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9月22日(月) ようやく茶番劇の幕が下りた [総裁選]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』ちくま新書で10月10日刊行予定。
 240頁、本体740円+税。ご注文は筑摩書房http://www.chikumashobo.co.jp/まで。
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 激しい嵐に見舞われて沈みかかった船の上で、延々と茶番劇が上演されていたようなものです。その自民党総裁選もようやく終わり、「5レンジャー」よろしく5人揃っての総裁選セレモニーに幕がおりました。

1,麻生   351(134)
2,与謝野  66(2)
3,小池   46(0)
4,石原   37(1)
5,石破   25(4)

 以上が、選挙の結果です。当初のシナリオ通り、麻生さんの圧勝です。
 カッコ内の数字は、地方票です。地方では麻生さんの得票は95%で、小池さんは1票も獲得できませんでした。
 サプライズも何もありません。豪雨で甚大な被害が出た岡崎市や隣の安城市についての「(豪雨は)安城や岡崎だったからいいけど」という暴言で、麻生陣営がヒヤッとした程度でした。

 始めから結果は分かっていたのです。というより、総理禅譲の密約をカモフラージュするために、5人もの候補を出して大騒ぎをしただけでした。
 出来レースに付き合わされた自民党員、マスコミ、国民にとっては、全く迷惑な話です。密約をごまかすためのお祭り騒ぎに、2週間も付き合わされたのですから……。
 総裁選を報ずる記者の一人が言っていました。「非常に緊張感のない総裁選でしたね」と……。

 それでも、この総裁選で注目すべき点がなかったわけではありません。小池さんと小泉さんの動静です。
 小池さんは小泉構造改革路線の継承を掲げて立候補を表明し、小泉さんは小池さんへの支持を明らかにしました。そのために、小池さんは自民党内における新自由主義路線の影響力を推し測るリトマス試験紙の役割を演ずることになりました。
 結果は、惨敗です。小泉構造改革路線の凋落と「小泉神話」「小池神話」の破綻が明瞭になりました。

 麻生さんの得票率は67%になります。安倍さんの66%、福田さんの63%を上回っています。
 総裁選で圧勝した安倍さんも福田さんも、それだけの支持を得ながら、結局は政権を投げ出してしまいました。7割近い支持を得た麻生さんは、大丈夫なのでしょうか。
 ことわざでは、「二度あることは三度ある」というんですが……。


9月11日(木) 自民党総裁選は「目くらまし」と「前景気」の出来レース [総裁選]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』ちくま新書で10月10日刊行予定。
 240頁、本体740円+税。ご注文は筑摩書房http://www.chikumashobo.co.jp/まで。
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 茶番劇の幕が上がりました。自民党の総裁選です。
 ひと言で言えば、「目くらまし」と「前景気」の出来レースです。

 「目くらまし」というのは、改造内閣の発足時に福田さんが麻生さんに「あうんの呼吸」で行った政権禅譲密約の誤魔化しです。できるだけ華々しく総裁選を盛り上げて、密約疑惑をかき消そうと画策しているわけです。
 「前景気」というのは、総裁選直後に行われようとしている解散・総選挙対策です。できるだけマスコミと国民の目を惹き付け、少しでも自民党を売り込んで支持率を高めようと目論んでいるわけです。
 そのためには、麻生さんと与謝野さんの一騎打ちでは困ります。老若男女取り混ぜてにぎにぎしく総裁選を演出し、メディア・ジャックのために顔をそろえたのが立候補した5人でした。

 このような画策と目論見による出来レースが、今度の総裁選です。結果は、始めから決まっています。
 麻生さんを支持する党幹部の一人は10日、「勝負あった。もう明日からは消化試合だ」(『朝日新聞』)と漏らしたそうですが、総裁選そのものが「消化試合」だったのです。麻生総裁誕生は、始めから約束されているのですから……。
 また、「5人の候補者が集めた20人の推薦人リストは、『脱派閥』を装っているが、分析すると派閥有力者らによる『談合』色が濃くにじんでいる」(『毎日新聞』)と書かれていますが、当然でしょう。始めから、密約を隠蔽するための「談合」によって、候補者乱立が演出されていたのですから……。
 さらに、「最大の対立軸の経済財政政策をめぐっては慎重な物言いが目立った。むしろ民主党批判で足並みをそろえるなど、総裁選後の衆院解散・総選挙をにらんだ奇妙な結束が浮かび上がる滑り出しとなった」(同前)と報じられていますが、それも当たり前です。基本的に政策的な違いはなく、総選挙で民主党に勝つための「賑やかし」にすぎないのですから……。

