SSブログ

6月2日(木) 「公約違反」に「文句があるなら選挙で示せ」と安倍首相は居直った [参院選]

 いよいよ「政治決戦」の始まりです。昨日、通常国会が幕を閉じ、日本の命運をかけた参院選に向けてのスタートが切られました。

 通常国会の閉幕に当たって安倍首相は記者会見を開き、解散・総選挙は実施しないこと、2017年4月に行うとしていた消費税の10%への引き上げを2019年10月まで先延ばしにすることを正式に表明しました。これで衆参同日選挙はなくなりました。
 参院選は「関ケ原の合戦」で、解散・総選挙は「大阪の陣」だ、熊本地震で大変な時に解散・総選挙はやるべきではないが、やれるものならやってみろ、両方いっぺんにやるのであれば手間が省ける、と言っていた私からすれば、「大阪の陣」は先に延びたことになります。
 総選挙になれば、参院1人区で実現した野党共闘が一挙に衆院小選挙区にも波及する可能性がありました。この野党共闘の勢いを加速させて衆参両院での与野党逆転を実現し、戦争法廃止のための新しい政府を樹立するという課題の達成にはしばらく時間がかかりそうです。

 これまで首相は消費税の引き上げについて「リーマン・ショックや大震災など、よほどのことがない限り確実に実施する」と言っていました。しかし、記者会見では「リーマン・ショック級の事態は発生していないのが事実だ。熊本地震を大震災級だとして再延期の理由にするつもりもない」と述べています。
 先進国首脳会議で「リーマン・ショック前のような経済危機」という認識で一致できず、政府見解とは異なる資料を配布するなどの姑息な工作を行い、それが暴露されてサミットの政治利用ではないかとの批判が高まったため、リーマン・ショックを消費税先送りの口実として使うことができなくなりました。その代わりに持ち出してきたのが、「新たな判断」です。
 首相は現状の景気認識について、「新興国や途上国が落ち込み、世界経済は大きなリスクに直面している」「熊本地震など新たな下振れリスクもあり、再びデフレの長いトンネルに逆戻りするリスクがある」「直面する危機はリーマン・ショックのような金融危機とは異なる。世界経済の将来は悲観していないが、リスクには備える必要がある」と「リスク」を強調し、サミットでの合意も踏まえ、あらゆる政策を総動員するという考えを示しました。消費増税の先送りはこのような「新たな判断」に基づくもので、「公約違反との批判も真摯に受け止めている」としつつ、6月22日公示、7月10日投開票の参院選を通して「国民の信を問いたい。与党で改選議席の過半数の獲得を目指したい」と表明しています。

 アベノミクスは上手くいっているが、経済の先行きには「リスク」がある、それを避けるために消費増税を先送りするというわけです。この「新たな判断」は「公約違反」になるが、それに文句があるなら参院選で示してほしいと、安倍首相は居直ったことになります。
 こうして「ボール」は有権者の方に投げられました。それをどう打ち返すかが私たちに問われています。
 安倍首相が居直って叩き付けた挑戦状を、堂々と受けて立たなければなりません。「国民の信を問いたい」というのであれば、そのような「信」はなく、とっとと退場するべきだという国民の意思を選挙結果としてはっきりと示そうではありませんか。

 安倍首相は参院選での獲得目標として「与党で改選議席の過半数」を掲げました。これは参院総議席の過半数という目標よりも高いハードルになります。
 このハードルをクリアできなければ責任を取って首相の座から去るというのが、「信を問う」ということの意味にほかなりません。9年前の参院選で安倍首相は手痛い敗北を喫して2か月後に健康問題を理由に辞任し、その9年前の1998年の参院選でも自民党敗北・橋本龍太郎首相退陣、さらに9年前の1989年の参院選でも自民党は結党以来の最低議席となって宇野宗佑首相が政権を退いています。
 この自民党大敗・首相退陣という「9年目のジンクス」を、今度の参院選でも再現させなければなりません。戦争法廃止を求める粘り強い闘いの継続、「野党は共闘」という声に押されての全1人区での共闘の実現、安倍首相の驕りと独善的で独裁的な政権運営に対する強い批判、自民党議員・閣僚の不祥事や「政治とカネ」の問題の噴出、アベノミクスの失敗と政策の行き詰まりなど、その可能性は十分にあります。

 安倍首相の政治責任を問い、その退陣を実現できるかどうかが問われています。戦争法廃止と改憲阻止のために「アベ政治を許さない」という国民の意思をキッパリと表明する機会として参院選を有効に活用したいものです。

nice!(1)  トラックバック(0) 

5月27日(金) 「激突の時代」における「最終決戦」が訪れようとしている [参院選]

 かつて故品川正治さんは、『激突の時代』という本を出されました。品川さんは元日本興和損保の社長で経済同友会の終身幹事も務められた財界人ですが、最晩年まで精力的に「九条の会」で活動され、「平和・民主・革新の日本をめざす全国の会」(全国革新懇)の代表世話人の一人でもありました。
 実は、かく言う私も、先日の総会で全国革新懇の代表世話人に選出されました。品川さんの後輩となったわけで、その遺志を引き継いでいきたいと思っています。

 この品川さんの本の書名にある「激突」とは、「人間の眼対国家の眼」の激突のことです。「人間の眼」というのは「弱者・被支配者の立場」ということであり、「国家の眼」というのは「強者・支配者の立場」ということでしょう。
 今日、このような「激突」は新たな様相を呈し、新しい段階にさしかかっているように思われます。それは、戦争法と憲法をめぐっての激突です。
 具体的には、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」と日本会議との激突、その日本会議などの「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が推進している1000万人署名運動と「総がかり行動実行委員会」が中心になって進めている2000万人署名運動との激突、来るべき夏の選挙での自公対野党共闘との激突です。このような激突が象徴的に表現されているのが参院選での1人区のたたかいであり、それは衆院選での選挙区にまで波及しようとしています。

 それが「最終決戦」だというのはどうしてなのでしょうか。これまで繰り返されてきた「決戦」に、いよいよ決着が付けられる可能性が出てきたからです。
 すでに5月17日付のブログ「自民党周辺でおびえをともなってささやかれている『9年目のジンクス』」で書いたように、これまで自民党は参院選で3回、衆院選で1回、計4回も手痛い敗北という懲罰を受けてきました。参院選では、89年、98年、07年と9年ごとに選挙での大敗と首相辞任が繰り返され、これは「9年目のジンクス」として知られています。
 衆院選では09年選挙での惨敗があり、それは政権交代に結びつきました。しかし残念ながら、これらの決戦と懲罰は一時的なものにとどまったために自民党の息の根を止めることができず、その復活を許してきました。

