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8月15日(日) 前進する市民と野党の共闘、待たれる野党連合政権(その2) [論攷]

〔以下の講演記録は川崎区革新懇の『第18回総会記録集 2021年6月12日』に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

2、カギは市民と野党の共闘

共闘はジグザグに前進
 「古い政治」を転換するカギは市民と野党の共闘にあります。前進はしているのですが、一直線でなくジグザクに進んでいる。しかも共闘の力が権力に近づけば近づくほど、支配勢力は脅威を感じて妨害しようとする動きを強める。昨日、国民投票法、改憲手続き法と言われていますけれども、これが成立しました。反対したのは共産党とれいわ新選組、あとは全部賛成です。
 立憲民主党も賛成しました。立憲民主党は付則でCM規制について3年以内に成案を得るとの条件をつけた。これによって改憲論議をストップさせる手がかりを残しておけると考えて妥協したんです。自民党の方は本体の改憲をすすめるための足がかりを作りたいということで受け入れた。これは「同床異夢」で、改憲条文の議論を始めるのか始めないのかをめぐって次の対決がおきることになります。
 ある意味で、これは立憲民主党の一定の弱さを示したということでもある。なんでそうなったのか。「国民」に対する配慮ということです。一つは「国民」世論。世論調査で9条改憲には反対が多いけれども改憲そのものへの賛成は多数ですから、これ以上は抵抗できないという判断があったんだろうと思います。
 もう一つは「国民」民主党です。立憲民主党は去年の9月以降、かなり変わったからです。どう変わったかというと、幅が広がり多様化した。去年の9月に立憲民主党と国民民主党はともに解散して新しい政党になった。衆参合わせて150人ぐらいの大きな政党になり、国民民主党は10人ぐらいに縮んだ。
 大半の人たちは立憲民主党に入り、残った国民民主党は自民党にすり寄るようになっている。入った人たちも元々立憲にいた人より野党共闘にそれほど積極的でない。労働組合の連合の影響力を受けやすい人たちで、連合はこういう人たちを通じて揺さぶりをかける。妨害工作をやっている。先の3つの選挙でも、連合がああだこうだと言うもんだから、すっきりした共闘にはならなかった。
 実は、もう一つの変化もありました、去年の秋に社会民主党が解散して3分の1ほどの地方組織・地方議員が立憲民主党に入った。立憲民主党は右側が広がったけれど左側も広がった。市民と野党の共闘との関係で言えば連合の反共主義の影響を受けやすくなったと同時に、「共産党と一緒にやるのは当たり前、そうでなければ勝てない」と、社民党から入った人たちは考えている。
 このように、一口に立憲民主党といっても幅が広くなった。それぞれの選挙区や地域・地方によってかなり違いが大きい。市民と野党の共闘に対する姿勢や対応の仕方は色々あり、変わりやすくなってきた。その結果、それぞれの選挙区や地域で我々がどういう働きかけをするかが極めて重要になってきている。

政権が交代した2009年の場合
 妨害工作が強まるもう一つの要因は、いよいよ政権交代が見えてきたということにあります。今度の選挙は衆院選ですから、野党が勝ったら一気に政権が変わっちゃう。政権交代に直結するんです。万一、そういうことになったら大変だということで、自民党だけでなく政・官・財の総体、今までの支配層全体がすさまじい危機感を高めている。だから妨害工作も、これまでになく強いものになっていく。
 こういうなかで、我々は市民と野党の共闘をさらに発展させなければならない。そうすれば変わるんですよ、政権は。2009年の例があります。8月の総選挙で自民党は歴史的惨敗を喫して民主党を中心とする政権が生まれた。この時は鳩山由紀夫さんが首相になりました。前の年にリーマンショックがあり、暮れから正月にかけて日比谷公園で年越し派遣村ができて食糧支援をやった。このときに連合傘下の組合の一部と全労連傘下の組合が一緒に取り組んだ。
 ここから異なる潮流の下における労働組合の共同行動が始まっているんです。それが脱原発運動に引き継がれ、さらに戦争法反対運動での総がかり行動、今日の市民と野党の共闘という流れになります。
 このリーマンショックが起きた2008年の翌年、09年9月に衆院議員の任期満了が予定され、7月に東京都議会議員選挙があった。この都議選で自民党が大敗する。任期満了の9月の前の8月に解散・総選挙が実施されますが、この選挙で自民党は歴史的惨敗に追い込まれ政権を失いました。
 今年も、昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大という大きな問題があった。青年・学生・ひとり親の女性など生活困窮者への食糧支援も取り組まれている。政権の無能さやスキャンダルに対する批判もドンドン広がっています。内閣支持率が下がって来ているなかで、7月に都議会議員選挙があり10月に衆院議員の任期満了が予定されている。おそらく9月に解散して10月に総選挙が実施されます。
 政治日程がよく似ているんですよ、政権が交代した2009年と。このよく似た政治日程の下で、よく似た政治的結果が生み出されるかどうかは分かりませんが、少なくともその可能性はある。その過程だけでなく、その結果も似たようなものになる可能性が高まっていると言えるのではないでしょうか。

