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10月19日(月)  安倍政権とは何だったのか―7年8ヵ月の総括(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』2020年11月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 「国民のみなさまの付託に自信をもってこたえられる状況でなくなった以上、総理大臣の地位にありつづけるべきでないと、判断しました。総理大臣の職を辞することといたします。」
 8月28日の記者会見で安倍首相はこのようにのべ、総理大臣を辞任する意向を明らかにしました。第1次安倍内閣の幕切れと同様の突然の辞意表明です。いずれも直接の原因は持病の悪化とされていますが、背景には政権の行き詰まりがありました。
 安倍首相の辞任後、後継として「安倍政治の継承」を公言する菅義偉官房長官が新首相に選出されています。安倍首相の連続在職日数は2822日で歴代最長となり、第1次政権を含む通算でも最長の3188日になりました。過去のどの首相よりも長い在職記録を打ち立てたわけです。しかし、その実態はこのような記録に値するものだったのでしょうか。

1、最長にして最悪・最低の政権

 アベノミクスの虚妄

 第2次安倍政権は経済政策である「アベノミクス」と「三本の矢」をかかげ、円安の解消、株価の回復や雇用関係の改善を追い風として「一強」体制を築きました。経済は外交と共に安倍首相の得意分野とされています。しかし、実際にはどうだったのでしょうか。
 たしかに、1万円前後だった株価は2倍以上の2万3000円前後に上がり、大企業の内部留保は45%も増えました。名目賃金も上昇し、雇用も改善されました。
 しかし、その内実は実体経済を反映しない金融バブルにすぎず、大企業と富裕層をもうけさせ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の積立金運用による人為的な株高は将来的な暴落が懸念されています。アベノミクスがめざしたデフレ克服の2%の物価目標は達成されませんでした。
 少子高齢化は止まらず、労働人口は減り、実質賃金と可処分所得は低下し続けています。雇用は改善されましたが、それは非正規雇用が増大したからです。2001年4月には5%から8%へ、2019年10月にはさらに10%へと消費税を引き上げ、増税額は計13兆円となって国民の暮らしと経済を破壊し、貧困と格差を拡大しました。
 また、高齢化に伴う社会保障費を削り、生活保護費も連続的に引き下げてきました。年金、医療、介護なども削られ、コロナ禍のもとで医療体制の脆弱性と高齢者福祉の劣悪さが露わになっています。また、労働政策でも高度プロフェッショナル制度という美名のもと、過労死を促進する残業代ゼロ制度を含む「働き方改革一括法」を成立させました。

 外交・安保政策の漂流

 「日本外交の基軸」とされている日米関係では「血の同盟」を強化し、譲るばかりの「言いなり外交」に終始しました。特定秘密保護法や集団的自衛権の一部容認を定めた安保法=戦争法の制定、武器輸出三原則の撤廃にF35戦闘機など米国製兵器の爆買いを強行し、アメリカとともに海外で戦争する国づくりをすすめてきました。
 なかでも際立つのが、沖縄県民の民意を無視した名護市辺野古での米軍新基地建設です。県知事選挙や県民投票などで何度も示された「ノー」の声を無視し、2015年10月以降、歴代政権ではじめて土砂投入を強行したのが安倍政権でした。
 ロシアのプーチン大統領と個人的な関係を強めたにもかかわらず、領土問題を解決できなかっただけでなく「4島返還論」から事実上の「2島返還論」に後退し、北方領土の実効支配を強める経済協力を約束させられる始末です。
 中国にたいしては、覇権主義的な行動や国内での報道の自由の制限、香港やウイグルでの人権弾圧などの問題に毅然とした批判ができず、新型コロナウイルス対策でも中国からの入国制限が遅れました。高まる米中対立でも独自の役割をはたせずにいます。
 徴用工問題と貿易制限をめぐって韓国とは戦後最悪の状態となり、打開の見通しが立っていません。北朝鮮とも核開発とミサイル防衛を「国難」宣伝の口実に利用するばかりで、「政権の最重要課題」としてきた日本人拉致問題について新たな進展はありませんでした。

 立憲主義の破壊と政治の腐敗

 過去のどの首相よりも安倍首相が強く推し進めたのが、立憲主義と民主主義の破壊であり、国政の私物化と官邸支配による官僚とマスコミに対する統制でした。これによって議会制民主主義の土台が掘り崩され、国会は空洞化し、「ヒラメ官僚」と「忖度政治」がはびこり、ジャーナリズムが委縮して報道の自由が脅かされています。
 安倍首相は2014年7月の「閣議決定」で集団的自衛権の行使一部容認に道をひらきました。内閣法制局長官を交代させて180度転換する「解釈改憲」でした。これに基づいて15年9月に制定されたのが、安保法制=戦争法です。これは法の制定によって憲法を空洞化する「立法改憲」です。
 さらに、2017年5月3日には「2020年を新憲法施行の年にしたい」と表明し、9条に自衛隊を明記して海外での武力行使を可能とするねらいを明らかにしました。これは憲法の条文を書き換える「明文改憲」にほかなりません。広範な国民の運動でこの目論見は挫折しましたが、後継の菅新政権もこの路線を継承しようとしています。
 安倍政権のもとで進行した国政の私物化と政治腐敗もかつてないものでした。「森友・加計学園」疑惑、「桜を見る会」問題、ジャパンライフとの関係の疑惑はその代表的なものです。どれについても、安倍首相夫妻やその友人の関与が疑われ。国会での偽証、公文書の隠ぺいと捏造・書き換えなどが相次ぎ、それを悔やんで自死した財務省の職員さえでています。
 公職選挙法違反容疑で逮捕された河井克行前法相夫妻の買収事件と1憶5000万円資金疑惑、統合型リゾート(IR)誘致をめぐる秋元司議員の逮捕、選挙民買収疑惑の菅原一秀議員などのスキャンダルも相次ぎ、辞任した閣僚は10人を数えます。しかし、安倍首相は「責任はある」というだけで最後まで任命責任をとりませんでした。

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