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12月29日(水) 2021年の仕事 [日常]

 公私ともに試練に直面した一年でした。
 公的な面では、秋の総選挙で与党が勝利し、自公政権が維持されるという残念な結果となりました。共産党を含む野党共闘によって政権交代にチャレンジするという初めての試みでしたが、与党勢力の必死の巻き返しによって跳ね返されたわけです。新型コロナウイルスの感染拡大が一時的に収まったことも、与党に有利に働いたと思われます。
 私的な面では、エコー検査ですい臓に疑問ヵ所が発見され、2度入院して手術しました。1回目は総胆管結石の摘出で3日間、2回目は膵管内乳頭部粘着性腫瘍(IPMN)の除去で19日間の入院です。幸い腫瘍はガンではなく転移もしていませんでした。9月からは普通に生活しており、全く問題ありません。年の瀬が近づいてから、妻の叔父夫婦や近しい先輩が亡くなるなど、悲しい知らせも相次ぎました。
 その2021年も、間もなく暮れようとしています。

 さて、 例年のように、1年間の仕事をまとめさせていただきたいと思います。今年は手術のために夏に空白が生じましたが、総選挙があったために仕事も多く、著書の第3版が1冊、共著が1冊、論攷・インタビュー・談話・コメント・書評などが29本、講演・報告などが24回、街頭演説・あいさつなどは11回で、夕刊紙『日刊ゲンダイ』の記事内でのコメント掲載は105回に上るなど、例年とそれほど大きくは変わりませんでした。
 
(1) 著書
・五十嵐仁『18歳から考える日本の政治〔第3版〕』法律文化社
・五十嵐仁・小林節・高田健・竹信美恵子・前川喜平・孫崎享・西郷南海子『市民と野党の共闘で政権交代を』あけび書房

(2) 論攷・インタビュー・談話・コメント・書評など(29本)
・「被爆国日本に〝核兵器禁止条約に参加する政府〟を実現し、〝非核の政府〟の展望開く年に」『非核の政府を求める会ニュース』第355号、2020年12月15日・2021年1月15日合併号
・「野党の本気の覚悟示す政権合意を求める」『しんぶん赤旗』1月6日付
・「2021年の政治動向と国会をめぐる情勢―野党共闘で政治を変えるチャンス」『婦民新聞』第1667号、2021年2月10日付
・「最後の自公政権 菅政権を斬る」『日本科学者会議東京支部個人会員ニュース』No.128、2021年3月10日
・「「戦争法」施行から5年 憲法記念日の今考える」『民主青年新聞』3087号、2021年5月3日付
・『しんぶん赤旗』5月31日付
・「不安のツートップ 五輪乗り切れるのか」『東京新聞』7月17日付
・「野党連合政権への道―今こそ「新しい政治」をめざそう」『学習の友』2021年7月号
・「書評:小林節著『「人権」がわからない政治家たち』」『全国革新懇ニュース』第431号、2021年7・8月号
・「前進する市民と野党の共闘、待たれる野党連合政権」川崎区革新懇の『第18回総会記録集 2021年6月12日』
・「「東京25区市民連合連絡会/選挙で変えよう!市民連合おうめ」へのメッセージ」「東京25区市民連合連絡会/選挙で変えよう!市民連合おうめ」
・「国民の命を守る国会開け」『しんぶん赤旗』8月31日付 
・「自民党政治を終わらせ、青年の声が届く新しい政権を」『民主青年新聞』第3095号、2021年9月6日付
・「共闘の力で野党連合政権の実現を」『北区革新懇ニュース』第88号、2021年9月20日付
・「緊急出版『市民と野党の共闘で政権交代を』」『asacoco』第216号、2021年9月2日付
・「「活路は共闘」総選挙でも」『東京民報』2021年9月26日付
・「野党連合政権の樹立で日本の食と農を救おう」『農民』第1474号、2021年9月27日付
・「統一を妨げているものは何か 歴史認識と「反共主義」の克服―いま「連合」を考える」『法と民主主義』第561号、2021年8・9月号
・「野党共闘で新しい連合政権の実現を」『全国商工新聞』第3477号、2021年10月4日付
・「野党分断を狙った新たな反共攻撃」『不屈』No.568、2021年10月15日付
・「安倍支配を継続する岸田政権 「ハト派」の幻想振りまく」『連合通信・隔日版』No,9686、2021年10月14日付
・「野党結束 政権交代へ 「協力合意」歓迎」『しんぶん赤旗』2021年10月2日付
・「共闘の力で科学と学術を尊重する新たな政権の樹立を」『日本科学者会議東京支部つうしん』No.648 、2021年10月10日付
・「10・31総選挙 政権を変えるしかない!」『連合通信』No.1307、2021年10月20日号
・「いのちと立憲主義をどう守るか」『調布「憲法ひろば」』第197号、11月3日付
・「民意は「安倍・菅継承ノー」」『しんぶん赤旗』11月3日付
・「ハト派・リベラル派の衣をまとった「安倍背後霊」政権―-岸田文雄新内閣の性格と限界」『治安維持府と現代』2021年秋季号、第42号
・「総選挙の結果をどうみるか」『学習の友』No.820 、2021年12月号
・「総選挙の結果と野党共闘の課題」『安保廃棄』第487号、2021年12月号

