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2月1日(木) ヘイト大統領と好戦首相をともに権力の座から放逐するのが今年の目標 [国際]

 今日から2月です。「もうそろそろ春ですね」と言いたいところですが、雪が降るようで春はまだ先です。

 アメリカの連邦議会で、トランプ大統領の一般教書演説が行われました。日本の通常国会で冒頭に行われる施政方針演説に相当するものです。
 トランプ大統領の演説も安倍首相の演説も、美辞麗句と誇張をちりばめた自画自賛に満ちたものでした。これでどれだけ、国民に希望を与えることができたでしょうか。
 トランプ大統領は「今こそ米国の新時代だ」と宣言し、「米国の強さと自信を国内で立て直し、海外でも強い地位を取り戻す」と主張。今年11月の中間選挙をにらんで、税制改革法の成立や株価上昇など政権1期目の成果を強調し、インフラへの大規模な投資や移民制度改革への決意を表明しました。

 引き続きアメリカファーストを掲げて国際社会を「敵」と「味方」に色分けし、中国とロシアへの対抗意識をむき出しにしています。核戦力の強化を打ち出すなど非核化へと歩み出した国際社会の動向に背を向け、北朝鮮への先制攻撃も示唆するなど安倍首相と同様の「力による平和」を打ち出しました。
 好調な経済を自慢しながら軍事力をさらに強化する方針を示しましたが、その直前にニューヨーク株式市場のダウ工業株が急落し、前日比362.59ドル安となったのは皮肉です。この下げ幅は昨年5月17日以来、約8カ月半ぶりの大きさで、一般教書演説を前に冷や水を浴びせた形になりました。
 11月に中間選挙があるというので、「アメリカは一つのチーム、国家、家族だ」と融和の姿勢を示し、民主党にも秋波を送っています。しかし、民主党の議員14人がボイコットし、抗議の黒い服も目立っていたようです。

 確かに、アメリカに「新たな時代が到来」したことは確かでしょう。これほど国内に亀裂が拡大し、国際的な威信を低めて孤立することはかつてありませんでした。
 壁にこだわって公約を守ろうとする姿勢は、強固な30%ほどの支持者には受けるかもしれません。しかし、それよってアメリカの政治と社会はさらに分断と対立を深めるにちがいありません。
 公約を守らなかった実施されていないと言って批判されるのが通例ですが、公約を守って政策を実現したと言って批判されるのはこれまでにないことです。確かに、「新たな時代」がやって来たとは言えますが、それはやってきてはならない時代だったのです。

 このトランプ大統領との密接な関係を自慢しているのが安倍首相です。施政方針演説では「トランプ大統領とは、電話会談を含めて二十回を超える首脳会談を行いました。個人的な信頼関係の下、世界の様々な課題に、共に、立ち向かってまいります」と、親密さや関係の深さを誇示していました。このようなことが自慢の種になるという感覚がすでに異常です。
 トランプ大統領が、アメリカ国内はもとより世界中の鼻つまみ者になっていることが分からないのでしょうか。まあ、似た者同士だから分からないのも仕方がないのかもしれません。
 これから1年、トランプ大統領と安倍首相はともに手を取り合って世界とアメリカ、日本を分断し混乱の渦に巻き込むことになるでしょう。アメリカ国民とともに日本国民も、それに対する覚悟と責任を自覚しなければなりません。

 それを阻むことが、今年1年の両国の国民にとっての大きな獲得目標になります。中間選挙での敗北と通常国会での追及によって、ヘイト大統領と好戦首相を権力の座から放逐することをめざして全力を尽くさなければなりません。 

 なお、今月も以下のような講演が決まっています。お近くの方や関係者の方に沢山おいでいただければ幸いです。

2月1日(木)18時30分 江東区総合区民センター:戦争法廃止をめざす大島の会
2月3日(土)18時 河辺市民センター:市民連合おうめ
2月4日(日)13時 東京革新懇総会:東京労働会館ラパスホール
2月11日(日)14時 静岡市あざれあ(男女共同参画センター):静岡県革新懇
2月18日(日)13時30分 田無公民館:西東京革新懇
2月20日(火)13時30分 八王子由井市民センターみなみ野分館:スイートピーお喋り会

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12月25日(月) 急速に進みつつある国際社会における日本の地位の低下 [国際]

 間もなく激動の2017年も暮れようとしています。アメリカのトランプ大統領とそれに追随する安倍首相の暴走によって、世界と日本が大混乱に陥った1年でした。
 その中でも目立ったのは国際社会における日本の地位の低下です。これは安倍政権の下で急速に進みつつありますが、日米同盟の強化をめざしてアメリカへの隷属状態を深めてきたことの当然の結果でした。

 これには二つの面があります。一つは安倍・トランプ関係の親密さから生じてきている悪影響であり、もう一つは唯一の核被爆国でありながら核廃絶の動き背を向けてきたことによる国際的な地位の低下です。
 トランプ米大統領は地球温暖化防止のための「パリ協定」からの離脱を宣言し、10月にユネスコ脱退を表明したばかりか12月には「エルサレムをイスラエルの首都と認める」と宣言しました。このエルサレム首都化を支持したのは世界でイスラエルただ1国にすぎず、16億人のイスラム教徒を敵に回し国連臨時総会では128ヵ国が反対決議に賛成しています。
 この決議には、日本も賛成に回りました。中東の原油に依存している日本は、アラブ諸国を敵に回すわけにはいかなかったからです。

 この決議案が提出されたとき、トランプ大統領は賛成すれば援助を打ちきると述べて国威社会を恫喝しました。札束でほっぺたをひっぱたくような脅しをかけて決議案を葬り去ろうとしたことも、トランプ政権への国際社会の反感を強めています。
 このようなトランプ大統領の一連の言動によって、アメリカは世界から孤立して影響力を低下させ、覇権を失いつつあります。第2次世界大戦後に確立してきた国際秩序の創造者・維持者としての立場から国際秩序の破壊者になってしまったからです。
 これは「アメリカファースト」というトランプ大統領の哲学からすれば、当然の結果だったと言うべきでしょう。こうして、アメリカがこれまで国際社会で築いてきた威信や信用、影響力などの「ソフトパワー」が失われ、国際的な地位を急速に低下させています。

