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3月4日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』3月4日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「危機に便乗の自民と岸田政権は本気だ 核武装論と原発復活」

 安倍が言い出した「核共有」の議論については、いま参院で開かれている予算委員会でもたびたび議題に上がる。戦後日本の平和外交を無にしかねない妄言だからだ。

 岸田が「非核三原則を堅持するわが国の立場から認められない」と即座に否定したのは救いのようにも見えるが、どこまで本気かは疑わしい。安倍も首相在任中は「非核三原則を堅持」「核共有は検討も研究もしていない」と答弁していたことを忘れてはならない。首相の立場では「核共有に向けた議論を進める」と言えないだけで、安倍の妄言を真っ向から批判することはないし、そもそも岸田は「敵基地攻撃能力」の保持に前向きな姿勢を示している。世論に配慮して名称変更を検討するというが、それも武器輸出を「防衛装備移転」、戦争法を「平和安全法」と言い換えてきた安倍と同じ手法だ。名称を変えたからといって先制攻撃の実体が変わるわけではない。

■戦争回避に知恵を絞るのが政治家の務め

 「攻撃される前に敵基地を叩くというのは、NATOに加盟しようとしたウクライナを侵攻したプーチン大統領と同じ発想です。武器を使えば必ず犠牲者が出る。ドンパチやるようになってからでは遅いのです。軍拡は周辺国の敵愾心を刺激するだけで、戦争のリスクをかえって高めることになる。軍事同盟のNATOに頼ったウクライナがそうだったように、相手に侵攻の口実を与えてしまいます。今回のウクライナ危機の教訓は、戦争を回避するためにあらゆる外交努力をするということ。戦争になってからどうするかは軍人が考えることで、戦争にならないためにどうするか知恵を絞るのが政治家の仕事です。核共有を言い出した安倍元首相は外交努力を放棄しているに等しい。さっさと政治家を辞めて軍人になった方がいいんじゃないですか。戦争で犠牲になるのは一般市民であり、軍産複合体が喜ぶだけなのです。戦争回避に必要なのは武力ではなく、他国に交戦の口実を与えないよう、友好的な互恵関係を築く外交努力です」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 ロシアの文豪トルストイは「戦争というものは、最も卑しい罪科の多い連中が権力と名誉を奪い合う状態をいう」と記した。


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