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7月11日(月) 参院選の結果をどう見るか [参院選]

 注目された参院選が終わりました。当初の予想通り、自民・公明の与党の勝利となり、改憲勢力も3分の2を超えています。
 容易ならざる局面が訪れることになったわけですが、正確に言えば、与党の勝利というより野党の敗北ではないでしょうか。ただでさえ弱体化した野党が厳しい情勢の下での選挙を強いられ、対抗する陣営を築くこともできず、負けるべくして負けてしまったように見えます。

 もともと厳しい情勢の下での選挙であったことは否定できません。それは、長期・中期・短期の3層構造でした。
 長期的には、安倍政権以来進行してきた日本社会の右傾化という問題があります。これは中間層の没落と貧困化の進展を背景にしたもので、維新の会への支持の増大、NHK党の勃興や今回の選挙での参政党の進出、労働組合・連合の保守化と自民党への接近などの背景にもなっています。
 中期的には、岸田政権の登場とロシアのウクライナ侵略による好戦的雰囲気の高まり、安全保障への関心の強まりと大軍拡・9条改憲の大合唱などを挙げることができます。強権的な前任者とは異なるソフトな印象の岸田首相の手ごわさ、内閣支持率の安定と自民党支持率の高さなどに加え、「聞く力」を前面に対立を避け、安全運転に徹して聞き流すだけで何もしない姿勢が功を奏したということでしょうか。
 そして短期的には、安倍元首相に対する銃撃と死去という衝撃的な事件の影響があります。投票日2日前の最終盤という微妙な時点で勃発したこの事件によって自民党に対する同情が沸き起こったのではないかということは、7月9日の期日前投票での調査からもうかがうことができます。

 このような不利な情勢の下で選挙に臨んだ野党でしたが、その対応は大きな疑問符がつくようなものでした。「これでは勝てない」と、選挙の前からある程度予想できるような対応に終始してきたからです。
 何よりも大きな問題は、昨年の総選挙の総括を間違えたことにあります。政権との対決の強化と野党間の共闘の再建こそが野党勢力の挽回にとって必要な最善の道であったにもかかわらず、その逆を選択してしまったからです。
 総選挙後、野党に対して「批判ばかりだ」という批判にたじろいだ国民民主党は「対決より対案」を掲げて政権にすり寄り、当初予算に賛成して内閣不信任案に反対するなど補完政党へと転身し、これに引きずられる形で立憲民主党も政権批判を手控えて対案路線に転ずるなど、維新の会を含めた翼賛体制づくりの波にのまれていきました。これでは政権の問題点が明らかにならず、与党の失点を浮かび上がらせることもできません。

 加えて、「共闘は野合」「立憲共産党」などの分断攻撃に屈し、連合による揺さぶりによって腰が引けた立憲民主党の執行部は、共産党との連携や野党共闘に対して消極的な姿勢を強めてきました。まさに、自民党の思うつぼにはまってしまったわけです。
 その結果、32ある1人区での共闘は11にとどまり、前々回の11勝、前回の10勝の半分以下、たったの4勝に終わりました。こうなることは選挙の前からある程度予想されていたことで、一人区での勝敗が参院選全体の勝敗を大きく左右するということからすれば、ここでの分裂が自民党に漁夫の利を与えて参院選での勝利をもたらすことは自明でした。
 一人区での共闘に向けて真剣な取り組みを行わなかった立憲民主党と、背後から揺さぶりをかけ続けた連合の責任は大きいと言うべきでしょう。形だけの共闘によって表面を取り作ってみても真剣さが欠けていれば本気の共闘にはならず、力を発揮することができないのは当然です。

 選挙後の記者会見で、岸田首相は改憲に向けて「できるだけ早く発議し、国民投票に結び付けていく」と強調していました。新型コロナ感染第7波の懸念と今後さらに強まる物価高の大波に備えて命とくらしを守ることとともに、大軍拡・改憲阻止のための憲法闘争に力を入れる必要があるということです。
 この点では、すでに指摘したように安保体制による日米軍事同盟と憲法9条の相互関係、憲法上の制約を生み出している9条の意義の再確認が重要です。9条改憲によって「失うものの大きさ」と「招き寄せるリスクの危うさ」を、国民に幅広く知らせていく情報発信と草の根での世論への働きかけがますます大きな意味を持つことになります。
 同時に、野党共闘の必要性と成果についても再確認し、先の総選挙と今回の参院選を含めた総括と反省をきちんと行い、それぞれの地域や選挙区で立憲民主党の覚悟を問い、野党共闘の再建に向けての努力を開始しなければなりません。

 今回の選挙の結果、直面することになった困難な事態を打開するための活路は共闘にしかありません。力を合わせること以外に情勢を切り開くことのできる道はなく、どれだけの覚悟を持って腰を据えた取り組みができるのかが問われています。
 何もしない岸田政権ですが、大軍拡と改憲だけは執念を持って実行する意図を示しています。国政選挙での審判を受けることのない「黄金の3年間」を許さず、早期に与党を追い込んで解散・総選挙を勝ち取り、活憲の政府に向けての展望を生み出すことが、これからの大きな課題です。

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7月10日(日) 歴史的な岐路に立つ参院選で誤りのない一票の行使を [参院選]

 いよいよこの国の命運がかかった参院選の投票日を迎えました。一昨日に突発した安倍元首相への銃撃・殺害事件によって、参院選をめぐる情勢はますます混とんとし予断の許さないものとなってきています。
 言論の自由への挑戦である暴力によって、民主主義の根幹である選挙結果が左右されてはなりません。この蛮行に惑わされることなく、本日の投票日において有権者の皆さんが正しい選択を行うことを、再度訴えたいと思います。

