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2月28日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』2月28付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「ウクライナで目くらまし 41年ぶりの物価高に政府・日銀の無力・無能」

 少子化対策に関しても同様で、党大会でも「従来とは次元の異なる子ども・子育て政策を実現し、社会全体の意識を変える」と言っていたが、口先だけでマジメにやる気がないことは、木原官房副長官の「子どもが増えれば予算は倍増」というフザケた発言が象徴している。

 具体策は何も見えず、自民党内からも「何をしたいのか」「どこが異次元なのか」と困惑の声が上がる始末だ。6月の「骨太の方針」に盛り込むと言っているが、要は少子化対策が国民に受けるという“統一地方選対策”だ。支援を充実させるように見せて有権者を引き付ける。少子化・子育て対策なら増税も許容されるという計算もあるだろう。

 「令和の所得倍増も、分配を重視した新しい資本主義も掛け声倒れで、岸田首相が着実に実行したのは安倍元首相の路線を踏襲した軍拡の加速だけです。それ以外は、口から出まかせのインチキで、国民生活を良くするための政策は何ひとつしていない。ウクライナへの55億ドルの追加支援を決めたことも、悪いとは言いませんが、もっと自国民のために使えないものか。足元の物価高でこれだけ国民が疲弊しているのに、何の対策も打ち出せないのは、あまりに無能と言わざるを得ません。事態を打開する知恵が何もなく、検討を重ねて先送りするだけの“お手上げ内閣”です。せめて金融政策を転換して正常化すればいいのに、政権維持のために党内最大派閥の安倍派に気を使い、それを打ち出せずにグズグズしている。それで被害を被っているのが国民なのです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 5月に広島で開かれるサミット前のウクライナ訪問も画策し、支持率アップを夢想して高揚しているが、自身のメンツと保身より国民生活のためにリーダーシップを発揮してほしいと考えている有権者は少なくないはずだ。

 党大会で岸田は「自民党にとって、国民に最も身近なところで行われる統一地方選挙は最も大切な選挙です。まなじりを決して、来たる統一地方選挙を必ず勝ち抜こうではありませんか」と訴えたが、こんなデタラメ政権を勝たせてしまえば、物価高対策も少子化対策も進まずに、待っているのは増税だけ。

 「自分たちの生活を少しでも良くするには、この暗愚政権を終わらせるしかない。統一地方選は、国民生活の苦しさが分からない政権に『NO』を突きつける絶好の機会です」(五十嵐仁氏=前出)

 まなじりを決する必要があるのは国民の方だ。


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2月22日(水) 追悼 畑田重夫さん [論攷]

〔以下の追悼文は『学習の友』No.835 、2023年3月号、に掲載されたものです。〕

 国際政治学者の畑田重夫さんは、私にとって大恩ある「先生」でした。就職のきっかけを作っていただいたからです。その方の訃報に接し、残念な思いでいっぱいです。
 私が初めて畑田さんにお目にかかったのは1986年の夏でした。学習の友社から刊行された畑田重夫編『現代の政治論』執筆の打ち合わせのためです。このとき初の単著刊行の労も取っていただき、それがきっかけとなって定職に就くことができました。
 打ち合わせが終わった時、ポケットから憲法の小冊子を出され、「いつも持ち歩いてるんだ」と仰られたことが強く印象に残っています。戦争に動員された同期の「わだつみ世代」でただ一人の生き残りとして、9条に殉ずる「憲法人生」を貫いた生涯でした。 
 東大卒で旧内務省を経て名古屋大学助教授になった経歴を捨て、「高級官僚や大学教授への道をあえて敬遠して、労働者・国民と共に学び、ともにたたかう道を選択した」(『わが憲法人生 70年』)ために、「定収のない生活」でのご苦労も多かったと思います。それにもへこたれず、労働者教育協会会長や勤労者通信大学学長、全国革新懇の代表世話人、日本平和委員会の代表理事などを歴任され、都知事選にも2度立候補されています。
 とてもまねのできない、一本筋の通った苛烈な生きざまでした。政治学者で労働者教育協会理事、全国革新懇の代表世話人として同じような道を歩んできた私にとっては偉大な先達であり、手の届かないお手本です。亡くなる直前まで、新聞への投書などで励ましていただきました。
 大軍拡の波が押し寄せ、憲法破壊の危機が高まる下でのご逝去でした。心残りだったと思います。やり残された課題を引き継ぐために、畑田さんがよく口にされた言葉を深く胸に刻みたいと思います。
 「学び、学び、そして学べ」

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2月22日(水) 追悼 畑田重夫さん [論攷]

