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4月26日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』4月26日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「物価高騰も北方領土も自民の失政 露のせいにする岸田政権」

 岸田政権は夏の参院選に向け、失点を防ぐ「守り」の姿勢が基本戦略だ。だから、当初は予算委員会で岸田が野党の攻勢にさらされるのを警戒し、補正予算案の編成に難色。コロナ対策に支出を限定した5兆円の予備費を流用して緊急対策をサッサと片づけ、そのまま参院選になだれ込もうとしたわけだ。

 結局、早くから今国会での補正成立を求めてきた連立パートナーの公明党に自民党が譲歩。2.5兆円超の補正予算案を提出する運びとなったが、大半は使い回しで減った予備費を元の水準に戻す“補填”に消える。国会で使途を審議する必要のない予備費を「便利な財布」扱いするゴマカシ策は残ったままだ。

 そもそも、公明党が「補正成立」を声高に訴えたのは参院選直前の見せ場づくりのため。成果をアピールしたい下心はミエミエだ。

 つまり、今の政権与党にとっての最優先事項は参院選対策。選挙に向けた「やってる感」の演出こそが大事で、物価高騰に苦しむ庶民の暮らしは二の次、三の次ってことらしい。

 「そんなデタラメを糊塗する好材料がロシアの軍事侵攻です。ウクライナの惨事に便乗し、物価高騰に対する無策を弁解する。みんなプーチン大統領が悪いと失政の責任を押しつけるだけでなく、他人の不幸に乗って大軍拡の方針を打ち出そうとする。人間として、どうかと思いますよ」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 歴代政権の亡国政策、自身の無策を棚に上げ、よくぞ岸田も「ロシアのせい」にできるものだが、北方領土の問題も「ロシアのせい」だ。

 外務省は22年版外交青書で「北方領土は日本固有の領土だが、現在ロシアに不法占拠されている」と明記。ロシアの「不法占拠」という表現は19年ぶりに、「日本固有の領土」は11年ぶりにそれぞれ復活した。

 今になって再びロシアの不法占拠のせいにしているが、持参金と一緒に北方領土をプーチンにむしりとられた「アベ外交」には触れていない。もう北方領土が帰ってこないのは、安倍政権下のあり得ないような外交失態のせいだ。前出の五十嵐仁氏はこう言った。

 「19年にはロシアとの平和交渉に考慮して『北方四島は日本に帰属』という表現を外交青書から削除し、プーチン氏をツケ上がらせたのは安倍政権です。円安を進める日米の金利差もアベノミクスのツケ。狂乱物価も北方領土も安倍政権の失政なのに、岸田首相は遠慮してばかり。この『忖度』を流行させたのも安倍首相で、彼こそ諸悪の根源でしょう。その責任をメディアも追及せず、『ロシア=悪』の報道スタンスで、政権に便乗しやすい環境を与えています。ウクライナの人々に同情する健全な国民感情を巧みに利用し、さも頑張っているように振る舞う岸田首相と足並みを揃えるようなもの。メディアは政治的影響を考えて報道すべきです」

 なんでもロシアのせいにする岸田政権の狡猾さに、大メディアも全面協力とは世も末だ。

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4月21日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』4月21日付に掲載されたものです。〕

記事「安倍元首相が国際社会のクリミア併合黙認を批判…またも「おまえが言うな」の厚顔無恥」

■プーチン大統領を増長させた張本人

 まったく、どの口が言うのか。プーチン大統領の暴挙を容認してツケ上がらせた張本人は誰なのか。2014年のクリミア併合に際し、どの国よりもロシアに甘い対応をしたのが日本だった。背景にはもちろん、当時は首相だった安倍元首相とプーチン大統領の蜜月関係がある。

 14年2月のソチ五輪開会式は、人権問題を理由に欧米主要国の首脳が欠席する中、安倍元首相は出席してプーチン大統領を喜ばせた。その直後のクリミア併合に対する制裁もG7では最も緩く、形だけで済ませた。16年には地元の山口県・長門に招いて、おもてなし。「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」と媚を売ったのは19年のことだ。

