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11月8日(木) トランプ大統領の暴走へのブレーキを生み出した米中間選挙 [国際]

 注目の米中間選挙が終わりました。残念ながら、共和党の地滑り的大敗はありませんでした。
 しかし、トランプ大統領が豪語するような「とてつもない勝利」とはほど遠いものです。「とてつもない敗北」が回避されただけなのですから。

 中間選挙の結果は、上院では共和党の勝利、下院では民主党の勝利となり、痛み分けの形になっています。一勝一敗ですから、「引き分け」のように見えます。
 しかし、そうではありません。同時に実施された州知事選挙でも、民主党は改選前の16州から23州へと増やし巻き返しています。
 上院選挙は定数100で改選は35にすぎず、改選されなかった選挙区では、当然ながら上院議員の選挙は実施されていません。しかも、改選されるべき選挙区の現有議席は共和党9、民主党26で、もともと共和党に有利な形での改選でした。

 その上院で、予想通り共和党は勝利したにすぎません。全選挙区で改選された下院と州知事選挙で巻き返されたわけですから、共和党は1勝2敗です。
 しかも、大統領選挙で勝利した州でも、今回は知事選で敗北しています。これらの州では次の大統領選挙で共和党候補が敗北する可能性があるということになります。
 再選を狙うトランプ大統領にとって、実は上院での勝利より州知事選や下院での敗北の方が気になる結果だったのではないでしょうか。前回の大統領選挙で勝てたところでも、黄色の信号が灯ったことになるのですから。

 このような民主党の勝利を導いた要因は、青年、女性、マイノリティの投票率が上がったことにあります。これらの人々はトランプ大統領の発言や政治手法への危惧や反発から投票所に足を運んだものと見られます。
 初めて投票した有権者の投票先は民主党が61%で共和党が36%、30代以下の若者では民主党に68%、共和党に31%が投票したそうで、タフツ大学の調査でも、若者の投票率は21%から31%へと10ポイントも上昇したそうです。CNNの出口調査では、男性は民主48%、共和51%なのに対し、女性は民主59%、共和39%。白人は民主45%、共和54%、非白人は民主76%、共和22%となっています。
 その結果、女性やイスラム教徒、先住民出身者など、多様な人々の代表が議会に送り込まれました。このような議員を支援する民主党の新しい波こそが、今回のような選挙結果をもたらした最大の要因だったと言えるでしょう。

 このような形で若者や女性、マイノリティの人々を投票所に引き寄せ、その結果、投票率をかつてなく上昇させ、民主党を勝たせたのは、トランプ大統領の「お陰」だったと言えます。大統領がトランプ氏でなければ、この間の暴走が有権者の分断を強めなければこれほど投票率は上がらず、今回のような結果にはならなかったでしょうから。
 その結果、上院は共和党、下院は民主党という形での「ネジレ」が生じました。このような「ネジレ」は決められない政治として否定的に語られます。
 しかし、両院の多数派が同じでは院が二つ存在する意味はなく、その多数派が異なって初めて両院制の意味が出てきます。しかも、これまではアクセルが二つもあってトランプ大統領の暴走を止められませんでしたが、これからは民主党が多数派の下院というブレーキが装備されることになります。

 トランプ大統領はこれまでと同じような暴走を続けられなくなるでしょう、国境の壁の建設、オバマケアの撤廃、富裕層や中間層向けの更なる減税は難しくなりました。
 ロシア疑惑や脱税疑惑などについてのさらなる調査や捜査が行われる可能性が強まります。早速、司法長官が解任されましたが、大統領弾劾を避けるために先手を打ったものと見られます。
 ツイッターでの強気なツブヤキとは裏腹に、選挙結果へのいらだちと今後の政権運営への不安は大きいのではないでしょうか。民主党との連携を呼びかけたのはその表れですが、同時に、政治の停滞が生じた場合の責任を民主党におっかぶせるための布石かもしれません。

 議会運営も困難になりますから、大統領権限で実行可能な分野でのトランプ流はかえって強まると見られています。その最たるものは外交で、日本などの貿易相手国への圧力が強まり、貿易交渉には厳しい姿勢で臨んでくるにちがいありません。
 とりわけ、中国との「貿易戦争」はさらに激しくなると思われます。一方で中国への接近を強め、他方でアメリカとの2国間交渉に臨まなければならない安倍首相にとって、極めて難しい対応が迫られることになります。
 米中間選挙の結果にいらだちと不安を高めているのは、トランプ米大統領だけではないかもしれません。安倍首相にとっても、前途に黒い雲がもう一つ広がってきたということでしょうか。

 アメリカ国民は今回の中間選挙を活用して「ネジレ状態」を生み出し、トランプ大統領の暴走をストップするためのブレーキを手に入れました。次は、私たちの番です。
 来年の参院選が衆参両院の「ネジレ状態」を生み出して安倍暴走政治へのブレーキを手に入れるチャンスです。そのためにも、市民と野党との共闘によって1対1の対決構図を生み出し、若者や女性、マイノリティの投票率を上げれば勝てるという「勝利の方程式」を充分に学ぶ必要があるのではないでしょうか。
 

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11月1日(木) 植民地支配への反省と被害者救済こそが問題の本質ではないのか [国際]

 元徴用工の訴えに対する損害賠償を認める韓国最高裁の判決が大きな波紋を呼んでいます。1965年に結ばれた日韓条約(日韓請求権協定)によって問題は最終かつ完全に解決されたと理解されてきたからです。
 日本政府は韓国政府に対して、この立場から対応し善処することを求めています。日韓関係を悪化させたくない韓国政府も最高裁の判決を尊重しつつ外交問題ではなく国内問題として解決する姿勢を示しています。