 この孤立し落ち目になっているトランプ大統領と手に手を取り、同じような外交的影響力の低下に直面しているのが日本の安倍首相です。安倍首相はトランプ大統領と最も親しく強い関係を持っていると見られ、安倍首相自身はその良好な関係と親密さを誇っていますが、それは国際社会における日本の強みではなく弱みになっているのではないでしょうか。
 トランプ大統領の訪日に際して一緒にゴルフに興じたことも、「こんな時に、一体何をやっているのか」と国際社会の顰蹙を買ったにちがいありません。この時、バンカーに球を打ち込んだ安倍首相は、さっさと歩き始めたトランプ大統領を追いかけようとして、その最上部でバランスを崩して転び一回転してしまいましたが、これこそ安倍政権の姿を象徴するものでした。
 この映像はたまたま上空を飛行していたテレビ東京のヘリコプターから撮影され、それを入手したイギリスのBBCによって世界中に配信されました。慌ててアメリカに追従する日本の姿として、嘲笑の的になってしまったというわけです。

 もう一つの核兵器禁止条約への不参加は、より一層、国際社会での日本の立場を弱めるものでした。戦争で核兵器の被害を受け、その悲惨で残酷な現実をどの国よりも良く知る唯一の被爆国である日本こそが、このような条約の発効に向けてイニシアチブを発揮するべき国際的な責務を負っていると考えられているからです。
 国連総会は7月に人類史上初めて核兵器の使用や威嚇などを違法化した核兵器禁止条約を採択しました。12月にはこの採択を歓迎する一連の決議案を賛成多数で採択しています。
 全加盟国に条約への早期署名・批准を求めた決議案「多国間核軍縮交渉の前進」は賛成125、反対39、棄権14となりました。日本が背を向けていたにもかかわらず、122カ国の賛成多数で採択された7月の条約交渉会議の時点から賛成国が3カ国増えており、この条約の方向こそが国際世論になりつつあることが示されました。

 日本政府はこの決議にも7月の核兵器禁止条約にも反対しました。それはアメリカの「核の傘」の下にあるからです。この条約の制定に貢献した国際NGOネットワーク「ICAN」はノーベル平和賞を受賞しましたが、これについても日本政府は冷淡な対応を示し、被爆者の失望を買いました。
 他方で、日本政府は国連総会第1委員会(軍縮)に核兵器全廃を目指す決議案を提出しています。この決議案は、日本が1994年から毎年提出し、採択されてきたものです。
 しかし、これに対しては核兵器禁止条約に触れておらず、核廃絶に関する文言も弱まっていました。例えば、「核兵器のあらゆる使用」が壊滅的な人道上の結末をもたらすと明記していた昨年の文言から「あらゆる」が削除され、「核兵器のない世界を『達成するための』決意を再確認する」という文言が「核兵器のない世界に『向けた』決意」という表現に変わっています。

 核軍縮に向けて活動するNGOの関係者からは「日本は米国の圧力に屈して核廃絶への訴えを弱めたとしか思えない」として「日本は核保有国と非核保有国の橋渡しをしたいと言っていたが、米国側に立ってその橋を焼き払っているようにみえる」と非難される始末です。昨年12月の国連総会に提出された条約は加盟193カ国中、167カ国が賛成していましたが、今年の条約については賛成156、反対4、棄権24となっており、昨年から賛成が11票減り、棄権が8票増えました。
 このように、この間、核兵器の禁止や廃絶に向けての訴えや動きハ弱まってきており、国際社会の支持も失ってきています。そればかりか、かえって「核の傘」への依存を強めてきているのが現状です。
 その格好の口実として利用されているのが、北朝鮮の核・ミサイル開発による緊張感が高まりです。安倍首相は「対話よりも圧力だ」と言って朝鮮半島危機を煽り、国民の不安感を高め、それを「核の傘」への依存と軍事力の増強に利用してきました。

 例えば、2017年8月には核搭載可能な戦略爆撃機B52が飛来して日本海上空での空自戦闘機との共同訓練を行い、10月末の航空機観閲式では核兵器を搭載できる米戦略爆撃機B2の参加が検討されています。北朝鮮の核開発に対して、一方で「朝鮮半島の非核化」を主張しながら、他方では「核の傘」に依存し、核搭載の戦略爆撃機の飛来や自衛隊との共同訓練に道を開いているのです。
 自らはアメリカの核に頼りながら北朝鮮には「核に頼るな」と言っているようなものです。このようなダブルスタンダードによって日本の国際的信用はがた落ちになっているということが、安倍首相には分かっているのでしょうか。

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9月16日(土) 戦後国際政治において失敗続きだったアメリカの後追いをしても失敗するだけだ [国際]

 安倍首相の9条改憲構想は、アメリカの尻馬に乗って日本を「戦争する国」「戦争できる国」にするためのひとつながりの「物語」の完結編を意味しています。日本を「戦争する国」「戦争できる国」にするためには、法律や制度などのシステム、戦闘部隊や軍備、基地などのハード、若者への教育やマスコミによる国民の意識や世論形成などのソフトという3つの領域での整備が必要になります。
 憲法を変えることは、このシステム変更の中核をなしています。この「物語」は起(特定秘密保護法)、承(安保法)、転(共謀罪法)、結(9条改憲)という形で、最後の段階を迎えつつあると言ってよいでしょう。

 このような「物語」は、多極化し世界の秩序維持をもはや一国では担えなくなったアメリカからの分担要請であるとともに、アメリカのような国になって世界の中心で活躍したいと願う安倍首相の個人的な野心も反映しています。それは憲法を変えた最初の首相として歴史に名を残したいという願望にも通ずるものです。
 その「モデル」はアメリカですが、安倍首相にとってはオバマのアメリカより以上にトランプのアメリカこそが、理想的なパートナーであるにちがいありません。「アメリカ第一」を掲げて排外主義と人種差別を公言するトランプ米大統領は、安倍首相のと「うり二つ」なのですから。
 しかし、日本がその後を追おうとしている第2次世界大戦後のアメリカは失敗の連続でした。成功しているならともかく、失敗ばかりしてきたアメリカの後を追っていけばやはり失敗するに決まっているではありませんか。

