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3月1日(火) ウクライナへの侵略を直ちに停止しロシア軍は撤退せよ [国際]

 このような戦争が始まるとは、信じられない気持ちでいっぱいです。国境地帯で大規模な演習を繰り返していたロシア軍が、大挙してウクライナ国境を超えて戦争に突入しました。
 プーチン大統領がどのように言い逃れしようと、国際法違反の侵略行為であることは明白です。今この瞬間にも、多くの人が傷つき命を落とし、難民として故郷を追われていると思うと、痛ましくやるせない思いでいっぱいになります。
 大国が小国の主権を踏みにじって戦争を仕掛けた暴挙を糾弾し、世界中の人々が一致して戦争反対の声を上げ、停戦とロシア軍の撤退を求める必要があります。核戦争の脅しを許さず、一刻も早く戦闘を終わらせ、ウクライナの人々を救わなければなりません。

 プーチン大統領は戦争を正当化するための演説を繰り返していますが、国連憲章を始めとする国際秩序に明確に違反する侵略であり、断じて許されない暴挙です。これを機に、力対力による軍事的な対応の必要性が声高に主張されるようになっていますが、これも大きな間違いです。
 プーチン大統領はウクライナがNATOに加盟すれば脅威となるからそれを阻止するために攻撃する必要があったと主張しています。この論理はミサイルが発射されれば脅威となるからその前に殲滅すべきだという「敵基地攻撃論」と同じ主張で、相手国に対する先制攻撃を正当化する屁理屈にすぎません。
 どのような理由があっても、戦争が始まれば死傷者や難民が出ることは避けられません。戦争を始めてはならず、最終的にその「引き金」を引いたプーチン大統領は「戦争犯罪者」であり、国際社会は一致して侵略を糾弾し、戦争をやめろという声を上げるべきでしょう。

 国家間の対立や紛争は武力によってではなく、話し合いで解決すべきです。最善の解決策は対立を激化させず敵意を持たせず、友好関係を維持しながら緊張を緩和することです。
 日本でもウクライナでの戦争に便乗して9条改憲論や核武装論が強まっていることに警戒しなければなりません。このような力の論理はプーチンと同じ立場に立つことを意味するからです。
 プーチンのような指導者が出てきても戦争を始めることができないようにする保障こそ、憲法9条なのです。ロシアに9条があれば、今回のような戦争を防ぐことができたにちがいありません。

 国連は特別総会を開いてロシアに対する糾弾決議を挙げようとしています。世界中で、戦争反対の声が高まり、ロシアとウクライナの間での交渉も始まりました。
 戦闘が早く終結すれば、それだけ多くの命が救われることになります。今こそ国際的な支援と連帯が必要であり、そのために1人でも多くの人が可能な形で声を上げることを訴えたいと思います。

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1月7日(火) トランプ大統領の戦争挑発に反対し自衛隊の中東への派遣を中止せよ [国際]

 こんな愚かな大統領を、なぜアメリカ国民は選んでしまったのでしょうか。今回のイランに対する挑発行動を見て、改めてそう思いました。
 選挙は怖い。こんな狂人を大統領にしてしまうのですから。
 今たたかわれている八王子市長選や京都市長選でも、誰が市長になるかで市政の方向や市民の生活は大きく左右されます。間違いのない選択によって、平和と生活を守らなければなりません。

 トランプ大統領の命令によって、イラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官がイラクで暗殺されました。遺体はイランに送られ、首都テヘランでの葬儀には数百万人の市民が参列して「アメリカに死を」と叫んだそうです。
 この司令官は「国家的英雄」で、いわば「中東のゲバラ」のようなカリスマ性と親しみをもたれていたといいます。その人物が、国際法に反する無法なやり方で米軍に殺害されてしまいました。
 アメリカに対する敵意と憤激は中東全土を覆っています。トランプ大統領はアメリカ国民の生命を守るためだったと言っていますが、イランとの核合意から勝手に離脱して対立を高めたのはトランプ大統領自身ではありませんか。

 アメリカという国は、またもや愚かな歴史を繰り返そうとしています。ベトナム戦争の口実とされたトンキン湾事件は、アメリカによるでっち上げでした。
 イラクに対する攻撃も、大量破壊兵器を開発して保有しているという口実は、全くの「濡れ衣」でした。虚偽の理由でフセイン大統領は殺害されたのです。
 ベトナム戦争、イラク戦争、アフガン戦争で多くの人命が失われ、送りこまれたアメリカの青年は自国の政府による誤った政策の犠牲になりました。

 このような過去の間違った戦争に対して、日本政府は一度もストップをかけようとはせず、出撃基地や補給、休養の場として全面的に協力してきました。アメリカの過ちに追随し、戦争での人殺しに手を貸してきたのです。
 今回も、安倍政権は中東地域に自衛隊の艦船を派遣してトランプの過ちに手を貸そうとしています。派遣を決定した時から情勢は変わり武力衝突に巻き込まれる危険性は格段に高まっていますから、直ちに中止するべきです。
 このままでは、中東地域全体を舞台にした大きな戦争が始まるかもしれません。トランプ大統領やイラン政府に対して、戦争を始めるな、外交で問題を解決せよ、核合意に復帰せよと働きかけなければなりません。

