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8月29日(月) 混沌としてきた改憲動向 今こそ9条の「ありがたさ」を語ろう(その2) [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、日本機関紙協会の『機関紙と宣伝』No.1072,9月号に軽視されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕


軍事への忌避感が薄れてきた

 こんな時だからこそ、世論の動向が決定的に重要だと思います。
 その点で最近気になるのは、改憲世論の強まりです。9条については、まだ「守るべき」という声が多いものの、憲法全体については改憲への支持が増えているようです。「時代に合わなくなっているのだから変えてもいいんじゃないか」という意識ですね。
 そうなったのは、与党が憲法の規範力を弱めてきたことの影響ではないでしょうか。憲法を守らず、逆に反することを閣議決定し、既成事実化するやり方を取ってきました。憲法の正統性を掘り崩し、権力を規制する力を弱めてきたことが大きいと思います。
 もう一つ、憲法9条を支えてきたのは戦争体験に基づく「軍事」への忌避感情。軍隊は信用できない、戦争はもうこりごりだという思いだったのではないでしょうか。しかし、災害救助などで自衛隊の市民権が拡大し、軍隊として忌避する感情が薄れてきた。そこに、ロシアによるウクライナ侵略が起きました。やっぱりそれなりの軍隊を持つ必要があるという感覚、軍事・戦争を身近なものとして受け止め、軍事力の強化に理解を示す声が強まったように見えます。

憲法9条の「5つのありがたさ」

 こうした状況も踏まえ、改憲を阻止する上でいま何が必要かをあらためて考えたい。
 まず、日本は「軍事対軍事」を選択できない国なのだということを、国民合意として改めて確認する必要があると思います。日本は世界の中で「平和国家」のブランドを保ってきました。9条のありがたさ、有効性を捨て去るのではなく、再確認し強調すべきだと思います。
 それは5点。①憲法9条は戦争加担への防波堤となってきた②自衛隊員を戦火から守るバリアーだった③戦後における経済成長の原動力だった④学術研究の自由な発展を促進する力でもあった⑤平和外交を生み出す力になるはずだった――ということです。
 戦争加担への防波堤という点について言えば、ベトナム戦争が好例です。米国の同盟国は軍の派遣を要請され、韓国は延べ30万人を送り、約5000人が戦死しています。日本は戦争に加担したものの自衛隊を送らず、戦死者を出していません。9条という憲法上の制約があったからです。「台湾有事」が懸念され戦争法もできている状況で9条が改憲されれば、名実ともに米国の戦闘に全面的に巻き込まれることになります。
 自衛隊員を守る点でも9条は威力を発揮してきました。イラクのサマーワに派遣された陸上自衛隊の任務は給水と道路の補修で、戦闘に加わることはありませんでした。これも憲法9条があったおかげです。
 こうしたことを国民に訴え、理解してもらう活動が大事になります。事実に照らして、草の根から「戦争は駄目だ」「9条は大切」の声を大きくしていきたいですね。

平和外交が今ほど大切な時はない

 そもそも島国の日本が戦争に巻き込まれたら、私たちは生きていけません。食料とエネルギーの自給率は低く、陸続きのウクライナのように他国に逃げることもできません。貿易では中国がトップで密接な関係にあり、戦争などやれるはずがありません。
 平和外交が今ほど大切な時はない。戦後の日本は外交・安保について米国に追随し、9条を生かした自主外交を怠ってきました。米国追随では、平和と安全を確保することはできません。戦後の米国は間違いだらけで、ベトナム、イラク、アフガニスタンを見ただけでも、うまくいった戦争などないのですから。
 「米中対立」でも、日本は中国に自制を求めると共に、米国にも中国を挑発するなと忠告するべきです。9条に基づく自主的な外交を展開し、対立緩和と戦争回避を最優先にした独自の取り組みを行わなければなりません。

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8月29日(月) 混沌としてきた改憲動向 今こそ9条の「ありがたさ」を語ろう(その2) [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、日本機関紙協会の『機関紙と宣伝』No.1072,9月号に軽視されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕


軍事への忌避感が薄れてきた

 こんな時だからこそ、世論の動向が決定的に重要だと思います。
 その点で最近気になるのは、改憲世論の強まりです。9条については、まだ「守るべき」という声が多いものの、憲法全体については改憲への支持が増えているようです。「時代に合わなくなっているのだから変えてもいいんじゃないか」という意識ですね。
 そうなったのは、与党が憲法の規範力を弱めてきたことの影響ではないでしょうか。憲法を守らず、逆に反することを閣議決定し、既成事実化するやり方を取ってきました。憲法の正統性を掘り崩し、権力を規制する力を弱めてきたことが大きいと思います。
 もう一つ、憲法9条を支えてきたのは戦争体験に基づく「軍事」への忌避感情。軍隊は信用できない、戦争はもうこりごりだという思いだったのではないでしょうか。しかし、災害救助などで自衛隊の市民権が拡大し、軍隊として忌避する感情が薄れてきた。そこに、ロシアによるウクライナ侵略が起きました。やっぱりそれなりの軍隊を持つ必要があるという感覚、軍事・戦争を身近なものとして受け止め、軍事力の強化に理解を示す声が強まったように見えます。

憲法9条の「5つのありがたさ」

 こうした状況も踏まえ、改憲を阻止する上でいま何が必要かをあらためて考えたい。
 まず、日本は「軍事対軍事」を選択できない国なのだということを、国民合意として改めて確認する必要があると思います。日本は世界の中で「平和国家」のブランドを保ってきました。9条のありがたさ、有効性を捨て去るのではなく、再確認し強調すべきだと思います。
 それは5点。①憲法9条は戦争加担への防波堤となってきた②自衛隊員を戦火から守るバリアーだった③戦後における経済成長の原動力だった④学術研究の自由な発展を促進する力でもあった⑤平和外交を生み出す力になるはずだった――ということです。
 戦争加担への防波堤という点について言えば、ベトナム戦争が好例です。米国の同盟国は軍の派遣を要請され、韓国は延べ30万人を送り、約5000人が戦死しています。日本は戦争に加担したものの自衛隊を送らず、戦死者を出していません。9条という憲法上の制約があったからです。「台湾有事」が懸念され戦争法もできている状況で9条が改憲されれば、名実ともに米国の戦闘に全面的に巻き込まれることになります。
 自衛隊員を守る点でも9条は威力を発揮してきました。イラクのサマーワに派遣された陸上自衛隊の任務は給水と道路の補修で、戦闘に加わることはありませんでした。これも憲法9条があったおかげです。
 こうしたことを国民に訴え、理解してもらう活動が大事になります。事実に照らして、草の根から「戦争は駄目だ」「9条は大切」の声を大きくしていきたいですね。

平和外交が今ほど大切な時はない

 そもそも島国の日本が戦争に巻き込まれたら、私たちは生きていけません。食料とエネルギーの自給率は低く、陸続きのウクライナのように他国に逃げることもできません。貿易では中国がトップで密接な関係にあり、戦争などやれるはずがありません。
 平和外交が今ほど大切な時はない。戦後の日本は外交・安保について米国に追随し、9条を生かした自主外交を怠ってきました。米国追随では、平和と安全を確保することはできません。戦後の米国は間違いだらけで、ベトナム、イラク、アフガニスタンを見ただけでも、うまくいった戦争などないのですから。
 「米中対立」でも、日本は中国に自制を求めると共に、米国にも中国を挑発するなと忠告するべきです。9条に基づく自主的な外交を展開し、対立緩和と戦争回避を最優先にした独自の取り組みを行わなければなりません。

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