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10月3日(水) オスプレイによる事故は「人為的」なものだから安全は確保されている? [在日米軍]

 構造的なものだろうと人為的なものだろうと、事故は事故です。人為的な要因だからといって「安全だ」などと言えないことは、子どもにも分かる道理でしょう。
 それなのに、オスプレイの沖縄普天間基地への配備が強行されました。1959年6月39日には石川市の宮森小学校に米軍の戦闘機が墜落して児童ら17人が亡くなるという悲惨な事故が起きていますから、これに対して沖縄県民が大きな危惧を抱き、反対するのは当然のことです。

 第1に、オスプレイは危険きわまりない飛翔物体です。いつ落ちるか分からないものが人口密集地の上空を飛ぶなどということがあってはなりません。
 ハワイでは、米軍は五つの公立学校で公聴会を実施し、ネットや電話、地域自治会訪問で意見を募り、飛行経路のほとんどが洋上であるにもかかわらず、下降気流が遺跡保存に及ぼす悪影響や地元住民の反対、希少生物の生息環境破壊への懸念などに配慮して訓練計画を取り下げました。日本では公聴会などは開かれず、10万人の集会など沖縄県民総意による反対を押し切り、世界一危険だとされている普天間基地にオスプレイを配備しました。
 あまりにも違いすぎる対応だというほかありません。沖縄県民はじめ日本人の生命の価値は、ハワイの遺跡より小さいとでもいうのでしょうか。

 第2に、オスプレイの配備先が、またもや沖縄、それも普天間基地であるということも大きな問題です。普天間飛行場は16年前に返還が決まり、基地負担の軽減が約束されていたにもかかわらず、今また、オスプレイの配備という形で大きな負担が押しつけられました。
 これが、日本政府の言う「最大限の配慮」なのでしょうか。沖縄県民にとっては、「裏切りの歴史」に新しい1頁が書き加えられたにすぎません。
 沖縄での抗議活動が止まないことの背景として、新崎盛暉沖縄大名誉教授は「オスプレイの配備は安全性への疑問もさることながら、沖縄県民が『本土による基地押しつけ』『沖縄差別の象徴』ととらえているからだ」(『朝日新聞』10月2日付)と述べています。日本政府をはじめ私たち本土の人間は、この言葉を重く受け止めるべきではないでしょうか。

 第3に、民意の無視という問題があります。この間、オスプレイの配備と日本全土に及ぶ訓練計画について、各方面から懸念や反対、抗議の声が上がりましたが、それは完全に無視されました。
 10月1日、留任が決まった森本防衛相は「当初米国が考えていた通りの予定を実行した」と語ったそうです。これほど多くの反対がありながら、当初の「予定」が全く変更されなかったことを、森本さんはどう考えているのでしょうか。
 ハワイの住民とは違って、米軍にとって日本国民の声など聞く耳はないということなのでしょう。民意の無視という点では、米政府に唯々諾々と従うばかりの日本政府も同罪です。

 今回の沖縄県普天間基地へのオスプレイ強行配備によって、日米両政府は大きな賭けに出たことになります。この後、もしオスプレイの事故が起きれば、誰が、どのような責任を取れるのでしょうか。
 万一、懸念されているような事故が起きれば、人々の怒りは沸騰し、その矛先は日米同盟自体へと向かうことになるでしょう。日米両政府はそのようなリスクを引き受ける覚悟があるのでしょうか。

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7月20日(金) 日米安保とは本来国民の安全を守るためのものだったのではないのか [在日米軍]

 これを「安保のパラドクス」と言うべきでしょうか。日本国民の安全を守るためだといって結ばれた安保条約によって日本国民の安全が脅かされようとしているのですから……。
 太平洋を越えてアメリカから日本に向かっている米軍の新型輸送機オスプレイ(別名「オチプレイ」?)は、明後日にも岩国基地に陸揚げされようとしています。国民の多くが不安に思い、反対しているにもかかわらず。

 本日付の『朝日新聞』は、一面で大きく、オスプレイの事故が量産決定後の2006~11年の5年間に58件起きていたことが米軍の資料で分かったと報道しています。防衛省は地元自治体に過去の重大事故については説明していましたが、全体の件数は明らかにしていませんでした。
 米軍は航空機事故を三つに区分し、死者や全身障害者が出たり200万ドル以上の損害が出たりした事故を「クラスA」、重い後遺症が残るか50万ドル以上の損害が出た事故を「クラスB」、軽傷者か5万~50万ドルの損害が出た事故を「クラスC」としているそうです。これまで説明されていたのは重大事故の「クラスA」だけだったということでしょう。
 しかし、単に部品が落下するなどの「クラスC」の事故でも、岩国基地や普天間基地周辺などの人口密集地で起きれば、大きな被害が出ることは明らかです。これらの事故の詳細や危険性について情報を明らかにせず、「安全神話」を振りまいて危険なものを沖縄に押しつけるやり方は、原子力発電所を地方の過疎地域に押しつけてきたのと同じような構造を持っています。