 武力に訴えても問題は解決されるどころかかえって混乱を拡大し、犠牲を増やすだけだというのがこれまでの経験ではありませんか。アメリカとイランの対立も、戦争ではなく外交でしか解決できません。
 今こそ歴史の教訓に学ぶべきです。第3次世界大戦の恐れありとも言われている「中東大戦争」の引き金を引かないためにも。

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10月11日(金) 日米貿易交渉で「ウィンウィン」と嘘をついて国民を欺いた安倍首相 [国際]

 これからは、安くて危なっかしい食糧がどっと入ってくるにちがいありません。安倍首相が大量に買い入れると約束した米国産の牛肉には成長を早めるホルモン剤が投与され、トウモロコシは遺伝子組み換えによって増産されたものだといいます。
 安いから日本の消費者は喜ぶだろうと言われています。しかし、こんなものが消費者のためになるのでしょうか。
 
 日米貿易交渉が妥結し、テンガロンハットをかぶった牛肉生産者たちを前にトランプ大統領が「日米交渉はアメリカが勝利した!日本のまずい牛肉より遥かに美味いアメリカ牛肉をジャンジャン日本へ輸出してやろう!」と大ハシャギしていたとき、その横で安倍首相は満面の笑みを浮かべていました。どこの首相なのか、と言いたくなります。
 トランプ大統領は貿易協定に署名するときも、主要な農業団体の幹部を集めてこう成果をPRしました。「今日の協定で、日本は米国の食品や農業輸出品への市場アクセスを劇的に広げると約束した」と。
 安倍首相は「ウィンウィン」の結果だったと言いましたが、どこが「ウィン」なのでしょうか。またもや、国民に向けて大嘘をついたことになります。

 日米貿易協定は日本側が一方的に譲歩し、牛肉や豚肉などの畜産物の関税を大幅に引き下げる一方、米国の自動車と自動車部品の関税削減は先送りされました。米国寄りの決着で、譲るばかりの結果だったことは明らかです。
 この協定が日本の農業にどれほど影響するかという試算についても、未だに明らかにされていません。これで国会での審議が可能なのでしょうか。
 しかも、この協定について最終合意した日米共同声明では、日米自由貿易協定(FTA)の交渉開始でも合意しています。これまで、日米FTAの交渉は行わないとしていた約束も嘘だったことになります。

 日本政府は関税引き下げの水準がTPPの範囲に収まったことを成果のように語っています。しかし、TPP水準の関税引き下げであったとしても日本の農業への被害は甚大です。
 かつて、自民党でさえ選挙のポスターに「TPP断固反対」と書いていたではありませんか。その公約を投げ捨てて日本の食糧安全保障をアメリカに委ねようとしているのが安倍首相です。
 自動車関税についても「関税の上乗せ回避」を成果のように宣伝していますが、目標は「関税撤廃」だったはずです。米国が公表した英語の協定文に「撤廃」という文字が入りましたが、「今後のさらなる交渉次第」との表現にとどまっています。

 さらに、今回の協定では貿易額ベースで「米国が約92%、日本が約84%」の関税が撤廃され、世界貿易機関(WTO)の水準をおおむねクリアできていると日本政府は主張しています。これも嘘です。
 これには撤廃されるかどうか分らない乗用車と自動車部品が含まれているからです。自動車分野は対米輸出額の約35%を占めますから、これらを除くと関税撤廃率は6割前後まで落ちてしまいます。
 WTOのルールでは、加盟国に対して9割程度の関税撤廃率が求められています。今回の協定は、この水準に達していません。

 結局、安倍首相はトランプ大統領に押し切られてしまったのです。日本の農業や食の安全、消費者の健康や食糧安全保障を守るつもりがなかったのだということです。
 安倍首相は国民に嘘をついて、トランプのポチ(飼い犬)として行動し続けました。これではトランプのペットではないか、やはり「トラン(プ)ペット」だったのかと言いたくなります。

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9月25日(水) 再生可能エネルギーへの転換こそ気候変動対策とエネルギー問題解決のカギだ [国際]

 「気候変動問題に取り組むことは、きっと楽しくクールでセクシーでしょう」という小泉進次郎環境相の発言が問題になっています。「セクシー」という言葉が政治家として適切だったのかというのです。
 「適切ではなかった」と、私も思います。しかし、それ以上に問題なのは、この言葉によって気候変動問題に対する日本政府の無策がごまかされ、具体的な解決策のなさが隠蔽されてしまったことです。

 国連気候行動サミットで小泉環境相をはじめとした各国首脳の前で演説したスウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんは「あなたたちは目を背け続け、目に見える何の政策も解決策もなく、よくもここに来られたものですね」と皮肉り、「あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢と子供時代を奪い去った」と厳しく批判しました。
 この言葉は、そのまま小泉環境相に向けられたものです。「楽しくクールでセクシー」という小泉さんの発言こそ、まさに「空っぽの言葉」にほかならないのですから。
 ロイター通信が配信したそうですから、この言葉はグレタさんの耳に届くでしょうし、そうなれば、こう言われるにちがいありません。「目に見える何の政策も解決策もなく、よくもここに来られたものですね」と。