 したがって、これらは事実上の決戦としてたたかわれていたにもかかわらず、自民党政治の根本的な転換には結びつきませんでした。だからこそ、このような結果が繰り返されてきたのです。
 このような循環の構造が形成され、それが打ち破れなかったのは、自民党の息の根を止める展望と自民党政治からの脱出路が見いだせなかったからです。別の言い方をすれば、自民党は失敗を繰り返して統治能力を枯渇させてきたにもかかわらず、それに代わる「政権の受け皿」が未熟で国民の期待を十分に受け止められなかったからです。
 しかし、いまやこの欠陥は克服されつつあり、共産党を含む野党共闘という新しい選択肢と「政権の受け皿」が登場しました。かくして自民党政治に対する懲罰と復活という循環の構造が打破される展望が生じ、今度の決戦は「最終」になる可能性が生まれたのです。

 とはいえ、今の時点では、それは可能性にとどまっています。実際に「最終」となるかどうかは分かりません。
 そのためには、まだいくつかの条件があるからです。それは、自民党政治の復活を許さず、息の根を止めるための条件になります。
 その前提は参院選での野党共闘の勝利ですが、同時にそれを衆院での与野党逆転と政権交代、新たな民主的連合政権の樹立に結びつけなければなりません。そのためには、次のような方向での努力が必要です。

 第1に、選挙共闘を選挙以外の分野にも拡大して、自公勢力による分断統治の構造を打ち破ることです。とりわけ重要なのは労働戦線や原水禁運動の分野であり、ここでの共同の推進と統一の回復に力を入れていただきたいと思います。
 労働戦線の分野では、連合・全労連・全労協という3つの労働組合全国組織が鼎立しています。これらの異なる潮流の間でも戦争法反対闘争での一定の協力が生まれ、メーデー中央集会では全労連と全労協がエールを交換しあい、鹿児島では県連合の事務局長が参院選の共同候補に、県労連の事務局長が県知事選の統一候補になり、労働法制改悪反対や最低賃金の引き上げなどの課題での共闘の動きもあります。
 歴史的な経過や対立の過去もあって簡単ではないでしょうが、選挙共闘や共同闘争を積み重ねて相互の信頼感を高め、地方や地域での新たな共同の枠組み作りへと発展させていって欲しいものです。原水禁運動においても、この間の脱原発運動や核廃絶運動での実績を踏まえて、原水協と原水禁との統一に向けて動き出していただきたいと思います。

 第2に、様々な運動の担い手を発掘・育成して、次の世代への橋渡しを行うことです。この点でも、戦争法反対闘争の盛り上がりと若者の参加という新たな希望が生まれてきました。
 戦争法に反対する闘争では大学生などの「自由と民主主義のための学生緊急行動」SEALDs(Students Emergency Action for Liberal Democracy - s)が注目され大きな役割を果たしましたが、それより下の世代の高校生たちがグループ「T-ns SOWL(ティーンズソウル)」を結成しています。また、労働分野でも最低賃金を1500円以上にするよう要求する「AEQUITAS(エキタス)」(ラテン語で「公平」や「正義」を意味する)という団体が登場しました。
 これらの動きは、層としての青年運動や学生運動、高校生運動という広がりを持たず、青年や学生の運動、高校生の運動にとどまっていますが、このような主体が登場して運動に加わってきたことは注目されます。18歳選挙権の導入も青年・学生が政治に関心を持ったり社会問題に関わったりする大きなチャンスを提供することになるでしょうし、その条件を生かして新たな運動の担い手をリクルートすることを意識的に追求する必要があります。

 第3に、参院選1人区での選挙共闘を衆院選の小選挙区にまで拡大することです。これまで佐賀を除く31の1人区で共闘が実現し、その中には香川での共産党候補での共闘という重要な経験も生まれました。
 これをさらに発展させて衆院小選挙区でも共闘を実現し、野党4党の党首合意の実現を図らなければなりません。その際、民進党候補だけでなく共産党や社民党、生活の党などの候補者も対象とし、得票率に応じたバーターによって共同候補を決定すべきです。
 衆院での与野党逆転は直ちに政権交代に結びつき、新しい内閣の構成が問題になります。通常国会では野党によって戦争法の廃止など13本の法案が提出され、新政権が取り組み実現するべき政策課題が明らかになりつつありますが、これに加えて野党4党の共闘を部分的一時的なものにとどめず全面的で持続的な統一戦線の結成に結び付け、新しい民主的な連合政権の基盤を強固なものにしなければなりません。

 このような新政権の樹立に向けて「勝つためには何でもする」ことが必要です。「勝つ」とは何でしょうか。国民の願いが実現する国民のための政治を取り戻すことです。
 誰に勝つのでしょうか。自公に対してだけでなく、それを支えている右翼的な勢力、日本会議に勝つこと、つまり、その基盤になっている社会の意識や構造の転換を図ることです。
 これこそが、本来あるべき「革命」なのではないでしょうか。参院選での勝利はその出発点にすぎません。

 戦争法反対闘争のなかで、新しい変革主体としての「市民」が登場してきました。これが新たな市民革命の始まりを意味するものであったと、私は思います。
 それを一時的で部分的なものにとどめず、持続的で幅広いものとして政治変革へと結び付けていくことが必要です。そのために何ができるのか、どうするべきなのかが、私たち1人1人に問われているのではないでしょうか。

nice!(0)  トラックバック(0) 

5月17日(火) 自民党周辺でおびえをともなってささやかれている「9年目のジンクス」 [参院選]

 最近、自民党周辺では「9年目のジンクス」がささやかれているそうです。このジンクスの再現を恐れ、自民党はおびえているというのです。
 これは永田町界隈でうごめき始めたある種の「妖怪」のようなものかもしれません。それが「9年目のジンクス」なのです。
 この「妖怪」の正体は何でしょうか。それは、1989年の参院選から9年ごとに繰り返されてきた自民党大敗という注目すべき政治現象のことです。

 それが最初に現れたのは1989年のことでした。前年からのリクルート事件で政界は大揺れとなり、この問題で辞任した竹下登首相の後に登場した宇野宗佑首相は「3本指」の女性スキャンダルなどもあって参院選で大敗します。
 7月23日投・開票の参院選で、自民党の獲得議席は過去最低の36議席にとどまりました。自民党結成以来、初めて参院で与野党の議席が逆転し、社会党の土井委員長は「山が動いた」と叫びました。
 この時の自民党は1人区で前回の25勝1敗から3勝23敗と惨敗して合計33議席も減らしました。その責任を取って、宇野首相は開票翌日に退陣を表明しています。