 総裁選に名乗りを上げ、結局は推薦人が集まらずに立候補断念に追い込まれた棚橋さんや山本さんの行動には、「20人が集まらないのを承知のうえでの事実上の『売名行為』だったのではないか」といった厳しい声もあがっているそうです(『日経新聞』)。これも当然でしょう。始めから、「売名行為」だったのですから……。
 それなら、ようやく20人をかき集めて立候補した小池さんや石原さんの行動はどうなのでしょうか。これも、総裁選での当選が無理なのを承知のうえでの「売名行為」なのではないでしょうか。
 昨日のインタビューで、総選挙の時期について問われた小池さんは、思わず、こう答えていました。「それは新しい総裁がお決めになることです」。つまり、決めるのは自分ではないということでしょう。

 マスコミもなめられたものです。狙い通りに、まんまと自民党のPRに最大限利用されてしまっているのですから……。
 このような見え透いた作戦に乗せられて恥ずかしくないのでしょうか。特に、テレビの関係者は、公共のものであるはずの電波によって一私党のPRの片棒を担がされている現状を異常だとは感じていないのでしょうか。「三笠フーズ」による「事故米」転売事件の拡大など、他にも報ずべき大問題があるというのに……。

9月10日(水) 出来レースの「茶番総裁選」の候補者にぜひ聞いて欲しいこと [総裁選]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』ちくま新書で10月10日刊行予定。
 240頁、本体740円+税。ご注文は筑摩書房http://www.chikumashobo.co.jp/まで。
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 自民党の総裁選が告示され、22日の投開票に向けての選挙戦がスタートしました。読売新聞によると、国会議員を対象に投票動向を調べたら、9日深夜現在、麻生さんを支持することが明確な議員が163人(42%)に達したそうです。

 実際には、麻生さんを支持する人はもっと多いのではないでしょうか。麻生優位がはっきりすれば、「勝ち馬」に乗ろうとする人はもっと増えるでしょう。
 やはり、今回の総裁選は、麻生さんを次期総裁に選ぶための出来レースだったということになります。このような茶番に付き合わされる自民党員も国民も、たまったものではありません。
 しかし、選挙ともなると、各人の政治姿勢や政策を問う機会があります。せっかくですから、候補者の皆さんには、ぜひ聞いてもらいたいことがあります。

 それは、安倍、福田と続いた2度にわたる政権投げ出しについてどう思うかということです。日本における最高の政治指導者としてあまりにも無責任ではないか、と聞いて欲しいものです。あなたは投げ出すようなことはしませんか、とも……。
 安倍さんの政権投げ出しは、最終的には健康問題が理由とされており、辞任直後には慶応病院に入院しました。しかし、それにしたって腸の調子が悪かったという程度で、今ではピンピンしているではありませんか。
 福田さんにいたっては、どうして辞めたのか、本当の理由は未だに判然としません。自分が辞めることで国会論戦の状況を変えたいと言っていましたが、臨時国会では冒頭解散で論戦がなくなるというではありませんか。

 この問題では、次期総裁の本命とされている麻生さんの意見を、特に聞きたいところです。07年8月27日に発足した安倍改造内閣で麻生さんは幹事長になり、08年8月1日の福田改造内閣でも麻生さんは、またも幹事長になっていたからです。
 自民党の幹事長と言えば、総裁に次ぐナンバー2の地位になります。その幹事長は、総裁の政権投げ出しについて連帯責任を負わなくて良いのでしょうか。
 安倍、福田の両政権を支えるべき立場にあった麻生さんです。2度にわたる政権投げ出しに際して、幹事長という地位にあった自己の責任についてどう考えているのでしょうか。

