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11月25日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月25日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:30年ぶりの賃上げも破綻 いよいよ怪しくなってきた岸田経済与太話

 国民の多くはもうこれ以上、いよいよ怪しくなってきた岸田の経済与太話に付き合っている暇などありゃしないのだ。

 「ふがいない野党に目ぼしい『ポスト岸田』候補不在という惰性の政治にあぐらをかき、思い上がった態度がさすがに国民のハナにつき、岸田首相は今、重い代償を払わされています。今月の世論調査で内閣支持率は軒並み20%台に突入し、政務三役の醜聞辞任ドミノに加え、自民党5派閥のパー券収入不記載という新疑惑も噴出。岸田首相に上がり目ナシで、来月の支持率は10%台に沈んでもおかしくない。いい加減、自民党も『岸田おろし』に動かなければ国民は不幸になるばかりです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 国民は「岸田ノー」で心をひとつにし、政権ぶん投げの「Xデー」を近づける必要がある。

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11月23日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月23日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:国民の方がよっぽど見ている 「ポスト岸田」世論調査、「この中にいない」が最多の衝撃

 驚くのは、岸田首相の嫌われっぷりだ。「支持しない」が異常に高いのだ。朝日65%、毎日74%、読売62%となっている。日本人の場合、世論調査に「支持しない」と答えるのはよほどのことだ。強い意思の表れなのだろう。「その他」や「答えない」が少ないのだ。朝日新聞の調査では、「首相を信頼できない」も67%に達している。

 首相肝いりの「減税」も、その狙いが国民に見透かされている。「減税は国民の生活を考えたからか、それとも政権の人気取りを考えたからか」との朝日新聞の問いに対し、76%が「人気取り」と答えているのだ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「国民はよく見ていると思います。恐らく、岸田首相のことを、口先だけ、中身がないと思っているのだと思います。いまだに一国の総理として、何をやりたいのかを示さない。たとえ中身が空っぽでも国民に寄り添えばいいが、民意に対しても鈍感にみえる。これでは、支持しないが増えるのも当然です」

 内閣支持率は、底が割れると、下落に拍車がかかりやすい。すでに自民党支持層まで「岸田離れ」を起こしているだけになおさらだ。毎日新聞の調査では「早く辞めてほしい」が55%に達している。もう、この政権は長く持たないのではないか。


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11月19日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月19日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:なるほど辞任ドミノも納得だ スネ傷の集団と化した自民党の劣化

 この国会でも自民党議員は自分たちのボーナスを18万円もアップさせる法律をさっさと成立させてしまった。これだけ国民が物価高に苦しんでいるのだから、普通の神経をしていたら、自分たちだけ懐を温めるようなことはできないはずだ。

 世襲でない議員も、一度“特権階級”に入ると、あっという間に同じ感覚に染まってしまっている。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「自民党が特におかしくなったのは、10年前に安倍政権が誕生して以降です。自分たちは、何をやっても許される、という空気が広がってしまった。象徴的なのは、モリカケ桜問題です。党内からモラルが消え、権力の私物化が当たり前になってしまった。統計の改ざんが発覚しても、公文書が改ざんされても、選挙で勝てば『信を得た』と開き直り、反対する勢力には『こんな人たちに負けるわけにいかない』という態度だった。アベ政治の10年間で、自民党議員から謙虚さが消えてしまった。逆に、党内で『自民党、感じ悪いよね』と声を上げた石破元幹事長は徹底的に潰された。その結果、トンデモナイ議員ばかりになったということだと思います」

 いい加減、国民も自民党に「NO」を突きつけた方がいいのではないか。

 いつ政権交代が起きてもおかしくない状況になれば、さすがに党内に緊張感が生まれ、やりたい放題などできなくなるはずだ。

 「自民党の腐敗堕落、人材払底は行きつくところまで行ってしまった感があります。それもこれも、民意を甘く見ているということでしょう。かつての自民党内では幅広い意見が飛び交っていましたが、いまやスッカリ消えて、硬直的な組織になってしまった。この状況を変えられるのは、もはや国民だけでしょう。あらゆる選挙で『NO』を突きつけるべきだと思います」(五十嵐仁氏=前出)

 落ちるところまで落ちたこの集団に、政権担当能力などあるわけがない。国民はよーく考えて投票権を行使した方がいい。

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11月18日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月17日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:お気楽な黒田前総裁の日経連載 異次元緩和修正ならばこれだけの出血と覚悟が必要だ

