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5月30日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月30日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:救いがたい自民党のカネとモラル 裏金で寄付金控除とは盗人猛々しいにも程がある

 租税特別措置法では、個人が政党や政党支部などに寄付した場合、寄付額の約3割が税額控除されるか、あるいは、課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれる。たとえば、500万円を寄付した者は、約3割の150万円が納めた税金の中から戻ってくる仕組みだ。1995年1月、個人献金を促し、国民の政治参加を推し進めるために導入された。寄付金の3割というのは、世界でも有数の高い税額控除だ。

 しかし、菅家の寄付は、特別措置法の趣旨とは程遠く、自分が自分に寄付して税金を取り戻す──という寄付金控除を悪用したものだ。脱税に近い。しかも、寄付した原資は裏金である。こんなことが許されるのか。

 そのうえ、会見した菅家は、税還付について「なんら法に違反していない」と開き直り、1289万円という多額の裏金をつくっていたことについても「派閥が『記載するな』という違法な会計処理をしてきたことが問題だ」と言い放つ始末だ。

 「はたして、自民党議員にはモラルがあるのでしょうか。裏金をつくっていただけでも問題なのに、裏金を使って税の還付まで受けていたとは。国民は怒り狂っているはずです。よくも、寄付金控除を利用してまで私腹を肥やしたものです。いったい、自民党議員は、なにがやりたくて政治家になったのでしょうか。甘い汁を吸うために政治家になったのが大半なのではないか。80人以上が裏金づくりに手を染め、6億円以上もの裏金をつくっていたことを考えると、そうとしか思えません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 岸田首相が「火の玉」になると宣言しながら、自民党が裏金事件の全容解明に後ろ向きなのも、自民党議員の「税逃れ」に問題が発展していくことを恐れているからなのではないか。「不都合な真実」が表沙汰になるのはヤバイと考えているのではないか。実際、裏金議員の寄付金控除の悪用が次々に発覚したら、国民の怒りがさらに大きくなるのは間違いない。

 「野党も大手メディアも、約80人の裏金議員が寄付金控除を利用していたのかどうか、ひとり残らず徹底的に調べるべきです。本来、国会議員は、法律や制度に穴があったら、新しく法律や制度をつくるのが仕事のはずです。そのための立法府でしょう。なのに自民党議員は、租税特別措置法に穴があることを知りながら、これは好都合だと放置し、法の穴を利用して自分たちの利益をはかっていたのだから酷すぎます。法の穴を利用した議員は、立法府から去るべきです」(五十嵐仁氏=前出)


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5月27日(月) 『しんぶん赤旗』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『しんぶん赤旗』5月26日付に掲載されたものです。〕

 政治考 沈没間近の自民 根底に財界第一
 注目集める共産党のたたかい

 自民党国会議員の一人も「4月の3補選で自民党が全敗した後、一時的に政権支持率が上向いたが、これは補選の結果に溜飲を下げた国民の一時的感情を示すものに過ぎず、その後、再び下落に転じている」と指摘。「政治資金規正法の審議が始まったが、誰がいつからどのように裏金づくりをしてきたのか、全く解明がない中で、はぐらかしのような改正案を出しても全く信用されていない。『盗人に法律をつくらせるようなもの』とみられている」と厳しい表情を浮かべます。
 こうした状況に政治学者の五十嵐仁法政大学名誉教授は「ネズミが逃げ出しはじめている」と指摘。「沈没するのが間近い船のように、国民に近い地方の議員たちが深刻な危機を肌身で敏感に感じている。一方、岸田首相はじめ、自民党の上のほうは全く鈍感で旧来のやり方で逃げきれると思っている」と語ります。