 その9年後は1998年で、橋本龍太郎政権の時代です。この時は住専問題などについての「経済失政」に批判が集中し、橋本首相の「恒久減税」についての発言が二転三転したこともあって、またもや参院選で大敗します。
 7月12日投・開票の参院選で、公示前には70議席を超えて勝利するとの予想さえあった自民党は改選60議席を44議席にまで16議席も減らしました。他方で民主党は27議席、共産党は結党以来最多となる15議席を獲得するなど健闘しています。
 自民党は1人区で振るわなかっただけでなく、改選定数が3人以上の選挙区での複数擁立による共倒れも目立ちました。この敗北の責任を取って、橋本首相は開票日の翌日に辞任を表明しています。

 さらにこの9年後の2007年は、第1次安倍晋三政権の時代に当たります。この時は「消えた年金」問題や赤城農水相の絆創膏事件などのスキャンダルもあって、またもや参院選で自民党は大敗しました。
 7月29日投・開票の参院選で、自民党は37議席の当選にとどまりました。これは最低だった89年の36議席に次ぐ大敗北です。
 この結果、自民党は参院第1党の座から初めて転落しましたが、安倍首相は「惨敗の責任は私にある」としながらも続投を表明して粘りました。しかし、中川自民党幹事長と青木参院議員会長は辞任し、安倍首相も2か月後の秋の臨時国会冒頭で「健康問題」を理由に辞任することになりました。

 それから9年後が、今年2016年7月の参院選です。再起を果たした安倍首相は9年前の「ジンクス」の再現を密かに恐れていることでしょう。
 果たして、今回もこのような「9年目のジンクス」が繰り返されるのか、大いに注目されます。しかも、そのための条件はそろってきているのですから、安倍首相も気が気ではないでしょう。
 参院選での懲罰、支持の回復、与党の増長、強権による失政と民意の離反、そしてまた懲罰というサイクルが9年ごとに3回繰り返されてきたからです。いかに自民党が「懲りない面々」であるかということ、民意に反することが分かっていても大企業本位で従米の政策を転換することができないということが示されていると同時に、他方で、そのような自民党に代わるべき対抗勢力のふがいなさや「受け皿」不在の状況が続いてきたことも示されています。

 今日、このような状況は、一面では継続されながら、他面では大きな変化が生まれました。1人区での勝敗が大きく左右するということ、複数区での与党の候補者調整がうまくいかなければ共倒れで大敗するということは以前と変わりませんが、野党の側の共闘体制が整ったという点で様変わりしたからです。
 1人区の小選挙区制は、支持の変化が増幅して現れ、激変を生み出すという恐ろしい制度なのです。しかも、これまでは「2大政党制」によって共産党など第3党以下の中小政党を排除する役割を果たしてきましたが、今回は「野党共闘」の実現によって「2大勢力」の対決になり、中小政党に対して政権へと接近する回路を開く役割を果たしています。
 32ある1人区で、オセロゲームのように与野党の議席が入れ替わり、複数区でも与党の共倒れによって野党が漁夫の利を得るかもしれません(当然、逆の場合も考えられますが)。そうなれば「9年目のジンクス」の実現となり、安倍首相にとっては9年前の2007年参院選の悪夢の再来ということになるでしょう。

 それを避けるための秘策の一つが、衆参同日選挙なのです。というのは、「9年目のジンクス」が始まった89年参院選から9年さかのぼった80年参院選で自民党は大勝していますが、それは史上初の衆参同日選挙だったからです。
 安倍首相が「解散のかの字も念頭にない」と再三打ち消しても、ダブル選挙の可能性がささやかれ続ける背景の一つがここにあります。6月1日に衆院を解散すれば、7月10日に参院選と同日に衆院選を実施することが可能になります。
 すでに、参院選は6月22日公示、7月10日投票という日程が固まりつつあります。このスケジュールであれば、同日選は十分に可能だということになります。

 ということで、焦点は25~26日のサミットが終わってオバマ米大統領が広島を訪問した後の5月28日から31日までの期間に絞られることになります。もし、同日選挙があるとすればこの期間に表明されるでしょうし、何のアクションもなければ同日選挙はないということになるでしょう。

nice!(1)  トラックバック(0) 

5月16日(月) 小林節さんが旗揚げした新政治団体「国民怒りの声」をどう見るか [参院選]

 この間、安保法反対運動で大きな役割を果たしてきた憲法学者の小林節慶応大学名誉教授が新政治団体「国民怒りの声」(怒り新党)を旗揚げすると発表し、波紋を広げています。この動きをどう見たらよいのでしょうか。
 これまで野党共闘を進めてきた勢力のなかには戸惑いの声が大きいように見えますが、評価し期待する声もないわけではありません。評価が分かれるのは、この「怒り新党」の登場にはデメリットとメリットの両方が考えられるからです。

 報道によれば、小林さんは5月12日に政治団体としての届け出を総務省あてに提出したそうです。14日には設立報告会が開かれました。
 ビデオメッセージであいさつした小林さんは「野党統一名簿を追求したが、時間切れになった。『反自民、嫌民進、共産未満』という人が3~4割いるが、このままでは棄権してしまう」と指摘し、無党派層を中心とした受け皿を作って「安倍政権の暴走を止めないといけない」と訴えたそうです。
 そのうえで、自分を含めて10人の擁立をめざし、すでに5人は説得したということ、残る5人は18日以降インターネットで公募を始め、男女が半分ずつになるように選ぶ予定だということを明らかにしました。つまり、この「怒り新党」は、「反自民、嫌民進、共産未満」の「無党派層」の受け皿となるべき新たな仕掛けを意図しているということになります。

