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12月7日(土) 総選挙で自民党政治を終わらせる世論をどう作るのか(その4) [論攷]

〔以下の論攷は10月11日に行った講演の記録で、『生きいき憲法』No.90,2024年11月20日号に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

 質疑応答

 司会 五十嵐さん、ありがとうございました。皆さん、質問いかがでしょうか。すでに書いておられる方もいらっしゃるかと思うんですけれども、質問用紙回収にまいりますので、ぜひ、質問を書いていただければと思います、時間を取っておりますので。

 質問 最初は、野党第1党の野田代表は自民党に代わって、武器輸出三原則を破り、自衛隊の米軍との海外演習を決めた人で、CSISが求めていた特定秘密、民間に広げるセキュリティ・クリアランスを導入した人です。立憲民主党が中心になった政権になっても、改憲推進という点では変わらないんじゃないかというご質問です。

 五十嵐 僕は変わると思います。基本的に改憲に反対していますから。それに、自民党が政権にいて改憲勢力が多数であったにも関わらず改憲発議がなされていません。3年前のことを、皆さん、覚えていますか。参議院選挙で改憲勢力が3分の2を得たとき、何と言われたか。〝黄金の3年間〟と言われた。岸田政権は国政選挙がない3年の間に、改憲などの大きな事業に取り組めるだろうと。実際はどうだったか、〝泥沼の3年間〟でした。なぜそうなったか。統一協会の問題や裏金事件、政権を揺るがすような〝身から出たサビ〟の問題に忙殺され、改憲に手をつける余裕がなかったからです。
 政権交代で立憲中心の政府になっても、約束を守り、改憲に手をつけないようにすればいいんです。ただし、立憲民主党が持っている弱点、外交・安保についての弱点があります。今と大きくは変えない。外交・安保の継続性を基本としていますから。しかし、状況が大きく改善されるかどうかは分かりませんが、急速に悪化することはないと思います。それは私たちの運動いかんです。世論をどう高めていくか、その世論や運動にとって有利な条件として、政権交代を生かすかどうかです。これがわれわれに問われていることだろうと思います。
 そういう点からいえば、立憲の弱点、日米同盟といったら思考停止。外交・安保の問題で基本的に今までのやり方をそのまま踏襲する姿勢は批判しなければなりません。原発問題でも腰が引けちゃっています。野田代表になって、右のほうにウイングを広げようとするのは理解できますが、左のほうのウイングを引っ込めるというのは問題がある。両方を広げていけばいい。そうすることで多数派になるという展望を持って努力していただきたいと思います。統合司令部設置法にも立憲は賛成した、これも同じことですよね。そういうことで、立憲に対しても批判や注文をこれから強めていかなければならないと思います。

 司会 二つ目は、野党共闘ができていない現状で、どのように訴えていくかという質問です、

 五十嵐 これは先ほど言いましたように、〝落選運動〟です、自民党だけには入れない、特に小選挙区。ちゃんと政策協定を結んで、野党間で協議を行って一本化することが望ましいわけですが、緊急・非常の事態になってしまいました。できるだけ自民党の当選を阻止できるような投票行動、クレバーな投票行動を工夫していただきたいと思います。

 司会 三つ目は、ルール破りの企業・団体献金を廃止しない自民党への政党交付金160億円を差し止めろという主張は、お門違いの暴論でしょうかという質問です。

 五十嵐 交付金をやめるべきだということですよね。暴論じゃないです、企業・団体献金をそのまま受け取るんですから。それをやめる代わりにということで、30年前に導入されたのが政党助成金じゃありませんか。5年後にやめると言っていたのをやめないで存続させてしまった。存続するのだったら、代わりに導入された政党助成金をやめる。少なくとも、どちらかをやめるべきだと思います。企業は会社の社長も役員も従業員もみんな1人250円の政党助成金を税金で払っているわけです。そのうえ、企業・団体献金なら二重払いじゃないですか。
 この献金の効果があれば賄賂ですし、効果がなければ無駄金になる。背任ですよ、これは。どちらにしても問題がある。政党を資金面から甘やかし、政治をゆがめる。みんな飲み食いに使っているんですよ。選挙のときの買収だとかね。堀井学さんみたいに配っちゃいけない香典などに使う。このような不正・腐敗の温床になる。経団連の十倉会長は民主主義のためのコストだと言っていますけれど、実際には民主主義を腐らせる温床になっている。政党交付金を差し止めるというのは暴論でもなんでもないと思います。

 司会 四つ目ですが、本日、2024年のノーベル平和賞を日本被団協、日本原水爆被害者団体が受賞しました、万歳って書いてあります。

 五十嵐 よかったですね、これは本当によかった。ともに喜びあいたいと思います。これを受けて、日本も核兵器禁止条約を批准するべきです。日本政府は被爆体験者をすべて被爆者と認め、全面的に補償するべきでしょう。
 この受賞によって。世界は原水爆の使用を危惧しているということが明らかになりました。今、核兵器使用のリスクが高まっています。ロシアが使うかもしれない。ウクライナはロシア領内への攻撃を求め、これに反撃するためにロシアが、核兵器を使用する可能性がある。これが今一番大きな懸念材料になっているんです。
 アメリカもNATOもウクライナに武器を供与していますが、長距離砲の弾道距離を短くしている。ハイマースとい長距離砲やストームシャドウなどの長距離ミサイルもロシア領内深くに到達しないように制限した。ロシア側の反撃で核戦争に結びつくリスクがあるからです。これをアメリカも危惧しているんです。だから、ゼレンスキー大統領がバイデン大統領に、射程の制限を解除して欲しいと申し出たけれど、バイデンは認めなかった。なぜ認めないか。核戦争に結びつくからです。
 岸田さんは、そのことを全く認識していない。だから、反撃能力の保有によって敵基地深く攻撃できる兵器をせっせと買い込もう、開発しようとしている。ウクライナ戦争でバイデンが抑えている戦争を、岸田はやろうとしていたのです。今、ウクライナがやっている戦争こそが専守防衛型です、自国領土内とその周辺に限られている。ロシア領内に侵攻していますけど、クルスク州だけです。そこから中には入らない。これが今の戦争の現実です。
 核保有国との戦争がエスカレートしたら核が使われるかもしれない。中国との戦争も同じようなリスクがあり、懸念があるということを、日本の自民党政治家は全然分かっていない。このようなリスクを避けるためにも、核兵器禁止条約を批准する。少なくともオブザーバー参加することは、極東における核戦争の危険性を除去する点で非常に重要だと思います。それにしても本当によかった、被団協のノーベル平和賞受賞は。