 戦後国際政治におけるアメリカは失敗の連続でした。主なものでもベトナム戦争、9.11の同時多発テロ、イラク戦争などがあります。いずれも、自国民の多くが犠牲になり、それをきっかけに国力を弱め、国際的な地位を低下させてきました。
 ただし、9.11同時多発テロでアメリカは被害者であって、テロを引き起こしたのは中東地域出身の犯人たちでした。とはいえ、何故あのような形でアメリカが狙われたのかと言えば、その背景にはアメリカによる中東政策の失敗がありました。
 戦後のアメリカは、中東だけでなくアジア、中南米、アフリカなど地球規模で、中央情報局(CIA)などを使った隠然とした工作や海兵隊などを用いた公然とした介入を行ってきました。このような工作や介入にたいする積年の恨みや怒りがあったからこそ、アメリカがテロの対象として狙われたのです。

 このように、多年にわたる「世界の憲兵」としてのアメリカの活動は感謝されるどころか激しい敵意と怨念を生み出してきたということを忘れてはなりません。しかも、この9.11同時多発テロ事件はブッシュ大統領による「対テロ戦争」を引き出し、さらに中東への介入を強めてアフガン戦争を泥沼化させました。
 そして、その後に始まったイラク戦争は、さらに大きな失敗を生み出すことになります。核や化学兵器などを開発して貯蔵しているという「濡れ衣」によってフセイン政権が攻撃され打倒されましたが、そのような「大量破壊兵器」は発見されませんでした。
 日本政府も支持したこの戦争によってフセイン政権は倒されましたが、それによって中東地域に平和と安定が訪れたというわけではありません。混乱がさらに拡大し、その結果、二つの大失敗がもたらされることになります。

 その一つは、「イスラム国(IS)」というモンスター(怪物)が誕生し、増大していったことです。その母体は「イラクの聖戦アルカイダ」だと言われるように、イラク戦争がなければおそらく誕生することのなかった怪物でした。
 もう一つは、北朝鮮の金正恩労働党委員長による核とミサイル開発への暴走です。イラクのフセイン政権やリビアのカダフィ政権などの崩壊を目の当たりにして恐怖を覚えた金正恩氏は、核兵器とその搭載が可能でアメリカに到達できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発によらなければ北朝鮮の体制維持は不可能だと思い込み、その開発に狂奔する決意を固めたにちがいありません。
 結局、イスラム国と金正恩氏は、戦後におけるアメリカの外交・軍事政策の失敗が生み出した二つの「怪物」だったのです。それを退治しようとしてアメリカと同様の外交・軍事政策を取れば、その失敗をさらに上塗りして問題の解決を遅らせるだけでしょう。

 安倍首相には、このような戦後国際政治に対する反省もアメリカの失敗についての認識もありません。あるのはアメリカに対する追従と中国への敵意だけです。
 アメリカの失敗の結果、世界が大きく変化し多極化してきており、これまでとは異なったアプローチが必要になってきているということも全く理解できていません。古めかしいアメリカの栄光の復活を夢見て、そのおこぼれにあずかろうとしているだけです。
 トランプ米大統領はアメリカの失敗から抜け出そうとして、その失敗を別の形で繰り返そうとしています。北朝鮮を口汚くののしって軍事的な圧力を強め、その尻馬に乗った安倍首相は圧力一本やりの強硬路線を主張するばかりです。

 出口のない緊張の高まりによって、偶発的な衝突の可能性が高まってきています。トランプ米大統領が核のボタンに手をかけないことを祈りつつ、一刻も早く対話路線に転換し、交渉による解決の糸口を見つけ出してもらいたいものです。
 このような非軍事的な解決策の模索こそが、戦後アメリカの失敗の歴史から抜け出す唯一の道なのです。アメリカの後追いではなく日本独自の立場から非軍事的な解決を促しその実現を目指すことこそ、憲法9条の平和主義を尊重し擁護すべき義務を有している日本の首相のとるべき態度ではないでしょうか。

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9月7日(木) 北朝鮮危機でどのようなことがあっても軍事衝突だけは避けなければならない [国際]

 相変わらず北朝鮮危機が国民を不安な気持ちに追い込んでいます。襟裳岬の東方に落下したミサイル発射に続いて「水爆」実験が行われ、ICBMの発射実験の兆候が見えるという報道もありました。
 このような北朝鮮の行動は断じて許されません。国連を中心として国際社会が団結し、危機の鎮静化を図ることが急務になっています。

 「米朝の軍事衝突が絵空事でなくなった」との見方が強まっています。軍事的な挑発行為が繰り返されエスカレートするなかで、意図せざる偶発的な衝突が生ずる危険性も高まってきました。
 しかし、いかなる状況の下でも、軍事衝突だけは絶対に避けなければなりません。今最も必要なことは、戦争につながる可能性を高めるのではなく衝突回避のために努力することです。
 北朝鮮がミサイル発射や核実験を繰り返しているのは、アメリカの圧倒的な軍助力を恐れ、自国の安全保障と体制維持に大きな不安を感じているからです。そうであれば、このような恐れや不安を低めるための措置を取ることこそが必要なのであり、軍事を含めた「圧力」を強めて危機を煽ることは完全な逆効果になります。

 トランプ米大統領は「あらゆる選択肢」があると言って、軍事的な手段を否定していません。場合によっては、北朝鮮を攻撃する可能性があることを示唆しています。
 韓国は北朝鮮の指導部を直接攻撃する部隊を新設する方針を明らかにし、THAADの追加配備を行い原子力空母の派遣をアメリカに要請しています。日本政府も陸上イージスの導入を目指し、日米韓の共同訓練や連携強化など軍事的対応策を強め、石破さんは核兵器の持ち込みについての議論を始めるべきだと言い出しています。
 北朝鮮が危機感を高めることが分かっているのに、日米韓こぞって軍事的な圧力を強めて脅しつけようとしているわけです。当然、北朝鮮は反発して軍事的な対抗措置を強めますから、危機は沈静化するどころかエスカレートするばかりです。