 安倍元首相に対する突然の銃撃と直後の死去は大きな衝撃を持って迎えられ、テレビや新聞などのメディアは事件の報道で溢れています。その分、最終盤を迎えた参院選についての報道量は制約され、有権者の関心が薄らいで投票率が下がるのではないかと心配しています。
 安倍元首相は最長を記録した首相の経験者であるだけでなく、自民党の有力政治家で最大派閥の安倍派を率いる領袖です。その悲劇的な最期が多くの国民の驚きと同情を引くのは理解できますが、それが選挙に利用されたり、自民党への同情票の増大を生んだりすることが懸念されます。
 突然訪れた非業の死でもあり、死者にムチ打たないという日本的な慣行によって安倍元首相の功績が過大に評価される傾向も生まれています。その死を悼む言葉は当然としても、それとともに様々な形での美化がふりまかれ右翼的な立場や極論の正当化まで行われることは許されません。

 とりわけ、安倍首相のタカ派的で有害な政策や主張については、蛮行への怒りや暴力への憎しみ、突然の死を悼み悲劇を悲しむ気持ちとは区別して、冷静な批判や問題点の指摘が必要ではないでしょうか。日本経済の停滞と生活の困難を招いたアベノミクス、国民の命と健康を危機にさらしたコロナ対策、モリカケ桜前夜祭などに典型的な政治・行政の私物化、大軍拡や核共有と9条改憲についての極右靖国派としての謬論は厳しく批判されなければなりません。
 今回の参院選が、これからの日本が進むことになるであろう岐路にあるからこそ、このような峻別はなおさら重要なものになっています。ここで岐路というのは、一つは憲法を放棄する「棄憲の国」への道、もう一つは憲法を活かす「活憲の国」への道という二つの道の分かれ目という意味です。
 言うまでもなく、前者は現在の与党と維新などの補完野党による9条改憲によって生みだされる国であり、後者は立憲野党の連合政権によって築かれる国のあり方です。日本の未来を切り開き希望を生み出すのは、後者の道しかありません。

 この点で再度強調しておきたいのは憲法9条の効用であり、その「ありがたさ」です。9条改憲を主張している人々はもちろんのこと、それに反対している人々を含めて、その「ありがたさ」、意義や効用が十分に理解されず、9条改憲によって「失われるものの大きさ」が十分に認識されていないように思われますので、再度確認しておきたいと思います。

 その第1は、憲法9条が戦争加担への防波堤であったということです。安保条約に基づく日米軍事同盟によって日本はアメリカが始めた不正義のベトナム戦争やイラク戦争に協力させられましたが、9条という憲法上の制約があるために全面的な加担を免れることができました。これは歴史的な事実として確認することができます。

 第2に、自衛隊員を戦火から守るバリアーだったということです。日米軍事同盟によって自衛隊はイラク戦争に引きずり込まれましたが、「非戦闘地域」で活動した自衛隊は基本的には「戦闘」に巻き込まれず、殺すことも殺されることもなかったのは9条のおかげでした。このことも、これまで繰り返し書いてきたとおりです。

 第3に、戦後における経済成長の原動力だったということです。これも「9条の経済効果」としてこれまで何度も指摘してきましたが、平和経済の下で国富を主として民生や産業振興に振り向けることができた結果、一時はアメリカと経済摩擦を引き起こすほどの経済成長を実現することができました。

 第4に、学術研究の自由な発展を促進する力でもあったということです。日本学術会議は9条の趣旨を学術にあてはめて軍事研究を拒否してきたため、兵器への実用化や軍事転用などに惑わされることなく地道な基礎研究に邁進し、ノーベル賞並みの研究成果を上げることができました。

 第5に、平和外交の推進に向けての可能性を生み出す力だったということです。しかし、残念ながらこれは可能性にとどまり具体化することはありませんでした。
 日本外交は自主性自立性を持たず、アメリカの後追いにすぎなかったために平和な東アジアを構想する力がなく将来のビジョンもうち出すことができなかったからです。これは政権交代後における活憲の政府による9条を活かした独自外交に期待するしかありません。

 少なくとも憲法9条にはこれだけの意義と効用、「ありがたさ」があったのです。それを変えることで「失われるものの大きさ」も知らず、ただただ改憲を声高に叫ぶことがどれだけ愚かなことか、お分かりいただけましたでしょうか。
 これらのことも念頭において、投票所に足を向けていただければ幸いです。未来に向けての希望を捨て去るのか活かすのか、本日の選択の意味を十分に理解して一票を投じてもらいたいと願うに切なるものがあるからです。

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7月9日(土) 自民・公明の与党と維新の会を勝たせてはならないこれだけの理由(その2) [参院選]

 安倍晋三元首相に対する銃撃・殺害という驚天動地の事件が勃発しました。参院選での選挙演説中での事件であり、言論に対するテロ、民主主義への挑戦にほかならず、満腔の怒りを持って糾弾するものです。凶弾に倒れ、犠牲となられた安倍元首相のご冥福をお祈りしたいと思います。
 同時に、安倍元首相はモリカケ桜前夜祭などを通じて政治・行政の私物化や虚偽答弁、公文書の偽造と改ざん、忖度と追従のまん延を招くことで政治への信頼を大きく傷つけ、批判する人々を「こんな人たち」と言って分断・敵視し、ウクライナ侵略に便乗して敵基地攻撃論や核共有論を叫び、力対力の論理を振りかざして大軍拡と9条改憲を主張するなど、暴力による言論の圧殺に道を開くような風潮を強める役割を演じてきました。このような自由と民主主義を敵視する右傾化や力づくで問題を解決しようとする社会風潮を強めた責任の一端は安倍元首相自身にもあったことは否定できず、その結果とも言える凶弾に倒れることで自ら先導してきた社会変容がどれほど大きな問題を抱えているか、身をもって示す形となったのは皮肉と言うほかありません。
 選挙の自由を犯す犯罪行為を防ぎ、新たな悲劇を繰り返さないためにも、社会の分断と敵意を扇動してきた安倍元首相の主張や志を受け継いではならず、その仲間である自民・公明の与党と維新を勝たせてはなりません。参院選最終盤に勃発したこのような事件が選挙の結果にどう影響するかは不明ですが、少なくとも卑劣な蛮行に屈するような形で選挙活動を自粛・自制したり、「弔い合戦」などと言って安倍元首相の死を政治的に利用したりすることは許されず、有権者も感情に流されることなく冷静な判断に基づいて投票していただきたいと思います。

