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10月18日(日) 第3次安倍改造内閣は「大惨事不安倍増」内閣ではないのか [内閣]

 第3次は「大惨事」で、安倍は「不安倍増」ではないのでしょうか。使い古されたギャグですが、今度の改造内閣こそ、それが最も当てはまるような気がします。
 10月8日付の「第3次安倍『意味不明』内閣の発足」というブログで、私は「最初から、期待されることを期待していないような顔ぶれ」だと書き、「危なくて使えない人ばかり」だから多くは交代させられないのだと指摘しました。どうやら、これが証明されそうです。

 今週発売の『週刊文春』には、「ああ『一億総活躍』という名の的外れ」という見出しが躍り、「『パンツ泥棒』の常習犯!高木毅復興大臣」「新政権の目玉河野太郎 脱原発はどうした?」「紅の新大臣丸川珠代がすがる『パワーストーン』」「馳浩文科相 本紙だけが掴んだ献金疑惑!」などの記事が続いています。また、『週刊新潮』でも、「『下着ドロボー』が『大臣閣下』にご出世で『高木毅』復興相の資質」「『暴力団』事務所に出入りの過去がある株成金の『森山裕』農水相」などと新閣僚のスキャンダルが報じられています。
 今回の改造で交代したのは、自民党の主要役員と内閣の閣僚24人のうちの10人にすぎませんでした。そのうちの高木、河野、丸川、馳、森山の5人が登場しています。
 なかでも、高木、馳、森山の3大臣については、その資質が問われるような重大な問題点が指摘されています。たった9人の新入閣大臣なのに、どうしてこのような「危なくて使えない」人ばかりを使ってしまったのでしょうか。

 この両誌に共通して登場しているのが高木復興相です。しかも、その内容は口にするのも書くのもおぞましいようなスキャンダルでした。
 高木さんは16日午前、これらの報道について記者団から首相官邸で事実関係を問われ、「今日はそういった場所ではございませんので、お答えを控えさせて頂く」と述べ、明確な答えを避けたそうです。事実無根なら、きちんと否定するべきでしょう。
 否定しなかったということは、約30年前に地元の福井県敦賀市で当時20代女性の自宅に合鍵を作って侵入し下着を盗んだと報じられている内容が正しいということなのでしょうか。「そういった場所」でなかったから答えなかったというのであれば、新ためて「そういった場所」を設けて事実関係を明らかにするべきです。

 また、森山農水相は「指名停止業者からの献金」と「暴力団交遊」という二重の疑惑を報じられています。政治資金疑惑という点では、前内閣で辞任した西川公也農水相と同じです。
 西川さんは辞任して責任を取りました。森山さんはどうするのでしょうか。
 これに加えて、暴力団との交際も疑われています。イエローカード2枚ですからレッドカードと同じで、責任を取って退場するべきです。

 このほか、『週刊文春』に「本誌だけが掴んだ献金疑惑」を報じられた馳文科相も、この疑惑について真相を明らかにするべきでしょう。そもそも、雑誌の対談で「体罰自慢」をしていたプロレスラー(馳大臣)とヤンキー先生(義家浩介副大臣)がタッグを組んで教育行政を担当するというのが間違いなのです。
 雑誌『正論』2008年6月号で、義家さんは「いじめの指導で放課後4時間教室から(生徒を)出さなかった時は他の教職員がハラハラしながら私の教室の外で見守っていて後で散々言われました」と発言し、馳さんも「私は高校のレスリング部の監督を務め、石川県で強化委員会をやってましたけど、私の高校はそう強いチームではなかったのです。ですから一週間に一本ぐらいは竹刀が折れていましたよ」と答えています。文科省就任後、馳さんはこのような過去の体罰について謝罪しましたが、義家さんは4時間も生徒を閉じ込めたことについて謝罪したのでしょうか。
 このような「指導」は教育とは言えません。こんな大臣や副大臣に教育行政を担当させて良いのでしょうか。

 「一億総活躍」という「新3本の矢」も「的外れ」ですが、このような不適格者ばかりを入閣させた閣僚人事も「的外れ」そのものです。第3次改造内閣が「大惨事」を引き起こさないうちに、とっとと倒さないと大変なことになるでしょう。

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10月8日(木) 第3次安倍「意味不明」内閣の発足 [内閣]

 第3次安倍内閣が発足しました。ひとことで言って、「意味不明」内閣です。
 最初から、期待されることを期待していないような顔ぶれになっています。「賞味期限」は来年7月の参院選までですから、それまで持てば良いと考えているのかもしれません。

 安倍首相は9月の自民党総裁選で再選されました。この機会に党の役員と閣僚を変えて人身を一新させたいと思ったのでしょう。
 しかし、「無理に人事をやるタイミングではなかった」という政府高官の声が伝えられているように、どうしてもやらなければならなかったというわけではありません。現に、改造は小規模にとどまりました。
 閣僚19人と自民党の役員5人の計14人のうち、今回の改造で交代したのは10人にすぎません。何故やるのか、「意味不明」な改造だったということになります。

 もちろん、自民党内には衆院で当選5回以上、参院で3回以上の「入閣適齢期」とされる人が70人を超えているそうです。これを減らさなければ党内での不満が高まるという事情もあったでしょう。
 しかし、新しい入閣者は9人にすぎず、依然として不満が残るものでした。安倍首相は「自民党は人材の宝庫だ」と言っていますが、それならどんどん交代させればいいじゃありませんか。
 実際には、そうはいきません。第2次改造内閣で3人の閣僚が辞任したように、危なくて使えない人ばかりなのです。

 それでも改造を断行したのは、戦争法案反対闘争で高まった安倍政治への反発と批判を和らげたいという狙いがあったからです。そのための「目くらまし」として、突然「一億総活躍社会」の実現というスローガンと「新3本の矢」という目標を打ち出しました。
 そこには二つの意味での「目くらまし」が意図されていたように見えます。その一つは、60年安保闘争の後、所得倍増政策によって政治から経済へという重点移動によって国民の支持を回復させた池田内閣をまねた「目くらまし」であり、もう一つは、新しい「3本の矢」を示すことによって、これまでのアベノミクスの失敗から国民の目をそらさせるという「目くらまし」です。
 しかし、2020年頃までに国内総生産(GDP)600兆円、20年代半ばに希望出生率1.8、20年代初頭に介護離職ゼロという目標は荒唐無稽で現実離れしたものです。「的」が遠すぎて「矢」は届かないということになるでしょう。