 このような動きについては、安倍政権に対する批判票が分散して「死に票」が増え、結果的に与党を利することになりかねないとの危惧があります。候補者を立てるのは比例代表だけということですが、その票が割れて結果的に自民党を助けることになるという心配があるからです。
 とりわけ、社民党や生活の党にとっては「反自民、嫌民進、共産未満」の「無党派層」の受け皿となる「新たな野党がもう一つ増えるだけ」(社民党幹部)ですから、この動きに不快感を示し危機感を高めるのも理解できます。早速、吉田党首は「怒り新党」の比例名簿に加えてもらえないかと打診したり、民進党との合流の可能性にも言及したりしましたが、いずれも実現は難しいようです。
 生活の党と山本太郎となかまたちの小沢一郎代表も、「いずれ機会があればご本人におうかがいしないといけないが、現実に選挙戦を戦って国民の支持を得るというのはそう簡単な話じゃない。やはり(安倍政権打倒を掲げる)多くの皆さんと力を合わせ、思いを結集させないと国民は本気になってくれない。今後、どういう道筋で安倍政権を打倒するのか、わたしにはもう一つ具体的にわからないので、いまは論評することはできない」と述べて、戸惑いの色を示しています。一概に否定するわけにはいかないけれども、かといってもろ手を挙げて賛成というわけではないという複雑な心境がうかがえるような発言で、これは小林さんとともに安保法反対運動に加わって来た人々全体に共通する感情でしょう。

 同時に、この「怒り新党」への期待や評価もないわけではありません。山尾志桜里民進党政調会長は「小林節さんは改憲論者でありながら、立憲主義の危機だと立ち上がり、全国をくまなく歩いて素晴らしい活動をされている先生だと存じ上げている。そういった方がついに政治家として手を挙げようとされていることは、私自身は非常に希望だなと率直に感じています」と述べて期待感を表明し、「(小林氏とは)安倍政権、安倍総理の憲法に対するあまりに破壊的な考え方にとにかくストップをかけなきゃなんないという点では一致していると思う。その目標を達成するために、共通の相手に向かってどういった戦いぶりを展開していくのがいいのか。それはこれからのことではないでしょうか」と指摘しています。
 このような「希望」が感じられるのは、これまで関心を持たなかった無党派層にも参院選への興味や関心を呼び起こし、新たな支持層を開拓できる可能性があるからです。これが「怒り新党」ができることのメリットであり、小林さんの狙いもそこにあると思われます。
 無党派層や政党支持なし層の中には、「自民党には反対だが民進党も信頼できないし、かといって共産党には抵抗がある」という人々がいます。小林さんが「『反自民、嫌民進、共産未満』という人が3~4割いるが、このままでは棄権してしまう」というのは、このような人々を意識しているからであり、このような人々に「反自民」の新たな選択肢を提起しようというのが、その狙いだと思われます。

 「怒り新党」がこのような狙い通りの効果を生むかどうかは分かりませんが、すでに「賽は投げられた」というのも事実です。以上に見たように、メリットとデメリットに対する判断をめぐって賛否両論ありますが、八王子市長選挙で小林さんにも応援していただいた私としては、この試みが奏功して狙い通りの効果を生み、アベ政治を追い込む大きなうねりを生み出す契機になってもらいたいと願っています。
 その成否を決めるカギは投票率にあります。有権者やマスコミの注目を集めて参院選への興味・関心がドンドン盛り上がっていき、それまで投票に行くつもりがなかった有権者の足を投票所に向かわせることができ、その結果、投票率が上がればメリットの方が大きくなり、逆に下がって票の奪い合いとなればデメリットの方が大きくなるでしょう。
 「怒り新党」が野党共闘の「遊軍」としての役割を担い、「別に進んで共に撃つ」という形で安倍政権打倒の一翼を担い、選挙区での野党共闘候補の得票の底上げや野党全体の得票増に結びついてもらいたいものです。そのためには、批判しあうのではなく互いにエールを送りあいながら集票を競うことで相乗効果を生み出し、無党派層や保守層を含めて反アベ票を掘り起こす必要があります。

 選挙への関心や注目度を高め「今度は何とかなるかしれない」という期待感を呼び起こして、これまで「どうせ変わりはしないから」と諦めてしまった人々の足を投票所に運ばせることに成功すれば、大きな「革命的」な変化を生み出すことができるにちがいありません。そうなってもらいたいし、そうしなければ新たな「希望」は生まれないのです。
 夏の選挙は、衆参同日選挙どころか、東京では都知事選も含めて「トリプル選挙」になるかもしれません。その政治的な意義は極めて大きく、まさに「政治決戦」というにふさわしい様相を帯びてきています。
 「勝つためには何でもやる」という覚悟が問われています。その「何でも」の中には、新たな「遊軍」の登場という奇策も含まれるということかもしれません。

 このようななかで、小林さんと私とのトークイヴェントが、下記のような形で開催されます。これは八王子市長選挙での応援に対するお礼の意味を込めて企画されたもので、小林さんによる「怒り新党」の立ち上げとは無関係でした。
 しかし、このような情勢の下でのトークですから、この問題に全く触れないというわけにもいかないでしょう。「怒り新党」が「夏の選挙と日本の未来」にどう関わってくるかは、私にとっても大いに関心があります。
 というわけで、今回の旗揚げに際しての小林節さんの思い、その真意や狙いをじっくり伺うことにしたいと思っています。沢山の方に足を運んでいただければ幸いです。

トークイヴェント「夏の選挙と日本の未来」
5月20日(金) 18時開場 18時半開会 資料代500円
八王子労政会館小ホール・第1会議室
お話し:小林節 五十嵐仁
司会進行:白神優理子弁護士

nice!(0)  トラックバック(0) 

9月27日(日) 来年の参院選で与野党逆転が可能だというこれだけの理由 [参院選]

 戦争法廃止に向けて、「民共合作」が動き出しました。民主党と共産党の党首会談が開かれ、来る参院選での協力も視野に入れながら、引き続き協議することが合意されています。
 この協議を成功させ、参院選での選挙協力を具体化させることが必要です。それは戦争法を廃止させるだけでなく、安倍政権の暴走をストップさせ、満身創痍に陥った日本を救う唯一の道なのですから……。

 しかし、このような協力が具体化したとしても、果たして参院選で与野党逆転を実現させることが可能でしょうか。その可能性は十分あると、私は思っています。
 もちろん、選挙協力の内容や選挙をめぐる情勢がどうなるかは分かりません。今から予断を持たせることも、楽観論を振りまくことも避ける必要があります。
 とはいえ、全く可能性がないというのでは頑張る気持ちも出てこないでしょう。条件が整えば大きな成果を上げることができるというのであれば、その条件を整えるために力を尽くそうという気にもなろうというものです。