〔以下の追悼文は『学習の友』No.835 、2023年3月号、に掲載されたものです。〕

 国際政治学者の畑田重夫さんは、私にとって大恩ある「先生」でした。就職のきっかけを作っていただいたからです。その方の訃報に接し、残念な思いでいっぱいです。
 私が初めて畑田さんにお目にかかったのは1986年の夏でした。学習の友社から刊行された畑田重夫編『現代の政治論』執筆の打ち合わせのためです。このとき初の単著刊行の労も取っていただき、それがきっかけとなって定職に就くことができました。
 打ち合わせが終わった時、ポケットから憲法の小冊子を出され、「いつも持ち歩いてるんだ」と仰られたことが強く印象に残っています。戦争に動員された同期の「わだつみ世代」でただ一人の生き残りとして、9条に殉ずる「憲法人生」を貫いた生涯でした。 
 東大卒で旧内務省を経て名古屋大学助教授になった経歴を捨て、「高級官僚や大学教授への道をあえて敬遠して、労働者・国民と共に学び、ともにたたかう道を選択した」(『わが憲法人生 70年』)ために、「定収のない生活」でのご苦労も多かったと思います。それにもへこたれず、労働者教育協会会長や勤労者通信大学学長、全国革新懇の代表世話人、日本平和委員会の代表理事などを歴任され、都知事選にも2度立候補されています。
 とてもまねのできない、一本筋の通った苛烈な生きざまでした。政治学者で労働者教育協会理事、全国革新懇の代表世話人として同じような道を歩んできた私にとっては偉大な先達であり、手の届かないお手本です。亡くなる直前まで、新聞への投書などで励ましていただきました。
 大軍拡の波が押し寄せ、憲法破壊の危機が高まる下でのご逝去でした。心残りだったと思います。やり残された課題を引き継ぐために、畑田さんがよく口にされた言葉を深く胸に刻みたいと思います。
 「学び、学び、そして学べ」

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2月18日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』2月18日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「重要な国会審議もスルー つくづく日本を腐らせているのは大メディア」

 「原子力規制委員会」が、反対意見を押し切ってまで結論を急いだのは、政府の方針転換に足並みを揃えるためだ。委員長自ら「政府の法案提出というデッドラインがあり、やむを得ない」と説明している。しかし、これも驚くべき発言なのではないか。

 もともと「原子力規制委員会」は、3.11の原発事故を踏まえ、「規制」と「推進」の分離を図って設立されたものだ。「原子力規制委員会」は、その名の通り「規制」のための「独立機関」のはずである。なのに「推進」を図る政府の意向に従うなら、もはや存在する意味がないだろう。

 どうかしているのは、目の前で異常なことが起きているのに、大手メディアがスルーしていることだ。実際、多くの国民は、この国会でなにが起きているのか、ほとんど知らないのではないか。

 「なぜ、大新聞テレビが、一連の異常事態について大きく報じないのか理解不能です。とくに独立機関である“規制委員会”が、政府の下請けのようになっているのは大変な話です。まさか、独立機関の大切さが分かっていないのでしょうか」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)


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2月15日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』2月15日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「日銀総裁人事でもチラつく影 今なお国を歪める安倍の亡霊」

■権力に溺れたナルシズム

 ドイツの社会学者マックス・ウェーバーは著書「職業としての政治」で、「権力に溺れたナルシシズム、要するに純粋な権力崇拝ほど、政治の力を堕落させ歪めるものはない」と断言した。権力に溺れたナルシシズムとは岸田か、あるいは安倍の亡霊なのか。

 「外交安保も金融政策も原発推進も、安倍路線を継承し、拡大させていますが、これらは本当に岸田首相がやりたかったことなのでしょうか。宏池会らしさはどこにもありません。安倍元首相がやりたかったことを実現させて成仏させてあげるのならば、岸田首相である必要はない。安倍派から後継を出せば済む話です。結局、岸田首相にはビジョンが何もなく、ただ長く権力を維持することしか考えていないのでしょう。だから、長期政権を築いた安倍元首相の真似をしている。1に米国、2に安倍派に媚を売り、タカ派的な政策を強行して安倍支持層に迎合すれば長期政権になると考えているのでしょう。岸田首相が気にしているのは国民生活でも日本経済でもなく、自身の政権維持だけなのです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 岸田は10日、自衛隊の任務に不可欠な防衛装備品を製造する企業の事業継続が困難になった場合は、生産ラインを国有化できるようにする法案を閣議決定。13日は2027年度までに500発を購入することにしていた米国製巡航ミサイル「トマホーク」を23年度に一括購入することも決めたという。

 なぜ、そんなことをする必要があるのか。国民に説明がないまま喜々として戦争国家へ邁進しているように見えるが、これも「安倍元首相の遺志」に突き動かされてのことなのか。岸田自身のナルシシズムがそうさせるのか。

 もっとも、安倍の亡霊に操られているのは自民党にかぎった話ではない。13日の衆院予算委で、立憲民主党の3議員が先週発売された「安倍晋三 回顧録」を手にし、「この記述は事実か」と現閣僚に質問していたのも不思議な光景だった。残念ながら、彼はもういないのだ。異次元緩和の宴も終わった。安倍の呪縛から解き放たれないかぎり、この国は狂気から抜け出せないことを与野党議員は自覚すべきだ。

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2月12日(日) 嘘とデタラメで巻き込まれる戦争などマッピラだ―大軍拡・大増税による戦争への道を阻止するために(その3) [論攷]

〔以下の論攷は憲法会議発行の『月刊 憲法運動』通巻518号、23年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