 しかし、あまり麻生さんを追いつめるようなことは望ましくありません。出来レースのシナリオ通り、麻生さんにはすんなりと総裁に選ばれていただく方がよいでしょう。
 予想外の結果が生まれて混乱が生じ、さらに国民の注目と関心が高まる、などということがあっては困ります。茶番劇が本物の劇になってしまいますから……。
 茶番劇には、国民のしらけた冷たい眼差しがお似合いです。当初のシナリオ通りに麻生さんが圧勝し、惨敗した石破さん、小池さん、石原さんの悔し涙を見たいものです。

 なお、9月10日と言えば、私にとっての大きな事件が起きた日です。1971年9月10日の午後、東京都立大学のキャンパスで、暴力学生の1人に竹竿で右目を突かれて失明しました。
 そのときから、私の右目はプラスチックの義眼に変わっています。20歳の秋のことでした。あれから、もう、37年の歳月が流れたことになります。

9月9日(火) 茶番劇のピエロとなってしまった山本一太参院議員 [総裁選]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』ちくま新書で10月10日刊行予定。
 240頁、本体740円+税。ご注文は筑摩書房http://www.chikumashobo.co.jp/まで。
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 昨日、ちくま新書として刊行予定の拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』の最終ゲラを入稿しました。突然の福田辞任のあおりを受け、若干の加筆・訂正を余儀なくされましたが、これで完了です。あとは、製本され出版されるのを待つだけです。
 自民党総裁選での立候補状況を見ても、構造改革派(上げ潮派)とそれ以外との亀裂の拡大は明瞭です。しかも、構造改革派の凋落もはっきりしました。
 このような傾向は、総裁選挙の結果によって、さらに明瞭になるでしょう。週刊誌では、構造改革派の自民党からの離党の可能性まで報じられています。

 ところで、自民党総裁選という茶番劇を盛り上げて観客の目を引きつけ、関心を高めるためのピエロのようなものだったのでしょうか。20人の推薦人を集めることができずに総裁選への立候補を断念した山本一太参院議員のことです。
 山本さんとは、「太田総理」のテレビ番組で何度かご一緒しました。大変、弁の立つ方で有能だと感じましたが、他方で、少しおっちょこちょいじゃないの、という印象もありました。
 そこが見込まれたのかもしれません。総裁選の幕が上がる前の「賑やかし」のピエロの役を演じさせられたというわけです。

 山本さんは、「テレビに出られて注目され、顔と名前が売れればいいや」と思ったのかもしれません。20人の推薦人を集めるほどの人望も支持もなく、政策や基盤が似通っている棚橋さんとの一本化をはかる政治力もないのに、総裁選に向けて手を挙げてしまいました。
 そのあげく、「お後がよろしいようで」と、本番が始まる直前に舞台から姿を消したというわけです。やっぱり、おっちょこちょいだったと言うしかありません。
 2度にわたる中途での政権投げ出し、総理候補を選ぶことになる総裁選での候補者乱立、売名行為まがいでの立候補表明と直前の断念などなど。これらの全てが総理の椅子を軽んじ、ひいては日本の政治を貶めることになるということが分からないのでしょうか。

 野田聖子消費者行政担当相は今日の閣議後の記者会見で、福田首相の辞意表明の翌日に森喜朗元首相から電話で総裁選への出馬を要請され、断ったことを明らかにしました。
 野田さんは、「私はまだ未熟で勉強不足のところもある。うれしかったが(首相は)うれしいだけでなれるものではない」と説明し、「故小渕恵三首相が命をかけて働いた姿を見ていたので、軽々に引き受けてはいけないと思った」とも語ったそうです。
 出馬要請もないのにしゃしゃり出て、結局は推薦人を集めきれずに退場した山本さんは、「軽々に引き受けてはいけない」という野田さんの言葉を、どう聞いたでしょうか。山本さんに、「命をかけて働く」覚悟があったのでしょうか。

 先日、日本テレビは、「今度の総裁選はプロレスと同じだ。誰かがシナリオを書いている」という噂を報じていました。「出来レース」を誤魔化すための「空騒ぎ」をやったうえで、本番の幕が上がる前にピエロが舞台を去ったのも、やはりシナリオ通りだったというのでしょうか。


9月8日(月) 戦略無き構造改革派の迷走 [総裁選]