 ということで、昨日の続きです。

 第4に、スキャンダルだらけの政党・政治家の居直りと逃亡を許して良いのかという問題があります。今回の選挙に至るまでもそうでしたが、選挙期間中も「政治とカネ」の問題や政治家としての資質に疑問符がつくような暴言が相次いでいるからです。
 つい最近も、自民党の茂木幹事長が消費税の減税をめぐって「年金財源を3割カットしなければならない」「社会保障を3割カットしなければいけない」などと恫喝発言を繰り返し、舌禍の常連で「ナチスの手口に学べ」でよく知られる麻生副総裁が「子どもの時にいじめられた子はどんな子だった。弱い子がいじめられる。強いやつはいじめられない」と、プーチンに侵略されたウクライナの方が悪かったかのような発言を行っています。山際経済再生相も「野党の人から来る話はわれわれ政府は何一つ聞きませんよ。だから皆さんの生活を本当に良くしようと思うなら、やはり自民党、与党の政治家を議員にしなくてはいけない」と言い放ちました。
 大臣は公職ですから、公平で中立的な立場から国民全体の話を聞かなければならないのは当然でしょう。暴言では維新も負けておらず、このような「本音」の人を大臣や議員・候補者にして政治の場でのモラルの崩壊を放置し、安倍元首相の桜を見る会前夜祭をめぐる「政治とカネ」についての疑惑の数々を放置し隠ぺいしてきた責任を今回の選挙できちんと問わなければなりません。

 第5に、翼賛体制づくりが進んでいることにもはっきりとした異議申し立てを行い、与党化を阻まなければなりません。この点では、野党の分断と与党へのすり寄りを強めてきている維新の会とそれに引きずられている国民民主党の責任を問う必要があります。
 野党であるにもかかわらず自民党以上に右翼的でタカ派、改憲をたきつけて新自由主義を推進する勢力となっているのが維新の会です。「身を切る改革」と言いながら収入の8割の30億円は政党助成金頼みで、これについては口をつぐんでいます。
 松井代表は「原子力潜水艦は非常に大きな防衛力強化になる」「核共有」の「議論は当然だ」「日本は資本主義」だから「格差は受け入れるべきだ」などの発言を繰り返し、原発についても岸田首相に「再稼働の決断を」迫り、改憲についても「発議までのスケジュールをしっかりと」示すように求めています。政権が交代しても、このような政党が加わったものであれば、それは政治が前に進むのではなく後に退く政権「後退」にしかならないでしょう。

 第6に、このような争点について正しい活路を示すことができるのは立憲野党による共闘しかありません。野党共闘を再建し、次の総選挙に向けての新たな展望を開くためにも、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社会民主党の立憲野党を勝利させる必要があります。
 与党と翼賛体制づくりに手をかす補完野党に対抗し、それとは異なるもう一つの選択肢を提示するまともな野党、9条をはじめとした憲法条項を忠実に守り政治と生活に活かす立憲野党の勝利によって日本の政治を立て直さなければなりません。すでに壊れ始めている日本を救う道は、一日も早く野党連合政権を樹立することです。
 強すぎる与党とそれにすり寄る補完野党の増大は、政治の緊張を損ない国会での議論を低調なものにしてしまいます。行政府と立法府の間の緊張関係を取り戻し、行政に対する国会のチェック機能を回復するためにも、参議院における強い野党の存在と効果的な行政監視、鋭い問題解明、厳しい責任追及が不可欠です。

 参議院選挙も、安倍元首相への銃撃と殺害という悲劇によって情勢は混とんとしてきました。いつでも選挙情勢は最終盤でがらりと変わる可能性がありますが、今回は特に最終盤での取り組みが大きな意味を持つように思われます。
 戦争に引きずり込むような政治ではなく、暮らしに希望が持てるような政治の実現に向けて、気候危機打開やジェンダー平等に関心を持たない政党・政治家の退場を求めて、ぜひ一票を投じていただきたいと思います。政治に関心を持たず、今まで投票してこなかった政党支持なし層などの「沈黙の艦隊」が政治の転換を求めて動き出すとき、そこにこそ希望が生まれるのですから。

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7月8日(金) 自民・公明の与党と維新の会を勝たせてはならないこれだけの理由(その1) [参院選]

 戦争と平和、命とくらしをめぐって注目された参議院選挙が最終盤を迎えました。その選挙情勢は相変わらず自民・公明の与党が堅調で、過半数確保は確実のようです。
 野党では、維新の会が立憲民主党を猛追しており、比例代表で野党第一党になる可能性があると報じられています。まだ4割近くの有権者が投票先を決めていないという調査もあり、情勢が大きく変わる可能性もありますが、このまま自民・公明の与党と維新が勝つということで良いのでしょうか。

 第1に、今回の選挙では物価高に焦点が当たり、それに抗して暮らしを守るのか壊すのかが大きな争点になりました。低収入と格差の拡大、新自由主義とアベノミクスの継続、異次元の金融緩和と極端な円安、経済無策を放置してよいのかも問われています。
 このような政治を続けてきた与党が勝てば、それで良いと有権者によって承認されたような形になりますし、大企業のための新自由主義的な規制緩和を主張する維新の会が勝てば経済はもっと悪くなります。世論調査では反対が多い岸田政権の物価高対策についても、このままで良いということになってしまうでしょう、
 野党のほとんどは消費税の減税を打ち出しており、参院選は消費税減税をめぐって事実上の国民投票のようになってきました。物価高の大きな波が押し寄せてくるのは夏から秋にかけてのこれからですから、与党が勝てば国民生活の危機はさらに大きなものとなるにちがいありません。

