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4月14日(日) TPPの暗い部屋に入る前に「罠」にはまってしまった安倍首相 [TPP]

 TPP 交渉への参加は、日本の産業と生活を破壊する沢山の「罠」が仕掛けられた暗い部屋に入るようなものです。「罠」にはまって抜け出せなくなる前に、すぐに飛び出すことを求めます。

 これは、TPP参加交渉からの即時脱退を求める要望書(全国大学教員有志)への賛同とともに送った私のコメントです。この署名への賛同者は、4月11日13時現在で861名+呼びかけ人17名=878名になったそうです。

 政府は12日、TPP交渉参加に向けての日米の事前協議が決着したと発表しました。これで、早ければ7月の交渉会合から参加できる見通しだといいます。
 「賽は投げられた」ということでしょうか。でも、途中での離脱は、極めて困難だとはいえまったく不可能ではありませんし、最終的には国会での批准が残ることになります。
 ずるずると不利な交渉に引き込まれる前に、できるだけ早く離脱するべきでしょう。交渉に参加する前からアメリカに押し切られ、懸念されていた問題点が次々と現実のものになってきているのですから……。

 昨日の『日経新聞』は、一面で「TPP,日米協議が決着 自動車は追加交渉」と客観的に報じていますが、3面では「急いだ合意 目立つ譲歩」「農業保護の代償に 日米、自動車交渉難航も」という記事を掲載しています。TPP交渉に前のめりで旗を振ってきた『日経新聞』でさえ、「結果次第ではTPP交渉参加への高い代償を払わされることにもなりかねない」と懸念を表明せざるを得ないものでした。
 昨日の『朝日新聞』も、一面で「TPP 車は大幅譲歩」と書き、「日米合意文書 農産品例外の余地」とバランスを取っていますが、「TPP 危うい国益」という見出しの下、「高い『入場料』を払わされることになる日本にとって、交渉に参加する意義はかすんでいる」と報じています。そして、農産物の例外扱いについても、一面の見出しの下とは裏腹に、次のように書いています。
 「しかし、米国にいる日本政府の関係者はこう打ちあける。『5品目など論外。1品目もとれる見通しは立っていない。聖域などまったくない』」と……。

 TPPに一貫して批判的な立場をとり続けてきた『東京新聞』は、もっとはっきりと書いています。「焦る首相 譲歩重ね」「自動車・保険 不利に」と……。
 このような「不利」な条件で「交渉に参加する意義はかすんでいる」にもかかわらず、なぜ安倍首相は合意してしまったのでしょうか。なぜ、焦って譲歩を重ねてしまったのでしょうか。その理由は、関係閣僚会議でのあいさつにあるとおり、「安全保障上の大きな意義がある」と考えているからです。
 日米同盟強化のために、日本の市場を売り渡すことになってもやむを得ないというのでしょう。安倍首相のイデオロギー的思考が持っている弱点にアメリカがつけ込んだ結果が、今回の合意だったのではないでしょうか。

 私は前掲のコメントで、「TPP交渉への参加は、日本の産業と生活を破壊する沢山の『罠』が仕掛けられた暗い部屋に入るようなもの」だと指摘しました。今回の日米事前交渉での合意は、このような部屋に入る前に、アメリカが仕掛けた「罠」にはまってしまったようなものです。
 その『罠』から、はたして抜け出せるのでしょうか。このさき、本格的な交渉会合への参加が許されたとしても、そこに仕掛けられた『罠』を日本政府は回避することができるのでしょうか。

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3月30日(土) TPPに反対する研究者アピール署名への賛同を呼びかけます [TPP]

 私が加入しているメーリングリストを通じて、下記のような呼びかけが送られてきました。TPPに反対する研究者のアピールです。
 その趣旨には全面的に賛同しますので、ここに紹介するとともに、多くの研究者が署名されることを呼びかけたいと思います。

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内閣総理大臣
安倍晋三様
TPP参加交渉からの即時脱退を求める要望書
全国大学教員有志

