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7月10日(日) 歴史的な岐路に立つ参院選で誤りのない一票の行使を [参院選]

 いよいよこの国の命運がかかった参院選の投票日を迎えました。一昨日に突発した安倍元首相への銃撃・殺害事件によって、参院選をめぐる情勢はますます混とんとし予断の許さないものとなってきています。
 言論の自由への挑戦である暴力によって、民主主義の根幹である選挙結果が左右されてはなりません。この蛮行に惑わされることなく、本日の投票日において有権者の皆さんが正しい選択を行うことを、再度訴えたいと思います。

 安倍元首相に対する突然の銃撃と直後の死去は大きな衝撃を持って迎えられ、テレビや新聞などのメディアは事件の報道で溢れています。その分、最終盤を迎えた参院選についての報道量は制約され、有権者の関心が薄らいで投票率が下がるのではないかと心配しています。
 安倍元首相は最長を記録した首相の経験者であるだけでなく、自民党の有力政治家で最大派閥の安倍派を率いる領袖です。その悲劇的な最期が多くの国民の驚きと同情を引くのは理解できますが、それが選挙に利用されたり、自民党への同情票の増大を生んだりすることが懸念されます。
 突然訪れた非業の死でもあり、死者にムチ打たないという日本的な慣行によって安倍元首相の功績が過大に評価される傾向も生まれています。その死を悼む言葉は当然としても、それとともに様々な形での美化がふりまかれ右翼的な立場や極論の正当化まで行われることは許されません。

 とりわけ、安倍首相のタカ派的で有害な政策や主張については、蛮行への怒りや暴力への憎しみ、突然の死を悼み悲劇を悲しむ気持ちとは区別して、冷静な批判や問題点の指摘が必要ではないでしょうか。日本経済の停滞と生活の困難を招いたアベノミクス、国民の命と健康を危機にさらしたコロナ対策、モリカケ桜前夜祭などに典型的な政治・行政の私物化、大軍拡や核共有と9条改憲についての極右靖国派としての謬論は厳しく批判されなければなりません。
 今回の参院選が、これからの日本が進むことになるであろう岐路にあるからこそ、このような峻別はなおさら重要なものになっています。ここで岐路というのは、一つは憲法を放棄する「棄憲の国」への道、もう一つは憲法を活かす「活憲の国」への道という二つの道の分かれ目という意味です。
 言うまでもなく、前者は現在の与党と維新などの補完野党による9条改憲によって生みだされる国であり、後者は立憲野党の連合政権によって築かれる国のあり方です。日本の未来を切り開き希望を生み出すのは、後者の道しかありません。

 この点で再度強調しておきたいのは憲法9条の効用であり、その「ありがたさ」です。9条改憲を主張している人々はもちろんのこと、それに反対している人々を含めて、その「ありがたさ」、意義や効用が十分に理解されず、9条改憲によって「失われるものの大きさ」が十分に認識されていないように思われますので、再度確認しておきたいと思います。

 その第1は、憲法9条が戦争加担への防波堤であったということです。安保条約に基づく日米軍事同盟によって日本はアメリカが始めた不正義のベトナム戦争やイラク戦争に協力させられましたが、9条という憲法上の制約があるために全面的な加担を免れることができました。これは歴史的な事実として確認することができます。

 第2に、自衛隊員を戦火から守るバリアーだったということです。日米軍事同盟によって自衛隊はイラク戦争に引きずり込まれましたが、「非戦闘地域」で活動した自衛隊は基本的には「戦闘」に巻き込まれず、殺すことも殺されることもなかったのは9条のおかげでした。このことも、これまで繰り返し書いてきたとおりです。

 第3に、戦後における経済成長の原動力だったということです。これも「9条の経済効果」としてこれまで何度も指摘してきましたが、平和経済の下で国富を主として民生や産業振興に振り向けることができた結果、一時はアメリカと経済摩擦を引き起こすほどの経済成長を実現することができました。

 第4に、学術研究の自由な発展を促進する力でもあったということです。日本学術会議は9条の趣旨を学術にあてはめて軍事研究を拒否してきたため、兵器への実用化や軍事転用などに惑わされることなく地道な基礎研究に邁進し、ノーベル賞並みの研究成果を上げることができました。

 第5に、平和外交の推進に向けての可能性を生み出す力だったということです。しかし、残念ながらこれは可能性にとどまり具体化することはありませんでした。
 日本外交は自主性自立性を持たず、アメリカの後追いにすぎなかったために平和な東アジアを構想する力がなく将来のビジョンもうち出すことができなかったからです。これは政権交代後における活憲の政府による9条を活かした独自外交に期待するしかありません。

 少なくとも憲法9条にはこれだけの意義と効用、「ありがたさ」があったのです。それを変えることで「失われるものの大きさ」も知らず、ただただ改憲を声高に叫ぶことがどれだけ愚かなことか、お分かりいただけましたでしょうか。
 これらのことも念頭において、投票所に足を向けていただければ幸いです。未来に向けての希望を捨て去るのか活かすのか、本日の選択の意味を十分に理解して一票を投じてもらいたいと願うに切なるものがあるからです。

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