 来年の参院選については、すでに7月30日付のブログ「来年の参院選が楽しみだ」http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30で書いたことがあります。
 そこでは、「第1に、選挙区の定数が変わり……、結果的には自民党にとって不利に、他の政党にとっては有利な形で選挙区の再編がなされ」たこと、「第2に、選挙権が拡大され、18歳以上とな」ったこと、「第3に、国民の政治的覚醒が格段に高ま」ったこと、「第4に、政党支持構造の地殻変動が始まり、政党支持率にも変化が生じ」たこと、「第5に、この間の『戦争法案』反対運動の中で野党間の連携が強まり……、このような経験を生かして、参院選の1人区などでの選挙協力の可能性が出てき」ことなどを指摘し、「これらの変化は、来年の参院選で与党に不利に、野党に有利に働くにちがいありません。安倍政権の暴走を阻止し、政権打倒にまで追い込んでいく運動が、とりもなおさず参院選に向けての準備になっている、それも野党勝利に向けての準備に、という関係が強まっているのではないでしょうか」と指摘しました。
 「というわけで、来年の参院選が楽しみです」というのが、この時の私の結論でした。

 基本的に、今もこれを修正する必要はありません。ただし、内閣支持率は下がり続けていますが、「政党支持構造」については「地殻変動」というほどの大きな変化が生まれているとは言えないでしょう。
 しかし、最後の「野党間の連携」については、大きな進展がありました。「戦争法廃止の国民連合政府」樹立という共産党の提唱をきっかけに具体的な協議が始まったからです。
 「この点では、沖縄での衆院選小選挙区の経験に学ぶことが必要でしょう。この間の運動によって培われた経験や信頼関係を、ぜひ来年の参院選での取り組みに活かしていただきたいものです」と、先のブログに書いた私の希望はかなえられる可能性が出てきました。ぜひ、これを実現していただきたいものです。

 今日の東京新聞は、来年の参院選について「野党協力なら8区で逆転」と報じています。これは、昨年末の衆院選での得票を元にした1人区についての予測です。
 2人以上の複数区を含めれば、もっと自民党の議席が減る可能性があります。比例代表でも自民党は議席を減らすでしょう。
 というのは、今回改選を迎える参院選は2010年に実施されたものだからです。この時は、選挙直前の菅首相による消費税10%引き上げ発言によって民主党が大敗し、逆に自民党が大勝しました。

 次の参院選をめぐる政治情勢は、これとは全く異なるにちがいありません。それは民主党など野党に有利で、自民党に不利なものとなる可能性が大きいと言えるでしょう。
 すでに、戦争法廃止をめざして次の選挙で賛成議員の落選運動が呼びかけられており、もし、明文改憲が争点とされればこのような運動の勢いはさらに増すでしょう。安倍政権打倒をめざした倒閣運動の一環として参院選が位置付けられているということも大きな意味があります。
 さらに、参院選前の通常国会では消費税の10%への再増税が問題となり、軽減税率をめぐって自民・公明の選挙協力がギクシャクする可能性が出てきています。間もなく再開されるTPP参加をめぐる閣僚協議が決着すれば、関連法案が審議されるのも来年の通常国会になります。

 そのうえ、日本経済をめぐる情勢も混とんとしてきました。安倍首相は自民党総裁への再選に当たって「アベノミクス第2ステージ」を宣言しましたが、これはほとんど「自爆路線」のようなものです。
 600兆円のGDPを目標とする経済成長などは実現不可能で、株価は乱高下しながら下がり続けており、アメリカの利上げも今年中には確実と見られています。アベノミクスを支えてきた円安・株高は終わりつつあり、ほとんど指標は「元の木阿弥」になっています。
 このようなかで、内閣支持率はさらに低下する可能性があります。内閣改造で一時的には多少上がるかもしれませんが、それを持続させるだけの材料は見当たりません。

 参院での現在の与野党差は28議席です。ということは、15議席が入れ替われば与野党の勢力関係は逆転し、野党優勢の「ねじれ現象」を生むことができるというわけです。
 先に紹介したように、野党が協力すれば1人区で8議席入れ替わる可能性があり、都市型の複数区でも与野党の議席が数議席入れ替われば10議席ほどの入れ替えは可能です。これに加えて、比例代表での議席が与党から野党に5議席入れ替われば「ネジレ」が生ずることになります。
 ただし、これだけでは、次世代、元気会、新党改革など戦争法案に賛成した「隠れ与党」がいますので、戦争法を廃止することはできません。しかし、その執行を停止させることができるようになります。

 衆参両院の「ネジレ」が生じるほどに自民党が議席を減らせば、安倍首相の責任問題が生ずるでしょう。参院での法案が通りにくくなれば安倍首相は窮地に立ち、早晩、辞任せざるを得なくなります。
 そのような可能性が高くなれば、衆参同時選挙に打って出るかもしれません。そうなれば、戦争法廃止の暫定政府樹立を目指して一気に政権交代を実現するチャンスが訪れることになります。衆院選が無くても、安倍政権を追い詰めて3割以下にまで内閣支持率を低下させれば、安倍首相を辞任に追い込むことができます。
 そうならない場合でも、参院選での敗北によって「ネジレ」が生じ、その差が大きなものであれば、いずれ解散・総選挙に追い込まれるでしょう。つまり、野党協力の進展次第では、安倍政権は長く持っても来年7月の参院選までということになります。

 これは、「夢物語」かもしれません。しかし、今後の運動の発展や野党の連携と協力、政治情勢いかんでは十分に実現可能な「夢」です。
 来年の参院選に向けて、この「夢」を現実のものとするために大いに力を尽くしたいものです。その選挙の結果、参院で与野党逆転が可能だというこれだけの理由があるのですから……。

nice!(1)  トラックバック(0) 

7月13日(火) 参院選に大きく影響した「大貧困社会」の到来 [参院選]

 昨年の10月、次のような記事が報道されました。

 全国で生活保護を受給している人が、7月時点で171万9971人に上っていたことが8日、厚生労働省の集計で分かった。今年6月からは1カ月で2万1102人も増えており、昨年7月に比べて14万8267人増と大幅に増加した。
 厚労省は「7月は完全失業率が過去最悪となるなど、雇用情勢の悪化が主な要因」とみている。
 受給者が170万人を超えるのは、月平均で174万4639人だった昭和38年度以来の高水準。
 受給世帯数は、124万4660世帯に上り、今年6月より14653世帯増加。昨年5月以降、毎月過去最多を更新している。(『産経新聞』2009年10月8日付)

 つまり、生活保護受給者の数から言えば、日本の社会は高度経済成長前の1963年の水準に戻ってしまったということになります。現在の日本は、「大貧困社会」へと逆戻りしつつあるということです。
 貧しい人が増え続けているというこの現実こそ、今の政治が取り組み解決するべき最大の課題です。今度の参院選で、各政党はこの現実に向き合い、解決に向けての政策を打ち出していたでしょうか。
 この「大貧困社会」という社会の現実は、参院選の結果にも大きな影響を及ぼしていたのではないかというのが、私の仮説です。いくつかの例を挙げましょう。