 もちろん、アメリカも北朝鮮も軍事的な解決を望んでいるわけではありませんし、そうしてはなりません。もし、戦争になれば韓国に甚大な被害が出るだけでなく、日本も攻撃され、その影響はアジアのみならず世界全体に及ぶことになるでしょう。
 日本にとって軍事的な選択肢はありえず、非現実的なものです。それにもかかわらず、安保法の成立によって「日本の安全に重大な影響がある場合」や「重大な危機にさらされた場合」には、集団的自衛権を行使して米軍を支援することになっています。
 現在の自衛隊は安保法成立以前の自衛隊ではなく、日米軍事協力の意味も大きく変質しました。「今の内なら攻撃されることはない」と考えてトランプ大統領が北朝鮮への攻撃を決断した場合、巻き込まれるのは自衛隊だけではなく日本と日本人全体なのです。

 いささかでもそのような危険を生んではなりませんが、そのために安倍首相は何をしてきたのでしょうか。「これまでにない深刻かつ重大な脅威」とか「異次元の圧力」などと勇ましい言葉を繰り返し、対話を拒んで圧力強化一本やりの対応に終始してきただけではありませんか。
 「出口」のない圧力強化は「暴発」を招くだけです。少なくとも、相手にとって「挑発」と受け取られ、反発して危機感を高めるような行動を慎むだけの冷静な対応が必要なのではないでしょうか。
 トランプ米大統領と一体となって北朝鮮を刺激することは、日本にとってのリスクを高めるだけです。スイスのロイトハルト大統領は4日、北朝鮮情勢をめぐる問題の解決に向けて仲介役を務める用意があると明らかにしましたが、本来これは平和憲法を持つ日本の総理大臣こそが言うべき言葉だったのではないでしょうか。

 北朝鮮が戦争への突入覚悟で危機を高めていくということは考えにくく、いずれは対話へと舵を切ることでしょう。駆け込み実験でアメリカに到達できるICBMの開発などを終えることをめざし、それまでは何があっても屈しないと腹を固めているのかもしれません。
 もしそうなら、いくら「圧力」を強めても無駄です。アメリカとの直接交渉を働きかけ、体制維持を約束して自国の安全保障への不安を和らげ、無理をして軍事力を増強する必要はないのだということを分からせることの方が、衝突回避にとってずっと効果的なのではないでしょうか。

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9月1日(金) 日米同盟のみに依存して目先の圧力強化にこだわってはならない [国際]

 「北朝鮮に関する日米の利害はミサイル問題などで必ずしも一致してこなかった。米国は中国とは安保理でも協議を深めており、日米同盟のみに依存して目先の圧力強化にこだわれば、はしごを外されかねない。」

 これは「国連で安保理担当の政務官を4年前まで務め、交渉の舞台裏に詳しい川端清隆・福岡女学院大教授(国際政治)」の発言です。昨日の『朝日新聞』8月31日付に掲載されていました。
 川端さんが指摘する通り、「日米の利害はミサイル問題などで必ずしも一致」していません。大陸間弾道弾(ICBM)が開発される以前から、日本は短距離や中距離ミサイルの射程内に入っており、余りにも北朝鮮に近いためミサイル防衛は技術的にほとんど不可能だからです。
 したがって、トランプ米大統領にはICBMがアメリカ大陸に届くようになる前に軍事的手段を行使する選択肢があったとしても、すでにミサイルの射程内に入っている日本にはそのような選択肢はあり得ません。安倍首相には、このような違いが分かっているのでしょうか。

 中国との関係も、アメリカと日本では大きく異なっています。「米国は中国とは安保理でも協議を深めて」いると川端さんは指摘されていますが、逆に安倍首相は中国を敵視し、その包囲網づくりを外交政策の重要な柱としてきました。
 北朝鮮危機が高まったために慌てて中国との関係を強めようとしていますが、足元を見透かされるだけです。ここでも、安倍外交は破綻していると言わなければなりません。
 北朝鮮の核開発やミサイル実験を抑制し、朝鮮半島の非核化を実現するために中国との協力関係をどう打ち立てていくのかという長期的な戦略を欠いたまま、ひたすら包囲網づくりに精を出してきたのが間違いだったのです。その結果、北朝鮮危機打開のために協力できるような信頼関係を失ってしまいました。

 さらに川端さんは、「日米同盟のみに依存して目先の圧力強化にこだわれば、はしごを外されかねない」と指摘されています。誰によって「はしごを外され」るのかと言えば、それはアメリカです。
 安倍首相は「北朝鮮に対話の用意がないことは明らかで、今は圧力をさらに高める時だ」と強調し、トランプ大統領もツイッターで北朝鮮との「対話は解決策ではない」と書いて再び態度を硬化させました。2度の電話による日米首脳会談で、トランプ大統領は安倍首相に説得されたのかもしれません。
 しかし、マティス米国防長官は「我々は外交的解決を決してやめていない」と述べて、交渉による解決を目指す米政府の姿勢を改めて強調しました。マクマスター米大統領補佐官(安全保障担当)も「米国は北朝鮮問題の平和的解決を優先する」と語っています。

 かたくなに「対話」を否定する安倍首相の態度は極めて特異なものであり、まるで危機の激化と緊張関係の強化を望んでいるかのようです。その対応は冷静さを欠き、国民に対して危機感を煽る異常な姿勢が際立っています。
 歴史を振り返って見れば、いつの時代でも権力者は自らの利益のために紛争を起こし、危機感を煽りたててきました。安倍首相も例外ではなく、自らの利益のために北朝鮮との紛争を利用し、危機を煽り立てているかのようです。
 「森友」「加計」学園疑惑や都議選での敗北、内閣支持率の低下などで守勢に立った内政から外政へと国民の目を転じ、頼りになる指導者を演じて支持回復を図ろうとしているのではないでしょうか。北朝鮮危機を軍事費の増大や軍備の強化、軍需産業の拡大、ひいては9条改憲に結びつくような世論作りに利用しようとしているように見えます。