 しかし、日本政府としても日韓条約は国家間の請求権問題を決着させただけで個人の財産・請求権そのものを消滅させるものではないと受け取れる余地のある認識を示したこともありました。1991年12月の参議院予算委員会における柳井俊二外務省条約局長の答弁がそれです。
 ここで柳井局長は、「いわゆる日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます」としながら、「その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます」と答えています。
 この答弁をどう解釈するのか。誰でも持っている一般的な「個人の請求権」は消滅していないというにすぎないのか、日韓条約で「最終かつ完全に解決した」とされている請求権も個人のレベルでは消滅していないと言っているのかが問題になります。日韓両政府の立場は前者で、韓国最高裁の立場は後者に近いということでしょう。

 しかし、問題の本質はそこにあるのでしょうか。かつて韓国が日本の植民地であり、韓国の人々が日本の支配下で苦難の生活を強いられ、アジア・太平洋戦争中に日本製鉄(現新日鐵住金)で強制連行・奴隷労働をさせられたことは事実ではありませんか。
 このような植民地支配と強制連行・奴隷労働への反省や補償が不十分なまま、日韓条約が締結されたこと自体に大きな問題があったのです。従軍慰安婦の問題を含めて、侵略戦争と植民地支配の過去に対する戦後処理が不十分であったため、今もなおこのような問題が繰り返され、日韓両国にとっての「棘」となっている点に最大の問題があるのではないでしょうか。
 歴代の自民党政権が戦争責任に誠実に対応してこなかったツケが、このような形で回ってきたというべきです。日韓条約で解決済みだと突っぱねて解決を韓国政府に委ねるような強硬な対応は、今もなお日本が過去を反省していないのではないかという疑念と憤りを強め、さらなる訴訟を誘発して混乱を拡大するだけでしょう。

 韓国政府がどう対応するかを見守るだけでなく、日本政府としても被害者の救済に向けて協力する姿勢を示すべきではないでしょうか。原因を生み出したのは日本の企業なのですから。
 いずれにしても、安倍政権は新たな難問を抱え込むことになりました。文在寅大統領の年内訪日が難しくなって日韓両国の接近にブレーキがかかるだけでなく、同様の問題を抱えている中国にも波及する可能性があります。
 非核・平和構築に向けた朝鮮半島の緊張緩和に日本が関与しにくくなり、日朝首脳会談の開催や拉致問題の解決に向けて韓国の仲介も期待できなくなるでしょう。臨時国会が始まったばかりなのに、安倍政権はかじ取りの難しい新たな外交的困難に直面することになりました。

 なお、今月も以下のような講演が予定されています。お近くの方や関係者の方に沢山おいでいただければ幸いです。

11月4日(日)10時30分 全日通霞が関ビル:憲法共同センター
11月5日(月)18時30分 札幌エルプラザ:北海道憲法共同センター
11月10日(土)15時 大和市桜丘学習センター:大和市革新懇
11月17日(土)14時 守山生涯学習センター:名古屋市守山革新懇
11月18日(日)14時 豊田産業文化センター:豊田革新懇
11月25日(日)13時30分 大江山農村環境改善センター:新潟市大江山革新懇

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10月14日(日) 6年間の安倍外交がもたらした国際社会における日本の孤立 [国際]

 外交は経済と並んで安倍首相の強みだと言われてきました。しかし、アベノミクスとともに、安倍外交も破たんし漂流を始めたようです。

 その外交で、これほど日本はのけ者にされているのかと思わせるような事態がまたもや生まれました。「またもや」というのは、5月24日に北朝鮮がプンゲリ(豊渓里)の核実験場を爆破して公開したとき、6カ国協議に参加している国の中で日本のメディアだけが除外され、代わりにイギリスの記者が招待されていたからです。
 今回も、日本は除外されました。モスクワからのロイター通信の報道によれば、「ロシア外務省は10日、朝鮮半島の緊張緩和のため、米国と韓国を交えた5カ国協議が必要だとの認識でロシア、中国、北朝鮮が一致したことを明らかにした」そうですから。
 「ロシア、北朝鮮、中国の外務次官が9日にモスクワで会談し、関係正常化のため5カ国協議に支持を表明した」というのです。ということは、6カ国協議に参加している国では日本だけが除外されたことになります。

 同盟国のアメリカとの関係でも、暗雲が漂い始めています。日米貿易戦争の始まりです。
 すでに明らかになっているように、安倍首相はこれまで受け入れないと言い続けていた2国間交渉を呑まされてしまいました。これはTAGであって物品だけの交渉だから、サービスなどを含むFTAではないと言い訳していますが、安倍首相の国会答弁につじつまを合わせるための真っ赤な嘘です。
 現に、ムニューシン米財務長官は13日、日本との新たな通商交渉で、為替介入をはじめとする意図的な通貨安誘導を阻止する「為替条項」の導入を要求すると表明したではありませんか。「物品」だけの交渉ではない新たな「火種」の登場であり、このような「攻勢」は今後も強まるにちがいありません。

 ロシアとの関係も予断を許さないものになっています。これまで安倍首相はプーチン大統領と22回も首脳会談を行い、自分の選挙区に招いて温泉に入るなどの「おもてなし」をして個人的な関係を築いてきましたが、北方領土問題を解決する点では何の役にも立っていません。
 かえって経済開発のお手伝いをさせられ、ロシアの実効支配を強めてしまっています。さらに、最近目立つのは軍事力の強化です。米ソ冷戦終結後、ロシアは「北方領土」の軍事力を大幅に削減しまたしたが、クリミア半島の併合やウクライナ問題でアメリカとの対立が激化したため、最近になって軍事力を再び強化し、日本との戦争を想定した作戦計画をたてて演習を行っているからです。
 外務省によれば、ロシア政府から10日から今月13日までの予定で、北方領土の択捉島の近海でロシア軍が射撃訓練を行うと日本側に通知があり、これに対して外交ルートを通じて抗議したところ、ロシア外務省は声明を発表し「われわれは国防能力を向上させる手段も含め、自国の領土であらゆる活動を行う権利がある」と主張したうえで、日本側の抗議について「2国間の前向きな雰囲気を作り出さないばかりか損ないかねないものだ。生じた懸念については儀式のような抗議ではなくすでにある政府間対話の枠組みを通して解決すべきだ」と反発したといいます。慌てた外務省は年内に2回も安倍首相とプーチン大統領との首脳会談を開いて事態を打開しようと躍起になっています。