3,軍拡競争ではなく平和外交を

 〇各論に騙されてはならない

 安全保障政策の大転換に際して、どのような防衛力が必要なのか、どのような装備が効果的か、どこまで防衛費を増やすべきか、その財源をどう確保するのかなどの議論が始まっています。
 しかし、問題はそこにはありません。政策転換の具体的な中身に入る前に、そもそもそのような転換がなぜ必要なのか、という基本的で根本的な問いが十分に議論されていないからです。各論にとらわれて総論での議論から目をそらしてはなりません。
 装備計画や財源論など細部のリアリテイは、そもそもなぜそれが必要なのかという根本的な問いを回避するためのゴマカシです。実際にはできもしない「空想的軍国主義」に現実性を与えるための策謀にすぎません。この土俵に乗らないように注意する必要があります。
 だからと言って無視するわけもいきませんから、提案されている具体的な方策が荒唐無稽で無意味であることを示すことが重要です。個々の具体策の根拠を問いながら、それがそもそも必要あるのかという妥当性を問い続けるべきでしょう。
 敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有として示されている防衛力整備計画が無用で無駄なことを明示することが必要です。ウクライナ戦争が示しているように、現代の戦争は先進技術による誘導弾やミサイル攻撃、AIや電波による索敵、無人ドローンやサイバー攻撃など、これまでとは様相を異にしています。前線と銃後の境も不明確です。敵の基地を想定し、それを攻撃したり島嶼部への着上陸阻止をめざしたりという作戦計画は実態に合わず、全く意味がなくなってしまいました。
 現代の戦争には、「勝者」も「敗者」もありません。戦争が始まったとたんに当事者双方に犠牲者が出て「敗者」となるのです。戦争で勝つことはできず、戦争を避けることでしか「勝者」にはなれないというのがウクライナ戦争の真実であり、憲法9条の理念ではないでしょうか。

 〇歴史の教訓に学べ

 今年のNHKの大河ドラマ「どうする家康」は徳川家康を主人公にしています。家康は徳川幕府を開いて戦国時代に幕を引き、「パクス・トクガワーナ(徳川の平和)」とも評される270年に及ぶ天下泰平の世を生み出しました。その秘訣は武威や武力によって支配する「武断政治」から法律やルールによって統治する「文治政治」への転換です。
 力に頼る政治からの脱却こそが、体制の安定と平和をもたらしたことはきわめて教訓的です。今でいえば、軍事力などのハードパワーから平和国家としての信用力や経済、文化などのソフトパワーへの転換であり、国際関係では軍事から外交への重点移動です。今日の世界でもこのような転換が求められているのではないでしょうか。
 北朝鮮についても、歴史の教訓を学ぶ必要があります。ミサイル発射と核実験が自制された時期があったからです。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領との米朝首脳会談や南北対話が実施されていた期間中、ミサイルが発射されることはありませんでした。このとき核実験も凍結され、対立と緊張は緩和に向かっていたのです。
 この対話が不調に終わった結果、ミサイル発射が再開され、核実験の準備も進められています。昨年末の朝鮮労働党中央委員会総会で金総書記は新型のICBM (大陸間弾道弾)を開発するとともに、保有する核弾頭の数を急激に増やす方針を示しました。
 軍事的圧力はさらなる軍備拡大を促すという軍拡競争が生じたのです。安全を求めて軍備を拡大すればさらなる軍拡を誘発し、緊張が高まって安全が脅かされるという軍拡のパラドクス(ジレンマ)にほかなりません。対話をすれば緊張が緩和し、軍事的圧力を強めれば緊張が激化するというのが歴史の示すところです。
 ウクライナの教訓も学ぶ必要があります。悪いのは侵略したロシアであり、責任を問われるべきはプーチン大統領ですが、ウクライナの側に全く問題がなかったわけではありません。外交は両国によってなされ、それが破綻した結果、戦争を招いてしまったからです。
 ウクライナはロシアの脅威に対抗するために軍拡とNATOへの加盟に頼ろうとしました。このような外交・安全保障政策が失敗した結果、戦争が勃発したのです。力による抑止政策は戦争を防ぐどころか侵略の口実を与えました。もしウクライナが戦争を放棄し、軍事力に頼らず「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」憲法を持っていれば、ロシアは侵略の口実を見つけられなかったにちがいありません。今の日本はこのウクライナの失敗を後追いしようとしているのではないでしょうか。