 企業献金は聖域

 衆院では政治改革特別委で、政治資金規正法「改正」案の質疑が始まっています。しかし自民党は、「企業の政治活動の自由」を盾に、企業・団体献金には全く手を付けようとしません。裏金づくりの原資となった政治資金パーティー収入をめぐっても、公開基準の引き下げを問題にするだけ。自民案を「評価しない」世論は8割にのぼり、「自民党以外の政権」への期待は過半数に達しています。
 五十嵐氏は「財界本位・アメリカべったりが自民党の本質であり、財界本位の根幹にあるのが企業献金だ。カネをもらって財界の意向に沿った政策を実行する。これに対し成功報酬のような形でカネを出す。自民党にとってこの関係は守らなければならない聖域になっている」と強調します。「だから、自民党はメスを入れるどころか温存しようとしている。パーティー券売買の公表額をどうするかという論点そらしで、パーティー自体や企業献金の禁止というおおもとには絶対に触れない」とし「国会では、企業献金と政治資金パーティーを残すための策謀が企まれている」と告発します。
 自民党の危機的状況の根底には、裏金疑惑だけでなく、実質賃金が下がり続け、異常円安による物価高に歯止めがかからず、消費税増税の一方、法人税は下がり続け大企業の内部留保や富裕層の資産は拡大し続け死に金となる―こうした経済の機能不全への無策があります。また戦争する国づくり、辺野古埋め立てや地方自治壊しの強行など民主主義と立憲主義の破壊が極限に達しています。

 共産党躍進こそ

 五十嵐氏は、「民意は政権交代にある。これに応える受け皿をつくれるかが野党に問われている」と指摘。その上で「その中には共産党を含めなければならない。裏金問題の最大の功労者は共産党だ。企業献金も政党助成金も受け取らず、個人献金と事業収入で活動し、政治とカネの問題でもお手本になっている。共産党を含めた共闘で政権交代をめざすのが政治改革の王道であり、本道だ」と力を込めます。


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5月26日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月26日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:衆院3補選より状況悪化 自民からどんどん票が逃げている

 安倍派が裏金づくりに悪用していた「政治資金パーティー」も、やめるつもりがない。パー券購入者の公開基準額を現行の「20万円超」から「10万円超」に引き下げただけだ。なぜ、きっぱり「禁止」にしないのか。

 もちろん、企業献金の廃止は触れてもいない。

 国民の多くは、裏金事件を引き起こしながら、反省ゼロの自民党に呆れ返っているに違いない。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「衆院3補選に全敗したら、さすがに自民党も少しは反省するだろう、政界浄化に動くだろう、そう思った有権者もいたはずです。ところが、まったく懲りていなかった。現状を維持する法案を平然と提出してきた。しかも、岸田首相は、自民党案を『実効性のある再発防止策を提出できた』と自画自賛する始末です。恐らく、自民党には政治不信を深めた自覚もなく、どれほど国民が怒っているかということにもピンときていないのだと思う。さもないと、現行制度と大差のない改正案を提出しないですよ。衆院補選の3連敗は、自民党にはなんのクスリにもならなかった、ということです。衆院3補選以降も、有権者の自民離れが加速しているのは、『もう自民党には期待してもムダだ』と、国民が思いはじめているからでしょう」

 衆院補選の3連敗は、ある意味、自民党が目を覚ます絶好のチャンスだった。なのに、有権者の“警告”を完全に無視している形だ。

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5月21日(火) 新著『追撃 自民党大軍拡・腐敗政治―政権交代のために』(学習の友社)の「はしがき」 [日常]

 何としても、大軍拡・腐敗の自民党政治を追撃し、政権交代を実現したいという願いを込めて、新著『追撃 自民党大軍拡・腐敗政治―政権交代のために』(学習の友社)を刊行しました。この思いを受け止めていただけるのではないかと考えたかなりの方に、本書を献呈させていただいています。曜日の関係で本書の発送が遅れているようですが、今週にはお手元に届くと思います。
 自民党政治に「さようなら」を言いたい、政権から追い出して厳しい罰を加えたい、市民と野党の共闘で政権交代を実現したい、もっとまともな希望の持てる政治を手に入れたいと願う方々にも、ぜひ本書に目を通していただきたいと思います。ということで、本書の「はしがき」をアップさせていただきます。購入のための参考にしていただければ幸いです。