 国民に不安を与えないこと、安全や安心への配慮よりも自らの政治的な思惑を優先しているから、北朝鮮危機を本気で解決する気がないのです。ただひたすら圧力強化のみを主張し、日米共同演習など軍事的な対応をちらつかせながら北朝鮮を屈服させようとするばかりです。
 このような対応はまさに「武力による威嚇」そのものであり、憲法9条に反しています。日本が「はしごを外され」国際的に孤立する前に、このような対応を転換するか、安倍首相を交代させなければなりません。

 これについて、『日刊ゲンダイ』8月30日付で私は次のようにコメントしました。
 「日本国内が過剰に反応すればするほど、北朝鮮の思うツボですよ。騒ぎを起こして、世界に見せつけようというのが北の狙いなのですから。それに、国民が不安を感じざるを得なくなってしまったのは外交・安保政策の失敗にあるのに、安倍政権は不安を煽って対外緊張を支持率回復につなげようとしている。ひどい話です」(政治学者の五十嵐仁氏)

 なお、9月の講演などの予定は以下の通りです。お近くの方や関心のある方に足を運んでいただければ幸いです。

9月2日(土)13時 横浜市上郷・森の家:神奈川革新懇
9月3日(日)13時30分 横浜市市民活動支援センター:横浜市中区革新懇
9月9日(土)14時 レインボープラザ北九州:北九州革新懇
9月10日(日)13時 千葉土建船橋習志野支部会館:船橋革新懇
9月24日(日)14時 あ~ちぷらざ東京土建板橋支部会館:なかいた・ときわ台9条の会

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8月29日(火) 北朝鮮危機は対話で解決するしかない [国際]

 戦争の危機が間近に迫ってきたような緊迫感に包まれました。日本の上空をミサイルが通過し、太平洋に落下したからです。
 このような危機を高めたのは北朝鮮の金正恩政権であり、国連決議違反のミサイル発射は許されるものではありません。同時に、北朝鮮をここまで追い込んだのはトランプ米大統領の恫喝であり、安倍首相による圧力一辺倒の瀬戸際政策であったということも、同時に指摘しておかなければなりません。

 本日午前5時58分ごろ、北朝鮮は北東方向に向けて飛翔体を発射し、北海道の襟裳岬の東方約1180キロの太平洋上に落下しました。発射されたのは中距離弾道ミサイルとみられ、発射7分後に北海道に達し、9分後に襟裳岬上空を通過したと発表されています。
 米韓両軍は21日から合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」を行っており、演習に反発し対抗した形です。金正恩政権は大陸間弾道ミサイル(ICBM)などミサイル試射を繰り返していますが、金正恩政権下で日本上空を通過させたのは初めてのことになります。
 北朝鮮による弾道ミサイルの発射を受けて全国瞬時警報システム(Jアラート)が発令され、記者会見した菅義偉官房長官は「わが国の安全保障にこれまでにない深刻かつ重大な脅威だ」と北朝鮮を強く非難しました。また、安倍首相も「わが国を飛び越えてミサイルが発射されたのは、これまでにない重大な脅威だ」と強調し、国連安全保障理事会の緊急会合を開催するよう要請する意向を明らかにしました。

 とうとう、事態はここまで悪化してしまいました。対話を拒否して圧力一本やりで北朝鮮を屈服させようとしてきた安倍首相の方針が、ミサイル発射の抑止にとって全く無力だったからです。
 このような形で国民の不安を高める結果になったのは、歴代自民党政権の北朝鮮政策が失敗したからであり、安倍首相の対応が間違っていたからです。日朝関係の改善を最優先にして取り組んできていれば、事態は異なった形になり、ここまで危機が高まることはなかったかもしれません。
 かつて、小泉首相の訪朝と日朝平壌宣言、その後の拉致被害者5人の帰国、日朝国交正常化交渉という流れがありました。しかし、拉致問題最優先ということでこの流れをストップさせたために、結局は日朝間の国交正常化に向けての動きも拉致問題解決の可能性も閉ざしてしまことになりました。

 今また、対話を求める国際世論に背を向け、安倍首相は軍事力に頼る選択肢を排除せず、さらに圧力を強化すると言い続けています。しかし、このようなやり方ではミサイル発射を防げないことは、この間の経過がはっきりと示しています。
 今回の発射について、安倍首相は「レベルの異なる深刻な脅威だ」と発言しました。それなら、このような「脅威」を防ぐことができず、エスカレートさせてしまったことについての責任をどう考えているのでしょうか。
 そもそも、安保法制が審議されていた時、安倍首相はそれが必要な理由として日本周辺の安全保障環境の悪化を挙げ、安保法が成立して日米同盟の絆が強まれば抑止力が増大し、このような環境は改善されると請合っていたではありませんか。実際には、日米同盟の強化によって北朝鮮による敵視と警戒感が強まり、軍拡競争が激化して緊張感が高まり続けています。

 今回の例で明らかなように、北朝鮮のミサイルは7~8分で日本に到達します。これをミサイル防衛によって防ぐことは極めて困難です。
 アメリカとはちがって日本にとっての脅威は大陸間弾道弾(ICBM)ではなく、ノドンやスカッドなどの短距離・中距離のミサイルであり、それはすでに早くから配備されていました。このような脅威を防ぐための軍事的な手段は役に立たず、有効な防止策は政治的な手段だけです。
 軍事的抑止と経済制裁の強化には限界があり、そのような対抗措置以上に外交交渉を行う可能性を模索しなければなりません。米朝間の直接対話、南北間の交渉、日本を含む周辺諸国による6カ国協議の再開など、公式・非公式を問わず、戦争の危険性を低減させる可能性を追求するべきです。

 ところが、安倍首相は「対話のための対話は無意味だ」として交渉に反対してきました。相手側が軍事的な挑発だと受け取る可能性のある対応を自制し、交渉のテーブルに付きやすい環境を整備することこそ、何よりも今、求められていることではありませんか。
 一方が牽制し他方が反発するという形での軍事力による応酬が続く限り、このような対話は実現できません。前提条件を付けず、無条件での対話を実現するために、日本政府としても努力するべきです。
 これが憲法9条の求める道でもありますが、安倍首相にそのような意思はうかがえません。北朝鮮危機を解消し、日本周辺の安全保障環境を改善して戦争を防ぐためにも、安倍首相を退陣に追い込むことは急務となっています。

