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8月6日(水) 与謝野経済財政担当相は「市場原理主義」とどう「闘う」のか [規制緩和]

 「やっぱり」と思ったのは、麻生さんの暴言だけではありませんでした。福田改造内閣後の新閣僚の発言を聞いて、もう一つ、「やっぱり」と思ったことがあります。
 それは、与謝野馨経済財政担当相の発言です。

 内閣府での新旧閣僚の引き継ぎ式での光景です。大田弘子前経済財政担当相がにこやかに語りかけました。「経済の足もとの不透明感が強いほど、先の展望を切り開く成長戦略が大事。これから実行段階ですので、どうぞよろしくお願いいたします」
 テレビに映った与謝野さんは、面白くなさそうな顔をして聞いていました。それを見ていた記者の一人が、「ひと言」と声をかけます。
 与謝野さんは、それこそ、「ひと言」で答えました。「ないです」

 翌日の新聞には、「改造内閣 新閣僚に聞く」という記事が出ています。「与謝野さん、経済・財政 どんなかじ取りを?」という見出しが目に付きました(『朝日新聞』8月5日付)。
 「経済財政諮問会議は、構造改革路線の象徴として与党からも批判の声が出ています。どう運営しますか」という問いに、与謝野さんはこう答えています。

 「国民の代表は国会議員だ。諮問会議は経験や知識を持っている方の集合体で、そこで決めたことは大筋で正しいと思うが、国の意思として決定するためには、やはり国会議員が参加したものの決め方が重要だ。与党の意見も聞きながら、ものごとを決めていくのが正しい手順だ」

 諮問会議より国会だ、というのが、麻生さんの意見です。「与党の意見」を聞く方が「正しい手順だ」と、与謝野さんは断言しています。
 経済財政諮問会議の地盤沈下は、これまで以上に進むことになることでしょう。「構造改革路線の象徴」よりも、「国会議員が参加したものの決め方」の方を重視するということですから……。
 また、「規制改革担当相も兼務します。タクシーの新規参入や『日雇い派遣』について政府内に規制再強化の動きがありますが、どう考えますか」という問いに対しても、次のように答えています。

 「規制緩和はすべて善である、という考えはとらない。例えばタクシー運転手の年収が200万円というのは問題だ。正規雇用と非正規雇用の賃金格差も考えないといけない」

 与謝野さんが、その著『堂々たる政治』の中で、官房長官就任に際して「個人的には、永田町を含め巷にはびこる『市場原理主義』的な考えと闘うということを密かに心に決めていた」と書いていたことは、すでに8月3日のブログ「明確になった小泉『構造改革』路線からの反転」で紹介しました。
 このインタビューでの発言は、このときの「決意」が今も変わっていないことを示しています。「規制緩和はすべて善である、という考えはとらない」というのですから……。

 そうだとすれば、与謝野さんは「市場原理主義」とどのようにして「闘う」のでしょうか。経済財政担当相となった与謝野さんのこれからの「闘い」が見ものだということになるでしょう。

7月24日(木) ますます明らかになった「反転」の必要性 [規制緩和]

 昨夕、研究所で、前期の打ち上げを兼ねた歓送迎会が行われました。しかし、仕事はまだ残っています。
 25日(金)に、「大原ネットワーク」の立ち上げとシンポジウム「大原孫三郎の遺したもの」が開催されます。これが終わると、夏休みです。
 大学の夏休みは8月1日から9月13日までとなっています。この間、研究所の閲覧は可能ですが、土曜日は休みで午後4時には閉館となりますので、閲覧者の方はご注意下さい。

 それにしても、驚きました。またもや、無差別殺傷事件の発生です。
 それも、私の住む八王子での事件です。京王線の駅ビル9階にある「啓文堂書店 京王八王子店」で本棚の整理をしていたアルバイトの女子大生が、見知らぬ男に突然、胸を刺されて亡くなりました。客の女性も切りつけられたそうです。
 誠に痛ましい事件です。逮捕された男は「仕事がうまくいかず、両親に相談したが、のってくれなかった」「無差別に人を殺そうと決意した」と供述しているといいます。