 一つには、民主党の惨敗です。その主たる要因は消費税率の引き上げ論だったとされていますが、これへの反発と警戒が急速に高まった背景には、人々の生活の貧しさと苦しさがあったのではないでしょうか。
 日本の財政の現状からすれば、何らかの形で財源を確保しなければならないということは理解しているから、消費税率の引き上げに頭から反対することは難しい。けれども、実際に上がるとなると、生活できるかどうかが不安になる。
 消費税率の引き上げについて、当初賛成の意見が多かったのに、菅さんが「10%」という数字を口にした途端、急速に反対論が増えていった背景には、このような国民の心理が存在していたように思われます。

 第2に、みんなの党の躍進です。選挙では、「消費税率の引き上げの前にやるべきことがある」として、公務員改革や財政の削減を訴えていました。
 もちろん、みんなの党が支持を拡大したのは、自民党を見限り、民主党にも裏切られ、行き場を失った有権者の受け皿となったという面が大きいでしょう。しかし、それだけではなかったように思います。
 貧しい人々の多くは、自分たちに比べれば公務員は恵まれていると考えています。みんなの党の公務員攻撃は、公務員や恵まれた人々に対する密かな反感に火をつけたのではないでしょうか。

 第3に、公明党の健闘があります。昨日のブログでも指摘しましたが、公明党は事前の予想よりも良い成績を上げました。
 その背景には、昨日指摘したような投票率低下による「棒杭効果」もあったえしょうが、それと同時に、都市貧困層を多く信者に持つ創価学会の役割も大きかったように思います。公明党は、東京、大阪、埼玉という大都市部の選挙区に候補者を立て、「完勝」しましたから……。
 創価学会には、貧しい人々に精神の「救い」をもたらすだけでなく、互いに生活を支えあう相互扶助的な助け合い機能もあります。このような機能を政治的に補完する役割を果たしている公明党への期待は、貧困化が進めば進むほど強まるに違いありません。

 それにもう一つ、付け加えるとすれば、タレント候補の不振があります。今回の参院選でも多くのタレント候補が立候補しましたが、民主党の谷亮子候補、自民党の三原じゅん子候補や石井浩郎候補などを除いて、軒並み落選しました。
 ここにも、「大貧困社会」の到来が影響していたのではないでしょうか。あまりにも生活が厳しく、実績のないタレント候補に一票を投ずる「余裕」はなかったということでしょう。
 たちあがれ日本の比例候補者で、元巨人軍の人気選手だった中畑清候補ではなく元自民党参院幹事長だった片山虎之助候補が当選したように、政治家としてアマチュアではなくプロを求めたということです。それほどに、政治が取り組むべき課題は切実さを増しているということを、今回当選した人々は十分に認識していただきたいものです。

 このように、今回の選挙結果を生み出した大きな要因として、「大貧困社会」の到来という現実があったように思います。そしてこの現実は、これからの政治のあり方を大きく規定することになるでしょう。
 生活を支え守るのか、それとも破壊し困難を増やすのか。菅首相は消費増税論議をあきらめていないようですが、前者の視点を忘れれば、国民によって今回以上の大きなペナルティを課せられるにちがいありません。

7月12日(月) 参院選の結果をどう見るか [参院選]

 「見通しが甘いのよ、バカタレ」
 菅首相は、伸子夫人にこう言われたかもしれません。女性スキャンダルが発覚して、「脇が甘いのよ、バカタレ」と言われたときのように……。

 注目の参院選は、予想通りというか、予想した以上にというか、民主党の惨敗に終わりました。民主党が苦戦するであろうということは、選挙前の調査や推計から明らかでしたが、これほどまでに負けるというのは、予想以上だったかもしれません。
 選挙の結果は、以下のようになっています。

 民主44 自民51 公明9 共産3 社民2 国民0 みんな10 たちあがれ1 改革1

 これを、『朝日新聞』7月9日付の推計と比較すれば、次のようになります。

 民主-5 自民+7 公明+1 共産-1 社民+1 国民-1 みんな-1 他+1

 事前の推計が大きく狂ったのは、民主党と自民党です。他は±1となっており、大きな変化はありません。
 つまり、事前の推計より、民主党はさらに負け、自民党は勝ちを増やしたということになります。『毎日新聞』7月5日付の推計でも、民主は最低で49、自民は最大で48とされていましたが、結果はそれよりも、民主が-5、自民が+3となっています。
 選挙結果は、予想されていた以上に、民主党が負け、自民党が勝ったことを示しています。というより、民主党の自滅であり、「オウン・ゴール」であったと言うべきでしょう。

 菅首相は、どうしてボールを自陣営に蹴りこんでしまったのでしょうか。鳩山・小沢のダブル辞任によって内閣と民主党の支持率はV字回復を実現し、そのまま参院選に突入すれば勝利は確実だと考えたからこそ、国会を延長しなかったのではありませんか。
 実は、これが「躓きの石」だったように思います。支持率と一緒に、菅さんも「舞い上がって」しまったからです。
 第1に、ようやく首相になれて、政策課題実現に向けての意欲を高めたけれども、そのための戦略・戦術はなく、第2に、高い支持率を背景にすれば、かなりのことができると過信し、第3に、「政治とカネ」の問題と沖縄普天間基地撤去問題は「クリアできた」と思い込んでしまったのです。

 こうして、持ち出してきたのが、消費税の税率アップという「劇薬」でした。支持率の高さに気をよくした菅さんは、「自民党の10%案を参考にしたい」と口走ってしまったのです。消費税率のアップに賛成する意見が多数だという世論調査に惑わされた面があったかもしれません。
 しかし、この発言の直後から、内閣支持率は急落します。慌てた菅首相は、発言を二転、三転させました。
 そして、そのことがかえって首相の発言への信頼感を損ね、迷走を印象づけました。こうして、支持率低下と迷走とのスパイラル現象が始まり、今回の民主党の惨敗となったわけです。

 このように、民主党の惨敗は明らかです。それなら、自民党が勝ったと言えるのでしょうか。
 今回の参院選で、自民党が勝ったわけではありません。民主党の自滅と選挙制度に助けられたために、得点を上げることができたにすぎません。
 政党間の力関係が現れる比例区での当選者は過去最低水準で、民主16対自民12と、民主党より4議席少なくなっています。自民党が民主党に勝てたのは、唯一、1人区で自民21対民主8と、13議席も上回ったからです。