 グレタさんの批判を正面から受け止めるなら、日本はエネルギー政策を転換しなければなりません。火力発電所の建設を止め、再生可能エネルギーへの転換を進めることです。
 それは脱原発のためにも必要なことです。原発は制御できない技術であり、いったん事故が起きれば大きな災害をもたらすことは東日本大震災の際の原発事故で実証されました。
 さらに、再生可能エネルギーへの転換は温室効果ガスの削減や脱原発の点から必要とされているだけではありません。それは自然災害への備えや農林漁業の振興のためにも重要な意味があります。

 台風15号による千葉県の長期大規模停電の原因は、倒木や電柱の倒壊によって送電網が寸断されてしまったことにあります。北海道地震で生じたブラック・アウトも火力発電所の被害によるものでした。
 このような事故を防ぐためには、電源を分散して寸断されても被害を最小に抑えるようにすることが必要です。特定の巨大電源に電力を依存すればするほど、電源の被害や送電網の破壊による脆弱性が増すからです。
 日本のように地震が多発し台風がやってくる国では、電源を小規模化して分散することが必要です。それは災害対策やライフラインの確保としても有効であり、それによって被害を最小限にとどめるようにしなければなりません。

 再生可能エネルギーによる電源の小規模分散化は、農林漁業などの経営安定化にも役立てることができます。「畑や水田の上にソーラーパネルを設置し、農業と発電を一緒にこなす『ソーラーシェアリング』」が始まっており、「耕作放棄地の再生や農業経営の下支えとして期待される」(『朝日新聞』9月19日付夕刊)からです。
 同じように、林業でも間伐材のチップや下草などによる発電、牧畜では牛などの家畜の糞から出るメタンガスによる発電、漁業では潮流を利用した水力発電や海辺や海上での風力発電などが考えられます。これらの発電事業によって農林漁業を下支えすることができれば、エネルギーの地産地消だけでなく収入を補填して経営を安定させることもできるようになります。
 問題は、「電力の買い取り価格が徐々に下落し」ていることにあります。国や自治体、電力会社などが一体となって再生可能エネルギーへの転換を後押しする政策を推進しなければなりません。

 小泉環境相の問題点は、言葉の使い方にあるよりもむしろ気候変動対策やエネルギー問題についての具体策を提示できなかったことにあります。別の記者会見では、外国人記者から「環境省では化石燃料脱却にむけどのように取り組むつもりですか」と質問され「減らす」と答えたものの、さらに「どうやって?」と具体策を問われると、長い間沈黙した後、「私は先週環境大臣になったばかりで同僚や省内の職員と話し合っている」と答えました。
 質問に答える知識も能力もなく、具体的な政策も持たずにニューヨークにやってきたことを明らかにしてしまったわけです。グレタさんならずとも、再び小泉さんにこう問いたくなります。
 あなたは「目に見える何の政策も解決策もなく、よくもここに来られたものですね」と。

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9月9日(月) 日韓関係悪化の根本原因は政治・社会の積年の問題点の噴出にある [国際]

 日韓関係の悪化が深刻になっており、多くの人が心を痛めています。その根本的な原因は、日本の政治・社会において積み重なってきた問題点が、ここにきて噴出したことにあるのではないでしょうか。
 問題の発端は韓国の大法院による戦時中の徴用工についての判決です。それが今や、両国関係の悪化のみならず、愛知トリエンナーレの展示中止やマスメディアでの嫌韓報道の氾濫、日本社会における韓国敵視やヘイトの強まり、そしてついには名のある週刊誌による嫌韓特集まで登場するようになりました。
 とりわけ、小学館が発行する『週刊ポスト』での嫌韓特集については悲しく情けない気持ちでいっぱいです。私も小学館からは『日本20世紀館』『日本歴史館』という共著の歴史書や『戦後政治の実像』という単著を出版していますので、今回のような愚行は誠に残念で大きな怒りを覚えました。

 問題の第1は歴史修正主義にあり、そのチャンピオンが日本の最高権力者になっているという点にあります。歴史の真実を直視せず、それを歪めることによって美化し、責任を逃れようとする卑怯で情けない態度を取り続けていることです。
 歴代の自民党政権は侵略戦争と植民地支配などの負の歴史を直視することなく、責任逃れの解決策に終始してきました。それでも外交関係などへの配慮によって、従軍慰安婦への軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」などのように、歴史の真実に近づこうとしたときもありました。
 しかし、安倍首相は首相になる前から従軍慰安婦についてのNHKの番組に介入したように、韓国への嫌悪と敵視が際立っています。徴用工や従軍慰安婦などをはじめとした負の歴史を抹殺し書き換えるために政治を利用してきたのが安倍晋三という人物であり、徴用工判決の無視と報復、貿易や安全保障問題へのリンケージなど、日本側から事態の悪化をエスカレートさせた対抗措置の背後には安倍首相の指示があったことは想像に難くありません。