 しかもそれは、沖縄だけの問題ではありません。日本全国に訓練のための飛行ルートが設定されているからです。
 このため、高松市で開かれていた全国知事会議は7月19日(木)、オスプレイ配備について「関係自治体、住民が懸念する安全性が確認できていない現状では受け入れられない」とする緊急決議を行いました。この決議では、配備や飛行訓練の内容、影響について政府が責任を持って説明し、自治体の意向を尊重するよう求めています。
 政府に対して、「国民を守るための安全保障ということを忘れてもらっては困る」(尾崎正直高知県知事)、「米軍の通知を知らせるだけの政府なら、どこに国民主権があるのか」(平井伸治鳥取県知事)などの声があがったといいます。野田首相は16日、オスプレイについて「配備は米政府の方針であり、同盟関係にあるとはいえ(日本から)どうしろこうしろと言う話では基本的にはない」と述べ、日本側から見直しや延期は要請できないとの認識を示して批判を浴びました。まさに「どこに主権があるのか」と言いたくなるような体たらくです。

 そもそも、どうしてこの時期、沖縄にオスプレイを配備する必要があるのでしょうか。沖縄が中国に近すぎてミサイルの射程範囲内に入っているため、米軍はグアムなどへの配置換えを行っているというのに、わざわざオスプレイを沖縄に配備しようとしているのは何故でしょうか。
 オスプレイは「未亡人製造器」と呼ばれていて、その危険性については米国内でもよく知られており、米ニューメキシコ州の米空軍基地周辺で予定されていた低空飛行訓練計画に対して住民の反対運動が起きたため、米空軍は6月に訓練延期や内容の見直しを決めています。そのような危険な飛行機をどうして沖縄に配備し、日本で訓練しようとしているのでしょうか。
 それは危険だから、アメリカ国内では自由に訓練できないから、日本にそれを押しつけようとしているのではないでしょうか。ここに、植民地の如く扱おうとしているアメリカの日本に対する認識の一端が示されているように思われます。

 このようなアメリカによるオスプレイの強行配備をはね返す妙案が一つあります。それは、国民の安全を守れないような条約は破棄せざるを得ないとアメリカに言うことです。
 日米安保体制は、この日本をアメリカの植民地として差し出すためのものではありません。国民の「安全を保障」できない日米「安全保障」条約など、とっととやめてしまえばいいのです。

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7月4日(水) 「オチプレイ」強制配備計画が示す日米安保の本質 [在日米軍]

 森本新防衛相はぼやいていることでしょう。「どうして俺が、こんな貧乏くじを引かなきゃならんのだ」と……。
 野田首相に懇願され、渋々防衛相を引き受けた森本さんは、アメリカのお雇い番頭よろしく、あっちに行って頭を下げ、こっちに来て頭を下げ、何とか「オチプレイ」ならぬオスプレイを受け入れてもらおうと必死です。こんな理不尽な要求を、無理矢理、反対を押し切って押しつけなければならないのが日米安保の本質なのだということを、今、森本さんは身をもって学んでいるにちがいありません。

 森本さんは、「(受け入れてもらえる)自信がない」と言っていました。断る方の事情もよく分かるからでしょう。
 しかし、出かけていって頭を下げるしかありません。安保体制下の日米地位協定によって、アメリカの申し出を断ることができないことも、よく知っているからです。
 森本さんは、国民の怒りや不安と、アメリカからの無理無体な押しつけとの板挟みになっています。このジレンマは、独立国でありながら日米軍事同盟によって事実上主権を制限されている日本の現実に根ざしており、それは森本さん自身が高く評価し、支持してきた安保の実態でもあります。

 今回のオスプレイ強行配備の要求には、アメリカという国の日本国民に対する差別、沖縄県民に対する侮蔑を強く感じざるを得ません。墜落事故の可能性があり、犠牲者が出るかもしれないのに、無理矢理配備し、訓練を行おうとしているからです。
 かつて、ケビン・メア米国務省日本部長による「沖縄はゆすりの名人」という発言がありました。今回も、オスプレイの配備に反対することで、沖縄が何かを「ゆすり」取ろうとしているとでも考えているのでしょうか。
 このような危険なものを日本に持ち込んでも、日本の政府や国民は受け入れてくれるにちがいないとなめきっているところに、アメリカ政府の日本国民に対するさげすみの眼差しを感じます。万が一、事故が起きて犠牲者が出ても構わないと考えているとしか思えないからです。

 アメリカがこう考えるようになってしまった責任の一端は、日本政府にもあります。これまで、アメリカによる理不尽で無理無体な要求を、唯々諾々と受け入れてきたからです。
 日本全土に米軍基地を置く権利を認め、米軍の特別な地位を保障し、危険な原子力潜水艦の寄港や原子力空母の母港化を容認し、沖縄の普天間基地の辺野古への移設にも合意しました。いまさら、危ないからといってオスプレイの配備に反対などできないということなのでしょう。
 岡田副総理は、山口県周南市で記者団に対し「日本政府としては、オスプレイの安全性について、『きちんと説明してほしい』とアメリカ政府に申し上げている。ただ、配備することについて、『今しばらくストップしろ』とか、『ダメだ』と言う権限は日本にはなく、そういうなかでギリギリのことをやっていると理解してほしい」と述たそうです。この卑屈な植民地根性を何と言ったらいいのでしょうか。
 「『今しばらくストップしろ』とか、『ダメだ』と言う権限」がなくても、日本政府の意思として「ストップしろ」「ダメだ」と言えばいいじゃありませんか。国民の生命や財産にかかわることなのですから。それを守るのが、政府の役割なのですから。

 ただし、それを言う「権限がない」のも、残念ながら、岡田さんの指摘するとおりです。アメリカによる無理無体な押しつけを受け入れざるを得ないのも日米安保の本質なのです。
 これを拒むためには、日米安保体制を根本的に転換しなければなりません。そのためには、安保条約を破棄すればいいんです。
 日米地位協定の改定には相手との交渉が必要ですが、安保条約の破棄について交渉する必要はありません。条約第10条には、「いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する」と書いてあるのですから……。