 党役員は全員留任で、閣僚も主要な部分はほとんど残留しました。新しい閣僚の顔ぶれもパッとしません。
 注目されるのは国家公安委員長で行政改革と防災担当を兼務する河野太郎さんですが、これまでの脱原発という主張を貫けるのでしょうか。矛を収めて脱・脱原発というようなことになれば、脱原発は単に入閣のための方便だったということになります。
 改造の目玉とされているのが加藤勝信一億総活躍相で、今回の改造に当たって安倍首相が打ち出した「一億総活躍社会」の実現を担当するのだそうですが、「意味不明」の最たるものです。実際には日本の人口は1億2685万人ですし、それを十羽ひとからげにして「活躍」させようというのは余計なお世話で、何が「活躍」なのかも分かりません。

 第2次改造内閣で打ち出した「地方創生」「女性の活躍推進」はどうなったのでしょうか。それがどの程度実現したのか、きちんと総括されていません。
 この時の「目玉」が古臭くなったから、「一億総活躍」にラベルを張り替えて目新しさを出そうとしただけなのではないでしょうか。これも「目くらまし」の一つです。
 しかも、達成年次は2020年代ということで、安倍首相の任期を越えています。目先を変えて期待を持たせ、来年の参院選さえ乗り切れれば実際に達成されなくても良いと思っているのかもしれません。

 国民も甘く見られたものです。アベノミクスの「3本の矢」で騙したうえに、「新3本の矢」でもう一度、騙そうというわけですから……。
 このような目論見を許してはなりません。「アベノミクス第2ステージ」は、経済成長によって得られた富を軍事力の増強へとつぎ込む、新「富国強兵」政策の「第2ステージ」にほかならないのですから……。

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8月24日(月) 安倍政権を揺り動かす激動の情勢が始まりつつある [内閣]

 前回の更新から、10日も空白が空いてしまいました。長い夏休みだったと思われるかもしれません。
 確かに、故郷の新潟に帰って骨休めをしました。しかし、その間にも雑誌『世界』の原稿を書く必要があり、それは帰京してからも続いていたのです。
 先ほど原稿を送り、ようやくブログを書く余裕が生まれました。この原稿は9月8日発売の雑誌『世界』に掲載される予定です。

 先週末の23日(土)~24日(日)には、神奈川革新懇の「第3回夏の泊まり込み研修会&交流会」で講演し、神奈川県の皆さんと交流してきました。これまでも講演などに呼んでいただいたことがあったり、県知事選での岡本一候補や県議選川崎区の後藤真佐美候補の応援などでもかかわりがあり、久しぶりにお目にかかった方も沢山おられました。
 知事選で一緒に横浜駅頭で街頭演説をした畑野君枝衆議員も駆けつけてきて、緊急国会報告をされました。夕方になってからさっと来られてさっと出て行かれたあわただしさにも、国会情勢の緊迫度が示されていたように思います。
 神奈川でも、「戦争法案」反対の運動が盛り上がっており、各地の運動の報告はどれも元気で活気に満ちたものです。相模原、鎌倉、横浜市の瀬谷区、神奈川区、綾瀬市、海老名市、伊勢原市などで党派を超えた共同行動が大きなスケールで発展しており、草の根での運動の拡大をまざまざと知ることができました。

 合宿の会場は湯河原町でしたが、湯河原町長があいさつに見え、その旅館のオーナーも9条の会の会員であいさつされました。この湯河原では7月に小林節さんの講演会が観光会館で開かれ、町政史上最高の450人が詰めかけて大きな話題になったそうです。
 また、横浜での若者のデモでは、当初の参加確認が200~300人だったのに出発時には600人になり、途中で増えて解散時には1400人にまで膨れあがったそうです。デモ申請の数を大きく上回って警備の手が回らず、警察に怒られたといいます。
 このような例は、おそらく各地で生まれていることでしょう。取り組みの姿勢においても、過去の運動の延長線上で今の運動を捉えてはならないということでしょうか。

 この講演でも話しましたが、これまで安倍政権を支えてきた2本柱が崩れ始めています。一本は安倍内閣への支持率で、もう一本は株価でした。
 このどちらも破たんし、急降下を始めています。内閣支持率は直近の調査で若干持ち直したようですが、株価の方は世界的な規模で大暴落を始めました。
 先日発表された第2四半期(4~6月)のGDP成長率がマイナス0.4%(年率換算で1.6%減)となったばかりでの株価の下落です。破たん確実と言われ続けていたアベノミクスでしたが、いよいよ弔鐘が鳴り始めたということになるでしょう。

 このようななかで、もう一つ、大きなニュースが飛び込んできました。オリバー・ストーン氏(米映画監督)やノーム・チョムスキー氏(米マサチューセッツ工科大学言語学名誉教授)、モートン・ハルペリン氏(元米政府高官)ら海外の著名人や文化人、運動家ら74人が22日、名護市辺野古の新基地建設計画をめぐる声明を発表したというのです。
 この声明は、同計画を阻止する鍵を握るのは、翁長雄志知事による埋め立て承認の取り消し・撤回だと主張し、「沖縄の人々は、知事が無条件で妥協や取引も全く伴わない埋め立て承認取り消しを行うことを求め、期待していることを明白にしている。我々は沖縄の人々のこの要望を支持する。世界は見ている」と述べています。まさに、沖縄での戦いを「世界は見ていた」のであり、強力な援軍の登場です。
 安倍政権は、日本国内の草の根の運動によって追い込まれているだけではありません。国際的な広がりをもった辺野古新基地建設反対の運動にも直面することになったのです。

 国の内外において、安倍政権を揺るがす激動の情勢が始まっていると言うべきでしょう。暴走阻止に向けての戦いが大きく盛り上がろうとしていますが、安倍首相の暴走には自民党の変貌という背景があります。
 この問題については、前掲の雑誌『世界』に書きました。9月8日発売の『世界』10月号の拙稿をご笑覧いただければ幸いです。

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7月13日(月) 「安保法案」を廃案に追い込み安倍政権を打倒し新たな民主的政権の樹立をめざそう [内閣]

 先日、久しぶりにハーバード大学教授のアンドルー・ゴードンさんにお会いし、お酒を酌み交わして旧交を温めました。早稲田大学での研究会でゴードンさんが報告され、その後、懇親の機会があったたからです。