■黒田に二重三重の罪

 黒田が始めた異次元緩和が10年を超える長期になった。その結果、「金利のない世界」に慣れてしまったこの国では、インフレ下で金利が上がるという当たり前の世界が想像できなくなっている。それはマーケットも同様だ。正直、日銀も金融当局も、緩和修正の先に何が起こるのか、本当のところは分からないのではないか。

 黒田の10年は、つくづく罪つくりだ。能天気な日経連載で「後は野となれ山となれ」で自慢話に明け暮れるA級戦犯は、この落とし前をどうつけるつもりなのか。聞いてみたいものだ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「黒田バズーカの異次元緩和については、最初から出口戦略が難しいといわれてきた。結局、思い描いたようなデフレ脱却はできず、それどころか悪いインフレを招き、失敗。出口が描けない難しさも実証されました。バズーカは不発ではなく、むしろ大暴発したようなもので、日本経済をぶっ壊してしまいました。いま国民生活を苦しめている物価高は、人為的に円安誘導した結果の人為的なインフレです。15日発表された7~9月期のGDPの実質成長率は、物価高の影響などで3四半期ぶりのマイナス成長となりました。実質賃金は18カ月連続のマイナスで、個人消費は買い控えが起きている。日本経済は黒田緩和の悪循環から抜け出せないでいる。黒田氏には二重三重の罪があります」

 日経連載の後半で反省の弁や謝罪の言葉はあるのか。ま、期待するだけ無駄だろう。

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11月15日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月15日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:上川外相も米国のいいなり 飛び交う「ポスト岸田」候補たちにはガックリだ

■菅政権末期と横並び

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「モラルや道徳を問われる文科政務官は不倫パパ活疑惑、法令を誰よりも順守しなければならない法務副大臣は選挙買収を疑われ、税の専門家でもある財務副大臣は納税逃れの常習犯。職務に関わるところで問題を抱えている人物をこれほど多く任命したのも、辞任ドミノを招いたのも前代未聞でしょう。よりによって、なぜそのポストに就けたのか。平然と引き受けた側もどうかしていますし、国会議員の資質があるのかも疑わしい。せめて不祥事発覚直後にスパッと切ればいいものを、世論の出方を見るまで判断ができないあたりが岸田首相の程度をよく表している。今の岸田政権は、橋本政権末期と麻生政権末期をドッキングしたような状態です。橋本元首相は恒久減税で右往左往し、参院選で惨敗して退陣した。麻生元首相は解散時期を逃し、みるみる求心力を失って政権交代を招いた。岸田首相も『増税メガネ』を打ち消そうと掲げた所得税などの減税でさらに疎まれ、年内解散を封じ込められた。この先、浮上の目があるとは思えません」

 内閣支持率はつるべ落とし。大手メディアの世論調査では軒並み下落し、政権運営の危険水域である2割台沈没が大半だ。NHKの調査(10~12日実施)でも、支持率は先月より7ポイント減の29%に下落。政権発足後初めて30%を割り込み、不支持率は8ポイント増の52%だった。いずれも死に体化していた菅前政権の末期と横並びだ。菅前首相はそれから1カ月足らずで退陣を表明。同じ光景を再び見ることになるのか。武田元総務相は先週収録のCS番組で「ビジョンと旗をきちっとあげないと、支持率は上がらない予感はしますね」と岸田に注文をつけ、「政権が弱く、支持率が下がった時は新たな候補者にアドバンテージが出やすいことがある」とチクリとやっていた。武田は岸田から自民党ナンバー2の座を追われた二階元幹事長の側近で、菅とも近い。

 上川は岸田よりマトモかもしれないが、4歳年上。今年古希を迎えた。第1次安倍政権、福田政権、第2次安倍政権、菅政権、そして岸田政権と入閣し通しなのは、オッサン社会での立ち回りのうまさと表裏一体。ついでに言えば、米国のポチでもある。米ハーバード大ケネディスクールで政治行政学修士号を取得し、米上院議員の政策スタッフを務めた米国通の国際派との評価もあるが、深刻化するパレスチナ情勢をめぐる動きは米国隷従そのものだ。