 はしがき

 自民党の裏金事件のように、どんな組織にも不祥事は起きるでしょう。でも、その組織の真価が問われるのは、それに対してどう対応するかです。不祥事に真摯に向き合い、自浄能力を示して膿を出せるかどうかが問われます。
 ところが、自民党は「お手盛り」のアンケートや事情聴取、政治倫理審査会(政倫審)での「知らぬ存ぜぬ」答弁や形だけの処分でお茶を濁そうとしています。誰の指示でいつから裏金づくりが始まったのか、何に使ったのか、それすら誰も説明せず、実態は明らかになっていません。
 安倍派の幹部に反省の色が見えず、真相はやぶの中です。参院安倍派のトップが知らないうちに方針が変わっていたなどということがあり得るでしょうか。離党にしても一時的なもので、将来的な復党は可能です。これまでもそうでした。それで国民が納得すると思っているのでしょうか。
 安倍派幹部同士の政倫審での証言には食い違いが残り、キーマンとして浮上してきた森喜朗元首相が裏金づくりのルーツに関与していた疑念も深まるばかりです。裏金議員や派閥幹部の処分にしても、幕引きのために「やったふり」をしただけです
 調査もやらず真相が明らかにならないうちに、なぜ形だけの処分や再発防止の改革案づくりを急ぐのでしょうか。それだけ知られたくないことがあるとしか思えません。処分や党改革は真相から目をそらすためのポーズにすぎず、再発防止に論点をスリ替えてケリをつけたいだけなのです。
 安倍政権以降、「モリカケ桜前夜祭」に象徴されるように権力側がやりたい放題のことを平然と行うようになりました。不祥事が発覚しても、国会でウソをついて公文書を改ざんしてきました。長年、安倍元首相のこうしたやり方を見てきた自民党議員は、何をやっても許されると思い込んでしまったのでしょう。おごり高ぶりと緊張感の欠如が、女性局や青年局などの問題行動の元凶になっているのではないでしょうか。
 巨額の裏金づくりに脱税疑惑、ハレンチな会合、差別発言と悪行の限りを尽くしてきた自民党は、権力の座から追い出して下野させるしかありません。岸田首相は「解党的な出直し」を表明しましたが、出直してもらう必要はありません。もはや、解党・解散すべきです。国民が怒りの鉄槌を下さなければ、自民党はまた同じことを繰り返すに違いないのですから。
 裏金問題をはじめとしてあらゆる点で行き詰まり窮地に陥った自民党大軍拡・腐敗政治を追撃したいと念じ、解散・総選挙に追い込むために大急ぎで本書を書きました。これから実施されるあらゆる選挙で、自民党にだけは投票せず敗北させましょう。そして、こう言いたいものです。「さようなら自民党」と。


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5月19日(日) 新著『追撃 自民党大軍拡・腐敗政治―政権交代のために』(学習の友社)が刊行された [日常]

 拙著『追撃 自民党大軍拡・腐敗政治―政権交代のために』(学習の友社)が届きした。5月8日付けのブログで予告した私の新しい著作です。大軍拡・大増税を打ち出し裏金事件で窮地に陥った岸田政権と自民党をさらに追撃し、政権交代を実現しようと訴えるために刊行しました。
 政治研究者として、生涯を通じて自民党政治を批判し続けてきた私の「遺言」のようなものです。その思いを受け止め、手に取ってご一読いただければ幸いです。129頁で本体1100円+税ですから1210円ですが、私を通じて注文していただければ、著者割引きの八掛けで960円になります。
 憲法9条を踏みにじって戦争準備に狂奔し、金まみれで腐臭に満ちた自民党政治を一刻も早く終わらさなければなりません。市民と野党の共闘によって政権交代を実現し、国民の願いが届く希望の政治を実現するために、本書を活用していただければ幸いです。

 参考までに、以下に本書の目次を掲げておきましょう。

 はしがき

 序章 自民党がぶっ壊してきた日本の惨状

第一部 安保3文書と大軍拡・大増税
 第1章 改憲・大軍拡を阻止し9条を守り活かすために
  1,憲法をめぐる新たな局面
  2,日米安保と憲法9条の相互関係
 第2章 大軍拡・大増税による戦争への道を阻止するために
  1,「安保3文書」による平和憲法破壊の挑戦
  2,日米軍事同盟の危険性とアメリカの狙い
  3,軍拡競争ではなく平和外交を
 第3章 「新たな戦前」を避けるために─敵基地攻撃論の詭弁と危険性
 第4章 敵基地攻撃能力は日本に何をもたらすか―岸田政権の狙いを暴く