 司会 次ですが、総選挙の後、自民党は分裂するか、維新・立憲との連立はあり得るか。これは選挙の結果次第ということですね。石破と反石破の対立が激化すれば、自民党は分裂する可能性もあります。

 五十嵐 もう実質的には分裂状態になっちゃっています。高市さんは政調会長への就任を要請されて断った。小林鷹之さんも広報委員長になってくれと言われたけれど断った。2人とも岩盤右派で、安倍路線の継承者です。石破さんは基本的に反安倍でした。そういう点で、自民党は安倍と反安倍で実質的に割れている。これが分裂までいくかどうかは、選挙でどれだけ負けるかということによるでしょう。
 公示前勢力は自民党が247議席ですから15減らせば、233議席の単独過半数を失います。自公で合わせて279議席ですから47失えば、政権を維持できなくなります。そう簡単ではないけれど、公明党も今回は議席を減らすと見られている。大阪は維新が対立候補を立てましたから。
 逆風にさらされている自公を過半数割れに追い込むことは十分可能です。追加公認でも不足するとなると、第2自民党、第3自民党にお呼びがかかるかもしれません。一番可能性が高いのは国民民主党。維新にも声かかるかもしれない。これも選挙結果次第ということです。
 もう一つ言いたいことは、例え自公政権が過半数を割っても参議院はまだ自公が多数ですから、ねじれになっちゃう。不安定な状況は来年7月まで続くことになると思います。それに決着がつくのは、来年の7月参議院選挙。ここで自公を少数に追い込むことによって、初めて決着がつくことになるということです。
 立憲野党の共闘については、今回は試練ですね。この試練からどういう教訓を引き出すか。共闘の新たな発展に結びつくような選挙をぜひ戦っていただきたいと思います。選挙区によっては、立憲の候補者を例えば共産党が自主的に支援する。逆もありますが、そういうところで成果を上げる、当選させる。自民党を蹴落としてもらいたい。これによって新しい教訓や経験を生み出すことで、共闘の新たな発展の芽を育てていくことが必要です。来年の参議院選挙での1人区で立憲野党の共闘に結びつくようなかたちで、総選挙でも運動していく必要があるんじゃないでしょうか。
 最後に、結びの話がなかったということですが、時間が来てしまいました。あきらめないことが重要だということです。学ぶことで情報リテラシーを高め、偽情報にだまされず、積極的に情報を発信することが必要です。発信の仕方も工夫しなければなりません。SNSやネットでの発信が大きな意味を持つようになってきていますから。
 都知事選のときに石丸候補についてはネットやYouTubeのユーザーなんかものすごく多かった。今回の総裁選では高市さんもそうでした。ネットやSNSでのアクセス数が非常に多い。そういう点でも、世論に対する働きかけが重要です。皆さんの9条改憲NOの運動を通じて、憲法をめぐる、政治情勢についての学習を深め、ぜひ幅広く情報を発信し、世論形成に努めていただきたいと思います。期待を述べまして、話を終わらせていただきます。



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12月6日(金) 総選挙で自民党政治を終わらせる世論をどう作るのか(その3) [論攷]

〔以下の論攷は10月11日に行った講演の記録で、『生きいき憲法』No.90,2024年11月20日号に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

 石破「軍事オタク」政権の危険性

 首相になった石破さんは、安倍さんや岸田さん以上に危険な人です。もともと「軍事オタク」として知られています。防衛相だったとき、大臣室の入口のガラスケースに軍艦や戦車のプラモデルを飾っていたほどですから。
 総裁選でも、いろいろなことを言っていました。アジア版NATO構想、日米地位協定の改定、米軍基地の自衛隊との共同管理、アメリカ国内での自衛隊訓練基地の設置、非核三原則の見直しと核共有などです。
 憲法についても独特の改憲論を主張していました。憲法9条第2項の削除です。「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」という部分を削ろうと言っていました。なぜ削るのか。「陸海空軍その他の戦力」を保持し、「国の交戦権」を認めるためです。自衛隊を「戦力」としての普通の軍隊にしようというわけです。
 なぜアジア版NATOなのか。なぜ日米地位協定を変えるのか。日米軍事同盟を対等な攻守同盟にする。アメリカと一緒になって戦争できるような「普通の国」になるためです。地位協定の見直しにしても、国民が米兵の犯罪、性犯罪などにおびやかされることのないように特権をなくそう、という話じゃありません。対等・平等の立場になるためです。軍事大国として自立し、核を持ち込んでアメリカとシェアする、核共有しようという構想です。
 自民党は60年安保闘争で危機にさらされ、憲法には手をつけない、9条についての解釈を変え(解釈改憲)ていろいろな言い訳をし、制約をつけてきた。「自衛隊は『戦力』でないから合憲だ」と。これが第1段階です。その後、軍拡がある程度の規模に達したら実質改憲という第2段階に移行する。実質的に、どんどん憲法に反するようなかたちで軍拡を進め、アメリカとの共同作戦体制を強め、ついに個別的自衛権だけではなくて集団的自衛権の一部行使容認にまで行きました。
 今はもう第3段階です。条文の書き換えなき明文改憲段階だと言っていいと思います。今までは言い訳をしたり制約を自らに課したりしてきましたが、これを吹っ飛ばした。集団的自衛権の一部ではなく、もうフルスペック、全面的な行使容認です。専守防衛ではない。自衛隊を海外に派遣して、アメリカ軍と一緒に戦争できるようにしようというわけです。
 ミサイルを打ち込まれる前に、着手段階でミサイルを発射できるようにしようじゃないかというのが、敵基地攻撃能力(反撃能力)です。今まで、敵基地や敵地、領土に達するような長距離兵器については持たないのが憲法の趣旨だっていっていたのに、堂々と持つ。巡航式ミサイルや極超音速ミサイル、トマホークをアメリカからどんどん買う。殺傷可能な攻撃的兵器を輸出できるようにする。もう、なんでもありです。
 ただ、9条が今のままだと憲法裁判をガンガン起こされるかもしれない。これは面倒くさい。だから、憲法9条2項を削っちゃおうというわけです。安倍さんでさえ、そんなことを言い出したら国民に反発されるからと、世論に配慮して言わなかった。その代わり、自衛隊1項と2項はそのままにして自衛隊の明記にとどめようと妥協した。石破さんは妥協しない。
 しかし、〝石破話法〟ですから、反発や批判があったらすぐ変えちゃう。今回は、安倍さんと同じことを受け入れたけれども、石破首相によって極めて危険な段階、実質改憲の究極段階です。発議なしの明文改憲段階になってきていることを直視しなければなりません。
 しかし、まだ間に合います。今度の選挙ですよ。だって使い捨て政権ですから、使い捨てればいいんです。おさらばすればいい。そのための絶好のチャンスが総選挙です。おさらばするために、われわれはどうするべきか。石破新政権の危険性を多くの人に知らせていかなければならない。石破内閣は看板をかけ替えたけれど、その色はカーキ色です、裏から戦争の匂い、きな臭い匂いが漂ってきているということを、国民に訴えなければならないということです。