菅首相のねらいと都議選の重要性
 こういう状況の下で、オリンピック・パラリンピックが開催されるわけです。菅首相は、何とかこれらを成功させ、「やったやった」と盛り上げて国民を熱狂の渦に巻き込み、解散・総選挙になだれ込んでいくという作戦を狙っているように見えます。そのためにはコロナ感染を下火にしなければなりません。
 そのカギはコロナ・ワクチンの接種です。ワクチン接種をシャカリキになってやろうとしているのは、ワクチン接種によって感染を下火にしてオリンピック・パラリンピックを成功させ、苦しい状況を何とか打開したいと考えているからです。
 しかし、解散できない可能性もあります。コロナ感染が下火にならずオリンピックも成功せず。内閣支持率が下がってしまった場合です。そうなれば、解散できずに任期満了選挙を迎えた1976年の時と同じになります。これは戦後唯一の任期満了選挙ですが、そうなるかどうか。一つのポイントは7月の東京都議会議員選挙の結果です。
 『東京新聞』の世論調査では、自民党が19・3%、公明党が3・4%、足して22・7%。立憲民主党が14・0%、共産党が12・9%、足して26・9%。都民ファーストが9・6%という支持率になっている。興味深いのは、自民党と公明党を足した支持率を立憲民主党と共産党を足した支持率が上回っていることです。1人区でもうまくすれば勝てる、そういう状況になっている。オリンピック・パラリンピック中止が60%、菅内閣の支持率が16・1%です。都民の2割も支持していません。

政権を共にする覚悟を迫る
 こういう状況の下で、どういう形で活路を開いていくかが問われています。定数1の小選挙区の場合、すみ分けや選挙共闘が必要です。お互いにバッティングしないようにし、選挙協定を結ぶ。さらに、エールを送るとか相互支援をする。総選挙の場合ですと、政策協定を結んで政権共闘、政権をともにすることをめざす。
 立憲民主党が腹を固めることが必要です。ただ選挙で応援してもらえればありがたいという程度の話では、国民に自公政権に対抗する受け皿を示す点で十分なものになりません。先ほど言いましたが、立憲民主党は選挙区や地域によって多種多様になっています。草の根でどう働きかけるかによって対応の仕方は千差万別です。
 党首の枝野さんが何か言っているからといって安心してはいけない。悲観してもいけない。それぞれの選挙区の中で立憲民主党という組織がどのような方針をもって、どう動こうとしているか。そのことをきちんと見極めて働きかけを行う。それぞれの選挙区での下からの働きかけ次第でいくらでも展望が開けてくるという状況になっています。
 とりわけ、政権共闘に共産党を入れることがポイントです。これは共産党のために必要なんじゃない。新しい政権がきっちりとしたものになるために、かつての民主党政権のような裏切りや自己崩壊を防ぐために、ああいう過ちを繰り返さないためには、きちんとした「つっかえ棒」が必要だからです。共産党という「鉄筋」を入れなきゃならない。コンクリートだけじゃ壁はもろい。鉄筋だけでは壁にならない。両方が組み合わさってはじめて、ガッチリとした鉄筋コンクリート製のビルができる。
 野党の連合政権ができても立憲民主党だけではもろい。そのもろさが、今回の国民投票法の改定をめぐる経緯の中で明らかになった。せっかく連合政権ができたのに、すぐに間違いを犯したり自己崩壊を遂げたり、期待を裏切ったりということにならないために、中にしっかりした「鉄筋」を入れる。同時に、草の根でそれを支える力が必要です。そして、これこそ革新懇の役割なんですね。