 それでは心配だという方がおられるかもしれませんが、安保条約の「終了を通告」し、軍事同盟条約に代えて平和友好条約を締結すれば良いでしょう。太平洋地域の平和確保のための日米間の相互協力を定めれば、日本の主権への制限もなくなり、米軍基地は撤去され、太平洋は本当の意味で「平和の海」となるにちがいありません。

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7月3日(火) オスプレイの配備を許してはならない [在日米軍]

 「安全性に疑問があるものは断然拒否する」「事件事故が起きたら(基地の)即時閉鎖撤去」

 これは7月1日、沖縄県庁で米軍の新型輸送機オスプレイの配備計画を説明した森本敏防衛相に対する仲井真沖縄知事の発言です。この後の記者会見でも、仲井間知事は「危険な安心できない物を人口密集地で運用し、それで“地位協定がありますから”などという話をしたら、それこそ全基地即時閉鎖という動きにいかざるを得なくなると思う」と語っています。
 沖縄県知事が、「全基地」の「閉鎖」、それも「即時」という言葉を口にしたのは、おそらく初めてのことだと思います。今回のオスプレイ配備の計画が、いかに沖縄県民の大きな憤激を呼び起こしているかが分かろうというものです。
 この前日、普天間基地がある宜野湾市の佐喜真市長にも森本防衛相は協力を求めましたが、佐喜真市長はオスプレイの配備に反対した上で、「事故が起きた時に誰が責任を取るのか」などと強い口調で迫りました。また、沖縄訪問の後、森本防衛相は、オスプレイが運ばれて陸揚げされる予定のアメリカ軍岩国基地がある岩国市を訪れて福田市長に理解を求めましたが、福田市長は「安全性に対する不安が払拭されない状況では、飛行の有無に関係なく了解できない」として拒否しました。

 このように、関係する首長が全てオスプレイの配備に強く反対しています。それには、明確な根拠があるからです。
 オスプレイはヘリコプターと飛行機の機能を併せ持つ垂直離着陸機ですが、これまでに6度の墜落事故を起こし、36人の死者を出しています。このために「未亡人製造器」と呼ばれているほどで、「オスプレイ」というより「オチプレイ」と呼びたくなるような危険な代物です。
 今年に入ってからも、4月にモロッコで、6月13日にアメリカのフロリダで訓練中のオスプレイが墜落しました。どうしてこれほど事故が起きるのかといえば、二つの欠陥があるからです。

 一つは、設計上の欠陥がある可能性です。オスプレイはヘリコプターのように垂直に飛び立ち、空中でプロペラを前に倒して飛行機のような水平飛行に移ります。
 この垂直から水平になる途中、プロペラが斜めになったとき、上への揚力が一時的に低下します。後方や横からの風があればバランスを崩して墜落の危険が生じることになりますが、実際に、海兵隊のMV22オスプレイが4月にモロッコで墜落した事故は、追い風を受けた中での操縦ミスとの見方が示されています。
 このように、オスプレイはヘリコプターと飛行機の良いとこ取りをしたとされていますが、両者の機能を結合したために致命的な欠陥が生じた可能性があります。私は専門家ではないので断言できませんが、もしそうなら、構造上の改善や操縦技術の向上などで補うことは難しいでしょう。

 もう一つは、構造上の欠陥です。万一、エンジンが停止して緊急着陸する際、ヘリコプターであれば回転中のプロペラの角度を変えて揚力をつくり出し、安全に着陸させるオートローテーション(自動回転)機能を備えるよう設計されます。
 しかし、オスプレイはこのような機能を持っていません。緊急時には固定翼モードで滑空するとされていますが、グライダーのように滑空するためには、水平飛行の状態になっている必要があります。
 垂直で離陸して水平飛行に移る途中で墜落した場合、このような滑空は不可能なのです。しかも、長距離飛行の能力を持たせるためにプロペラが大きく、墜落時に破損したプロペラで内部の乗務員が負傷しないよう、地面に接触したプロペラはすぐに胴体の外側に外れる構造になっています。

 つまり、オスプレイは設計上、構造上の欠陥を持っている可能性があり、いったん事故が起きれば、周囲に大きな犠牲を生みかねない危険きわまりない飛行物体なのです。このような欠陥機は、アメリカでも民間機であれば航空局から飛行許可が出ないものですが、あくまでも軍用機であるとして許可されました。
 オートローテンション機能のない飛行機は、日本の航空法でも飛ぶことが禁止されています。しかし、日米地位協定によって米軍の装備に日本の国内法は適用されません。
 とはいえ、このことを多少は気にしていたのでしょう。『しんぶん赤旗』7月2日付によれば、防衛省が発行し、国会議員などに配っているパンフレットでは「オートローテーション(自動回転)を行う」と嘘の説明をしているそうです。オスプレイの製造元であるベル・ボーイング社が『ガイドブック』に「オートローテーションに頼らない」と明記しているというのに……。

 このような危険きわまりないオスプレイの配備を許してはなりません。しかも、配備された後、日本全土での飛行訓練も計画されています。
 「安全神話」に惑わされ、事故が起きてから「しっまた」というのでは遅すぎるというのが「フクシマの教訓」でした。このような失敗を再び繰り返さないよう、アメリカによる押しつけを断固として跳ね返さなければなりません。

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5月16日(水) 沖縄復帰40年の歴史が示す最大の教訓とは [在日米軍]

