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10月11日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]
〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月11日付に掲載されたものです。〕
*巻頭特集:非公認十数人の猿芝居 党利党略、裏金・統一教会みそぎ解散に鉄槌を
選挙情勢は、現時点では、どっちに転んでもおかしくない状況だ。
「週刊文春」は自民、単独過半数割れの219議席、「週刊ポスト」は自民53議席減の202議席、「サンデー毎日」は自民、単独過半数維持の234議席と予測している。現有256議席から議席を減らす可能性は高い。
現職大臣のうち4人が落選してもおかしくない。
ただ、自民党に有利なのは、多くの選挙区で野党候補が乱立していることだ。たとえ有権者が裏金議員を落選させようとしても、自民批判票が分散すれば、各地で自民候補が次々に漁夫の利を得る、という最悪の事態になる可能性がある。
「自民党が最速解散を選択したのは、自分たちに有利だと判断したからでしょう。野党に選挙区調整をやらせる時間を与えずに済みますからね。だったら、有権者も戦略的な投票で臨むべきです。比例票は、自分が支持している政党に一票を投じればいいでしょう。でも、『裏金事件』や『統一教会問題』を終わった話にしたくないのなら、選挙区は、どの野党候補に一票を投じれば裏金議員に鉄槌を下せるか、死に票にならないか、賢く判断して投票すべきです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
前回の衆院選は3年前だった。この選挙を逃したら、有権者が一票を行使できるのは、また3年後かもしれない。絶対に無駄にしてはダメだ。
*巻頭特集:非公認十数人の猿芝居 党利党略、裏金・統一教会みそぎ解散に鉄槌を
選挙情勢は、現時点では、どっちに転んでもおかしくない状況だ。
「週刊文春」は自民、単独過半数割れの219議席、「週刊ポスト」は自民53議席減の202議席、「サンデー毎日」は自民、単独過半数維持の234議席と予測している。現有256議席から議席を減らす可能性は高い。
現職大臣のうち4人が落選してもおかしくない。
ただ、自民党に有利なのは、多くの選挙区で野党候補が乱立していることだ。たとえ有権者が裏金議員を落選させようとしても、自民批判票が分散すれば、各地で自民候補が次々に漁夫の利を得る、という最悪の事態になる可能性がある。
「自民党が最速解散を選択したのは、自分たちに有利だと判断したからでしょう。野党に選挙区調整をやらせる時間を与えずに済みますからね。だったら、有権者も戦略的な投票で臨むべきです。比例票は、自分が支持している政党に一票を投じればいいでしょう。でも、『裏金事件』や『統一教会問題』を終わった話にしたくないのなら、選挙区は、どの野党候補に一票を投じれば裏金議員に鉄槌を下せるか、死に票にならないか、賢く判断して投票すべきです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
前回の衆院選は3年前だった。この選挙を逃したら、有権者が一票を行使できるのは、また3年後かもしれない。絶対に無駄にしてはダメだ。
2024-10-11 06:12
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10月10日(木) 共闘の力で自民党政治サヨナラの大運動を [論攷]
〔以下の論攷は『東京革新懇ニュース』第496号、10月5日付に掲載されたものです。〕
歴史的なチャンスが巡ってきました。岸田首相が総裁選への立候補断念を表明したからです。危機に陥った自民党は総裁選でメディアジャックを図り、石破茂新総裁を選出して解散・総選挙での逃げ切りを画策しています。