 またしても、「仕事」が背景にあったようです。現代の働き方が、このような形で人間を歪めてしまうということなのでしょうか。
 仕事で悩みを抱えていたという点など、秋葉原の無差別殺傷事件との共通性があるように見えます。「仕事がうまくいか」ないことが、「無差別に人を殺そうと決意」する原因になりうるような社会を、どう考えたらよいのでしょうか。
 働き方のゆがみが、社会のゆがみを生み出しているように思えてなりません。労働のあり方における大きな変化が、社会の崩壊を引き出しているのではないでしょうか。

 22日、厚生労働省は08年版「労働経済の分析」(労働経済白書)を発表しました。企業が競争力強化のために進めたパートや派遣など非正規雇用の拡大が、かえって生産性の上昇を停滞させていると指摘されているといいます。
 日本型の長期雇用に戻って人材育成に力を入れ、1人の生み出す付加価値を高めることが人口減少社会で経済発展を持続させるカギだと提言しているそうです。市場原理主義や成果主義を見直し、ステークホルダー論に立ち戻るように勧めているというわけです。
 このような主張もまた、新自由主義政策からの反転にほかなりません。新自由主義によって壊されてしまった企業と社会の再生は急務だと言うべきでしょう。

 「YKKトリオ」の一人であった山崎拓自民党元幹事長は、21日に大津市での講演で「小泉時代は終わった。単に構造改革を唱えるだけでは日本が持たない」と述べたそうです。盟友の小泉元首相の構造改革路線に決別宣言をしたとして、注目されました。
 山崎さんは「小泉政権がなければ自民党はもっと前に衰弱していたが、一時立ち直った」と評価しつつも、その一方で「もうポスト小泉だ。地方を活性化しないと、東京一極集中だけで国は伸びていかない」と強調し、福田首相が力を入れる中央と地方の格差是正路線を支持したそうです。

 YKKの盟友であった加藤紘一さんに続いて山崎拓さんからも、小泉構造改革路線は引導を渡されたことになります。そのうち、小泉さん自身、こう言い出すかもしれません。
 「人生いろいろ、改革もいろいろ。何が構造改革かだって。そんなこと、今私に聞かれたって分かるわけがない」

7月20日(日) 反転の夏 [規制緩和]

 一昨日、ちくま新書の裏表紙に掲載する写真を撮ってもらいました。これで、こちらが渡さなければならない材料がすべて揃ったことになります。

 この新著の仮題は『反転の構図-労働の規制緩和をめぐって』となっています。ここで「反転」というのは、自由主義政策からの離脱、あるいは見直し、修正という意味合いです。拙著は、「労働の規制緩和」についてこのような状況が生まれていることを指摘し、それがどのような経緯で、何故、どのようにして生じたのかを明らかにしようとしたものです。
 労働分野における反転の代表的な例は、労働者派遣法の見直し問題でしょう。日雇い派遣の原則禁止ということでは、ほぼ与野党の主張は一致しています。
 厚生労働省は、秋の臨時国会に改正案を提出する予定です。今後は、この規制の範囲をどこまで拡大するかという点での綱引きが行われるでしょう。
 いずれにしても、派遣という雇用形態について、緩和から規制強化へという転換が生じたことは明らかです。行き過ぎを是正するということであっても、大きな前進だと思います。

 しかし、これまでの政策からの離脱、あるいは見直しや修正は、なにも労働の分野に限られません。このところ、様々な分野での反転の動きが目に付くようになりました。
 規制緩和は格差の拡大や競争の過熱などの新たな問題やひずみを生み出し、その是正や規制強化が必要になったからです。先の通常国会では、青少年有害サイト規正法、改正出会い系サイト規正法、改正迷惑メール規正法、保険法、改正携帯電話不正利用防止法、改正特定商取引法・割賦販売法、改正介護保険法、改正省エネルギー法など、規制を強めるための法律が成立しました。

 02年に実施されたタクシーの規制緩和策についても、国土交通省は7月11日に参入・増車の規制対象地域を拡大する局長通達を出しました。許可制から届け出制に緩和したためにタクシーの台数が増えすぎて、過当競争が生じたからです。
 売り上げや収入が減少し、交通事故が増えるという問題が生まれました。料金は下がるどころか、初乗り運賃は640円から710円に上がっています。
 このタクシーの規制緩和によって、一体、誰が利益を得たのでしょうか。タクシー用車両のリース業を展開して大もうけしたオリックスの宮内義彦さんくらいです。