 「プーチン大統領を増長させ、ウクライナ侵攻の一因をつくった安倍元首相が何を偉そうに言っているのか、と国際社会も呆れているのではないでしょうか。そうやってロシアと中国の脅威を煽り、日本の防衛費をGDP比2%に引き上げろと主張するのは、マッチポンプもいいところ。そんなに戦争がしたいのか。日本と世界を危険な道に引き込もうとしているようにしか見えません」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 国内で吠えている分にはまだしも、海外メディアにまでシャシャリ出て日本の恥をさらすのはやめて欲しい。

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4月20日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』4月20日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「狂乱円安に打つ手なし アベクロと自民党政権はどう落とし前をつけるのか」

 参院石川選挙区補選(24日投開票)のラストサンデーとなった17日、選挙区入りした岸田首相は「不透明で混沌とした時代に引き続き政治の安定を確保して前進することができるのか、混乱の中に巻き込まれてしまうのかが問われている。しっかりとした安全保障政策を進め、経済を再生させるのは誰なのか」などと気炎を上げていたが、政権発足から半年あまり。「経済再生」に向けて今まで何をやってきたというのか。「新しい資本主義」はスローガンだけ。中身は官僚に丸投げで、それもいまだ作業中だ。ウクライナ戦争などに伴う原油価格や物価の高騰に対応するとして当面の経済対策を盛り込むという「総合緊急対策」を今月末をメドに取りまとめるという悠長さ。そもそも日本経済を衰弱させるデタラメ政策で有権者を騙し、選挙を勝ち抜いてきた自民党がまたもや目くらましの物価対策とは笑止千万である。

■応援団も見放すアベノミクス

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。

 「安倍、菅、岸田政権に通底するのは弥縫策でのゴマカシです。根本原因にメスを入れず、傷口にばんそうこうを貼ってしのぐやり方は限界に達している。物価や賃金の上昇幅よりも年金額の伸びを低く抑える『マクロ経済スライド』によって、今月から年金支給額が0.4%カットされましたが、物価急騰の最中に減額する仕組みはおかしい。すると、出てきたのが年金受給者への5000円給付。批判されて引っ込めましたが、ゴマカシの最たるものでしょう。本気でインフレを退治したいのであれば、消費税減税しかありません。新型コロナ対策で欧州などは次々に付加価値税を引き下げたのに、なぜ日本はできないのか。ソフトな印象の岸田首相は高支持率をキープしていますが、実績はない。参院選に向けたうわべのポーズに惑わされてはいけません」

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4月17日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』4月17日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「プーチン失脚か第3次世界大戦か…停戦合意などもう絶望」

 ロシア軍の蛮行がジェノサイドにあたるか聞かれたグテーレス事務総長は「人権侵害に深い懸念を抱いているが、ジェノサイドの認定は司法当局に委ねる」と明言を避けている。

 フランスのマクロン大統領も、「ジェノサイドの言葉を使って非難すれば戦争が拡大する恐れがある」と使用に慎重だ。そういうマクロンの抑制的な態度をゼレンスキーは非難していたが、いま国際社会に求められているのは、刺激的な言葉でロシアを挑発することより、一刻も早い停戦への努力なのではないか。

 「米国のバイデン大統領は、国際社会向けに戦争を終わらせるポーズはするでしょうが、本音では戦争状態を続けたいのでしょう。軍事産業が儲かり、献金が増える。ロシアに対する経済制裁で米国産のエネルギーは高騰し、アフガン撤退で地に落ちたバイデンの外交手腕も回復しつつある。経済的にも軍事的にもロシアを弱体化させることができるし、いいことずくめです。この戦争の最大の受益者がバイデン大統領だと言っていい。戦争が継続した方が、今年11月の中間選挙にも有利に働くと考えているはずです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 米国では、今も共和党のトランプ前大統領が一定の影響力を保持している。ただ、トランプは親ロシアであり、トランプ大統領誕生にはロシアが世論誘導に協力したともいわれている。プーチンのロシアに対する米国民の憎悪を煽ることは、民主党のバイデンにとって重要な選挙対策の一環なのかもしれない。