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8月14日(土) 前進する市民と野党の共闘、待たれる野党連合政権(その1) [論攷]

〔以下の講演記録は川崎区革新懇の『第18回総会記録集 2021年6月12日』に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

はじめに

転換は不可避
 みなさん、こんにちは。今日は「前進する市民と野党の共闘、待たれる野党連合政権」という表題でお話させていただきます。「待たれる野党連合政権」というテーマで話ができる時代になったということです。大変感慨深いですね。
 もう、「変えなきゃならない」「変わらなければならない」ということです。転換は不可避になってきている。それは、日本だけの問題じゃない。世界全体がそうであり、その世界全体の転換の一部として、日本の政治・経済・社会がいま変わろうとしているということなんです。
 なぜ、そうなるのか。パンデミックという感染症の大拡大は、いままでにも何回かありました。そのたびに世界史は大きく変わってきたからです。ペストが大流行した中世では、神様に頼んでも防げない、神様も信用できないということで宗教改革に結びついた。人口が減って労働力が足りなくなる。庶民の発言権が強まり領主の力が弱まって人間賛歌のルネサンスが起こる。
 第1次世界大戦の終り頃にスペイン風邪が流行りました。戦争とスペイン風邪で人間がどんどん死んでいき、非常な貧困状態に陥ってしまった。そのために、戦争が終わってからドイツに過酷な戦後賠償が請求された。これはドイツを苦しめ、ひいてはヒットラーとナチスを台頭させる歴史的な背景になりました。

新自由主義への反省
 いま、新型コロナウイルスの感染が拡大し、同じ資本主義の国々でも対応は様々で、抑え込むことに成功した国とそうでない国に分かれている。そういうなかで政治のあり方、とりわけ医療・介護・福祉などのケア労働の重要性が見直されてきました。今まで、こういうものは不要だといって削られてきた。効率最優先ですよね。健康や病気にならない、こういったものは自己責任だということで、公的な保護をどんどん切りすててきた。これが新自由主義です。
 しかし、コロナ禍のもとで新自由主義的な自己責任、効率優先というやり方は間違っていたのではないかと、今までの政治のあり方に対する反省と見直しが生まれた。アメリカでのトランプ大統領の敗北の背景になったのは、コロナを軽視して感染拡大を抑えられなかったことへの批判です。こういうこともあって、新自由主義に対する反省から、さらに資本主義という仕組みそのものが問題なのではないかという考え方も出てきています。

「新しい政治」の必要性
 こういうなかで、「古い政治はもうだめだ。新しい政治を実現しなければ、わたしたちの健康も命も生活も営業も守ることができない」ということが世界的にあきらかになった。いまG7サミットが開かれていますけれど、ここで大企業は儲けすぎだ。企業減税を一定のところでストップさせるべきだという考え方も出てきている。15%を下回らないということで合意した。
 大企業の儲けすぎを規制して、貧しい人に再配分するべきだと、こういう考え方が当たり前のこととして出てきている。気候変動をストップさせるには、資本のやりたい放題を規制しなければならない。国民の生活、命や安全を守るためには、きちんとした公的な政策が必要だということが当たり前の考え方として出てきました。
 まっとうで当たり前の政治、開発ではなく福祉、効率優先ではなくケアを重視する。貧困を解決して格差を是正し、何よりも人権を大切にする。これが共通の認識として広がってきている。こうして、国際的にも「新しい政治」に向けての動きが徐々に始まってきています。
 今までの政治的対立は左派か右派かなんです。今の政治的対立は、それに加えて新しく政治を変えていく展望を示すことができるかどうか。新旧の対立なんですよ。「古い政治よ、さようなら。新しい政治よ、こんにちは」と。いま、まさに世界はそういう方向に変わりつつある。歴史がここまですすんできたということではないでしょうか。