第二部 裏金疑獄と岸田政権の迷走
 第1章 岸田政権を覆う統一協会の闇
 第2章 現代史のなかでの岸田政権をどう見るか
 第3章 岸田政権の混迷と迷走
 第4章 裏金疑獄があぶり出した自民党の腐敗と劣化――表紙を変えて延命させてはならない
 第5章 自民党政治の混迷と野党共闘の課題――受け皿を作って政権交代を

 終章 「新しい政治」への挑戦―どうしたら良いのか、どうすべきなのか

 あとがき

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5月18日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月18日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:大丈夫か?自民党 やっていることは何から何まで「自爆テロ」

 裏金政党に「政治改革」を求めるのはどだい、ムリ。泥棒に泥棒の取り締まりを期待するようなものだ。自民は公明との共同提出を断念し、改正案を単独で提出するらしいが、こんなナメ切った茶番法案を数の力で押し切れば、国民全体を敵に回すことになる。

 よっぽど、自民は次の総選挙で負ける気マンマンなのか。マトモな神経でないことは確かだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)も裏金政党の居直りに驚愕する国民のひとりだ。こう語る。

 「裏だろうが、表だろうが、自民党はいかがわしいカネまみれ。そうしなければ存続不可能なレベルにまで陥っています。危ないクスリに侵されているかのようで、民意に鈍感となり、裏金の何が問題なのかさえ理解する能力を失っているのです。裏金事件を受けた規正法改正を巡り、『自民党の力をそぎたいという政局的な話がごっちゃになっている』と言った議員もいましたが、大半の自民党議員の本心でしょう。裏金事件は事故みたいなもので『何が悪い?』という感覚です。危険薬物に侵されていれば、正常な判断がつかなくなるのも当然です」

 自民のやっていることは何から何まで「自爆テロ」。その自覚があるのか、下村は先の講演で6月の国会会期末に合わせた解散論を巡り、「自爆選挙になる」と発言。広報本部長の平井元デジタル相もきのう、岸田の地元・広島市の政治刷新車座対話後、記者団に「今したら大変不都合な結果になる」と打ち明けた。

 平井は岸田派所属。岸田がもくろむ6月解散論に「身内」が待ったをかけた形だが、自民はどいつもこいつも往生際が悪い。有権者の鉄槌を恐れて、選挙から逃げ回っている。

 「危険薬物に侵された自民党には荒療治が必要です。罪の深さを理解させるには、下野という大きな罰を与えるしかない。民意の激しい怒りを肌感覚で思い知らせる上でも、次の衆院選で有権者は目に物を見せるべきです」(五十嵐仁氏=前出)

 「大丈夫か」と本紙にまで心配されるようでは、いよいよ自民党もオシマイだ。

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5月16日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月16日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:本質は自民に退場を迫ること 規正法改正をめぐる大マスコミの噴飯報道

 立憲民主党の泉代表が、自民党と公明党の内紛について、鋭い指摘をしていた。

 「ゴタゴタを見せて、厳しい議論をしているように見せる、毎度の手法だ」

 だとしたら、自公の内紛を大きく伝えている大手メディアは、自民党の思惑にまんまと乗せられていることになるのではないか。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「自民党の最終目標は、『企業献金』『政治資金パーティー』『政策活動費』--この3点セットを死守することでしょう。ほかの項目は改正しても、この3つだけは絶対に維持したい。そのためには、規正法改正の争点が3点に向かないよう、少しでも議論を3点セットから遠ざけるのが得策と考えているのでしょう。国民の関心を3点からそらしたいのだと思う。それだけに、大手メディアが自民党と公明党の内輪モメを、さも一大事のように報道していることに、内心ニンマリしているはずです」

 100人近くが関与した裏金事件で分かったのは、自民党は裏金がなければ回らない政党になっているということだ。パー券の売り上げを裏金にし、政策活動費という裏金に固執し、官房機密費を選挙資金に使っていたことまで報道された。

 いくらなんでも大新聞テレビだって、このまま自民党政権に任せていいと考えているわけじゃないだろう。
 
 「大手メディアが行う世論調査では、国民の多くは、自民党の規正法案について『評価しない』と答えています。大手メディアは、そうした国民の声も知っているはずです。心ある国民は、自民党のことを冷めた目で見ているのだと思う。なのに、大手メディアは、いつまで自民党への忖度をつづけるつもりなのでしょうか。このままでは、国民は政治不信だけでなく、メディア不信も強めるようになりますよ。国民から信頼を失ったら、大手メディアだって存続できなくなります」(五十嵐仁氏=前出)