 第2は、歴史教育の問題です。過去の過ちは教えられなければ理解できず、教訓を生かして反省することも謝罪することもできないからです。
 この問題でも安倍首相は突出した役割を果たしてきました。第1次安倍内閣の時に教育再生会議を立ち上げて教育基本法と学校教育法など教育改革関連3法を「改正」し、第2次安倍内閣でも教育再生実行会議を設置して道徳の教科化や愛国心教育を推進するとともに、歴史教科書の書き換えと教育の管理・統制に力を入れてきたことはご存知の通りです。
 従軍慰安婦について、同時代を生きてきた高齢者はそれが社会問題化した経緯や「河野談話」なども見聞きして知っていますが、若者は教えられなければ具体的な知識を持ちません。読売新聞や産経新聞などの権威あるメディアで報道され、テレビ番組などで百田尚樹などのベストセラー作家が発言すれば、たとえウソやデマであっても信じて踊らされてしまうのは当然でしょう。

 第3は、周辺諸国や民族への蔑視という社会意識の問題です。教育とマス・メディアによって教え込まれ信じさせられた誤った歴史認識は、すでに過去のものとなったはずの差別的な社会意識を呼び起こしてしまったからです。
 戦時中の日本の人々は、中国人や朝鮮半島出身者を独特の蔑称で呼び差別してきました。戦後、このような蔑称や差別は反省され、その背後にあった社会意識も消滅したはずだったのです。
 しかし、それはなくなったわけではなく日本人の意識の底辺に残り続け、経済の地盤沈下と中国や韓国など周辺諸国の追い上げで「経済大国」としてのプライドが傷つき優越感が失われる中で、再び意識の表層へと浮かび上がってきました。河野外相による礼を失した応対のように、対等の付き合いではなく上から目線での物言いが社会のいたる所で目立つようになっているのは、その表れではないでしょうか。

 第4は、メディアの危機と堕落を指摘しなければなりません。周辺諸国や民族への蔑視という社会意識や風潮に対して警鐘を鳴らし、周辺諸国や民族間の友好的な互恵関係を維持することに努め、それを阻害する政治家や言論人を批判し、たしなめるのがメディアとしての正しいあり方ではありませんか。
 過去の過ちを反省せず歴史を書き換えて責任逃れを図る政治家や言論人などを批判して真実を伝えていくのが、「社会の木鐸」としてのジャーナリズムの役割でしょう。新聞、テレビ・ラジオ、雑誌、それに書籍などの出版を含めて、このような志を持つ個人や企業が少なくなっているところに、メデイアの危機と堕落が示されています。
 その主たる要因は、視聴率の増加と販売部数の拡大をひたすら追い求め、右傾化する社会に迎合して稼ごうとする商業主義にあります。まさに「貧すれば鈍す」であり、売れないことへの危機感から性的少数者や他民族を蔑視して優越感を味わおうとする劣情に妥協し、批判を浴びてますます売れなくなり危機を深めるという悪循環が、先の『新潮45』や今回の『週刊ポスト』の愚行の背景にあったように思われます。

 隣人と仲良くできない国であることは、その国にとってプラスなのでしょうか。異なった民族をリスペクトできず憎悪によって排除するような国が、国際社会において「名誉ある地位」を占めることができるのでしょうか。
 過去において侵略と植民地支配という過ちを犯しただけでなく、その負の歴史を直視して反省することもできないという新たな過ちを積み重ねてはなりません。このような二重の過ちを犯す国が国際社会の尊敬を得ることはとうてい不可能だからです。
 日本国憲法前文には、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」と書かれています。安倍首相には、憲法を変えようとする前に、この前文を熟読玩味してもらいたいと思います。

 また、他国との友好や親善に意を尽くさず、その国の人々の心情を思いやることもできないような国や民族が国際社会で歓迎されるのでしょうか。オリンピック観戦への旭日旗の持ち込みを禁じないとした組織委員会の皆さんにも、日本国憲法の前文にある以下の言葉をかみしめていただきたいものです。
 「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」

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9月8日(日) 香港での民衆運動を教訓に日本でも実践されるべき憲法12条の重要性 [国際]

 香港での若者を中心とした激しい民衆運動が注目されています。100万を超える人々の集会やデモによって、香港政府トップの林鄭月娥行政長官が「逃亡犯条例」改正案の完全撤回を正式に表明しました。
 「あまりに遅すぎる」という批判がありますし、私もそう思います。しかし、遅きに失したとはいえ撤回自体は大きな成果であり、香港での大規模な抗議活動の勝利であることは間違いありません。

 この大規模な民衆運動とそれが獲得した条令撤回という勝利を目にして、改めて日本国憲法第12条の重用性を思い起こしました。そこには、こう書かれています。
 「この憲法が保障する国民の自由及び権利は、不断の努力によって保持されなければならない」と。
 香港市民は自らに保障されていたはずの「自由及び権利」が奪われようとしたとき、敢然と起ち上って抵抗しました。これこそが憲法12条の要請する「不断の努力」にほかなりません。
 私たちは、香港市民の闘いに感心し支持を表明するだけでなく、その闘いに学ぶ必要があります。この日本で、憲法12条の要請に応じて「自由及び権利」を「保持」するための「不断の努力」を行うことこそ、本当の連帯になるのではないでしょうか。