 昨日の新聞にも、反転や見直しに向けての動きが報じられました。18日に開かれた日弁連の理事会で司法試験の合格者を増やす方針について、「弁護士の質の低下が指摘されており、増員を急ぐべきではない」として見直しを求めることを決めています。
 また、厚生労働省は18日、若手医師の臨床研修制度を見直し、大学病院に限って医師不足が顕著な産婦人科や小児科などに特化した研修プログラムを認める方針を決めました。
 さらに、『朝日新聞』7月19日付は教員免許の10年に一回の更新制について特集記事を掲げ、「中止という選択肢もあるのではないか」と指摘しています。いずれも、これまでの政策や制度の見直しや中止の動きです。

 まだあります。18日に開かれた沖縄県議会の6月定例会で、「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書案・決議案」が賛成多数で可決されました。決議に法的な拘束力はありませんが、きわめて重要な「見直し」の要求です。
 野党は今後、対決姿勢をさらに強めることになるでしょう。これが、沖縄における基地強化における反転の契機になることを願っています。
 沖縄のみならず、全国にある米軍基地の「見直し」に連動すればよいのですが……。日米間の軍事的連携の強化においても、是非、反転が生じて欲しいものです。

 もう一つ、公立の美術館や博物館における指定管理者制度の見直しの動きについても紹介しておきましょう。『日経新聞』7月19日付の「文化欄」にあったものです。
 記事は、「廃止や変更に踏み切る事例が相次いでいるほか、独立行政法人といった代替方式を模索するケースも現れた」と書いています。運営形態は、「ケースバイケースで考えるべきだ」「優秀な人材を確保できる形態」を選ぶべきだ、などという識者の指摘を報じていますが、当たり前のことでしょう。
 コスト削減一辺倒では、文化が死んでしまいます。美術館や博物館の存在価値にふさわしい運営形態を考えるのは当然のことです。

 まさに、「反転の夏」とも言うべき「見直し」の盛況ぶりです。これ以外にも、ブッシュ米大統領のイラク戦争への支持や後期高齢者医療制度の導入など、小泉構造改革が犯した過ちからの反転の必要性はますます明らかになってきています。
 それはいずれ、自民党政治全体の見直しと反転に結びついていくに違いありません。そしてそのチャンスは、次第に近づいてきているのではないでしょうか。



7月8日(火) 加藤紘一自民党元幹事長の注目すべき発言 [規制緩和]

 自民党内でもリベラルとして知られる加藤紘一元幹事長が、注目すべき発言をしています。これも、新自由主義政策からの「反転」を示す一つの兆候であると言えるでしょう。
 報道によれば、加藤さんは次のように発言したそうです。

 自民党の加藤紘一元幹事長は6日、山口県萩市での講演で「小泉・竹中路線で自民党の評判が悪くなって、福田さんがかぶっている。政策を変える、という意味でも内閣改造をすべきだ」と述べ、内閣改造によって政策転換をアピールすべきだと主張した。また改造しない場合でも「小泉・安倍(政権)時代からの経済財政諮問会議メンバーを一掃すべきだ」と強調した。

 「小泉・竹中路線」によって実行されてきた「政策を変える」ために、「内閣改造をすべきだ」というのが、加藤さんの主張です。つまり、加藤さんは「構造改革」路線の転換を求めているのです。
 内閣改造をしない場合でも、「小泉・安倍(政権)時代からの経済財政諮問会議メンバーを一掃すべきだ」というのは、4人の民間議員を交代させるべきだという主張になります。経済財政諮問会議の閣僚メンバーは個人ではなく役職によって決まっていますから、内閣が改造されなければ交代できません。
 しかし、民間議員の場合はそうではありません。民間議員4人を交代させることで、これまでの路線を変えるべきだというのが、加藤さんの主張なのです。

 新自由主義的な市場原理主義に対する批判を展開してきた加藤さんとすれば、当然の発言でしょう。というのは、これまでも加藤さんは、著書の中で、次のように書いていたからです。

 私の感覚的な表現でいえば、大都会を中心として、地上5メートルぐらいの中空に何十万人もの意識が、さながら糸の切れた風船のように漂っているような気がしています。
 その風船が、そのときどきの風に応じていっせいにひと方向に走る。
 そうした熱狂は小泉政権下で加速したように思います。
 この本では、なぜこうした糸の切れた風船のような群衆が日本に生まれたのか、明らかにします。
 答えから先に言えば、1990年代から急速に台頭した市場原理主義によって、これまで地域や会社や家庭という日本人がよりどころとしていた共同体が徹底的に破壊され、人々がよりどころとする場所がなくなったためです。(加藤紘一『強いリベラル』文藝春秋、2007年、9~10頁)