 第2に、今回の参院選はウクライナ侵略の後ということもあって、戦争か平和かの岐路での重大な選択が問われることになりました。選挙の結果次第では、GDP1%の防衛費が倍加され11兆円にまで増やそうという大軍拡に向けての推進力を与えることになってしまいます。
 このような大軍拡は周辺諸国の警戒心を高めて軍拡競争を引き起こし、国富を軍事に振り向けることによって経済成長の足かせとなり、財源確保のための増税によって国民生活を脅かすことになるでしょう。百害あって一利もない大軍拡にゴーサインを出してはなりません。
 翼賛体制の下、知らず知らずのうちに戦争へと引きずり込まれた戦前のようになってきました。自民党だけではなく維新の会も防衛費の倍増と核共有を主張しており、これにストップをかける最大のチャンスが今回の選挙です。

 第3に、このような好戦的なキナ臭い空気が強まるなかで、憲法9条が危うくなってきました。憲法9条を捨てるのか活かすのかが問われる重大な局面が生じています。
 この選挙で、与党だけでなく自民党以上に好戦的で9条改憲に積極的な維新の会を勝利させれば、選挙後の国会で改憲発議に向けての動きが強まるでしょう。もし、憲法9条に自衛隊を明記することになれば、平和主義は空洞化し、戦争への歯止めが外され、自衛隊を守ってきたバリアーが消え、学術研究も軍事転用が優先されて自由に発展できず、平和経済から軍事経済へと転換することによって国際的な競争力を失ってしまうにちがいありません。
 これまでの日本は、安保体制によってアメリが始めた戦争への協力を強いられましたが、9条という憲法上の制約があるために全面的な加担を断り戦争への深入りを避けることができました。憲法9条を盾にして、ベトナム戦争に協力はしても自衛隊を派遣せず、イラクに陸上自衛隊を派遣しても「非戦闘地域」のサマーワで水の供給や道路の補修という非軍事的業務に従事したため殺すことも殺されることもなかったという事実を忘れてはなりません。

 今回の選挙では、この9条の制約、日本を守ってきた盾を放り投げても良いのかが問われています。まさに、日本の平和と安全、これからの進路と未来を左右する重大な選択がかかった選挙です。
 平和と安全を守る決意をはっきりと示すためにも、自民・公明と維新の会などの改憲勢力にきっぱりとした審判を下さなければなりません。憲法9条こそ戦争への防波堤であり、日本を守ってきたのですから。
(この項続く)

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7月4日(月) 日本共産党への「4つの期待」 [参院選]

 6月28日付の『しんぶん赤旗』に「共産党ここに期待」として私の談話が掲載され、6月30日のこのブログにもアップさせていただきました。「今こそ〝ソフトパワー〟」という見出しでの談話でしたが、それは私が語った「期待」のほんの一部にすぎません。
 インタビューされたときに述べた内容について、この場を借りて補足させていただきたいと思います。それは端的に言えば以下のような「4つの期待」というものです。

 第1は、壊れ始めている日本を救い、立て直してほしいということです。今の日本はすでに様々な面で壊れてきているからです。
 壊してきたのは歴代の自公政権ですが、それが急速に進んだのは第2次安倍政権のときからでした。いくつか例示すれば、消費税の8%から10%への引き上げによる家計の破壊、新型コロナウイルス感染への無策による健康の破壊、最近の急激な物価高による生活の破壊、そしてアベノミクスの下で進行した賃金停滞・年金削減による収入の破壊などがあり、安倍政権の下で次々に露呈したモラルの崩壊と政治・行政の私物化も目に余るものがありました。
 これらにストップをかけ、立て直すことはもはや待ったなしの急務となっています。アベノミクスと新自由主義に対する追及の先頭に立ち、消費税の減税、最賃1500円、内部留保への課税など「やさしく強い経済」の実現に向けて具体的な政策を掲げている日本共産党に、大きな期待を寄せたいと思います。

 第2は、大軍拡・改憲にストップをかけ、憲法9条と日本の安全を守ってほしいということです。ロシアによるウクライナ侵略という惨事に便乗した軍拡志向の大合唱に対して、防衛費の増額に反対し、東アジアにおける平和外交のビジョンを掲げているのは日本共産党だけになってしまったからです。
 周辺諸国や国際社会から見れば、日本は戦争でも始める気なのかと疑われるようなキナ臭い好戦的雰囲気が高まっています。そのようなとき、軍拡と9条改憲に反対し、外交と対話による緊張の緩和を主張している共産党の存在は貴重です。
 赤旗の取材でもソフトパワーの重要性について話しましたが、結成以来侵略戦争と植民地支配に命がけで反対し、100年の時を経た現在も反戦・平和を求めている日本共産党は、その存在自体が周辺諸国の敵意を減らし信頼を確保するためのソフトパワーの一つにほかなりません。日本に対する国際社会の懸念と疑念を和らげる役割を果たしている共産党の存在と役割は、これまで以上に大きなものになっているというべきでしょう。

 第3は、時代錯誤の逆行を阻み、日本が世界と時代の流れに合流するようにしてほしいということです。この点でも植民地支配に反対して自由と民主的な権利を求め続けてきた共産党の歴史とその発言は大きな価値を持ち、一段と輝きを増すにちがいありません。
 アメリカでの人種差別反対やBLM運動の展開などに触発され、世界的に奴隷貿易と侵略戦争、植民地支配という負の歴史を直視し、その汚点を拭い去るための見直しが進んでいます。ところが日本では、このような負の歴史から目を背けるばかりか、正当化するための「歴史戦」が叫ばれ、同じアメリカの同盟国である韓国とさえギクシャクした関係になっています。
 このような近隣諸国との不正常な関係を正し、北朝鮮や中国を含めた不和の解消と緊張緩和、友好的な国際関係を確立することが必要ですが、そのような展望とビジョンを打ち出しているのも共産党だけです。環境危機の解決とジェンダー平等の実現、脱原発と再生可能エネルギーへの転換、国連の核兵器禁止条約の批准と締約国会議への参加などの国際的な流れに合流することを掲げている共産党こそ、歴史こそ古いものの時代の最先端を行く政党ではないでしょうか。