・以上のほか『日刊ゲンダイ』の記事内でのコメント掲載が105回

(3) 講演・報告など(24回)
・2月14日:基礎経済研研究会「菅政権と「新しい政治」への展望」
・3月6日:市川克宏地域学習の集い「日本を変える―「新しい政治」への展望」
・4月24日:69九条の会「菅政権発足から8カ月、明らかになったことは……」
・5月18日:三多摩革新懇世話人会「都議選・総選挙を控えての情勢について」
・5月22日:京都革新懇「『市民と野党の共闘』を 広げ、野党連合政権で新しい政治を!」
・5月28日:八王子憲法カフェ「コロナパンデミックのいま、日本と世界の情勢は?」
・6月9日:八王子科学フォーラム「都議選・総選挙を前に「新しい政治」の展望を語る」
・6月12日:川崎革新懇「前進する市民と野党の共闘、待たれる野党連合政権」
・9月18日:三多摩革新懇9月度世話人会「総選挙をめぐる情勢と特徴」
・10月14日:三多摩革新懇10月度世話人会「新内閣発足と総選挙をめぐる情勢」
・10月17日:狭山9条の会「憲法の理念を生かして政治を変えよう」
・10月31日:調布九条の会「憲法ひろば」「総選挙と日本の進路―いのちと立憲主義をどう守る?」
・11月3日:日野革新懇「政権交代が大争点の総選挙の結果をどうみるか―市民と野党の共闘はどう発揮されたか」
・11月7日:法大同窓生九条の会「総選挙の結果とその後の情勢を考える」
・11月10日:都職労退職者九条の会「総選挙の結果とこれからの課題」
・11月17日三多摩革新懇11月度世話人会「総選挙の結果をふまえて―反共主義を克服するには」
・11月23日:なかいた常盤台9条の会「総選挙の結果と市民と野党の共闘」
・11月27日:9条の会@よしかわ「総選挙の結果と9条改憲の行方」
・11月28日:八王子学術・文化日本共産党後援会「政権交代への課題と展望―総選挙の結果から見えるもの」
・12月4日:69九条の会「2021年総選挙の結果をどうみるか、改憲をめぐる現段階」
・12月8日:大田革新懇「総選挙のたたかいに学び、市民と野党の共闘の前進をめざして」
・12月11日:越谷革新懇「総選挙の結果と日本政治の展望」
・12月11日大宮区革新懇「総選挙の結果と革新懇の任務」
・12月12日:立川革新懇「総選挙の結果と革新懇運動の課題」