 自民党は昨年12月の総選挙で①聖域なき関税撤廃を前提としない、のほか、②自動車等の数値目標は受け入れない、③国民皆保険制度を守る、④食の安全安心の基準を守る、⑤国の主権を損なうISD条項は合意しない、⑥政府調達・金融サービス等は我が国の特性をふまえる、が確保されない限りTPP交渉に参加しないと公約しました。にもかかわらず、安倍首相は2月22日の日米首脳会談で農産物重要品目保護に何らの担保も得られていないのに①が確認されたと強弁し、さらに②~⑥は「公約ではない」、「参加の判断基準ではなく参加後の実現目標だ」というレトリックを用いて、3月15日に交渉参加を正式に表明しました。このような公約改ざんがわずか3ヶ月で行なわれるのでは、議会制民主主義は成り立ちません。
 また参加表明にあたって「国民に丁寧に情報提供していくことを約束する」「新たなルールづくりをリードしていくことができる」旨強調していますが、いずれも非現実的です。まずTPP交渉が完全に秘密裏に行なわれ、国民が情報アクセスできないことが交渉国間で確立されたルールとなっています。また昨年カナダとメキシコが参加承諾を受けるにあたって(ア)すでに既存交渉国で合意された事項は内容すら見ることなしに丸呑みする、(イ)参加後も交渉事項の追加や削除の権限はない、という念書にサインさせられたことが明らかになっており、(ウ)参加後に既存交渉国が合意する内容についても拒否権がないとの指摘すらあることからして、今から日本が参加しても極度に差別的な取り扱いを受けて対等な「ルールづくり」などに加われない、逆にできあがったルールの丸呑みになる公算が大です。
 政府はわが国がTPPに参加した場合の日本経済全体の効果はGDPべ-スでは0.66%(3.2兆円)の増加になるとの「試算」を示しました。しかし農林水産業に及ぼす影響額(▲3.0兆円)は、今でも異常に低い日本の食料自給率をさらに押し下げ、農林水産業者の営業と生活はもちろん、関連する地域経済に壊滅的な打撃を与えることを意味します。
 さらにTPPへの参加は、「試算」で全く考慮されていない非関税分野においても重大な脅威をはらんでいます。既存交渉参加国間では既に、食品の原産地表示への自己証明制度の導入、貿易手続の規制緩和、各国法令・国内規制を策定する過程へ外国企業の利害関係者を参加させる内国民待遇の採用、各国の著作権や医薬品・医療技術までを含む特許権のアメリカ水準への強化、そうした協定ルールに抵触したとして外国企業が投資受入国政府を当該国の司法制度を超越していわば治外法権的に訴える権利を付与する投資家対国家紛争解決(ISD) 条項の導入などが協議されています。これらの事項は、いずれもわが国の経済自主権、国民の健康等を侵害する恐れをはらむものです。これでは「平成の不平等条約」といっても過言ではありません。こうした事態が見込まれるTPP交渉にわが国が参加するのは、国民不在の「国益」=「日米同盟の絆」の証しにはなっても、守られるべき国民益を毀損することは間違いありません。
 以上から、私たちは安倍首相と日本政府に対し、TPP交渉への参加表明を撤回し、事前交渉をすみやかに中止することを要請します。そして、私たちは今後、国民各層、各団体と連帯して、日本政府にTPP交渉から脱退するよう求める運動を続ける意思を共有していることをお伝えします。
以上

呼びかけ人(五十音順)2013年3月26日現在
磯田 宏(九州大学准教授/農業政策論・アメリカ農業論)
伊藤 誠(東京大学名誉教授/理論経済学)
大西 広(慶応義塾大学教授/理論経済学)
岡田知弘(京都大学教授/地域経済学)
金子 勝(慶応義塾大学教授/財政学・地方財政論)
志水紀代子(追手門学院大学名誉教授/(哲学)
鈴木宣弘(東京大学教授/農学国際)
醍醐 聰(東京大学名誉教授/財務会計論)
萩原伸次郎(横浜国立大学教授/アメリカ経済論)
日野秀逸(東北大学名誉教授/福祉経済論・医療政策論)
渡辺 治(一橋大学名誉教授/政治学・憲法学)
********
★全国の大学教員・名誉教授・元教員の皆様
 私たちは先日、日本政府が交渉に参加することを表明したTPPの危険な本質を多
くの国民に伝えるとともに、この4月上旬に、安倍首相と日本政府に対し、直ちに
交渉から脱退することを求める添付(*上記)のような申し入れをすることにしま
した。  
 つきましては、全国の大学教員の皆さまに賛同を呼びかけ、賛同者名簿を添えて
安倍首相と政府に申し入れをするとともに、記者会見でこの申し入れを広く国民に
アピールしたいと考えています。
 この申し入れにご賛同いただける方は下記にご記入の上、4月8日(月)までに、
tpp2013@mbr.nifty.com へ送信くださるよう、お願いいたします。
------------------------------------------------------
 お名前
 所属と専攻(○○大学教授・△△学専攻)  
 メール・アドレス  
 メッセージ(100字以内でお願いします。)
------------------------------------------------------
注:①お名前・所属はそのまま公表させていただきます。 
  ②メッセージも原文のまま公表させていただく場合がありますので、ご了承ください。
  ③このメールをお知り合いの大学教員・名誉教授・元教員に拡散していただけましたら幸いです
================================

 私もこの呼びかけに応えて賛同署名をし、以下のようなメッセージを送りました。

 TPP交渉への参加は、日本の産業と生活を破壊する沢山の「罠」が仕掛けられた暗い部屋に入るようなものです。「罠」にはまって抜け出せなくなる前に、すぐに飛び出すことを求めます。

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3月23日(土) 主権侵害条約「TPP」が振りまく「毒素」の怖さとは何か [TPP]