1、「古い政治」の破綻と行き詰まり

命を守れない自公政権
 日本でも「古い政治」の破綻と行き詰まりは明らかです。とりわけ安倍・菅政権は、政治がどのように破綻し行き詰まっていくのかを示すお手本のようなもので、めちゃくちゃです。自公政権の破綻はもはや覆いがたい。
 政治の最大の役目はなにか。命を守ることですよ。命を守れない、コロナ感染が拡大し、どんどん重症化して亡くなっている。病院に入れずに、自宅で待機している間に亡くなっている人がふえている。大阪は完全に医療崩壊状態です。今まで、維新が公立病院をどんどん減らし看護師養成学校を減らしてきて、今になって看護師が足りない、国に何とかしてくれと泣きついています。
 こういう状況の下でオリンピック・パラリンピックをやると、菅首相はG7で約束してしまった。コロナ感染といういわば「火事」が燃え盛っている中で「焼肉パーティー」をやろうというようなものです。肉を焼いておいしかったという間もなく焼け死んでしまう。
 こういう大変な状況が拡大しているにもかかわらず、6月16日に会期が終わるから通常国会をそのまま閉じようとしている。閉じるべきは国会ではなく、オリンピックでしょう。燃え広がっている「火事」の消火のために出動してきた消防隊が、「勤務時間が終わりましたから、これで帰らせてもらいます」と引き上げてしまうようなものではありませんか。それで良いのか。まだ火が燃えていて鎮火していないというのに。

コロナ対策の大失敗
 政治破綻の象徴がコロナ対策の大失敗です。菅さんは安全安心の大会を開きたいと言っていますけれど、オリンピックを開きたければ、その前提条件をちゃんと整備しておくべきだったんです。今だって緊急事態宣言の最中でしょう。コロナ感染の収束に成功していないからです。成功していれば3回目はなかった。3回目だって、当初の期間に収束していれば延長する必要はなかった。東京は2回も延長している。
 オリンピックが始まれば毎日30万人以上が動く。人流を止めると言いながら「世界の国からこんにちは」。東京に来ないでくださいと言いながら、世界各地から選手団の派遣を求める。こんなダブルスタンダードはありません。当然、感染リスクが増大する。
 先日の党首討論で、これだけ感染リスクがあるのに、それでもなおオリンピック・パラリンピックを開く理由は何かと、共産党の志位さんが質問しても菅首相は答えない。答えられないのです。国民の命よりもオリンピックが大切なのか。祭りを中止しなさいと言いながら、スポーツの祭典だけは別だという。
 人流をふやせば感染リスクがあがると言いながら、幼稚園から高校生まで90万人ほど動員してオリンピックを見せると。選手には公共交通機関を使うなと言いながら、動員する生徒や子どもたちは公共交通機関を使って競技場に行くことになる。こういうちぐはぐな、自分たちも何をやっているのかよくわかっていないのではないかというようなことをやっている。
 感染拡大を阻止するためにやるべきことをきちんとやってこなかったのが最大の問題です。PCR検査をやって実態を明らかにする、大量検査をしてどこにどういう感染者がいるかを明らかにして患者を保護し、医療体制が破綻しないように支援する。休業要請や時短要請に対しては確実に補償を行う。これらをきちんとやってこなかったから、いつまでたってもダラダラと感染が続く。それなのに、オリンピックをやりたがる。危ないという状況をつくりだしたのは菅首相じゃありませんか。オリンピックに対する国民の疑念や批判を高めてきたのは菅首相自身だ。
 オリンピック開催のための前提条件をきちんと整備することに失敗したから、いまこういう状況になっている。統治能力の欠如というほかありません。
オリンピックをやりたい、経済を何とかしたい、支持率を高めたい。こういうよこしまな考えにとらわれて、感染阻止のために全力を集中できない。「国民の皆さんに犠牲をお願いしなければならない、心苦しい」と言いながら、きちんとした説明もしなければ、責任もとらない。質問されてもはぐらかし、まともに答えようとしない。これが菅首相です。
 最近、こういう対応の仕方は「ヤギさん答弁」と言われています。法政大学の上西さんが、「朝ごはん答弁」で有名になりましたけれども、最近は「ヤギさん答弁」。白ヤギさんが出した手紙を黒ヤギさんは読まずに食べた。菅さんは聞かれたことをちゃんと受け止めずに無視して食べちゃうようなものだというのです。こういう答弁をくりかえしてきた。信用できない人のお願いや要請を、国民がまともに受け止めて従えないのは当然でしょう。