(4) 発言・街頭演説・あいさつなど(11回)
・1月30日:東京革新懇総会:あいさつ
・2月27日;東京革新懇事務局長会議あいさつ
・4月8日:日野市長選挙応援スピーチ
・6月21日:都議選応援スピーチ(文京区)
・9月8日:革新都政の会呼びかけ人会議集会あいさつ
・9月24日:全国革新懇賛同団体懇談会でのあいさつ
・10月6日:新宿駅西口でのスピーチ
・10月23日:総選挙応援スピーチ(東大和)
・10月24日:総選挙応援スピーチ(八王子)
・11月14日:労教協第2回理事会での発言
・12月19日:東久留米市長選第1声応援スピーチ

 皆様、良いお年をお迎えください。

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12月28日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月28日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「この予算でトクするのは大企業と自民党 成長は「バラまいた分だけ」という刹那」

 総裁選で「新しい資本主義」を掲げて勝ち、首相に就任した岸田は10月に「新しい資本主義実現会議」を発足させたが、会議がグランドデザインと具体策を取りまとめるのは来春である。

 「会議では、まず『新しい資本主義』を定義するところから始めます。具体策以前の話で、要するに、『新しい資本主義』とは何なのか、総理自身の考えが定まっていないのです」(官邸関係者)

 それでよくもまぁ著書に「岸田ビジョン」なんてタイトルをつけたものだが、岸田自身にビジョンも理念もないから、予算案だって何の目新しさもなく、安倍・菅政権の踏襲で既存の「古い政策」がズラリと並ぶだけになる。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「コロナ禍で仕事を失った人や生活困窮者などケアが必要なところへの手当ては後回しにして、防衛費を過去最大に増やしたところに岸田政権の正体が見える。臨時国会で成立した補正予算でも不要不急の武器弾薬を購入しているし、ローンによる分割払いの『後年度負担』もあって、防衛関連費は膨らんでいく一方です。在日米軍の駐留経費負担を『思いやり予算』から『同盟強靱化予算』に名称変更して増額するというのも、言い方を変えてゴマカす安倍元首相と同じ手法です。国民より企業・団体を重視して予算を配分するのも古い自民党のやり方で、来夏の参院選を意識しているのでしょう。企業を潤わせれば、それが票になり、献金になり、自民党に還元される。巨額の税金を使ってトクをするのは大企業と自民党という構図は何も変わっていません」

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12月26日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月26日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「胡散臭い利害と打算 安倍元首相と岸田首相「本当の関係」」

 モリカケ桜といったアベ疑惑についても、完全に封印するつもりだ。多くの国民が求める森友問題の再調査について国会で問われても「結論が出ている」と拒否し、日本学術会議の任命拒否問題にも正面から向き合わなかった。森友問題を追及した共産党の小池晃書記局長が、「真摯にやると言いながら、結局具体的なことは全部否定する。安倍政権と同じじゃないか」と批判していたが、その通りだ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「安倍元首相は野党の批判に耳を傾けず、色をなして反論するケースが目立ちました。それに比べると岸田首相は国会で野党の質問にうなずき、メモを取る姿を見せているため、真摯に対応しているように映りますが、答弁は中身が空っぽで、ほとんどゼロ回答。『聞く力』を掲げていますが、実際は聞くようなそぶりを見せて、説明から逃げている。2人とも『批判に耳を傾けない』姿勢が共通しています」

 安倍の意を受けてか、岸田は「改憲」や「敵基地攻撃能力の保有」にまで前のめりになっている。

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12月25日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月25日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「岸田政権で大丈夫か 列島を覆う第6波感染爆発前夜の不安」

 直近の世論調査では、前任の菅政権と打って変わって、岸田政権のコロナ対策について「評価する」が「評価しない」を上回った。もっともそれは、感染者数が低く抑えられ、世論心理が安定していることが背景にある。現実には感染予防への国民の努力あってこそなのだ。岸田の手腕とは言い難い。