 〇憲法の制約と時代の要請

 岸田首相は常々「あらゆる選択肢を排除しない」と口にしていますが、これは大きな間違いです。首相は憲法尊重擁護義務を負っていますから、憲法の理念や趣旨に反する選択肢はきっぱりと排除しなければなりません。
 憲法9条の平和主義原則に沿った外交・安全保障政策は、本来、必要最小限度の防衛に徹し海外派兵を行わない、軍事同盟に加盟せず外国の軍事基地を置かない、仮想敵国を持たず対立する国のどちらにも加担しない、東南アジアの非核武装地帯を東北アジアにも拡大する、特定の国を敵視せず全ての国を含む集団安全保障体制を構築するなどによって具体化されるべきものです。
 これに対して、今回の安全保障政策の大転換が目指しているのは、GDP2%の11兆円を超える世界第3位の軍事力、日本が攻撃されていなくても集団的自衛権によって戦争に参加、米軍とともに戦う自衛隊の自由な海外派兵、外国の指揮統制機能等の中枢を攻撃しせん滅する攻撃能力の保有、攻撃される前に実施する国連憲章違反の先制攻撃などです。
 このような転換は戦後保守政治の質的な変容を示すもので、これまでの延長線上でとらえてはなりません。岸田首相は憲法の平和主義原則を真っ向から踏みにじり、60年安保闘争を教訓にして戦後保守政治が採用した解釈改憲の枠さえ、もはや守るべき一線ではなくなってしまいました。
 また、今回の政策転換は時代が直面している問題の解決にも反しています。「自由で開かれたインド太平洋」を旗印に軍事ブロックの強化をめざしているからです。「国家安全保障戦略」は「同志国との連携」を打ち出し、「国家防衛戦略」は、「日米同盟を中核とする同志国等との連携を強化する」と述べています。そのために、日米豪印の「クワッド(QUAD)」などだけでなく、地理的に離れたイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどとの軍事的協力を強めてきました。
 しかし、国の内外で大きな問題となっているのは分断と対立の激化です。それを解決するための共存と調和こそが時代の要請となっているのではないでしょうか。国内での政治的社会的な分断に悩まされている典型がアメリカであり、日本はそのお先棒を担いで世界の分断に手を貸そうとしています。
 軍事的ブロックの形成と強化ではなく、分断の解決に向けて力を尽くすのが日本の役割であり、憲法9条の要請です。分断と対立を終わらせ、考え方や価値観、立場が異なっていても共存し友好関係を築けるような東アジアをめざさなければなりません。

 むすび

 戦争へと突き進む危険な道への選択が現実のものになろうとしています。このような「戦争前夜」において、どうすれば「新たな戦前」を阻止することができるのでしょうか。
 まず何よりも必要なことは、多くの国民に事実を知らせることであり、そのために声を上げ続けることです。そして、戦争準備に血道をあげている自民・公明の与党、それに手を貸している維新や国民民主の野党に選挙で大きな打撃を与えなければなりません。
 維新を利用した野党への分断攻撃を跳ね返し、市民と野党の共闘を再建し強化することも必要です。憲法を守り、戦争準備の大軍拡とそのための大増税に反対する立憲野党を励まし、国会での追及に声援を送り、選挙での前進を勝ち取らなければなりません。当面、4月の統一地方選挙と衆院の補欠選挙が大きなチャンスになります。
 世論に働きかけ知らせるためには知らなければなりません。今、何が起きているのか、どこに向かおうとしているのか、戦後安全保障政策の大転換と敵基地攻撃能力(反撃能力)についての嘘とデタラメを見破り、その誤りを分かりやすく伝えていくために、歴史を学び事実を知ることが大切です。
 戦争反対の幅広い世論を結集することも大切です。戦地への動員と戦闘への参加というリスクに最も不安を抱いているのは、自衛隊員とその家族、関係者ではないでしょうか。大軍拡は「身の丈に合わない」と考えている人々も含めた反戦の輪を広げていきましょう。
 支持率低下で窮地に陥っている岸田政権に対しては「勝手に決めるな」の声を高めて通常国会で追い込み、解散・総選挙を勝ち取ること、その機会に「ノー」を突き付けて退陣を迫り、大軍拡・大増税に向けての政策転換をストップすることが大きな課題になります。
 軍拡をめざす政治家や高級官僚に問いたいと思います。これほどの嘘とデタラメが分からないのかと。日米同盟が深化し軍事的一体化が加速すればするほど、周辺諸国との関係が悪化し、国民の不安が高まり、戦争の足音が高くなるのはなぜなのかと。
 重ねて問いたい。あなたがたには、その足音が聞こえないのかと。


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2月11日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』2月11日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「統一教会、日本会議とズブズブ 自民党保守派の正体と家族観」

 伝統的家族観を堅持しようとしているのは、右派組織「日本会議」も同様だ。200人近い自民党議員が議員連盟に名を連ねている。あの森友学園の幼稚園児が「教育勅語」を暗唱していたが、籠池泰典理事長は日本会議のメンバーだった。

 さらには、自民党の全国会議員の7割弱が議連に参加する「神道政治連盟」の存在。昨夏の参院選直前に「同性愛は精神の障害、または依存症」などと差別的な記載のある冊子を議員に配っていたことが分かっている。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「もともと自民党は、統一教会や日本会議と『反共』『改憲』『マイノリティー蔑視』などの考え方で共通している。自民党の強固な支持基盤であり、それを一層強めようとしたのが第2次安倍政権時代です。中でも統一教会とは、岸信介、安倍晋太郎、安倍晋三と3代にわたる付き合いがあり、信頼関係の下、結びつきが強まった。そうした中、自民党内で保守派の存在感が、どんどん大きくなっていったのです」

■世界から完全に置いてけぼり

 民主党政権下で一時的に業界団体が自民党から離れた際、自民党は選挙で宗教団体を頼みの綱とし、右傾化が加速した側面もある。そして、安倍政権でますます宗教団体との関係が深まり、党内のリベラル派は苦い顔をしつつも、安倍に服従。アナクロ家族観が自民党の“主流”になってしまったのだ。

 その間、世界は多様性と人権を重視して、さまざまな法整備が進んだ。いまやG7各国に限らず、33の国・地域で同性婚が認められている。女性を家制度に閉じ込め、ジェンダー平等から目を背ける自民党の価値観の古さは際立っている。