 「エーッ 『薩摩宝山』だって」
 慌てて、調べました。間違いありません。7月に瓶詰めしたものです。ほとんど、中身は無くなっていました。

 驚きましたネー。「三笠フーズ」が食用と偽って転売していた工業用の「事故米」が使われたというのですから。発がん性のあるカビ毒や残留農薬に汚染された可能性のある焼酎を、なんと私も飲んでいたのです。この問題が我が身に降りかかってくるとは、思ってもいませんでした。
 転売を指示し、「毒」を飲ませた社長は断じて許せませんが、それをきちんと取り締まることをしなかった農水省にも大きな怒りを感じます。「事故米」であることを知らずに食べたり飲んだりした人に、どう責任を取るのでしょうか。

 ところで、自民党の総裁選です。マスコミを総動員したお祭り騒ぎが効果を示し始めたようです。
 こんな見え見えの策略に惑わされるほど日本国民は甘くない、というところを見せて欲しかったのですが。やはり、テレビには弱いということでしょうか。
 ここが踏ん張りどころです。皆さん、自民党に騙されちゃいけませんよ。

 総裁選には、7人の名前が出ています。このうち、麻生さん、与謝野さん、石破さんは反または非構造改革派です。
 これに対して、小池さん、石原さん、棚橋さん、山本さんの4人は、構造改革路線の継続を主張しています。注目されるのは、いずれも、立候補に必要な20人の推薦人の確保に苦労していることです。
 早々と手を挙げた小池さんですら、やっと今日になって立候補を宣言しました。20人の推薦人を集めるのに、1週間もかかったことになります。

 石原さんは20人の推薦人を確保できたのでしょうか。「他に誰も出なければ、私が出るしかない」と言っていましたが、こんなに沢山出るのに、それでも立候補するのですか。
 みっともないのは棚橋さんと山本さんです。どちらも推薦人を確保できず、かといって、一本化する話し合いも難航し、見通しが立っていません。
 二人の話し合いで、「俺が出る」「いや、俺の方だ」と言い合っているのでしょうか。醜悪を絵に描いたようではありませんか。

 いずれにしましても、戦略無き迷走と言いましょうか。何をやっているのか、と言いたくなります。
 今日、やっとの思いで小池さんが立候補にこぎ着けました。石原さんも、予想外の苦戦の末に、何とか立候補しそうです。棚橋さんと山本さんは、一本化できれば、どちらかが立候補するでしょう。
 これで、構造改革継続派は3人になります。推薦人を集めるだけでも四苦八苦しているのに、3人も出る。始めから当選など度外視しているとしか思えません。

 どうして、こんなに構造改革派が苦戦しているのでしょうか。それは、自民党内の支持が、思っていたよりもずっと少ないからです。
 どうして、支持が少ないのでしょうか。すぐにやってくる総選挙で勝たなければならないからです。
 「改革」の旗印では、去年の参院選の時のように負けるかもしれません。これでは、一般の党員票も獲得できないでしょう。

 読売新聞は自民党総裁選を前に47都道府県連の幹部を対象にアンケート調査を行っています。ここで、「自民党を取り巻く環境が厳しさを増している理由」について聞いたところ、「景気悪化や格差拡大」「ねじれ国会で円滑に政策決定が進まない」が原因だとする回答がそれぞれトップ(36都道府県と36都府県)で並んだといいます。
 地方は、景気悪化と生活苦、貧困や格差の拡大で疲弊しています。その原因を作ったのは、小泉元首相の構造改革路線でした。だから、参院選の一人区で惨敗したのです。

 「改革」では選挙は闘えないと、自民党員の多くは考えています。それなのに、「改革」の旗印で支持を伸ばそうというのが、小池さんや石原さんのやり方です。上手くいくはずがありません。
 そもそも、構造改革路線では選挙に勝てないということは、昨年の参院選で十分学んだはずではありませんか。嘘だと思うなら、もう一度、構造改革路線を掲げて総選挙を戦ってもらいたいものです。
 そうすれば、構造改革や規制緩和でうちひしがれた庶民と地方の一斉蜂起に直面するでしょう。参院選の再現によって、最終的に新自由主義路線に引導が渡されるに違いありません。

 総裁選で、小池さんや石原さんには、小泉構造改革路線を継承するべきだということを、声を大にして訴えていただきたいものです。与謝野さんには、消費税率の引き上げが必要だということを強く主張していただきましょう。
 そうすれば、総選挙での自民党の敗北は確実です。昨年の参院選での二の舞が、さらに拡大された規模で再現されるにちがいありません。