 この条例撤回後も、香港市民の運動は終息していません。香港の民主化運動で「民主の女神」と呼ばれ今回の抗議デモをめぐって一時逮捕(その後保釈)された元学生リーダーの周庭さんは「条例の撤回は喜べません。遅すぎました。 この3ヶ月間、8人が自殺。 3人が警察の暴力によって失明。 2人がナイフを持つ親北京派に攻撃され、重傷。 1000人以上逮捕。 100人以上起訴。 怪我した人は数えきれないです。 私たちは、5つの要求を求めています。これからも戦い続けます」と述べています。
 少なくとも中立的な調査委員会を立ち上げてこの間の対応について検証し、行政長官は辞任するべきでしょう。市民の側が求めている5つの要求について、話し合う場を設けなければなりません。
 市民の側も暴力的な行動を自制すべきですし、行政府側も力による制圧を行うべきではありません。交渉の場における話し合いでの解決に向けて、相互の歩み寄りが期待されます。

 ここで注目されるのが、中国政府の対応です。香港に隣接する中国広東省深圳で地元当局が武装警官隊などによる大規模な対テロ訓練を行って威嚇しているようですが、武力による介入は断じて許されません。
 今回の香港市民による抗議活動の根本的な原因は、「1国2制度」が有名無実化し「1.5制度」に切り縮められる危険が生じたところにあります。容疑者を中国政府に引き渡せるようにすれば香港での反政府活動が制約され、自由が損なわれるからです。
 条令撤回が遅れた背景に中国政府による圧力があったと見られています。香港市民の要求に対しても行政長官が譲歩しないよう圧力をかけているようですが、自由な対応に任せるべきです。

 今回の対立や混乱を収拾するプロセスを通じて、「1.5制度」ではないかという香港市民の懸念を払拭する必要があります。「1国2制度」の実質を回復することなしに、香港をつなぎとめることは難しいからです。
 香港市民の求めている自由と民主主義は、中国本土においても必要なものです。香港の混乱への対応と収拾を通じて中国社会における言論の自由や政治的民主主義が回復されれば、中国本土にとっても「災い転じて福となす」ことができるのではないでしょうか。 

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7月2日(火) G20首脳会議で露呈した「外交の安倍」の無残な姿 [国際]

 「G20の集合写真動画は衝撃的だ。前列中央に陣取る安倍さんの前を、各国首脳が次々と素通りするのだ。安倍さんがウラジミール、ドナルドと呼ぶ人も完全無視、他国の首脳と握手ハグを交わす始末だ、たった1人オランダのルッテ首相が握手を求めてきたが、それすらおざなりだった。どこが「外交の安倍」なんだ!」

 立川談四楼さんは、こう指摘されています。その通りです。
 この動画は、私も見ました。安倍首相の孤立ぶりが、映像によってはっきりと示されています。
 誠に無残だと申せましょう。これが「外交の安倍」の本当の姿だったのです。

 このG20首脳会議でも全体会合では何の成果も出せず、安倍首相の誤算は続きました。首脳宣言には2年連続で反保護主義の文言を盛り込むことができず、環境分野での地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の扱いではアメリカと、それ以外の参加国との姿勢の違いが鮮明になっています。
 結局、首脳宣言を出すことだけが自己目的化し、G20の空洞化をさらけ出す結果になりました。安倍首相のリーダーシップなどはどこにも示されず、トランプ大統領に気を遣う「ポチ」ぶりが際立つ結果になりました。
 そのうえ、夕食会のあいさつで大阪城の再建に当たってエレベーターを付けたのを「大きなミス」と発言し、バリアフリーの意識の欠如をさらけ出す始末です。この安倍首相の発言こそ「大きなミス」だったと言うべきでしょう。

 トランプ米大統領は大阪市で記者会見し、日米安保条約について「不公平な合意なので改定しなければならないと安倍首相に伝えた」と述べ「彼には半年も前からこの話をし続けて来た。彼も十分に理解しており異議などないはずだ」と明らかにしました。安倍首相はこのような話は出なかったと否定しています。
 両者の言い分は食い違っており、どちらかが嘘をついていることになります。安倍首相にしてみれば、信じられない驚愕の発言であり、政府内に激震が走りました。
 「スネ夫」にちやほやされた「ジャイアン」が付け上がって新たな嫌がらせに出たようなもので、貿易交渉をめぐる密約で弱みを握られた日本側にさらなる揺さぶりをかけてきたというところでしょう。この先、何を言い出すのか、どのような要求が飛び出すのか、安倍首相としても気が気ではないでしょう。

 そのトランプ大統領はG20後に韓国に行って板門店を訪問し、3回目の米朝首脳会談を行いました。軍事境界線を越えて北朝鮮領内に入った最初の現職大統領という歴史的な足跡を残したことになります。
 停滞していた非核化交渉の再開に向けて動き出すきっかけになるかもしれません。大統領選挙に向けたパフォーマンスだとしても、朝鮮半島の緊張緩和と平和促進に役立つのであれば高く評価されるべきです。
 安倍首相も米朝プロセスを歓迎すると言っていますが、心の中は複雑でしょう。同じ「仲介外交」でも、アメリカとイランの仲立ちをした安倍首相のイラン訪問は逆効果になったのに、G20で安倍首相が首脳会談を拒んだ韓国の文在寅大統領による「仲介」は大きな成果を収めたからです。

