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10月25日(日) ポスト安倍時代における憲法闘争の課題(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、2020年9月18日に開催された「「安倍政治」の継続許さない!―九条の会東京連絡会9・18大集会」での講演の記録です。『生きいき憲法』No.69、2020年10月14日付に掲載されました。3回に分けてアップさせていただきます。〕

3.「活憲」の政府樹立に向けて

 これからの課題は改憲を阻止する、9条を変えさせないというだけではありません。それをさらに発展させて、今の時代にふさわしい形で憲法の理念や原則を生かしていく、具体化していく。これが必要になってくると思います。
 菅内閣は改憲に向けての野望を安倍政権から引き継ぐと言っています。改憲発議を阻止し、憲法破壊の安保法などのさまざまな法制度を撤廃しなければならない。さらに、憲法理念を実現できる、その時代にふさわしい政府をつくっていく。どうしたらそれができるのかが次の課題です。

■ 実績を積み上げてきた市民と野党の共闘

 「活憲の政府」樹立に向けて、野党共闘が重要です。市民と野党の共闘で、2016年から過去4年間の実践と経験を積み上げ、成果をあげてきました。2回の参院選では、32の一人区全てで野党の統一候補を擁立し、7年前は11議席、1年前は10議席を獲得。首長選挙でも、新潟県知事選挙では野党共闘で2回戦い、1回目は勝ち、2回目は負けました。その後、高知県知事選なども戦い、岩手と埼玉では勝ちました。この4月の都知事選挙では、25の小選挙区全てで市民選対が樹立され、野党が共に手を携えて戦いました。私も「市民と野党の共闘で都政の転換を 呼びかけ人会議」の一人として、国民民主党やれいわ新選組など、各党要請に回りました。去年の12月から、これらの野党代表が集まって共闘に向けての話し合いが積み重ねられていました。
 このような実績をさらに発展させ、さらに大きな共闘の輪をつくっていくことが必要です。そして、そのための条件が、つい最近できました。

■ 立憲と国民の合流――新政府樹立への大きな一歩

 9月15日に立憲民主党、国民民主党が、ともに解党して、新たに立憲民主党が150人、国民民主党が15人という形で野党の側の再編がなされました。かつて民進党が「希望の党騒動」によって引っかき回され、野党がめちゃめちゃになって大変な状況が生まれました。分裂工作の先頭に立っていたのが前原さんで、連合の会長、神津里季生さんもこれに加わっていました。今回、神津さんは枝野さんとともに、新立憲民主党結成に大きな役割を果たしました。リベラル的で中道から左派的な、共産党とも連携する、野党共闘に積極的な新しい政党、野党第一党が実現した。かつての民主党や民進党は、右のほうにドアが開いていた。自民党とも連携する可能性があった。今度の新しい立憲民主党は右ではなく、左のほうにドアが開いている。この変化、質的な違いをしっかりと見ておく必要があります。

■ 歴史観の見直し、価値観の転換は時代の要請

 アメリカの黒人差別問題(BLM)を発端にして、差別と加害の歴史を見直すという流れが世界で生まれてきています。日本も過去の侵略戦争と植民地支配の歴史を見直さなければならない。家族観やジェンダー問題でも、しっかりとした新しい立場に立つ政権をつくらなければなりません。今回の新内閣の閣僚には女性が2人しかいないと言われて、菅さんは「華やかさより実務をとった」と答えた。女性閣僚は見栄えを良くする飾りとしか考えられていない。これでは話になりません。女性活躍の社会になるはずがない。1人10万円の給付にしても、世帯主に送られる。国勢調査も世帯ごとの調査です。こういう古い家族観に縛られているような政党、政治家による政治。ここを抜け出さなければならない。これが時代の要請だろうと思います。

■ 憲法の理念を守り育てて、後の世代に手渡すことこそ、今を生きる私たちの責務

 日本国憲法、とりわけ9条は「1周早いラストランナー」だと、私は言ってきました。一番後ろを走っているように見えて、実は1周先を走っていた。憲法の中での人権規定は当時としても極めて先進的で、今見ても遜色がない。個別具体的なことは各法に任せて、中心的な理念を定めている。だから条文は短く修正する必要がない。時代遅れにならないのです。これを守り育てて、次の時代に、後の世代にそのまま手渡すのが、今を生きる私たちの責務だろうと思います。
 自民党は今回、新しい時代に適合する新しい政党に生まれ変わる能力がないことを示しました。ならば、私たちが市民と野党の共闘で、新しい時代の新しい政治を実現する政府を樹立しようじゃありませんか。
 憲法12条には、「この憲法が保障する自由と人権は国民の不断の努力によって保持されなければならない」と書いてあります。検察庁法改定問題でも、コロナ対策でも、大きな世論、国民の声の力によって、与党を追い込んで政策を変えさせることができました。諦めずに声を上げ続ければ政治は変わる。声を上げ続けて、次の世代に顔向けできる世の中、そういう社会にしていきたいと思います。

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