9月5日(金) みんな出ようぜ、どうせ「賑やかし」総裁選だもの [総裁選]

 麻生さんに与謝野さん、対するは石原さんに小池さんというラインナップだと思っていました。ところが、今日になって、棚橋さんに石破さん、山本さんまで立候補する構えを見せているのだそうです。
 自民党の総裁選。乱立模様だそうで、次から次に名乗りをあげ始めています。

 福田さんは4月頃から、「辞めたい」と漏らしていたといいます。「やっぱり、貧乏くじを引いちゃったなー」と、思っていたのかもしれません。
 本当なら、8月1日の内閣改造もやりたくなかったのでしょう。でも、周りから「やれ、やれ」と言われて、とうとう改造に追い込まれてしまいました。
 仕方なく、幹事長を麻生さんに頼むとき、「解散はあなたでやってよ」と言ったかどうかは定かではありません。でも、「あうんの呼吸」で、麻生さんは「後は自分だ」と思ったことでしょう。福田辞任後、間髪を入れずに立候補を表明したのは、その何よりの証拠です。

 ということは、自民党の後継総裁が麻生さんだということは既定の事実なのです。でも、「そう言っちゃお終い」です。またもや、「禅譲の密約だ」「密室での談合だ」と批判されるのは確実ですから……。
 そうならないためには、できるだけ多くの人が立候補した方が好都合です。誰が出たって、どうせ後は麻生さんで決まっているのですから……。
 遠慮することはありません。「我も、我も」と手をあげればいいんです。参院議員の山本一太さんまで手をあげようというのは、いささか悪のりがすぎるかもしれませんが……。

 どうせ、総選挙目当ての「賑やかし」です。華々しくなればなるほど、いいじゃありませんか。マスコミも注目してくれるでしょうし……。
 と、ここまで書いたところで、影の声が聞こえてきました。自民党の有力者のようです。

 麻生さん以外の人が当選したらどうするかって。総裁なんて、誰だっていいんじゃないの。どうせ総選挙の看板なんだから……。
 でも、与謝野さんはちょっと困るかな。あの声では、街頭演説は無理のようだし。
 今度の総選挙で負ければ、首相は即、交代。たとえ勝っても、今より議席を減らすことは確実だから、早晩、総選挙は避けられない。
 どうせ、短命政権になるんだから、誰だって構わないよ。この際、私も立候補して、顔と名前を売っておこうかな。総選挙も近いことだし。

 ということで、総裁選への立候補が花盛り。自民党総裁の椅子の軽いこと、軽いこと。


9月4日(木) 福田辞任で「大迷惑」の数々 [総裁選]

 今朝の『毎日新聞』を開いたら、「大迷惑」という見出しが飛び込んできました。「福田康夫首相の突然の退陣表明で、内政・外交に混乱が広がっている」と、この記事は次のように報じています。

 首相は1日の退陣会見で「国民に大きな迷惑がかからないと考え、この時期を選んだ」と強調したが、政権の目玉として打ち出した社会保障分野の「五つの安心プラン」も議論に入ったばかりでストップ。外交分野でも日中韓首脳会談を「ドタキャン」し、対外関係にも影響が出ている。首相本人の強弁とは裏腹に、唐突な政権放り出しは各方面に「大きな迷惑」を及ぼしている。

 全く、その通りです。総裁選での「賑やかし」によって自民党の危機を救うために、福田首相は国政を投げ出してしまったからです。
 それで、どれだけの人が「大迷惑」を被ったことか。去年の安倍さんに続いて、2度も「ドタキャン」されたようなものです。
 福田さんは「空白」を避ける時期を選んだといっていましたが、突然の辞任による国政の停滞こそが、巨大な空白を生み出しているのです。日本という国に対する国際的信用の失墜という大きなマイナスとともに……。

 実は、突然の福田辞任で「大迷惑」を被っているのは、私も同様です。福田さんが辞任を発表した直後、すぐに筑摩書房の編集者からメールが入りました。「状況が変わりましたので、ゲラに手を入れてください」と……。
 それで、急遽、10月に刊行を予定している新著のゲラに手を入れることになりました。幸か不幸か、まだ間に合う時期でしたから……。
 同じように、てんやわんやとなった出版社は多かったでしょう。特に、週刊誌などは……。