 「女性を前面に押し出せば危機を乗り越えられるなんていう発想は、女性蔑視の最たるもの。女性起用を人気取りの道具としか考えない自民らしい失礼千万ですよ」(五十嵐仁氏=前出)

 「ポスト岸田」で飛び交う面々のアホらしさ。そうして迷走首相が粘り腰で居座るのは、国民にとって絶望しか生まない。


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11月13日(月) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月12日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:不倫、選挙違反、税滞納…動物園のようになってきた岸田「増税メガネ」内閣

 税を滞納しても、いきなり差し押さえを受けるわけではない。それまでには督促状が来るし、普通は無理してでも支払う。4回も差し押さえされるなんてよほどのことだ。

 この問題は10日の衆院内閣委員会でも追及されたが、神田は「精査中」と繰り返すばかり。4回の差し押さえ以外にも滞納や督促はあったのか質問されても「精査中」で、「ない」と言い切れないあたり、常習犯と言っていい。

 そういう人物が、税を納めてもらう側の財務省の副大臣に座っている。これがブラックジョークでなくて何なのか。

 「この問題は、ただのスキャンダルではありません。税金滞納で何度も差し押さえされた財務副大臣、法律違反を犯す法務副大臣、道徳に反する文科政務官。それぞれ所管する役職に最もふさわしくない人物が就いていたわけです。岸田首相はいつも人事は適材適所と言いますが、どう考えても“不適材不適所”でしょう。泥棒に金庫番をさせるようなものです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 物価高の影響もあり、実質賃金は18カ月連続で下がり続けている。国民生活の厳しさをどこまで分かっているのか。経団連の十倉会長が出席した6日の経済財政諮問会議で、岸田は「私が先頭に立って賃上げを働きかけていく」と言っていたが、真っ先に自分の給与を上げてどうする。

 「政府側は増額分を国庫に返納する方針を強調していますが、だったら最初から政務三役は除外するなどの対応をすればよかった。国民の反発に慌てて返納と言い出すようでは、まったく世論が読めていません。この内閣は、すべてが状況任せで場当たりなのです。税金滞納の常態化が発覚した神田副大臣の問題にしても、不適格が明らかになった時点で岸田首相はすぐに更迭すべきだった。本人の説明に任せて様子見をしているのでしょうが、ズルズル決断できずにいたら、神田副大臣が居座っている間は野党だってこの問題を追及せざるを得ない。他にも議論すべきことはあるのに、決断できない岸田首相が国会審議を妨げることになります」(五十嵐仁氏=前出)


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11月12日(日) 「敵基地攻撃」能力の危険な企み―それは日本に何をもたらすか 実質改憲に突き進む岸田政権の狙いを暴く(その3) [論攷]

〔以下の論攷は『治安維持法と現代』No.46、2023年秋季号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 ソフトパワーこそ真の抑止力

 それではどのようにして緊張を緩和し戦争を防げば良いのでしょうか。軍拡による抑止力強化路線をやめて外交による信頼醸成路線に転換すれば良いのです。
 戦争への抑止力には軍事力などのハードパワーと外交・経済・観光などのソフトパワーがあります。力による威嚇で恐怖を強めるより話し合いや交流によって信頼感を高めるべきです。現に、米朝首脳会談や南北首脳会談の期間中、北朝鮮はミサイル発射を自制し核実験を中断しました。北朝鮮との国交回復のための交渉や6カ国協議をまた始めれば良いのです。
 軍事的抑止力は恐怖に依存し、相手によって左右され、対抗しての軍拡を生むというジレンマがあります。これに対して、どのような問題でも武力に訴えることなく話し合いで解決するというソフトパワーによる抑止力はそのようなジレンマはありません。
 国内問題への相互不干渉、紛争の平和的解決、武力による威嚇又は武力行使の放棄という9条を活かし、東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組みに学び、仮想敵を想定せずすべての国を迎え入れる包摂性、重層的な安全保障と対話の枠組み、徹底した対話による問題の解決を図るべきです。
 危機を高めないように周辺諸国との交流を深め、インバウンドを増やして仲良くすれば良いのです。周辺諸国の国民が自国政府に対して、日本を攻めるなんてとんでもない、戦争に巻き込むなと反対するような状況をつくれば、東アジアでの危機と緊張は解消するにちがいありません。