 そして第4に、与党にすり寄る翼賛化ではなく野党としての本来の在り方を示し、野党共闘を立て直してほしいということです。「野党は批判ばかり」という批判を恐れて一部野党が与党に接近し翼賛化を強めているなかで、まともな野党の存在と共闘への誠意ある対応がますます重要になってきているからです。
 昨年の総選挙以降、維新の会は自民党以上の極右・タカ派路線を強め、国民民主党は当初予算に賛成して不信任案に反対し、連合に揺さぶられて動揺した立憲民主党も提案路線を打ち出すなど野党としてのあり方が問われる事態が続出した結果、参院選に向けての野党共闘も一部にとどまりました。野党の翼賛化が強まったために政府に対する国会のチェック機能は弱まり、議会制民主主義の空洞化も進行しています。
 このような状況を打開するためには、国民連合政権の提唱以降、野党共闘の要石・推進力としての役割を果たしてきた共産党が、野党内での発言力を強めるしかありません。安倍元首相の桜を見る会前夜祭の疑惑の解明など、その調査力と追及力は実証済みで、このような政党こそ本来の野党としての姿を示すことができるのではないでしょうか。

 このままでは日本は滅びると、危機感を強めています。それを阻止するのが、今度の参院選の最大の意義です。まだ一週間近くの時間が残されていますから、有権者の皆さんが熟慮され誤りのない選択をされることを大いに期待したいと思います。
 1998年の参院選では、選挙前に楽勝すると見らていた自民党が橋本首相の恒久減税をめぐる発言の揺れなどもあって大敗し、選挙後に橋本首相は辞任に追い込まれました。今回の参院選でも、自民党の茂木幹事長が「消費税減税なら年金は3割カットだ」という恫喝発言で怒りを買っており、同じような歴史が繰り返されないとも限りません。
 オーストラリアやフランスの総選挙では、物価高騰への批判が高まり与党が敗北しています。この世界の流れに、ぜひ日本も加わってほしいと願っています。

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6月28日(火) 大軍拡・9条改憲論に乗せられてはならないこれだけの理由(その2) [参院選]

 『東京新聞』の昨日(6月27日付)の社説は「外交安保政策の基本は、戦争を始めない、始めさせないことだ。防衛力増強に偏った姿勢はこの基本に背くことにならないか」と問うています。まさにその通りで、大軍拡は「外交安保政策の基本」にも憲法の平和主義にも「背くことになる」のは明らかです。

 この点で重要なのは、このような「防衛力偏重」路線は安保条約に基づく日米軍事同盟を背景としているということです。それと憲法9条改憲論は一体のものだという点も強調しておかなければなりません。
 安保に基づく日米軍事同盟は日本を守ってきたのではなく、日本を戦争に引きずり込む役割を果たしてきました。これに対して憲法9条は戦争への加担と協力に対する重要な歯止めとなってきました。
 歴史を振り返ってみれば、安保こそが戦争への呼び水であり9条はそれに対するバリアーとなってきたことが明らかになります。憲法9条の改憲を論ずるにあたっては、このような両者の相互関係を改めて確認し、再認識する必要があります。

 歴史的な事実としては、ベトナム戦争とイラク戦争での事例が象徴的です。安保によって日本はベトナム戦争に協力させられ、沖縄の米軍基地は出撃・補給・休養などの面で重要な役割を果たしました。
 しかし、9条などの憲法上の制約があったために、直接、自衛隊の部隊を派遣することはありませんでした。この点は、韓国などの同盟国とは大きく異なっています。
 イラク戦争では安保によって陸・海・空の自衛隊が派遣されましたが、陸上自衛隊が赴いたのは「非戦闘地域」とされるサマーワで、飲料水の供給や道路の補修などの非軍事的業務に従事し、PTSDの被害はありましたが殺すことも殺されることもなく引き上げてきました。自衛隊は「9条のバリアー」によって守られていたのです。

 なお、これとの関連でとりわけ強調しておきたいのは、沖縄米軍基地の役割とその意味についてです。沖縄に駐留する米軍は日本の防衛ではなく他国への殴り込みを主要な任務とする「海兵隊」であることはよく知られていますが、その米軍基地はベトナム戦争で出撃基地となり、爆撃機がベトナムに向けて飛び立っていくなど重要な役割を果たしました。
 沖縄での基地がなければ米軍はベトナムに介入したり、戦争を継続したりできなかったかもしれません。ベトナムへの軍事介入はトンキン湾事件のでっち上げを口実にした不正義の戦争で、アメリカの若者5万8000人が亡くなり、ドルの支配体制の崩壊をもたらすなどアメリカにとっては大きな傷跡を残す痛恨の失敗でした。
 アメリカはベトナムでの戦争に介入すべきではなく、大きな過ちを犯しました。沖縄に米軍基地が無ければ避けられたかもしれない過ちであり、この点で沖縄の米軍基地は沖縄にとってだけでなく、アメリカにとっても無いほうがよかったのです。

 このことは、これからあるかもしれないと言われている「台湾有事」にとっても、大きな教訓を残しています。台湾周辺での偶発的な衝突が米中間の本格的な戦争に発展する誘因となるかもしれないからです。
 沖縄での基地や南西諸島での自衛隊のミサイル基地が無ければ断念するかもしれない戦争を、基地あるがゆえに踏み切ってしまうリスクがあります。こうして、今後予想される米中対決と台湾有事に際しても、沖縄の米軍基地は軍事的対抗の呼び水になるかもしれません。
 しかも、戦後のアメリカは中南米やアフリカ、インドシナや中東などで、不当な軍事介入を繰り返して失敗を積み重ね、安保という日米軍事同盟に縛られて自主性を持たない日本政府はこれに追随するばかりでした。対北朝鮮や中国に対してだけアメリカは間違えず、日本政府も自主的な対応が可能だと言えるのでしょうか。