 総選挙での争点と課題

 今度の選挙の主たる争点は、裏金問題と統一協会との癒着です。裏金を受け取った組織的犯罪者集団であり、法律を守らない、その趣旨を足蹴にしてきた人たち。裏金をため込みながら政治資金収支報告に記載していなかった裏金議員は、34人公認されているんですよ。非公認12人で、どっちが多いか、34人のほうがずっと多い。これでけじめつけました、などと言わせてはならない。この人たちも、本来は立候補してはならない人たちだから、その人たちを落とさなきゃならない。落選運動にぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 統一協会と腐れ縁を持っていた人たちも80人以上いる。この人たちも落とさなきゃならない。私が住んでいる八王子には萩生田さんがいます。加計学園事件のときは加計孝太郎さんや安倍さんと一緒にバーベキューをやりながらビール飲んでいる写真が出回った。加計孝太郎の友達です。統一協会との関連ではJR八王子駅北口で街頭演説を終えた生稲晃子さんを連れて統一協会の本部に行ってあいさつさせました。今回は2,728万円の裏金。事務所の机の引き出しの中に保管してあった。探したらたまたま出てきたという。出し忘れた年賀状じゃないんだから。萩生田さん、「大活躍」っていうか、スキャンダルあるところ萩生田ありですよ。
 それぞれの選挙区で裏金議員や統一協会と関わりのある議員を落選させるために、野党に1本化してほしかった。けれど、もう公示日まで4日しかありません。時間がない。これも自民党のもくろみでした。野党に選挙準備の余裕を与えず選挙になだれ込む。そうすることで足並みを乱し、〝漁夫の利〟を得ようとしているんです。
 だから、自民党にだけは投票しない。比例区では、それぞれの人が自分の応援する政党に自由に投票する。小選挙区が問題です。自民党に勝てる野党の候補者に票を集中してもらいたい。分散したら自民党が喜ぶだけですから。どこが勝てそうかというのは、報道などを参考にしてそれぞれ個々人で判断してもらいたいと思います。こういうクレバーな投票態度が求められているのではないか。
 そのためにも、自民党では駄目だという世論をつくっていく。今まで自民党を支持してきた人たちにも、こんな犯罪者集団、統一協会だってそうです。反社会的カルト犯罪者集団ですよ。日本人からお金をかき集めて家庭を崩壊させ、その集めたお金を韓国に持って行く。一部は北朝鮮にも流れている。ミサイルつくるお金に使われているかもしれない。
 こういう反社会的集団に便宜を図り、応援を依頼し、そして広告塔として活動してきた自民党を許してよいのか。これが自民党支持者に対しても問われている。今まで投票に行かなかった人には投票に行くように、自民党に入れていた人も今回だけは入れないようにと働きかけていただきたいと思います。

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12月5日(木) 総選挙で自民党政治を終わらせる世論をどう作るのか(その2) [論攷]

〔以下の論攷は10月11日に行った講演の記録で、『生きいき憲法』No.90,2024年11月20日号に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