 沖縄は泣いています。そして、怒っています。
 「沖縄を返せ、沖縄に返せ」と……。

 昨日で、「祖国復帰」から40年。米軍基地はなくなると、沖縄の人々は思っていたことでしょう。せめて、「本土並み」くらいには減るだろうと……。
 しかし、40年間に減ったのは、米軍基地の2割にすぎませんでした。今も、在日米軍基地の74%が沖縄に集中しています。「裏切られた」と感ずるのは当然でしょう。
 騒音や米兵犯罪などの基地被害に今もさらされ続けている沖縄の人々にとって、「復帰」とは何を意味していたのでしょうか。この40年間はいったい何だったのだろうと、むなしい思いが募るのも当然ではないでしょうか。

 沖縄米軍基地の存在根拠は日米同盟であり、抑止力論です。同盟に基づいて存在する米軍基地が抑止力となって日本の安全を守っているというわけです。
 「日米同盟神話」というほかありません。基地存続を合理化するこのような論理が、真実であるかどうかは誰にも実証できないのですから……。
 少なくとも、過去40年間における在沖米軍基地の役割について、事実に基づいた検証が必要です。それが、どのような意味で日本と日本国民の安全に役立ったのか、逆に、沖縄県民を米軍犯罪の危険にさらし、ベトナム戦争の時と同じように、イラク戦争やアフガニスタンへの軍事介入の出撃拠点として利用されただけではないのかと……。

 沖縄県民の7割以上が日米軍事同盟を無くしたいと考えているそうです。そうすれば米軍基地も撤去されるのですから当然でしょう。
 基地の存在によって生ずる苦しみは、その根拠となっている日米同盟への敵意を増大させているわけです。基地の存在が同盟の存在を脅かしているというこの現実を、日米両政府は直視するべきでしょう。
 真の友好に基づく日米関係の発展のために、沖縄米軍基地の存在は大きな障害となっています。基地の撤去・縮小こそが、日米両国の真の友好と関係の強化に必要なことなのです。

 長年にわたる本土政府の無為・無策に怒った沖縄の人々の中には、「沖縄の独立」を唱える人もいます。しかし、必要なのは、日本からの沖縄の独立ではなく、アメリからの日本の「独立」でしょう。
 アメリカに対して、対等な立場から在日米軍基地の撤去・縮小を要求できる政府が必要です。この点では、自民党も民主党も失格です。
 沖縄にとって、政権交代は存在しなかったも同然でしょう。米軍普天間基地の移設問題で、民主党政府は自民党政府と同じ立場に立ってしまったのですから……。 

 日本政府が説得するべきは、沖縄ではなくアメリカです。日本政府がめざすべきは、現状の維持ではなく、その変更です。
 そのような政策を実行できる政府を樹立する真の政権交代が必要なのです。これこそ、沖縄復帰40年の歴史が示す最大の教訓なのではないでしょうか。
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2月9日(木) 在日米軍再編のロードマップ見直しを普天間基地問題解決のチャンスに [在日米軍]

 突然の繁忙期が訪れました。『日本労働年鑑』の執筆・原稿集め、そして編集作業が始まったのです。
 しばらくは、この作業に忙殺されます。このブログに書き込む余裕がなくなると思いますが、ご理解いただければ幸いです。

 ということで、沖縄の米軍再編問題について若干のコメントをしておきましょう。日米両政府は06年に合意した在日米軍再編のロードマップ(行程表)見直しに関する共同文書を発表し、在沖縄海兵隊のグアム移転と米軍嘉手納基地より南の米軍施設返還を、米軍普天間飛行場の移設と切り離して先行実施するため「公式な議論を開始した」と表明しました。
 これらを一体で進めるとしていたロードマップの根幹を転換したわけです。他方で、普天間飛行場を名護市辺野古に移設する現行計画については「唯一の有効な進め方であると信じている」として堅持する方針を示しました。
 「これしか解決の道はない」とされていた「ロードマップ」が見直されたわけですから、解決の道がこれしかなかったわけではない、ということが証明されたわけです。このような経緯からすれば、「唯一の有効な進め方」とされている普天間基地の辺野古移設についても、いずれ見直される可能性があるということが分かるでしょう。

 このような見直しがなされた背景については、色々な見方がなされています。米側には、歳出削減を求める議会の圧力をかわしつつ、普天間飛行場移設を後押しする狙いがあり、中国の台頭でアジア太平洋地域のパワーバランスが崩れつつあるとして1月に発表した新たな国防戦略の具体化であるというのもその一つです。
 オバマ大統領がアジア太平洋地域を最優先とする新戦略を打ち出した流れの延長線上にあるというわけです。在沖縄海兵隊をグアムのほかハワイやフィリピン、オーストラリアへも派遣するなど、中国の中距離弾道ミサイルに対応するため、前方展開戦力を分散させ、秘密裏にローテーションで動かして機動力を高める新たな戦術の一環だとされています。
 実は、基地の前方展開を最小にして機動力を生かすという方向性は、03年に明らかにされた海外駐留米軍のトランスフォーメーションによって、早くから打ち出されていました。一方で、海外の基地は維持費がかかり、駐留米兵の負担も大きく、周辺住民とのトラブルが絶えないためにできるだけ縮小する必要があり、他方では、軍事技術と部隊の運用能力の向上によって、前線となりうる地域から遠く離れていても短時間での機動的な前方展開が可能であるということで、米軍基地を再編・統合して縮小する方向を強めてきたからです。