 国会審議などを通じて、ようやくTPPというものの正体が分かりつつあるようです。依然としておぼろげではありますが……。

 それもそうでしょう。基本的には秘密交渉で、交渉の進展具合も、どのよう条件があるのかも、何が決まったかも、正確には分からないのですから……。
 交渉が終わってTPP条約が締結されてからも、その内容は5年間秘匿することが義務付けられているというのですから、秘密主義は決まった後でも貫かれているということでしょう。
 何があるか分からない真っ暗な部屋に入ろうとしている。そして、一度入ったら、もう出られない。それが、TPP交渉という闇の世界なのです。

 その闇の中には、危険な「罠」がいくつも隠されているのではないでしょうか。その「罠」の一つで最も良く知られているのがISD条項で、最近ではISDSと書かれることも多いものですが、TPP条約の代表的な「毒素」です。
 「ISDS条項」は投資家保護条項(Investor-State Dispute Settlement)のことで、ある国家が自国の公共の利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターなどの第三者機関に提訴できるというもので、地方自治体の規制なども訴訟の対象になる可能性があります。それに「第三者機関」とはいっても、この「紛争解決センター」はワシントンにあってアメリカ支配下の世界銀行傘下で、審判はアメリカ寄りですから、アメリカの思うままです。
 現に、これまでの46件の提訴のうち31件が米国企業の原告で、米政府が負けたことは一度もないと言われています。しかも、この審理は非公開で、不服があっても上訴することができません。

 先ほど「『罠』の一つ」と書きましたが、「毒素条項」そのものは一つではありません。以下のような「毒素条項」もあります。
 たとえば、「ラチェット条項(Ratchet条項)」は、貿易などの条件を一たん合意したら、後でどのようなことが発生してもその条件は変更できないというものです。先発国がすでに合意した条件については、後から入った国は異議を申し立てられず、ただそれを受け入れるだけというわけです。
 「NVC条項(Non-Violation Complaint条項)」というものもあります。これは「非違反提訴」のことで、米国企業が日本で期待した利益を得られなかった場合、TPPに違反していなくてもアメリカ政府が米国企業に代わって国際機関に日本を提訴できるというものです。
 さらに、「スナップバック(Snap-back)条項」はアメリカ側が相手国の違反やアメリカに深刻な影響があると判断した場合、関税撤廃を反故にできるというものです。
 「未来の最恵国待遇(Future most-favored-nation treatment)」という条項もあります。将来、日本が他の国にアメリカより条件の良い最恵国待遇を与えた場合、自動的にその待遇はアメリカにも適用されるというものです。

 このほか、「ネガティブリスト方式」というものもあります。これは、明示された「非開放分野」以外は全てが開放されるというものです。
 規制必要性の立証責任と開放の追加措置というものもあります。日本が規制の必要性を立証できない場合、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる、例えば当初米をネガティブリストに加えていても、その規制が必要であることを立証できない場合、無条件で開放させられるというものです。
 これらの条項によって、加盟国の市場は無理やりこじ開けられることでしょう。少しでも邪魔なものがあれば次々と訴訟を起こされ、アメリカ寄り(というより多国籍企業寄り)の「第三者機関」によって莫大な賠償金を支払わされます。

 政府の試算では、関税撤廃が求められている農業分野だけしか対象になっていない点が批判されました。非関税障壁の撤廃が求められている農業以外の分野での影響と損害は、見方によっては、もっと大きなものかもしれません。
 というのは、医療の市場化が求められ、公的医療の給付範囲は縮小し、医療格差は拡大するでしょうし、国民階保険崩壊の危機が訪れることになるからです。また、知的所有権の変更によって、著作権などはアメリカ企業に有利に変えられるでしょう。
 公契約や公共事業への参入という点でも、外資が安く入札して日本の建設業者は壊滅的打撃を受ける可能性があります。地方の土建業者にとっては死活問題になります。
 外国の農業法人が進出し、遺伝子組み換え食品や今まで認められなかった農薬なども流れ込んでくるでしょう。この点では、アメリカの遺伝子組み換え食物や種子などを取り扱うモンサントと住友化学(会長は米倉経団連会長)との親密な関係も注目されます。

 遺伝子組み換え食品などの表示方法の変更や食品関連の規制撤廃によって、安い米国製品が売り込まれ、病気や病人が増大するでしょう。こうして、医療に対する需要が高まり、混合診療の解禁や新薬・高い薬の売り込みなどを通じて外国の医療ビジネスにとって大きなチャンスが生まれますが、国民にとっては医療費が増大し、自己負担が拡大することになります。
 郵政・金融・保険などの分野にも、米国企業が参入してくることになります。差し当たり、郵貯・かんぽの資金267兆円が標的となることでしょう。
 こうして、国民の健康と安全が脅かされ、日本はアメリカの医療資本や保険ビジネスの草刈場となります。「病気の沙汰も金次第」という、アメリカ映画「シッコ」のような未来が、この日本に訪れるにちがいありません。

