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12月15日(火) 日本政治の現状と変革の展望(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、日本民主主義文学会の『民主文学』2021年1月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

2、 日本学術会議任命拒否事件                 

 違憲・違法な任命拒否

 安倍政権からの「負の遺産」の継承を象徴的に示したのが、日本学術会議に対する任命拒否事件です。学術会議から推薦された105人のうち6人の任命が拒まれたのです。この任命拒否は憲法23条が公的な学術機関の自律を保障する学問の自由と、法律によって定められている「学術会議の推薦に基づいて首相が任命する」という規定に反する違憲で違法なファッショ的暴挙にほかなりません。
 6人を誰かが勝手に除外し、元のリストを首相が「見ていない」という今回のやり方は、「任命は形式的」で「首相が任命する」といういずれの規定にも反しています。研究と業績以外の理由を持ち出して任命を拒否するのも法律違反です。拒否の理由を説明し、直ちに撤回して6人を任命するべきです。
 1983年に中曽根首相は「政府が行うのは形式的任命にすぎない。学問の自由独立はあくまで保障される」と答弁していました。もし、形式的ではなく実質的な任命がなされれば、「学問の自由独立」は保障されなくなると言っていたのです。今回がそれに当たります。
 同じ83年の参議院文教委員会で内閣官房総務審議官は「推薦されたうちから総理が良い人を選ぶのじゃないかという感じがしますが、形式的に任命を行う。実質的なものだというふうには理解しておりません」と答弁していました。「総理が良い人を選ぶ」ことはない、つまり今回のようなことはしないと約束していたのです。
 丹羽兵助総務長官はもっとはっきりと「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否しない。その通りの形だけの任命をしていく」と答弁していました。その後、政府が現行の推薦方式に変えた2004年に「首相が任命を拒否することは想定されていない」という内部資料をまとめていたことも分かりました。
 「拒否しない」と言っていたのに「拒否」したのです。国会での審議では「解釈は変えていない」という答弁も相次ぎました。当時から任命拒否が可能だと解釈されていたわけではなく、これらの答弁との整合性が問題になります。

 権力による教育と大学への介入

 今回の人事介入の狙いは安倍前首相が進めてきた教育改革や大学改革と共通しています。その目的は道徳の教科化と愛国心教育の強化によって、権力に従順で自ら進んで「お国のため」に戦う人材を育成することにありました。学術会議への介入は、その大学版です。
 大学法人化や管理運営体制への民間人登用、教授会自治の切り崩し、補助金の削減と科学研究費の配分などを通じて、これまでも大学の自治と学問の自由は侵され、軍事研究への協力を強いられてきました。防衛省の軍事研究助成(安全保障技術研究推進制度)に採択された岡山大や東海大はJAXA(宇宙航空研究開発機構)とともに「極超音速ミサイル」の開発に協力しています。学術会議への攻撃は「敵基地攻撃能力」の保有の動きと連動しているのです。
 学術会議が目の敵にされるのは、このような大学改革や学術研究への介入に対する防波堤となって軍事研究に反対し、大学の自治と学問の自由を守ろうとしてきたからです。自民党はこの学術会議に挑戦状をたたきつけ、87万人の学者・研究者を敵に回すことを宣言したことになります。
 学術会議の変質を図ろうとする手段も、安倍前首相に指示され菅前官房長官が実行してきたものと同じです。人事に関与したり介入したりすることで恫喝し、忖度させて言うことを聞かせようというのです。
 『毎日新聞』10月8日付に興味深い記事が出ていました。「14年10月以降のある時点で、官邸側から『最終決定する前に候補者を説明してほしい』と要求されていたという」のです。この「14年」という年が一つのポイントではないでしょうか。13年から14年にかけて、それまでの慣例を破る形での官邸側による人事介入が相次いでいたからです。
 安倍前首相は13年には内閣法制局長官に外交官の小松一郎駐仏大使を任命し、NHKの経営委員に「お友だち」の百田尚樹・長谷川三千子両氏を押し込み、翌年の14年1月にはNHK会長に籾井勝人氏を起用し、この年の5月には内閣人事局が設置されました。
 14年5月15日には「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が “集団的自衛権の行使は認められるべきだ”とする報告書を出し、安倍前首相は 集団的自衛権が必要な具体例として親子のパネルを示して説明していました。他方で、3月に「戦争をさせない1000人委員会」、4月には「立憲デモクラシーの会」が発足し、これ以降、翌年の9月まで学者・研究者も加わって激しい反対運動が展開されます。
 この様子を眺めていた官邸側は「何とかしたい」と考えたのかもしれません。その具体的な現れは「16年の補充人事で学術会議が推薦候補として事前報告した2ポストの差し替えを官邸が要求」(『毎日新聞』2020年10月8日付)するという形で生じ、以後、今日まで繰り返されてきました。