総裁選でイメージチェンジを狙い、国民の注目を集めて支持率を回復しようというわけです。そのために選挙期間を最長の15日間とし、候補者も過去最多の9人になりました。
しかし、岸田首相の出馬断念の背景には、政権と自民党政治の深刻な行き詰まりがあります。それはテレビでの露出度の増大など小手先のまやかしで乗り切れるほど簡単ではありません。自民党による長年の悪政の積み重ねによるものだからです。
安倍政権から続く菅・岸田という三内閣連続での政権投げ出しはこの国の土台の腐食に原因があり、かつては一流だとされた経済も政治とともに劣化への道をたどってきました。政権担当能力を失った自民党の総裁の椅子に誰が座ったとしても、立て直すことは不可能です。
総選挙で決着をつけるしかありません。日本をぶっ壊してきた自民党政治の罪に対して、今こそはっきりとした罰を与えるべきでしょう。政権から追い出すという形での明確な罰を。
二重の意味での行き詰まり
岸田首相を追い詰めたのは世論の力でした。内閣支持率は昨年暮れに3割台を切り、一度も回復しなかったからです。4月の衆院3補選、静岡県知事選や前橋市長選挙、小田原市長選などの首長選挙でも自民党は連戦連敗が続き、岸田首相はたとえ総裁に再選されても1年以内に実施される総選挙では勝利できないと判断したのでしょう。
このような人気低落の最大の要因は自民党派閥の裏金事件と統一協会との癒着でした、いずれも岸田内閣以前からの組織犯罪です。裏金事件では、それがいつからどのような経緯で、誰が始めて何に使ったのか、いまだに明らかになっていません。再発防止策も小手先のごまかしに終始しました。統一協会と自民党との腐れ縁についても、再調査や実態解明がなされず、問題は先送りされたままです。
岸田内閣は、三自衛隊の統合司令部新設のための改定防衛庁設置法、自治体を戦争に協力させる改定地方自治法、特定秘密保護を産業分野にまで拡大する経済秘密保護法の成立や殺傷兵器の輸出を可能にする次期戦闘機共同開発条約の批准などを強行し、安保政策の転換と大軍拡を推し進めてきました。
「聞く力」は形だけで国会軽視と強権姿勢は変わらず、安倍政治の拡大再生産にすぎません。辺野古新基地建設、インボイスの導入、マイナカードやマイナ保険証の強要、関西万博の推進、米兵犯罪の隠蔽など、民意無視も止まりません。
金権化・右傾化・世襲化という自民党の宿痾(持病)はますます悪化し、岸田政権になってから党役員や大臣などの辞任・解任は約30人に上ります。最近でも、広瀬めぐみ参院議員と堀井学衆院議員の辞職・起訴がありました。持病が全身を蝕むようになっているのです。
私は27年前に『徹底検証 政治改革神話』(労働旬報社)を刊行して、「政治改革」のやり直しを提言しました。このとき政党助成金が導入されたにもかかわらず企業・団体献金が温存され、政治資金の二重取りによって自民党は焼け太りしたのです。そのツケが、今回回ってきたということになります。このとき企業・団体献金や政治資金パーティーを禁止していれば、今回のような裏金問題は起きなかったはずですから。
総裁選で露呈した自民党の劣化
自民党の総裁選では12人が出馬の意向を示し、9人が立候補しました。あたかも派閥の縛りがなくなったかのような印象を振りまき、メディアでの露出度を高める作戦だったと思われます、一見すれば多士済々のようですが、売名のチャンスだと思い「我も我も」と手を挙げたにすぎません。
9人も立候補したにもかかわらず、その主張に大きな違いはなく明確な共通性がありました。誰一人として触れなかったテーマがたくさんあるからです。それは裏金事件の再調査であり、企業・団体献金や政治資金パーティーの禁止であり、統一協会との腐れ縁の断絶という問題でした。
