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4月20日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』4月20日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「国民の利益は何一つなし “一番乗り訪米”の凄まじい代償」

 わざわざ2泊4日で行く意味があったのだろうか。

 バイデン大統領と対面で会談する最初の首脳になるために訪米した菅首相が18日、政府専用機で帰国。今週中に国会で訪米の成果について報告するというが、一体どんな「成果」があったというのか。

 共同声明で52年ぶりに台湾に言及したことは今後、大きな火種になる。頼みにしていた今夏の五輪開催への支援も得られず、米中対立の危険な網に巻き込まれに行っただけだ。

 もちろん、昨今の中国の動きは度し難い。香港弾圧、新疆ウイグル自治区などでの人権侵害、南シナ海での傍若無人、威圧的な領海侵入――。だが、日本が米国一辺倒の姿勢を鮮明にするほど、安全保障上のリスクを抱えることもまた事実だ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「低支持率にあえぐ菅首相にとって、日米首脳会談は政権浮揚の切り札だった。一時は与党内から『日米首脳会談で支持率を上げて解散・総選挙』という話が出ていたくらいで、米国の後ろ盾をアピールすることが最大の目的でした。そういう政治的思惑が見透かされているから、足元を見られ、バイデン大統領との対面首脳会談に一番乗りという“栄誉”をエサにルビコン川を渡らされたのが今回の日米首脳会談でした。半世紀にわたって避け続けてきた台湾問題で踏み絵を突きつけられ、中国への対決姿勢を鮮明にした。米国の戦略に乗せられ、対中戦略の前線に日本がハッキリと立たされたのです。ボンクラ首相の保身のために、国民は凄まじい代償を支払わされることになります」

 結局、ワシントン滞在中の菅がニューヨークのファイザーCEOと電話で会談だから、まるで漫画である。まさか、国際電話代をケチったわけではあるまいが、電話だけなら訪米前にもできたはずだ。バイデンとも、リモート会談で十分な内容だった。むしろ、日本にとってマイナスしかない会談なら、行かない方がよかったくらいだ。

 「国民には不要不急の外出自粛を求めているのに、コロナ第4波の拡大を放置して外遊する。本来なら医療従事者に回すべきワクチンも、同行スタッフや記者団への2回接種を優先したことからも、国民のことは後回しで私利私欲しかないことが分かります。訪米前に安倍前首相と会って指南を受けたそうですから、米国に追従していれば政権は安泰と言い含められたのかもしれませんが、国民の利益は何一つない。日本国内でのコロナ感染拡大を理由に訪米を延期し、米国の中国包囲網にコミットしないことをにおわせる政治判断もあり得たのに、“飛んで火に入る”で米中衝突に自ら巻き込まれに行った。安倍前政権では集団的自衛権の行使を容認し、安保法を改正、米国産の武器弾薬を爆買いして軍拡を進めて、米艦防護の訓練も積み重ねてきました。そうやって構築されたシステムが、いよいよ実戦で試される時が近づいているのではないか。安倍政権での集団的自衛権行使は中東有事を想定したものでしたが、それが今は台湾海峡や南西諸島が主戦場になっているという現実に戦慄せざるを得ません。台湾有事は、日本国内の米軍基地が攻撃される“日本有事”に直結します」(五十嵐仁氏=前出)

 この差し迫った脅威を大メディアはなぜ伝えないのか。日米首脳会談の「成功」演出に協力している場合ではないはずだ。単細胞の亡国外交は危うい。本気で国益を考えるのなら、外交的戦略も何もない菅を一刻も早く引きずり降ろすしかない。メディアが無批判に政権を礼賛していたら、必ず過ちを繰り返すことになる。

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