判断ミスと愚策の連続
 判断ミスや愚策の連続は安倍前首相から始まっている。
 去年からのことを思い返してみればアベノマスク。あのちっちゃいマスクを付けたのは、安倍さんだけではありませんか。小中高の一斉休校も、子どもを犠牲にしただけで何の効果もなかった。
 典型的な愚策は「GOTOキャンペーン」です。「GOTOトラベル」に「GOTOイート」。まだ感染が収まっていないのに前倒しでやっちゃった。「不要不急の外出を控えてください」と言いながら、「旅行に行こう」ですよ。「なんじゃこれは」です。
 自民党の二階幹事長は「全国旅行業協会」の会長さんなんですね。だから、なんとか旅行業界を活性化しなければならないと考えた。そこで「GOTOキャンペーン」を前倒しして第2波、第3波をひきおこし、慌てて緊急事態宣言の再発令ですよ。そして、まん延防止等重点措置という新しい方策まで打ち出した。今や、まん延防止措置がまん延している状況です。
 本当に、馬鹿なことを平気でやってきた。去年の暮れの臨時国会も、再拡大のリスクが高まっているときに閉じてしまい、延長しなかった。今回と同じです。結局、そのあとに第3次補正予算をくんで1月末くらいから実施した。ちゃんと国会を開いていれば、もっと早く手当てできたはずです。しかも、このときの補正予算も、結局コロナ対策に2割強で、あとはポストコロナの経済対策だ。まだ収まってもいないのに、その先のことを考えている。本当にもう、アホかと言いたい。
 私のところに、昨日も夕刊紙の『日刊ゲンダイ』から電話があって、「こんなのでオリンピックできるんですか」と聞かれました。できるはずないのにやる気でいる。戦時中と同じで、全滅覚悟の「バンザイ突撃」です、これをまたやろうとしている。愚かな戦争指導者の下で、日本は破滅の危機に瀕した。今も同じように破滅の危機に瀕している。
 オリンピックも愚策の「遺産」として残るのではないか。おそらく原発のように。東京電力柏崎・刈羽発電所で、工事が終わったと言っていたのに終わってない箇所が70カ所もあった。嘘とでたらめ。オリンピックはどうなるかわからないけれど、通常の医療業務、コロナ対策、ワクチン接種、熱中症、オリンピックへの対応、これら全部の負担がお医者さんや看護師さんに押し寄せる。「勘弁してくれ」という悲鳴が上がっているなかで強行する。まさに「呪われたオリンピック」と言うしかない。招致に当たっての買収疑惑、「アンダーコントロール」という嘘、エンブレムの模倣、新国立競技場の設計変更、オリンピック組織委員会森会長の女性蔑視発言と不明朗な後継者選びがあって選びなおす。これでもか、これでもかという形で問題が出ている。歴史に残る「負の遺産」になるでしょう。