 沖縄の米軍基地についても、基本的な方向性はグアムなどへの集中と周辺諸国での機動的な運用であって、普天間基地を維持することも、それを代替する基地を辺野古に作ることも、実際にはそれほど必要とされてはいません。それなのに在沖米軍基地の整理・縮小が進まないのは、「抑止力」としての沖縄駐留米軍のプレゼンス低下を日本政府が望んでいないからです。
 そもそも、米軍普天間飛行場の移設を持ち出したのは、1995年の米海兵隊員による少女暴行事件を契機にした県民感情の悪化と普天間基地の危険性に大きな危惧を抱いた米政府の方でした。今回の海兵隊移転のグアム先行実施によって「普天間基の固定化」が生ずるのではないかと心配されていますが、このような「固定化」による問題の継続と拡大を危惧しているのは、本当はアメリカ政府の方なのではないでしょうか。
 日本政府がことさら「普天間基地の固定化」の可能性を強調するのは、「それが嫌なら辺野古への移設を受け入れなさい」と圧力をかけるためなのです。このような脅迫に屈してはなりません。

 今回の見直しを、沖縄にある普天間基地など米軍基地の整理縮小にむけての新たなチャンスとして積極的に捉えるべきでしょう。そのためには、「普天基地の固定化」か、それとも「辺野古への移設」かという二者択一の呪縛を離れ、普天間基地の閉鎖・返還という第三の解決の道をはっきりと提起する必要があります。
 また、日本政府の外交・安全保障政策における能動性を回復し、このような第三の道を合理的な選択として米政府に提起しなければなりません。普天間基地を閉鎖して沖縄県民に返還することこそが日米関係の強化と発展にとって最も有効であり、ひいては極東の安全保障にも役立つのだということを、米政府だけでなく米国民にも分からせることが必要でしょう。
 それ以外のどのようなやり方でも沖縄県民の要求を踏みにじることになり、世界で最も危険な普天間基地がそのまま維持されれば、いつ、どのような形で、新たな事件や事故が発生し、対米感情の悪化に火がつくか分かりません。そうなれば、沖縄の米軍基地全体の存続や日米関係も危うくなるかもしれないのです。

 民主主義とは、最終的には民の声によって政治が動くシステムです。米軍海兵隊の移駐と普天間基地問題の新たな展開が示しているように、民主主義のシステムが残っている以上、基地撤去を望む民衆の声がいずれは事態を動かすことになるでしょう。
 問題は、どのような声を上げ、それをどのように伝えていくかということです。宜野湾市長選挙という形で、沖縄県民の普天間基地撤去に向けての声を上げる絶好のチャンスが、今、訪れようとしています。
 この選挙でどのような声が代表されるかは、宜野湾市だけでなく沖縄全体にとっても、大きな意味を持つでしょう。「基地をなくして欲しい」という声こそが、「普天間基地の固定化」を許さず、沖縄の未来を切りひらくにちがいありません。


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11月30日(水) 政府の「本音」が出た田中沖縄防衛局長の「犯す」発言 [在日米軍]

 懇談会の席で酒を飲み、酔っぱらってしまって政府の「本音」が出たということではないでしょうか。米軍普天間飛行場移設に向けた環境影響評価書の提出時期をめぐって「犯す前に(これから)『やらせろ』とは言わない」と発言し、更迭された田中聡沖縄防衛局長です。

 田中さんは「率直なもの言いが特徴だった」(『東京新聞』)方で、「同僚らは『ざっくばらんで、人間らしい人と口をそろえる』」(『真日新聞』)そうです。「そういう人が何故?」と思う人がいるかもしれませんが、多分、そういう人だからこそ、今回のような発言が飛び出したのでしょう。
 「キャリア官僚らしくない気さくな人柄」だったところが裏目に出たということでしょうか。言ってはならない「本当のこと」をポロッと漏らしてしまったのですから……。
 沖縄防衛局長として基地行政にも精通していたといいます。だから、「率直」かつ「ざっくばらん」に、事態の本質を説明したのでしょう。

 事情を熟知していたから、日本政府と沖縄との関係が女性に対する男性のようなもので、沖縄は女性のような弱い立場にあること思っていたに違いありません。ここには、田中さんの歪んだ女性観も投影されています。
 また、政府は沖縄にむりやり言うことを聞かせるような立場にあること、そして、今回の環境影響評価書を年内に出すことについても、「犯す」ような形で強行するつもりであることも、問わず語りに表明してしまいました。だからこそ、政府は困惑し、沖縄は怒ったのです。
 政府が、慌てたのも当然でしょう。一川防衛相は、間髪を入れずに、直ちに田中防衛局長の更迭を決めました。

 しかし、このような沖縄の人々を怒らせる発言は、今回が初めてではありません。これまでも、95年にリチャード・マッキー米太平洋軍司令官が、沖縄の駐留米兵3人が起こした少女暴行事件をめぐって「犯行に使った車を借りる金があるなら、売春婦を買えたのに」と発言して司令官を辞任し、11年には米国務省のケビン・メア日本部長が米大学生らへの講義で沖縄について「ごまかしとゆすりの名人」と発言して本部長を更迭されています。
 このような発言が跡を絶たないのは、発言する人々が沖縄に対するぬぐいがたい差別意識を持っているからです。そして、そのような差別意識の背後には、そのような意識を生み出す差別の構造があります。
 沖縄の意思と願いを踏みにじり、一方的に基地負担を押しつけてきた構造自体を変えないかぎり、このような差別意識はなくなりません。本来であれば、普天間基地の国外移設を実現することで、そのような是正措置の始まりとするべきだったのです。