 岸田が多用する「しっかり」「検討」という言葉は、前例踏襲や現状維持で何もやらない“官僚答弁”のたぐい。ワクチン供給不足や検査体制不備が放置されるのは、安倍・菅政権のコロナ失政の反省や総括が行われていないからだろう。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「岸田首相はアベノマスクの廃棄を決めましたが、政策として何が問題だったか、責任の所在はどこにあるのか明らかにしていない。臭いものにフタの幕引きでは今後の教訓になりません。水際対策の大穴となった沖縄の米軍基地のクラスターについても、日本への出入国自由の米軍基地の問題点は以前から懸念されていたことです」

 第6波の足音は確実に近づいているのに、この政権で大丈夫か。

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12月21日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月21日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「“粉飾アベノミクス”に断罪を 日銀はいよいよ「出口なし」」

 結局、粉飾アベノミクスと禁断の異次元緩和がもたらしたのは株高のみ。それも、実体経済を反映せず官製相場ではね上げたに過ぎない。市場にあふれたマネーが設備投資や人件費に回る好循環は、安倍の首相在任中から今の今まで一度も生じていない。

 輸出産業が巨額の利益を上げ、企業の内部留保が12年度の304兆円から20年度には484兆円まで膨らんでも、下請けや低所得者に恩恵は及ばない。実質賃金は低下を続け、とうとう15年には名目の平均賃金まで韓国に抜かれてしまった。

 何せ、日本の平均賃金はOECD加盟35カ国のうち22位まで順位を下げた。過去20年間の上昇率はたった0.4%。富裕層が株高で潤っても、大半の労働者は「昇給ゼロ」の状態だ。「ちっとも給与が上がらない」と嘆き、格差を実感する人々が増えるわけである。

■世界的インフレ下に物価目標2%を続ける愚

 「安倍元首相が掲げた『トリクルダウン』はマヤカシでした。国民の多くが成長の果実を得られず、生活実感が悪化しているのが何よりの証拠です。かつての日本経済は旺盛な内需が支えていましたが、完全に衰退。長年『全体の6割前後』とされたGDPに占める個人消費の割合も、今や5割を切りそう。その問題意識から岸田首相も一度は『分配なくして成長なし』『新自由主義からの転換』を掲げたのに、軌道修正。明らかに失敗したアベノミクスをなぜ継承するのか、理解に苦しみます」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

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12月18日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月18日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「国のデータ偽装はもうオシマイ 必要なのは自民党政治との決別」

 統計改ざんは、統計法に抵触するれっきとした犯罪である。6月以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられる。

 なぜ、危険を冒してまで国交官僚は改ざんに手を染めたのか。GDPをかさ上げして「アベノミクス」が成功しているように見せるためだったのではないか。改ざんの8年は、アベノミクスの8年とピタリと重なるのだ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「アベ政治の8年間で大きく変わったのは、霞が関に“忖度文化”が蔓延してしまったことです。以前の官僚には“国家を支えているのは自分たちだ”という矜持があり、“不正なんて冗談じゃない”と突っぱねる気概があった。でも、8年も続いた安倍1強によって、政権にマイナスになるようなことは、たとえ不正でも、隠したり、捨てたり、書き換えるようになってしまった。財務省は、安倍夫妻を守るために公文書まで改ざんしています。やはり2014年に内閣人事局が設置され、官邸に人事権を握られたことが大きかったと思います」

 時の権力者を守るために官僚が平然と公文書を改ざんしたり、政策の失敗を隠すために統計データを書き換えるなど、欧米先進国ではあり得ないことだ。このままでは、日本は本当に三流国に転落してしまう。

 危機的なのは、公文書が改ざんされたり、経済データが書き換えられても、自民党議員の多くが驚かなくなっていることだ。当たり前のような顔をしている。恐らく、国交官僚による統計データの改ざんも、誰が命じたのか、誰が悪いのか、真相はウヤムヤになり、誰も責任を取らずに幕引きされるはずである。

