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8月16日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』8月16日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「統一教会総汚染で分かった 自民党の“自称保守”の身勝手な正体」

■保守ではなく保身の政治家

 「生前の安倍元首相を筆頭に、靖国参拝を重視するような自称保守派の政治家は、神道政治連盟や日本会議の影響を強く受けている。その多くが清和会を中心としたいわゆる自民党のタカ派です。ところが、そういう国粋主義に染まったウルトラ保守の政治家こそが、反日的なカルト宗教の統一教会と深く結びついていたことが分かってきた。統一教会は、侵略戦争と植民地支配という罪を背負っている日本は韓国に奉仕する義務があると教えている。本来なら、靖国を参拝するのは祖国のために命を落とした英霊に尊崇の念を表すことだと主張する自民党タカ派とは思想的に相いれないはずなのです。第2次安倍政権以降、顕著に嫌韓感情をあおりながら、一方では日本を蔑視する韓国の宗教団体とズブズブだったことの矛盾を清和会や支持者はどう納得しているのか。理解に苦しみます」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 実際、自民党と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との“癒着”は底なしで、第2次岸田改造内閣において少なくとも7人の閣僚、20人以上の副大臣・政務官が接点を持っていたことが分かっている。

 就任後に判で押したように「知らなかった」「今後は関係を見直す」と言っているが、反省の色はなく、その場しのぎにしか見えない。

 嫌韓感情を助長した安倍を自称保守派は熱烈に支持してきたのに、日本を蔑視する韓国第一主義の教団が安倍の死を悼む。実はズブズブの関係だったという矛盾に、支持者はどう整合性を持たせるのか。

 「岸信介をはじめ、清和会はそもそも対米隷属ですから、成り立ちからして矛盾をはらんでいる。思想信条などないに等しいのです。安倍氏もそうですが、過去の歴史に向き合おうとしない修正主義だから、自分たちを正当化できればそれでいい。選挙で有利になるなら悪魔とも手を結ぶ。イデオロギーより利権が大事で、反日宗教と持ちつ持たれつの関係を続けることにも矛盾を感じないのでしょう。自分の利益のためには、国民の苦しみにも知らんぷりする。もはや“エセ保守”という言葉しか浮かびません」(五十嵐仁氏=前出)

 保守を標榜してきた政治家ほど統一教会と関係が深いという事実は、日本政界の闇としか言いようがない。保守とは何なのか、表層的な言葉に惑わされずに判断する力が国民にも求められている。政権中枢のカルト化を許すわけにはいかないはずだ。

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8月14日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』8月13日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「やはり自民党は総汚染 邪な内閣改造は悪評噴出で大失敗」

 改造前の岸田政権は、閣僚19人中9人が教団と関わりを持っていた。にもかかわらず、交代させたのはそのうち7人だけ。岸田派ナンバー2の林外相と、甘利前幹事長のゴリ押しで山際経済再生相は留任させた。

 そこへ新たに加わった加藤厚労相と高市経済安保担当相、さらに初入閣の寺田総務相、西村環境相、岡田地方創生相が教団と接点があった。まさか統一教会との関係において「経験と実力」を評価したわけではあるまい。

 改造後にも次から次へと出てくる怪しい癒着。“行って来い”の人事は、自民総汚染の裏返しでもある。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「岸田首相の言う『難局突破』はこの国が直面する難局ではなく、政権を取り巻く状況を指しているのでしょう。危機的状況を打開するためのリセット改造のはずが、問題の根深さを露呈しているのだから目もあてられません。医療崩壊を引き起こしつつある新型コロナウイルス第7波、出口が見えない物価高、それに統一教会問題と決して切り離せない安倍元首相の国葬に対する納得のいく説明。岸田首相が今やるべきことは、改造ではなく国会審議なのです。臨時国会をたった3日で閉じたりせず、与野党の英知を結集してこの事態を乗り切る政策を一刻も早く実行すること。発言と行動が矛盾に満ち満ちています」

 新たな船出は沈没までの時間稼ぎにすらならないかもしれない。

 共同通信の調査(10、11日実施)によると、支持率は54.1%。昨年10月の内閣発足以来最低となった前回調査(先月30、31日実施)から3.1ポイント増えただけだった。

 不支持率は28.2%で、ほぼ横ばい。統一教会と自民議員の関わりについて「説明が不足している」との回答は89.5%に達し、教団や関連団体と「関係を絶つべきだ」も84.7%に上った。安倍の国葬に関する岸田の説明に「納得できない」との回答も56.0%を占めた。

 「下落傾向の支持率が上昇基調に転じる要素は見当たりません。統一教会問題によって、岸田首相の政治手法の弱点がよりあらわになった。自らイニシアチブを取ることができないのです。党として教団との関わりを調査、検証、実態解明を指示することなく、個々の議員に丸投げ。組織として責任の所在を明らかにする考えは全くない。コロナ対策も物価対策も周囲に丸投げし、先頭に立ってリーダーシップを発揮しようという姿勢はいまだに見えない。周囲の意見を聞くだけで、具体的に動こうとしない。国のリーダーとしての資質を決定的に欠いていると言わざるを得ません」(五十嵐仁氏=前出)