 公明党は、今回の選挙でも底力を示しました。『朝日新聞』の事前推計を1議席上回って9議席となり、『毎日新聞』の推計「7~10」の最大に近い数字になりました。
 東京選挙区でも、早々と新人の竹谷とし子さんが当選を決め、最終的には2位になっています。自民党の1人区での好調さも、選挙区での公明党の支援によるものでしょう。
 このような好調の要因の一つは、梅雨空の影響などもあって、投票率が前回よりも下がった点にあります。投票率が下がれば、当選に必要な得票数という「水位」も下がり、公明党候補の当選可能性が増すという「棒杭効果」が、今回も生じたのではないでしょうか。

 共産党は比例区のみで3議席の獲得にとどまりました。『朝日新聞』の推計よりも1減で、『毎日新聞』の推計通りです。東京選挙区で小池晃さんが当選できなかったのは、誠に残念でした。今後の国会やテレビなどでの論戦を考えれば、小池さんが共産党の国会議員でなくなったことの痛手は大きいと思います。
 最後の議席を、みんなの党の松田公太さんと争ったのは象徴的だっと言えるでしょう。東京では消費増税論の影響は少なく、民主党も2議席を獲得しました。
 これは、消費増税や構造改革継続への支持は地方より大都市圏の方が多く、都民には「勝ち組」も少なくないという事情を反映しているように思われます。もっとも、石原慎太郎が都知事を務めているくらいですから、それも当然かもしれませんが……。

 以上のような参院選の結果は、3つの「恐ろしさ」を実証したように見えます。
 第1に、消費税増税問題を持ち出すことの「恐ろしさ」です。消費税の税率アップは手っ取り早く税収を図ることができる簡単な方法ですが、庶民の生活を直撃して景気に悪影響を及ぼすだけに反対も強く、取り扱いに注意しなければならない「劇薬」であるということです。
 第2に、小選挙区制という選挙制度の「恐ろしさ」です。昨年の衆院選で民主党に勝利を与えたのが「小選挙区制のカラクリ」であったとすれば、逆に今回、民主党に敗北を与えたのも「1人区(小選挙区制)のカラクリ」でした。
 第3に、有権者の眼の「恐ろしさ」です。この間、「世論」は大きく乱高下しましたが、それは菅首相の消費税発言に、有権者が敏感に反応したからです。

 とりわけ、この最後の点が重要です。このような民意の急激な変化は、たとえば、05年総選挙での自民党勝利、07年参院選での自民党敗北、09年総選挙での民主党勝利、10年参院選での民主党敗北というめまぐるしい選挙結果に、如実に示されています。
 それには、世論調査が容易になったという技術的背景があります。マスコミは、頻繁に世論に問うことができるようになり、それを見ながら「空気を読んで」、有権者は自分の意見や態度を決めるようになりました。
 これには、プラスとマイナスの両面があるように思われます。政治が民意によって動くようになってきたというプラス面と、それが必ずしも「熟議」によるものではなく、一定の方向が出ると付和雷同的に加速され政治を歪めるというマイナス面です。

 さて、今後、菅首相は厳しい国会運営に直面することになるでしょう。その厳しさはどこにあるでしょうか。
 第1に、衆院と参院での多数派が異なる「ねじれ現象」が、再び生じたことです。与党は再議決できる衆院での3分の2議席を持っていませんから、最悪の場合、参院でことごとく否決されて法律が成立しないという事態が生じるかもしれません。
 第2に、有権者の厳しい目は選挙が終わったからといって無くなるわけではないということです。選挙で惨敗しましたから、今後はもっと与党に厳しくなるかもしれませんし、内閣支持率がさらに低下する可能性もあります。
 第3に、消費税論議をやり直す必要が出てくるでしょうが、一直線に増税へ、というやり方は許されません。選挙結果を真摯に受け止めるなら、歳出の削減や消費税以外での財源などを検討する必要が出てくるでしょう。

 菅政権を待つハードルも、決して低くはありません。参院選で不信任された菅首相に、これを飛び越えていくエネルギーが残っているのでしょうか。
 第1に、国会の運営があります。臨時国会で院の構成を決めますが、参院議長の選出でもめる可能性があり、その後の国会運営も、前述の「ねじれ現象」の下で厳しいものとなるでしょう。
 第2に、9月に予定されている民主党の代表選挙があります。それを「前倒し」するべきだという意見もあり、参院選惨敗の責任論ともからんで予断を許しません。
 第3に、次の総選挙があります。最大で、今後3年間の任期がありますが、それを全うできず、かなり早い時期に解散・総選挙せざるを得なくなるかもしれません。

 参院選の結果についてマスコミからのインタビューを受ける菅首相は、渋い顔をしていました。このような前途の困難さに思いを馳せていたのでしょう。
 安倍政権以来、福田、麻生、鳩山と、「日替わり定食」ならぬ「年替わり宰相」が続きました。毎年、総理大臣が入れ替わってきたのです。
 参院選の結果、菅政権も1年もつかどうか分からなくなりました。菅さんは「最小不幸社会」を作りたいと言っていましたが、日本はもう、「宰相不幸社会」になってしまったのかもしれません。

7月11日(日) しっかりと「見極める眼」をもって参院選の投票を [参院選]

 いよいよ、参院選の投票日です。
 憲政史上初の本格的な政権交代後の国政選挙になります。民主党中心の新政権に対する国民の審判が下されるというわけです。

 しかし、昨年の総選挙のときのような、心沸き立つ期待感や注目度は大きくありません。何となく「白けた」雰囲気が漂っています。
 その理由は三つあると思います。第1に、政権交代によって発足した新政権が国民の期待に応えられず迷走したからです。第2に、審判の対象となるはずだった鳩山首相と小沢民主党幹事長が辞めてしまったからです。第3に、代わって登場した菅新首相が、突然、消費税問題を持ち出し、これまた国民の期待を裏切ってしまったからです。

 有権者は、迷っています。民主党には合格点をあげられないのではないか、と……。
 しかし、だからと言って、自民党にまた戻ってもらうというわけにはいかない。せっかく政権から追い出したのだから、と……。
 迷った有権者は第3の選択肢を探し、取りあえず、「みんな」へと流れつつあるようです。新自由主義的「構造改革」の一層の推進を主張しているとも知らずに……。