 立憲民主党がいま、安倍政権時代の「失われた10年」を検証しているが、少子化を悪化させ、経済成長を阻み、賃金を上昇させられなかったのは、教育勅語を礼賛し、家族主義を標榜するような政治を続けてきた末路なのではないか。この10年で、日本は完全に、世界から置いてけぼりにされてしまった。

 「失われた10年ではなく、『ぶっ壊された10年』ですよ。日本はいまはGDPで世界3位ですが、今年中にも人口8000万人のドイツに逆転されそうです。岸田首相もいつまで古い安倍路線を続けるんですか」(五十嵐仁氏=前出)

 ちょっとだけ「寄り添うふり」は国民愚弄政党の常套手段だ。リベラルな宏池会の領袖のくせに、自らの保身と政権維持のために党内保守派の顔色ばかりうかがい続ける岸田は、亡国の首相と言わずして、何と言う。

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2月10日(金) 嘘とデタラメで巻き込まれる戦争などマッピラだ―大軍拡・大増税による戦争への道を阻止するために(その2) [論攷]

〔以下の論攷は憲法会議発行の『月刊 憲法運動』通巻518号、23年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

2,日米軍事同盟の危険性とアメリカの狙い

 〇着々と進む戦争準備―これまでにない危険性

 戦争法の「存立危機事態」による集団的自衛権の行使は、アメリカが始めた戦争への参戦システムにほかなりません。ベトナム戦争やイラク戦争のときのように、戦闘への参加を断ることができるのでしょうか。憲法9条という「防波堤」によって守られてきた自衛隊が、いよいよ米軍の指揮・統制のもとに実際の戦闘に加わるリスクが現実のものになろうとしています。
 しかも、現在想定されている「有事」はインドシナ半島や中東地域ではなく、日本の周辺です。「台湾有事」ということになれば南西諸島や沖縄が戦場になる危険性があります。中国が勢力圏を確保するために設けた海洋上の防衛ラインである第1列島戦は、九州沖から沖縄、台湾フィリピンを結んでいるからです。
 アメリカはこれを安全保障上の脅威と考え、ミサイル網などを整備しようとしています。日本政府も南西諸島の「要塞化」を計画し、与那国島から奄美大島までの琉球弧の島々に自衛隊の基地やミサイル部隊を展開しつつあります。
 そればかりではありません。統合司令部を設置して統合司令官ポストを新設する、沖縄の陸上自衛隊第15旅団を強化する、宇宙空間での作戦行動を強化するために航空宇宙自衛隊に改称するなどの方針を打ち出し、宇宙空間での攻撃への日米共同対処も合意されました。
 在日米軍もこれと連携する体制を強め、沖縄に即応部隊として海兵沿岸連隊(MLR)を新設し、ハワイにあるインド太平洋軍の指揮権を横田に移そうとしています。自衛隊での統合司令部創設を受けての再編であり、自衛隊はますます深く在日米軍に組み込まれることになります。
 在日米軍は現状においても大きな被害を与え、罪を犯しています。先進国ではありえない首都周辺での基地の存在と横田空域の占有、米軍基地周辺でのフッ素化合物(PFAS)による水質汚染の疑い、オスプレイによる市民生活への脅威、米軍将兵による犯罪被害と地位協定での特別扱い、特に沖縄での基地強化と辺野古新基地の建設、「思いやり予算」による財政の圧迫など、数え上げたらきりがありません。これらを減らすのではなく拡大しようというのです。今後も基地負担の増大とリスクの拡大は避けられません。

 〇アメリカは過ちを犯さなかったのか
 
 ここで問われるべきは、これまでのアメリカは過ちを犯さなかったのか、アメリカという国は信用できるのか、ということです。歴史を振り返ってみれば、いずれの問いにも「ノー」と答えざるを得ません。
 ベトナム戦争ではトンキン湾事件をでっちあげて攻撃を開始しました。ペンタゴン・ペーパーによる情報操作もありました。嘘をついて戦争を始めた過去があるのです。そして、ベトナムの人々を130万人も殺し、自国の若者をベトナムに送って5万8000人の命を奪ってしまいました。
 イラク戦争では重大な判断ミスを犯しています。大量破壊兵器を開発・保有しているとして攻撃し、フセイン大統領を捉えて処刑しましたが、結局、大量破壊兵器は見つかりませんでした。完全な濡れ衣で政権を倒してしまったのです。無法な戦争によって過ちを犯したのはアメリカでした。
 「台湾有事」における主導権はアメリカに委ねることになりますが、それで大丈夫なのでしょうか。このような過ちに満ちた過去を持つアメリカなのに。日本に対する攻撃に「着手」したという情報と判断はアメリカ頼りにならざるを得ないのですから。嘘をついて戦争を始め、判断ミスによって政権を転覆してしまった過去を持つ国に、これほど深く依存し日本の命運と国民の命を預けても良いのでしょうか。
 ベトナム戦争では、アメリカの要請によって韓国は延べ30万人の軍隊を派遣し、自国の若者5000人近くの命を失う結果になりました。憲法9条を持つ日本は出撃基地になったものの憲法の制約によって部隊を派遣することはなく、誰一人殺すことも殺されることもありませんでした。ここに「防波堤」としての憲法9条の威力があったのです。
 この威力を自ら放棄し、韓国が犯した過ちと同様の道を歩もうとしているのが今の日本です。「台湾有事」に巻き込まれ、他国と自国の若者の命を奪うようなことを、この国の政府に許して良いのでしょうか。
 アメリカはベトナム戦争で大きな過ちを犯しました。沖縄に米軍基地が無ければ避けられたかもしれない過ちです。沖縄の米軍基地はアメリカにとっても無いほうがよかったのです。
 「台湾有事」でも、沖縄や南西諸島の基地の存在は偶発的な衝突を本格的な戦争へと発展させる誘因になるかもしれません。基地が無ければ断念せざるを得ないのに、基地あるがゆえに戦争へと踏み切ってしまうリスクがあるからです。
 しかも、戦後のアメリカは中南米やアフリカ、インドシナや中東などで、不当な軍事介入を繰り返して失敗を積み重ねてきました。日本政府はこれに追随するばかりでした。北朝鮮や中国に対してだけアメリカは間違えず、日本政府も自主的な対応が可能だと言えるのでしょうか。