 とはいえ、TPP条約の内容については、おぼろげにその姿が分かるだけで、すべては暗い闇に包まれたままです。世論調査ではTPPへの支持率が高いようですが、このような恐ろしい内容が知らされていないからだと思います。
 以上に見たような、主権侵害条約としてのTPPのおぞましい全貌が明らかになれば、このような世論も大きく変わることでしょう。でも、その時になってからではもう遅い、ということにならなければよいのですが……。

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3月14日(木) 「日本を取り戻す」のではなく「日本を売り渡す」自民党と安倍首相 [TPP]

 「日本を取り戻す」と書かれていた総選挙での自民党のポスター。よくよく見たら、「日本を売り渡す」と書いてあった、というのは冗談です。
 でも、TPP参加をめぐる自民党の動向を見ていると、こう言いたくなります。日本の市場を食料メジャーや多国籍企業に売り渡そうとしているのではないかと……。

 安倍首相は、明日にでもTPP交渉への参加を正式に表明すると見られています。それに向けて、自民党の環太平洋連携協定(TPP)対策委員会は決議を上げましたが、もはや交渉参加を前提とした条件闘争に転換してしまいました。
 総選挙での公約違反ではないかとの批判があります。何を今さら、という気がします。
 自民党という政党は、そういう嘘つき、インチキ政党だということがまだ分からないのでしょうか。これまでも何度も嘘をつかれ、騙されてきたというのに……。

 TPP交渉への参加に反対する、という自民党の公約を信じて投票した人も沢山いたでしょう。そして、今、「公約違反だ」と抗議している人も……。
 まだ、懲りなかったのか、と言いたくなります。自民党がどのような約束をしようとも、アメリカの言うことには抵抗できない政党だということは、これまで何度も見てきたはずではありませんか。
 今度も、また、騙されることになるでしょう。これまで何度も飲まされてきた煮え湯の、新たなお代わりが差し出されるだけです。

 そもそも、TPPへの参加は日本にとってどのようなメリットがあるのかがはっきりしません。中国や韓国が参加しない協定によってアジアの成長力を取り込むなどというのは幻想ですし、関税・非関税障壁の撤廃によって安い商品やサービスが入ってくれば物価が下がってデフレになるでしょう。
 自民党の対策委員会が上げた決議では、コメなど主要5品目について例外とすることを求めていますが、このようなことが不可能であることは、この間の報道で明らかになっています。自動車は例外とすることをアメリカと約束しましたから、輸出にとってもメリットはほとんどなくなりました。
 そもそも、アメリカがTPP参加を決めたのは、日本市場をこじ開ける手段として利用可能だと考えたからです。それは、あくまでもアメリカにとってのメリットであって、日本にとってはデメリット以外の何ものでもありません。

 これは、「国を売る」ものではありませんか。安倍首相は、米軍の手足として自衛隊を提供するとともに、アメリカの多国籍企業に日本市場を売り渡そうとしています。
 「対米従属」が骨身にまで染み込んでしまった自民党を政権に復帰させたツケが回ってこようとしています。「公約違反」なのはその通りであり、そのことは厳しく批判されなければなリませんが、そもそも、このような嘘つき政党を政権に復帰させてしまったのが間違いなのです。

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3月6日(水) TPPに参加すれば食の欧米化が進み日本人は短命化することになるだろう [TPP]

 「やっぱりな」と思いました。昨晩放映されたNHKクローズアップ現代の「沖縄長寿社会の危機 短命化する日本?」を見た感想です。

 この番組は、「沖縄長寿社会の危機」を取り上げていました。長寿日本一で、世界的にも長寿の島として知られていた沖縄がその地位を長野県に明け渡したことが明らかにされていました。
 しかも、65歳を境に、若くなるほど死亡率が高くなるというのです。それは、50年代における食生活の劇的な変化に深く関わっていることも示されました。
 現在、65歳になる人々の成長期に食の欧米化が進み、沖縄の伝統食から高脂肪食への転換がなされたためだと言うのです。そのために、内臓脂肪の蓄積や肥満が増え、メタボ体質となった若者の死亡率が急増しています。

 ここで思い出されるのが、3月3日のブログ「コメ中心の日本の農業はすでにアメリカによって破壊されてきたことを知るべきだ」で書いた日本人の食生活の変化です。本土では、コメ中心の食事からパン食への変化が給食などを通じて生じました。
 恐らく、同じような変化は沖縄でも生じていたでしょう。それだけでなく、沖縄の伝統的な食事から欧米風の食事への転換は、もう一つの要因によってさらに強められたのではないでしょうか。、
 NHKの番組ではひと言も触れられませんでしたが、それは米軍基地の存在です。アメリカ風の肉中心の食事も、米軍の強い影響の下に沖縄の伝統的な食生活を変えてしまったのではないでしょうか。