 有権者がとまどっているのは、選択の機会を奪われたからです。そうなったのにも、理由が三つあると思います。
 1つは、民主党の責任です。自民党と同じように、消費税率10%への引き上げを打ち出したからです。
 与党第1党と野党第1党が同じような公約を掲げたら、どちらが良いか選びようがありません。どちらも選びたくないという場合には、どうしたらよいのでしょうか。

 もう一つは、選挙制度の責任です。もっと多くの選択肢があれば、2つの大政党が同じような公約を掲げても問題ありません。第3、第4などの政党を選べばよいのですから……。
 しかし、1人区や2人区の場合、第3党の候補者が当選する可能性は極めて低くなります。有権者は、どちらも拒否することによって自分の意思を示すことはできますが、議員を選ぶという点で影響力を行使することは困難で、その権利を放棄させられてしまいます。
 もちろん、比例区であれば、そのようなことはありません。比例区では選ぶことが可能なのに、選挙区ではその権利が制約されているというのでは、有権者は事実上、一票しか行使できないということになります。

 そして第3に、マスコミの責任を上げるべきでしょう。「争点」は明確に存在しているのに、「争点不在」であるかのような報道を繰り返し、有権者の選択の幅を狭めてきたからです。
 今回の選挙は、消費税率の引き上げに賛成か反対か、政治資金の透明化や規制の強化に賛成か反対か、沖縄普天間基地の撤去に賛成か反対か、国会議員の定数削減に賛成か反対かなど、たくさんの争点がありました。しかし、民主党や自民党にばかり焦点が当てられたために、政策的な差異が不明瞭になってしまいました。
 「第3の勢力」という形で一緒にされたせいで、「みんなの党」「たちあがれ日本」「新党改革」と「共産党」「社民党」などとの違いが曖昧になったということもあったでしょう。その結果、選択肢があるにもかかわらず、見えなくなってしまったのです。

 今日の投票では、「見極める眼」が大切だということになります。しっかりと、公約や政策を吟味し、過去の実績を思い返したうえで、投票する必要があります。
 参院選ですから、選挙結果によって政権が交代するようなことはありませんが、連立の組み合わせや重要メンバーの入れ替えなどが起こる可能性はあります。何度も紹介したように、消費税導入あるいは引き上げられた直後の参院選では、2人の首相が詰め腹を切らされたという過去があるのですから……。

6月27日(日) イエローカード2枚なら退場しなければならない [参院選]

 サッカーW杯がたけなわです。だから言うわけじゃありませんが、サッカーでは、イエローカード2枚で退場になります。
 参院選でも、イエローカードを何枚ももらって、退場寸前の政党があります。いや、もうレッドカードにするべきだと言った方がよいかもしれません。

 1枚目のイエローカードは、消費税の引き上げです。その是非が、今回の参院選における最大の争点に浮上しました。
 参院選の結果次第では、10%を目処とした税率引き上げに向けての扉が開かれることになります。実施は次の総選挙以降ということのようですが、それに向けての準備を始めてもよいのか。今回の選挙の結果は、それに対する国民の回答として理解されることになるでしょう。

 2枚目は、普天間基地撤去問題です。これまで、私は普天間基地「移設」問題と書いてきましたが、これからは正確を期して普天間基地「撤去」問題と書くことにします。
 問題の本質は、普天間の基地がなくなり、沖縄県民の負担が減ることにあります。沖縄県内から撤去された基地の行く末については、米軍が属するアメリカ政府が考えれば良いことです。
 今回の選挙は、現行案を基本にした「日米合意」に対する賛否を問う場でもあります。それは、日本の安全保障のあり方や日米同盟に対する国民の意思表示の場にもなるでしょう。

 3枚目は、衆院比例区定数の80議席削減です。加えて、参院議員定数の40議席削減という問題も浮上しつつあります。
 これらの問題がにわかに出てきたのは、消費税増税に対する言い訳としての意味があるからです。増税するからには身を切る努力も必要だというわけです。
 冗談ではありません。衆院定数の比例代表部分だけが80議席も削られたら、小選挙区で当選できる大政党だけになってしまいます。民主党と自民党で95%も占められた国会はブレーキを失った車のようになり、消費税率の引き上げに向けて暴走することは明らかです。

 このほかにも、政権の迷走とマニフェストに対する裏切りがあり、政治とカネの問題への頬被りや憲法調査会の再開など、見過ごすことのできない問題もあります。これらについても、イエローカードを出さなければなりません。
 サッカーの勝敗は、一時の記憶にとどまるだけです。それは、人々を勇気づけたり落胆させたりするでしょうが、基本的に人々の生活や未来を左右するわけではありません。
 しかし、選挙は違います。その結果によって、確実に人々の生活は変わり未来は左右されることになります。

 投票の時こそ、有権者が主権者になれるときなのです。私たち自身の生活と未来のために、誤りのない選択をしたいものです。

6月20日(日) 参院選で候補者を見分けるための4つの問い [参院選]

 参院選が近づいてきました。皆、似通ったようなことを言っているように見えるかもしれません。
 各政党や候補者を見分ける良い方法があります。それをお教えしましょう。

 第1に「政治とカネ」の問題では、「企業・団体献金の継続」に賛成するか反対するかを問うことです。
 第2に、「普天間基地移設」の問題では、現行案ないしはその修正案を打ち出している「日米合意」に賛成するか反対するかを問うことです。
 第3に、「税制改革」や「財源」の問題では、「消費税の増税」に賛成するか反対するかを問うことです。
 第4に、「規制改革」の問題では、小泉さんが押し進めたような「構造改革」に賛成するか反対するかを問うことです。

 以上の4つの問いが、さし当たり、今度の参院選での大きな争点であり、政党や候補者を見分けるリトマス試験紙になります。この問いに、それぞれの政党や候補者がどのような態度を取っているかを、選挙で選ぶ際の参考にすれば良いでしょう。
 もし、その一つにでも「反対」だと答えれば、それを覚えておきましょう。選挙後の国会審議での有効な「ブレーキ」になりますから……。

 これから、テレビや新聞などで政党の代表や候補者間での討論などが行われることになるでしょう。司会者の方には、是非、これらの問いを投げ掛けていただきたいと思います。
 街頭の対話集会などでも、質問できる機会があるかもしれません。候補者に、是非、この4つの問いをぶつけてください。
 演説会などでも同様です。質問できるチャンスがあれば、4つの問いへの「イエス」か「ノー」かを質したら良いでしょう。

 その結果、どうするかって? それは、皆さんがご自身で決めればよいことです。
 少なくとも私なら、この4つの問いの1つにでも「イエス」と答えた候補者には投票しませんけど……。