 墓穴を掘ったのではないか

 自民党や政府にとって学術会議は以前から煙たい存在で、できれば廃止するか従順な機関に変質させたいと考えていたはずです。それが、具体的な人事介入という形をとるようになった背景には特定秘密保護法や安保法制に対する反対運動があり、これらの法制定との関係で軍事研究を加速させる必要性が生じたからでしょう。
 そのために、2018年に首相が推薦通りに会員を任命する義務はないとする内部文書を作成して準備を進めてきたのだと思われます。この時点で法解釈の変更がなされたことは明らかですが、政府はそのことを認めていません。
 認めれば、勝手に解釈を変えたのに公表していなかったことになり、国会の立法権を侵害してしまうからです。そのために、「総合的・俯瞰的」という抽象的で理解不能な言葉を繰り返すしかなくなりました。
 菅首相は10月9日、内閣記者会のインタビューに応じて日本学術会議を行政改革の対象とする方針を示しました。問題の論点をすり替えるとともに、真の狙いをあけすけに語ったわけです。また、首相は自身が任命を決裁する段階で学術会議が推薦した6人は既に除外され、99人だったと説明しました。推薦段階の名簿は「見ていない」というのです。
 それなら、誰が名前を削ったのでしょうか。警察庁出身で内閣情報調査室長の経歴を持つ杉田和博官房副長官の関与が明らかになっています。首相以外が判断したのなら任命権の行使であり、学術会議法違反です。そもそも名前も見ないで、菅首相が「総合的・俯瞰的」に判断することができるのでしょうか。
 この菅首相の発言は、今回の決定への疑問を深め、その不当性をさらに強めるものです。菅首相は日本学術会議の6人の任命拒否によって「虎の尾」を踏み、知らず知らずのうちに「墓穴」を掘ったのではないでしょうか。その後の対応は自ら穴を掘り進み、ますます深みにはまったように見えます。


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12月14日(月) 日本政治の現状と変革の展望(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、日本民主主義文学会の『民主文学』2021年1月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 「私が目指す社会像は、『自助・共助・公助』そして『絆』です。自分でできることは、まず、自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネット(安全網)でお守りする。そうした国民から信頼される政府を目指します。」
 新たに首相の地位に就いた菅義偉前官房長官は、所信表明演説でこう述べました。それは、9月16日に就任してから40日も経ってからのことです。その遅さと内容の陳腐さにおいて、歴代内閣と比べても際立っていたというしかありません。
 菅新政権は「安倍政権の継承」を掲げていますが、政策路線だけでなく国会軽視の政治姿勢や強権的な政治手法まで「継承」しているようです。しかも、菅首相には「森友・加計」学園疑惑や「桜を見る会」の問題など、数々の疑惑にフタをして官房長官として安倍内閣を支えてきた実績があります。安倍前首相以上に危険で強権的な政治運営を行うのではないでしょうか。
 最低・最悪との批判を受けていた安倍前首相ですが、その後継である菅新首相は、さらにそれを上回る悪質さを示しています。政権発足後、短時日で発覚した日本学術会議の6人の会員の任命を拒否した問題は、このような菅政権の本質を露呈するものでした。
 新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界的な不況の下で経済活動もままならず、国民のいのちと暮らしが脅かされています。それにもかかわらず、自公政権は効果的な対策を打てないばかりか政権維持に汲々としています。派閥間の談合による菅政権の発足にも見られるように、自民党は自己刷新の機会を失い、日本の政治はますます劣化の度を深めました。
 「安倍政治」の「劣化バージョン」にほかならない菅政権は、当初の高い支持率を下落させ、日が昇った途端に「黄昏時」を迎えているような状況に陥っています。このような菅政権は日本をどこに導こうとしているのでしょうか。日本政治の劣化を防ぎ、希望の持てる「新しい政治」に向けての変革の展望はどこにあるのでしょうか。