 ゴードンさんとは、彼がデューク大学に就職する前で私も大原社研の兼任研究員だった時代からの付き合いですから、もう30年以上になります。その縁で、彼がハーバード大学のライシャワー日本研究所の所長をしていた時に客員研究員として留学し、大変、お世話になりました。
 ゴードンさんは、いま在外研究として京都大学に滞在しており、ひと月だけ早稲田大学に招聘されて東京に来ていたそうです。今回の研究会は「『失われた20年』の政治変容(2):日本型保守とジェンダー」というもので、4回にわたった研究会の最後に当たるものでした。
 4回の研究会のうち、前半の2回は鼻の手術で入院していために出席しできませんでした。いよいよゴードンさんの研究が現代史に焦点を当てるものとなり、それも「政治変容」や「日本型保守」を取り上げるというのですから、大いに期待しています。

 私は後半の2回の見解に参加したわけですが、報告とその後の議論を聞いていて、気がついたことがありました。ゴードンさんは「失われた20年」の検証に関心を持たれているようで、報告は大平内閣の政策研究会から始まりました。
 それから今日までの内閣の変遷を振り返ってみると、面白い「法則」があるように思われたのです。以後の「政治変容」は左右への揺れを繰り返してきたという「法則」です。
 もう少し詳しく言えば、「保守本流・ハト派・吉田」の流れと、「保守傍流・タカ派・岸」の流れが、一定の期間を経て交代するような形で入れ替わってきたということになります。簡単にいえば、左の後に右、そしてまた左へという変化が繰り返され、そのようななかで、軍事大国化、右傾化、新自由主義化が深まり、その行き着いた頂点が今の安倍政権だということになるでしょう。

 大平政権からの流れを見ても、その後の鈴木政権までは左です。中曽根政権で右に揺れ、竹下・宇野・海部・宮沢・細川・羽田・村山・橋本・小渕政権は、いずれも宏池会(旧池田派)や旧田中派の流れを汲み、その源流は吉田茂ですから左のハト派政権だったとみることができます。
 この後はまた右に揺れ、森・小泉・安倍・福田政権が続きました。いずれも旧福田派の流れを汲むタカ派政権です。
 麻生さんは吉田茂の孫にあたりますから、一応、吉田亜流とすれば、その後の政権交代で、鳩山・菅・野田の左派政権が続くことになります。そして、再び政権交代が起こって安倍さんの再登場となり、大きく右に揺れていることは皆さんが目撃されている通りです。

 以上の経過を見て、直ぐに気が付くことがあります。中曽根政権、小泉政権、安倍政権は、他の左の政権とは異なっていずれも長期政権の維持に成功しているということです。
 中曽根さんは1982年から87年、小泉さんは2001年から06年、そして、安倍さんは06年から07年の1年間と再登場した12年から今までをあわせて3年半になります。中曽根さんや小泉さんの例から言えば、あと1年半くらいは政権を維持できるということでしょうか。
 そして、以前のような「法則」が働くとすれば、その後には左への揺れが生じ、「保守本流・ハト派・吉田」の流れを受け継ぐ政権が登場するということになります。このハト派の流れには、旧田中派出身の岡田さんが率いている民主党も含まれます。

 このように、自民党政権においても、中曽根、小泉、安倍政権は「保守傍流・タカ派・岸」の流れを汲む特異な政権であることが理解できます。それが長期政権を維持できたのは、対米協調路線を取って来た保守本流よりも軍事大国化を志向する傍流の方が軍事分担を求めるアメリカにとって都合が良かったからであり、右傾化を強める社会意識の変化にも適合し、新自由主義的改革路線によって本流が担ってきた従来の保守支配の構造を打破する強い志向性を持っていたからです。
 しかし、それは憲法を前提とした戦後支配のあり方へのバックラッシュ(反動)でもあるため、平和志向の民意との乖離と衝突を避けられません。また、民主党の結成や第3極諸党の結成によって「保守本流・ハト派・吉田」の流れを汲む勢力が自民党の外に流出したために自民党内での「保守傍流・タカ派・岸」の比重がたまり、キャッチオールパーティーとしての性格がなくなっていきます。
 こうして自民党は右傾化を進め、極右政党としての性格を強めたために合意形成能力が失われていきました。そして、合意形成が難しくなればなるほど、さらに右派的イデオロギーによる国民統合を図ろうとして右傾化を強めるという悪循環に陥っています。

 中曽根政権、小泉政権、安倍政権と変遷するにつれて、軍事大国化が強まり、自衛隊の海外派兵の動きが具体化してきました。中曽根政権の時にもアメリカからペルシャ湾への掃海艇派遣が要請されましたが、旧田中派出身の後藤田正晴官房長官は「閣議ではサインしません」と迫って派遣を断念させています。
 しかし、小泉政権の時にはこのような抑止は働かず、イラク戦争の復興支援ということで自衛隊が派遣されました。そして、今回、自衛隊をいつでも海外に派遣するために「国際平和支援法」という恒久法が制定されようとしています。
 これ以外にも、「重要影響事態」や「存立危機事態」という認定がなされれば、自衛隊は米軍などの「後方支援」のために海外に派遣され、国連平和維持活動(PKO)でも自衛隊の活動範囲を拡大し、治安維持や駆けつけ警護などができるようになります。こうして、事実上の憲法改正がなされるほどに、右傾化が進行しているのが現状です。

 新自由主義化についても、中曽根政権以来の規制緩和路線の終着点が近づいているようです。それは、中曽根政権による「臨調・行革路線」として始まり、小泉政権による「構造改革」へと受け継がれ、安倍政権の労働の規制緩和路線によって総仕上げされようとしています。
 労働者派遣法の改定も労働基準法の改定も、共に原理的な転換を含んでいるからです。それは規制緩和の量的な拡大ではなく、派遣事業や労働時間についての質的な変化をもたらすことでしょう。
 派遣は「一時的・臨時的」なものではなくなり、「常用労働者」に対する代替がすすみ、正規労働者が派遣などの非正規労働者に置き換えられることになります。労働時間に対する制限が撤廃され、労働に対する時間管理という考え方自体が時代遅れであるとして否定されるにちがいありません。

 このような形で軍事大国化、右傾化、新自由主義化が進み、それに伴って自民党も変質してきた結果、自民党は社会の右側に集まっている一部の民意を代表するだけの部分政党に変貌しました。ここに、自民党内でさえ影の存在であった安倍首相とそのお仲間である日本会議や在特会と親和的な極右勢力が政権を担当できる理由があります。
 一部の民意を代表するに過ぎない部分政党が政権を担当できる秘密は簡単です。そのカラクリは小選挙区制という選挙制度にあります。
 昨年の総選挙で、自民党の絶対得票率(有権者内での得票割合)は、小選挙区で24.5%、比例代表で17.0%にすぎませんでした。自民党が代表する「一部の民意」とは、正確に言えば、有権者の4分の1から6分の1ほどにすぎないものなのです(詳しくは、拙著『対決 安倍政権―暴走阻止のために』学習の友社、をご覧ください)。