 こうして、窮地に陥った安倍首相が助けを求めようとしているのが中国です。25日から北京を訪問して習近平国家主席との首脳会談を行うことが予定されています。
 このような形で友好関係が回復され、日中関係が改善されるのは結構な話です。しかし、これまでの中国敵視政策や「中国包囲網の形成」政策との整合性をどのようにして取るつもりなのでしょうか。
 最近でも、東シナ海で海上自衛隊の潜水艦訓練を公開し、米空軍の戦略爆撃機と航空自衛隊との共同訓練が行われ、離島奪還のための日本版海兵隊と言われる水陸機動団と米軍との初めての日本国内での共同訓練が種子島で実施されました。いずれも「仮想敵国」として想定されているのは中国です。一方で「米中冷戦」の開始とも言われるほど中国敵視を強めているトランプ政権や対中接近への警戒を高めている極右勢力への「言い訳」をしながら、他方で握手の手を差し伸べようとしているところに、安倍外交のジレンマとギクシャクぶりが象徴されていると言っても良いでしょう。

 ときとして、「強み」は「弱み」に転化するものです。「世界同時株安」が懸念される中で、安倍首相は来年10月1日からの消費税の10%への引き上げを表明するそうですが、そうなれば消費は大きな打撃を受け、景気はまたもや悪化し、アベノミクスは最終的に頓挫することになるでしょう。
 トランプ大統領との親密さやプーチン大統領との個人的な関係の構築は、かえって日本を「ノーと言えない」立場に追い込み、外交的交渉力を奪う結果になっています。経済でも外交でも漂流を始めた安倍首相に、もはや政権のかじ取りを任せておくことはできません。

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10月12日(金) 米中間選挙でのトランプ・共和党の地滑り的大敗の兆候 [国際]

 世界同時株安の発生です。その引き金を引いたニューヨークの株式市場では一時800ドル以上の大暴落となりました。
 11月6日の投票日まで1カ月を切った上下両院の選挙で経済の好調さを誇っていたトランプ大統領にとっては、耳を覆いたくなるような悪いニュースです。それでなくても、この中間選挙で共和党が地滑り的な大敗を喫するかもしれないという兆候が生まれているのですから。

 もともと中間選挙では与党が不利だとされており、今回も下院では共和党の多数が失われると見られていました。しかし、その敗北は予想を超える地滑り的なものになるかもしれないという兆しが生じています。
 多数を維持するとみられてきた上院でも共和党は苦戦しているからです。接戦区とされている選挙区を民主党が制して多数が入れ替わるかもしれません。

 トランプ大統領は2回目の米朝首脳会談の開催について、中間選挙の後にすると発表しました。選挙の直前に華々しい外交ショーを繰り広げた方が大統領や共和党に有利になるはずなのに、どうして選挙戦後にしたのでしょうか。
 その理由は、選挙への取り組みを最優先にしなければならなくなったからです。北朝鮮との首脳会談に手が回らないほど、選挙情勢が危うさを増してきたということではないでしょうか。
 トランプ大統領自身についても暴露本が何冊も出版され、ロシア疑惑、セクハラ疑惑、脱税疑惑と疑惑がてんこ盛りです。追い詰められて選挙応援に駆け回っている大統領に首脳会談を準備する余裕が失われてきたということが、大敗するのではないかという兆候の一つです。

 もう一つの大敗の兆候は、米女性歌手のテイラー・スイフトさんによる民主党候補支持の表明と投票の呼びかけです。日本で言えば安室奈美恵さんが野党支持を表明して投票を呼びかけたようなものですから、トランプさんも慌てたでしょう。
 その効果はてきめんで、スイフトさんがインスタグラムにメッセージを掲載してから24時間で約6万5000人が新たに有権者登録を済ませたそうです。その多くは20代以下の若者で、これは今後もっと増えるでしょう。
 アメリカでは18歳以上の成人でも有権者登録をしなければ投票できません。このような形で新たに登録した若者が共和党ではなく民主党に投票するだろうことは明らかで、銃規制に反対する候補者の落選をよびかけている高校生の運動や民主党内の民主社会主義者への若者の支持の高まり、トランプ大統領の女性差別への反発と女性の立候補者の増加などとともに大いに注目される兆候です。

 さらに、ヘイリー国連大使の突然の辞任も、中間選挙に微妙に影響するかもしれません。この辞任によって、国際社会でアメリカがどのように受け取られ、扱われているかに国民の思いが至る可能性があるからです。
 ヘイリー辞任の理由は明らかにされていませんが、国連でのアメリカの孤立、地位や影響力の低下に嫌気がさしたのかもしれません。今回の辞任で、しばらく前の国連総会での演説でトランプ大統領が冷笑、失笑、嘲笑された光景を思い出しましたが、国連での会議や諸外国の外交官との接触で、ヘイリーさんは日常的にあのような対応に直面してきたのではないでしょうか。
 あの国連総会でのトランプ大統領は一人の喜劇役者にすぎず、かつての大国アメリカの大統領としての威厳は失われ、各国の反応にはひとかけらの敬意も尊敬も感じられませんでした。アメリカ国民からすれば大いにプライドを傷つけられたことでしょうし、国連でアメリカを代表していたヘイリーさんからすれば、なおさらそうだったにちがいありません。

 トランプ大統領の下で、アメリカは傷つき、孤立し、かつての威厳と覇権を失いつつあります。こんなアメリカを黙って見ているわけにはいかないという気持ちが、一人の女性歌手にすぎなかったスイフトさんを揺り動かしたのではないでしょうか。
 アメリカ国民は、自らが選んだ大統領がトランプでもジョーカーだったことに気付き始めたのかもしれません。もし、中間選挙で民主党が大勝するとすれば、勝たせたのはトランプ大統領その人だったということになるでしょう。