1、 菅義偉新政権の発足

 「たたき上げ」という「虚像」

 「雪深い秋田の農家の長男として生まれ、地元で高校まで卒業いたしました。卒業後、すぐに農家を継ぐことに抵抗を感じ、就職のために東京に出てきました。……五十数年前、上京した際に、今日の自分の姿はまったく想像することもできませんでした。」
 9月8日、自民党総裁選への立候補を届け出た菅義偉官房長官は石破茂元幹事長や岸田文雄政調会長とともに所見発表演説会に臨み、このように自らの過去を振り返りました。47歳で国会議員に当選したことについても、「まさに地縁、血縁のないゼロからのスタートでありました」と、「たたき上げ」の経歴をさりげなく誇示しています。庶民出身の苦労人だという「虚像」の始まりです。
 この「虚像」の効果は直ちに現れました。菅内閣発足後の各種世論調査で、軒並み60~70%台という高い支持率を記録したからです。
 一般的に、政権発足直後の内閣支持率は高く、その後徐々に減るという傾向があります。新しい政権が始まったことに対する「ご祝儀」が含まれているからです。今回の菅新政権に対する支持率の高さも「ご祝儀相場」であったと思われますが、それだけではありません。
 前述のような庶民出身の苦労人で「たたき上げ」だという「虚像」が幻想を生んだからだと思われます。前任の安倍首相を始め、総裁選で闘った石破元幹事長や岸田政調会長はいずれも二世・三世議員で、庶民とは言えない出自でした。
 また、官房長官として新しい元号を発表し、「令和おじさん」として知名度抜群で親しみをもたれていたことやパンケーキ好きだというマスコミ報道の影響もあったと思われます。実際には、ホテルニューオータニで3000円もするパンケーキで、庶民が気軽に口にできるようなものではなかったにもかかわらず。
 加えて、菅首相は携帯料金の値下げや不妊治療の保険適用など、身近な実益を生み出す政策を意識的に打ち出しました。これらの政策は若者や女性に歓迎された面もあったでしょう。しかし、このような菅首相のイメージや新政権への期待は極めて表面的なもので、「虚像」に基づく幻想にすぎなかったことは間もなく明らかになります。そのことは、当初高かった内閣支持率が軒並み急減するという事態にはっきりと示されました。

