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3月25日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』3月25日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「この国会を見ていると日本も必ず戦争に巻き込まれる予感」

 原発が攻撃され、1000発以上のミサイルや多くの空爆で、数十もの街が破壊されたと訴える演説は、あらためてロシアの暴挙に対する怒り、そしてウクライナへの共感を高めたはずだ。数千人が殺され、そのうち121人が子どもだと聞けば、誰だって胸が締め付けられる。

 「一日も早く戦争が終わって欲しいと願わずにいられません。ただ、戦争は力と力の論理であり、日本がウクライナ側についてロシアとの戦争という構図に踏み込んだことを忘れてはいけない。ゼレンスキー大統領の演説が、他国議会でのアジるような演説に比べて穏便で抽象的な内容だったのは救いです。侵略戦争を仕掛けたプーチン大統領が悪いのは間違いありませんが、単純な善悪二元論で判断すると、イケイケドンドンの好戦ムードが高まりかねない危険性がある。それを利用する為政者もいるし、戦争賛美にもつながりかねません」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 ゼレンスキーの演説後に挨拶した山東参院議長が、「貴国の人々が生命をかえりみず祖国のために戦う姿を拝見し、感動しております」と声を張り上げたことは象徴的だった。

■戦争は「感動」するものではない

 山東は元俳優だが、これは映画などではなく、現実に起きている戦争である。多くの人の命が失われ、生活が破壊されている。断じて、感動しながら拝見する類いのものではない。家族や生活を奪われたウクライナ国民に心を寄せていれば、こんな言葉は出てこないはずだ。あくまで「国家」の為政者目線なのである。

 山東は最後に「ゼレンスキー閣下、そして親愛なる日本の国会議員の皆さま、ともに頑張ってまいりましょう」と鼓舞していたが、「頑張る」って何をだ? 戦争をともに頑張るよりも、戦争を終わらせるために知恵を絞るのが政治家の仕事ではないのか。

 「戦争に良いも悪いもない。このまま戦争が続けば、ウクライナ国民だけでなく、ロシアの若い兵士もたくさん死ぬのです。とにかく早く戦争を終わらせること、もっと言えば起こさないことが重要で、即時停戦を強く訴えることが、平和憲法を持つ日本の責務でしょう。難民の支援など、日本ができる人道支援は必要ですが、争いを長引かせるような支援はすべきではない。連帯すべきは戦争を継続するウクライナ政府ではなく、戦火に襲われているウクライナ国民のはずです」(五十嵐仁氏=前出)

 日本は防弾チョッキやヘルメットなど非殺傷の防衛装備をウクライナ政府に提供しているが、それは戦争を支援するための物資だ。

 苦しんでいるウクライナの人を助けたい、少しでも自分にできることはないかと考え、金銭的な寄付を試みた人もいるだろう。

 それが戦争を続けるための武器弾薬を買うのに使われ、若い兵士の命を奪う可能性もあるという想像力は持っていた方がいいかもしれない。

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