 このG20を機に一挙に決着をつけようと狙っていた北方領土返還交渉も、逆に暗礁に乗り上げてしまいました。北方領土問題の打開のために打ちだした「新しいアプローチ」も「2島先行返還」も、事態を打開する策にはなっていません。
 逆に、プーチン大統領にうまく利用されてしまいました。北方領土の帰属を曖昧にしてロシアによる実効支配を強化するために協力させられる結果になっています。
 北朝鮮との関係では日本だけがのけ者とされ、拉致問題の解決に向けて一歩も前進していません。中国との関係が改善の方向に向かい始めたことが唯一の救いですが、それなら中国を「仮想敵」とする南西諸島の要塞化は直ちに中止するべきでしょう。

 「外交の安倍」を売り込むために諸外国をせっせと訪問して50兆円以上もの対外資金をばらまいてきた結果が、この外交破たんです。何とも無残な姿ではありませんか。
 NHKの岩田明子記者などを利用してフェイクニュースを振りまいて幻想を与えてきた安倍首相のやり方も、もはや限界に達したということでしょう。G20首脳会議で勢いをつけて参院選になだれ込むという当初の作戦は挫折し、国際社会からの孤立ぶりを露呈して逆風を強めるという全く逆の結果となってしまいました。
 もう、ボロボロではありませんか。メデイアを操作して国民は騙せても、世界は騙せないということでしょうか。

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6月5日(水) 「ジャイアン」との仲の良さを見せつける「スネ夫」のような日本は「町内」から尊敬されるのか [国際]

 トランプ大統領は「ジャイアン」で、安倍首相は「スネ夫」ではないのか。こう書くと、「ドラえもん」のファンに叱られるかもしれません。
 ジャイアンはトランプ大統領ほど酷くはないし、スネ夫は安倍首相ほど卑屈ではないと。でも、この間のトランプ米大統領への安倍首相の「おもてなし」を見ていると、どうしてもジャイアンとスネ夫との関係に見えてしまいます。

 5月23日のワシントンポストの「世界中で安倍首相ほどトランプ大統領へのおべっかに励んできた指導者は恐らくいないだろう」という記事を引用しながら、『毎日新聞』6月3日付夕刊は、「『安倍外交』ここがすごい」という見出しで「安倍応援団」の評価を報じています。なるほど、その意見も「すごい」ものでした。
 安倍首相としばしば会食して「寿司友」とか「寿司郎」とか呼ばれているジャーナリストの田崎史郎さんは「世界の指導者でトランプさんとうまくいっているのは安倍さん一人なんですよ」と弁護しつつ、フィリピンのドゥテルテ、トルコのエルドアン、ロシアのプーチンなど「こういう毛色の変わった人と合わせるのがうまいんです」と強調しています。これについて、記事は「独裁的」との「批判を浴びることの多い顔ぶれ」と馬が合うのも「さすが安倍首相ということらしい」と書いています。
 もう一人の政治評論家の八幡和郎さんは「何度もゴルフしたりする関係が大事なんです。トランプさんは安倍さんのことを信頼しているし、それで意地悪されずに済んでいるんだから」と力説しています。ということは、八幡さんもトランプ大統領が他の国に「意地悪」するような人だということは知っているようです。

 田崎さんは世界で「独裁的」と批判を浴びるような「毛色の変わった人」と仲良くできることを評価し、八幡さんはだから「意地悪されずに済んでいる」と持ち上げています。やはり、ジャイアンとスネ夫の関係を彷彿とさせるではありませんか。
 乱暴者で町内から嫌われている人物のご機嫌を取り、「おべっかに励んで」仲良くすることで「意地悪されずに済んでいる」というのですから。「ここがすごい」と「応援団」は評価するのかもしれませんが、日本の外交として誇れることなのでしょうか。
 そのトランプ大統領は日本から帰国してすぐにメキシコへの5%の追加関税を発表するという身勝手な行動をとり、その後のイギリス訪問では大きな抗議行動に直面しました。トランプさんの政策や差別的な言動などに反発する人々によるもので、「トランプを歓迎しない」「人種差別にノー」などのプラカードを掲げた人々が抗議の声を上げています。

 まさに田崎さんが指摘しているように、「トランプさんとうまくいっているのは安倍さん一人」にすぎません。それは誇るべきことなのでしょうか。
 ともに、「町内」の嫌われ者になってしまうリスクの方が大きいのではないでしょうか。その「町内」とのお付き合いでは、すでに隣の韓国や北朝鮮ともうまくいかず、ロシアや中国との関係もギクシャクしています。
 北朝鮮との拉致問題の解決についてはアメリカ頼りに終始し、「正面から向き合う」と言ってみても「図々しい」と一蹴されるだけです。アメリカにすり寄ればすり寄るほど、ロシアは日米安保への警戒感を強めて北方領土問題の解決は遠ざかるばかりではありませんか。

