SSブログ

11月14日(金) 翁長勝利によって沖縄での新基地建設阻止・普天間基地撤去の実現を [論攷]

〔以下の論攷は、『日本科学者会議東京支部つうしん』No.565、2014年11月10日付に掲載されたものです。〕

 注目の沖縄県知事選挙が近づいてきた。沖縄と日本の命運がかかった選挙である。その最大の争点は、米軍普天間基地の代替とされる新基地を名護市辺野古に建設させるか、在日米軍基地の74%が集中している沖縄の現状を打開する展望を切り開けるか、軍事力依存の「積極的平和主義」や集団的自衛権の行使容認にノーを突きつけられるかという点にある。翁長雄志前那覇市長の当選によって、これらの争点に明確な審判を下さなければならない。
 1995年の米海兵隊員による少女暴行事件がきっかけとなって米軍基地反対運動や普天間基地返還要求運動が高まった。しかし、このときの日米首脳会談で橋本首相は「普天間返還」を求めず、先にそれを言い出したのはクリントン米大統領の方だった(春名幹男『秘密のファイル(下)』314頁)。その後の非公式協議でも、「彼らはわれわれ(=米軍)を沖縄から追い出したがらなかった」(モンデール元駐日大使)という。
 他方、基地の前方展開を最小にして機動力を生かすという海外駐留米軍のトランスフォーメーションによって、03年から米国政府は海外基地の整理縮小を進めてきた。米軍普天間基地の移設計画もその一環であった。それは必ずしも県内移設を前提とするものではなく、「中国の弾道ミサイルの発達で沖縄の米軍基地は脆弱になった」(米ハーバード大のジョセフ・ナイ教授)という指摘もある。軍事的な合理性から言えば、グアムやハワイなど、もっと遠くに移設した方が望ましいというわけだ。
 つまり、沖縄米軍基地の現状維持を望んでいるのは米政府ではなく日本政府の方だということになる。日本政府が米軍普天間基地の辺野古への代替基地新設を提案したのは、それが「抑止力」となって沖縄と日本の安全を高めるという幻想にとらわれているためである。同時に、「たとえば尖閣列島でなにかいざこざがあったときに、ほんとうに米軍が出てくるか」(新基地建設で合意した時の額賀元防衛庁長官)という懸念を払しょくするために、米軍基地を「人質」に取るという思惑もあるだろう。
 しかし、「抑止力」は思い込みにすぎない。沖縄の米軍基地の強化は中国の軍拡を抑制するのではなく、その誘因となってきた。軍事力によって相手を押さえつけようとすれば、それに対抗しようとする。相互の軍拡競争が生じ、緊張が高まり、偶発的衝突の可能性が生まれ、かえって安全は低下してしまう。これが、安全保障のパラドクスである。
 辺野古での新基地の建設は、沖縄の美しい海と豊かな環境を破壊し、周辺諸国との緊張を激化させ、地域とコミュニティを分断し、経済と産業の発展を阻害することになるだろう。このような愚行は直ちにやめなければならない。その絶好の機会が今回の沖縄県知事選挙なのである。そのチャンスを十分に生かすためにも、翁長新知事の誕生を望みたい。

nice!(2)  トラックバック(0) 

nice! 2

トラックバック 0