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7月7日(金) 唯一の戦争被爆国としての日本の名誉を救った日本共産党訪米団 [国際]

 政府ではなく政党が、日本という国の名誉を救うことがあるのです。国連で今日、採択されようとしている核兵器禁止条約についての対応がそうです。

 日本は唯一の戦争被爆国でありながら、その政府は条約の審議に参加しませんでした。空席の上に飾られた折り鶴は、このような態度を無言のうちに戒め咎めていたのではないでしょうか。
 しかし、この条約の審議に参加し、発言した政党がありました。その政党は日本共産党であり、7月7日の採決を見届けるために志位委員長をはじめとする代表団を国連本部に送っています。
 このことは、日本人の全てがこの条約の審議と採決に無関心だというわけではないということを国際社会に示したという点で大きな意味があります。唯一の戦争被爆国の政党として、日本共産党訪米団は日本の名誉を救ったのです。

 「核兵器なき世界」は人類が到達すべき目標であり、核兵器の保有や使用を初めて法的に禁ずる核兵器禁止条約が国連で採択されることは、その大きな一歩になります。しかし、日本政府はその歩みに加わる意思を示しませんでした。
 この条約の前文には「核兵器使用による被害者の受け入れがたい苦しみと被害に留意する」と明記され、「hibakusha」(被爆者)という表現が使われています。その被爆者が暮らす国の政府は、広島や長崎での惨劇を繰り返さないという国際社会の強い決意を共有することを拒んだのです。
 実効性に疑問があるとか、核保有国と非保有国との対立を助長するとかの屁理屈を付けて、今できる努力を放棄してしまいました。この条約は核廃絶を国際的な規範とするものですから、これを出発点に核廃絶に向けての実効性を高め、核保有国と非保有国との橋渡しをして保有国に核放棄を迫っていくのが、唯一の戦争被爆国である日本政府に期待されている役割ではないでしょうか。

 しかも、今回の条約での禁止の対象は開発や製造、保有や配備、移譲や受領、使用もしくは使用の威嚇など広範囲に及んでいます。これらに対する援助も禁じているという画期的なものです。
 ここで挙げられている「使用の威嚇」は、核を使うという脅しによって相手からの攻撃を抑制しようという「核抑止力」も否定しています。北朝鮮の核政策が禁止されているわけですから、その脅威にさらされている日本こそ真っ先に加わるべき条約ではありませんか。
 この条約の交渉には国連加盟国の6割を超える121カ国・地域が参加し、国際社会の声だという重みがあります。核兵器の先制使用をためらわせる抑止効果が期待されるにもかかわらず、「核の傘」に依存しているアメリカからの同調圧力に屈して日本政府は背を向けてしまいました。

 本日の『東京新聞』の「筆洗」には、「子供達よ/これが核攻撃から/あなたを守る方法です/ベルの音で先を争って誰よりも早く/机の下にもぐり/ひざまずいた姿勢で床に顔をつけ…」という詩が紹介されていました。詩は「これが時速何百マイルの速度で/飛んでくるガラスの破片やその他の物体から/あなたを守る方法です/そしてあなたの眼球を/溶かすこともできる白い閃光(せんこう)から/あなたを守る方法です」と続いているそうです。
 本当の「あなたを守る方法」とは何か。その答えが「核兵器禁止条約」だと、「筆洗」子は書いています。
 日本政府はその答えを拒み、北朝鮮のミサイルに対しても「子供達よ/これがミサイル攻撃から/あなたを守る方法です/屋外にいる場合には、直ちに近くの頑丈な建物や地下に避難し/近くに適当な建物等がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せ/屋内にいる場合には、できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動し…」と呼び掛けているのです。何という愚かなことでしょうか。

 本当に子どもたちを守る方法は核兵器禁止条約を実現し、核兵器を違法化して「全面廃絶」に進むことしかありません。そのためにできることは何でもするべきでしょう。
 発射されれば7~8分で着弾する北朝鮮のミサイルから身を守る方法も、外交的な手段と対話によって核を放棄させ、ミサイル開発をストップさせるしかありません。そのためには無条件で交渉のテーブルに付くべきです。
 核兵器禁止条約の採択は、そのような方向への国際的な世論と圧力を強めることになるでしょう。その席に日本政府の姿がないのはまことに残念です。

 その点でも、日本の政党である共産党の代表団が参加し立ち会っていることには大きな意味があります。その意味を理解して代表団を送ったのは共産党だけでした。
 結局、日本政府も他の政党も、この条約の歴史的な意義と重要性を理解できなかったということになります、他の国々や国連からの期待にも、国際社会において日本が占めるべき地位や名誉についても、全く無関心だということがまたもや明確になったと言うしかありません。

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5月16日(火) 9条改憲のために「朝鮮半島危機」を利用することは許されない [国際]


 「ギアを一気に高速に切り替えた印象です。野党が反対しようが、世論が反発しようが、衆参で改憲勢力が3分の2を保持しているうちに突っ込むことにしたのでしょう。ただ、国の根幹である憲法を変えるというのは重要な問題ですから、憲法改正の発議は野党第1党の民進党も巻き込んで行うことが自民党の基本路線だったはずです。安倍首相の進め方は、丁寧にやっていたのでは2020年に間に合わないから、野党なんて無視して、数の力で押し切ってしまえと言っているに等しい。おごり高ぶりの極みで、暴君そのものです」(政治学者の五十嵐仁氏)

 「戦後政治がこれまで積み上げてきた民主主義の手続きを平然と踏みにじり、独裁者気取りで、何でもかんでも数の力で押し切ってしまう。仮にも民主主義を標榜する国家で、ここまで首相の暴走がひどくなるものかと戦慄します。その強権手法を徹底批判するでもなく、まるで迎合するかのようなメディアはどうかしている。民主主義の基本理念も理解していない狂乱首相に高支持率を与え、甘やかしてきた国民の責任とも言えますが、権力の暴走は、自分たちがナメられているのだということを有権者は自覚しなければなりません」(五十嵐仁氏=前出)