政治の腐敗と私物化、時代遅れ
 政治の腐敗と私物化も深刻です。これは政・財・官の構造的癒着によるもので、長期政権が背景にある。森・加計・桜問題などという数々の疑惑が安倍政権の時に生じました。河井夫妻による買収疑惑では1億5000万円が自民党から支出された。それを誰が決めたのか。二階幹事長は「私じゃない」と言い、菅さんも「私じゃない」と言う。じゃ安倍さんしかいないじゃないですか。こういう問題がおこっているわけです。
 菅政権の下でも息子さんの接待疑惑が発覚した。それに関連して出てきたのが総務省官僚への接待です。32人が接待を受けていた。菅原前経済産業相の略式起訴もあった。次々と出てきている。横浜で問題になっているのが太陽光発電の会社のテクノシステムで、神奈川選出の国会議員と深いかかわりがあり、小泉親子の強力な支援者。こういうつながりを背景に補助金をかすめ取った詐欺罪で3人が逮捕されました。スキャンダルや政治とカネの問題、長期政権に伴う政治の私物化、公私混同が生まれている。
 もう一つ、最近の自民党議員の頭の中はどうなっているのかと言いたくなるような問題も表面化しています。時代遅れもいいところで、日本国憲法制定以前だ。戦前どころか江戸末期の「尊王攘夷」思想のようなもの。「夷敵」の排撃ではなく「異論」の排撃。日本学術会議会員6人の任命拒否事件です。
 学術や科学技術、専門家に対する菅政権の軽視はコロナ対策でもはっきりしています。学術を尊重せず、言うことを聞かないからと排除する。日本学術会議から「学術」をとったら「日本会議」になっちゃう。政府にたてつかない、文句を言わずに軍事研究を一生懸命やるような組織・団体に変質させようとしている。
 古い思考の中でも、特に異端に対する差別、少数者や外国人、女性、性的なマイノリティなどへのヘイトが目立ちます。こういう考え方は改定入管法やLGBT法をめぐる自民党議員の発言などに端的に示されている。改定入管法は結局取り下げということになりました。こういう時代遅れ、時代錯誤の人たちは、もう取り替えなければなりません。その絶好のチャンスが秋に行われる総選挙ということになります。

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8月13日(木) 書評:小林節著『「人権」がわからない政治家たち』 [論攷]

〔以下の書評は『全国革新懇ニュース』第431号、2021年7・8月号に掲載されたものです。〕

 新型コロナ対策の迷走から暴走へ、無策の果てに愚策を振り回すようになった菅政権に、多くの国民は怒っているにちがいありません。オリンピックも「観客不在」どころか「国民不在」で、人々の不安を高めています。
 このようななかで、政治を変えたい、変えなければならないと願う人びとにとっての強力な援軍が登場しました。それが本書です。きたるべき総選挙で「人権」がわからない政治家たちを一掃し、政権交代を実現するための力強い武器となるにちがいありません。
 自民党のイデオローグで「護憲的改憲論」者だった著者の自民党「壊憲」論に対する反論には独特の説得力があります。舌鋒鋭く「権力の一元化と私物化」を批判し、「まずは政権交代」による「大掃除」が「何よりも急務」で、野党共闘にとって「人心一新」こそが「統一の旗」だとの指摘は傾聴に値します。


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8月12日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』7月26日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「汚れた東京五輪開会式 実況生中継するテレビ局の正体」

 そもそも、4時間もかけて、開会式をやるべきだったのかどうか。NHKは一言も触れなかったが、あの開会式は「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」などと、ホロコーストをコントの材料に使っていたことが発覚し、“ショーディレクター”を解任された男が総合演出したものだ。ホロコーストは600万人が犠牲になり、ドイツ人でも障害者は殺害の対象になった最悪の大量虐殺である。米国のユダヤ人人権団体が、「どんな人にもナチスによるジェノサイドの被害者をあざ笑う権利はない」と非難声明を出したのも当然だった。

 ところが、菅政権も大会組織委員会も、問題人物を解任しただけで、演出内容を変更することもなく、そのまま進めたのだから信じられない。

 問題の発覚後、さすがに組織委の理事20人が、「開会式の中止」か「簡素化への変更」を、組織委の武藤敏郎事務総長に申し入れたが、武藤事務総長は握り潰してしまった。菅政権も「予定通り実施する」と強行突破している。これでは、ホロコーストの揶揄は、無知な一個人の問題ではなく、日本の問題になりかねない。