 短期使い捨て選挙対策内閣の登場

 こういうかたちで出発した石破政権ですけれども、短期使い捨て選挙管理内閣だといっていいんじゃないか。選挙対策内閣ともいえますけど。差し当たり次の総選挙、10月27日までの命ではないか、という感じがします。この選挙を何とか乗り切っても、来年7月までには東京都議会議員選挙と参議院選挙がある。これを乗り切るのは難しい。
 そういった意味では、短期使い捨てになる。石破さん自身が、私の出番は自民党が危機に陥ったときにしか来ないだろうと言っていました。今回は5回目の正直。過去4回、「おまえは駄目だ」と言われ続けてきた人です。今回いよいよ自民党は行き詰った。裏金事件と統一協会の問題で国民の信を失い選挙で負けるかもしれない。
 こういう状況だからこそ、石破さんは選ばれた。「火中のクリを拾ってもらおう」ということです。「火中のクリを拾えば、大火傷するかもしれない。でも、火傷したって石破ならいいか」と、多くの議員は考えたんじゃないか。
 今までは党内野党、4回失敗を繰り返した人で非主流。反安倍で嫌われてきた人です。今回は危ないからということで、火中のクリを拾う覚悟を固めて新総裁に就任した。ところが、今までは観客席で〝ヤジ〟を飛ばして好きなことをいくらでも言えたけれど、今度はグラウンドに下りてプレーしなきゃならない。監督ですから。今まで好き勝手に言ってきたことが全部自分に跳ね返ってくる、さあ、困った、というのが今の状況です。
 以前から、石破さんには独特の話し方がありました。私は〝石破話法〟と言っています。原則論は言うけれど具体策に乏しい。国民向けやメディア向けに正論は言うけれど反発や批判が出てくるとトーンダウンしてしまう。こういう特徴は、これまでもありました。今回が初めてじゃない、石破さんという人は。
 今回は、特にそれが目立ちます。党内基盤が脆弱なまま最高責任者になって一番日の当たるとこに出てきちゃったからです。今までは〝日陰の存在〟だったから、あまり注目されなかった。今はスポットライトを浴びているところで前に言ったことを次から次へとひっくり返し、言行不一致になっている。
 自民党の総選挙のポスターに何て書いてあるか。〝日本を守る、成長を力に〟。これは間違いだと思う。〝自民を守る、変節を力に〟じゃないのか。これが石破新政権の本質だ、といっていい。新入閣が13人で旧安倍派がゼロ。今まで声かけられなかった人でみんなお友達。支援してくれた仲間や知り合いをかき集めてつくったガラクタ政権です。
 それでも統一協会の関係者は11人もいます。牧原法務大臣については組閣してから統一協会と深い関りがあることが明らかになった。牧原さん、37回も関係する集会に顔を出していた、とんでもない人ですよ。今まで政権を担ってきた経験や能力がある人たちはみんな排除せざるを得なかった、裏金議員だということで。
 今回の選挙でも、裏金議員の一部を非公認にした。当初は公認する、重複立候補を認めると言っていましたが、大きな批判を浴びた。メディアからの反発や党内の一部からも選挙を戦えないという声もあった。結局、最初6人、次に6人という形で小出しにして12人を非公認。公認した34人については重複立候補を認めないことにしました。大変な決断をしたと石破さんは言っています。こういう人たちからは恨み節が流れていると言っています。
 しかし皆さん、裏金問題というのは政治資金規正法違反ですよ。政治資金は国民の不断の監視と批判の下に置かれなければならない、というのが政治資金規正法の理念であり、趣旨じゃないですか。これに反するかたちで、政治資金収支報告書に記載しなかった、何千万円も懐に入れた。そのお金を何に使ったか分からない。私的に流用していたら、脱税ですよ。法律に違反している犯罪者じゃありませんか。
 そもそも立候補すること自体、間違いです。普通の犯罪者じゃありません、この人たちは法律をつくる仕事をする立法府の構成員です。法律の網の目をくぐって不正なお金をため込み、税金を免れてきた。法律に不備があり、穴が開いているのであれば、その穴を塞ぐのはこの人たちの責任じゃないですか。立法府にいるんだから、法律をつくる仕事をしているんだから。なぜ、それをやらないんだ、ということですよ。
 しかも、リクルート事件やゼネコン汚職、金丸脱税事件などで、30年前に政治改革が問題になった。そのとき、企業・団体献金は5年後にはやめよう。その代わりに、ということで政党助成金を導入した。でも、その5年後に、企業・団体献金やめるのをやめちゃったんです。政党助成金もらったままで、企業・団体献金ももらう。二重どりです。このとき私は、27年前に『徹底検証 政治改革神話』(労働旬報社、1997年)、という本を書きました。そのときから、すでに「政治改革」は「神話」だったんです。
 うそをついて小選挙区制を導入し、政党助成金を新設して企業・団体献金と二重どり。何ですか、これは。私の出した本の帯に「政治改革やり直しの提言」と書かれていました。この「提言」が実行されていれば、今回のような問題はなかったはずです。27年間、何やってきたんだと言いたい。
 今回だって、企業・団体献金も政治資金パーティー、政策活動費も残った。こういうごまかしを今もやっている。そのツケが今回ってきた。また、いけしゃあしゃあと選挙に立候補して公認してくれ、重複立候補を認めてくれと言う。〝盗っ人たけだけしい〟にもほどがある。
 こんな人たちは全部落とさなきゃ駄目です。今度の選挙は、われわれが主権者として審判を下す絶好の機会です。こういう人たちは全部落とす。それをやることが、私たち国民の義務であり、野党の責任だということを強調しておきたい。



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12月4日(水) 総選挙で自民党政治を終わらせる世論をどう作るのか(その1) [論攷]

〔以下の論攷は10月11日に行った講演の記録で、『生きいき憲法』No.90,2024年11月20日号に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 皆さん、こんばんは。ご紹介いただきました五十嵐です。最初は「予想される解散総選挙」という演題をいただきましたが、総選挙はすでに現実になっています。
 岸田首相が、次の総裁選挙に立候補しないと表明した8月14日の段階から、ある程度の予想はついていました。私のレジュメの「参考」として『学習の友』10月号の「政権担当能力を失った自民党にさらなる追撃を」という論攷を掲げておきましたが、この中で私は「総選挙の投票日は早ければ10月27日、遅くても11月10日になる可能性が高い」と書きました。実際に、10月27日投開票となっています。
 これは8月の末に出した原稿ですが、この時点で10月27日投開票という日程は、ほぼ予想がついていました。なぜかと言えば、3年前に菅首相が退陣して岸田首相に代わり、新内閣をつくって総選挙になだれ込んだ時と、全く同じ策謀が繰り返されようとしていたからです。このとき総裁選挙は9月29日で、解散総選挙の投開票は10月31日でした。
 今回は総裁選挙が9月27日で2日早い。だから、総選挙の投票日も2~3日早くなる。その場合の日曜日は10月27日です。ただし、「先負」なので避けるかもしれないと思いましたが、今はもう縁起を担いでいる余裕がなくなった。
 できるだけ早く「刷新感」を振りまいて内閣をつくり、そのままの勢いで解散総選挙になだれ込む。これは自民党が考えていた目論見です。その狙い通りにやられようとしている。すでに解散され、27日投開票ということになっています。
 事実上の選挙戦はもう始まっています。だから、この講演の表題である「自民党政治を終わらせる世論をどうつくるのか」ということ以上に、その段階を超えて主権者の力である1票を行使することで、いかにして自民党を政権の座から追い出すのか、これが今、問われていることです。
 4日後に公示です。ここで激しい選挙戦が戦われる。この選挙で自公政権を過半数割れに追い込めれば歴史は変わる。大きな転換をもたらすことのできるチャンスが訪れています。私たちはできることに力を尽くし、自民党政治の息の根を止めるために頑張り抜きたい、と思うわけです。