 これは、「3日の憲法記念日に開かれた右派組織「日本会議」系の改憲派集会にビデオメッセージを寄せた安倍は、そこで9条改正に言及し、2020年に新憲法の施行を目指すと表明した」ことについての私のコメントです。昨日の夕刊紙『日刊ゲンダイ』に掲載されました。

 いよいよ、憲法9条をめぐって安倍首相との「ガチンコ勝負」が始まったということです。このような形で安倍首相が挑戦状をたたきつけたのは、いつまでたっても事態が動かないことへのいら立ちがあったからだと思われます。
 それは焦りの表れそだと言って良いでしょう。同時に、「今ならやれる」という見通しを持ったためでもあるでしょう。
 そう考えた理由の一つは国会と自民党内での「一強」体制です。国会内では衆参両院で改憲発議可能な3分の2の勢力を維持していますし、自民党内でも多少の抵抗はあっても結局は乗り切れると考えたからでしょう。

 もう一つの理由は、国民の反応です。色々な不祥事や森友学園問題などでの野党による追及があっても、内閣支持率は比較的安定しているからです。
 その背景には、「朝鮮半島危機」があります。北朝鮮による核開発とミサイル発射が続き、国民が不安を高めている状況を意図的に利用し、危機を煽り立てているのが安倍政権です。
 14日にも新型とみられるミサイルの発射実験が行われました。高度は2000キロを超えて約30分にわたって約800キロ飛行し、日本海に落下しています。

 これについて、首相官邸幹部は「日本に向けて普通に打てば8分程度で届いていた」と述べています。今回は角度を通常より高く打ち上げる「ロフテッド軌道」で飛距離を抑えたと見られていますが、このような軌道は落下速度が速く迎撃が難しいとされています。
 わずか8分で着弾し、高高度から落下して迎撃が困難なミサイルの技術開発が進んでいるというわけです。これによってミサイル防衛体制の見直しなどの議論が加速するという見方がありますが、そもそもミサイルによる迎撃などは不可能で日本に向けて発射されれば防ぐ手立てがないということを、なぜきちんと国民に伝えないのでしょうか。
 トランプ米大統領は「あらゆる選択肢」と言い、安倍首相はこれを評価し歓迎していますが、とんでもありません。日本にとっては、唯一の選択肢しかないのです。それは、外交交渉による対話です。

 岸田外相は韓国の外相と電話で協議し、北朝鮮とは対話のための対話では意味がなく、圧力をかけていく必要性などを確認したと報じられています。まったく愚かなことです。
 「対話のための対話」にすぎないのか、それとも具体的な成果に結びつく「対話」となるのか、それこそ「対話」してみなければ分からないではありませんか。まず、無条件で会い、相手の言い分を聞くことからしか「対話」の糸口は見いだせません。
 自民党の二階幹事長は、北朝鮮による弾道ミサイル発射への政府の対応について、「同じコメントをしているだけではなく、協議する必要がある」と苦言を呈したそうです。より有効な対応策を直ちに検討すべきとの考えを示したとされていますが、実は軍事的な対応策を含めた「あらゆる選択肢」を用意しているアメリカ政府の方が、このような努力を始めているようです。

 米朝間の極秘協議がノルウェーで開催されたと報じられました。久しぶりの直接「対話」が、水面下で実施されたというわけです。
 トランプ米大統領は内政面では失態続きで、弾劾される可能性さえささやかれるほどに追い込まれています。それを挽回するためには、外交で華々しい成果を上げなければなりません。
 オバマ前政権がなしえなかった外交的な成果を上げることができるのは、パレスチナ和平と朝鮮半島危機の解決です。トランプ米大統領は20日からサウジアラビアとイスラエルなど中東地域を訪問して新たなパレスチナ和平に向けての働きかけを行い、同時に水面下で米朝協議の可能性を探っているのではないかと思われます。

 この間、立て続けに北朝鮮がミサイルを発射しているのは、ある種の「駆け込み実験」なのかもしれません。今のうちにできるだけ実験を繰り返してデータを蓄積し、来るべき米朝協議での「取引カード」として役立てようとしているのではないでしょうか。
 それは新たな戦争への準備というよりも、いずれ受け入れざるを得ない「対話」に向けての準備なのではないでしょうか。核とミサイルを交渉のための「取引カード」としてできるだけ有効に活用したいという金正恩の意図が隠されているように見えます。
 このような見方は、あまりに楽観的で希望的な観測にすぎないかもしれません。しかし、このような可能性やシナリオこそが問題を解決して緊張を緩和する唯一の道であり、いたずらに危機を煽り立てるのではなく、それを現実のものとするためにできるだけ力を尽くすことがいま求められているのではないでしょうか。

 戦争になったらどうするかを考えるのは軍人です。しかし、政治家は戦争にならないためにどうするのかを考えなければなりません。
 改憲のための世論工作を意図して戦争の危機を煽り立てている安倍首相は、政治家としての立場も役割も忘れているというべきでしょう。外見は政治家でも頭の中は軍人そのもので、しかもアメリカの側からの発想しかできないこのような人に、日本の進路も国民の安全も任せるわけにはいきません。

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4月11日(火) 朝鮮半島危機の元凶はトランプ米大統領と安倍首相だ [国際]

 シリアに対する違法な「濡れ衣戦争」を仕掛けたトランプ米大統領は、北朝鮮に対しても軍事攻撃を行う構えを見せています。たとえ限定的であったとしても、もし北朝鮮に対する軍事攻撃が実施されれば、韓国や日本に対する報復攻撃は避けられません。
 多大の死傷者や物的被害が出ることは明らかです。この朝鮮半島危機はトランプ米大統領によって引き起こされたものであり、それを制止すべき安倍首相も追随の姿勢を示し、危機の抑止ではなく拡大に手を貸しています。

 シリア攻撃は北朝鮮に対する警告だとして、アメリカは原子力空母カール・ビンソンを西太平洋に派遣しました。現在、過去最大級の米韓合同軍事演習も実施されており、これがいつ「演習」から「実戦」に変わるかわからないという状況です。
 カール・ビンソンは世界最大の空母で、航空機を90機も搭載できます。艦隊を組む他の艦艇と合わせれば、一国の空軍並みの戦力となります。
 このような軍事力の自国周辺へ展開は北朝鮮にとっては大きな脅威となることは明らかです。北朝鮮が主権国家への侵害だと批判するのも当然です。

