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5月13日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月13日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「NATOの東京事務所開設 なぜ議論にすらならないのか?」

 NATOは欧州防衛が本来の目的だ。ロシアによるウクライナ侵攻により、米国は対ロシアでウクライナ支援を続けなければならない。「二正面作戦」は取れない米国が、対中国はアジアの同盟国に関与を強めてもらいたい、ということなのだ。バイデン大統領が韓国の尹大統領を「国賓」としてもてなしたり、米国主導で日韓関係の融和が進められたのもその一環である。

 そんな米国の狙いが分かっているのか、いないのか、主体的にNATOに接近していく岸田は、「なぜ遠く離れたヨーロッパの戦争に、前のめりで首を突っ込んでいくのか」の疑問に、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と繰り返す。

 だが、台湾有事を煽っているのはむしろ米国ではないのか。NATOとの協力強化は、東アジアの安全保障に利するというが、米国からは遠く離れていても、中ロは日本の隣国。米軍との一体化やNATOとの一体化で、むしろ日本が危なくなるのではないのか。ええかっこしいの亡国外交ほど恐ろしいものはない。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。

 「米国がやっているのは自国は無傷のままで、中ロとの対立に日本を引きずり込もうということ。戦場になるのはアジアであり、日本ですよ。NATOは軍事同盟です。NATOの一員のようになることは、『武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する』とした憲法9条に違反します。戦争に向けて旗を振るトップリーダーでいいのでしょうか」

 岸田が米誌「タイム」の次号(12日発売)の表紙を飾る。「日本の選択」と題した特集の一部が電子版で先行公開され、10日から大きな話題になっているが、その中身に多くがア然だったのではないか。岸田が「長年の平和主義を捨て去り、自国を軍事大国にすることを望んでいる」と紹介されているのだ。

 何もこれは同誌の勝手な臆測ではない。岸田が4月28日に首相公邸で同誌のインタビューを受けた結果だ。

 外務省が異議を申し立てたらしく、きのう午後になって「軍事大国」の見出しが修正されたが、それで日本に対する見方が変わったわけではない。平和主義を捨て去り、軍事大国を望む--。これが今の日本に対する世界の捉え方だ。この国はいつから平和を捨てたのか? 憲法9条はどうなったのか? そもそも岸田は海外メディアに伝える前に、自国民に伝えたのか? フザケルな、である。

 軍事力を肩代わりしてくれるのだから、米国にとってはありがたい首相だろう。表紙になった自分を眺め、「安倍元首相にもできなかったことをやった!」と、また舞い上がる姿が目に浮かぶ。

 「評価されていると勘違いして、自画自賛するのでしょうね。岸田首相というのは、流れに任せて状況に対応するだけの人。将来的なNATOのリスクを自覚していない。ウクライナ戦争を契機に軍拡を望む世論の高まりがありますが、それが、いつか来た道へ踏み出すことにつながることを、国民はきちんとわかっているのでしょうか」(五十嵐仁氏=前出)

 「抑止力強化」「防衛力強化」のはずが世界も認める「軍事大国」。米国に乗せられ、“汚れた称号”をもらおうとしているのが、この国の現実だ。これでいいのか。

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