 露骨な新自由主義

 菅首相は就任後初の記者会見でも所信表明演説でも、「私が目指す社会像、それは自助・共助・公助、そして絆であります」と述べ、「そのためには、行政の縦割り、既得権益、そしてあしき前例主義、こうしたものを打ち破って規制改革を全力で進めます」と約束しました。「規制改革を進め」、「国民のために働く内閣」を作るというのです。
 ここには、菅政権の「社会像」が露骨な新自由主義に基づくものであることが明瞭に示されています。コロナ禍の下で、世界的に新自由主義的な経済効率優先社会への反省が語られ、医療・介護・福祉などのセーフティーネットの充実こそが何よりも優先されなければならない時に、〝まずは自分で何とかしろ〟というのですから呆れてしまいます。
 順番が逆です。何よりも目指すべきは、「公助」によって政府の責任を果たすことです。コロナ危機によって不安を高めている国民に対して、政府がきちんと対策を講ずるから心配ないと、先ずは「公助」の決意と具体的な対策を語るべきだったでしょう。「公助」こそが必要な時に「自助」を語ることの誤りに気がついていないのです。
 かつて、菅首相が総務副大臣のとき、上司だったのが竹中平蔵総務大臣でした。今回、首相となった菅氏はさっそく人材派遣業大手の竹中平蔵パソナグループ会長と会食し、菅内閣として進める規制改革や経済政策についてアドバイスを受けています。その後、安倍前政権の「未来投資会議」を解体して新たに始動させた「成長戦略会議」にも竹中氏を加え、小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長や金丸恭文フューチャー会長兼社長など、新自由主義的な「自己責任」や格差社会を容認する危険な人々を選任しました。
 また、「国民のために働く内閣」というのも、取り立てて強調する必要があるのでしょうか。八百屋の主人が「野菜を売るぞ」と胸を張っているようなものではありませんか。前の政権が「国民のために働かない内閣」だったと言いたいのかと勘繰りたくなります。

 行き詰まりの継承

 菅新政権は安前倍政権の継承を掲げて出発しました。行き詰まった安倍前政権を引き継げば、結局、その行き詰まりも受け継ぐことにならざるを得ません。それは何よりも、新内閣成立のプロセスと人的な構成から明らかです。
 菅氏を担ぎ出して首相の座に押し上げたのは二階俊博幹事長でした。それは石破茂元幹事長の総裁選出を阻むためです。コロナ対策での減収世帯30万円支給案を推進し、国民の批判を浴びて撤回に追い込まれた岸田政調会長では石破氏には勝てないと考えたからです。
 代わりに「令和おじさん」として人気を高めた菅氏を担ぎ出すことで、石破当選を阻止しようとしたのです。その後の経過は二階氏のシナリオ通りの展開となり、菅候補に主要5派閥の支持が集まって菅新首相の誕生となりました。密室談合によって、幕が上がる前にドラマは終わっていたのです。 
 こうして発足した菅政権ですが、その骨格に大きな変化はありませんでした。安倍前政権を支えてきた「3本柱」である菅氏は首相になり、二階俊博幹事長と麻生太郎副総理兼財務相は留任しました。自民党役員では森山裕国対委員長、主要閣僚では、茂木敏充外相、萩生田光一文科相、梶山弘志経産相、赤羽一嘉国交相、西村康稔経済再生相、橋本聖子五輪相の5人が留任し、加藤勝信官房長官、河野太郎行革担当相、武田良太総務相はポストを変えて再任されました。
 党の役員や閣僚として安倍前政権を支えた議員も再入閣し、新入閣はたったの5人です。上川陽子法相や田村憲久厚労相など4人は安倍前政権で閣僚になった経験がありました。菅首相自身は無派閥出身ですが、党役員人事や閣僚ポストは各派閥にほぼ均等に配分されています。
 また、菅首相ら自民党籍の閣僚20人中18人が「靖国」派の改憲・右翼団体である「日本会議国会議員懇談会」と「神道政治連盟(神政連)国会議員懇談会」に加盟しています。菅首相は靖国神社の秋季大祭に際して真榊を奉納しました。未加盟の小泉進次郎環境相も毎年の終戦記念日に靖国神社を参拝しています。極右内閣としての性格も安倍前政権から引き継いだわけです。
 ただし、引き継がなかった面もあります。女性閣僚の数です。前内閣も3人と少なかったのですが、今回はさらに1人減って2人になってしまいました。なぜそうなったのかと問われた菅首相は「華やかさよりも実務をとった」と答えていました。女性閣僚は飾りにすぎず、実務能力で劣るという菅首相の女性観がこの説明にはっきりと示されています。

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12月12日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月12日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「安倍招致も捜査後? すべてが尻切れトンボに国民の怒り」

 医療費負担2倍増の実施時期は2022年夏の参院選後の同年10月以降という公明党の望みを自民も受け入れる方針。つくづく、選挙のことしか考えない連中だが、ちょうど、この年から75歳以上になり始める「団塊世代」を狙い撃ちだ。

