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6月3日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月3日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「「一億総投資」は日銀の尻拭いか 岸田政権の魂胆は?」

■安倍や菅より危険

 「骨太」案には防衛力の抜本的強化も盛り込まれた。岸田はバイデン米大統領に防衛費の「相当な増額」を口約束し、自民党は現状のGDP比1%枠を取っ払って「5年以内にGDP比2%以上」を提言。防衛省の研究機関である防衛研究所は、先月31日に公表した2022年版「東アジア戦略概観」で、中国に対処する防衛費の水準は現状の倍近い「10兆円規模」だと示した。

 ところが、大幅増額が現実味を帯びてきているのに、岸田はその財源については絶対に答えない。31日の参院予算委員会で、共産党の小池書記局長が「『相当な増額』と言うのであれば、相当な社会保障費削減か相当な増税、国債発行しか選択肢がない」と追及したが、岸田は「具体的な(防衛力強化の)内容が決まらなければ予算について申し上げることはできない」と逃げの一手だった。

 挙げ句は財政規律も平然と放棄。「骨太」にほぼ毎年記載されてきた財政黒字化目標の「2025年度」が、今回の原案では削除されているのだ。安倍元首相を筆頭とする自民党内の「積極財政派」に配慮して玉虫色になったとされるが、防衛費倍増で国債を増発するための布石でもあるのではないか。

 岸田が財源を明確にしないのは、参院選対策で国民に不評な増税を隠し、選挙に勝てば「白紙委任」としたいからだろう。スウェーデンは国防費のGDP比2%に向け、酒税とたばこ税の増税を明示している。岸田も参院選前に財源を有権者に示さなきゃおかしい。

 岸田内閣は支持率が高いが、騙されちゃいけない。善人そうに見える岸田の正体は、庶民の財布に手をつっこんで虎の子まで奪おうとするのだから、むしろ悪魔だ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。

 「リベラルでハト派の宏池会の看板を全面的に利用しているのが岸田首相です。しかし、分配重視と言っておきながら投資を優先したり、米国に言われるがままに軍拡路線を進めたり。甘い口当たりでコーティングしながらやるので、安倍元首相や菅前首相より危険です。参院選後は危うさが前面に出てくるでしょう。有権者は選挙前にそれをきちんと見極められるかが問われています」

 とんでもない首相にお灸を据えないと、「黄金の3年間」に庶民は身ぐるみ剥がされてしまう。


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