 そうでなくても、この先は政治イベントが目白押しだ。今月下旬には閉会中審査を実施し、世論の賛否が割れる安倍の国葬について審議。安倍の「四十九日」となる今月25日には挙党態勢で臨む沖縄県知事選(9月11日投開票)が告示され、9月27日には国葬の本番が控える。


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8月13日(土) 参院選の結果と憲法運動の課題(その3) [論攷]

〔以下の論攷は憲法会議の機関誌『憲法運動』第513号、8月号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕


3 今後の課題と展望

(1)命と暮らしを守り、経済と社会保障を再建する課題

 参院選後、新型コロナウイルス感染の急拡大が生じ、第7波がやってきました。オミクロン株のBA.2型がBA.5型に急速に置き換わっているからです。コロナ感染防止のための検査体制の強化やワクチン接種などの対策を急ぎ、病床の確保などで医療体制のひっ迫を防がなければなりません。
 参院選でも大きな争点となった物価高騰の大波が到来するのはこれからです。選挙で野党が一致して求めた消費税の減税を引き続き要求し、中小企業や業者を苦しめるインボイスの導入を中止させることが必要です。岸田政権は実効性の低い賃上げ政策や小手先の物価対策に終始し、実質賃金は2か月連続でマイナスになっています。
 アベノミクスによって儲けを拡大した大企業は内部留保を466兆円もため込み、異次元の金融緩和が「黒田円安」を生み、物価高に拍車をかけています。三本の矢を堅持する「新しい資本主義」ではなく。新自由主義とアベノミクスから転換し、内部留保への課税や金融所得課税、富裕層への累進課税の強化などが必要です。
 「全世代型社会保障」を口実に世代間対立をあおって負担増・給付減を正当化してはなりません。10月からの75歳以上の病院窓口「2割負担」導入に反対し、6月支給分から減額された年金をこれ以上カットさせず、防衛費倍増の財源として狙われている社会保障を削減するのではなく、その充実を求めていく必要があります。

(2)大軍拡と改憲を阻止し、外交・安全保障を立て直す

 参院選でも国民は改憲への信任を与えたわけではありません。選挙の結果を受けて実施された共同通信の世論調査では、改憲について「急ぐ必要はない」が58.4%と過半数を超え、「急ぐべき」は37,5%にすぎません。参院選で重視した項目も「物価対策・経済政策」が42.6%の最多で、「憲法改正」は5.6%という少なさです。
 このような国民の声を無視して、9条改憲に突き進むことは許されません。まして、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有論や11兆円もの規模を目指す防衛費GDP2%への倍増論などは論外です。
 このような方針は戦後保守政治の質的転換を示すもので、これまでの延長線上でとらえてはなりません。質的に異なる本格的な軍事大国路線を選択しようとしているからです。戦後保守政治が採用した解釈改憲の枠に入らないからこそ、憲法の条文を変える明文改憲に転じようとしているのです。
 この点では、9条改憲によって日本は何を失い、どのようなリスクを招くのかが明らかにされなければなりません。大軍拡と9条改憲によって目指されているのは、簡単にいえば、次のような軍事大国の姿にほかならないからです。
 ① GDP2%の11兆円を超える世界第3位の軍事力
 ② 米軍とともに戦う自衛隊の自由な海外派兵
 ③ 日本が攻撃されていなくても集団的自衛権による参戦
 ④ 外国の指揮統制機能等の中枢を攻撃しせん滅する攻撃能力
 ⑤ 攻撃される前に行う国連憲章違反の先制攻撃
 このような国のあり方が憲法の平和主義の原則に反し、専守防衛の国是を吹き飛ばすものであることは明らかです。周辺諸国の警戒心を強めて軍拡競争をあおり、戦争のリスクを高めるにちがいありません。
 これに対して、憲法9条の平和主義原則に沿った外交・安全保障政策は、本来、以下のようなものでなければならなかったはずです。
 ① 必要最小限度の防衛部隊に徹し海外派兵を行わない
 ② 軍事同盟に加盟せず外国の軍事基地を置かない
 ③ 仮想敵国を持たず対立する国のどちらにも加担しない
 ④ 東南アジアの非核武装地帯を東北アジアにも拡大する
 ⑤ 特定の国を敵視せず全ての国を含む集団安全保障体制を構築する
 これこそが、憲法9条が求めている外交・安全保障政策の具体化ではないでしょうか。しかし、現在の自公政権ではとうてい実行できません。だからこそ、このような政策を実施し、憲法を活かして東アジアの平和と安全を実現できる「活憲の政府」が必要なのです。

