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7月15日(金) 参院選結果 野党は勝利を「プレゼント」した [コメント]

〔以下のインタビュー記事は『連合通信・隔日版』第9755号、7月14日付に掲載されたものです。〕

 共闘態勢の早期の確立を

 今回の参議院選挙は、「与党が勝利した」というよりも、野党、特に立憲民主党が対応を間違え、自民党に勝利を「プレゼント」したと言える。
 自民党が改選過半数の議席を獲得できたのは選挙区で勝利したことが大きい。比例代表では改選議席を1議席減らしている。選挙戦の中盤までは物価問題で守勢に回ることを余儀なくされ、勢いが弱まっていた。
 では、なぜ選挙区で勝てたのか。それは野党がバラバラで戦ったからだ。ロシアのウクライナ侵略に伴う好戦的機運の高まりや、ソフトでリベラルな印象を振りまく岸田内閣の高い支持率など、野党にとっては元々不利な情勢だった。その下で、 野党が共闘せず、選挙区で候補を乱立させたため、ただでさえ有利な自民党が漁夫の利を得た。
 選挙戦最終盤には、安倍元首相が遊説中に銃撃され死去するという事件が起きた。自民党への同情や安倍政治の美化が強まったことも、選挙結果に作用し盛り返したのではないか。
 立憲民主党の、政党名を書く比例代表選挙区の得票数は677万票。昨年10月の総選挙での比例票1149万票から約500万票も大きく減らし、維新に凌駕されてしまった。
 一方、自民党は約165万票減の1826万票。全国の有権者総数の2割にも満たない。自民党が強いのではなく、野党が弱すぎるということだ。
 こうなった背景として、立憲民主党など野党の失敗が挙げられる。特に昨年の総選挙の総括を間違えたのが痛手となった。
 「野党は批判ばかり」「共闘は野合」との批判に屈し、国民民主党は予算に賛成するなど政権にすり寄り、立憲民主党の泉執行部は政府批判を封じて「対案路線」に転じ共闘にも後ろ向きとなった。これでは政府・与党を厳しく追及して追い込むことはできない。
 その結果、野党第一党である立憲民主党は「野党のかなめとして政治を変えるイニシアチブを発揮してほしい」という期待に応えることができなかった。そのことが、わずか半年余りで約500万票もの大量の比例票を減らした最大の要因ではないか。
 両党の動向に多大な影響を及ぼしたのが連合だ。芳野友子会長の鼎(かなえ)の軽重が問われている。昨年秋の就任以降、ことごとく足を引っ張った。野党共闘を否定する発言を繰り返すだけでなく、自民党にすり寄るかのような行動をとり、野党の勢いを弱めた。
 その教訓をしっかり確認して野党の共闘態勢を立て直すことが必要だ。

●維新の勢い、頭打ち

 日本維新の会も昨年の総選挙から比例票を20万ほど減らした。「全国政党化」をめざしたが、東京や「最重点区」の京都で落選して失敗に終わった。神奈川選挙区で元県知事が当選したのは「維新票」とは言い難い。
 維新の支持層は比較的恵まれた現役世代で、中間層が没落するなか、将来への不安から「改革幻想」に期待を寄せた人が多いといわれる。だが、一時の勢いはなく頭打ちとなった。
 また、失言・暴言・スキャンダルなど問題議員や候補者の吹き溜まりのようになっている。それが有権者に知られるようになり支持を失っているとも考えられる。

●共闘態勢の早期確立を

 今後、コロナ第7波や物価高騰の大波が到来する。岸田首相は大軍拡に前のめりだ。専守防衛の国是に反する「敵基地攻撃能力」の保有や、防衛費の国内総生産(GDP)比2%を念頭にした予算増、憲法9条に「自衛隊」を明記する改憲論議も強めようとしている。
 改憲によって日本は何を得てどのようなリスクを招くのか、東アジアの中で今後どのような平和政策、外交方針を打ち出していくのか、が本格的に問われるだろう。
 来年5月に広島で開催する主要国首脳会議(G7)後に有利な情勢だと判断すれば、岸田首相が解散に打って出ることもあり得る。また、来年秋以降は総選挙から2年を経て解散風が吹き始める。
 政府に主導権を握られるのではなく、野党は岸田政権を解散に追い込む姿勢が、政治に緊張感を持たせ議会制民主主義を機能させるうえでも必要だ。並行して、総選挙にいつでも対応できるよう、野党間の共闘態勢の確立を、今からでも準備しなければならない。


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