 〇アメリカの思惑と隠された狙い

 日米軍事同盟の危険性を考える際に最も重要なことは、日本とアメリカとは異なる立場と利害を持っているということです。両国は独立した別々の国ですから当たり前のことですが、日本政府はもとより国民の多くもこのことを忘れています。
 日本はサンフランシスコ条約によって独立しましたが、多くの基地は残り半占領状態が続きました。最も深刻なのは精神的なアメリカ依存であり、軍事的外交的な隷属です。これは解消されなかったばかりか国際的な分断とブロック化が進む下でさらに強まっているように見えます。
 日本とアメリカの最も大きな違いは、東アジアの緊張への対応にあります。日本は周辺地域の緊張緩和を必要としていますが、アメリカは必ずしもそうではありません。適度な緊張の発生と継続は「軍産複合体」に支配されているアメリカに大きな利益をもたらすからです。
 ウクライナでの戦争は米製兵器の在庫処分と新型兵器の見本市のようになっています。兵器などの軍事支援のほとんどは軍需産業の売り上げとしてアメリカに還流し、ボーイング社などの軍需産業は「死の商人」として利益を上げ、一部を政治献金しています。さすがにアメリカも自国が戦場になるのは望んでいないでしょうが、他国の戦争は「蜜の味」なのです。
 アメリカ政府は昨年暮れに台湾への4億2800万ドルの武器売却を発表しました。これはバイデン政権になってから7度目になります。このような商売は台湾海峡での緊張の増大があるからこそ成立するのです。
 日本も同様です。トマホークの購入経費2100億円が来年度予算案に計上されました。「台湾有事」への懸念がなければ「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有や古くさくなり有効性が疑問視されている巡航ミサイルの爆買いなどあり得ません。まさに、東アジアでの緊張激化が米軍需産業に巨大な利益をもたらしているのです。
 アメリカと日本の違いはこれだけではありません。中国との関係でも大きな違いがあり、利害関係は異なっています。中国と日本は歴史的な関係も深く、身近な大国で最大の貿易相手国です。中国に進出している日本の企業は1万3000社を数え、そこに住んでいる日本人は10万人以上でアメリカに次ぐ多さです。
 このような国と戦争できるのでしょうか。仮想敵国として考えること自体、大きな間違いです。たとえアメリカとの武力紛争が生じたとしても、日本が攻撃されない限り、その紛争に日本は関わらないという立場を明確にするべきでしょう。
 また、アメリカには隠された狙いがあることにも注意が必要です。それは、東アジアでの緊張と安全保障政策を口実にして日本をコントロールし、その足を引っ張ろうとしていることです。急速な経済成長で日本が強力なライバルとなり、貿易摩擦まで引き起こした過去の教訓を学んでいるからです。
 このアメリカの隠された狙いに気づかず、日本政府は隷従路線を強めています。経済安全保障を名目にした産業活動への規制や日本学術会議への攻撃はその具体的な表れでした。経済や産業と科学技術の自主的で自由な発展こそが「成長戦略のカギ」であるにもかかわらず、アメリカの圧力に屈して軍事に動員しようとしているからです。手ごわい競争相手となった過去の歴史を繰り返さないという、アメリカの狙いを見抜かなければなりません。
 国の富を経済発展や産業育成、民生分野につぎ込んできた「9条の経済効果」と軍事にかかわらない自由で基礎的な学術研究の発展こそ、日本の強みの源泉でした。その強みがあったからこそ、アメリカに対抗し貿易摩擦を生み出すほどの力を発揮できたのです。
 その力の源泉が奪われようとしているのです。中国を敵視することによって東アジアの危機を作り出し、それを利用しながら軍拡へと誘導することで成長への芽を摘み弱体化を図るというのが、アメリカの隠された狙いなのではないでしょうか。



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2月9日(木) 嘘とでたらめで巻き込まれる戦争などマッピラだ―大軍拡・大増税による戦争への道を阻止するために(その1) [論攷]