 もともと国民の少数の支持しか得ていないのに、選挙制度のカラクリによって「虚構の多数派」を形成することができたのが、いまの安倍政権です。この「虚構」が、安倍首相自身の暴走によって崩れ始めています。
 小選挙区制のカラクリによって隠されていた本当の民意が、集会やデモ、署名や声明、地方議会での決議や要請書、ツイッターやフェイスブックでのつぶやきや意見表明、そして世論調査での反対の多さや内閣支持率の低下という形で、はっきりと目に見えるようになってきました。「虚構」に対する「実像」の可視化です。
 国会での多数議席は「虚構」の上に築かれた「砂上の楼閣」にすぎません。安倍首相がこの「楼閣」を頼みにして民意に反する強行採決に出れば、たちどころに崩れ去るにちがいありません。

 そして、政権が左右への揺れを繰り返してきたという、これまでの「政治変容」の「法則」が働くとすれば、右派的政権に対する反発が生じ、次の政権は左へと揺れることになるでしょう。その「法則」を現実のものとすることができるかどうかは、これからの私たちの実践にかかっています。
 「安保法案」を廃案に追い込んで安倍首相に引導を渡すだけでなく、自民党内での政権たらいまわしを許さず新たな民主的政権の樹立に結びつけることがこれからの課題です。「政治変容」のレベルを安倍政権打倒から自民党政治打破、政権交代にまで引き上げることができれば、「安保法案」を粉砕する明確な展望が生まれるにちがいありません。

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7月6日(月) 「五面楚歌」で不支持率が支持率を上回った安倍内閣 [内閣]

 今日の毎日新聞に、安倍内閣に対する世論調査の結果が報道されています。内閣支持率は5月の前回調査から3ポイン減少して42%、不支持率は7ポイント増加して43%と、第2次安倍内閣発足後、初めて支持と不支持が逆転しました。
 安倍内閣の黄昏が始まったということでしょうか。国民の力で日没を早めて、とっとと地平線の向こうに追い落とさなければなりません。

 これに対して、菅官房長官は記者会見で「国家国民のために必要な政策を的確に説明し成立させ、国民の期待に応えていくのが政権与党、内閣の役割だ」と強調していました。しかし、「国家国民のために不必要な政策をまともに説明することなく成立させようとし、国民の期待に反しているのが政権与党、内閣の実態だ」と言うべきでしょう。
 いくら会期を延長しても、国民の理解が進むはずがありません。平和のために戦争しやすくするとか、日本を防衛するために外国を守るとか、安全を高めるためにリスクは当然だとか、誰が理解できるというのでしょうか。
 どんなに時間をかけても、存立危機事態や重要影響事態、武力攻撃切迫事態などの違いが分かるわけがありません。説明する方だって分かっていないのですから……。

 しかも、安倍政権は「五面楚歌」に陥ることになりました。その結果が、支持率の低下と不支持率の増大です。

 第1に、世論の多数は「戦争法制」に反対しています。毎日新聞の調査では、賛成が29%で反対が58%、今回での成立にも賛成が28%で反対は61%、説明が十分だという回答が10%で不十分だという回答が81%、この法案が憲法違反だと思うが52%で思わないが29%となっています。
 どの回答を見ても、政府・与党に反対する意見が多くなっていることが分かります。しかも、前回調査との比較では、法案への賛成が5ポイント減で反対が5ポイント増と、時間の経過によって賛成ではなく反対が増えました。

 第2に、憲法の専門家や学者の大多数は「違憲だ」としていることはご存知の通りです。憲法審査会の3人の参考人がそろって「違憲だ」と証言しただけでなく、憲法学者の大多数は「違憲だ」との意見を表明しています。
 「合憲だ」という学者は数人しかいません。その人たちも、以前は集団的自衛権を行使できるようにするためには憲法を変えるしかないと言っていました。
 今になって「合憲だ」というのであれば、「それなら、憲法を変える必要はないのか」と、問わなければなりません。解釈で憲法の内容を変えられるというのであれば、何も明文改憲という面倒でリスクのある手続きを取る必要はないでしょうから……。

 第3に、自民党の元幹部や防衛官僚のOBも反対を表明しています。古賀誠、加藤紘一、野中広務、山崎拓などの自民党幹事長OB、防衛庁長官官房長などの旧防衛官僚だった柳沢協二元内閣官房副長官補、外務省国際情報局長や防衛大学校教授を歴任した旧外務官僚の孫崎享さんなどの名前を挙げることができます。
 かつて政府・与党の中枢にいた人々が、このような形で反対を表明することがこれまであったでしょうか。このことは、自民党は変質してしまったということ、もはや保守政党とは言えないほどに右傾化しているということを示しています。

 第4に、内閣法制局長官の経験者も懸念を示しました。第1次安倍内閣での法制局長官だった宮崎礼壱さんや小泉政権での法制局長官だった阪田雅裕さんなどがそうです。安倍首相によって小松一郎さんにすげ替えられ、最高裁判事へと追い出された前内閣法制局長官の山本庸幸さんも記者会見で、憲法9条の解釈変更による集団的自衛権行使の容認について「私自身は難しいと思っている」と述べています。
 現役の横畠さんは「権力の番犬」になってしまったようですが、これらの人々は「憲法の番人」として警告を発していることになります。歴代の内閣法制局長官経験者がいずれも否定的な見解を述べているという事実の重みを、安倍首相はどう考えているのでしょうか。

 第5に、地方議会でも法案に反対や慎重審議などを求める意見書を採択する動きが続いています。6月28日現在で34都道府県の195議会になりました。
 「戦争法案」に反対するデモやパレードも、国会周辺だけでなく地方都市で開催される例が増えています。「戦争法案」に反対する動きが、全国津々浦々の草の根レベルにまで拡大していることを示しています。

 まさに、安倍政権にとっては「五面楚歌」とも言うべき状況になりました。「楚」の「歌」を歌う人々は確実に増え続けています。
 とりわけ最近の特徴は、若い世代での「歌声」の高まりです。SEALDs(Students Emergency Action for Liberal Democracy – s:自由と民主主義のための学生緊急行動)などの学生団体が立ち上がりました。
 高校生の運動も始まっています。若い世代がこのような形で運動に加わってきているところに、新たな希望の光を見出すことができるでしょう。