 このまま大手メディアは、反省ゼロの自民党のやり方を見過ごすつもりなのか。

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5月14日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月14日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:剥がされた安倍晋三「偽善の顔」 改めて「底なし腐敗」自民とカネ

 断っておくが、自民党というのは、首相が官房機密費をくすね、選挙で裏金として配るような盗人集団だ。そんな連中が「再発防止」や「透明性の確保」などと言い、ハシにもボーにもかからないような改正案を出してきて、「政治改革」などとほざいている。その審議に「難航」も何もない。ただの茶番劇でしかない。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。

 「そもそも投票権を持たない企業・団体がなぜ、政治家に金を出すのか。限りなく賄賂に近くなっていくので、1994年の改革では政治家個人への企業・団体献金は禁止され、経団連もあっせんを見送ることになった。その代わりに導入されたのが政党交付金です。それなのに、政党や政治資金団体への企業・団体献金はそのまま残り、案の定、裏金化した。使途を公開する必要がない掴み金の政策活動費もおかしな話で、企業・団体献金と併せて廃止・禁止が当たり前なんですよ。しかし、もともと裏金で政治を回してきた自民党は今さらやめられっこない。だから、公開基準の厳格化でごまかそうとしているんです。企業・団体献金であるパーティー券の公開基準が自民党が死守しようとしている10万円超であろうと、公明党が主張する5万円超であろうと、関係ない。そんなさまつな議論は“改革やってるふり”で、そんなものに騙されてはいけません」

 前出の野上忠興氏に安倍は生前、「カネを配らなければ派閥を維持するのは50~100人が限度だ」という趣旨のことを言っていたという。志で束ねられるのは数十人で、あとは札束で引っ張ってくる、ということだ。それで総裁選を戦い、上り詰める。札束の原資は企業・団体献金だから、ますます、政治は歪んでいく。しかし、カネを集め得れば、選挙に勝てる。勝てば官軍で、またカネが集まってくる。それを裏で配って、また仲間を増やす。こうしてどんどん、政治は腐っていく。それが自民党の体質だ。だから、裏金をやめられない。裏金政治しかできない。こうした歴史の繰り返しなのである。

 それがここまで露呈した以上、彼らに政治改革を語らせること自体がナンセンスだ。岸田首相が「先頭に立つ」とか言っているのも嘘八百。よくもしらじらしく、言えたものだ。

 「自民党は“解党的出直し”とか言っていますが、出直さなくていい。解党して、散り散りになるべきです」(五十嵐仁氏=前出)

 これが騙され続けてきた国民の本心なのである。

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5月13日(月) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月10日付に掲載されたものです。〕

*記事:デタラメ規正法改正 前門の虎後門の狼 岸田首相立ち往生

 岸田は会期末解散・総選挙を視野に入れている。しかし、規正法改正がまとまらなければ会期延長を余儀なくされる。ただでさえ党内にソッポを向かれている岸田の求心力はさらに低下する。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「岸田首相は相変わらずの『やってる感』。世論を見て対応を変えるので、サプライズで野党に寄って、維新に救いの手を求める可能性もある」

 衆院解散か、自滅退陣か――。規正法改正の行方に岸田の命運がかかる。


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5月10日(金) 「戦後保守政治の転換」点としての中曽根内閣   [内閣]

 1週間ほど後に刊行される新著『追撃 自民党大軍拡・腐敗政治―政権交代のために』(学習の友社)の執筆に際して、私が37年前に出した処女作『戦後保守政治の転換―「86年体制」とは何か』(ゆぴてる社、1987年)を読み返してみました。その結果、再確認したことがあります。やはり、「戦後政治の総決算」をめざした中曽根内閣こそが「戦後保守政治の転換」点だったということです。