 加藤さんの主張の中心は、日本の「保守」の再建にあります。市場原理主義によって「保守意識というものの大きな基盤となってきた」(同前、72頁)コミュニティが危うくされているというのです。
 小泉政権の構造改革によって、「これまで地域や会社や家庭という日本人がよりどころとしていた共同体が徹底的に破壊され、人々がよりどころとする場所がなくなった」(同前、10頁)というのが、加藤さんの批判でした。
「小泉政権で自民党は保守政党ではなくなった」。これが、加藤さんの本の第三章の表題です。やはり、小泉さんはそのスローガン通り、「自民党をぶっ壊した」ということになりましょうか。

 俯瞰してみれば、小泉政権は、これまでの自民党の内閣とははっきり性格を異にしていました。
 (中略)
 それまでの自民党は、どちらかというと無自覚に、アメリカの要求する「市場化」の政策をとりいれてきました。
 私もそのひとりです。
 (中略)
 そのことの社会に及ぼす影響がこれほどまでに破壊的なものであるということに私は無自覚でした。
 当時の自民党の議員もそうだと思います。
 ところが、2001年に成立した小泉政権は違うのです。
 むしろこうした社会に及ぼす影響を十分にわかったうえで、さらにアクセルを踏んだのが小泉政権の特徴でした。(同前、79~82頁)

 この加藤さんの記述を読んだとき、私は驚きました。加藤さんは「YKK」と言われた「3人組」の1人で、山崎さんや小泉さんとは盟友だったからです。
 ということは、小泉さんを権力の座に押し上げるのに、加藤さんも一役買ったという関係にあります。それ以前にも、新自由主義政策第2段階である橋本内閣を自民党の幹事長として支えた張本人ではありませんか。
 この橋本内閣は「6大改革」を掲げて「9兆円の負担増」を実施し、経済不況を招き寄せて参院選で大敗しますが、その翌年の98年から10年連続で自殺者は3万人を超えています。もちろん、反省しないよりはした方がよいと思いますが、しかし、自ら命を絶った泉下の30万人は、この加藤さんの言を何と聞くでしょうか。

 いずれにしましても、新自由主義政策を導入した人々も、その意味がよく分かっていなかったということになります。なんということでしょうか。
 今ごろになって、その破壊的な結果に驚いているとは……。それをまた、著書にアッケラカンと書くなんて、加藤さんは政治家の責任についてどう考えているのでしょうか。

 ところで、今日、10月に刊行予定の拙著『転換の構図-労働の規制緩和をめぐって(仮題)』(ちくま新書)の初校ゲラが出てきました。仕事が速いですね。
 これなら、10月初旬の刊行に、十分間に合うでしょう。後悔しないようにきちんと加筆・校正しなければと、気を引き締めているところです。

6月28日(土) 規制改革会議のその後 [規制緩和]

 労働の規制緩和には、二つの「エンジン」がありました。一つは、経済財政諮問会議であり、もう一つは、規制改革会議です。
 経済財政諮問会議は、昨日、「骨太の方針2008」を出し、閣議で決定されました。これに関連して、論攷の執筆を頼まれています。
 「骨太の方針2008」については、いずれ書くことにして、今日は規制改革会議の現状について紹介することにしましょう。

 規制改革会議は、昨年末、「一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めれば、その労働者の保護が図られるという考え方は誤っている」などという「第2次答申」を出して、厚労省と激しいやりとりがありました。これについては、すでに予告した近刊の拙著『反転の構図-労働の規制緩和をめぐって(仮題)』(ちくま新書)で、その経緯を詳しく書きました。
 今日、改めて、当日の議事録と記者会見の記録を見ました。労働問題については、全く、議論になっていません。
 これについての説明もなければ、記者からの質問もありません。「書きっぱなし」ということでしょうか。

 問題は、その後です。ほとんど会議が開かれていません。
 規制改革会議のホームページhttp://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/には「会議情報」というページがありますが、07年度の「本会議」は「答申案文決定」を議題とした「第11回(平成19年12月25日)」以降、開催されていません。
 規制改革会議の「第二次答申」に対しては、厚労省が12月28日付で「規制改革会議『第二次答申』(医療分野及び労働分野の問題意識)に対する厚生労働省の考え方」という反論を出し、規制改革会議は08年2月22日付で「『規制改革会議「第二次答申」(労働分野の問題意識)に対する厚生労働省の考え方』に対する規制改革会議の見解」という長い表題の釈明を明らかにしました。
 ということは、この釈明は会議を開いて検討されたものではないということになります。誰が、どのような権限で書いたのでしょうか。