 全く、人騒がせな福田辞任でした。それもこれも、総選挙での自民党人気を盛り上げるための策略なのですから、困ったものです。


9月2日(火) 「密約」「談合」批判をかわすための総裁選挙? [総裁選]

 「首相を辞めて残念だ、という声がないのが残念だ」と、思っているかもしれません。突然、政権を投げ出してトンズラしてしまった福田さんです。
 それも仕方ないでしょう。首相を辞める前から、辞めているようなものでしたから……。

 何事もひとごとで決断できず、リーダーシップを発揮できない福田さんでした。首相として何をやったのか、ほとんど成果らしい成果を残していません。
 福田さんにとっては、最初で最後の決断が、今回の辞任表明だったということになりましょうか。これで自民党に大打撃を与えて総選挙での政権交代に道を開けば、それこそが福田さんによる最大の成果であり、日本政治への貢献だったということになるでしょう。
 もっとも、今回の福田辞任は、それを避けるためのものでした。自民党という一政党を助けるために、一国の首相という公職を投げ出したのです。これを暴挙といわず、何と言ったらよいのでしょうか。

 当面の焦点は、自民党の総裁選挙です。10日告示、22日投票という日程が決まりましたが、立候補の中心になるのは麻生太郎幹事長でしょう。
 というより、麻生さんを総裁にして新政権を発足させ、「ご祝儀支持率」が消えないうちに「麻生の看板で総選挙を戦う」というのが、今回の辞任の目的だったのではないでしょうか。当然、解散・総選挙は早まります。
 注目点は、次期総裁がスンナリ麻生で決まるのか、ということです。「構造改革」路線の復活を願う「小泉チルドレン」はどう動くでしょうか。
 前回の選挙で「刺客」とされた「小泉チルドレン」は、今度の総選挙では苦戦必至です。生き残りをかけて小池百合子さんのような対抗馬を立て、起死回生の秘策をめぐらすかもしれません。

 自民党総裁選の行方が注目されます。とはいっても、本当は、「密約」だ「談合」だと批判されないための「公選」なのでしょうけれど……。
 それとも、「本命」の橋本さんが失速した、小泉さんの時のような番狂わせがあるのでしょうか。


9月17日(月) 「政府の顔」と「選挙の顔」の選択 [総裁選]

 「本当に病気なのか?」という疑いを抱かせたまま、朝青龍はモンゴルに帰っちゃうし、安倍晋三は慶応病院に逃げ込んじゃうし、「一体どうなっているのか?」という声をよそに、あれよあれよという間に自民党の総裁選挙が始まり、始まった途端にもう勝敗が決まってしまい、「消化試合じゃないか」という声も無視してマスコミだけははしゃぎ回っている。本当に、一体どうなっているんでしょうか。

 相も変わらずマスコミは福田対麻生の対決を演出し、総裁選挙を盛り上げようと躍起です。しかし、この二人しかでてこないというところに、もはや“自民党に明日はない”ということが象徴的に示されています。
 人材が、完全に払底してしまったということでしょう。自民党の生命力の枯渇と言っても良いと思います。
 この二人なら、どちらがなっても50歩100歩です。たとえは良くないですが、目クソ鼻クソの争いにすぎません。

 この二人に、全く違いがないとは申しません。麻生さんは若くて派手、福田さんは年配で地味、麻生さんは安倍執行部の一員で今回の“退陣騒動”に責任があるが、福田さんはそうではありません。
 外交路線では、中国や韓国との友好を重視し、靖国神社への参拝を行わないことを明言している福田さんに対し、中国包囲網づくりのための外交路線を押し進め、靖国参拝について「適切に判断する」としか言わない麻生さんという違いがあります。北朝鮮の拉致問題でも、麻生さんは圧力を強めようとし、福田さんは対話を重視しています。
 政治路線では、麻生さんはタカ派で福田さんはハト派と見られています。安倍前政権との関わりでいえば、麻生さんはその一員であり、福田さんはそうではありませんでした。