 政府・与党は会期延長によって「土俵」を広げることができ、「してやったり」と思っているかもしれません。しかし、「土俵」が広がったということは、たたかいの場と期間が拡大したということでもあります。
 この「土俵」を活用して、さらに安倍政権を追い込んでいくことが必要です。もっともっと内閣支持率を低下させ、「五面楚歌」の大合唱を安倍政権の「レクイエム」とすることが今後の獲得目標だということになるでしょう。

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2月25日(水) 安倍政権は「下り坂」にさしかかったのではないか [内閣]

 昨日で64歳になってしまいました。この年になれば、誕生日を迎えて年を取ることには複雑な思いがありますが、この世に生を受けたことに対してはいくつになっても感謝したいものです。
 フェイスブックなどで、「お誕生日おめでとう」のメッセージを下さった方に、この場を借りてお礼申し上げます。文章を書くのは基本的にこのブログに限っておりますので、いちいちご返事を差し上げませんが、ご了承いただければ幸いです。

 さて、通常国会が始まり、安倍首相は「改革断行国会」だと意気込んでいました。しかし、次々にボロが出て暗雲が垂れこめつつあるようです。
 昨年の解散・総選挙を峠として「下り坂」が始まったのかもしれません。その坂が長いか短いかは、これからの私たちの取り組み如何にかかっているということになるでしょう。

 「政治とカネ」の問題がまたも表面化しました。予想していた通り、西川公也農水相が政治資金問題についての疑惑をもたれて辞任したからです。
 第2次安倍政権になってから政治資金の疑惑が指摘された小渕優子経済産業相と、選挙区で「うちわ」を配布して公職選挙法違反で刑事告発された松島みどり法相に次ぐもので、わずか4か月で3人の辞任になります。関連する砂糖業界からの「甘い汁」を吸っていたことや国の補助金を受けていた企業からの資金提供に問題があったわけです。
 地元では「カネ持ってコウヤ」と言われていたほど西川さんはカネに汚い人だったそうで、第3次改造内閣で再任される前から身内企業による献金が明らかになっていました。西川さんは辞表提出後、記者団に「私がいくら説明しても、わからない人にはわからない」と言って居直り、「これ以上、国会審議に影響を及ぼすことはできるだけ避けたい」と言って辞任しました。

 この発言からも分かるように、献金を受け取ったこと自体についての反省は全くありません。「悪いことをやったとは思っていないけれど、これ以上親分に迷惑はかけられないから、潔く身を引こうじゃないか」というわけで、まさにヤクザの論理そのものです。
 今後、問題の全容を明らかにして説明責任を果たすことが必要でしょう。安倍首相は、小渕・松島両前大臣の辞任の際、「任命責任は私にある」と述べ、今回の西川辞任についてもそう発言しました。
 その「責任」をどうとるつもりなのでしょうか。それとも、「任命責任」を口にすることはその場しのぎのための「方便」にすぎないものなのでしょうか。

 首相自身のヤジと虚偽答弁の取り消しという問題も生じました。その内容もその後の居直りも一国の総理大臣としては見苦しい限りであり、一刻も早く首相の座を去ってもらいたいものです。
 安倍首相は西川農水相の献金問題に関して追及した民主党の玉木雄一郎議員の質問の際、「日教組はどうするんだよ」などとヤジを飛ばし、翌日の同委員会でこの問題をただした前原誠司議員に「なぜあの時、日教組といったかといえば、日教組は補助金をもらっていて、そして、教育会館というものがあるわけでありますが、教育会館から献金をもらっている議員が民主党にはおられて、それに対する質問をかつて我が党がした時に、『これは別の団体だから関係ない』というのが、当時の民主党の政府としての大臣が答弁した見解であったわけでありますから、それをどう考えるかという指摘をしたところでございます」と答弁しました。しかし、これは首相の思い違いであったため、「先般前原委員への私の答弁のなかで正確性を欠く発言があった」と長々と言いわけしたうえで、「遺憾であり、訂正申し上げる」と発言しました。
 その後も「遺憾」を繰り返す安倍首相に対して、民主党議員から「謝罪はしないということか」と迫られ、ようやく「教育会館に対して、私の申し上げたことで不快な念を持たれた方がいたとすればこれは申し訳ないという気持ち。教育会館、関係者に対して申し訳なかった」と謝罪しました。この間の安倍首相の対応は、根拠のないヤジや答弁を行い、それについて間違いを突きつけられてものらりくらりと言い逃れしようとする見苦しい姿であったと言わざるを得ません。

 「成功は失敗の元」だということなのでしょう。野党の不意を突いた解散・総選挙で、安倍政権は3分の2を上回る与党勢力を維持することに成功しました。
 しかし、それが失敗の元だったのではないでしょうか。「して、やったり」という思いが、知らず知らずのうちに安倍首相の「おごり」を強めてしまったようです。
 「イスラム国」(IS)による日本人人質殺害事件での大失敗にもかかわらず、そのことを隠ぺいして内閣支持率を上げることにも成功しました。それが安倍首相の「慢心」を招き、「政治とカネ」の問題の軽視、思わず口を突いて出たヤジ、きちんと事実関係を調べないまま憶測で口走ってしまった虚偽答弁などに現れたように見えます。

 おごりと慢心が下り坂へと安倍首相を導いていったということでしょう。「一強多弱」などと言われる勢力関係の国会内にこそ、首相のつまずきの石が転がっていたということになります。

 なお、拙著『対決 安倍政権―暴走阻止のために』(学習の友社)が、3月1日(日)に刊行されることになりました。来週には書店などにも並ぶでしょう。
 購入ご希望の方は、学習の友社http://www.gakusyu.gr.jp/tomosya.htmlに直接、ご注文いただくのが確実だと思います。定価は1300円+税となっています。

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12月25日(木) 安倍「大惨事」(第3次)内閣を待ち受けるこれだけのジレンマと難問 [内閣]

 第2次安倍政権の第3次内閣が発足しました。国民にとっては、さらなる暴走によって大事故を引き起こす可能性の高い「大惨事」内閣が出発したことになります。

 この内閣は、総選挙で確保した衆院での3分の2以上の与党勢力を持っています。選挙での洗礼を経て、首相の発言力はさらに高まることでしょう。
 「国民の信任」を得たと言い張って、さらなる暴走に出る危険性が高いと思われます。選挙でほとんど触れず隠し通した争点についても、「白紙委任」を得たかのような居直りに出ることでしょう。
 そもそも、不意打ちの奇襲攻撃によって票をかすめ取り、そうするための力と口実を手に入れることを狙っての「今のうち解散」でした。しかし、安倍首相の前途はそれほど容易なものではなく、多くのジレンマと難問が待ち受けています。