 その上、台湾有事への自衛隊参戦のリスクは、これまで以上に高まっています。平和安保法制(戦争法)によって集団的自衛権の一部が容認され、米中間の軍事的衝突が生じ、日本が攻撃されていなくても存立危機事態と認定されれば、自衛隊は米艦防護などのために共同作戦体制に組み込まれることになります。
 もし、憲法9条に自衛隊が書き込まれれば、もはや憲法上の制約を理由にこのような参戦を断ることはできなくなります。というより、自動的な参戦によるフルスペック(全面的な)での戦争協力を可能とするために、9条に自衛隊を書き込もうとしているのです。
 大軍拡と9条改憲はアメリカによる台湾海峡への軍事介入という戦争への呼び水になるかもしれず、日本を戦争から守り自衛隊員のバリアーとなってきた憲法上の制約が失われれば、もはや戦争を避ける歯止めはなく自衛隊は戦火にさらされることになります。そうならないことを祈るような気持ちで見つめているのは、自衛隊員とその家族、関係者の皆さんではないでしょうか。

 もう一つ、憲法9条が果たしてきた重要な役割について指摘しておきたいと思います。それは「9条の経済効果」と呼ばれるものです。9条は防衛費ではなく民生への投資を増やし、平和経済の確立によって戦後の高度経済成長を生み出すという大きな成果をもたらしました。
 その結果、アメリカにとって日本は経済摩擦を引き起こすほどの手ごわいライバルに成長したのです。そこでアメリカが持ち出してきたのが米国製兵器の購入拡大と防衛分担であり、最近では合同軍事研究と経済安全保障です。これらによって平和経済から軍事経済へと転換させ、ひいては日本の経済成長の足を引っ張ることでアメリカのライバルや脅威にならないようにしようと考えているのではないでしょうか。
 自民党や維新の会が叫んでいる大軍拡や9条改憲、学術研究の軍事化、経済・貿易面での安全保障上の制約などは全てこのような思惑に沿ったものです。大軍拡と9条改憲によって失われるのは、平和国家としてのブランドを生みだした日本への好印象と魅力、文化・芸術・人的交流などの安全保障のソフトパワーだけでなく、「9条の経済効果」がもたらした平和経済としての成長力、学術研究の発展と技術開発力などでもあるということを忘れないようにしたいものです。

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6月27日(月) 大軍拡・9条改憲論に乗せられてはならないこれだけの理由(その1) [参院選]

 「平和を守るために 防衛力偏重は打開策か」
 これは今日付けの『東京新聞』の社説です。これを読んで、私なりの警告を発しなければならないと思い、急遽「大軍拡・9条改憲論に乗せられてはならない理由」を書くことにしました。
 これは講演などで繰り返し話してきたことですが、改めて強調する必要があるように感じました。というのは、「防衛力偏重」を批判したこの社説ですら「厳しさを増す周辺情勢に応じて防衛力を整備する必要性は認めるとしても」と書いていたからです。

 「なんだ。防衛力を整備する必要性は認めるんかい」と思いました。「防衛力の整備」はしても「偏重」してはならないというのが、東京新聞の立場だということになります。商業新聞の社説としては、ここまでが限界ということでしょうか。
 しかし、私の主張は違います。「整備する必要性」があるのは外交力であって、必要なのは外交・安全保障政策の自主性自立性です。
 社説は「世界や日本周辺の情勢をこれ以上、緊張させないために何をすべきか」を問い、「短期間に防衛費を倍増すれば、周辺諸国の警戒を招いて軍拡競争に拍車をかけ、逆に緊張を高める『安全保障のジレンマ』に陥りかねない」と警告しています。財源も示されていないこと、世界第3位の「軍事大国」になること、「敵基地攻撃能力を持てば先制攻撃の意図を疑われる」こと、そうなれば「専守防衛」とは言い切れず、「平和国家の道から外れてしまうのではないか」とも書いています。これらの指摘はすべて正しいものですが、批判としては中途半端で弱いと言わざるを得ません。

 5年という短期間に倍増されなくても米製兵器の爆買いなどですでに防衛費は増え続けており、日本周辺の情勢は緊張と厳しさを増しています。「これ以上、緊張させないために」は防衛力整備を口実とした軍拡路線をストップさせ、憲法9条の路線に立ち戻ること以外にありません。
 社説は「防衛力の主眼は、日本を攻撃しても反撃されて目的を達することができないと思わせる『抑止力』だ」と指摘しています。これもよく知られている一般的な説明ですが、問題は「思わせる」というところにあります。
 「目的を達することができない」と思うかどうかは相手国の主観(意図)に委ねられており、そう「思わせる」ためにどのような軍事力がどれだけ必要なのかは不明です。そのために「軍拡競争に拍車をかけ」、逆に緊張が高まる「ジレンマ」に陥ることになります。このようなジレンマにすでに陥り緊張を高めているのが、今の日本ではないでしょうか。
 
 5年間に防衛費を倍増するという大軍拡論だけではありません。敵基地攻撃能力保有論も、相手国の懸念を強め緊張を高めることは明らかです。
 相手国のミサイルが発射される前にその国の中枢部を攻撃するというのですから、日本からの攻撃が先になります。「反撃能力」と言ってゴマ化しても、先に攻撃すれば「先制攻撃」にほかならず、防衛のための「特別軍事作戦」だと言ってウクライナを攻撃したプーチンと変わりありません。
 「専守防衛」だとの言い訳は通用せず、先制攻撃を禁じた国連憲章に違反し、今日のロシアと同様、国際的に孤立することは明らかです。すでに日本でこのような議論が堂々となされ、それが国政選挙で与党や一部野党の公約とされているという事実は、「軍事大国」となって先制攻撃を行うと国際社会に向けて宣言し、「平和国家の道」からの離脱を表明しているようなものではないでしょうか。(明日に続く)

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7月22日(月) 与党が過半数を維持したものの改憲勢力が3分の2を下回った参院選 [参院選]

 注目の参院選の結果が出ました。自民・公明の獲得議席は71議席で、改選の過半数も非改選議席を加えた参院の過半数も維持しましたが、改憲発議のために必要な3分の2議席については、維新を加えても85議席には達せず、下回ることになりました。

 選挙区と比例代表を合わせた改選124議席の獲得議席は、自民党が57となって改選66議席を下回っています。公明党は改選11を上回る14議席を得て、与党は71議席になりました。
 野党は立憲民主党が改選9を上回る17、日本維新の会が改選7を上回る10でした。共産党は改選8を下回る7、国民民主党も改選8より少ない6となっています。
 社民党は改選議席と同じ1、政治団体「れいわ新選組」は比例で2議席を獲得しましたが、代表の山本太郎氏は落選しています。政治団体「NHKから国民を守る党」が比例代表で1議席を初めて獲得しました。