 自民党の行き詰まりと総裁選での石破選出

 自民党は行き詰まってしまいました。3代続けての政権投げ出しです。安倍さんは第1次安倍内閣を投げ出したときと同じような理由で、体調不良と潰瘍性大腸炎で辞めましたが、実際には行き詰まった。新型コロナウイルス対策に失敗し、あとを引き継いだ菅首相も1年間で政権を投げ出しています。そのあと、あれよあれよという間の解散総選挙で票をかすめ取り、勝利した岸田内閣も3年間しかもたない。
 自民党内で支持を失ったわけじゃない、岸田さんは。自民党の中では、それなりに支持を集めて総裁としては再選されるかもしれない。けれど、そのあと1年以内に来年の10月には衆院議員の任期が切れます。この選挙には勝てないんじゃないか、ということで勝利の展望を見出すことができなかったんですね。
 なぜか。去年の12月に内閣支持率が3割を切って、20パーセント台になりました。危険水域といわれるこの2割台の支持率がずっと続いた。8月まで2割台の支持率で内閣を存続させてきた。支持が2割で、不支持は6割。こんな内閣が存続すること自体が異常です。それを反転させ、上昇させる展望がない、ということで政権を投げ出してしまった。
 政権投げ出しのあと、「われもわれも」と総裁選に手を上げる人が出てきます、10人以上も。結局、立候補したのは9人でしたが。驚きましたね、こんな人しかいないのかと。人材も行き詰まっている。岸田政権が行き詰まり、自民党政治も行き詰る。後継の総裁候補もろくな人が残っていない。
 この中で3人が有力候補とされました。小泉進次郎、高市早苗、石破茂の3人。最終的に石破さんが選ばれたわけです。なぜ石破さんなのか。小泉さんは軽過ぎる、高市さんは右過ぎる、石破さんは古過ぎるということで、それぞれ問題はあるにしても、経験と安定性ということからいえば石破さんがいいんじゃないか。「消去法」で選ばれたのが石破新総裁ということになるわけです。
 選ぶ基準が2つありました。1つは、総裁は事実上の総理大臣ですから、〝首相になる人〟を選ぶのか。もう一つは、新総裁選出からすぐに総選挙になだれ込むわけですから、〝選挙用の看板〟として誰がふさわしいのか。一般の国民や党員・党友は、事実上の首相を選ぶつもりでした。ところが国会議員、とりわけ衆院議員は次の選挙の看板として誰がいいだろうかということで選んだのが小泉さんですね。
 だから、小泉さんは第1回投票で国会議員の票が多かったんです。ところが、見栄えはよくても、あまりにも軽過ぎる。岸田首相や自民党政治、裏金問題に対して国民の怒りが沸騰している。その怒りの嵐に吹き飛ばされてしまうんじゃないか。こういう心配があった。だから、小泉さんはちょっとやめたほうがいいんじゃないかと。
 結局、決選投票に残ったのは、高市さんと石破さんです。最終的には、高市さんが破れ石破さんが選出された。なぜ高市さんは第1回投票でトップに立てたのか、そして、なぜ決選投票で選ばれなかったのか。100人いた旧安倍派の支援を得たからです。安倍さんの盟友であった麻生さんも第1回投票から高市に入れろという指示を出して票が集中した。安倍政治を受け継ぐと言っていたため、旧安倍派と麻生派の支援を得た。
 同時に、今の自民党の支持者、党員・党友がいかに右傾化しているか、ということも示している。右過ぎると言われている高市さんが、たくさんの党員・党友から支持を集めたということ自体、極端な保守地盤に支えられている自民党の危険なあり方を示しています。
 旧安倍派と安倍政権を支えた岩盤保守の支援によって第1回投票でトップに立った高市さんでしたが、これが決選投票ではマイナスになって敗れた。高市さんの第1回投票の勝因と決選投票の敗因は共通している。安倍政治の継承です。高市さんは安倍さんの復古的な言動も引き継いだからです。
 一番大きな問題があったのは、おそらく靖国神社の公式参拝だと思います。首相になってからもやると言っていた。安倍さんも第2次安倍内閣で首相に就任するまで靖国神社を参拝すると言い続け、総理大臣に復帰してから1年後、2013年12月26日に靖国神社に参拝します。これに対し、アメリカ政府は「失望した」という声明を発表した。高市さんが靖国神社を参拝すれば韓国は不快感を表明し、日米韓の対中包囲網にヒビが入る可能性がある。一番心配したのは岸田さんだと思います、アメリカも懸念すると。そのことは日本のエスタブリッシュメントにも伝えられていたのではないかと思います。
 結局、岸田さんや菅さんが高市は駄目だと指示を出し、決選投票で高市さんが石破さんに敗れた。ただし、石破さんは議員票で16票の差しかない、薄氷の勝利です。これが今の石破首相を規定、あるいは制約している。党内基盤が極めて弱い。この脆弱性はさまざまなかたちの制約を生む。石破さんを縛っているために、言いたいことを言えずやりたいこともやれない。
 総裁選に立候補した9人のうちの5人が現職の大臣で、半分以上です。だったら大臣のときにやりなさいよ、と言いたい。色々と良いことも言っていたけれど、無責任ではないか。本当に、自民党には無責任な人がいるんだなと思いましたね。加藤勝信さんの議員票は16票です。おかしいと思いませんか。だって、推薦人20人いたんだから。本人は別で、青山参院議員は「加藤に入れた」と言っていたから、少なくとも22票入るはずなのに16票しか入っていない。
 決選投票の前の日に20人の加藤さんの推薦人が決起集会でカツカレーを食べたのに、食い逃げした人が6人いる。これが自民党議員ですよ。自分は推薦人になってカツカレー食べるけれど票は入れない。入れてくださいよと言いながら、自分は入れませんよと。こんな人1人や2人じゃない。これが自民党の劣化を象徴的に示していると思います。


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12月3日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月3日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:泉下で石橋湛山も嘆いている…薄気味悪い石破政権「熟議」という名の茶番劇

 それなのに、朝日新聞はこの所信表明演説に合わせるかのように始めた新連載、「政界変動 消えた『官邸1強』」において、<窮地の首相 行き着いた「熟議」>(11月29日付)などと書いていた。野党に媚びへつらうしかない政治状況を「熟議」という言葉で糊塗し、<官邸1強の安倍政権を対立軸に据えた新しい政治への路線転換>だとか書いているのだから、ビックリだ。