 沖縄の伝統食も日本伝統の和食も、このような脂肪の取りすぎや肥満を防止するうえで大いに効果があること、健康に良いことが知られるようになりました。世界的な和食ブームは、そのことを裏付けています。
 それなのに、アメリカからの直接的間接的な圧力を受けて、コメからパンへ、和食から洋食へと、食生活の転換が図られてきました。その結果、コメ中心の日本の農業が衰退しただけでなく、「長寿崩壊の危機」が訪れ、「短命化する日本」への変貌が危惧されるようになってきたのです。
 今問題とされているTPPは、このような食のあり方にも大きな影響を与えることでしょう。それも、肉や乳製品などの輸入を促進して欧米化を進める方向で……。

 TPPに参加すれば、食品の安全基準の緩和や遺伝子組み換え食品の流入など、食の安全が脅かされるのではないかという心配があり、日本人の健康は大きな危険にさらされることになります。それに加えて、外国からの安くていかがわしい食品の流入と食の欧米化が進行することによる健康リスクの増大も無視できないということを、この番組は教えてくれているのではないでしょうか。

 なお、この番組では、沖縄の食生活を変えるうえで大きな意味があったであろう過去における米軍基地の存在、今後大きな意味を持つであろう将来におけるTPPの影響には何も触れていませんでした。ここに、NHKの限界があると言わなければなりません。

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3月3日(日) コメを中核とする日本の農業はすでにアメリカによって破壊されてきたことを知るべきだ [TPP]

 TPP交渉をめぐって、国内の反対論が強まってきました。自民党は交渉への参加反対を約束して政権に復帰したのに、政権についた途端にそれを放り投げようとしているわけですから、それも当然でしょう。
 消費税の引き上げを強く批判していた野田首相が、首相になった途端に消費増税の旗を振り出したことと経過が似ています。おそらく、その結果も似たようなものになるのではないでしょうか。

 JA全中の萬歳章会長らJAグループトップは3月1日、安倍首相、林農相と自民、公明両党に前日に決めた「TPP交渉参加におけるJAグループの考え方に対する申し入れ」書を手渡し、改めて交渉参加への反対を訴えました。この申し入れ文書で強調していることは、日米共同声明は「TPPの特徴である『聖域なき関税撤廃』を前提にしたものとしか理解できない」こと、「重要品目の除外が担保されていない」ことだそうです。
 それはそうでしょう。すでに、このブログでも指摘したように、共同声明を普通に読めば、「一方では交渉の内容には前提があること、しかし他方では、それへの参加には前提がないことを確認したもの」にすぎないのですから……。
 「交渉の内容」については、あくまでも「TPPの特徴である『聖域なき関税撤廃』を前提にしたもの」であることに変更はありません。コメなどの「重要品目の除外が担保されていない」ことは、誰が読んでも自明のことです。

 TPPは、コメはもちろん農業だけを対象としたものではありません。また、関税だけではなく、非関税障壁と言われる様々な商慣行や規制の撤廃をも目指しています。
 したがって、その影響は広範囲に及び、食の供給や安全、流通やサービスのあり方、金融や保険、土木・建設や公共事業などの幅広い分野へのアメリカ企業の参入を可能とすることになるでしょう。その中でも、農業、とりわけコメ作りは、壊滅的な打撃を受けることになるだろうと思われます。
 というより、すでにアメリカの政策によってコメ作りはこれまでも大きな困難を抱え込まされてきました。今回のTPPへの参加は、このようなコメ作りを中核とした日本農業破壊の「第2の波」にほかならないものなのです。

 それでは、「第1の波」は、いつ頃、どのようにして襲ってきたのでしょうか。それは、終戦直後から、食糧危機を救済するという名目で、あるいは日本人にパン食を押しつけるという形で、大々的に展開されました。
 その目的は、増産体制に入った途端に戦争が終了し、その結果、大量に余ってしまったアメリカ国内における余剰小麦の売り込みを図ることにありました。同時に、日本人の食生活を洋風に変え、小麦や乳製品、牛肉などの継続的な販路として日本市場を開拓することにありました。
 そのための決定的かつ重要な手段になったのが学校給食です。私と同年代の人々は、子ども時代にまずいコッペパンと脱脂粉乳の給食を食べたことを覚えていることでしょう。このような食事の方が米食よりも栄養価があって健康に良いという宣伝もなされ、その結果、急速にパン食が普及し、今日ではパンにコーヒーや牛乳という朝食が一般的になりました。

 こうして、日本人の食生活が変容してしまったのです。ご飯を中心に味噌汁と副菜で構成されてきた日本型食生活を送る家庭が少なくなりつつあるわけです。
 その結果、コメに対する需要は漸減し、米作農業は次第に衰退していきます。もちろん、コメ需要の減少には様々な要因が考えられますが、日本人の食生活の変容がその一因であることは明らかです。
 また、コメを食べなくなった背景や要因も給食の影響だけではないでしょう。食生活の多様化や時間の節約、栄養面での誤解などもあるかもしれませんが、とりわけ団塊の世代にとって、子ども時代に受けた影響の意味は小さくないように思われます。