 これについては、すでに、12月20日付のブログ「総選挙後に安倍首相の表情が『終始険しかった』のはどうしてなのか」で、ある程度触れています。
 第1に、与党内で「隠れ野党」の公明党が増え、野党内で「隠れ与党」の次世代の党が壊滅したために改憲発議が困難になったこと、第2に、アベノミクスの前途に不安があるにもかかわらず景気回復を前提にして消費再増税を確約してしまったこと、第3に、沖縄の新基地建設をめぐる県民の反対世論がさらに明確に示されたこと、第4に、いまさらTPPから撤退もできず、かといって参加すれば農業をはじめとした国内産業に大打撃をあたえ、自民党の命取りになるかもしれないこと、第5に、原発を再稼働すれば世論や周辺自治体の反発を高めることは必至で、再生可能エネルギーによる持続可能な社会への芽を摘んでしまうこと、第6に、労働者派遣法の改定などの規制緩和によって非正規労働者を増やせば、労働力の質は低下し、消費不況と少子化はさらに深刻となって日本企業の国際競争力と経済の成長力は失われ、「成長戦略」などはとうてい実現できないことなどです。これらについて詳しくは、12月20日付のブログをご覧になってください。

 
 ここでは、これに加えて、以下のようなジレンマと難問を指摘しておきたいと思います。

 
 第1に、「政治とカネ」の問題です。今回の第3次安倍内閣でただ一人、江渡防衛相だけが再任されませんでした。
 江渡さんは閣僚の椅子の「防衛」に失敗したわけですが、それは「政治とカネ」の問題で野党から追及されていたからです。これから、集団的自衛権の行使容認など安保法制についての審議が行われますから、その妨げになってはいけないということで再任を辞退したそうです。
 しかし、他の閣僚には「政治とカネ」の問題がないのでしょうか。11月末に公表された政治資金収支報告書では問題のある使われ方や不実記載などが続々と判明していますから、今後、通常国会でもこれらの問題が追及されることは避けられません。

 第2に、安倍改造内閣が「目玉」としていた地方創生の問題です。すでに、TPP参加や労働者派遣法改定とも関連して指摘しましたが、これについて安倍政権がやろうとしていることはアクセルを踏みながら同時にブレーキを踏んでいるようなものです。
 地方を元気にするためには、地域社会を担っている農家や中小業者、労働者が希望をもって働け、安定した収入が得られるようにしなければなりません。しかし、TPPで農産物の関税が下がり、非関税障壁の撤廃ということで中小業者への保護がなくなり、非正規労働が拡大して収入が減れば、地方社会の活力は低下するばかりです。
 安倍首相が行おうとしている財政支出による補助金や公共事業では、地方再生にほとんど効果のないことはこの間の経験で証明済みです。農業の生き残りのためということで「農業改革」を打ち出し、「岩盤規制」に穴を開けようとしていますが、結局それは農地の集約による規模拡大と企業の進出によるビジネスチャンスの創出にすぎず、そのために邪魔になるJA全中と農業委員会を弱体化させ地方社会を実際に担っている農家経営の衰退をもたらし、農村の消滅を促進するだけでしょう。

 第3に、同じく、女性の活躍推進という問題です。これについても、安倍内閣が打ち出しているのは「エリート女性」の社会進出とキャリア・アップの支援にすぎません。
 社会の底辺で差別され、多くの困難を抱えている「ノン・エリート女性」は切り捨てられたままで、雇用改革による非正規労働の拡大はこのような女性の困難を解決するどころか、さらに増大させるだけです。ひとり親の女性や子育て支援などについても効果的な施策はなく、女性の家事労働時間を減らすためには男性の残業をなくすしかないのに、「残業代ゼロ」法案を準備してさらに労働時間を延ばせるようにしようなんて、まったく逆行していると言うしかありません。
 そもそも、安倍首相は「価値観外交」などと言っていますが、自由・民主主義・人権を守ろうとする意欲はなく、報道の自由や国民の知る権利、在日コリアンなどマイノリティの人権を守ろうとはせず、従軍慰安婦問題についての発言にもみられるように女性の人権についても無頓着です。女性活躍推進担当相についても、戦前の教育を再評価して伝統的な子育てに回帰することを推奨する「親学」の信奉者を据えるというチグハグさです。

 第4に、集団的自衛権の行使容認をめぐる問題があります。これから本格的な法案準備のプロセスに入るわけですが、公明党の「壁」、内閣法制局の「壁」、世論の「壁」という「3つの壁」を突破しなければなりません。
 集団的自衛権の行使容認をできるだけ限定しようとしている公明党との間では、適用範囲を日本周辺に限るのか、シーレーンの機雷封鎖解除にまで適用するのか、停戦以前でも可能とするのかなどの点についての合意ができていません。また、安保法制の改定という点では、内閣法制局が了承しなければ国会に法案を出せず、これまでの解釈をどこまで変えて、それをどのように条文に反映させるのかという点で法制局の対応が注目されます。
 もし、この2つの「壁」を突破することができても、最後の世論の「壁」を突破するのは容易ではないでしょう。共産党が勢力を増やした国会で本格的に審議されますから、その問題点や危険性はいっそう明らかになり、大きな大衆運動が盛り上がるにちがいありません。

 第5に、周辺諸国との関係をめぐる問題です。中国や韓国との関係改善は安倍首相には無理で、21世紀における友好関係確立のためには別の首相に代えるしかないということが明らかになってきました。
 問題は安倍首相が行っている個々の政策だけでなく、安倍晋三という個人が中国や韓国の首脳の信頼を全く得られていないという点にあります。これら両国との間がギクシャクしているのは日本の首相が安倍さんだからですから、正常な関係を確立するためには安倍さんに首相を辞めてもらうしかありません。
 それは日本の外交と国際的な評価にとっても、大いにプラスになります。安倍首相の最大の問題は、戦前の帝国主義と植民地主義を否定する立場になく、植民地支配と侵略戦争を反省していず、戦前の日本を肯定し美化することは戦後の日本を否定し貶め、戦後国際秩序への挑戦となるということを全く理解していない点にあるのですから……。