 大メディアがこうして、持ち上げてくれるのだから、石破にしてみれば「地獄で仏」の心境ではないか。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。

 「路線転換も何も、安倍時代が酷すぎただけじゃないですか。官邸1強で密室でなんでも決めてしまう。そこに集う官僚も強権で決められ、逆らえばパージされてしまう。国会審議は形骸化し、解散権を弄ばれ、忖度でものも言えなかった時代です。それに比べれば、石破政権が少数与党に転落したことで、結果的にはマシになった。それだけのことで、今後、本当に熟議の国会になるかどうかは、臨時国会の審議を見なければいけません。自公の密室協議が自公国の密室協議になっただけでは何も変わらない。国民の監視が不可欠ですよ」

 まったくだ。安倍時代の犯罪的な国会審議、民主主義の冒涜を黙認してきた大メディアがその反省もせず、石破の形だけ「熟議」を「新しい政治への路線転換」などと持ち上げるのは「言葉遊び」も過ぎる。

 加えて、この「熟議」だって極めて怪しい。自公国は「103万円の壁」見直しやガソリン減税の検討を含めた総合経済対策で合意していて、バラマキ補正の「年内の早期成立を期する」という合意文書に署名している。

 「103万円の壁」をどこまで引き上げるか、その財源をどこに求めるかを決めないまま、「早期成立」で合意しているのだから、「白紙委任状」みたいなものだ。

 「引き上げ幅によって、財源も変わってくる。国だけでなく、地方の財政にも影響が出る。それなのに、国民民主党は財源を探すのは与党の仕事とばかりに、壁の見直しだけで合意した。無責任すぎる話です。しかも、ふつうは財源捻出のために無駄を削るのが先なのに、そうした議論が出てこない。増税の含みがある可能性もあり、そうしたことも含めて、マトモな国会審議がされるのかどうか、懐疑的な視点で見るべきです」(五十嵐仁氏=前出)


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11月29日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月29日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:理念よりも数合わせ…「103万円の壁」迷走、税を政争の玩具にするな

 27日、都内で講演した際も、臨時国会で審議する2024年度補正予算案への賛否について、玉木は「かなり前向きにわれわれの意見を取り入れてもらった」と胸を張った。103万円の壁の引き上げを含む税制改正に向けた与党との協議についても強気で、「納得できなければ、予算にも法案にも協力することは難しくなる」とクギを刺すことを忘れなかった。

 「石破首相としては、103万円の壁の引き上げを表明して国民民主党のパフォーマンスに協力する見返りに、政権運営を支えてもらいたい。そのためのバラマキですが、税収減を補う財源についてはどうするつもりなのか。税収が減れば公共サービスが行き届かなくなる可能性もあり、地方自治体の首長からも懸念の声が上がっています。石破首相と国民民主党は利害が一致しているのでしょうが、細部を詰める前に、焦りから拙速な判断をすれば、混乱を招くだけです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 石破はきのう官邸で玉木と会談。「エネルギー基本計画(エネ基)」に関する提言を受け取った。もちろん、「103万円の壁」の話もあったという。首相が野党党首と会談する場合、通常は国会内で行う。官邸での面会は異例の厚遇だ。

 国民民主が求める178万円の“満額”かはともかく、控除額を引き上げれば、特定扶養控除や配偶者特別控除などの基準見直しも必要になってくるだろう。そこをいじらなければ、労働時間を増やしても結果的に手取りが減ってしまうケースが出てくる。103万円の壁の引き上げに合わせて、つじつま合わせの弥縫策が講じられることになるはずだ。

 「103万円の壁を撤廃したとしても、106万円、130万円、150万円……と、税制と社会保障の壁はその先にいくつもある。年収の壁を見直すならば、国民民主党の協力を期待した目先のパフォーマンスで取り繕うのではなく、総合的、全体的な制度の見直しを行うべきでしょう。国民の手取りを増やすというのなら、防衛費倍増をやめて、その範囲で年収の壁引き上げに充当するとか、消費税を減税して法人税を上げるという選択肢もあり得るはずです。103万円だけを議論しても、また別の問題に突き当たるだけで、何も解決しません」(五十嵐仁氏=前出)

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11月27日(水) 総選挙の結果をどう見るか―石破自公政権の終わりが始まった(その3) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.856,12月号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 危惧すべき新勢力の台頭

 今回の総選挙では、新勢力の台頭が目を引きました。参政党と日本保守党がともに3議席を獲得したからです。保守党は得票率2%を超えて政党要件を得ることに成功しました。どちらも右翼的な主張と政策を掲げている点で似通っています。
 このような右派ポピュリズム勢力の登場はヨーロッパでは一般的になっています。その流れが日本にも及んできたということかもしれません。日本社会の右傾化は、自民党の総裁選挙で安倍政治の継承を掲げて岩盤保守層に支持された高市早苗候補が決選投票に残り、「軍事オタク」として知られる石破茂候補が首相に選ばれたことにも示されています。これらの現象が民主主義の脅威を生み出すことのないような対応が求められることになるでしょう。
 他方で、この参政・保守の2党に自民・公明・維新・国民民主を合わせた改憲派政党の議席数は287となり、改憲発議に必要な3分の2(310議席)を下回りました。現状での改憲発議は不可能になるという画期的な成果が生じたことになります。