 そして、とうとう2011年にコメとパンの一世帯あたりの支出額が逆転し、コメの消費額がパンに追い越されてしまいました。コメ衰退に向けての「第1の波」は、ここまで大きな波紋を呼ぶに至ったということができるでしょう。
 そして、そこに今、襲いかかろうとしているのが、TPPという「第2の波」なのです。すでに力を弱めているコメ作り農家に、このような大波に耐えられる「体力」が残っているでしょうか。
 もし、コメの関税が撤廃され、安い輸入米が増えれば、国産米に対する需要は更に減少するでしょう。一部の大規模農家や銘柄米は輸出などで生き残ることができても、兼業で細々と生産しているほとんどのコメ農家が立ち行かなくなることは明らかです。

 世界の「日本食ブーム」に見られるように、日本型食生活はかえって健康に良いものでした。それが洋風化することによって、日本人の健康も農業も、食料の自給や安定的な供給さえも脅かされるような結果になっています。
 米作の衰退は、それを中核とする日本の農業、水田による豊かな環境、美しい景観や水資源、国土の保全、それと深い関わりを持つ日本の伝統行事や祭り、文化などの破壊をもたらし、日本という国のかたちを変えることにも繋がっていきます。
 それで良いのでしょうか。TPP交渉参加への賛否は、このような重大な問いに対する賛否も含まれているのだということを知る必要があるでしょう。

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2月28日(木) 日本市場をこじ開けようとし続けてきたアメリカの執念 [TPP]

 今回のTPP交渉への参加問題は、過去においてアメリカの市場開放圧力に日本が屈服してきた歴史の最終段階を意味しています。そして、ここでも安倍首相はアメリカの圧力に屈服しようとしているようです。

 このような歴史は、1965年以降、日米間の貿易収支が逆転してアメリカの対日貿易が恒常的に赤字になったことから始まります。日本がOECDに加盟し、GNPで西独を抜いて西側世界第2位となった68年が一つの転換点でした。
 その象徴的な出来事が日米繊維摩擦の発生です。結局、「糸と縄の交換」によって沖縄の施政権返還のために繊維問題では譲歩し、日本側が自主規制することで決着します。
 こうして、1972年に日米繊維協定(繊維製品)が締結され、沖縄の施政権が返還されました。当時、通産相であった田中角栄は、この問題を「解決」することによって首相への道を歩み始めますが、アメリカへの屈服によって日本の繊維産業は衰退していくことになります。

 その後、80年代から90年代にかけて、アメリカの対抗相手と競争条件の変化が生じ、日本に対する圧力は増大していきます。日本は高度経済成長の結果、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われるほどの力を得て台頭していったからです。
 ソ連・東欧の崩壊によってアメリカの軍事的ライバルとしてのソ連は消滅し、東側諸国や途上国の市場競争への参入によってグローバル化が進展します。このようななかで、1985年にはアメリカの対日赤字が500億ドルに達し、日本への市場開放圧力は一段と強まります。
 投資・金融・サービス市場の閉鎖性によってアメリカ企業が参入しにくいことが批判され、自動車、家電、半導体・農産物(米・牛肉・オレンジ)がターゲットとされますが、事実上ほとんどの分野で摩擦が生じます。日本に対する自由化圧力が強まるなかで、最終的には、コメの部分的開放、牛肉とオレンジの自由化が実行されました。

 それでも、アメリカからの圧力は止みません。それどころか、市場開放要求はさらに多角化・系統化することになります。
 89年以後に実施された日米構造協議(構造障壁イニシアチブ)では「政策実行計画案」として240項目の対日要求リストが示され、93年からの「日米包括経済協議」では、商習慣・流通構造などの国のあり方や文化にまで範囲を広げた協議がなされます。この間、日本の市場開放に向けて厳しい要求がなされたことを記憶している方もおられるでしょう。
 さらに、94年以後は、年次改革要望書(「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書」)が毎年日本に突きつけられるようになり、97年から2001年の日米規制緩和対話で6分野(電気通信、エネルギー、規制緩和・競争政策WG等)についての共同報告書が出されます。これは、2001~09年の規制改革及び競争政策イニシアティブや投資イニシアチブに受け継がれ、「成長のための日米経済パートナーシップ」の一部として、日米両国の投資環境の改善のための対話を行う枠組みの形成が目指されました。
 2010年に合意された日米経済調和対話の分野は、貿易、高速鉄道、稀少資源に関する協力、知的財産権、弁護士、医療、保険、通信、郵政、農業、相手国の規制などに及んでいます。その背景には、アメリカの対日赤字が膨らむ要因は日本の市場の閉鎖性(非関税障壁)にあるとの認識がありますが、これは今回のTPPにも共通しています。