 「もし、開会式を中止していたら世界へのメッセージになったはずです」と、法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「ホロコーストを揶揄していた問題は、開会式が行われる前に発覚しています。中止することも演出を変更することも可能だったはず。なのに、そのまま突き進んでしまった。もし、菅首相が“わが国はホロコーストを許さない”と表明し、潔く開会式を中止していたら、日本を見る世界の目も変わったはずです。
 日本は絶好のチャンスを逃してしまった。それでなくても、あの開会式は、音楽を担当していた人物がイジメ自慢をしていたことが発覚するなど、問題だらけだった。それもこれも、五輪の理念を理解しようとせず、“楽しければいいんだろう”“受ければいいんだろう”という商業的な発想で担当者を選んだからです」

 NHKと民放各局は、これから連日「日本中が感動しました」「これこそ五輪の力です」と、あおってくるだろうが、もう国民は感動の押し売りにだまされない。

 「本来、スポーツは人を感動させる力があります。でも、この東京五輪は、素直に感動できないという人も多いでしょう。スポーツは公正公平でなければいけないが、コロナ禍の東京五輪は、日本人選手が圧倒的に有利だからです。本当は外国人選手も日本で合宿を行い、日本の蒸し暑い夏に体を慣らしたいはずですが、コロナ禍では難しい。コーチの帯同も人数制限されている。スポーツに詳しい日本人は、そうした事情も理解したうえで、日本人選手に声援を送るのだと思う。なのに、テレビが、“日本やった、やった”と騒いだら、逆にしらけさせるだけです」(五十嵐仁氏=前出)

 このまま無批判に五輪称賛報道を続けていたら、NHKも時代錯誤の組織だと国民に見放されるだけである。

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8月11日(水) 手術を終えて無事に退院することができた [日常]

 生還しました。と言っても、死にそうになっていたわけではありません。
 手術のために病院に入っていたのです。先ほど、退院してきました。

 前回、このブログを更新したのは7月24日のことです。その日の午後に、入院しました。
以後、今日まで病院に入っていました。この間、ブログの更新が途絶えたのはそのためです。
 読者の皆さんには、ご心配をおかけしたかもしれません。改めて、お詫び申し上げます。

 入院したのは、悪化すればガンになる可能性の高い腫瘍を切除するためでした。4月の精密検査で発見され、その後、何回か検査を繰り返した結果、早期に手術した方が良いだろうということになったからです。
 かなり大きな手術で7~8時間もかかると言われましたが、実際には5時間ほどで済んだようです。全身麻酔でしたので、詳しいことは分かりません。
 術後の経過も順調で、1ヵ月ほどの入院予定が早まり、3週間もかからずに退院できました。ヤレヤレ、です。

 私が手術した7月26日に、東京都は通常診療の制限を視野に入れるよう通達を出しました。予定していた手術も延期するようにというのです。
 後でこのことを知り、大きな怒りを覚えました。私の場合、「滑り込みセーフ」でしたが、診療してもらえなかったり手術を遅らせたりされた人がいたかもしれません。
 この通達によって、病気やケガを直すために必要な診療や手術ができなくなり、その結果、人命が危険にさらされるようなことがあっても良いのでしょうか。これこそ命の選別にほかなりません。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって医療機関がひっ迫し、ベッドが足りなくなりそうだというのが、その理由です。だから、言ったじゃありませんか。
 オリンピックなんか止めて全力で感染阻止に取り組まなければ大変なことになると。結局、オリンピックの開催を強行し、日本選手のメダルラッシュに浮かれて「楽観バイアス」が広まり、感染爆発を引き起こしてしまいました。
 医療崩壊はこのような菅政権の無能と愚策の結果ではありませんか。そのツケを医療従事者や患者に回すことが許されるのでしょうか。

 このようななかでも、医療に携わる医師や看護師は大変な努力をしています。患者の一人としてその奮闘ぶりをつぶさに目撃した私としては、これらの人々の努力に報いるためにも、処遇の改善と支援体制の充実、まともな政治を実現しなければならないと決意を新たにした次第です。
 愚かな政府の愚かな対策に翻弄されている医療従事者の皆さんの献身には頭が下がります。入院中は私も筆舌に尽くしがたいほどのお世話になりました。
 改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

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