 
 この点とも関連しますが、第6に、戦後70年と安倍首相の歴史認識をめぐる問題です。来年は第二次世界大戦終結70周年に当たりますが、安倍首相は周辺諸国との新たな対立や摩擦を引き起こすことなく、この年を乗り切ることができるのでしょうか。
 「70周年」ですから新しい首相談話などを出して日本の立場を国際的に示すことが求められますが、かつての枢軸国の中で未だに周辺諸国との完全な和解が得られず、不和を引きずっているのは日本だけです。もし、その内容が侵略戦争や植民地支配の弁護、従軍慰安婦問題の否定など、少しでも戦前の「日本を取り戻す」ようなトーンを帯びていれば、たちどころに批判を浴びて外交問題に発展し日本の国際的な孤立を深めることでしょう。
 それは中国や韓国だけにとどまらず、他のアジア諸国やロシア、欧米諸国との関係にまで波及する可能性があります。再び靖国神社を参拝するのかという問題とも合わせて、安倍首相の言動が注目されるところです。

 
 これほどのジレンマと難問を抱えていながら「この道しかない」というのは、すでに安倍首相が解決能力を失っているからです。実際には「別の道」もあるのに、その道を見つけるだけの能力がないから「この道」しか見えないのです。
 見る力がなければ見つけることはできません。他の選択肢や別の解決策を見つけられないほどに統治の力や政策能力が衰えてしまったのが、今の自民党であり安倍首相なのです。
 この先、安倍首相の思い通りの政治運営がなされるとすれば、それは国民にとっての「大惨事」をもたらすことは必至です。もし、安倍首相が世論と衝突して政権の座を引きずり下ろされれば、それは安倍さんにとっての「大惨事」となることでしょう。

 しかし、これから難問に直面してどれほど追い込まれようと、安倍首相はもう逃げ出すことはできません。すでに、「伝家の宝刀」を抜いて解散してしまったのですから……。
 ぜひ、安倍暴走を阻止して政権の座から追い落とし、安倍さんにこう言わせたいものです。「やはり、第3次内閣は私にとっての『大惨事』内閣だったのか」と……。

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10月21日(火) 「大目玉」を食らって辞任に追い込まれた「目玉」閣僚 [内閣]

 第2次安倍内閣の「目玉」閣僚として起用された小渕優子経済産業相と松島みどり法相の2人が引責辞任に追い込まれました。世論と野党に「大目玉」を食らった末の退場です。

 しかし、これで問題を決着させるというわけにはいきません。小渕さんの政治資金の使われ方については本人も良く分からないほどですから、きちんと調査して政治倫理審査会などで真相を明らかにしてもらう必要があります。
 松島さんについては、辞任はしたものの「私自身、法に触れることをしたとは考えていない」と居直っています。責任の自覚がないとわけで、さらなる追及が必要でしょう。
 この2人については国会での追及と真相究明だけではなく、告発状が出されていますので司直の手による捜査も行われることになります。どちらも国会議員としての資質や資格がないというべきであり、議員辞職すべきです。

 これで、第2次安倍改造内閣の「目玉」閣僚として起用された女性議員5人のうち2人が内閣を去ったことになります。しかし、残った3人の女性閣僚の方が、実は問題はより大きいと言わなければなりません。
 この3人は、靖国神社の秋の例大祭にそろって参拝したからです。関係者が中国との関係改善や首脳会談の実現に向けて汗をかいている最中に、平然と我を通して国益を害する暴挙を行ったわけであり、閣僚としての資質に欠けていることは明らかです。
 しかも、山谷国家公安委員長は在特会の関係者との付き合いがあり、高石総務相はネオナチ団体の関係者と一緒に写真に写っているなどの過去があります。「類は友を呼ぶ」ということであり、このような極右団体との親和性を持っていること自体が閣僚としての適格性を欠いている証ですから、これらの閣僚も辞任すべきでしょう。

 安倍首相は今回のダブル辞任で早期の幕引きを図りました。第1次政権の時も閣僚の辞任や途中交代が相次ぎ、いくつかの場合では交代が遅れて傷口を広げたという苦い経験があったからです。
 ダブル辞任によって、政権の危機を一気に収束させたいという狙いがあったのでしょう。しかし、「女性の活躍」を打ち出すための「目玉」や政権のイメージアップのために女性を「活用」しようとしたのは安倍首相自身です。
 そのために資質や適格性には目をつぶり、「身体検査」も十分には行わず、これらの女性を閣僚に起用してしまいました。女性を「道具」のように利用しようとした安倍首相の姿勢や任命権者としての責任は厳しく追及されなければなりません。

 第2次安倍政権は、発足してから昨年の参院選までデフレ脱却と景気回復を掲げて「アベノミクス」を前面に出しました。「猫かぶり」の第1段階です。
 7月の参院選で自民党が勝利して「ねじれ状態」が解消されてからは、本来の新「富国強兵」政策に基づいて「積極的平和主義」という極右軍国主義路線を突っ走ってきました。「危険な暴走」の第2段階です。
 そして、手練手管の内閣改造で峠を越え、今回の2閣僚のダブル辞任によって坂を転げ落ちる「転落」の第3段階が始まったようです。この超タカ派極右改憲内閣の転落を早めるために総反撃による追撃戦に移るのが、これからの私たちの課題だということになります。

 かつて中国の作家・魯迅は、犬が水に落ちて「もう出てきて人に咬みつくことはあるまいと思うのはとんでもないまちがいである」として、こう主張しました。「水に落ちた犬は打て」と……。
 私も、次のように言いたいと思います。「小渕・松島」という石にけつまずいて水に落ちてしまった安倍首相に手を差し伸べてはなりません。「水に落ちた安倍は打て」と……。

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9月17日(水) 「女性の活用」は安倍改造内閣の「お飾り」のためだけなのか [内閣]

 本日の『しんぶん赤旗』私のコメントが出ていました。「安倍流『女性活躍』の狙いとは」という見出しの記事で、コメントは次のようなものです。

 政治学者の五十嵐仁氏は、有村氏はミスキャストだと指摘します。「女性の社会進出をバックアップすべき大臣は本来、女性の人権と男女平等・ジェンダーの視点をもつことが大事です。たとえ女性でも古い家族観を持ち、男女共同参画を否定する人がトップでは困るわけです」

 安倍改造内閣では、女性閣僚が過去最多に並ぶ5人も入閣しました。しかし、それは「お飾り」にすぎません。
 新閣僚が顔をそろえた記念写真をご覧ください。真ん中に安倍首相。その左右を占めた小渕さんと高市さんは黒と青系統の洋服。その後ろに立つ有村さんと山谷さんは白系統の和服姿。安倍首相の真後ろにいた松島さんは真っ赤なドレスという形で、コーディネートされていました。
 これらの女性陣が安倍首相の周りを固めています。まるで、首飾りのようではありませんか。