とりわけ統一協会の問題では、総裁選中に組織的な癒着を示す新たな事実が明らかになりました。朝日新聞がスクープしたもので、統一協会や国際勝共連合の会長と安倍首相が総裁応接室で面談し、実弟の岸信夫元防衛相と側近の萩生田光一元経済産業相が同席していました。2013年の参院選公示の4日前で参院選比例候補だった元産経新聞政治部長への支援を確認するものだったといいます。自民党が組織ぐるみで反社会的なカルト集団と癒着していたことを明確に示す新たな事実でしたが、この問題について再調査して関係を断絶する意向を示した候補者は一人もいませんでした。
また、各候補者はアベノミクスの失敗や消費税減税、物価高対策、お米の安定供給などについても口をつぐみ、明文改憲の推進や原発の容認、日米同盟維持など大軍拡・大増税の推進については足並みをそろえています。退陣が決まっている岸田首相が改憲促進を申し送って次期首相に縛りをかけましたが、これに異を唱える人はいませんでした。
岸田政権を支えてきた幹部の無自覚と無責任もあきれるばかりです。茂木敏充幹事長、林芳正官房長官、上川陽子外相、河野太郎デジタル相、高市早苗経済安保相などは、これまでとは異なった政策も打ち出していますが、その多くは野党の政策のパクリで、岸田政権を支えてきたことへの反省は全くありません。
若手とされる小林鷹之前経済安保相は選択的夫婦別姓や同性婚に反対するなど最も保守的な伝統的家族観を示し、小泉進次郎元環境相による解雇規制の緩和など「聖域なき規制改革」も、父親である小泉純一郎元首相が20年以上も前に掲げた「聖域なき構造改革」の焼き直しにすぎません。いずれも時代錯誤であまりにも古い自民党の体質を象徴するものでした。
大きな曲がり角にあり、「新たな戦前」に向かう「衰退途上国」としての日本をどう立て直すのか。国内総生産(GDP)でドイツに抜かれて4位になり、国民1人当たりGDPでは34位、国際競争力でもかつての1位から35位にまで後退している現状からどう抜け出すのか。東アジアの平和と豊かな日本の将来ビジョンを示している候補者も皆無でした。
グローバル・パートナーシップを掲げて地球規模でのアメリカ追随を深め、日米軍事一体化によって防衛(盾)だけでなく攻撃(矛)も担うとする「戦争する国」への変貌と専守防衛の放棄、攻撃的兵器の取得と輸出に前のめりで、米軍の尖兵として戦争に巻き込まれる危険性をどう防ぐのか、全く展望が示されていません。
活路は共闘にあり
「振り子の論理」による「疑似政権交代」を許さず、自民党政治への追撃戦によって政権の座から追い出さなければなりません。そのための唯一の活路は市民と野党の共闘にあります。自民党を政権から追いだすには野党第一党の立憲民主党の議席だけでは足りないからです。
立憲民主党の新しい代表に選ばれた野田佳彦元首相は、一方では消費税減税に消極的で原子力発電の容認や日米同盟機軸などの「現実的政策」を掲げながら、他方では野党の最大化を図るとして「誠意ある対話」を呼び掛けています。自民党を離れた保守中道勢力を引き寄せるためだとしていますが、野党連携のあり方については大きな課題を残しています。
いずれにせよ、自民党政治とサヨナラするためには、野党勢力が力を合わせて追い込むしかありません。改憲を阻止し、分断と裏切りを許さず、反腐敗包囲網を継続しつつ共闘を再建することが野党の側の課題です。
裏金事件と統一協会との癒着は自民党の最大のアキレス健になっています。総選挙でも主要な争点としなければなりません。野党が一致して自民党を孤立させ、これまで支持していた保守や中間層を離反させる可能性が生まれているのですから。
維新など「第二自民党」のすり寄りや裏切りを許さず、共産党を含む幅広い共闘の再建をめざさなければなりません。裏金事件追及の突破口を開いたのは共産党の機関紙『赤旗日曜版』でしたし、統一協会や国際勝共連合と真正面から対峙してきたのも共産党だったのですから。