 しかし、これらの違いは、目クソが目から、鼻クソが鼻から出るという程度の違いにすぎません。目と鼻のどちらから出るにしても、「クソ」は「クソ」です。たとえが汚くて済みません。
 福田さんは福田赳夫元首相の息子で、麻生さんは吉田茂元首相の孫です。二人とも、世襲議員であるという点、それも元首相の血を引くエリートであるという点では同じです。
 小泉さんの進めた構造改革路線についても、修正や是正をいっていますが、二人ともその転換ではなく継承を掲げています。「政治とカネ」の問題でも消費税率の引き上げでも、この二人に違いはありません。
 麻生さんは安倍さんに近く、福田さんは遠いのかというとそれは誤解です。小泉、安倍、福田の3人は、いずれも旧森派の一員で、福田さんは森内閣と小泉内閣の官房長官でした。

 臨時国会の最大の焦点と見られているテロ特措法問題ですが、これについても二人の姿勢に違いはありません。二人とも、インド洋での給油活動を継続する方針です。
 法案が参院で否決された場合の対応でも同じです。二人とも、3分の2の多数で再議決する意向を示しています。
 派閥との関係でも、麻生さんは「派閥政治」の復活を批判しています。しかし、自分自身が麻生派を率いる領袖であるという事実をどう考えているのでしょうか。

 つまり、自民党の総裁選挙に立候補した二人には、言われているほどの違いはないということです。二人の相違や対決は、総裁選挙を盛り上げたい自民党の演出であり、それに乗っかって視聴率を稼ごうとするマスコミの画策にすぎないのです。
 このような“賑やかし”は23日の投票日まで続くでしょう。しかし、国民にとっては不毛の選択です。
 どちらが選ばれても、局面を打開するのは困難でしょう。どちらも、帯に短したすきに長し、だからです。

 福田さんは、年配で落ち着いており、調整型で派手さがないという特徴があります。これが安心感を与えるということで、多くの派閥ボスに支持されました。
 この点では、麻生さんが言うように、「古い自民党」の復活です。ボスの威光が徹底しきれないという点では、復活も中途半端ですが、自民党よりも世論に依拠してきた小泉・安倍路線からの転換であることは明らかです。
 そしてここに、福田さんの弱点があります。一度は脱却が目指された「古い自民党」に頼らざるを得ず、幅広く世論に訴える「選挙の顔」としてのアピール力に決定的欠けるという点です。

 麻生さんは、若者受けする大衆性があり、演説も上手で「選挙の顔」としては、福田さんよりもましです。でも、安倍内閣での実績やこの間の党運営についての批判が強く、国会議員による支持では劣勢です。
 世論の支持を盛り上げて、これを逆転しようというのが、麻生さんの作戦です。小泉さんの時と同じように、地方票をテコに劣勢を跳ね返そうというわけです。
 そしてここに、麻生さんの弱点があります。「選挙の顔」としての人気に頼って選び、結局は失敗してしまった安倍首相の苦い教訓のあとに、同じような手法をとろうとしているからです。

 こうして自民党は、「政府の顔」としての福田さんを選ぶのか、「選挙の顔」としての麻生さんを選ぶのか、という選択に直面することになりました。問題は、この二つの「顔」が一致していないという点にあります。
 「政府の顔」としての福田さんは、「選挙の顔」としては役に立たないでしょう。かといって、「選挙の顔」としての麻生さんを選べば、安倍さんと同じような失敗を繰り返す恐れがあります。
 どちらを選んでも、「自民党レジーム」の維持には、黄信号が点るのではないでしょうか。とりわけ、苦手なパフォーマンスを求められ、「選挙の顔」を努めなければならない緊急事態に、「もう、年も年」である福田さんが耐えられるのでしょうか。

 野党にとって福田さんは、政策論争や国会論戦では手強い敵になるかもしれません。しかし、世論へのアピールや「選挙の顔」としては大きな弱点を抱えているのが福田さんです。
 これをどう判断するかが、総裁選の大きなポイントになるのではないでしょうか。ヒョッとしたら、麻生さんの逆転もあるかもしれません。


9月15日(土) 幻の「福田談合政権」構想の復活 [総裁選]