 既に75歳以上で現役並みの所得(年収383万円以上)がある人は、現役世代と同じく医療費の3割を負担している。倍増対象者の約370万人が加われば、75歳以上の実に30%が2割以上の負担の網にからめ捕られることになる。

 昨年、厚労省が実施した国民生活基礎調査によると、世帯主が75歳以上の平均可処分所得は年間290万3000円。世帯人員1人当たりにならすと、年間149万7000円に過ぎない。なけなしの年金にも税を課され、月々10万円ちょっとで暮らす人々の実態を、菅政権も大マスコミも理解しているのか。

 「大体、この新型コロナウイルスの感染拡大期に、高齢者の医療費負担を議論すること自体、正気ではありません。高齢者ほど重症化リスクが高く、菅政権も『外出自粛』を呼びかけているのに、『医療費をもっと払え』とは恐るべき二枚舌です。新規感染者も重症者も死者も連日のように過去最多を更新する中、メディアの『医療費引き上げ』のアナウンス効果で、高齢者が受診を控えて健康を害したら、どうするつもりなのか。それでいて『負担2倍増』と報じないのですから、メディアは負担増を小さく見せかけたい菅政権におもねっているように見えます」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 ロッキード事件を例に出すまでもなく、捜査中でも国会での「説明」を求めるのは当然だ。「戦後最大の汚職事件」から半世紀近く。若い世代のために記しておけば、当時は事件の重要関係者が次々と偽証に問われる証人喚問に招致され、その都度、全国にテレビ中継されたものだ。

 政商で知られた国際興業の小佐野賢治氏から、今や常套句の「記憶にございません」が飛び出したのも喚問の場。当時の三木首相がライバルの田中角栄元首相に一泡吹かせたいとの思惑があったとはいえ、「捜査中」を理由に国会に出てこないなんて道理は通らないのだ。

 大マスコミだって安倍にだまされた当事者。連日「安倍は招致に応じろ」と書き立てても、おかしくない立場なのに、そんな怒りはみじんも感じられない。腑抜けだ。
「桜疑惑は“総理の犯罪”です」と、前出の五十嵐仁氏はこう言った。

 「最も法の模範を示すべき総理の事務所が法を犯した疑いは濃厚です。安倍氏本人が裁かれなくても、政治責任は消えません。招致逃れは許されないと、なぜメディアはキャンペーンを張らないのか。東京高検検事長だった黒川弘務氏の賭けマージャンも同様です。法律を順守すべき立場の人が、賭けレートが高額とは言えないなどと口頭注意にとどまり、刑事罰にも問われない。国民感情を逆なでする話なのに、メディアは『テンピンはセーフ』などと訳知り顔で済ませてしまう。黒川氏と雀卓を囲んだメディアにすれば桜疑惑は汚名返上の好機なのに、『秘書の略式起訴』などと検察情報をタレ流すのみ。マージャン仲間の体質は何も変わっていないとしか思えません」

 桜疑惑で立件される見通しの秘書は政治資金規正法違反に問われる。容疑は約4000万円の不記載で、その額から「悪質性が高いと判断された」と大マスコミはしたり顔。だったら少額なら同じ容疑でも許されるのか。検察だって官僚機構のはしくれ。妙な政治家の「起訴基準」は政界とのあつれきを避けたいだけだろう。そこを追及するメディアも皆無だ。


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12月10日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月10日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「やることなすこと国民の敵 菅人災でなぜ自衛隊派遣なのか」

 要するに、政府は国民の命や健康なんて後回し。Go Toが旅行業界を潤すための事業だったように、自分たちの利権優先で税金を使うことを当然だと考えている。8日に閣議決定した追加経済対策も酷いものだ。

 民間投資を含めた事業規模73・6兆円という金額の大きさを喧伝し、経済効果について菅は「国内総生産(GDP)に換算して3・6%程度と見込んでいる」と息巻いた。

 だが、コロナ感染拡大防止はわずか6兆円なのに、環境やデジタルなど“スガ案件”を含むコロナ後のための対策には51・7兆円も充てる。「Go To トラベル」の6月末までの延期分ももちろん計上し、危機的な感染拡大を止める決意はゼロなのである。