 残された課題

 総選挙後の議会勢力は自公の与党が215議席で、野党や無所属などは250議席となり、立憲民主148、維新38、国民民主28を足しただけで214議席と拮抗しています。石破首相が再選されても少数与党となり、予算案や法案を通すには野党の協力が欠かせなくなります。全野党が反対すれば、法案は1本も通りません。
 いつでも内閣不信任案を可決できる状況になったのです。政治は新しい局面に入りました。「自民一強」の時代は去り、自民党政治に代わる政治を求める熟議と模索の新しいプロセスの始まりです。差し当たり、総選挙中の各党の公約で共通していた課題の実現に取り組むことが必要です。
 裏金事件の再調査、政治資金規正法の再改正での企業・団体献金や政治資金パーティーの禁止、選択的夫婦別姓の実現、マイナ保険証の導入延期と健康保険証廃止の凍結、食料自給率目標の設定や最低賃金1500円の実現とそのための中小企業支援策、国の責任での学校給食無料化などで、具体的成果を達成する必要があります。石破首相が日米地位協定の見直しを口にしていた事実も忘れてはなりません。
 衆院は自公の与党が少数になりましたが、参院は依然として自公が多数派です。両院の勢力関係が異なる「ねじれ」現象が生まれました。参院でも自公を少数に追い込んで「ねじれ」を解消し、本格的な政権交代を実現することが必要です。
 今回の総選挙によって扉が開かれた自公政権の終わりの始まりを、この参院選で終わらせなければなりません。来年7月には、自民党大軍拡・腐敗政治を追撃しサヨナラを告げる大きなチャンスがやってくるのですから。 



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11月26日(火) 総選挙の結果をどう見るか―石破自公政権の終わりが始まった(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.856,12月号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 維新の会と公明党の後退

 日本維新の会は小選挙区で23、比例代表で15、合計で38議席となって5議席減らしました。得票数では、比例代表で805万から511万へと294万票も減らしています。これは前回増の反動であるとともに、全国政党となることに失敗したからです。しかし、小選挙区では、480万から606万へと126万票の増となりました。これは、これまで公明党に譲っていた大阪の4選挙区で候補者を擁立し、全勝したことを反映しています。
 維新の創立者である橋本徹氏が「大阪以外では改革政党だというイメージが全く浸透しなかったと思う」と言い、「馬場さんは維新の中でも1、2を争うくらい古い政治家だ」と批判しているように、政治資金規正法の改正案をめぐって不可解な妥協的対応を行ったり、大阪万博のゴリ押しや兵庫県知事の推薦問題があり、政策活動費の必要性を主張したりしたために票が伸びなかったのではないでしょうか。すでに、馬場代表の辞任を求めるなどの内紛が始まりました。
 これ以上に深刻な打撃をこうむったのは公明党です。公明党は小選挙区で4、比例代表で20、合計で24議席にとどまり8議席もの減少となりました。比例代表の得票数では、前回の711万から596万へと115万票も減らし、3議席の減となっています。
 これまで「常勝」を誇ってきた小選挙区でも、大阪の4議席を失っただけでなく、埼玉14区に小選挙区単独で立候補した石井啓一代表が落選し、辞任に追い込まれるという大打撃を受けています。裏金問題とは無関係でしたが、30人以上もの自民党の裏金非公認議員に推薦を出したことで〝同じ穴のムジナ〟とみられ、大きな批判を浴びた結果でした。加えて、支持基盤である創価学会の高齢化で活動量が減退し、ピーク時の2005年には900万票近くあった比例での得票数も600万を切って過去最低になりました。

 共産党の不振とれいわの躍進

 日本共産党は小選挙区で1、比例代表で7、合計で8議席となって2議席の減少でした。得票数では、比例代表で前回の417万から336万へと81万票の減で、2議席の後退です。小選挙区では、264万から370万へと106万票を増やしましたが、これは前回より100選挙区以上も積極的に擁立した結果でした。
 これに対して、れいわ新選組は小選挙区での議席獲得はなかったものの、比例代表で3から6増の9議席となって3倍加を達成しました。票数では、222万から381万へと159万票も増やしています。政策が似通い、支持者も重なると見られている共産党とれいわにこれほどの違いが出たのはなぜでしょうか。
 第1に、共産党は自民党派閥の裏金事件で抜群の役割を果たし脚光を浴びたために、かえって他の政策が目立たなくなった可能性があります。これに対して、れいわは「失われた30年」を取り戻すと経済・生活問題を前面に打ち出し、国民民主党も「手取りを増やす」と訴えていました。これらの政策が生活苦にあえぐ国民の琴線に触れたのかもしれません。それだけ生きるのに苦しみ、生活問題が深刻になっているということでしょう。
 第2に、ネットやSNSなどを通じた若者への働きかけが十分ではなかったと思われます。共産党自身が「SNSの発信・活用、選挙ボランティアの組織などで新しい創意的努力が行われましたが、この挑戦はまだ始まったばかりです」(常任幹部会「総選挙の結果について」)と総括しているように、この点で一定の遅れがあったのではないでしょうか。
 第3に、小選挙区に積極的な擁立を図った方針の検証が必要です。比例代表での票の掘り起こしを目指して前回の105人から213人へと約2倍も候補者を立てたにもかかわらず、4億2900万円の供託金を没収され十分な効果を上げていません。れいわの方が比例代表で45万票も多かったのですから。立憲民主と競合する選挙区では候補者を下ろすなど、大儀のためには自己犠牲をいとわない姿勢を明確にするべきだったのではないでしょうか。
 高齢化など「自力の後退」も指摘されています。裏金事件の暴露などで抜群の貢献を行うなど大きな役割を果たしたにもかかわらず、それがなぜ共産党自身の前進に結びつかなかったのか。十分な教訓を引き出して来年夏の都議選と参院選に備えなければなりません。