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9月13日(木) 得意とされる外交で破綻してしまった安倍首相を続投させても良いのか [国際]

 「やっぱり、そうだったのか」と思いました。「ロシア極東ウラジオストクで開かれていた東方経済フォーラムで12日、プーチン大統領が突然、日本との『年内の平和条約締結』を求めた」というニュースを目にしたときです。
 「『北方四島の帰属を解決し、平和条約を結ぶ』という、日本が領土交渉の前提としてきた考えを飛び越えた発言に、衝撃が広がった」と、今日の『朝日新聞』は伝えていますが、「衝撃」を受ける方がおかしいんじゃないでしょうか。プーチン大統領が、北方領土の実効支配を強めて領土問題の棚上げを狙っており、騙された安倍首相がそれに協力させられているということは、2年前に山口県長門市で開かれた日露首脳会談の時から明らかだったのですから。

 私は憲法会議発行の『月刊 憲法運動』』に掲載された「国際政治の歴史的転換と日本の選択―いよいよ『活憲の時代』が始まる」(8月11~13日付のブログ)という論攷で米朝首脳会談を振り返り、「今回の米朝首脳会談をめぐる一連の経過において、もし『敗者』がいたとすれば、それは日本の安倍首相ではないでしょうか」と指摘して、次のように書きました。
 「『圧力』一辺倒で首脳会談実現の足を引っ張ったあげく、トランプ米大統領に貿易面で裏切られ、ロシアのプーチン大統領にも領土問題で騙され、北朝鮮の金正恩委員長からは相手にされず、韓国の文在寅大統領とはギクシャクしたままで、中国の習近平主席からも適当にあしらわれるという醜態を演じ、『蚊帳の外ではない』と叫びながら蚊帳の外で飛び回っている『一匹の蚊』のようになってしまった」と。その後の経過は、私がここに書いた通りになっているように見えます。
 とりわけ、日露関係について「ロシアのプーチン大統領にも領土問題で騙され」ているとの指摘を、今回のプーチン発言は裏付ける形になりました。「突然、思いついた」などというのは、偽りにすぎません。

 この問題について、山口県での日露首脳会談を前にした2016年11月24日付のブログ「無残というしかない安倍外交における破産の数々」で、私は「12月の首脳会談に向けて領土問題で大きな進展があるのではないかとの観測は幻に終わりそうです」と書いて、次のように指摘しました。
 「安倍首相は日露間の経済協力の拡大をテコに領土問題を打開し、それを成果として解散・総選挙に打って出るのではないかと見られていました。しかし、この戦略にも狂いが生じているようです。
 プーチン大統領は領土問題で日本に譲歩する意志はないようで、経済協力だけを『食い逃げ』するかもしれないからです。これも、安倍外交の失敗となる可能性が強まっています。」
 やっぱり「食い逃げ」するつもりだったということが、今回のプーチン大統領の発言で明らかになったというわけです。結局、安倍首相は騙されていたということになるでしょう。
 
 今たたかわれている自民党の総裁選挙で、安倍首相の3選を支持する自民党議員の大きな理由の一つが外交手腕にあるそうです。安倍首相自身も外交を得意だとし、それによって支持の拡大を図ってきた側面があります。
 しかし、それはテレビなどで報じられる外見にすぎず、安倍首相が得意としていたのは外交そのものではなく「やっているふり」「進んでいるポーズ」によって国民を欺くというやり方の方でした。
 その「化けの皮」が、最近になって次第に剥がれつつあります。外交政策が破たんして漂流を始めた安倍政権を続投させれば、日本の前途には暗雲が漂うばかりではありませんか。

 外交破たんによって無能ぶりが露わになった安倍首相を退陣させなければなりません。安倍政権の打倒こそが、日本の外交を救う唯一の道なのです。

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6月28日(木) 米朝首脳会談が切り開いた「対決から対話へ」の歴史的転換 [国際]

 国際政治を動かすベクトルが逆転したということではないでしょうか。米朝首脳会談の歴史的な意義はそこにあると言うべきでしょう。
 この意味を理解せず、その大転換を前提としないどのような議論も、国際政治の行く末を論ずることや見通すことはできません。それほど大きな激変が、6月12日にシンガポールで起きたということです。

 朝鮮半島を舞台にした戦争の危機が回避されただけでも大きな成果でした。アメリカと北朝鮮の「どちらが勝ったのか」などという議論がありますが、どちらも戦争を望んでいなかったというのであれば、「どちらも勝った」ということになります。
 戦争で大もうけを狙っていた一部の軍産複合体という「戦争屋」どもを除けば、平和的な解決を望んでいたのは朝鮮半島やその周囲の人々だけでなく世界の大多数の人々でした。戦争ではなく平和的な交渉による問題解決への道が開かれたのですから、これらの人々も「勝者」だったと言えます。
 もし、「敗者」がいるとすれば、それは日本の安倍首相でしょう。「圧力」一辺倒で首脳会談実現の足を引っ張ったあげく、トランプ米大統領には貿易面で裏切られ、ロシアのプーチン大統領にも領土問題で騙され、北朝鮮の金正恩委員長からは相手にされず、韓国の文在寅大統領とはギクシャクしたままで、中国の習近平主席からも適当にあしらわれるという醜態を演じ、「蚊帳の外ではない」と叫びながら蚊帳の外で飛び回っている一匹の蚊のようになってしまったのですから。

 特に、北朝鮮との関係では先方の厳しい対応が際立っています。これまでの拉致問題をめぐる日朝交渉で北朝鮮は日本への強い不満を抱き不信感を高めてきたからです。
 しかも、その中心に居て、時にはアメリカの背後で軍事的な対応さえほのめかし、常に圧力のみを主張し続けてきたのが安倍首相でした。このような安倍首相への嫌悪と反感は、米朝首脳会談後も払しょくされていないようです。
 なかでも最悪だったのが、1月16日に河野太郎外相がカナダ・バンクーバーで開催された北朝鮮問題を話し合う関係国の外相会合で、北朝鮮との外交関係の断絶や北朝鮮労働者の送還を呼びかけた声明でした。平昌での冬季オリンピックへの北朝鮮代表団の参加などが予定され、米朝首脳会談に結びつく動きが始まっていた段階でのこのような呼びかけは、日本政府がいかに事態の進展を見誤っていたかを象徴的に示すものだったと言って良いでしょう。