 安倍さんの「寿司友」である田崎さんの目から見ても「毛色の変わった人」であるトランプ大統領に、ただひたすらすり寄っておべっかに励んでいると言われることが日本にとってプラスなのでしょうか。今や国際秩序の最大のかく乱要因となっているトランプ大統領にただついていくだけの国と見られることは、かえって日本の国際的な評価を低め、国際社会からの尊敬を失うことになるのではないでしょうか。

 なお、6月7日(金)の正午から新宿駅西口での街頭演説で話をすることになりました。翌8日(土)午後1時から全労連会館で開かれる労働者教育協会の総会でも発言する予定です。
 また、6月の講演の予定は、以下のようになっています。お近くの方や関係者の方に足を運んでいただければ幸いです。

6月15日(土)午後1時半 テクノプラザ葛飾:安倍改憲NO!憲法を生かす葛飾のつどい
6月18日(火)午後2時 福井県教育センター:福井県退職教職員のつどい
6月21日(金)午後6時半 江戸川区総合文化センター:戦争させない江戸川の会
6月22日(土)午後1時半 藤沢公民館・労働会館:湘南学習会議市民講座


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5月30日(木) 「私益」のために「国益」を売り渡した安倍「幇間外交」のおぞましさ [国際]

 昔は大砲と軍艦による「砲艦外交」でした。今はまるで太鼓持ちのような接待攻勢による「幇間外交」です。
 何と情けなく、おぞましい光景を見せつけられたものか。まるで「へつらう、おもねる、ゴマをする」というのが、安倍「幇間外交」の3原則であるかのようでした。

 トランプ大統領は「ローマの休日」ならぬ「東京の休日」を存分に楽しんで帰ったにちがいありません。安倍首相はまるで旅行の添乗員兼現地ガイドのようでした。
 日本の首相はいつからツァーガイドになったのか、と言いたくなります。それもトランプ大統領を喜ばせ、取り入るための涙ぐましい努力の結果だったのかもしれません。
 そのために大相撲の伝統を踏みにじったり、新天皇を利用したりすることも平気だったようです。元号や天皇、日本の伝統やアメリカの大統領でさえ、自分の利益になると思えば政治利用することをためらわない安倍首相のおぞましさが露呈したということでしょうか。

 しかし、トランプ大統領は「観光旅行」のために日本にやって来たのではありません。新天皇の最初の「国賓」としての来日、桟敷席での大相撲の観戦と大統領賜杯の贈呈などは、いずれも安倍首相の提案だったそうです。
 安倍首相は自らの政権浮揚と支持率のアップ、夏の選挙での勝利という「私益」のために、天皇と大統領を最大限利用しようとしたのです。トランプ大統領は面白くなさそうな顔をして相撲を観戦しながら、じっとこの要請に応えました。
 安倍首相に恩を売って、貸しを作ろうと考えたからです。それは何のためだったのでしょうか。

 その答えは共同記者会見などで明らかにされた貿易問題についての発言に示されています。「7月の選挙までは待つが、8月には良い結果が示されるだろう。アメリカはTPPには参加していないから、それには縛られない」という発言に。
 これは4月と5月の日米首脳会談の舞台裏でなされた「密約」をバラスものでした。隣でトランプ大統領の発言を聞いていた安倍首相はビックリしたことでしょう。
 平気で嘘をつき約束は守らず友情のあるなしには無関係に取引きを迫る、トランプ大統領のような相手を信じて「密約」を交わしたのが間違いなのです。「ここまでやるか」と思わせ、属国としての屈辱感さえ国民に味あわせるようなオベンチャラも、トランプ大統領にはあまり効果がなかったようです。

 すべては選挙のためでした。「7月まで配慮する」というのはダブル選挙になるかもしれない参院選があるからで、「8月には決着させたい」というのはアメリカの大統領選挙で再選を狙っているからです。
 参院選までは農産物輸入関税での妥協はできないというのが安倍首相の側の事情です。それを配慮する代わりにこちらの言い分を聞いてもらいたい、「分かっているだろうな、シンゾー」というのが、トランプ大統領の立場なのです。
 それを首脳間で確認するために、安倍首相の求めに応じてトランプ大統領は日本にやってきたのです。ただの観光旅行に来たわけではないということ、選挙が終わったらTPPの水準を上回るような農産物関税問題での譲歩を引き出すために来たのだということを、自分の支持者である米中西部のラストベルトの農民たちにはっきりさせることがトランプ発言の狙いでした。

 もう一つの狙いは、日米同盟の軍事的なレベルアップだったのではないでしょうか。世界に対しては自衛隊が米軍と一体でその指揮下にあることを見せつけ、日本に対しては集団的自衛権の行使と武器爆買いへの圧力をかけようとしたのです。
 トランプ大統領は安倍首相と共に自衛隊のヘリコプター空母「かが」を視察し、海上自衛隊の隊員とアメリカ軍横須賀基地の米兵合わせて500人を前に訓示しました。安倍首相は「日米同盟は私とトランプ大統領のもとで、これまでになく強固なものとなった」と述べ、トランプ大統領は「日本は今後F35戦闘機を購入することで同盟国の中でも最大規模のF35戦闘機群を持つことになる。この『かが』も、F35を搭載できるように改修され、地域を越えて、両国が直面するさまざまな脅威を抑止することができるようになる」と述べました。
 このトランプ発言も重大です。「地域を越えて」広域で作戦行動を行い「両国の」脅威を抑止することを明らかにしているからです。