(3)政治におけるモラルを回復し、疑惑の真相を解明する

 今回の参院選においても、政治家や候補者の暴言が繰り返されました。桜田義孝前五輪相は少子化に言及し、「女性も、もっともっと、男の人に寛大になっていただけたらありがたい」と発言し、現役大臣である山際経済再生担当相は「野党の人から来る話は、われわれ政府は何一つ聞かない。皆さんの生活を本当に良くしようと思うなら、自民党、与党の政治家を議員にしなくてはいけない」と言って松野博一官房長官に注意され、釈明に追い込まれました。
 たびたび問題発言を繰り返してきた麻生副総裁もロシアによるウクライナ侵略に触れながら「子どもの時にいじめられた子はどんな子だった。弱い子がいじめられる。強いやつはいじめられない」と発言しています。まるで攻められたウクライナの側に責任があるかのような物言いではありませんか。
 これらは政治家としての資質が疑われるような暴言ばかりです。それが本音であっても普段は口をつぐんで表には出てきません。選挙になれば、街頭演説をする必要が生まれます。多くの聴衆を前にした演説をするとき、受け狙いでポロット出てしまったのです。
 自民党ばかりではなく維新の会やNHK党も同じです。有権者に対する誠実さのかけらもなくモラルを欠いた政治家の本質に早く気付いてほしいと思います。この点では、ウソを言い続けて信頼を失ったジョンソン首相を引きずり下ろしたイギリスを見習ってもらいたいものです。
 同時に、これらの暴言よりさらに大きな問題なのが「政治とカネ」をめぐる疑惑です。とりわけ真相解明が急がれるのは、安倍元首相のモリカケ桜と言われる疑惑の数々で、桜を見る会前夜祭での後援会による会費の補填、ホテルの便宜供与、サントリーによる酒類の無償提供など、いずれについても真相解明が急がれます。
 また、安倍元首相については、その死去をめぐって急浮上してきた旧統一協会との深い闇の解明も必要です。祖父の岸信介元首相からつながりがあり、安倍元首相だけでなく自民党政治家の多くが旧統一協会を利用し、利用されてきました。旧統一協会の支援で当選した自民党の井上義行議員をはじめ、このような持ちつ持たれつの関係に光を当て、自民党とカルト教団との腐れ縁を断ち切らなければなりません。

(4)野党共闘を再建し、解散・総選挙を勝ち取る

 昨年の総選挙後、野党共闘は大きな困難に直面しました。そうなったのは、共闘の中心となるべき立憲民主党とその支援団体である連合の腰が定まらなかったためです。
 なぜでしょうか。それは立憲民主の泉健太代表も連合の芳野友子会長も、市民と野党の共闘の戦略的重要性を理解していなかったからです。野党共闘は選挙に勝つための便宜的な方策にとどまらず、新しい政府を作るための唯一可能な戦略的目標だったのに。
 自公政権に対抗し政権交代を目指している立憲も連合も、立憲単独での政権獲得が可能だと考えているのでしょうか。それが無理だというのであれば、連立するしかありません。その相手と想定している国民民主を「兄弟政党」だと言ってみても、先方は共闘に応じようとしていません。
 そうなれば、ともに連携して政権交代を迫ることのできる政党と手を結ぶしかありません。その相手は、現状では共産・れいわ・社民の3党になります。これらの政党との連携は、政権交代を実現するための「パン種」なのです。大切にして発酵するのを待つのが、立憲のとるべき態度ではないでしょうか。
 ところが、立憲はこのような共闘の戦略的重要性を理解せず、攻撃されればすぐにぐらついてしまいます。政権交代に向けての可能な道はこれしかないということ、活路はこれらの政党との共闘にしかないということが分かっていれば、もっと腰の据わった本気の共闘が実現できたはずです。
 連合にしてもこの間の対応は不可解なものでした。芳野会長は共産党との共闘をかたくなに拒んでいましたが、かつて共産党ともかかわりの深い全労連と「花束共闘」という形でエールを送りあったり、メーデーの時差開催で舞台を共有したりしたことを知らないのでしょうか。
 立憲も連合も存在意義が問われています。立憲は連合という一部の労働組合のためにあるのでしょうか。連合は傘下の大単産の組合員だけの利益のためにあるのでしょうか。そうではないでしょう。全ての国民と全ての働く人々のためにあるのではありませんか。
 今回の参院選の総括を通じて共闘の再建のためにどのような方針を打ち出すのかが、試金石となるにちがいありません。昨年の総選挙以来の教訓をしっかり学び、野党の共闘態勢を立て直してもらいたいと思います。
 来年5月に広島で開かれる主要国首脳会議(G7)後、有利な情勢だと判断すれば岸田首相が解散に打って出るかもしれません。来年秋以降、総選挙から2年を経て解散風が吹き始める可能性もあります。「黄金の3年間」を待つことなく、それ以前に政権を追い詰めて解散・総選挙を勝ち取り、野党共闘による政権交代を迫ることがこれからの課題です。