 米朝首脳会談では、アメリカによる体制保障と北朝鮮の非核化が約束されました。同じようなことはこれまでも約束され、北朝鮮によって破棄され覆られるという歴史が繰り返されています。
 このような経過もあって、北朝鮮は信用できない、今回の合意も抽象的で具体性に欠けており、裏切られるにちがいないという悲観的な見方が支配的です。しかし、このような見方は今回の首脳会談の歴史的な意義を十分に理解していない誤ったものだと思います。
 米朝両国における外交・安全保障政策のベクトルが大きく変化したことは誰にも否定できない事実だからです。非核化に向けて揺れ戻しや紆余曲折はあるでしょうし、一直線には進まず時間はかかるでしょうが、この方向でしか問題の解決はあり得ず、それをどう確実なものにするのかという立場から対応すべきではないでしょうか。

 これまでとの違いを言えば、今回の合意は米朝両国の最高指導者によってなされたものだという点が重要です。担当者や実務者レベルの約束ではなく、史上初めての米朝首脳会談による合意であり、簡単に覆されるようなものではありません。
 また。米朝首脳会談に関連して、南北朝鮮の首脳会談、北朝鮮と中国との首脳会談など、関連するトップ同士での合意が積み重ねられているという点も重要です。なかでも、中国との間では3回もの首脳会談が行われ、シンガポールへの往来のために特別機まで中国から提供されました。
 このように、今回の米朝合意の後ろ盾になっているのが中国だという点も重要です。アメリカや日本が軍事的なオプションを含めた圧力路線を主張していた時にも、朝鮮半島での戦争に反対し非核化を望んでいた中国とロシアはあくまでも対話による問題の解決を主張していたからです。

 決定的に重要なのは、対話と交渉の道が開かれ、朝鮮半島における緊張の緩和と信頼の醸成に向けての具体的な措置が次々に実施されているということです。その結果、日本に対する脅威も大きく減少しました。
 『朝日新聞』6月27日付の社説「ミサイル防衛 陸上イージスは再考を」が「安全保障分野で脅威とは、相手の『能力』と『意図』のかけ算とされる。北朝鮮にミサイルがあることは事実だが、対話局面に転じた情勢を無視して、『脅威は変わらない』と強弁し続けるのは無理がある」と指摘しているように、北朝鮮の「意図」が大きく変化しました。小野寺防衛相が「北朝鮮の脅威はなにも変わっていない」と繰り返しているのは、このような安全保障のイロハを理解していないからです。
 もちろん、非核化とミサイルの削減によって攻撃「能力」を減らしていくことが必要です。同時に、緊張緩和と信頼醸成による攻撃「意図」の縮小も大きな意味を持ち、この点ではすでに多くの具体的な措置が取られているということに注目する必要があります。

 6月25日に、韓国と北朝鮮は朝鮮戦争の開戦68周年を迎えましたが、南北は軍の通信回線を復旧させる実務協議を行い、今は1回線しかない回線を過去に最大で9回線あった状態まで復旧させることで合意しました。韓国統一省は、26日に鉄道連結、28日に道路連結、7月4日に北朝鮮の荒廃した山林復旧の実務協議を板門店などで行うという新たな対話の日程を明らかにしました。
 韓国の各地では記念式典も開かれましたが、李洛淵(イナギョン)首相は、ソウル市内で開かれた式典で、「(南北の軍事境界線近くに展開する)長距離砲を後方に移すことが議論されている」と明らかにしています。他方、朝鮮通信によれば、北朝鮮の労働新聞(電子版)は25日付で、朝鮮戦争に関する7件の記事を載せましたが、米国を名指しで非難せず「米帝」の表現も使いませんでした。
 すでに米朝首脳会談前に、拘束されていた3人のアメリカ人が帰国し、首脳会談直後には米韓軍事演習の中止も発表されています。訪ロした文韓国大統領とロシアのプーチン大統領との間でシベリア横断鉄道と朝鮮半島を横断する鉄道の連結についても協調していく方針で一致し、プサン発ロンドン行きのユーラシア大陸横断鉄道も夢ではなくなっています。

 新しい歴史的な局面に向けての扉が、東アジアで開かれようとしているということです。朝鮮戦争の終結が宣言され、最後まで残った「冷戦」が終わろうとしているように思われます。
 「対決」から「対話」へとベクトルが逆転し、国際関係を律する原則が大きく方向を転じました。日本国憲法前文と9条が本格的に活かされ、その本領を発揮するような「活憲の時代」が、今こそ幕を開けようとしているのではないでしょうか。

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6月27日(水) 拉致問題などの諸懸案を解決するためにも安倍首相を引きずり降ろさなければならない [国際]

 昨日のブログで、こう書きました。「トランプ大統領によれば、金正恩委員長は拉致問題について『解決済み』とは言及しなかったとされていますが、論評は北朝鮮が従来の立場を変えていないことを示唆するものでした。その後、この問題についての報道はないようですが、北朝鮮の出方が注目されます。」
 今日の『毎日新聞』には、「この問題についての報道」が新たに掲載されていました。その表題は「拉致問題『ない』 北朝鮮がけん制」となっており、記事は以下のようなものです。

 <北朝鮮の国営ラジオ、平壌放送は26日に伝えた論評で、「日本は今日まで過去の犯罪について謝罪し賠償するどころか、逆にありもしない拉致問題をわめきたてて自らを『拉致被害国』に化けさせようと破廉恥に策動している」と非難した。ラヂオプレス(RP)が伝えた。
 拉致問題の解決に向け日朝首脳会談の実現を目指す安倍政権を改めてけん制した。平壌放送は15日にも、拉致問題は『既に解決された』と主張する論評を伝えていた。>