 8年間のアベ政治によって、自民党は上から下まで腐敗堕落し、完全に感覚が麻痺している。もはや、表紙を替えたくらいでは、自民党に染みついたアベ政治は変わらない。いま必要なことは、腐り切った自民党政治との決別なのではないか。

 「岸田首相の本質は、安倍元首相とまったく同じです。驚いたのは、公文書の改ざんを命じられて自死した近畿財務局職員の妻・赤木雅子さんが政府を訴えていた裁判を、政府が“認諾”する形で裁判を打ち切ってしまったことです。赤木雅子さんは、真相解明を望んでいたのに、関係者の証人喚問の前にいきなり裁判を打ち切ってしまった。1億700万円という賠償金を払ってでも、真実解明に蓋をした格好です。どこが“聞く耳”なのでしょうか」(五十嵐仁氏=前出)

 戦前の日本は、データを改ざんし、絶対に勝てないアメリカと戦って国を滅ぼしてしまった。国が数字を書き換えるようになったら、もはや末期的である。一刻も早くマトモな政権に変えないといけない。

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12月14日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月14日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「この混乱は? 岸田首相のポンコツぶりも前首相といい勝負」

■事務方はクーポンを強制

 自治体や世論の猛批判にさらされた岸田は、代表質問で「クーポン給付を原則としながらも、地方自治体の実情に応じて現金での対応も可能とする運用とする」などと答弁し、修正する姿勢を見せたが、都道府県向けに開かれた3日の説明会で配布された資料には「(来年)6月末までにクーポンの給付を開始することができない見込みである場合に限り、現金給付を可とする」と記載。現金に一本化する場合は内閣府に対し、「事情の変更等によりクーポン給付ができなかった特別な事由」を記した理由書の提出を求めている。現金一括給付についても「事業の趣旨や想定する実施時期を鑑みると適切ではなく、国としては原則として想定していない」とも書かれ、クーポンを事実上強制しているのだ。これだけの問題になっているのに、岸田は制度設計に全く通じていないのか。官僚が用意したその場しのぎのペーパーをただ読んでいるだけなのか。

 法大教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。

 「岸田首相には自分の意見がない。この一言に尽きる。10万円給付をめぐって右往左往するのも、政策の目的がハッキリしないからです。子育て対策なのか、困窮世帯対策なのか、経済対策なのか。そもそも自民党総裁選を勝ち抜けたのは、総理のイスを何としても手に入れるため、政治的理念を安倍元首相に売り渡すようなマネをしたからです。『軽武装・経済重視』を掲げる宏池会の理念に反する敵基地攻撃能力の保有に前のめりなのも、政権維持を優先しているからでしょう。岸田首相が誇る『聞く力』はマイナスに作用し、弱点になっている。ジレンマはいくらでも出てくるでしょう」


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12月12日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月11日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「10万円給付で露呈した場当たり バラマキで景気は上向くのか」

 現金給付の財源には予備費を使うが、クーポン支給は補正予算なので「財源が違う」ということらしいが、それでは年内の一括給付を希望する自治体は準備が間に合わない。

 全額現金にしても5万円ずつ分けて支給することになり、二度手間になる。経費もその分、余計にかかるわけだ。

 なんで、こんなアホらしいことになっているのか。

 「まず、10万円の位置づけがコロナで困窮した人への支援なのか、経済対策なのか、子育て支援なのかハッキリしない。衆院選で公明党は高校3年生以下の子どもへの10万円相当の支給を、自民党は金額を明示せずに困窮者への経済的支援を公約していた。政策合意もなく、それぞれ勝手に公約を掲げていたのだから野党よりよほど野合なのですが、岸田首相が公明党の主張を聞き入れ、自民党の公約との整合性にも配慮し、現金を配りたくない財務省の言い分も聞いた結果、『所得制限を設けて現金とクーポン』という足して3で割ったような方針になった。ただ、貯蓄に回らないようにクーポン支給というのは、消費喚起の景気対策という側面があり、当初の意図とはずいぶん違ってきています。メンツの張り合いの揚げ句の迷走で、場当たり対応が続いている。現金がいいのかクーポンがいいのか、全額現金はどういう基準にすればいいのか、岸田首相自身もまだよく分かっていないのでしょう。信念がないから、人の話を聞いて振り回されるのです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 目玉政策でさえ、こんな生煮えなのである。他は推して知るべしだが、10万円相当の給付は自公両党の幹事長による協議で決着した。オツムが自慢の茂木幹事長も、この迷走は見通せなかったということか。