 トルコ、東欧諸国、バルト3国に加え、北欧がNATOに加われば、地政学的に「ロシア包囲網」が完成する。欧州の安全保障環境が根本的に変わるわけだ。ロシアは孤立し、“北朝鮮化”する。そういう国が、国連の安全保障常任理事国という現実。プーチンの暴走はいよいよ止められなくなるのではないか? それを米国は、国際社会は望んでいるのだろうか。

 「早く戦争が終わってほしいと世界中の人々が願っていますが、プーチン大統領を糾弾していれば支持率が上がるという西側諸国の事情もあって、各国の権力者の思惑のために戦争は続き、ウクライナの一般国民が犠牲になっている。これが戦争の惨さです」(五十嵐仁氏=前出)

 決定的に局面が変わるとすれば、プーチン失脚か第3次世界大戦勃発か。それまでウクライナでの戦闘は続き、それを国際社会が容認して、西側諸国はウクライナへの軍事支援を続けるのか。

 戦争の長期化、泥沼化で喜ぶ人もいるのだろうが、犠牲になるのはいつだって一般市民だ。

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4月10日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』4月10日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「岸田政権と欧米の「寄り添うふり」 制裁は腰が引けている」

 日本の岸田首相も、8日、「断じて許されない戦争犯罪だ。非道な行為の責任を厳しく問うていく」と、ロシア軍によるジェノサイドを痛烈に批判していたが、追加制裁の中身は、ロシア産石炭の輸入を段階的に削減することやウオッカの輸入禁止だった。ロシアから輸入している液化天然ガス(LNG)は、ストップしないという。

 日本も欧米も、ロシアを強く非難し、「一刻も早く戦争を止めなくてはいけない」などと口にしているが、<石油とガス>にノータッチでは、戦争を止めることなど不可能なのではないか。

 「ロシアを非難している西側諸国も、要するに“返り血”を浴びる覚悟はないということでしょう。これまで実施してきた経済制裁も、ロシアに致命的な打撃を与えていない。いったん暴落したルーブルも、ウクライナ侵攻前の水準に戻っています」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 いま頃、プーチンは「まだ西側は本気になっていない」と、冷静に計算しているのではないか。

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4月9日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』4月9日付に掲載されたものです。〕

*記事「陸自文書に「反戦デモ」は制圧対象と記述 独裁者支配のロシアと変わらない言論封じ込め」

安倍政権以降、表現の自由や人権を敵視

 6日の会見で、この文書について問われた松野官房長官は「グレーゾーンの事態の例として記述したことは、誤解を招く表現であり、その意味において不適切だった」と話したが、誤解を招いたことが不適切なのではない。正当な権利であるデモを制圧対象に想定すること自体が不適切だ。

 「デモが過激化することもあるかもしれませんが、治安維持は本来、警察の役目です。60年安保闘争の時も、政府は自衛隊を出動させなかった。それなのに、自衛隊の幕僚がデモをグレーゾーンに認定とは、シビリアンコントロールはどうなっているのかという話です。もっとも、安倍政権以降は政府が率先して表現の自由や人権を敵視し、反政府的な運動を取り締まろうとするようになった。19年の参院選で、当時の安倍首相の街頭演説中にヤジを飛ばした市民が北海道警に力ずくで排除された事案も根っこは同じです。政府のやることに反対する国民を弾圧対象とみなし、気に入らない言論を封じるために警察も自衛隊も使う。これではプーチンのロシアと変わりません」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 これが、ウラジーミルと共に見ていた「同じ未来」なのか。

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4月8日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』4月8日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「この戦争を“利用”しようと前のめり 岸田政権と大メディアの危うさ」