 今回の選挙の結果、さし当り改憲暴走にはストップがかかったことになります。とはいえ、安倍首相は与党が過半数の維持に成功したことで、引き続き改憲に向けての攻勢を強めるにちがいありません。
 事実、21日夜のテレビ番組で、改憲について「議論していけという国民の声を頂いた。国会で議論が進んでいくことを期待したい」と述べています。早期の改憲発議を目指す考えに変わりはありません。
 「国民民主党の中にも議論を進めていくべきだ、という方はたくさんいると思う」と指摘するなど、「議論」を手掛かりに立憲野党にも手を突っ込んで分断し一部を引き込むつもりなのでしょう。安倍首相の改憲暴走をめぐる攻防は、これからも続くことになります。

 注目の1人区ですが、野党共闘の統一候補が10勝し、11勝した前回並みの結果となりました。自民は北陸・中国・九州地方を中心に議席を積み上げ、野党は山形、新潟、愛媛、大分などで勝利しています。
 野党共闘でなければ、これだけの成績を残すことは不可能だったでしょう。この実績と経験に学び、早くから市民と野党の共闘を実現することが必要です。
 次は総選挙で、選挙区は全て1対1の構図になるのですから、参院選以上に市民と野党との共闘と連携、統一候補の擁立が重要になります。この間の経験を生かして、今から準備を始めなければなりません。

 今回の選挙結果についての深い分析は今後の課題となりますが、社会の右傾化とマスメディア、とりわけテレビの「安倍チャンネル化」が大きく影響しているように思われます。投票率は50%を割るなど有権者は選挙への関心を失い、選挙報道は少なく、とりわけNHKテレビは政権寄りの報道に終始しました。
 政治への有権者の不満や批判は「れいわ新選組」への熱狂的な支持などに示されましたが、残念ながらこれも広く報道されることはなく、一部にとどまりました。憲法問題では議論を呼びかけている安倍首相ですが、国会では予算員委員会を開かず議論を避け続け、野党の出番を奪ってきたことも与党に有利に働きました。
 「改元フィーバー」や天皇代替わり、トランプ米大統領へのおもてなし外交などの「目くらまし」によって国民を幻惑することに成功した安倍首相の「作戦勝ち」というところでしょうか。「隠す・ごまかす・嘘をつく」という「安倍3原則」が、今回の参院選での選挙活動でも駆使され、一定の効果を上げたということになるかもしれません。

 今回の選挙の結果、与党は過半数を維持して政権の「安定」を確保しましたが、争点となった問題や課題は何一つとして解決していません。日韓関係の悪化、北方領土交渉や拉致問題の行き詰まりなど外交はいずれも波乱含みで、日米貿易交渉や武器の爆買い、ホルムズ海峡での「有志連合」など、トランプ政権からの無理難題は一挙に押し寄せてくるでしょう。
 内政面でも消費税の10%への引き上げは確実となり、年金不安や消費不況の再発、軽減税率やポイント還元などをめぐる消費の現場での大混乱は避けられません。米中貿易摩擦による景気の下振れリスク、アベノミクスによる異次元金融緩和政策からの「出口戦略」による国債暴落と経済のメルトダウンも大きな懸念です。
 このような中で安倍首相は総裁任期を終え、再来年の秋には衆院議員の任期が切れます。政権は「安定」しても、日本政治と国民生活の「安定」には程遠い疾風怒濤の航海への船出だと言うべきでしょうか。


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7月20日(土) 日本の転落をストップできる「最後のチャンス」かもしれない参院選での投票 [参院選]

 「日本の明日を切り崩す」

 安倍首相が写っているポスターの「日本の明日を切り拓く」という言葉をこのように変えた偽の画像がインターネット上で出回っているそうです。「切り拓く」を「切り崩す」と変えただけで、他は全く同じものです。
 この画像は事実ではない情報だと、ファクトチェックで指摘されています。自民党が出したポスターではないという点では「事実」ではありませんが、安倍首相が「日本の明日を切り崩す」首相だというのは、事実そのものではないでしょうか。
 そうならないように、明日の投票日には必ず投票所に足を運んで投票していただきたいと思います。棄権したり自公の与党や維新に投票したりすることは、現状維持ではなく「転落」への加担であり、「日本の明日を切り崩す」ことに手を貸す結果になるのですから。

 今回の選挙での最大の争点は「隠す・ごまかす・嘘をつく」政治手法を常用してきた安倍首相による政治運営を許すのか、それとも阻止するのかという点にあります。このような安倍政治を許さない、お灸を据えたいとの願いを、一票に込めて投票していただきたいものです。
 安倍首相はデフレ脱却、被災地の復興加速、放射能の制御、北方領土の返還、拉致被害者を取り戻すなどを約束してきました。しかし、全て真っ赤な嘘で、全く実現していないではありませんか。
 だから、「偽造・捏造・安倍晋三」などと言われるのです。もはや「安倍晋三」ではなく「安倍ねつ造」と言うべきで、このような嘘つきには「サヨナラ」してもらうしかありません。

 これまでの安倍政治を支えてきた二つの柱は、外交・安全保障と経済・財政でした。しかし、この両方とも破たんが明確になっています。
 対北朝鮮、対ロシア外交は失敗続き、韓国との関係は戦後最悪で、アメリカの顔色ばかり窺っている「おもてなし」外交では、トランプ大統領が農産品の関税自由化と武器爆買いの「密約」をほのめかしています。対米外交は「表なし」ですから、裏ばかりなのも当然でしょう。
 アベノミクスも2%のインフレ目標は達成できず、6月の短観は2期連続の悪化で景気は悪く消費不況が続いています。アベノミクスは「アホノミス」となり、異次元金融緩和の「黒田バズーカ」は「ズー」が抜けて「黒田バカ」になってしまいました。