 むすび―憲法運動における新たな課題

 参院選の結果、憲法改正に前向きな自民・公明・維新・国民民主と無所属を合計した「改憲勢力」は179議席となり、改憲発議に必要な3分の2である166議席を大きく上回りました。岸田首相は改憲に向けて「できるだけ早く発議し、国民投票に結び付けていく」と強調しています。いよいよ改憲発議の阻止に向けて正念場を迎えることになります。
 この点では安保体制による日米軍事同盟と憲法9条の相互関係、憲法上の制約を生み出している9条の意義の再確認が重要です。9条改憲によって「失うものの大きさ」と「招き寄せるリスクの危うさ」を幅広く知らせていくことが、ますます大きな意味を持つことになるからです。
 特に強調しておきたいのは憲法9条の効用であり、その「ありがたさ」です。9条改憲を主張している人々はもちろんのこと、それに反対している人々を含めて、その意義や効用が十分に理解されず、9条改憲によって「失われるものの大きさ」が良く分かっていないからです。
 その第1は、憲法9条が戦争加担への防波堤であったということです。安保条約に基づく日米軍事同盟によって日本はアメリカが始めた不正義のベトナム戦争やイラク戦争に協力させられましたが、9条という憲法上の制約があるために全面的な加担を免れました。ベトナムに延べ30万人以上の兵士を派遣して5000人近い戦死者を出し、虐殺事件まで引き起こした韓国とは、この点で大きく異なっています。
 第2に、自衛隊員を戦火から守るバリアーだったということです。安保体制によって自衛隊はイラク戦争に引きずり込まれましたが、「非戦闘地域」で活動した陸上自衛隊は基本的には「戦闘」に巻き込まれず、殺すことも殺されることもなかったのは9条のおかげでした。
 第3に、戦後における経済成長の原動力だったということです。これが「9条の経済効果」であり、平和経済の下で国富を主として民生や産業振興に振り向けることができた結果、一時はアメリカと経済摩擦を引き起こすほどの経済成長を実現することができました。
 第4に、学術研究の自由な発展を促進する力でもあったということです。日本学術会議は9条の趣旨を学術にあてはめて軍事研究を拒否してきたため、兵器への実用化や軍事転用などに惑わされることなく地道な基礎研究に専念し、ノーベル賞並みの研究成果を上げることができました。
 第5に、平和外交の推進を生み出す力だったということです。しかし、残念ながらこれは可能性にとどまりました。日本外交はアメリカの後追いにすぎず、平和な東アジアを構想する力がなく将来のビジョンもうち出すことができなかったからです。9条を活かした「活憲の政府」による独自外交に期待するしかありません。
 今回の参院選は憲法を放棄する「棄憲の国」か、憲法を活かす「活憲の国」かという二つの道の分かれ目にありました。前者は現在の与党と維新などの補完野党による9条改憲によって作られる国であり、後者は立憲野党の連合政権によって築かれる国です。日本の未来を切り開き希望を生み出すのは、後者の道しかありません。そのためのたたかいはこれからも続きます。

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8月12日(金) 参院選の結果と憲法運動の課題(その2) [論攷]

〔以下の論攷は憲法会議の機関誌『憲法運動』第513号、8月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕


2 選挙戦の特徴と要因

(1)厳しい情勢と岸田政権の手ごわさ

 以上に見たように、参院選の結果を一言でいえば野党側の自滅と言ってよいものでした。このような結果をもたらした背景と要因は何でしょうか。
 今回の参院選の背景となった情勢はもともと野党にとっては厳しいものでした。野党側はそのような情勢の下での決戦を強いられ、効果的な反撃ができずに自滅したということです。それは、大きく分けて長期・中期・短期の3層構造をなしていました。
 長期的に見れば、第2次安倍政権以降、着々と進行してきた日本社会の右傾化・保守化という問題があります。これは実質賃金の停滞や年金の削減、2度にわたる消費税の増税、アベノミクスと新自由主義政策の失敗、新型コロナウイルス禍による生活苦と営業・雇用の困難などを通じた中間層の没落と貧困化の進展を背景にしたものでした。それは維新の会への支持の増大、NHK党の勃興や今回の選挙での参政党の進出、労働組合・連合の保守化と自民党への接近などの要因にもなっています。
 中期的には、岸田政権の登場とロシアのウクライナ侵略による好戦的雰囲気の拡大、国民の不安の増大と安全保障への関心の強まり、大軍拡・9条改憲の大合唱などを挙げることができます。強権的な安倍・菅政権という前任者とは異なるソフトでリベラルな印象の岸田文雄首相の手ごわさ、内閣支持率の安定と自民党支持率の高さなどに加え、「聞く力」を前面に対立を避け、安全運転に徹して聞き流すだけで何もしない岸田首相の政治姿勢が功を奏したということでしょうか。
 そして短期的には、安倍晋三元首相に対する銃撃と死去という衝撃的な事件の影響があります。参院選投票日2日前の最終盤という微妙な時点で勃発したこの事件によって自民党に同情が集まり、世界平和統一家庭連合(旧統一協会)の名前が隠され安倍元首相との関係も明らかにされることなく、その死が政治的に利用されたようにみえます。
 序盤で堅調とされていた与党ですが、物価高騰が選挙戦の争点に浮上してくるなかで守勢に回り勢いが弱まっていたのではないでしょうか。それが安倍首相の死によって巻き返しに転じ、自民党は当初の堅調さを回復して勝利したというわけです。