この点で、立憲民主党の野田新代表が共産党と政権を共にしないという姿勢を示し、戦争法の違憲部分を「すぐに廃止できない」と表明しているのは大きな問題です。そもそも戦争法への反対は立憲民主党の立党の原点であり、野党共闘の出発点ではありませんか。そこに立ち返ることを求めたいと思います。
市民と野党の共闘では、大きな実績を積み重ねてきた東京革新懇の役割は極めて大きくなっています。過去8年の間、62自治体で40の共闘候補を擁立し、先の都知事選も野党共闘でたたかうことができました。立憲民主党の都連は共闘を否定していません。この経験と条件を活かすことが必要です。
来るべき総選挙は、国政から犯罪者集団を一掃するための貴重な機会となるでしょう。法の網の目をかいくぐって利益を図ったり目的を達成したりする悪弊は政治家や企業経営者を蝕み、不正行為は自衛隊にまで及んでいます。このような歪みを正し、立法府にふさわしい政党と議員を選ぶことでしか、政治に対する信頼を回復することはできないのですから。
歴史的なチャンスが巡ってきました。岸田首相が総裁選への立候補断念を表明したからです。危機に陥った自民党は総裁選でメディアジャックを図り、石破茂新総裁を選出して解散・総選挙での逃げ切りを画策しています。
総裁選でイメージチェンジを狙い、国民の注目を集めて支持率を回復しようというわけです。そのために選挙期間を最長の15日間とし、候補者も過去最多の9人になりました。
しかし、岸田首相の出馬断念の背景には、政権と自民党政治の深刻な行き詰まりがあります。それはテレビでの露出度の増大など小手先のまやかしで乗り切れるほど簡単ではありません。自民党による長年の悪政の積み重ねによるものだからです。
安倍政権から続く菅・岸田という三内閣連続での政権投げ出しはこの国の土台の腐食に原因があり、かつては一流だとされた経済も政治とともに劣化への道をたどってきました。政権担当能力を失った自民党の総裁の椅子に誰が座ったとしても、立て直すことは不可能です。
総選挙で決着をつけるしかありません。日本をぶっ壊してきた自民党政治の罪に対して、今こそはっきりとした罰を与えるべきでしょう。政権から追い出すという形での明確な罰を。
二重の意味での行き詰まり
岸田首相を追い詰めたのは世論の力でした。内閣支持率は昨年暮れに3割台を切り、一度も回復しなかったからです。4月の衆院3補選、静岡県知事選や前橋市長選挙、小田原市長選などの首長選挙でも自民党は連戦連敗が続き、岸田首相はたとえ総裁に再選されても1年以内に実施される総選挙では勝利できないと判断したのでしょう。
このような人気低落の最大の要因は自民党派閥の裏金事件と統一協会との癒着でした、いずれも岸田内閣以前からの組織犯罪です。裏金事件では、それがいつからどのような経緯で、誰が始めて何に使ったのか、いまだに明らかになっていません。再発防止策も小手先のごまかしに終始しました。統一協会と自民党との腐れ縁についても、再調査や実態解明がなされず、問題は先送りされたままです。
岸田内閣は、三自衛隊の統合司令部新設のための改定防衛庁設置法、自治体を戦争に協力させる改定地方自治法、特定秘密保護を産業分野にまで拡大する経済秘密保護法の成立や殺傷兵器の輸出を可能にする次期戦闘機共同開発条約の批准などを強行し、安保政策の転換と大軍拡を推し進めてきました。
「聞く力」は形だけで国会軽視と強権姿勢は変わらず、安倍政治の拡大再生産にすぎません。辺野古新基地建設、インボイスの導入、マイナカードやマイナ保険証の強要、関西万博の推進、米兵犯罪の隠蔽など、民意無視も止まりません。
金権化・右傾化・世襲化という自民党の宿痾(持病)はますます悪化し、岸田政権になってから党役員や大臣などの辞任・解任は約30人に上ります。最近でも、広瀬めぐみ参院議員と堀井学衆院議員の辞職・起訴がありました。持病が全身を蝕むようになっているのです。