 安倍首相は「憲法について議論する政党か、議論さえしない政党かを選んでもらいたい」などと言っていますが、これも嘘です。真の争点は憲法について議論するかどうかではなく、9条改憲を認めるかどうかにあります。
 そもそも国会の予算委員会を3カ月以上も開かず、与野党間の議論から逃げまくったのは一体誰でしょうか。安倍首相その人ではありませんか。
 今回の選挙で急浮上した争点が年金問題です。老後資金として「2000万円貯めろ」ななどと言われても無理だ、そういう前に貯まるだけの給料を払え、金がないなら武器買うな、金があるなら年金に回せ、税金上げずに年金上げろと言おうじゃありませんか。

 秋からの消費税の増税も大きな争点です。税金はお金を持っているものから取ればいいんです。企業の内部留保は446兆円も貯まっているんですから。
 何度も示された県民の意思を無視して進められている沖縄での新基地建設も重要な争点で、土砂を投入すればするほど溝が深まっています。大村湾側の海底は軟弱地盤でマヨネーズのようになっており、こんなところに基地を作れると考えている安倍首相の脳みそもマヨネーズではありませんか。
 公明党のポスターには「小さな声を聞く力」と書いてありますが、消費増税中止や辺野古新基地建設反対という国民や県民の声は届いていないようです。「小さな声」を聞く力はあっても、切実な願いを込めた「大きな声」を聞く力はないということでしょうか。

 これ以外にも、今度の選挙には地方都市と農村地域の存亡がかかっており、一人一人の命と安全が問われています。これまでの生活を変わらず維持するためには、政治を変えなければならないというギリギリの選択に直面しているのです。
 安倍政権の下で小零細兼業農家が淘汰され、TPP11などによって農産物の関税引き下げが進められ、年金不安と消費増税によって生活の基盤が脅かされています。水道民営化、種子法廃止などによって公共の資産が民間にゆだねられ、農地、森林、漁場、医療や介護、労働、教育のような社会的共通資本が企業にさしだされてきました。
 政治による大災害が迫っています。一人一人がその危険性に気づき、自ら「命を守る行動」をとらなければなりません。

 このような政治的大災害の発生を防ぎ、安倍政治を変える力は市民と野党の共闘にあります。32の1人区で共闘が実現し、13項目の政策合意が結ばれるなど共闘の内実は進化してきました。
 選挙区では、1人区なら野党共闘の統一候補に投票していただきたいと思います。複数区では、自民・公明・維新以外の候補に、とりわけ最後の1議席を争っている立憲野党に入れてください。
 なかでも、北海道、千葉、埼玉、神奈川、愛知、大阪、兵庫の選挙区では、最後の1議席を自公維の改憲勢力と共産党が競り合っていると報道されています。これらの選挙区では、共産党候補に1票をお願いいたします。

 かつて改憲論者で論敵であった小林節さんが「70歳の護憲派宣言」をされ「比例は共産党に」と呼びかけておられます。それなのに、政治的な物心ついた時からの「護憲派」だった私が黙っているわけにはいきません。
 小林さんとともに、私も呼びかけたいと思います。「比例は共産党に」と……。

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7月17日(水) 小林節慶応大学名誉教授の共産党への応援ビデオでの演説を聞いた [参院選]

 驚きましたね。小林節慶応大学名誉教授が共産党の応援ビデオに出て「比例は共産党」と訴えているのを見ました。
 安保法制(戦争法)が審議されていたとき、2015年6月4日の衆議院憲法審査会に参考人として国会で証言された小林先生です。あの時も、長谷部恭男、笹田栄司氏とともに集団的自衛権の行使は違憲であると証言して驚かされました。

 私の現役時代、小林さんは改憲派の急先鋒で自民党のブレーンとして有名でした。私にとっては手ごわい論敵だったのです。
 その小林さんは安倍首相の96条改憲論を「裏口入学だ」と批判したころから徐々に変わり始めました。私が八王子市長選挙に立候補した時も、かつての立場の違いを越えて2回も応援に駆けつけてくださいました。
 この時、「かつて向こう側におられた小林先生ですが、気がついたら横にいた。今回は、私の後ろから押し上げて下さろうとしています」と、演説したものです。かつての論敵が心強い味方に変わったことを実感した瞬間でした。

 しかし3年前の参院選で、小林さんは「国民怒りの声」を立ち上げて比例代表に立候補しました。結果的に立憲野党を分断するような形になり、当選者を出すこともできませんでした。
 本人の思いとは裏腹に、市民と野党の共闘から一線を画す形になってしまったのではないでしょうか。その後、政治活動から身を引かれましたが、安倍首相が狙う9条改憲に反対する言論活動を続け、最近になって「70歳の護憲派宣言」を明らかにし、今度の選挙では共産党を応援するビデオに出演するに至ったというわけです。
 ビデオの中では、共産党は企業献金を受け取らず、利権に歪められないので「国民のためになることしか言わない」と語り、「このことに最近気づきました」と仰っています。もっと早く気づいてほしかったと思いますが、しかし気づかないままでいるよりはずっとましです。

 人間はこのようにして、これほど変わることができるのかと、小林さんを見ていてそう思います。このような変化の可能性は、小林さん1人のものではないでしょう。
 事実を知りさえすれば、多くの人が気づき変わっていく可能性を持っているのではないでしょうか。そのような変化の可能性を掘り起こし、多くの有権者に気づいていただくのが選挙運動のもっている大きな意味にほかなりません。
 投票日まであと4日間です。この期間にどれだけ多くの有権者に事実を知らせ、小林さんと同様の「気づき」を呼び起こすことができるかどうかが勝敗を分けるでしょう。

 小林さんは比例代表での共産党支持を訴えていますが、比例だけでなく選挙区でも、北海道、千葉、埼玉、神奈川、愛知、大阪、兵庫などでは、自民・公明の与党や維新の会などの改憲勢力と最後の1議席を争っています。比例代表で議席を伸ばすだけでなく、これらの選挙区でも当選を勝ち取ることが「共産党に勝ってもらうしかない」という小林さんの訴えに応える最善の道ではないでしょうか。

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