 むすび

 岸田政権の狙いは、危機を煽りながら政権基盤を安定させ、長期政権を築くことにあります。最大の問題は政権維持が自己目的化し、実現すべきビジョンや理念が欠落していることです。岸田首相は長期政権によって戦争国家を生み出そうとしているのでしょうか。
 外交・安全保障政策でも、常に受け身で能動的なビジョンがありません。能動的なのは日米同盟の強化と軍事大国路線の具体化、「同志国」との軍事協力の強化です。軍拡以外に解決策を見いだせない岸田首相に日本の未来を託すわけにはいきません。
 岸田首相には経済的な豊かさや成長に向けてのビジョンもありません。アベノミクスのツケをどう解消するのか、異次元金融緩和からの出口をどうするのか、1000兆円を超える国債をどう返していくのか、500兆円もの大企業の内部留保をどう活用するのか、物価高にあえぐ国民の生活をどう支えていくのか。全く展望が示されていないのです。
 人権と民主主義という点でも民意無視という点でも、岸田政権は暴走を続けています。G7の他の国とは異なって同性婚のルールなどはなく、性的少数者の人権を守らず選択的夫婦別姓には無関心で、奴隷貿易や侵略戦争、植民地支配など歴史の負の遺産に対する反省もしていません。マイナンバーカードとマイナ保険証、原発「処理水」の放出、インボイス制度の導入、万博とカジノの強行、沖縄・辺野古での新基地建設など、民意への逆行も目に余ります。
 こんな政権は変えるしかありません。政権を追い込んで解散・総選挙を勝ち取り、政権交代を実現することが必要です。市民と立憲野党の共闘を再建・再構築し、治安維持法が荒れ狂った戦前のような社会へと突き進む岸田政権を打倒するために、皆さんが先頭に立たれることを願ってやみません。

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11月11日(土) 「敵基地攻撃」能力の危険な企み―それは日本に何をもたらすか 実質改憲に突き進む岸田政権の狙いを暴く(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『治安維持法と現代』No.46、2023年秋季号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 実質改憲による戦後安保政策の大転換

 憲法の条文を変えることなく平和主義の大原則を実質的に転換する実質改憲が安保3文書によって具体化されました。しかし、実はそのような転換は2015年の平和安保法制(戦争法)の制定によってすでに実行されていたのです。
 このとき憲法解釈を変更し、それまで許されないとされてきた集団的自衛権の一部について行使を認め、日本が攻撃されていなくても存立危機事態と認められれば米軍と共に自衛隊が戦闘に加わることができるようになったからです。その意味で、基本は変わっていないという弁解の半分は正しいとも言えます。
 しかし、それは「枠組みを整えた」にすぎず、実行できないものでした。今回はこれを「実践面から大きく転換する」(国家安全保障戦略)ことで、集団的自衛権を実際に行使できるようにしようというのです。形としての実質改憲に内実を伴わせようというのが、岸田大軍拡の狙いなのです。
 その結果、9条による憲法上の制約や非軍事のタガが外されようとしています。米軍と共に戦える軍隊へと自衛隊を変貌させるための施策が次々と打ち出されていることに注意しなければなりません。
 アメリカとの関係では兵器の爆買いだけでなく、自衛隊の陸海空3軍による統合司令部の創設とハワイにある米インド太平洋軍司令部の横田への移転による実戦体制と連携の強化、統合防空ミサイル防衛(IAMD)での自衛隊と米軍の融合などが打ち出されています。自衛隊の強化では自主的な防衛費増や防衛財源確保法の制定、防衛産業支援のための新法の制定、自衛官の待遇改善、基地の地下化と強靭化、敵領土攻撃可能な長距離兵器の購入と開発、学術研究や空港・港湾の軍事利用などが打ち出されています。密室で検討中の殺傷兵器の輸出解禁もその一環です。
 国際的な枠組みでは、イギリスやイタリアとの戦闘機の共同開発や北大西洋条約機構(NATO)への接近、NATO加盟諸国との共同訓練の実施、日米印豪4か国のクワッドによる軍事協力の強化、日米韓3か国によるミニNATO化の動きなどもあります。まさに、「新しい戦前」を思わせるような準備が多方面で着々と進んでいるというべきでしょう。