(2) 野党の失敗と混迷

 このように厳しい情勢の下で、ただでさえ弱体化した野党は決戦を強いられました。本来であれば、対抗するための強固な陣形を築くべきだったにもかかわらず、右往左往するばかりでした。「これでは勝てない」と選挙の前からある程度予想できるような対応に終始した結果、負けるべくして負けてしまったようにみえます。
 何よりも大きな問題は、昨年の総選挙の総括を間違えたことにありました。政権との対決の強化と野党間の共闘の再建こそ野党勢力にとって必要な最善の策だったにもかかわらず、その逆を選択してしまったからです。
 総選挙後、自民党やメデイアなどから野党に対して「批判ばかりだ」という批判が沸き起こり、それにたじろいだ国民民主は政権にすり寄りました。当初予算に賛成して内閣不信任案に反対するなど補完政党へと転身したのです。これに引きずられる形で立憲民主も政権批判を手控えて対案路線に転ずるなど、維新の会を含めた翼賛体制づくりの波にのまれていきました。これでは政権の問題点が明らかにならず、与党を追い詰めることもできません。
 加えて、「共闘は野合」「立憲共産党」などの分断攻撃に屈し、連合による揺さぶりによって腰が引けた立憲民主党の執行部は、共産党との連携や野党共闘に対して消極的な姿勢を強めてきました。まさに、自民党の思うつぼにはまってしまったというわけです。
 その結果、32ある一人区での共闘は11にとどまり、たったの4勝に終わりました。こうなることは選挙の前からある程度予想されていたことです。一人区での分裂が自民党に漁夫の利を与えて参院選での勝利をもたらすことは自明でした。
 野党間の共闘に向けて真剣な取り組みを行わなかった立憲民主と、背後から揺さぶりをかけ続けた連合の責任は大きいと言うべきでしょう。形だけの共闘によって表面を取り作ってみても、真剣さが欠けていれば本気の共闘にはならず、力を発揮することができないのは当然です。
 このように、政権チェックという野党の本分を忘れて批判を手控えるという戦術的な失敗と、連合政権を展望した共闘の構築から後退して形だけの選挙共闘に矮小化するという戦略的な混迷に陥った点に大きな問題がありました。この戦術的な失敗と戦略的な混迷こそが、今回の参院選で野党のオウンゴールを生み出した最大の要因だったのです。


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8月11日(木) 参院選の結果と憲法運動の課題(その1) [論攷]

〔以下の論攷は憲法会議の機関誌『憲法運動』第513号、8月号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 参院選が終了し、与党の勝利、野党の敗北という結果が出ました。野党にとっては厳しい情勢の下での選挙となり、結果も残念なものとなりました。とりわけ、改憲勢力とされる政党の合計議席が参院での発議に必要な3分の2を超えたことは重大です。
 この結果が憲法の改定を目指す勢力にとっては有利に、改憲阻止を目指す勢力にとっては不利に働くことは否定できません。9条改憲を阻もうとする憲法運動にとっては重大かつ危険な局面が生じ、大きな課題を提起するものとなりました。
 このような結果になった背景としては、新型コロナウイルス感染第6波の収束、ウクライナ侵略による好戦的雰囲気の強まり、大軍拡と改憲の大合唱、岸田政権の支持率の安定と自民党支持率の高さ、野党の分断と一人区での共闘の不十分さがありました。それに加えて、選挙最終盤での安倍晋三元首相への銃撃・殺害による自民党への同情票の増大などがあったと思われます。
 参院選がなぜ、どのようにしてこのような結果になったのか。各党の選挙結果とその意味はどのようなものなのか。それが今後の政治と憲法運動にどのような課題を提起することになるのか。憲法運動はどう対応するべきなのか。以下、これらの問題について検討したいと思います。

1 参院選の結果

(1)勝たせてもらった与党

 参院選での各党の当選者数は、別表(省略)の通りになっています。全体の特徴は「与党が勝利した」というよりも、野党間の共闘の不十分さや乱立による票の分散などで対応を間違え、「野党が敗北した」といった方が良いような形になりました。オウンゴールによって自民党は勝利を「プレゼント」されたのです。
 自民党は選挙区で45議席、比例で18議席の合計63議席となり、改選前から8議席増やしました。今回の選挙で争われた選挙区74議席と比例50議席に神奈川選挙区の欠員を合わせた125議席の過半数を単独で確保し、メディアでは「大勝」「圧勝」などと報じられています。
 しかし、その内実は全く違っています。自民党が支持を増やした結果ではないからです。政党支持の実態が比較的正確に示される比例で昨年10月の総選挙と比べれば165万票も減らし、議席で1議席減となっています。有権者全体の中での支持を示す絶対得票率は16.8%にすぎず、2割を切りました。
 自民党が支持を減らしているにもかかわらず議席を増やした秘密は選挙区にあります。特に32ある一人区では28勝4敗となり、前回より6議席も増やしています。特に沖縄県を除く西日本では自民党が全勝しました。
 公明党は選挙区で現職7人が立候補して全議席を維持しましたが、比例では昨年の総選挙に比べて93万票減らし、1議席減の6議席となって計13議席にとどまりました。支持者の高齢化などに加え、自民との相互推薦の難航が背景にあるとみられています。
 公明党も選挙区では野党乱立の恩恵を受けました。大阪の場合、59万票で最下位の4位当選でしたが、共産・立憲・れいわが調整して一本化すれば65万票となり、当選は難しかったかもしれません。
 