 本書の序章は「戦後保守政治の現段階」の分析に与えられています。その「むすび」の部分を以下に引用しておきましょう。

 <中曽根首相のめざす「戦後政治の総決算」とは、第1に戦後政治の基本的枠組みの打破であり、第2にその枠組みを前提とした「保守本流路線」の克服である。その主な内容は、(!)従属的対米協調路線からより「対等」なNATO型同盟路線へ、(2)経済主義路線から政治主義路線へ、(3)解釈改憲路線から明文改憲路線へ、(4)合意漸進路線から独断急進路線へ、という形での、戦後保守政治の基本的政策内容と政治スタイルの転換にほかならなかった。戦後保守政治の枠組みを形成する主体となり、その後の情勢変化にもかかわらず、それを「タブー視」して後生大事に守ってきた「保守本流」に、この転換は実行しえない。「保守路線」の行き詰まりを救うことができるのは、「傍流」として独自の政策構想と政治スタイルを持つ中曽根政治以外にない……。中曽根首相の胸中には、このような思いが渦巻いていることだろう。
 それが「戦後政治の総決算」である。タテマエとしての憲法、タテマエとしての非核、タテマエとしての軽武装、タテマエとしての議会制民主主義、タテマエとしての国民主権、タテマエとしての世論の尊重、そして、タテマエとしての政治倫理……。
 タテマエはもうたくさんだ。今こそホンネの政治を。そして、中曽根首相はこのホンネを堂堂と披瀝する。
 「私の究極の目的は、日本国民固有の堂々とした理想を具体的に盛り込んだ憲法である」(「私の政治生活」)。
 「総決算」されようとしているのは、憲法によって支えられた戦後民主主義そのものなのである。
 これはまだ緒についたばかりだ。中曽根政治の全体像は、ようやくぼんやりとその姿を現してきているにすぎない。戦後保守政治の基本路線をしいた「吉田政治」に代わる「中曽根政治」を確立し得るか否か。そして、それによって動揺期にある保守支配の反動的再興に成功するかどうか。ま近に迫った「ロッキード事件」田中判決をめぐる政治的攻防と、それを前後して実施されるであろう解散・総選挙を通じて、答えが出されるのはまさにこれからである。
 鈴木首相の退陣表明によって激しく揺れ動いた82年秋から1年。中曽根政治による戦後民主主義の「総決算」を許容するか、それとも、田中角栄に体現された金権化体質と中曽根康弘に象徴される右傾化体質を二大宿痾とする自民党政治そのものの「総決算」をもたらすか、83年秋は、戦後政治の重大な分岐点になろうとしている。(1983年9月)>

 最後に1983年9月とありますから、41年前に書かれた文章です。私が32歳の時で、若さにありがちな気負いが感じられますが、基本的に修正する必要はありません。「ここに書いたことは間違っていなかったよ」と、41年前の私に言いたい気持ちです。
 これを書いた直後の10月に東京地裁が田中角栄被告に懲役4年・追徴金5億円の実刑判決を出し、その2カ月後に解散・総選挙(田中判決選挙)となり、自民党は250議席と過半数を割りますが、保守系無所属の追加公認で過半数を回復しています。さらに3年後の1986年に「死んだふり解散」と言われる衆参同日選挙によって300議席と大勝し、総裁任期の1年延長に成功します。その背後で、統一協会が60億円をかけて中曽根支援に暗躍していました。
 結局、中曽根首相は「賭けに勝った」ことになります。「戦後保守政治の基本路線をしいた『吉田政治』に代わる『中曽根政治』を確立し得るか否か。そして、それによって動揺期にある保守支配の反動的再興に成功するかどうか」という問いには、イエスと答えざるを得ません。こうして「保守支配の反動的再興」の流れが始まり、それは第2次安倍政権で最高潮に達し、今日の岸田政権へと受け継がれてきました。 

 岸田首相は保守本流であった宏池会(旧池田派)の末裔ですが、すでにその面影はなく、保守傍流右派路線に屈服し吞み込まれた無様な姿をさらしています。それは安倍元首相によって完成された保守傍流右派路線の拡大再生産にすぎません。その源流は中曽根元首相による反憲法政治と明文改憲志向、戦後政治の総決算、国際国家論と軍事安保路線、軍事費のGNP比1%枠突破、臨調・行革路線と国鉄分割・民営化、スパイ防止法案、ブレーンを多用した審議会政治による国会軽視などにあり、これらの点でまさに中曽根内閣こそ戦後保守政治の転換点だったのです。

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