 死者急増でもお構いなし。アクセルを吹かせるばかりで、Go Toに固執し、PCR検査を十分に増やすこともなく、東京五輪開催に血道を上げる。そんな政府がいくら予算を組んだって、ザルで水をすくっているようなものだ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「Go To トラベルについては、リスク倍増という東大などの研究チームの調査結果が出た。旅行という移動による人との接触で感染が拡大していることが裏づけられたのですから、今すぐ中止すべきでしょう。この感染拡大は菅政権の人災ですが、それを受けた追加経済対策を見ると、感染拡大を放置するのは、来秋までの解散総選挙を睨んだ予算バラまきのためのショックドクトリンにも思えます。国民の命を犠牲にした火事場泥棒の政治です」

 このままでは本当に国民は殺される。菅政権はヤバすぎる。


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12月8日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月8日付に掲載されたものです。〕

*記事「小池知事がNHK討論で 都外陽性者持ち出し“被害者顔”の醜態」

 小池知事が被害者ヅラして、都外陽性者のことを持ち出したのは、東京都の数字を少しでも小さく見せたいからだ。

 なにしろ小池都政は、重症者の人数まで“都基準”を独自につくり、少ない人数を公表している。東京都の重症者は厚労省基準では246人だが、“都基準”に基づいて59人と発表している(いずれも2日時点)。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「いま小池知事が最優先でやるべきことは、数字合わせではないでしょう。東京と全国の感染者を減らすためには、まず、東京都をGo To トラベルから除外することです。大阪と北海道の知事は、大阪市と札幌市の除外を政府に申し入れています。なぜ、小池知事は東京23区の除外を申し入れないのか。理解に苦しみます」

 まず、感染者の人数を減らす方策を打ち出したらどうだ。


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12月6日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月6日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「科学ではなく意地と利権 止められないGoTo“狂乱”の行く末」

 臨時国会が5日閉幕することを受け、菅首相が4日夕、記者会見に臨んだ。新型コロナウイルスの感染拡大で国民の間に不安が広がっても、かたくなに会見を開こうとはせず、正式な会見は9月の就任時以来。何を話すのかと注目していたら、あまりに拍子抜けのスカスカ会見だった。

 プロンプター(原稿映写機)を使わなかった点は安倍政権を継承していなかったが、用意された原稿棒読みは前政権と変わらず、冒頭およそ18分間にわたって原稿をボソボソ読み上げても心に残る内容は皆無だった。

 「プロンプターを使わない分、ひたすら下を向いて原稿を読むだけで、国民に語りかける姿勢がまったく感じられませんでした。このコロナ禍を乗り切るために、前を向いて力強い政策を打ち出して欲しいのに、国民に勇気や希望を与えるリーダーとしての資質がまったくない。新型コロナに関しての言及も少なく、国民の不安なんて知ったことかと開き直っている感じすらありました。携帯料金の値下げやデジタル庁など自身の肝いり政策についてだけは、とうとうと語っていましたが、国民がいま一番聞きたいのはコロナ対策についてです。どうやって感染拡大を食い止めるのか。その具体策がまったくない。『国民のために働く』という言葉がむなしく響くばかりです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 赤羽国交相は4日の会見で、来年1月末をメドにしていた「Go To トラベル」事業の延長について初めて明言。「制度を段階的に見直しながら(来年)6月末までとすることを基本の想定とする」と言っていた。8日に閣議決定する経済対策に具体策を盛り込むという。