(2) 試練に直面した立憲野党
 
 立憲民主党は神奈川県選挙区での5位補欠当選(任期3年)を含めて選挙区6減の10議席、比例は改選7を維持して合計17議席を獲得しました。改選前からは6議席減ですが、それは全て一人区での敗北でした。一人区では、青森と長野で勝利しただけで、旧民主党の力が強かった岩手と新潟でも議席を失っています。
 一人区での議席減は野党共闘が不十分だったことの結果です。前回は全てで共闘が成立し10勝をあげましたが、今回は11選挙区に限られ、青森と長野、沖縄で当選しただけです。本来であれば、野党第一党として共闘のかなめになるべき立憲民主が十分な役割を果たすことできず、野党支持者の失望を招きました。
 立憲民主の得票は、昨年の総選挙での比例と比べて472万票も激減しています。これは共闘しなければ勝てないことが分かっているのに背を向けた立憲への支持者の怒りの表れではないでしょうか。支持団体である連合の干渉と妨害に屈し、国民民主の与党へのすり寄りに動揺して共闘に積極的に取り組まず、市民と野党の政策合意にしても協定に各党の党首が署名するのではなく口頭での約束にとどまりました。
 日本共産党は東京選挙区で議席を維持しましたが、比例では2議席減の3議席となって合計4議席にとどまっています。昨年の総選挙の比例から55万票も減らし、3年前の19年参院選比例と比べても86万票の減です。
 共産党はその要因について、常任幹部会声明で「指導的イニシアチブを十分に果たせなかった」ことと「自力をつけるとりくみ」の「立ち遅れ」を指摘しています。野党共闘を進めるとともに、共産党の自力を強め支持をどう増やすのか、有事における自衛隊「活用」論についての理解をどう広げていくのかが今後の課題でしょう。
 同時に、東京で示された前進面を学ぶ必要もあります。NHKの出口調査では無党派層の投票先で1位でした。選挙ボランティアに若い人の姿も目立ち、SNS(ネット交流サービス)での情報発信も有効でした。山添拓候補は憲法9条にもとづく平和構築を直球で訴え、ほかの野党との違いを明確にし、大軍拡や9条改憲に反対する都民の願いを受け止め維新を退けて当選することができたのです。
 れいわ新選組も東京選挙区で山本太郎代表を当選させ、比例で2議席を得て合計3議席となりました。若い層や革新無党派層からの支持を広げ、一定の地歩を確保しています。
 社会民主党は比例で福島瑞穂党首が当選して改選前の1議席を維持し、得票率も2%を超えたために政党要件を維持できました。2%に達しなかった昨年の総選挙より24万票増やしたためですが、それは共産支持者による戦略的投票の結果かもしれません。

(3) 存在感を示した補完野党

 日本維新の会は選挙区で4議席、比例で8議席の合計12議席を獲得し、改選前の6議席から倍増しました。特に、比例区では立憲民主党を上回り、野党第一党となって存在感を示しました。
 しかし、東京と京都では次点で落選しています。大阪・兵庫などの近畿以外での当選は神奈川だけでしたが、松沢成文候補は元県知事ですべてが「維新票」とは言えません。基本的に「全国政党」化は成功せず、一時の勢いを失って頭打ちとなりました。
 昨年の総選挙での比例と比べても、20万票ほど減らしています。その支持層の多くは比較的恵まれた現役世代のホワイトカラーなどで、貧困化が進み中間層が没落するなかで不満を強め、将来への不安もあって「改革幻想」に期待を寄せた人ではないかとみられます。その一部は同じような性格のNHK党や参政党に流れたかもしれません。また、維新は暴言やスキャンダルなどが多く、問題候補者の「吹き溜まり」のようになっています。その実態が知られるようになって支持を失っている可能性もあります。
 国民民主党は選挙区で2議席、比例区で3議席の合計5議席を獲得しました。改選前からは2議席の後退です。「対決から解決へ」と言って予算案に賛成し、政権への接近を強めた国民民主の変身は必ずしも効果を生んでいるとは言えません。
 NHK党は82人を立候補させて比例で1議席を獲得し、選挙区・比例とも得票率2%に達して政党要件を維持しました。立花孝志党首は政党助成金目当ての大量立候補を公言し、22年度は2億6000万円が助成されると推計されています。このような立候補が許されるのか、改めて助成金の趣旨に反する問題点を浮かび上がらせました。
 諸派では新たに参政党が比例で1議席を獲得し、政党要件を満たしました。参政党が力を入れて取り組んだユーチューブへの動画投稿などSNSを通じて急速に関心を広げた結果だとみられています。

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8月10日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』8月10日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「飛び交う人事情報 目くらまし内閣改造に加担の大マスコミ」

 8日に公表されたNHKの最新世論調査(5~7日実施)で、内閣支持率は3週間前の前回から13ポイントもの大幅下落の46%。昨年10月の岸田内閣発足後で最低に落ちた。自民党の統一教会“汚染”が影響したのは確実で、「統一教会と政治との関係について、政党や国会議員が十分説明していない」が82%に上った。