 このような形で、一貫してアメリカは対日市場開放要求を続けてきました。日本政府はこれに押されて部分的な市場開放を認めてきましたが、完全に屈服したわけではありません。
 特にコメと「非関税障壁」とされる日本独特の仕組みや商慣行については維持し続けてきました。その障害を突破し、日本市場をこじ開けてアメリカ企業の全面的な参入を可能とするために目を付けたのが、環太平洋戦略的経済連携協定(Trans‐Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)です。
 これは元々、06年発効のシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイによる自由貿易協定(FTA)でした。08年のリーマンショック後、アメリカが参入を表明し、オーストラリアやベトナム、カナダ、メキシコも参加するなどして、現在は新たな枠組み作りに向けて交渉中です。
 モノ、サービス、政府調達や知的財産権なども対象とする包括的FTAで、農業、食糧、医療、保険、公共事業、法律、金融・投資、工業製品、サービスなどの幅広い分野が対象となり、原則として15年までにほぼ100%の関税撤廃を目指しています。もし日本が参加すれば、GDP比ではアメリカと日本で90%以上を占めることになりますから、実質は日米協定です。

 このTPPが締結されれば一切の貿易障壁がない「完全な日米自由貿易圏」が実現することになるでしょう。アメリカの市場として日本を食い尽くそうと狙ってきたアメリカの思惑が、完全に達成されることになります。
 こうして、60年代の中葉、日米間の貿易収支が逆転して以来、アメリカが悲願としてきた市場開放要求の最終段階が訪れようとしています。そのようなアメリカに日本市場を提供しようとしているのが「愛国心」を売り物にしている安倍首相ですから、何とも皮肉なものだというしかありません。
 今、最も愛国心教育が必要なのは、安倍首相本人なのではないでしょうか。
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2月27日(水) 社会党にとっての政治改革、民主党にとっての消費増税、そして自民党にとってのTPP [TPP]

 いかに大きな政党といえども、過ちを犯せば国民から見離され、その力を失っていきます。過去において、その実例を見てきましたが、将来において新たな実例にお目にかかることになるかもしれません。

 過去における実例の一つは社会党です。かつて自民党に対抗して政権を争った社会党は、今や社民党となって消滅の危機に瀕しています。
 その躓きの石は、一般的には「非武装中立論」への拘泥だと考えられています。しかし、実際には、政治改革への賛成だったように思われます。
 中選挙区制に代えて小選挙区制の導入を認めてしまった点に、決定的な過ちがあったように思われます。この選挙制度によって、社会党は自らの存立可能性を失うことになってしまったのではないでしょうか。

 もう一つの実例は民主党です。昨年末の総選挙で、民主党は大敗を喫し、日本維新の会より3議席を上回るだけになりました。
 参議院では今も第1党ですが、2議員の離党によって、それも怪しくなりました。来るべき参院選でも、大きな試練が待ちかまえていると見られています。
 民主党の躓きの石は、消費税の増税だったのではないでしょうか。10年の参院選の直前、菅元首相は突然消費税の10%引き上げ方針を打ち出して参院選での惨敗を招き、その後の民主党分裂など混乱の要因を生み出しました。

 このような過去の実例から類推すれば、将来における新たな実例が生まれる可能性に思い当たります。それは、自民党です。
 安倍首相は、日米首脳会談での共同声明で「TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」と書かれたことを手がかりに、近々、TPP交渉への参加表明を行うと見られています。しかしこれは、「あらかじめ約束しなくてもよい」ということにすぎず、「全ての関税を撤廃する」ことに例外があることを約束したわけではありません。
 「最終的な結果は交渉の中で決まっていくものである」から、どうなるかは分かりません。もし、交渉した後の「最終的な結果」、コメなどの関税が撤廃されるようなことになれば、自民党は地方での支持を決定的に失うことになるでしょう。

 自民党の強みは、地方の農村部にありました。ここでの草の根の支持こそが、伝統的に自民党を支えてきたのです。
 安倍さんは、党内論議を省略して一任を取り付けたようですが、問題は地方出身議員にあるのではありません。それを草の根で支えてきた地方の農業関係者の抵抗にあります。
 党内の反対派を抑えることができても、このような議員の背後にいる人々の反対を無視できるのでしょうか。無視してもこれらの人々の反対は消えず、結局はその支持を失うことになるでしょう。

 政治改革を受け入れることによって社会党は姿を消し、消費税の増税に踏み切ることによっ民主党は総選挙で壊滅的な敗北を喫しました。そして今、自民党はTPP交渉への参加を表明することによって農村地域の伝統的な地盤を失おうとしています。
 歴史は繰り返す、ということなのでしょうか。それとも、2度あることは3度ある、ということなのでしょうか。

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2月24日(日) TPP参加問題についての日米共同声明に騙されてはならない [TPP]