 ここで言及されている15日の放送については昨日のブログでも紹介し、「米朝首脳会談で事態が大きく動くかのような期待は、またも裏切られるのではないでしょうか」と指摘しました。この記事は、このような指摘をさらに裏付けるものとなっています。
 政府もマスコミも、このような事実をなぜきちんと国民に伝えようとしないのでしょうか。安倍首相によって拉致問題の解決に向けて事態が動き始めているような幻想をまき散らすことはやめるべきです。
 お昼のTVニュースでも、国連軍縮会議で北朝鮮代表は非核化について「日本は首を突っ込むべきではない」と批判したと伝えていました。これらの報道が示しているのは、北朝鮮は米朝首脳会談前から示していた安倍首相に対する厳しい姿勢を、首脳会談後も取り続けているということです。

 これらの経緯を見れば、日朝首脳会談の実現はかなり難しいように思われますが、もし実現したとしても、そこで安倍首相は何を主張するのでしょうか。拉致問題は解決済みだという北朝鮮に対して、これまでと同様の主張を繰り返すだけであれば事態が打開される可能性はほとんどありません。
 打開の道は、日朝平壌宣言が示していた拉致、核・ミサイル、植民地支配など過去の清算という両国間の諸懸案を包括的に解決して国交正常化を目指すという方向しかありません。これらの諸懸案を総合的に議論する中で拉致問題についても解決の道が切り開かれるのではないでしょうか。
 しかし、月刊誌『FACTA』の最新号の記事によれば、北朝鮮を非難して国内の人気を高めるために拉致問題を中途半端な状態にしておくよう安倍首相が外務省に圧力をかけたそうです。そのような安倍首相に、日朝平壌宣言に沿った国交正常化交渉と北東アジアの緊張緩和に向けての包括的で総合的な対話が可能でしょうか。

 拉致問題をはじめとした日朝間の諸懸案を解決することも、北東アジアをめぐる平和体制の構築についても、安倍首相では不可能だと言わなければなりません。「必要なのは対話ではない。圧力だ」と言い続けてきたツケが、今、回ってきているということではないでしょうか。
 安倍政権を打倒することは、これらの問題の解決への展望を開くためにも必要になっています。安倍首相がその座を去ることが早ければ早いほど、外交面でも新たな希望と展望が早まるというのが現時点における北東アジア情勢の大きな特徴にほかなりません。

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6月26日(火) 米朝首脳会談などによる国際情勢の激変についての『日刊ゲンダイ』へのコメントと若干の補足 [国際]

 〔以下の私のコメントは、米朝首脳会談などによる国際情勢の激変についての『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。参考のために、アップさせていただきます。〕

*『日刊ゲンダイ』2018年6月13日付
 「世界のリーダーは、安倍首相に呆れているでしょうね。重要な外交方針を〝圧力〟から〝対話〟にカンタンに変えてしまった。しかも、変更した理由も情けない。ひとつは、トランプ大統領が〝米朝融和〟へカジを切ったから合わせるしかなかった。もうひとつは『このままではバスに乗り遅れる』と慌てて北朝鮮に秋波を送ったのでしょう。関係国の米、中、ロ、韓は北朝鮮との対話に向かっているのに、日本だけは接触できていませんからね。要するに、信念から外交方針を変えたわけではない。国際社会では、口にしたことをころころ変える、こういううトップが一番信用されない。しかも、安倍首相は心の中で米朝会談の〝失敗〟を期待していることも見透かされています。世界のリーダーは、日本の首相を哀れに思っているはずです」(法政大学名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

*『日刊ゲンダイ』2018年6月23日付
 「安倍政権がこの5年間に強引な手法で成立を急いだ特定秘密保護法や安保法、共謀罪などは、いずれも北朝鮮の脅威などを理由にしていましたが、北をとりまく国際情勢が激変した今、エネルギーと時間の無駄遣いだったことがはっきりしました。そして、その間のアベ政治によって、三権分立も民主主義も総崩れになり、経済や外交もメタメタ。アベノミクスは異次元緩和の出口すら見えず、外交では米ロにだまされ、北からは相手にもされず孤立化している。現実に目を向けず、やれW杯だ、東京五輪だと浮かれていると、行き着く先は国民生活の破綻。死屍累々の状況を覚悟した方がいいでしょう」

 ここでも指摘しているように、米朝首脳会談をめぐる安倍首相のトランプ米大統領への追随ぶりは、これまで以上に際立っています。首脳会談を開催すると言えば、「対話のための対話には意味がない」と言い続けてきたこれまでの発言を翻して「支持」を表明し、途中で「開催をやめる」と言った時も直ちにこれを「支持」し、さらにその後、「やめるのをやめる」と言った時にも、安倍首相は直ぐに「支持」を表明しました。
 トランプ大統領のやること、言うことは何でも支持するという無定見ぶりです。どこに、独立国としての判断や主張があるのでしょうか。
 拉致問題でも、首脳会談で取り上げてもらいたいとトランプ大統領にお願いするだけでした。トランプ大統領は首脳会談で拉致問題を取り上げ、北朝鮮の金正恩委員長は「安倍首相と会う可能性がある。オープンだ」と前向きな姿勢を示したと伝えられています。