 「この期に及んでGo Toに邁進とは、コロナ感染の火が燃え広がっているのに、水ではなくホースでガソリンをまこうとしているようなものです。首相会見の最後に海外メディアの記者が『二階俊博幹事長が全国旅行業協会の会長だから、他の業界に比べて旅行業界を優遇しているのではないか』と質問していましたが、まさにそういうことで、観光地対策というより自民党の利権を優先しているのでしょう。それでGo Toを強行して感染拡大が進み、医療崩壊が起きたら経済の立て直しどころではなくなるのに、感染が広がるか止まるかは“神のみぞ知る”のギャンブル的な発想で、世紀の愚策を強権的に進めている。国民が実験材料にされているのです。命や健康に関わる局面でイチかバチかは、とても責任ある政府の対応とは言えません」(五十嵐仁氏=前出) 

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12月4日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月4日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「上から下まで金まみれ 安倍・菅政権から漂う腐臭」

 大物ヤクザほど敏腕弁護士を雇うのと同じ理屈で、ヤクザ政権だからこそ、自分たちの悪事が露呈しないよう、黒川弘務東京高検検事長を“闇の守護神”として検事総長に据えたかったのだろう。そう考えれば、国会審議をすっ飛ばし、法曹界から猛反対されても強引な法解釈で黒川検事総長誕生に突き進んだ理由が分かるというものだ。

 そして、河井や吉川に限らず、そんな「ヤクザ体質」を踏襲した菅もまた、怪しい話がゴマンとある。金額を小口化して献金者を隠していた疑惑のほか、週刊ポスト(12月11日号)が<菅首相の2500人パーティー 政治資金報告書に不記載だった>と題して報じた疑惑だ。記事によると、「桜を見る会」の前夜祭問題と同様、菅が地元・横浜のホテルでパーティーを開きながら自身の資金管理団体や政党支部の収支報告書に収支の記載がなかったという。

 2代続けて首相に“怪しいカネ”の疑惑が指摘されるなんて近代民主主義国家として恥ずかしい限り。堕落極まりない腐臭政治に絶望的な気分になる。本来は国民から怒りのシュプレヒコールが起きても不思議じゃないが、なぜか静かなまま。新型コロナ禍で世論は腐臭に対する嗅覚すら失ってしまったのか分からないが、心ある国民にはもはや耐えられないはずだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「すべての原因は安倍前首相、安倍政権でしょう。検察組織の機能を麻痺させ、総理自ら悪事の仕方、逃れ方のお手本を見せていたからです。そして、その安倍政権を官房長官として支え、引き継いだのが菅政権であり、この間、自民党政治家は何をしても責任を取らず、罰せられることもなく、その状況に国民は無力感を覚えてしまった。その結果が今の国家の堕落、政治家の劣化を引き起こしたのであり、いい加減、政治の正常化を取り戻すべき時です」

 検察は今こそ、踏ん張る時だ。

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12月1日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月1日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「迷走政治の犠牲になる 飲食業界は政権NOの決起が必要」

 このままでは、庶民は本当にデタラメ政権に殺されてしまう。与党内に観測が広がっていた来年1月の衆院解散・総選挙について、どうやら菅はコロナ感染再拡大を理由に見送り。来年夏の東京五輪開催以降の解散を模索するようだ。

 感染拡大で五輪は開催すら危ぶまれているのに、おめでたい判断である。世紀の破廉恥政権が選挙から逃げ回るのであれば、国民は目にモノを見せるしかない。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「率先して『Go To』を前倒しした手前、今の菅首相が自ら見直すとは言いにくい。だから、平然と国会で嘘をつき、取り繕う。コロナ対策も自助努力ばかり強調し、記者会見すら開かず国民にロクに説明しない。官房長官時代から『桜を見る会』などの追及をかわし、言い逃れを続けてきただけに、嘘とゴマカシが身に染みついているのでしょう。こんな首相に国民への協力を呼びかけられても空々しさと欺瞞しか感じません。それでも高支持率を維持しているから、国民を見くびり、高をくくっていられる。国民はもっと怒りを可視化させるべきです」

 大ウソつき政権が何を言っても無駄。菅政権に殺されたくなければ、退陣への国民運動が必要だ。特に飲食業界は“クーデター”を決起するくらいの覚悟を持つべきである。


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