 「台湾有事」を「日本有事」にしてはならない

 アメリカは為替レート(購買力平価)でのGDPで2016年に中国に追い抜かれ、論文数・研究者数・政府の研究予算額などでも中国の下です。経済や学術の面で優位性を失ったアメリカの危機感と焦りは大きく、その狙いは台頭する中国の頭を抑えて覇権を維持し、再びライバルとならないように日本の足を引っ張ることにあります。そのために、日本に防衛分担を強いて対中国包囲網に引きずり込もうとしているのです。
 このような軍事分担要請は中曽根康弘政権時代から強まり、その後の日米構造協議や年次改革要望書、湾岸戦争やイラク戦争などを通じて具体化されてきました。しかし、最近ではCIA長官、米国務長官や財務長官・商務長官の訪中など一定の修正がなされているようです。岸田首相が大軍拡に転じて「二階に上がったからもう良いだろう」と、梯子を外そうとしているように見えます。
 台湾との関係で中国は武力行使を排除していませんが、もし米軍との戦争が始まれば第3次世界大戦や核戦争にまで拡大する大きなリスクが生じます。米中の直接対決による「台湾有事」を発生させてはならず、もしそうなっても「日本有事」に連動させることは極力避けなければなりません。中国による台湾への武力行使は許されませんが、「一つの中国」を認める立場からすれば基本的には「国内」問題です。
 アメリカの台湾関係法は台湾防衛の軍事行動を大統領に認めていますが、義務ではなくオプション(選択)なのです。22年9月にバイデン大統領が台湾を防衛すると明言した直後、ホワイトハウスの報道官は「(防衛するかしないかはっきりさせない)あいまい戦略に変更なし」と訂正しました。軍事的な対応が前提されているわけではありません。
 中国は23年の全国人民代表大会で「平和」統一という用語を復活し、日本との間では「互いに脅威にならない」と共同声明などで何度も確認しています。中国も北朝鮮も「日本を攻める」とは言っていませんから、「仮想敵国」とするのは間違いです。台湾が攻撃されたからと言って、それが直ちに日本への攻撃を意味するわけではありません。
 「台湾有事」が勃発しても日本は参戦してはならず、「戦う決意」を迫ることも「日本有事」に連動させることも許されません。国際紛争に軍事的に関与しないというのが憲法の趣旨であり。戦争になれば日本全土が焦土となることは避けられません。しかも、そういう危機が高まった段階で、もう日本という国は立ち行かなくなります。
 実際には、日本は戦争できません。最大の貿易相手国は中国ですから、戦争の危機が高まったら貿易が途絶えてしまいます。食料や各種の製品、原材料なども来なくなってしまいます。中国を包囲し孤立させようとして経済安全保障を打ち出し、輸出の管理や規制を強めようとしていますが、それで困るのは日本の方なのです。

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11月10日(金) 「敵基地攻撃」能力の危険な企み―それは日本に何をもたらすか 実質改憲に突き進む岸田政権の狙いを暴く(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『治安維持法と現代』No.46、2023年秋季号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 虚偽と欺瞞に満ちた政策転換によって、日本は歴史的な岐路にさしかかることになりました。安保3文書によって打ち出された「敵基地攻撃」能力(「反撃」能力)の保有という新たな方針は、憲法9条に示された平和主義原則を実質的に転換するものです。
 岸田政権はアメリカの思惑を忖度しながらそれに取り入るために、日本の安全と東アジアの平和を脅かそうとしています。これからの日本は軍事的には強力でも経済的には貧しい「強兵貧国」への道を歩むことになるでしょう。
 その危険な企みの内容を明らかにし、今後の日本に何をもたらすことになるのかを国民に示していくことが、今ほど必要になっていることはありません。岸田首相は大軍拡・大増税の中身も狙いもひた隠しにし、国会での論戦から逃げ続けてきたのですから。