 しかし、これで拉致問題についての事態が進展するほど、甘くはなかったようです。安倍首相に対する北朝鮮側の評価が厳しく、日朝首脳会談を急ぐ必要はなく、従来の態度を変えたという確証もないからです。
 最近も、北朝鮮の朝鮮中央通信は安倍政権が森友学園の問題をはじめとするスキャンダルで行き詰まるなど安倍政権に批判が集まっていることを紹介しながら、「安倍一味は、彼らに集まる怒りのまなざしをそらして政権の危機を免れるために」 「拉致問題」や「最大の圧力」を持ち出しているなどと主張していました。岡田充共同通信客員論説委員は、北朝鮮との日朝首脳会談の可能性を打診した安倍政権に対し、北朝鮮当局が「一切取り合うな」との指示を出していたことが明らかになったと伝え、4月27日の南北首脳会談と米朝首脳会談など、国際的対話の枠外に置かれる安倍政権は当面、北との対話の契機をつかめないまま孤立を深めることになると報じていました。
 5月12日にも、朝鮮中央通信は安倍政権が「既に解決した拉致問題を再び持ち出して世論を形成している」とし、「朝鮮半島の平和の流れを阻もうとする稚拙で愚かな醜態だ」と非難する論評を配信していました。米朝首脳会談でのやり取りは、このような風向きが変わったのではないかとの期待を高めましたが、そうではなかったようです。

 米朝首脳会談が開かれた2日後の6月14日、外務省の志水史雄アジア大洋州局参事官はモンゴルのウランバートルで開催された国際会議の場で、北朝鮮外務省のシンクタンク、軍縮平和研究所のキム・ヨングク所長と短時間接触し、拉致問題の解決に向けた日本政府の基本的な立場を伝えたと外務省が発表しました。これが首脳会談後の最初の「接触」でした。
 外務省は「非公式に意見交換した」と発表していますが、正式の会談を設定することができず、面と向かっての「意見交換」もできなかったようです。実態は廊下での立ち話、それも行き過ぎる北朝鮮の代表団を追いかけて一方的に話したのではないでしょうか。
 志水氏は、拉致問題は日朝が直接向き合い、解決すべきだとの安倍晋三首相の考えを伝達したとされ、キム氏の発言については明らかにせず、外務省幹部は北朝鮮側の反応について「(従来の姿勢と)大きな変化はなかったようだ」と語っています。モンゴル外務省の関係者によると、北朝鮮代表団の一人は「日本が提起する内容は今の良い流れを阻害しかねない」と語ったということで、拉致問題に対する拒否反応とみられています。

 つまり、これまでと変わらない反応だったということになります。米朝首脳会談で事態が大きく動くかのような期待は、またも裏切られるのではないでしょうか。
 このような見方を裏付けるように、北朝鮮の国営ラジオ「平壌放送」は6月15日に報じた論評で、日本人拉致問題について「既に解決された」と言及しています。トランプ米大統領が米朝首脳会談で拉致問題を提起した後、北朝鮮メディアが拉致問題は解決済みとの従来の主張を表明したのは初めてのことです。
 トランプ大統領によれば、金正恩委員長は拉致問題について「解決済み」とは言及しなかったとされていますが、論評は北朝鮮が従来の立場を変えていないことを示唆するものでした。その後、この問題についての報道はないようですが、北朝鮮の出方が注目されます。

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5月9日(水) 朝鮮半島情勢の劇的な変化に関して『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメントと若干の補足 [国際]

 〔以下の私のコメントは、朝鮮半島情勢の劇的な変化に関して『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。参考のために、アップさせていただきます。〕

 「安倍首相がどうかしているのは、国際社会の変化を見ようともしなかったことです。金正恩委員長の〝新年の演説〟を聞けば、朝鮮半島が動き出す可能性があることは想像がついたはずです。少なくとも、平昌オリンピックに参加し、妹の与正氏を送り込んだ時点で、正恩委員長が本気だということは分かったはず。なのに、全く手を打とうとしなかった。ひたすら、北朝鮮と対話を進めようとする韓国に文句を言っていただけです。安倍首相は国際社会を大局的に見る能力も、歴史的な視野もない。やったのは、トランプ大統領に『米朝会談では拉致問題も言って下さいね』と頼み込んだくらいです。そのトランプ大統領には『アメリカの兵器をもっと買え』と迫られている。安倍首相はレベルが低すぎます」(2018年4月24日付)

 「日中韓が連携し、米国とも協力して北朝鮮の非核化に取り組まなければならないのに、ひとりで圧力と言い続けている姿は滑稽ですらあります。和平を後押しするどころか、水を差すような発言を繰り返しているのは、北の脅威がなくなったら困るからでしょう。安倍政権は『日本を取り巻く安全保障環境が悪化している』と国民を脅して、安保法や共謀罪を成立させてきた。Jアラートを鳴らして危機を煽り、総選挙にも利用した。北朝鮮の危険性を理由に防衛費も増やし、軍事大国化を推し進めてきたのです。半島の和平で在韓米軍も撤退ということになれば、これまでの言動がすべて覆されてしまう。北の脅威を利用した憲法9条改正もできなくなってしまいます。沖縄の辺野古新基地も完成まで10年ほどかかるというから、それまでは半島に危機があって欲しいのでしょう」(2018年5月9日付)

 「米朝会談で東アジアが歴史的転換点を迎えようとしている今は、日米地位協定や日米安保のあり方などを根底から見直す好機でもあります。戦後レジームからの脱却というのなら、占領体制の象徴である在日米軍の撤退は、真の独立国になるためにも、本来は望ましいことのはず。しかし、残念ながら、そういうう議論を現政権が始めることはない。他ならぬ安倍首相が現状維持を望んでいるからです。在日米軍にいてもらうことで、軍事力を背景に周辺国に睨みを利かせることができると考えている。対米従属で虎の威を借ることが、国際社会での発言力向上になると勘違いしているのです。米朝和解なら、日本の政治も劇的に変わる可能性があるのに、米国べったりで北を挑発し続けるしか能がない安倍政権では、時代の変化に対応できません」(同前)