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12月9日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月9日付に掲載されたものです。〕

*記事「迷走続くワクチン3回目接種 岸田政権は「一律の前倒し困難」とついに“白旗宣言”」

 前倒しできても基準が曖昧

 岸田政権が全面的な「6カ月後接種」に踏み出せないのは、ワクチンが足りないからだ。「8カ月」から「6カ月」に前倒しした場合、来年3月末までの3回目接種対象者は約4100万人から約7800万人に膨れ上がるが、余っている在庫は約3100万回分しかない。

 在庫を使って一部を「6カ月」に前倒しするとしても、問題は基準だ。後藤大臣は「国内の感染動向や自治体の準備状況、ワクチンの供給力を踏まえたうえで前倒しの範囲や方法を示したい」と曖昧な説明に終始する始末。都内区部のワクチン接種担当者は「前倒しできる自治体と、できない自治体の間で無用な競争が生まれかねない」とタメ息交じりだった。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「結局は政府がどうするか、どうしたいか、具体性に欠けているのが問題です。追加接種について自治体の状況を見て判断すると言えば聞こえはいいが、ワクチン供給の主体である政府の指針が曖昧では、接種を担う自治体は動くに動けない。国民も混乱する。甘い見通しで世界から後れを取ったワクチン政策を巡る迷走が、今も続いている印象です」

 追加接種で混乱しているうちに第6波が襲来したら、もはや目も当てられない。

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12月7日(火) 総選挙の結果と野党共闘の課題 [論攷]

〔以下の論攷は、安保破棄中央実行委員会の機関紙『安保廃棄』第487号、2021年12月号、に掲載されたものです。〕

 総選挙は大変残念な結果となりました。自民党は15議席減となったものの261議席を獲得し、単独で多数を得たばかりか、常任委員会に委員長を出しても多数を維持できる絶対安定多数を獲得しました。公明党は3議席増でしたから、与党は12議席減の293議席となって政権を維持しています。
 これに対して、政権交代を迫った共闘勢力は、立憲が14議席減の96議席、共産が2議席減の10議席、れいわが2議席増の3議席、社民は増減なしで1議席となりました。注目されるのは、立憲が小選挙区で11議席を増やしているのに比例代表では23議席も減らしたことで、共闘の効果と立憲自体の「自力」の無さが端的に示されています。
 このどちらにも加わらなかった「第三極」の維新は30議席増の41議席、国民民主は3増で11議席となっています。この結果、与党に維新を加えた改憲勢力は334議席で発議に必要な3分の2の310議席を大きく超え、改憲の危機が高まりました。
 どうして、このような結果になったのでしょうか。

