛の厳守、北東アジアでの軍縮・緊張緩和の提案、韓国はじめ周辺諸国との関係改善を進めなければなりません。もちろん、全く前進しなかった拉致問題と領土問題の打開、核兵器禁止条約の批准などの課題にも取り組む必要があります。
 内政面では、コロナ対策の強化、医療・保健・介護などのケア優先の社会への転換を図らなければなりません。コロナ禍によって新自由主義的な自己責任論や効率優先の社会のあり方の脆弱性と問題点が明らかになりました。非正規労働者や女性、外国人労働者など社会基盤の維持に不可欠な労働者(エッセンシャルワーカー)への差別をやめ、処遇を抜本的に改善することが必要です。
 また、消費増税とコロナ禍で大打撃を受けた経済を立て直さなければなりません。大企業と株主優遇から中小企業・地方重視の経済政策への転換、賃上げや最低賃金の引き上げなどによる可処分所得の増大、コロナ倒産の防止と雇用の確保、非正規・女性・若年労働者の処遇改善、真の女性活躍とジェンダー平等政策の具体化、原発の再稼働中止などに取り組んでもらいたいものです。

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10月4日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』9月24日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「剥き出しになった菅首相の正体 忖度メディアの目は節穴」

 モリカケ、桜を見る会など安倍政権の恥部に続き、学術会議への政治介入も肝心な情報は隠蔽。気に入らない学者や記者は排除、愚弄し、タテつく官僚は左遷。権威ムキ出しのファシストさながらで、その正体は歪んだ権力欲の恫喝政治屋だ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「菅首相は官房長官時代から権力行使に快感を覚え、権力に執着してきました。『全く考えていない』と言い続けた首相の座を目指したのも、権力行使のエクスタシーを手放したくなかったからでしょう。そんな権力欲の塊が地方議員から政権トップにのし上がったのは、恫喝と権謀術数のたまもの。コロナ禍で国民が苦しむ中、二階幹事長との連携プレーで権力奪取ゲームに興じた姿は、権力亡者そのものです。『陰の総理』の『陰』が消え、地金が早速、表に出てきましたが、深慮遠謀のカケラもない学問弾圧は恐怖支配の“成功体験”に酔いしれている証拠です」


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10月2日(金) 日本学術会議の6人の任命除外を撤回し任命することを要求する [首相]

 しばらくブログを書くつもりはなったのですが。そうもいかなくなりました。先ほど、『日刊ゲンダイ』からの取材の電話もありましたが、黙っていられなくなってブログでも書くことにしました。
 それはどうしてかと言えば、菅政権のやり方に我慢ができないからです。あまりにも酷いじゃありませんか。

 菅首相は日本学術会議の次期委員として推薦された名簿の中から6人だけを除外して任命しました。形式的になされるはずの慣例を破ったのです。
 この措置を撤回し、推薦された名簿通りに6人の方を学術会議の会員として任命することを要求したいと思います。この6人には私の知人も含まれており、なぜ任命されなかったのか理解できません。
 菅首相も、任命しなかった理由を説明できないでしょう。政府の気に入らない人たちだということ以外に、何の理由もないのですから。

 馬鹿なことをやったものだと思います。6人が学術会議の会員になってもならなくても、議論の内容にそれほどの違いがあるようには思われないからです。
 今回の措置によって菅内閣が得られるメリットはほとんどなく、デメリットしかありません、それなのに何故、このような誰にでも分かる強権発動を行ったのでしょうか。
 自ら進んで「地雷」を踏んだようなものではありませんか。今回の事例で、国民の多くは「ああ、菅さんてこんな人だったのね」と思ったことでしょうから。

 安倍政権での官房長官として、菅さんは汚れ仕事をして支えてきました。官僚への統制やマスコミへの介入など、人事に関与することで言うことを聞かせることは常套手段だったのです。
 そうすることで長期政権を実現した「成功体験」を過信してしまったのではないでしょうか。人事に介入して言うことを聞かせれば良いのだと。
 それが「躓きの石」になりそうです。菅政権における「モリ・カケ」問題の発生ではないでしょうか。

 これまでのどの政権もやらなかったことです。安倍首相でさえやらなかったことを、何故、今回やったのでしょうか。
 説明責任が問われるのは当然です。しかし、国民を納得させられるような説明が、そもそも説明の苦手な菅さんにできるのでしょうか。
 自ら招いた正念場です。逃げることなく、真正面から向き合っていただきたいものです。


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