 始まった途端に終わってしまったようなものではないでしょうか。自民党の後継総裁選びです。
 今日、総裁選への立候補が受け付けられましたが、届け出たのは福田康夫元官房長官と麻生太郎自民党幹事長の二人です。このうち、福田さんは自民党の9派閥のうち、麻生派を除く全ての派閥からの支持を取り付け、圧倒的な優位に立ちました。
 麻生さんは地方票の獲得に力をれる方針だそうです。しかし、それでも福田さんの優位は動かないでしょう。
 昨年の総裁選挙で出馬を促され、「年も年だからね」と言って立候補を辞退した福田さんでした。それから1年経って、年を取るどころか若返ったようです。

 ところで、投票日の7月29日夕方、参院選での自民党敗北が避けられないとの見通しが強まる中で、二つの密談が開かれていました。一つは「国会に近いグランドプリンスホテル赤坂の一室」での「森喜朗元首相、青木幹雄参院議員会長、中川秀直幹事長森元首相」の3者会談で、もう一つは、首相官邸での安倍首相と麻生外相との会談です。
 3者会談では、「安倍首相の退陣を想定して、福田康夫元官房長官を後継首相に擁立する構想を具体的に話し合って」いたといいます。「暫定的な緊急避難措置」としての「福田選挙管理内閣」構想を伝えるために、中川幹事長が官邸を訪れたとき、すでに、もう一つの密談も終了していました。
 官邸での安倍・麻生会談の結論は「安倍続投」で、結局、安倍首相は辞任しませんでした。「続投」を支持した麻生さんは、おそらく安倍さんから「もし何かあったら、後を頼むよ」と言われていたのでしょう。

 以上の経緯については、私は8月4日付のブログ「消えたものには『福』がある」http://blog.so-net.ne.jp/igajin/archive/20070804で書いています。詳細は、そちらをご覧下さい。
 このとき、参院選大敗の責任を取って辞任していたら、安倍さんは今回のような醜態をさらすこともなく、戦後政治史に大きな汚点を残すこともなかったでしょう。今回のような異常事態にならなければ、また幹事長として事前に辞意を漏らされていなければ、麻生さんは安倍政権への責任を問われず、もう少し支持の広がりもあったでしょう。
 総理の椅子にしがみついてしまった安倍さんの未練であり、その安倍さんからの「禅譲」に期待をかけてしまった麻生さんの失敗でした。まことに、政治とは難しいものです。

 ということは、今回の総裁選で浮上した福田対麻生の対決構図は、実質的には、すでに7月29日の参院選投開票日にできていたということになります。このような対決は、1ヵ月以上も前に形成されていた水面下の構図が浮上したにすぎません。
 津島派の重鎮で参院議員を束ねる青木さんが「福田選挙管理内閣」構想を打ち出した3者会談に加わっていました。一度は手を挙げようとした津島派の額賀さんが、福田さんへの協力を約束して立候補を断念したのは、そのためでしょう。
 8派閥が福田支持を決めたのに対して、麻生さんは「派閥の談合だ」と批判していますが、7月29日の密談はどちらも談合でしょう。ただ、福田さんの場合には、それが派閥レベルに拡大したのに、麻生さんの場合には、安倍さんの辞め方やそれに対する麻生さん自身の責任への批判もあって、それだけの広がりにかけるというにすぎません。

 つまり、今回の自民党総裁選挙は、1ヵ月以上も前に打ち出された幻の「福田選挙管理内閣」構想を復活させる作業にすぎないのです。本来、意外性も新鮮味も全くない密室での「談合政権」だと言うべきでしょう。
 しかし、安倍辞任によって危機に陥っている自民党としては、それでは困る、ということになります。いかにして、このような水面下での動きを隠蔽し、来るべき“選挙の顔”としての粉飾をこらすかが、総裁選挙の課題にほかなりません。
 野党からすれば麻生さんの方が闘いやすいでしょう。とはいえ、自民党にとって福田さんの方が良いともかぎりません。福田さんで自民党の支持率がそれなりに回復すれば、政権交代含みの総選挙は早まるでしょうから……。

 福田さん優勢の報を聞いて麻生さんは悔しそうな顔をしていますが、内心では「ホッ」としているかもしれません。次期首相が重い荷物を担いで、「地雷原」を歩まなければならないのは明らかなのですから……。


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