 政府専用機を利用したウクライナ避難民20人の受け入れについても、政権幹部が「実際に来る人は少ないが、国際社会と連帯の姿勢を示すことが大切だ」「結局は世論だ。一時的なことかもしれないが、ウクライナの避難民受け入れに国民の8、9割が賛成している」と話していたと、6日付の朝日新聞が報じていた。

 つまり、外交においても長期的な視野や戦略より世論受けが優先されているのだ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「避難民の受け入れに熱心なのは、ウクライナ対応で『よくやっている』となって支持率上昇につながるからです。政府はミャンマーなど一般的な難民には冷たい。入国管理政策では人権無視も甚だしい。生活困窮者は日本国内にもいて、喘いでいるシングルマザーが放置されています。注目され、人気取りになることにだけ力を注いでいるのが岸田政権の現状です」

 内政はボロボロだ。食品、電気、ガス、ガソリンなど生活必需品の価格高騰が止まらない。コロナ禍からの世界的な景気回復にウクライナ戦争のダブルパンチで、国民生活は“お先真っ暗”なのに、いまだ岸田政権は、関係閣僚に物価上昇対策の具体的な検討を指示した段階。緊急対策の取りまとめは今月末だという。

 急速に進んだ円安が輸入物価に悪影響を与えているが、「円安の影響はわずか」と言い張る日銀・黒田総裁が我が物顔で跋扈している。

 それでも大メディアはウクライナ戦争一色だから、「勇ましさ」が内閣の支持率上昇につながる。2カ月半後に迫る参院選に向け、岸田政権はこの路線で突っ走るつもりだ。

 「メディアも戦争報道で視聴率が取れるからか、結果的にウクライナ以外のニュースが少なくなり、本来なら報じられるべき岸田政権の問題を隠すような形になっています。参院選が近づいているのだから、もっと有権者に判断材料を提供する必要がある。好戦的な雰囲気が高まる中で、軍事費増額などイケイケドンドンの選挙になったら、その先が怖い」(五十嵐仁氏=前出)

 政治が冷静さを失っているのなら、せめて国民の側が冷静にならなければ本当に危うい。

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4月4日(月) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』4月3日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「形だけの「やっているふり」 ウクライナ避難民支援の欺瞞」

■適性語狩りを踏襲した戦争の政治利用

 日本政府が使うウクライナの地名の呼び方変更も突飛な話だ。首都はロシア語に基づく「キエフ」からウクライナ語の発音に基づく「キーウ」に、「チェルノブイリ」は「チョルノービリ」などに変えた。米国の地名委員会は19年に「キーウ」のみを公式表記に決めたが、それに追随。外務省は「日本政府としてウクライナとの一層の連帯を示すための行動」とし、「寄り添う」アピールを隠そうともしない。

 「野球のストライクを『よし』、ボールを『ダメ』と言い換えた戦中の敵性語狩りを彷彿とさせます」と語るのは、法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)だ。こう続ける。

 「岸田政権は戦争動員のやり方を踏襲し、お金もかけずに『ウクライナ頑張れ』の世論をあおり、参院選前の支持率上昇をもくろむ。要は戦争の政治利用です。しかも、ウクライナ支援とロシア制裁は常に米国追随。バイデン政権にも戦争長期化で軍需産業を儲けさせ、キックバックで政治献金を受け取り、国内のウクライナ支援の気分を盛り上げ、今年の中間選挙を乗り切る狙いがある。そんな思惑など岸田政権はお構いなし。ひたすら米国に同調し、議論なく武器輸出の原則を緩めて防弾チョッキまでウクライナに送ってしまう。憲法の平和主義に基づき、米国とは違った立場で停戦に向けた独自外交に乗り出す姿勢はみじんもなく、米国の“正義”に従うだけ。その価値観で判断される国際貢献の薄っぺらさは、完全に思考停止に陥っています」

 そんな欺瞞に満ちたウクライナ支援を大メディアは美談のように垂れ流すのみ。この国を包み込む「気分はもう戦争」ムードは不気味だ。

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