 結果を生み出した背景と理由

 その第1の理由は、自民党による「奇襲攻撃」が成功したことにあります。菅義偉前首相の不出馬表明による「敵失」の消滅、総裁選によるメディアジャックと野田聖子立候補によるイメージアップ、宏池会出身の岸田文雄新首相の選出などによって好印象を強め、自民党はその効果があるうちに解散・総選挙を仕掛けました。コロナ感染の収束とも相まって、この自民党の作戦が功を奏したと思われます。
 第2には、政権選択選挙固有の困難性が存在したということです。参院選とは異なって衆院選で多数を失えば直ちに政権を去らなければなりません。「一票による革命」ともいえる大転換によって権力を失うことを恐れた支配層は警戒感を高めて反撃に転じ、野党共闘の側が一時的に押し返されたというのが今の局面になります。
 それだけ野党共闘が効果的な戦術だったということです。甘利明幹事長や石原伸晃元幹事長など自民党の重鎮が落選し、統一候補の当選が62、接戦区は54など、次につながる成果があったからこそ、全力を挙げて共闘を破壊しようとしているのです。
 第3に、国民の側からすれば、直ちに政権が変わることへの不安やためらいがあったように見えます。一方では、アベスガ政治やコロナ失政に対する怒りや失望は大きく、自民に「お灸」を据えたいと思っていても、他方で、コロナ禍によって政治と生活との関りを痛感し、野党連合政権に任せて大丈夫かという懸念もありました。
 民主党政権時代の忌まわしいイメージを払しょくし、不安よりも期待感を抱いてもらうという点で十分ではなかったということです。その結果、国民は政権交代なしで与党に「ノー」を突きつけるために「第三極」を選んだように見えます。政権批判票が「途中下車」して維新や国民民主にとどまったということになります。

 野党共闘の課題

 来年夏には参院選があります。それに向けて捲土重来(けんどちょうらい)を期すためには何が必要なのでしょうか。今後の闘いにおいて留意すべき点や野党共闘の課題はどこにあるのでしょうか。
 第1に、野党共闘の成果を確かめ、その維持・強化を図ることです。与党の奇襲に対して、共闘側は9月8日に政策合意を行い、30日に立共党首会談で部分的な閣外協力についても合意しました。これ自体は重要な前進でしたが、遅すぎました。衆院議員の任期は決まっていましたから、もっと早く政権交代によって実現可能な「新しい政治」のビジョンを示し、国民の期待感を高める必要があったのではないでしょうか。
 第2に、共闘に取り組む各政党の本気度を目に見える形で示すことが必要です。問題は共闘したことにあったのではなく、それが十分に機能しなかったところにありました。特に、反共主義の連合が横やりを入れ、それに遠慮した立憲の枝野代表は共産との同席を避けていました。このような「ガラスの共闘」ではなく「鋼鉄の共闘」へと鍛え直すことが必要です。
 第3に、今後も逆流は強まることが予想されます。すでに、連合と国民民主による立憲への揺さぶりや維新による攻撃、共産排除など共闘破壊の動きが強まっています。反共攻撃など根拠のない誹謗や中傷に的確に反論し、統一の歴史と連合政権の政策についてのきちんとした学習と情報発信が重要です。無きに等しい政治教育や与党に忖度したメデイアによる歪んだ報道と偏見も正さなければなりません。

 特別の役割への期待

 国民の誤解を晴らすという点では、安保破棄中央実行委員会には特別の役割が期待されます。安保・自衛隊について立憲と共産の間に大きな隔たりがあるかのように報じられているからです。実際には、安保破棄は軍事同盟をなくして日米間の平和友好関係を強め、軍事的従属状態から対等・平等な関係に変えることで、それは将来の目標であって直ちに実行されるわけではありません。急迫不正の侵害に対しては自衛隊を活用して反撃するということですから、当面の政策では立憲と共産の間にそれほど大きな違いはありません。
 だからといって、安保の現状を容認するのではなく、安保破棄の国民的合意を目指して安保そのものを正面から取り上げて活動しなければなりません。同時に、憲法に基づいた厳格な運用に努め、安保破棄を可能にするような環境整備に努めていくことが、連合政権の外交・安保政策の基本になります。具体的には、戦争法の違憲部分の廃止、日米地位協定の改定、米製兵器の爆買いの中止、防衛費の削減、核兵器禁止条約への参加、北朝鮮との国交回復と拉致問題の解決、韓国との関係改善を始めとした周辺諸国との緊張緩和と友好促進などです。
 安保破棄を要求する団体がこのような展望を示し情報発信を行ってこそ、大きな説得力が生まれるのではないでしょうか。それは政権交代への国民の不安を払拭し、新しい「希望の政治」への期待を高めるにちがいありません。

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