 10日の改造に向け、大マスコミが人事の情報を連打し続け、改造後も新大臣の横顔やら抱負やらを報じてくれれば、支持率への悪い影響は緩和されると岸田はシメシメ。統一教会隠しの国民目くらましに、メディアがまんまと乗っかってくれる。岸田は笑いが止まらないだろう。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「統一教会問題では現職閣僚との歪んだ関係があったり、安倍派が最も親密だったりと、人事に絡めた報道がそもそも多かった。そこへ内閣改造ですから、安倍派の処遇はどう変化するのか、派閥ごとの閣僚の人数は……などに焦点を当てた報道ができるので、メディアにとって今回の改造は、いつにも増して格好の材料になっている。それこそが岸田首相の狙い通り。名称変更問題など統一教会に政治が便宜を図った可能性があるのか、教団がどこまで政治に浸透しているのかなど、国民が知りたい疑問を追及する報道が改造をきっかけに減ってしまう恐れがある。メディアには岸田首相の邪な狙いにハマらないようにしてもらいたい」

 統一教会の組織票によって、1人の議員の当落が左右される。そして、当選した議員は今も堂々と自民党に所属している。「党との組織的な関係はない」と繰り返す茂木幹事長の詭弁はチャンチャラおかしい。

■持ちつ持たれつの腐れ縁

 「自民党と統一教会の関係は、持ちつ持たれつの腐れ縁で、お互いに利用価値があるから続いている。自民党は業界団体頼みの選挙をやってきた。しかし、時代が移り、業界団体がどんどん弱体化している。そんな中で、頼りになるのが宗教団体です。『社会的に問題が指摘される団体との関係は十分注意し』と岸田首相は言いますが、関係議員はできれば手を切りたくない、いつまでも裏で支えてもらいたい、というのが本音でしょう」(五十嵐仁氏=前出)

 だからなのか、岸田は発言とは裏腹に、統一教会問題に腰が引け気味だ。


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8月8日(月) 自民に「漁月夫の利」与えた参院選(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『全国商工新聞』第3517号、8月1日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 分断攻撃に屈し 戦術戦略で失敗

 このような不利な情勢の下で選挙に臨んだ野党でしたが、昨年の総選挙の総括を間違えて戦術的な失敗と戦略的な混迷に陥りました。政権との対決の強化と野党間の共闘の再建こそが必要な策であったにもかかわらず、その逆を選択してしまったからです。
 総選挙後、「批判ばかりだ」という批判にたじろいだ国民民主は「対決より解決」を掲げて政権にすり寄り、これに引きずられた立憲も政権批判を手控えて対案路線を打ち出すなど、維新の会を含めた翼賛体制づくりの波に飲み込まれました。これでは政府・与党を追い詰めることはできません。
 加えて、「共闘は野合」などの分断攻撃に屈し、連合による揺さぶりによって腰が引けた立憲は野党共闘に消極的な姿勢を強め、自民党の思うつぼにはまってしまいました。立憲が比例で大きく得票を減らしたのは、野党共闘の要としての役割を果たせず有権者の失望を招いたからです。
 その結果、32ある1人区での共闘は11にとどまり、自民28勝、野党4勝という結果に終わりました。こうなるのはある程度予想されていたことで、一人区での分立が自民党に漁夫の利を与え、勝利をプレゼントしたのです。共闘に向けて真剣な取り組みを行わなかった立憲と、背後から足を引っ張った連合の責任は大きいと言うべきでしょう。

 「活憲の政府」へ 展望生む運動を

 今後の課題の第1は、コロナ禍と物価高から命と暮らしを守るために、医療体制を整備し、消費税の減税とインボイスの中止などを求めていくことです。新型コロナの第7波が訪れ、値上げの大波が押し寄せてくるのはこれからですから。
 第2の課題は、大軍拡・9条改憲阻止のための憲法闘争です。選挙後、岸田首相は改憲に向けて「できるだけ早く発議」することを強調していました。戦争に巻き込む安保体制とそれへの防波堤となってきた憲法9条の相互関係、9条改憲によって「失うものの大きさ」と「招き寄せるリスクの危うさ」を、事実に照らして説得的に訴えることがますます重要になります。
 第3の課題は、野党共闘を再建することです。きちんとした総括と反省の上に立って、草の根から立て直していかなければなりません。
 これらを通じて、憲法に寄り添い活かせる「活憲の政府」に向けての展望を生み出すことが第4の課題です。国政選挙での審判を受けることのない「黄金の3年間」を許さず、自民党と旧統一協会の闇の解明などによって早期に与党を追い込んで、解散・総選挙を勝ち取りましょう。

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8月7日(日) 自民に「漁夫の利」与えた参院選(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『全国商工新聞』第3517号、8月1日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