 これが警告や圧力にとどまるのかが、日本に住む我々にとっての最大の関心事です。一旦、朝鮮半島で戦端が開かれれば、過去の朝鮮戦争とは全く違った展開を示すことになるからです。
 攻撃への報復として、長距離砲がソウルに打ち込まれたり、弾道ミサイルが日本に飛来する事態も十分に考えらます。ソウルは北朝鮮との国境に近く大砲の射程距離に入っており、日本に対してもミサイルが発射されれば防ぐとは不可能です。
 先日実施された弾道ミサイルの発射実験を行ったのは、在日米軍への攻撃を担当する部隊であることが明らかにされています。朝鮮半島危機に対して日本も無関係でいることはできません。

 この危機をどのようにして避けるべきかが問題です。トランプ政権はオバマ政権の戦略的忍耐という政策を転換して、「あらゆる選択肢を考慮に入れる」と表明しています。
 しかし、この「選択肢」に「軍事的手段」はあっても「外交的手段」はありません。新たなオプションとして「戦争」が含まれていますが、「対話」は含まれていないのです。
 北朝鮮の核開発によって同じような北朝鮮攻撃の危機が高まった1994年には、カーター元大統領のピョンヤン訪問によって事態が打開されました。この時の経験を思い出し、アメリカは特使を派遣して北朝鮮との直接対話に乗り出すべきでしょう。

 トランプ大統領のシリア攻撃を支持し北朝鮮に対する恫喝を後押ししている安倍首相は、日本人の生命や安全よりもアメリカに対する追随を優先していると言わなければなりません。日本の最高責任者として許されない無責任な対応です。
 これほどに国民の戦争への不安を高めている責任は、トランプ大統領の強硬な態度とそれを批判することも制止することもなく、唯々諾々と追随している安倍首相にあります。日本に及びつつある危機を直視し、戦争ではなく対話をトランプ大統領に強く求めること以外に日本の安全を確保する道がないということを、安倍首相は分かっているのでしょうか。

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4月9日(日) トランプ米大統領によるシリア空爆の背景と意図 [国際]

 トランプ大統領がまたも暴走(逆走?)しました。シリアに対して巡航ミサイル59発を発射し、うち23発が目標に命中したと言われています。
 攻撃の理由はシリア政府軍が毒ガスを使用したのではないかという疑惑です。毒ガスなど化学兵器の使用は許されず、断固として糾弾しなければなりません。

 テレビでは、子供たちをふくむ市民が犠牲となり、治療を受けている映像が流れました。しかし、この化学兵器がシリア空軍の空爆によって用いられたという証拠は全くありません。
 政府軍は国連監視下で化学兵器の廃棄を進めてきましたから、このような兵器を持っていない可能性が高いと言えます。逆に、このような監視下にないヌスラ戦線(アルカイダ)など、現地を支配していた反政府勢力がこのような兵器を隠し持っていた可能性の方が高いのではないでしょうか。
 その兵器の貯蔵庫が空爆によって破壊され、それが流れ出して周辺の住民が被害を受けた可能性も否定できません。今後、国連の調査などで真相が解明される必要がありますが、一方的に政府軍の仕業と断定した今回のミサイル攻撃は、かつてイラクで始めた時の「濡れ衣戦争」を思い出させるような誤ちの繰り返しにほかなりません。

 トランプ大統領はどうしてこのような強硬手段に出たのでしょうか。その理由は軍産複合体に近い共和党の主流派や好戦的な世論の支持を回復するためだったと思われます。
 このところ、中東諸国からの入国制限は司法の抵抗によって阻まれ、国境の壁を建設するための予算は議会によって認められず、目玉政策であったオバマケアの廃止も断念に追い込まれ、世論の支持率は30%台に落ち込んでしまいました。それを逆転するためのチャンスを狙っていたトランプ大統領にとって、化学兵器の使用を口実にしたシリア攻撃は格好の手段だったということではないでしょうか。
 国連の決議もなく議会の決定もない今回の攻撃への批判もありますが、他方で好戦的な勢力による支持も高まっています。議会承認が遅れていた保守的な最高裁判事の信任は、この攻撃後一挙に決着してしまいました。

 しかし、このような攻撃によってシリア情勢を解決することはできません。ロシアとの対立を深め、アサド政権に対するアメリカの影響力を弱めるだけです。
 かつての、イラクでの「濡れ衣戦争」は泥沼化を深め、イスラム国の前身であるイラクの聖戦アルカイダというモンスターを生み出しました。今回も、シリアへのこれ以上の軍事介入は同様の混乱と泥沼化を引き起こすだけでしょう。
 アメリカはシリア情勢を打開する「出口戦略」を持っていません。今回の攻撃も、国務省の体制が整わず、国家安全保障会議(SNC)からバノンが追い出されるなど安全保障をめぐる体制と政策が未確立な「間隙」を突いたトランプ大統領の「暴走」であったように見えます。

 このようなトランプの「暴走」による「濡れ衣戦争」に対して、安倍首相は直ちに支持を表明しました。これも、かつてのイラクに対する「濡れ衣戦争」への日本の対応を彷彿とさせるような光景です。
 しかし、それがいかに大きな誤りであったかは、すでに歴史によって証明されています。今回も大きな間違いであったことが、いずれ歴史によって証明されるにちがいありません。
 今回のシリア攻撃は北朝鮮に対しても米国単独で攻撃に出る可能性を示して牽制するためのものであったと見られています。日本政府としてはこのような攻撃が北朝鮮に対しても行われないよう、慎重な対応が必要だったのではないでしょうか。

 いずれにしても、シリアへの空爆は「人殺しをやめさせるため」という名目で人殺しを行ったことは明白です。このようなデタラメな論理で武力攻撃を繰り返す愚をいつまで続けるつもりなのでしょうか。
 殺し合いは新たな殺し合いの原因を生み出すだけです。国際政治においてそれにストップをかける役割こそ、この日本が果たさなければならないというのが、憲法の平和主義が命ずるところなのではないでしょうか。

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