 「幇間外交」は「屈辱外交」です。独立国としての誇りも矜持も投げ捨て、ひたすらトランプ大統領のご機嫌を取って喜ばせることに終始しました。
 しかし、過剰な接待は相手をますますつけ上がらせるだけです。選挙勝利による政権安定という「私益」のために、日本の農業を守るという「国益」を売り渡した安倍「幇間外交」のツケは、今後高くつくのではないでしょうか。

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11月16日(金) 北方領土をめぐる日ロ交渉について安倍政権がついた3つの嘘 [国際]

 一昨日の14日、シンガポールで安倍首相とロシアのプーチン大統領による首脳会談が行われました。そこで両首脳は1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意しました。
 この56年宣言は平和条約締結後に歯舞群島と色丹島の2島を引き渡すと明記しています。従来、日本政府は国後と択捉の2島も含めた四島の一括返還を求めていましたが、安倍首相はこれを変更し、2島先行返還論に転換したように見えます。
 この方針転換と日露両首脳の合意は北方領土問題を前に進めたのでしょうか。それとも後退させてしまったのでしょうか。

 第1に、安倍首相の提案がこれまでの日本政府の方針を大きく転換したものであることは明らかです。15日に記者会見した菅官房長官は「実際の返還時期、態様、条件に付いて柔軟に対応する方針を堅持してきた」と述べ、国後と択捉が「後回し」になったとしても、従来の方針とは変わっていないと説明していますが、これは嘘です。
 今回の合意で安倍首相は「4島の帰属」については言及せず、北方4島の名前を列記し、その帰属問題を解決して平和条約を結ぶことを約束した93年の「東京宣言」も、4島の帰属の問題を解決して平和条約を締結することを確認した2001年の「イルクーツク声明」も無視されてしまいました。「1956年の共同宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させる。本日そのことでプーチン大統領と合意した」ということですから、93年や01年の合意から56年の合意へと後退してしまったことになります。
 元外務次官の竹内行夫氏は、『朝日新聞』11月16日付の談話で「今回の合意は、日本の外交努力や成果を後戻りさせるものだ」と指摘している通りです。安倍首相が行ったのは「新たな提案」ではなく「古い提案」であり、領土問題についての合意を大きく後退させてしまったのです。

 第2に、これは「2島先行返還」論であり、しかもそれは「2島+α」だと説明されています。これも嘘で、「2島先行」に引き続いてさらに残された2島が返還されることはあり得ません。
 実際には「2島限定」の返還であり、場合によっては「2島上限」の返還ということになるでしょう。前掲の『朝日新聞』に「2島先行ではない。『2島ぽっきり』だ。首相もちゃんとわかっている」という「日ロ関係筋」の見方が紹介されている通り、残りの2島が返ってくる可能性は、今回の合意によってほぼ潰えたと言って良いのではないでしょうか。
 また、プーチン大統領は「56年宣言はすべてが明確なわけではない。2島を引き渡すが、どちらの主権になるのかは触れていない」と強調しています。「主権」抜きの「引き渡し」もあり得るということであり、そうなれば「2島+α」ではなく「2島-α」ということになります。

 第3に、安倍首相は歯舞と色丹の2島が日本に引き渡された後にも、日米安保条約に基づいて米軍基地を島に置くことはないと伝えていたそうです。これも嘘になるでしょう。
 外務省は日米安保条約や地位協定について、「米軍はどこにでも基地を置くことを求められるが、日本が同意するかどうかは別だ」(幹部)と解釈しているそうですが(前掲『朝日新聞』)、その解釈に基づいて断ることができるのでしょうか。もし、そうできるのであれば、沖縄の辺野古での米軍新基地建設も断ることができたはずではありませんか。
 沖縄ではできないのに北方領土ではできる、というダブルスタンダードでごまかそうとしているのが安倍政権です。沖縄県民がこぞって反対している辺野古での新基地建設すら断れない日本政府が、米軍基地を島に置くことはないという約束を守れるはずがありません。

 このような問題があるにもかかわらず、すぐに分かるような嘘までついて、安倍首相はなぜ今回のような提案を行ったのでしょうか。それは残された任期中に大きな業績を残したいと焦っているためだと思われます。
 北方領土返還と拉致問題の解決は、改憲とともに、歴史に名を残す格好のテーマです。あと3年の任期内に、これらの問題の一つでも決着させて大きな業績を残したいと焦っているのではないでしょうか。
 領土問題では、来年1月の訪ロと6月のG20サミットでの日ロ首相会談を通じて成果らしきものをあげ、国民に幻想を与えたうえで衆参同日選挙に打って出るということを考えているのかもしれません。

 この安倍首相の焦りと目論見にプーチン大統領が付け込んだのが、今回の合意だったのではないでしょうか。そのことを国民に知られないようにするために大きな嘘をついているということなるでしょう。
 「思い出づくり」ならぬ「業績づくり」のために、憲法や領土、拉致問題などが利用されるようなことを許してはなりません。安倍首相の個人的な野望の犠牲となって苦しむのは国民であり、当事者たちなのですから。

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