 「敵基地攻撃」能力保有論の虚妄と危険性

 まず指摘しなければならないのは、「敵基地攻撃」能力保有論の虚妄と危険性です。それがいかにウソとデタラメに満ちているか。数多くのウソの中でも、さしあたり以下の3点が重要です。
 第1に、「敵基地」攻撃というのはウソです。攻撃するのは「敵基地」だけではなく、「指揮統制機能等」を担う中枢部も攻撃対象になるとされているからです。日本でいえば、首相官邸のある永田町や主要官庁が存在する霞が関、防衛省のある市ヶ谷なども攻撃するということです。中国なら北京、北朝鮮なら平壌というところでしょうか。
 国境を越えた敵領土への攻撃を可能にするため、長距離巡航ミサイルや極超音速誘導弾などを開発する計画です。すぐには間に合わないため、トマホークという最新鋭の長距離巡航ミサイル「ブロックⅤ」をアメリカから400発も購入するとし、そのための予算2113億円も可決されています。
 第2に、「敵基地攻撃」能力というのは印象が良くないということで「反撃」能力と言い換えましたが、これもウソです。「反撃」というのは攻撃されてから行うものですが、実際には「着手」された段階での攻撃になるからです。
 問題は、この「着手」をどのような情報に基づいて誰がどう判断するのかという点にあります。日本はそのような能力を持っていません。トンキン湾事件をでっちあげてベトナム戦争に介入した過去のあるアメリカに頼るのでしょうか。外から見れば、先制攻撃にほかならない「着手」段階での攻撃を。
 第3に、軍事大国にはならないと約束していますが、これも大ウソです。日本は今でも世界第10位の防衛費を支出しており、トップ10に入っています。円安で順位を下げていますが、立派な軍事大国ではありませんか。
 今後5年間で43兆円の大軍拡ですが、東京新聞の試算では後年度負担金(ローン)を含めて60兆円になるとされています。そうなれば世界第3位ですから、トップ3に入ります。これを「軍事大国」ではないと弁明しても、どの国が納得するでしょうか。

 ウクライナ戦争が示す「専守防衛」の姿

 岸田首相は専守防衛の国是にはいささかも変わりがないと弁解していますが、これも大ウソです。今回の大軍拡の口実はウクライナ戦争ですが、岸田大軍拡が目指している戦争はウクライナでの戦争以上のものとなるからです。
 ウクライナが今戦っている戦争は典型的な「専守防衛」型の戦争で、基本的にはウクライナの自国領土とその周辺だけが戦場になっています。ゼレンスキー大統領がロシアの領土を攻撃しないことを約束したうえでアメリカやNATOから兵器の供与を受けていることに注目しなければなりません。
 アメリカはハイマースという長距離ロケット砲をウクライナに供与しましたが、わざわざ射程距離を短くしました。イギリスもロシア領土を攻撃しないとの約束のうえでストームシャドーという長距離巡行ミサイルを提供しています。
 F16戦闘機は飛行機ですからどこへでも飛んでいけますが、ロシアの領空には入らない約束で供与され、実際、領空には入っていません。ウクライナの首都・キーウがミサイルで攻撃されたからといって、ウクライナはモスクワをミサイル攻撃していません。正体不明の無人機(ドローン)による攻撃があるとはいえ、長距離砲で砲弾を撃ち込むことも巡航ミサイルやF16での爆撃も実施していません。
 ところが、岸田首相は「敵基地攻撃」のために相手国領土にミサイルを撃ち込むと言っており、そのための改良や装備の取得を進めようとしています。ウクライナ戦争こそが「専守防衛」だと誰も言わず、マスメディアも9条を持つ日本が専守防衛を踏み越えた戦争を戦おうとしていることも報道せず、評論家や解説者もこの事実を指摘していません。
 なぜ言わないのでしょうか。岸田大軍拡の危険性や間違いが明らかになってしまうからです。ウクライナ戦争の現実が9条に基づく防衛戦争の有効性と岸田大軍拡の危険性を雄弁に語っているのです。岸田首相は9条を踏みにじって専守防衛に反し、ウクライナがやっていない戦争をこれからやろうとしているのだということを、もっと多くの国民に知ってもらいたいものです。

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11月4日(土) 『サンデー毎日』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『サンデー毎日』11月12日号に掲載されたものです。〕

 愚策の岸田減税の正体見たり
 「定額減税4万円」6月に1回コッキリ…

 法政大名誉教授の五十嵐仁さん(政治学)は喝破する。
 「ツー・リトル・ツー・レイト(小さすぎる、遅すぎる)。国民の生活は物価高で困窮を極めているのに、4万円(定額所得減税)、7万円(非課税世帯への給付)程度のショボイ額では大変苦しい家計には焼け石に水。減税には法改正が必要なため、実施は来年6月になり足元の物価対策には効果がありません」
 今やるべき経済対策は何か。
 「本気で国民を救おうとしたら消費税減税でしょう。コロナ対策では100以上の国や地域で消費税や付加価値税の減税に踏み切っているのですから」(五十嵐さん)

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