 そのチャンスは、訪れつつあるのではないでしょうか。先日の米豪首脳会談で、オバマ米大統領はオーストラリアのダーウィンに、新たに米海兵隊2500人を移駐すると表明しました。
 海兵隊の行き先ができたのです。ここに沖縄の普天間基地から移して欲しいと、どうして日本政府は要求しないのでしょうか。

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10月29日(土) 普天間基地移設問題の現実的で根本的な解決策は国外移設しかない [在日米軍]

 臨時国会が始まり、野田首相の所信表明演説が行われました。「無難」ではあっても、何をやりたいのか、具体策をどうするのかが見えてこないというのが、大方の評価のようです。

 「ドジョウ宰相」は泥の中に隠れて、容易にその姿が見えてこないということなのでしょうか。
 いや、そうでもないようです。この間の野田首相の言動や所信表明演説からでも、はっきりと見えてきたことがあります。
 それは、強いものにつき従う信念なき姿です。外に向かってはアメリカ、内においては財界という強きものに付き従う姿だけは、くっきりと浮かび上がってきているからです。

 特に、アメリカのオバマ政権に対する迎合ぶりには顕著なものがあります。「対米従属」は、これまでの日本の政権の習い性となっていましたが、政権交代後の鳩山さんは、それでも対米自立と東アジアに軸足を移すそぶりを示していました。
 野田さんには、そのような影すらうかがうことができません。というより、従来の自民党政権以上に、従米姿勢が濃厚であると言わざるを得ないでしょう。
 野田政権は「アメリカのポチ」になろうとしているとか、「アメリカのご用聞き内閣」だと酷評されているのも当然でしょう。

 このような「ポチ」としての「ご用聞き」で典型的なのは、普天間基地の移設問題とTPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題です。さし当たり、普天間問題について、コメントすることにしましょう。
 普天間基地の移設問題では、まず、現実的で根本的な解決策は国外移設しかあり得ないということをはっきりと確認することが重要です。それ以外の解決策は、非現実的であるか、あるいは当面の暫定的なものでしかあり得ません。
 端的に言って、問題の先延ばしか誤魔化しです。野田政権の対応策は、その典型だと言って良いでしょう

 10月27日に、仲井真沖縄県知事は野田政権発足後、初めて首相と会談し、米軍普天間基地を名護市辺野古へ移設する日米合意について「実現は事実上不可能だ」と県外移設を求めました。首相は、環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に県へ提出する準備を進めていると伝えた上で「県民とコミュニケーションを取っていきたい」と強調したそうです。
野田首相は、昨28日にも仲井真県知事に会っています。何回もあって、形だけでも誠意のあるところを示したいということなのでしょうか。
 また、一川保夫防衛相は辺野古沖の埋め立て工事は「強行することはない」と述べています。県知事が反対し、防衛相は強行しないというわけですから、実際には事態が動かない、つまり解決できないことを見越しているということになります。

 環境影響評価の県への提出などは、アメリカに対するポーズにすぎません。何かやっているかのようなポーズを示しながら、実際には事態を動かすための努力をせず、先延ばしをして基地の固定化を黙認するというのが現在の野田政権のやり方です。
 その間に事故でも起きたらどうするのでしょうか。こんな無責任な政権が、これまであったでしょうか。
 結局、アメリカに気に入られる様なポーズを取るだけで、問題は先送りされるだけです。まさに「ポチ」と言われるにふさわしい従米ぶりで、野田さんには沖縄県民の願いも怒りも全く届いていないかのようです。

 しかし、先送りするという場合であっても、何もしない「無策」のままでの傍観は許されません。いやしくも、日本の政府なのですから、沖縄県民のために努力を続ける責務があります。
 少なくとも、当面、野田政権は次の三つの方向で何らかの手を打つべきでしょう。すなわち、第1に普天間基地が存在することによって被っている周辺住民の負担を軽減するための具体的な措置、第2に仲井真県知事が求めている県外移設のための普天間の基地機能の分割移転の可能性の模索、第3に根本的な解決策としての国外移設を可能とするための対米工作、とりわけ議会や議員に対する説得工作、という方向で……。

 第1の具体的な軽減措置については、直ちに米側と折衝するべきです。たとえば、普天間基地に駐屯している人員や航空機の削減、騒音を減らすための飛行回数の減少、夜間など周辺住民の生活を阻害する形での飛行の禁止などです。
 たとえ、普天間基地の移設が遅れ、現状維持が継続される場合でも、基地の危険性を減らし、周辺住民の負担を軽減することが必要です。そのためには、以上に述べた措置について米側に申し入れ、それを実現することは日本政府としての最低限の義務でしょう。
 基地の危険性や住民への被害を放置したままでの現状維持であってはなりません。普天間移設が直ぐには実現しなくても、少しずつでも現状が改善されるように日本政府として具体的な努力を行うことが必要です。

 第2の普天間基地機能の分割移転の可能性の模索についても、米側との協議を始めるべきです。というのは、県外移設といっても、おそらく普天間基地を丸ごと受け入れるような所は国内でも見つからないと思われるからです。
 もし、国内の他の基地に普天間基地を移設する可能性があるとすれば、その基地機能を分割した細切れ移設ということになるでしょう。部隊や機能を分割して、それぞれの受け入れ先を探すというのが、一つの方法であるように思われます。
 そのような可能性について、日本政府はこれまで検討したことがあるのでしょうか。アメリカに言われて唯々諾々と従うだけでなく、「それはできないが、これなら可能だ」という対案を出すというのが、独立した国家のあり方というものではないでしょうか。