消費税減税、憲法闘争広げ
共闘再建で解散総選挙早く

 日本の命運をかけた参院選が終わりました。新型コロナ禍や物価高などによって傷ついた国民生活をどう立て直すのか、ロシアによるウクライナ侵略を受けて日本の安全保障をどうするのか―などが大きな争点となった選挙でした。
 選挙結果は与党が過半集を維持して勝利しています。自民党は改選過半数の63議席を確保し、1減で13議席となった公明党と合わせて76議席になりました。しかし、自民党は比例で昨年の総選挙から165万票も減らし、有権者全体の中での絶対得票率は16.8%でした。支持を減らしているにもかかわらず、一人区で議席を増やして勝たせてもらったのです。
 憲法改正に前向きな自民・公明・維新・国民民主と無所属を合計した「改憲勢力」は179議席となり、発議に必要な3分の2である166議席を上回りました。
 対する野党は、立憲民主党が選挙区で6減の10、比例は改選7を維持して17議席、維新の会は選挙区で1増の4,比例は5増の8となって12議席に倍増しました。比例では立憲を上回って野党第一党となっています。
 日本共産党は東京で1議席を得たものの比例では2減の3となって合計4議席、国民民主党も改選7から2減の5議席、れいわ新選組は3議席、社民党は1議席を得て得票率が2%を超え、政党要件を維持しました。このほか、NHK党と諸派の参政党がそれぞれ比例で1議席を得ています。

 野党不利の情勢 銃撃事件加わり

 野党が敗北した理由の一つは、厳しい情勢の下での選挙だったということにあります。事前の選挙予測でも与党の堅調が伝えられていました。
 その第1は、安倍内閣以降、顕著になってきた日本社会の右傾化や保守化の流れがあります。実質賃金の低下や2度にわたる消費税の増税、新型コロナ禍での生活苦や営業の困難などによる中間層の没落、貧困化などからくる不満や不安が未来志向の「改革」幻想に期待を寄せ、維新の会やNHK党、参政党への支持増大、連合の保守化などをもたらしました。
 第2は、岸田政権の登場とロシアのウクライナ侵略による好戦的雰囲気、安全保障への関心の強まりと大軍拡・9条改憲の大合唱などです。ソフトな印象の岸田首相の手ごわさ、内閣支持率の安定などに加え、「聞く力」を前面に対立を避け、安全運転に徹して聞き流すだけで何もしない岸田首相の政治姿勢が功を奏しました。
 そして第3には、安倍元首相に対する銃撃死という衝撃的な事件の影響があります。投票日2日前に勃発したこの事件によって自民党に対する同情が集まり、物価高対策で失った支持を盛り返したのではないでしょうか。
(続く)



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8月6日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』8月6日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「岸田首相が豪雨やコロナ対策そっちのけで“高級会食三昧”! 参院選勝利で危機感ゼロに」

 それは岸田首相の1日を報じる「首相動静」を見れば顕著だ。参院選後、4日までに岸田首相が家族以外と夜に会食したのは9回。相手は自民党議員、大メディア幹部、全銀協会長など大企業トップらで、先週は金曜を除く平日4日間びっちりだった。

 一方で、同期間にコロナ対策に当たる事務方と会ったのはわずか4回。動静に厚労省の事務次官や医務技監が登場したのは、7月11日、7月22日、7月28日、そして8月4日だけだ。永田町関係者は「昨夏の『第5波』では、当時の菅首相は毎日のように厚労次官や医務技監を呼んでいました。それに比べ、岸田首相は危機意識が薄いと言わざるを得ません」と呆れる。

 そもそも官邸内では、7月以降、官房長官や首相補佐官に加え、首相秘書官3人が次々感染するなど「クラスター発生」と呼んでもおかしくない状況だ。それでも岸田首相が会食を控えることはない。

 「参院選勝利で自民1強体制がさらに確立したため、状況を見くびり、緊張感が欠けている。岸田首相は積極的な対応策を取ろうとせず、今まで通りで切り抜けようとするタイプですしね」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 この首相に舵取りを任せていてはヤバイ。


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8月5日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』8月5日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「カルト汚染、コロナ無策 それでも岸田内閣の支持率5割超とは」

 忘れてならないのは、岸田が大メディアの大アマ弛緩報道でいい気になっている間、国民生活がどんどん苦しくなっていることだ。

 ロシア軍のウクライナ侵攻と円安で、物価はかつてないほどの勢いで上昇。生活に欠かせない食料や光熱費など生活必需品の伸び率は6月に4.4%という高水準に達した。それでいて賃金はさっぱり上がらないのだからニッチもサッチもいかなくなる家庭が急増するのは当然。厚労省が3日発表した5月の生活保護の申請件数は全国で2万353件と、前年同月比で1953件も増加した。

 円安、物価高、低賃金、コロナ感染拡大を放置し、外遊もパッとしない。こんな政権がダラダラ続くことは国民にとって悲劇と言うより他ない。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「岸田首相が掲げていた『聞く力』とは『聞き流す力』。党内や野党と対立しないよう『何もしない』ことで高い支持率を維持してきたわけで、それが今の新型コロナに対する政府の姿勢にも表れている。つまり、何もせず、自治体や医療機関、個人に対策を丸投げしているのです。物価高や円安について積極的に取り組む様子がみられないのも、ヘタに動けば反対意見などが出て対立する恐れがあるため、避けているのでしょう。今国会を3日間という短期間で閉じてしまうのも、苦境にあえぐ国民生活に本気で向き合う気がないと言えます」

 もはや「不作為犯」となった岸田政権に対し、国民は怒りの声を上げるべきだ。


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