〔以下の論攷は憲法会議発行の『月刊 憲法運動』通巻518号、23年2月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 岸田政権は戦後安全保障政策を大きく転換する閣議決定を断行し、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」からなる「安保3文書」を改定しました。ここで打ち出された敵基地攻撃能力(「反撃能力」)の保有は日米首脳会談で確認され、共同声明で「日本の反撃能力およびその他の能力の開発、効果的な運用について努力を強化する」と明記されました。
 戦前も、このようにして戦争への道を突き進んでいったのでしょうか。「安保3文書」は大軍拡・大増税という総動員体制への転換を打ち出しています。平和憲法を無視し、戦後の安全保障政策を真っ向からくつがえして、日本を戦争へと引きずり込もうとするものです。
 しかも、この政策転換は嘘とデタラメに満ちており、国民に隠れて実行されました。日本が攻められてもいないのに、平和安全法制(戦争法)によってアメリカが始めた戦争に「お付き合い」して巻き込まれることになりそうです。
 かつて渡辺白泉は「戦争が廊下の奥に立ってゐた」と詠み、気がつかないうちに戦争が始まってしまうことへの不安や無力感を表現しました。今回の政策転換は「戦争が表玄関から入ってきた」ようなものではないでしょうか。気がついてからでは遅いのです。今なら追い出して扉を閉めることができます。
 そのための手立てを考え、大きな声を上げていかなければなりません。大軍拡・大増税による「新しい戦前」などマッピラです。このまま「古い戦後」を維持して平和で安全な日本を次の世へと手渡していきたいものです。
 それは日本のためだけでなく、東アジアの緊張緩和と平和的な共存のためにも必要なことです。日本に軍事分担を迫り、緊張を高めて戦争へのリスクを増大させているアメリカにとっても有益な解決策となるにちがいありません。戦争になれば、どの国でも大きな犠牲は避けられないのですから。
 今は、歴史の転換点です。どのような方向に変えていくのか。問われているのは私たちの選択です。誤りのない選択によって次の世代に平和な世界を手渡すことができるかどうか。今に生きる私たちの判断力と責任が問われているように思われます。

1,「安保3文書」による平和憲法破壊の挑戦

 〇噓ばかりの「国家安全保障戦略」

 「わが国の安全保障に関する基本的な原則を維持しつつ、戦後のわが国の安全保障政策を実践面から大きく転換する。」
 これは「国家安全保障戦略」の冒頭にある一文です。すでにここに嘘があります。「基本的な原則」である専守防衛が維持されるわけではありません。そもそも原則が維持されていれば、「大きく転換」したことにはなりません。嘘をついているから、矛盾した記述になっているわけです。
 このすぐ後に「安全保障に関する基本的な原則」が掲げられ、「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず」と書かれています。これも嘘です。「他国に脅威を与え」なければ「拡大抑止」の効果はなく、軍事費が世界第3位になれば、正真正銘の「軍事大国」だからです。
 「国家安全保障戦略」は敵基地攻撃能力を「反撃能力」と言い換え、「相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛により飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からのさらなる武力攻撃を防ぐために、わが国から有効な反撃を相手に加える能力、すなわち反撃能力を保有する必要がある」としています。
 これも大きな嘘です。これまでの説明では、「攻撃がなされた場合」ではなく「攻撃に着手した場合」に指揮統制機能等を攻撃するとしていました。攻撃される前に攻撃するというのです。これがどうして「反撃」になるのでしょうか。
 これに続けて、「武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃が許されないことに一切変更はない」とも書かれています。「着手した段階」で中枢部を攻撃するとしていた説明と矛盾しています。今後の国会審議で、これまでの答弁との整合性を追及しなければなりません。
 今回の政策転換について岸田首相は「自分の国は自分で守るため」だと説明しています。これも巨大な嘘です。中国は日本を責めるとは言っていないからです。しかし、日本が攻められていなくても、台湾周辺での偶発的な武力衝突をきっかけにアメリカが参戦すれば、それに引きずられて日本は戦争に巻き込まれます。
 「平和安全法制の制定等により、安全保障上の事態に切れ目なく対応できる枠組みを整えた。その枠組みに基づき、……戦後のわが国の安全保障政策を実践面から大きく転換する」と書かれているように、戦争法の「枠組み」を「実践面」から実行可能にしたのが、この政策転換だったのです。
 戦争法の法的な「枠組み」を実行できるように自衛隊を増強し、米軍との一体化と共同作戦体制の強化を図ろうというのが、今回の大転換の目的です。そのために日米同盟が「わが国の安全保障政策の基軸」であることを再確認し、専守防衛の国是を投げ捨てることにしたわけです。
 戦争法に基づいて、アメリカへの攻撃を「存立危機事態」と認定すれば、自衛隊は米軍と共に戦うことになります。日本を守るためではなく、米軍を守るための自衛隊の参戦であり、それをきっかけにして日本が本格的な戦争に巻き込まれるリスクが高まります。そうならなくても軍事対軍事による緊張の高まり、軍備拡大競争の激化は避けられません。
 すでにそのような競争は始まっています。台湾への支援強化に対して中国は軍事演習を繰り返し、日米韓の連携強化には北朝鮮も対抗措置を強めています。さらに軍事的圧力を強めれば、これらの動きを鎮めるどころか、緊張を一層激化することになるでしょう。