 この安倍改造内閣で新設されたのが石破地方創生担当相と有村女性活躍推進担当相です。いずれも統一地方選や内閣のイメージアップを意識した人気取りで、所詮は付け焼刃に過ぎません。
 しかし同時に、一時しのぎの人気取りとはいえ、そのような形で特別の担当大臣を新設せざるを得ないほどに、これらの問題が深刻になってきているということの現れにほかなりません。そして、このような形であれ、地方や女性の問題に内閣が力を入れて取り組もうとすること自体は、決して悪いことではないでしょう。
 そのことによって、少しでも地方の活力が「創生」されれば結構なことです。女性の抱えている困難が解決され、社会的地位の向上と社会進出が進み、男女共同参画社会への実現に少しでも近づくことができれば、それに越したことはありません。

 しかし、果たしてそうなるのでしょうか。軍事おたくの石破さんが場違いな地方創生の分野でどれほどの力を発揮出るかは未知数です。
 ただし、女性の活躍推進を任された有村さんについては決して未知数ではなく、これまでの言動を通してある程度の予想ができます。それは女性の社会的地位の向上や社会進出、男女共同参画社会の実現に向けての推進力ではなく、ブレーキになる可能性が大きいということです。
 その点では、全くのミスキャストであると言わなければなりません。それが、冒頭に紹介した私のコメントの内容です。

 これに付け加えれば、有村さんは「3年抱っこの保育」などを推奨する「親学」の信奉者でもあります。このような育児思想と社会進出とは、どのようにして両立できるのでしょうか。
 古い家族観は今も持ち続けているのでしょうか。それとも、そのようなものは大臣になった途端に吹っ飛んでしまったとでも言うのでしょうか。
 迷った時には靖国神社に行って英霊の声を聞くのだそうですが、これからもそうするつもりなのでしょうか。大臣になったのですから、死んだ英霊ではなく生きている国民の声を聴いていただきたいものです。

 このような形で、安倍改造内閣が女性重視の姿勢を打ち出したにもかかわらず、都議会自民党では新たな問題発言が行われました。都議会の超党派でつくる「男女共同参画社会推進議員連盟」の野島善司会長が、プライベートでは「結婚したらどうだ、というのは僕だって言う」と述べたのです。
 セクハラヤジに続いて、セクハラオヤジが登場したというわけです。さすがに「これはまずい」と思ったのでしょう。都議会自民党の総会で、「不適切な発言をして大変申し訳ない」と話して、謝罪したそうです。
 しかし問題は、自民党議員などの多くがこのようなセクハラ的意識を持っており、批判されなければその問題点に気が付かないというところにあります。女性の活躍や社会進出を阻んでいる社会の仕組みや働き方の問題とともに、このような女性蔑視につながる社会意識についても、根本的に改められる必要があるでしょう。

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9月5日(金) 安倍内閣の支持率も「代わったけれど、変わらない」 [内閣]

 今日の『毎日新聞』を見て驚きました。「改造内閣支持率横ばい47%」という見出しが目に入ったからです。
 前回8月の調査での支持率47%と変わっていません。せっかくの内閣改造だったのに、「ご祝儀」が出なかったというのでしょうか。
 ただし、共同通信の調査では内閣支持率は54.9%で、5.1ポイントの上昇になっています。こちらの方は、それなりの「ご祝儀」が出たようです。

 安倍首相にとっては、不本意な結果でしょう。だから、「改造なんかしたくなかったのだ」と思ったかもしれません。
 内閣改造への自民党内の期待は高かったはずですから、それなりに党三役や閣僚の入れ替えをしなければなりませんでした。しかし、骨格は維持したかったので、中枢部分は留任させています。
 代えなければならないのであれば、ライバルを取り込み、「お友達」を補充して安倍カラーを強め、内閣のイメージアップを図り、党内を安定させて統一地方選に備えるという布陣を考えたのでしょう。それが、石破前幹事長の入閣や谷垣元総裁の幹事長就任、塩崎恭久、高市早苗、山谷えり子など「お友達」の起用、小渕優子経産相などの閣僚5人と稲田政調会長という女性の活用となったわけです。

 改造内閣の発足にあたって安倍首相は「実行、実現内閣」を標榜しましたが、問題は何を実行し、実現しようとしているのか、という点にあります。
 安倍首相にとって当面する最大の課題は集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を具体化することであり、そのために安保法制担当相を新設し、江渡防衛相に兼務させました。
 また、地方創生と国家戦略特区担当相も新設して石破さんを押し込みましたが、これは統一地方選挙向けの付け焼刃にすぎず、地方へのバラマキが強まるだけです。女性活躍推進担当相も新設して有村さんを抜擢しましたが、成長戦略に役立つ限りでの「女性の活躍」が期待されているにすぎず、女性閣僚5人の起用についても共同通信調査では「期待できない」が50.2%と多数になっています。

 経産相には最年少で女性の小渕さんが抜擢され話題となっています。少しでも反対や抵抗を少なくしたいという安倍さんの目論見を反映したものです。
 これは原発再稼働に向けての「めくらまし」にすぎません。早速、記者会見で小渕さんは「安全性が最優先だ」としつつも、「原子力規制委員会が新規制基準に適合すると判断すればそれを尊重して再稼働を進めていく」と発言しています。
 しかし、毎日新聞調査では、再稼働に賛成が33%で反対が57%になっています。今後、このような再稼働反対の世論との衝突は避けられないでしょう。

 世論との衝突ということで言えば、消費税の10%への再引き上げ問題の方がもっと深刻です。毎日新聞調査では反対68%、共同通信調査でも反対68.2%と、世論の圧倒的多数が反対なのですから。
 8月は異常気象で経済指標は軒並みマイナスになっています。他方で物価が上がって生活はますます苦しくなります。
 このようななかで、もし消費税を引き上げれば日本経済の自滅を招き、先延ばししようとすれば引き上げ論者の谷垣幹事長との軋轢が強まります。どちらにしても、安倍内閣の死活を左右する重大問題になりそうです。

 ということで、危険ドラッグを吸いながら運転しているような安倍首相の暴走は今後も続き、世論との激突は避けられそうにありません。もし、暴走によって大事故が起きれば、それに巻き込まれて被害を受けるのは私たち国民であるということを忘れないようにしたいものです。

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