 以上にコメントしたように、朝鮮半島情勢の劇的な変化に対して安倍政権は圧力の維持を主張するだけで、基本的には無為無策、傍観者的な立場に終始してきました。安倍首相は「蚊帳の外ではないか」という批判に反論し、「蚊帳の外ではない」と「蚊帳の外」で叫んでいるばかりです。
 現に、アメリカのトランプ政権で北朝鮮政策を担当していた米国務省前北朝鮮担当特別代表のジョセフ・ユン氏は「大きな勝者は韓国と北朝鮮だ。負けているのは日本だ。なぜなら日本は置き去りにされている」と述べています。今日、日中韓の首脳会談が開かれますが、安倍首相はこの「置き去り」状態から抜け出せるのでしょうか。 
 『日刊ゲンダイ』でコメントしたように、「日中韓が連携し、米国とも協力して北朝鮮の非核化に取り組まなければな」りません。したがって、中国や韓国との関係が改善され協力する態勢ができるのは大きな前進であり、歓迎したいと思います。

 しかし、そうなれば安倍首相の強固な基盤であった反中・嫌韓派の極右勢力からの支持を失うリスクが高まります。安倍首相としては大きなジレンマだと言うべきでしょう。
 このジレンマをどう乗り切るつもりなのでしょうか。対話と交渉による朝鮮半島危機の解決や極東における緊張緩和も、安倍首相にとっては好ましくない変化であるにちがいありません。
 このような危機の回避と平和構築に向けての積極的な動きを素直に喜ぶことができないところに、安倍首相の根本的な弱点があります。時代の変化に対応できない極右の好戦的首相の出番はもう終わっているのです。

 なお、本日の午後5時からJR新宿駅西口で、全国革新懇代表世話人として街頭演説を行う予定です。関心のある方においでいただければ幸いです。

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4月28日(土) 歴史的な南北会談のカヤの外でただ見守るしかない安倍政権 [国際]

 歴史が大きく動く瞬間を目撃したような気がしました。新たに開かれた扉が、朝鮮半島の平和に結びつくことを祈りたいと思います。
 その可能性を世界中の人々に確信させるに足る南北首脳会談でした。この動きが米朝首脳会談の成功へと引き継がれることを期待したいものです。

 昨日、南北の軍事境界線をまたぐ板門店で、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は11年ぶりの首脳会談を行い、朝鮮半島の「完全な非核化」実現を目標に掲げた「朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言」に署名しました。1953年7月から休戦状態にある朝鮮戦争を年内に終わらせる意思も確認し、文大統領が今年の秋に平壌を訪問することでも合意しました。
 南北首脳による会談は3回目で、北朝鮮の指導者が韓国側に入ったのは史上初めてになります。会談は板門店の韓国側の施設「平和の家」などで行われ、宣言に署名した後、両首脳は共同発表しましたが、金委員長にとっては西側メディアの前で初めての記者発表になりました。
 会談では朝鮮半島の非核化、恒久的な平和の定着、南北関係の進展が主な議題になり、最大の焦点である非核化について、宣言は「南北は完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した」と明記しました。ただ「完全な非核化」の具体策やその手法、期間は記されず、金委員長は非核化や対米関係などに一切言及しませんでした。

 この会談と共同宣言については様々な評価が可能ですし、それがどこまで実効性があるのか、北朝鮮が誠実に順守するのか、疑問視する意見も根強くあります。しかし、これまでの敵対関係から抜け出す第一歩として歓迎し、朝鮮半島の平和と非核化、南北の統一に向けて前進する出発点になってもらいたいと思います。
 この首脳会談と宣言の合意によって、少なくとも第2次朝鮮戦争の危機が遠のいたことは明らかです。南北間の対話と交渉が続く限り、軍事的なオプションが選択肢に上ることはないでしょう。
 朝鮮半島の非核化や南北間の交流、統一に向けての動きが始まることも確実です。朝鮮戦争の終結によって平和構築に向けての新たな可能性も生まれてきています。

 このような歴史的な南北会談の開催と成功に関して、日本政府は「対話ではなく圧力を」と特異な主張を繰り返すだけで、背極的な役割を果たすことができなかったのはまことに残念です。日本政府は文大統領に拉致問題を取り上げるように頼んだだけで、指をくわえて事態の推移を見ているだけでした。
 戦前、朝鮮半島を植民地支配していた日本としては、南北の分断に対しても責任があり第3者というわけではありません。南北間の和解を仲介し、統一に向けての動きを支援する歴史的な責任があるのではないでしょうか。
 しかも、憲法9条には戦争や武力の行使だけでなく武力による威嚇も、国際紛争を解決する手段としては放棄すると書かれていますから、安倍首相は戦争や武力による威嚇に反対し、対話や交渉によって南北間の対立や紛争を解決するべき立場にありました。しかし、北朝鮮危機に際して、安倍首相はこのような立場に立つことができず、今回の南北対話に際しても第3者的立場をとり続けています。

 一部の報道では、北朝鮮との日朝首脳会談の可能性を打診した安倍政権に対し、北朝鮮当局が「一切取り合うな」との指示を出していたとされています。南北首脳会談と米朝首脳会談など、国際的対話の枠外に置かれる安倍政権は当面、北との対話の契機をつかめないまま孤立を深めることになるという見方がもっぱらです。
 平昌冬季五輪の開会式に出席した安倍首相は、北朝鮮代表団の金永南最高人民会議常任委員長との立ち話で「平壌宣言と(拉致被害者らの再調査を約束した)日朝ストックホルム合意に立ち戻ろう」と呼びかけました。これに対して金議長は「謝罪と賠償が先」と取り合わなかったといいます。
 拉致問題についても、安倍首相は日米首脳会談や文大統領との電話会談で拉致問題を取り上げるよう要請し、いずれも快諾を得たとされています。しかし、今回の南北会談で話題になった形跡はなく、合意された宣言にも記載されていません。

 南北関係の改善と緊張緩和の促進によって、安倍首相は北朝鮮の核やミサイル発射を口実に危機を煽ることができなくなりました。このような事態の急変を、心の中でどう思っているのでしょうか。
 日本周辺の安全保障環境は急速に改善されようとしています。安倍首相によって推進されてきた軍事力増強政策の根拠は、今や音を立てて崩れ去ろうとしていると言うべきでしょう。

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