 とはいうものの、このようにしても国内での受け入れ先が見つかるとは思われず、このような解決策も実際には不可能でしょう。したがって、現時的には、次のような解決策しか残されていないということになります。

 その第3の現実的な解決策である国外移設のための説得工作こそ、これまでやられなかったことであり、すぐにやって欲しいことです。そのためにこそ、政権が交代したのではないのでしょうか。
 このような対案と説得工作は、自民党政権では絶対に不可能です。だからこそ、自民党は政権の座を追われたのです。
 それなのに、民主党政権にもできないというのであれば、自民党と同様に民主党も政権を追われることになるでしょう。それに代えて、アメリカと対等に交渉できる自立した政権を樹立するしかありません。

 アメリカ側も、すでに普天間基地の辺野古への移設は諦めているのではないでしょうか。少なくとも、議会の中では別の解決策を探る動きがあるように見えます。
 その動きを強めるために、日本政府は積極的な議会工作を行うべきでしょう。説得のための要人を派遣したり、ロビーストを雇ったりして、普天間基地の国外移設に向けての説得工作を行い、その可能性を拡大するために手を尽くさなければなりません。

 野田首相は所信表明演説の冒頭で「今、私たち政治家の覚悟と器量が問われています」と言い、締めの言葉でも「政治家としての覚悟と器量を示そうではありませんか」と呼びかけました。しかし、普天間問題を打開するためには、他の誰でもない、野田首相自身の覚悟と器量こそが求められているのであり、普天間基地の国外移設に向けて対等な立場からアメリカと交渉する覚悟を示す以外、沖縄県民の信頼を回復する道はないということを、野田さんは肝に銘ずるべきではないでしょうか。1
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5月4日(水) ウィキリークスが暴露した普天間基地移設をめぐる嘘とペテンの数々 [在日米軍]

 驚きましたね。今日の『朝日新聞』を読んで、嫌になってしまいました。
 これほどの嘘とペテンに満ちあふれていたなんて。ウィキリークスによって暴露されなければ、私たち国民は騙され続け、政治家や官僚は何食わぬ顔で嘘を言い続けていたでしょうから……。

 『朝日新聞』5月4日付の一面の見出しは、「米軍グアム移転費水増し」となっていました。「負担率操作示す文書」「ウィキリークス公電7000点 本社分析」という見出しもあります。
 記事は、こう述べています。

 日米両政府が在沖縄米海兵隊のグアム移転について合意した2006年春のロードマップ(行程表)で、米政府が、関連費用の総額を水増しして日本側の負担割合を見かけ上減らし、日本政府も08年に追認していた。海兵隊の移転人数については、削減をアピールしやすいよう実態より多い数字を挙げていた。

 つまり、グアム移転の規模を大きくし、日本政府の負担割合を小さくするために、海兵隊の数を多く、再編に必要な費用の総額を水増ししていたというわけです。嘘をついて、日本の世論を欺いていたことになります。
 しかも、「08年の交渉では米側が、軍用道路を盛りこんだのは総額を増やすことで日本側の負担比率を相対的に低く見せることが目的だったと説明し、日本政府もその点を了承した」というのですから、呆れてしまいます。日本国民への嘘は、日米両政府による「共同謀議」だったのですから……。
 これについて、08年12月19日付の在東京大使館から国務長官らに当てた「秘」指定の公電は、「全体の費用見積もりを増やし、日本側の費用割合を(数値上)減らすために盛り込まれた」とし、移転する海兵隊の人数について「(日米)双方とも、この数字が(実態と)かけ離れていたことを認識していた」「日本国内での政治的な効果を最大限引き出すために、意図的に大きく見積もられた」と書いています。何ということでしょうか。

 以上は、グアム移転費用についてのペテンですが、それ以外にまだ多くの嘘やペテンがあります。例えば、次の小池百合子防衛相による仲井真沖縄県知事への約束があります。
 小池さんは仲井真さんに、アセス後であれば滑走路を沖合に50メートル移すことに同意すると密かに約束していました。これについて、「もしアセスの結果、滑走路を動かす科学的な根拠がなかったらどうするのか」と問われて、「『09年までには違う政権ができているから、我々が彼(仲井間知事)にこれまで何を約束したかは問題にならない』と返答した」(07年11月7日、メア総領事と小池百合子防衛相との会談についての公電)といいます。
 例え、嘘をついたとしても、政権が変わっているから問題にならないと答えたというのです。小池さんの弁明通り政権が交代したとはいえ、一国の大臣としては無責任きわまりない発言だというべきでしょう。

 また、沖縄普天間基地移設問題でも、民主党の関係者や官僚は嘘とペテンを積み重ね、アメリカの顔色をうかがいながら、それに迎合するような態度に終始していたことも暴露されています。
 先ず、政権交代の直前、岡田さんは「ひとたび政権につけば、米政権との対話を経た上でのみ取り組む」(09年7月17日、キャンベル国務次官補との会談での発言)とアメリカに約束し、アメリカの意に反する形での安保・外交路線の転換を行わないことを表明しています。
 そのうえで、普天間基地の移設問題では、次のように一貫して「現行案」の実現が目指されています。「最低でも県外移設」という鳩山首相の方針は、「形だけ」のものにすぎませんでした。