 注目された安倍首相の訪米でした。対北朝鮮政策や日米同盟の強化、そして環太平洋経済連携協定(TPP)への参加など、いずれもシナリオ通りの決着となりました。
 当然、それは予想されていたことです。そのような筋書きでの合意があったからこそ、安倍さんはアメリカに行ったのですから……。

 焦点はTPP参加問題にありました。これについての日米共同声明は次のようになっています。

 両政府は、日本がTPP交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされること、および、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。

 日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに2国間貿易上のセンシティビティーが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。

 両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての2国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、およびTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべきさらなる作業が残されている。

 この日米共同声明は、一方では交渉の内容には前提があること、しかし他方では、それへの参加には前提がないことを確認したものです。安倍首相の言うように、交渉そのものにおいて「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」わけではありません。
 交渉の内容に明確な前提があることについては、共同声明の最初の段落で明示されています。ここで、「全ての物品が交渉の対象とされること」、「『TPPの輪郭(アウトライン)』において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになること」が確認されているからです。
 つまり、「聖域なき関税撤廃」を目指すための交渉であり、その対象は「全ての物品」であって例外がないことは、ここで再確認されています。アメリカ側の言い分は、そのまま盛り込まれているというわけです。

 しかし、同時に「両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないこと」も確認されています。つまり、「参加に際し」ては、全ての関税を撤廃すると約束しなくてもいいですよ、それは交渉の結果決まるものなのですから、というわけです。
 これは安倍さんに対する「助け船」です。参加への呼び水と言っても良いでしょう。
 共同声明は交渉の「入り口」について書いているのに、安倍さんはそれを交渉の「出口」で認められたかのように言い換えています。「最終的な結果は交渉の中で決まっていくもの」だとされているのに……。

 安倍首相は国民や与党の自民党・公明党を騙しているわけです。いや、安倍さん自身も、騙されているのかもしれません。これまでも、日本の政府や国民がアメリカによって騙されてきたように……。
 こうして、異常なほどに「愛国心」を強調している安倍首相によって、日本の市場はアメリカに売り渡されようとしています。そうなれば、農業だけでなく、医療も保険も金融も食生活も、経済と社会生活の幅広い領域で壊滅的な打撃を被ることになるでしょう。

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11月16日(水) またも「2枚舌」で国民を欺いた野田首相 [TPP]

 野田さん、またやったようですね。内と外での発言の使い分けを。
 このような「2枚舌」が政治不信を高め、国民の信頼を失わせ、内閣への支持率を低下させているのだということに気がつかないのでしょうか。

 野田首相は、昨日の参院予算委員会で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加方針をめぐって、米政府が「(日米首脳会談で首相は)『全ての物品、サービスを貿易自由化交渉のテーブルに乗せる』と述べた」と発表したことについて、「一言も言っていない。事実関係を米側も認めた」と全面否定しました。その上で、菅直人前政権が昨年11月に「センシティブ(重要)品目について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とする」との基本方針を閣議決定した経緯に触れ、「基本方針を米国なりに解釈したのだろう」と説明したそうです。
 また、「(米側が)意図的にやったとは思わない」として、米側に抗議や訂正発表の要求を行わない考えを示しました。それなら、どうしてこのような食い違いが生じたのでしょうか。
 米側の勝手な解釈で、言ってもいないことを言ったと発表することが許されるのでしょうか。もし、言っていないのであれば、きちんと事実を指摘して訂正を求めるのがスジというものではありませんか。

 このような野田首相の対応は、野党側などから「2枚舌」だとの批判を招いています、それは当然でしょう。
 国内では慎重姿勢を強調しながら、海外に行ったら積極姿勢を示すという野田さんのやり方は、今回が初めてではありません。フランス・カンヌで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議でも、「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」と明言して「国際公約」と受け取られました。
 また、TPP交渉に関しても、「参加」そのものではなく、それに向けての「協議」に入るのだというたぶらかしによって反対派をなだめようとしました。しかし、そのために、TPPに慎重な鹿野農相が「交渉参加を前提としたものではないと理解している」と答弁し、首相が慌てて「交渉に入らないという前提もないし、入るという前提もない」と取りつくろうなど、混乱も生まれています。

 せっかくの弁舌が泣こうというものではありませんか、野田さん。駅頭で毎朝行ってきたという演説は、このようなたぶらかしの技術を高めるためのものだったのですか。
 演説を繰り返しているうちに、いつのまにか舌が2枚に増えてしまったんじゃないでしょうね。民主政治にとって、言葉によって説得する技術こそが重要だということを、十分に知っているはずじゃありませんか。
 「策士、策に溺れる」という言葉もあります。人間は、得意な分野でこそ失敗する可能性があるものです。

 自らの主張に自信があるなら、正直に率直に、国民に語るべきでしょう。それとも、アメリカにしてやられたということなのでしょうか。
 もし、そうだとしたら、TPP参加交渉に入る前から、アメリカに翻弄されているということになります。このようなことで、果たして日本の国益が守られるのでしょうか。
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