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11月25日(月) 総選挙の結果をどう見るか―石破自公政権の終わりが始まった(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.856,12月号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 自公政権の終わりが始まったようです。石破首相と自民党が狙っていた奇襲攻撃は失敗し、歴史的な惨敗によって過半数の議席を失ったからです。10月27日に実施された総選挙は、予測し期待してもいた政権与党の過半数割れと立憲民主党の大躍進を実現しました。
 自民党は裏金事件に対する国民の怒りの大きさと小選挙区という選挙制度の恐ろしさを思い知ったことでしょう。選挙後、石破首相は「自民党は総選挙で国民から極めて厳しい審判を頂戴した」と語りましたが、まさにその通りの結果となりました。
 このような結果をもたらすうえで共産党の果たした役割は絶大でした。「静かなる革命」ともいえる激変の最大の功労者であり、議席増を果たした野党はその恩恵を被っていることを自覚するべきです。自民党裏金事件の発端を報じたのも、選挙最終盤に2000万円の裏公認料を暴露したのも、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」だったからです。
 総選挙での審判は、何よりも前言を翻して選挙を強行した石破新首相に対するものでした。それとともに金権化・右傾化・世襲化という宿痾に冒されている自民党政治そのものに対するものです。加えて、国民無視の安倍政治とそれを受けついだ岸田前政権の3年間の失政に対する審判でもありました。そのすべてに対して、国民は「ノー」を突き付けたのです。
 その結果、各党の議席数は、別表1(省略)の通りになりました。また、党派別当選者数の推移は別表2(省略)、党派別得票数の推移は別表3(省略)の通りになっています。
 自民党は歴史的な惨敗を喫し、立憲民主党と国民民主党の両党は躍進しました。日本維新の会と公明党は議席を減らして後退し、裏金事件を暴露した立役者の共産党は不振に終わり、れいわ新選組は3倍増となって明暗を分けました。社民党は1議席の現状維持で、参政党と保守党が3議席を獲得し、無所属は与党系6、野党系6の計12議席となっています。
 なお、投票率は53.84%(比例代表)となり、戦後3番目に低かった前回よりさらに2ポイント下がりました。低投票率は自民党に有利とされますが、今回はそうなりませんでした。裏金事件で自民党に嫌気をさした支持者が棄権に回ったからだと思われます。また、女性の当選者は過去最高となりました。男性が多い自民党現職議員の落選が相次ぎ、女性の候補者が多かった立憲と国民の両党が躍進したからではないでしょうか。
 このような選挙結果をどう見たら良いのでしょうか。どのような要因と背景によってもたらされたのでしょうか。それは、今後の日本政治にどのような課題を提起しているのでしょうか。

 自民党の歴史的惨敗

 自民党は小選挙区で132、比例代表で59、合計で191議席にとどまり、65議席減となりました。議席が200を下回ったのは政権を失った09年以来で、結党してから2回目になります。まさに歴史的惨敗というべき大敗北でした。
 前回(2021年)と比べれば、比例代表で1991万から1458万に533万票も減らしましたが、議席では72から59への13議席減にすぎません。大きく減らしたのは小選挙区です。2782万から2086万へと696万票減で、議席にすると189から132へと57議席も減少しています。解散前議席との比較では65議席減となっていますが、その大半は小選挙区での敗北でした。わずかの差で当選者が一斉に入れ替わる小選挙区制の怖さがここにあります。
 自民党が比例代表で減らした票は、三つの方向に流出したと思われます。一部は棄権して投票率を下げ、保守中道部分は国民民主や立憲民主に流れ、石破首相の反安倍姿勢を嫌った岩盤保守は参政党や保守党へと向かったのではないでしょうか。
 選挙での大敗にもかかわらず石破下ろしの動きは鈍いようですが、事実上の分裂状態が解消されたわけではありません。反石破勢力の中核であった衆院旧安倍派が57から22へと勢力を激減させ、高市氏が応援した裏金候補者が28人も落選したため、今のところ鳴りを潜めているだけです。少数与党となれば内紛が起きる可能性は高く、来年夏の参院選前には「石破で戦えるのか」という声が高まるのは確実で、〝茨の道〟は続くことでしょう。

 立憲民主党と国民民主党の躍進

 立憲民主党は小選挙区で104、比例代表で44、合計で148議席を獲得し、50議席増の大躍進を遂げました。裏金事件による自民党への逆風の最大の受け皿となり、小選挙区制という制度の大きな恩恵を受けたための勝利です。必ずしも、立憲民主党に大きな追い風が吹いたわけでもなく、支持が急増したわけでもありません。
 この点ではイギリス総選挙での労働党の勝利と似通っています。支持の増大ではなく保守党への批判の受け皿として労働党が選ばれたからです。ここでも、わずかな投票行動の変化で議席が激変する小選挙区制の特性が示されています。
 前回との比較では、比例代表で1149万から1156万への7万票しか増えていません。議席では39から44へと5議席増のほぼ横ばいです。ところが、小選挙区では1722万から1574万へと148万票も減らしているのに、当選者は57人から104人へと47人も増やしました。
 今回増やした50議席は、小選挙区で競り勝った結果です。大躍進は裏金事件で逆風にさらされた自民党への批判票の受け皿としての消極的選択の結果にすぎなかったということを、立憲民主党は十分に自覚することが必要でしょう。当面は次の政権選択に向けての「試用期間」と受け止め、来夏の参院選に向けて野党をまとめ、政権担当能力を示さなければなりません。
 国民民主党も小選挙区で11、比例代表で17、合計で現有議席の3倍となる28議席に到達しました。21議席増の大躍進です。こちらの方は小選挙区制の恩恵というより、自民党を離れた票の受け皿として支持を増やした結果です。
 比例代表では、前回の259万から511万へと358万票も増加し、5から17へと12議席増となりました。この増加分だけで、共産党の比例代表での得票数336万票と議席数7を上回っています。小選挙区でも125万から235万へ110万票の増となり、6から11への5議席増となっています。そのために候補者不足が生じ、東海ブロックで2議席、北関東ブロックで1議席を他党に譲る結果となりました。
 選挙後、国民民主党はキャスティング・ボートを握ることになりましたが、当面は連立に加わらず、政策ごとに賛否を決定するパーシャル(部分)連合を選択するとしています。しかし、かつての「自社さ連合」のように、玉木首班を匂わされて引き込まれる可能性もあります。これからの動向に注目する必要があるでしょう。


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11月21日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月11日付に掲載されたものです。〕

*記事:野党攻勢 旧安倍派幹部を証人喚問

 当の萩生田は自身のメルマガ(8日配信)で<予算委員長を野党側に渡すという事も決まり、視界不良な国会が待ち受けています>とボヤいていたが、自身の裏金こそ視界不良を招いた要因じゃないか。

 「旧安倍派幹部は誰も刑事責任を問われず、衆院選を経て『禊は済んだ』と思っているのかもしれませんが、裏金づくりの経緯も、何に使ったのかもハッキリしていません。真相究明から逃げ続けてきた自民の姿勢が衆院選で『ノー』を突き付けられたのであり、証人喚問や政倫審にきちんと応じることが生き残る道です。自民が自浄作用を示せるかどうかの最後のチャンスでしょう」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 一体、何人の裏金議員が説明の場に出てくるのか。見物だ。

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