○前原誠司「もし、現行案以外のあらゆる代替案に米国が賛成しなければ、民主党は現行の再編計画を進め、必要ならばゴールデンウィーク後に連立を解消する用意がある」(09年12月9日、米大使公邸でのルース大使と前原誠司国土交通相・沖縄北方担当相との会談での発言)
○藪中三十二「政府による見直し作業で辺野古移設に代わる実現可能な案が見つからなければ、06年の再編合意(現行案)に立ち返る、と鳩山は確認した」(09年12月21日、藪中三十二外務事務次官とルース大使の昼食会での発言)
○松野頼久「鳩山首相と、沖縄問題での(日米閣僚級)作業部会は、『形の上だけは』沖縄県以外の選択肢を検討しなければならないが、唯一現実的な選択肢は、普天間をキャンプ・シュワブかほかの『既存施設』に移すことだ」(10年1月26日、米大使館政務担当公使らと松野頼久官房副長官との会談での発言)

 この途中では、外務官僚の次のような「面従腹背発言」もあったようです。彼らは、沖縄県民の願いや日本のためではなく、アメリカのために外交を行っていたと言うべきでしょう。

○外務官僚ら「米政府は普天間移設問題では民主党政権に対して過度に妥協的であるべきではなく、合意済みのロードマップについて譲歩する意思があると誤解される危険を冒すべきでもない」(09年12月10日、在日米大使館の政務担当者と政務担当を務める参事官ら3人の外務官僚との会話での発言)

 これらの発言を見れば、普天間基地の移設問題の目的地がはっきりしていたことがわかります。それは「迷走」したのではなく、「現行案」に到着するための「形の上」だけの時間稼ぎだったのです。
 結局、民主党も自民党も、「同じ穴のムジナ」であり、どちらもアメリカ向けと国民向けの二つの顔を使い分けていたのです。どちらも、沖縄県民や日本国民を欺いていたという点では全く変わりません。
 昨日のブログで、私は「アメリカからの押し付けに唯々諾々と従ってきた結果」として、「日米同盟と原発推進、それに農業破壊は、対米従属によって犯された3つの大罪である」と書きました。ウィキリークスによって暴露された日米関係は、まさにこの「大罪」を明確にしたものであると思います。

 そこから、どうやって抜け出すのか。どのようにして、このような偽りの政治を転換するのかが、今こそ真剣に問われるべきなのではないでしょうか。

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5月28日(金) 自民党が仕掛けた「時限爆弾」が爆発した [在日米軍]

 野に下る前に自民党が仕掛けた「時限爆弾」が爆発したということかもしれません。普天間基地移設問題という爆弾が……。
 でも、「5月末」という時間を設定して、スイッチを入れたのは鳩山さん自身です。それが、今日、爆発しました。
 米軍普天間飛行場移設問題に関する政府方針をめぐって、鳩山首相は署名を拒否して閣議を欠席した社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相を罷免しました。三党の連立はどうなるのでしょうか。

 結局、鳩山首相がアメリカとやり合うだけの勇気をもたなかったということでしょう。見通しもなく、信念もなく、そして勇気もなく……。
 ただ、思いつきでモノを言っていたということなのでしょうか。私も、裏切られたという思いで一杯です。
 首相としての資質を持たない者は、さっさと辞めるべきです。詐欺師が入るべきところは、首相官邸ではなく監獄です。

 信じるに足りない人物は、政治家としても失格です。「命を賭けて」と言っていたのですから、少なくとも議員を辞職するべきでしょう。
 「最低でも」と言っていた「県外への移設」を実現できなかった責任を取るべきです。それとも、「辺野古」が沖縄県から別の県に移るとでも言うのでしょうか。
 沖縄の人々の失望と怒りは、どれほど大きなものなのか。その悲しみと憤りを、鳩山首相は理解できるでしょうか。

 福島さんは、よく頑張ったと思います。更迭は、福島社民党党首にとって、政治家としての名誉であり、誇りとすべきものです。
 少なくとも、沖縄県民の願いを踏みにじることはなかったのですから……。自らの発言に従い、政治家としての信義を貫いたのですから……。
 福島さんが閣外に去る前に、鳩山首相は爪の垢でももらって、後で煎じて飲んだらいかがでしょうか。少しは、まともになるかもしれません。

 自民党の谷垣総裁は、またも鳩山政権を批判しています。でも、その資格があるのでしょうか。
 普天間基地の移設問題を解決できず、民主党に押し付けたのは自民党じゃありませんか。自分でも解くことができなかった宿題を押し付けておいて、「お前、ちゃんと解けないじゃないか」と文句を言っているようなものです。
 結局、自民党の案に戻ったわけです。「それで良かった」と腹の中で思っているのに、「それではダメだ」と言うのでしょうか。

 「寝た子を起こした」と、批判する人がいます。とんでもありません。
 沖縄の基地の現状は、「寝たまま」にしておいて良いわけがありません。普天間基地移設問題を沖縄にだけ押し付け、「寝たまま」にしてきた過去こそ、間違いだったのではないでしょうか。
 普天間基地の移設問題をここまで「起こし」、国民全体の問題として提起したのは、鳩山首相の迷走のお陰でした。でもそれは、あくまでも「怪我の功名」にすぎなませんでしたが……。

 鳴り物入りで「起こした」後に、「そっとお寝み」などと言っても、もう遅いのです。鳩山さんには、そのことが分かっていません。
 鳩山さんこそ、こうなったら「そっとお寝み」願うしかありません。国民の憤激が、これ以上高まる前に……。