 会議が開かれていないのは、「本会議」だけではありません。タスクフォースの会議も一度も開かれていません。
 タスクフォースは「重点事項推進委員会」を除いて15ありますが、そのうちのどれ一つとして、08年に入ってから会議を開いていないのです。それは、07年度(08年1月~3月)だけではなく、今年度(08年4月以降)に入ってからもそうなのです。
 つまり、今年に入って、タスクフォースは活動を停止してしまったということになります。それが一時的なものかどうかは分かりませんが、08年前半の半年間にわたって全てのタスクフォースが全く活動しなかったというのは、極めて不自然だと言わざるを得ないでしょう。

 ようやく、6月5日になって、「第1回 規制改革会議」が開かれました。翌6月6日には、第1回重点事項推進委員会が開かれています。
 本会議の議題は、「今後の審議の進め方について」と「規制改革会議の運営方針の改定について」となっています。また、重点事項推進委員会の議題は「厚生労働省との公開討論」ですが、テーマは「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計について」というものです。
 どちらについても、「議事概要」はいまだにアップされていません。今の段階で、議論の内容を知ることは不可能です。

 ただし、規制改革会議については、記者会見の内容が公表されています。これを読めば、この間の活動停止の理由がある程度分かります。
 これについて、草刈議長は次のように説明しています。

 今年に入って、3月まではいろいろやっていたんですけれども、4月以降、後で出てきますが、措置したものをきちんとやっているかどうかのチェックをずっとやって、やっていないものは駄目だよという作業を随分力を入れてやっていただきました。

 また、草刈議長は、タスクフォースについても「今まではこういう形で7つのくくりではなくて、15個ぐらいのタスクフォースという形でやっていました。……それを7つのグループに分けまして、同じような性質のもの、あるいはタスクとして近似性の非常に高いものを一つずつまとめた」と説明しています。
 つまり、この間、会議が開かれなかったのは、「措置したものをきちんとやっているかどうかのチェック」やタスクフォースの再編を行ってきたためだと考えられます。
 このチェックは「6月下旬から7月上旬までやりたいと思っています」と、草刈さんは述べています。まだ、しばらくは続けるつもりのようです。

 何故、このような作業が必要になっているのでしょうか。それは、答申を出しても無視されたり、ひっくり返されたりする例が目立ってきたからだと思われます。
 これについては、記者からも「閣議決定されているにもかかわらず、これだけ通知・通達なんかで、引っくり返されてしまうというようなこともあるというのは、これは規制改革会議を軽視されているようにも映るんですけれども、その辺はどういうふうにとらえていらっしゃるのか」などという質問が出されています。
 これに対して、草刈議長は、混合診療を例に、「その枠を広げるということで、2004年に合意しているんですよ。……ところが、そこに通知というものを、課長が私らに何も言わないで通知を各病院にだして、それで薬事法というのを持ち出して、範囲を狭めるような方向に行ってしまったんです。これは完全に裏切りというか、私らのやったことが全然無視されているわけですから、とんでもない話だといって、去年、……それを引っくり返して、通知を取り消させたんです」と答えています。

 このやりとりから、どうして、規制改革会議がチェックに力を入れているのかが分かるでしょう。混合診療の問題以外にも、「裏切り」や「無視」がないかどうかを洗い出そうとしているわけです。
 記者が指摘しているように、それだけ規制改革会議が「軽視され」るようになっているということではないでしょうか。提言や答申が実施されなかったり動かなかったりする例が増えてきたために、「措置したものをきちんとやっているかどうかのチェック」をやらざるを得なくなり、それに時間を取られたために会議が開けなかったということなのではないでしょうか。

 このような経過には、規制改革会議の地盤沈下が如実に示されています。もはや規制改革会議には、「第二次答申」で示されたような「問題意識」を実行するような力は残っていないようです。
 あれは「冬の花火」のようなものだったのかもしれません。華々しく打ち上げられはしても、季節はずれの花火を見ている人は誰もいなかったようですから……。

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