 〇デタラメに満ちた政策転換

 「国家防衛戦略」もデタラメに満ちています。「島嶼(とうしょ)部を含むわが国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して脅威圏の外から対抗するスタンド・オフ防衛力を抜本的に強化する」と書かれていますが、「脅威圏の外」などどこにあるのでしょうか。北朝鮮のミサイルは日本の上空を飛び越え、中国の中距離ミサイルでさえ日本全土を射程圏内に収め、グアムにまで到達するではありませんか。
 南西諸島など島嶼部での基地の建設は有害無益です。もし中国が攻めてくるとすれば、地上部隊を派遣する前にミサイルやドローンによる空からの攻撃で壊滅させられるにちがいないのですから。わざわざ攻撃目標を作り出して住民の被害を拡大するだけで何の意味もありません。
 財源についての議論もデタラメです。「予算水準が現在の国内総生産(GDP)の2%になるよう、所要の措置を講ずる」とし、「防衛力整備計画」には「金額は43兆円程度とする」と書かれていますが、中身はありません。
 このような増額は2020年にエスパー米国防長官が日本などに「GDP比2%」の軍事費を要求したことが発端です。しかし、ローン契約によって積み残される16.5兆円を加えれば60兆円近くになると、東京新聞は報じています。これだけの額をどのようにねん出するのでしょうか。
 政府は防衛力強化資金、決算剰余金の活用、歳出改革の3本柱に加え、所得税・法人税・たばこ税などの増税、東日本大震災の復興税やコロナ対策積立金の流用、これまで認めてこなかった建設国債の充当まで打ち出しています。まるで「禁じ手」のオンパレードではありませんか。
 岸田首相は「異次元の少子化対策」を指示し、6月を目途に子供関係予算の倍増を示唆し消費税引き上げの動きもあります。財源をめぐる議論はさらに活発化するでしょう。限られた予算をどう使うのか、ミサイルよりも子供のために、という声を大きくしていかなければなりません。そうしなければ、消費税を含めた大増税によって、国民生活が破壊されてしまうのは明らかなのですから。
 コロナパンデミックによって経済活動は疲弊し、国民の生活は大きな困難に直面しました。それを助けるために、90を超える国と地域で消費税などの減税措置がとられています。生活が苦しければ税金を負けるというのが当たり前の政策です。
 しかし、日本はコロナと物価高で国民生活が苦難のさなかにあるのに、増税しようというのです。狂っているとしか言いようがありません。生活苦にあえぐ国民の姿が見えていないのでしょうか。

 〇国民が気づくべきことは

 今回の政策転換には、今までとは異なる危険性があることに注意しなければなりません。
 それは、ウクライナ戦争という新たな事態の下で実行されているということです。「国家安全保障戦略」は冒頭で「ロシアによるウクライナ侵略により、国際秩序を形づくるルールの根幹がいとも簡単に破られた。同様の深刻な事態が、将来、インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて発生する可能性は排除されない」と述べています。
 ウクライナ戦争の勃発によって戦争のリアリテイが増大し、平和と安全に対する国民の不安感も増大しています。これまでにない大きな変化です。世論は変わりつつあり、防衛力の拡大に対する支持も少なくありません。
 「戦争は嫌だ」という気持ちや軍事への忌避感情が減少し、好戦的な雰囲気が増大するなかで、日本は大きな曲がり角に差し掛かっています。国民が気づくべきことは、今の日本が戦前と同じように、戦争への道を歩んでいるということであり、生活を破壊する大増税が押し寄せてくるということです。
 政策転換を行った手法にも大きな問題があります。臨時国会が幕を閉じるのを待ち、短期間で結論ありきの密室審議でアリバイを作っただけです。座長の元駐米大使をはじめCIA(米中央情報局)のエージェントではないかと疑われるような有識者ばかりで、憲法学者は加わっていません。議事録も作成されず、透明性が欠如した独断的な政策転換でした。
 このような嘘とごまかしの内容を暴くとともに、今回の政策転換がもたらす数々のリスクを分かりやすく示すことが必要です。戦争に引きずり込む安保体制・日米軍事同盟の危険性と戦争への防波堤となってきた憲法9条の役割という相互関係への理解を深めなければなりません。不安を解消できる安全保障政策、憲法9条に基づく外交政策の具体的なビジョンを明らかにしていくことが求められます。


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2月8日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』2月8日付に掲載されたものです。〕

*記事「LGBT差別問題が広島サミット直撃!岸田首相は法整備か、国際社会で赤っ恥か…迫られる選択」

■安倍派におもねて国際社会で赤っ恥をかくのか

 かつて岸田首相は、選択的夫婦別姓制度を早期実現する議員連盟の呼びかけ人だったのに、「政権維持のためなら、そこまで安倍派におもねるんですかね」(政界関係者)。

 騒ぎが大きくなったのを受け、茂木幹事長は6日の会見でひとまず、「LGBT理解増進法案の国会提出に向け、引き続き準備を進めていきたい」とは言ったが、今回は反対派を抑えられるのか。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「法整備するのか、踏み潰すのか。岸田さんのリトマス試験紙になる。トップの自民党総裁が『やれ』と言えばいいだけ。国際社会を納得させられるよう、イニシアチブを発揮できるのかどうかが問われています」

 岸田首相は広島の晴れ舞台で赤っ恥をかきたいのだろうか。


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