私は27年前に『徹底検証 政治改革神話』(労働旬報社)を刊行して、「政治改革」のやり直しを提言しました。このとき政党助成金が導入されたにもかかわらず企業・団体献金が温存され、政治資金の二重取りによって自民党は焼け太りしたのです。そのツケが、今回回ってきたということになります。このとき企業・団体献金や政治資金パーティーを禁止していれば、今回のような裏金問題は起きなかったはずですから。
総裁選で露呈した自民党の劣化
自民党の総裁選では12人が出馬の意向を示し、9人が立候補しました。あたかも派閥の縛りがなくなったかのような印象を振りまき、メディアでの露出度を高める作戦だったと思われます、一見すれば多士済々のようですが、売名のチャンスだと思い「我も我も」と手を挙げたにすぎません。
9人も立候補したにもかかわらず、その主張に大きな違いはなく明確な共通性がありました。誰一人として触れなかったテーマがたくさんあるからです。それは裏金事件の再調査であり、企業・団体献金や政治資金パーティーの禁止であり、統一協会との腐れ縁の断絶という問題でした。
とりわけ統一協会の問題では、総裁選中に組織的な癒着を示す新たな事実が明らかになりました。朝日新聞がスクープしたもので、統一協会や国際勝共連合の会長と安倍首相が総裁応接室で面談し、実弟の岸信夫元防衛相と側近の萩生田光一元経済産業相が同席していました。2013年の参院選公示の4日前で参院選比例候補だった元産経新聞政治部長への支援を確認するものだったといいます。自民党が組織ぐるみで反社会的なカルト集団と癒着していたことを明確に示す新たな事実でしたが、この問題について再調査して関係を断絶する意向を示した候補者は一人もいませんでした。
また、各候補者はアベノミクスの失敗や消費税減税、物価高対策、お米の安定供給などについても口をつぐみ、明文改憲の推進や原発の容認、日米同盟維持など大軍拡・大増税の推進については足並みをそろえています。退陣が決まっている岸田首相が改憲促進を申し送って次期首相に縛りをかけましたが、これに異を唱える人はいませんでした。
岸田政権を支えてきた幹部の無自覚と無責任もあきれるばかりです。茂木敏充幹事長、林芳正官房長官、上川陽子外相、河野太郎デジタル相、高市早苗経済安保相などは、これまでとは異なった政策も打ち出していますが、その多くは野党の政策のパクリで、岸田政権を支えてきたことへの反省は全くありません。
若手とされる小林鷹之前経済安保相は選択的夫婦別姓や同性婚に反対するなど最も保守的な伝統的家族観を示し、小泉進次郎元環境相による解雇規制の緩和など「聖域なき規制改革」も、父親である小泉純一郎元首相が20年以上も前に掲げた「聖域なき構造改革」の焼き直しにすぎません。いずれも時代錯誤であまりにも古い自民党の体質を象徴するものでした。
大きな曲がり角にあり、「新たな戦前」に向かう「衰退途上国」としての日本をどう立て直すのか。国内総生産(GDP)でドイツに抜かれて4位になり、国民1人当たりGDPでは34位、国際競争力でもかつての1位から35位にまで後退している現状からどう抜け出すのか。東アジアの平和と豊かな日本の将来ビジョンを示している候補者も皆無でした。
グローバル・パートナーシップを掲げて地球規模でのアメリカ追随を深め、日米軍事一体化によって防衛(盾)だけでなく攻撃(矛)も担うとする「戦争する国」への変貌と専守防衛の放棄、攻撃的兵器の取得と輸出に前のめりで、米軍の尖兵として戦争に巻き込まれる危険性をどう防ぐのか、全く展望が示されていません。
活路は共闘にあり
「振り子の論理」による「疑似政権交代」を許さず、自民党政治への追撃戦によって政権の座から追い出さなければなりません。そのための唯一の活路は市民と野党の共闘にあります。自民党を政権から追いだすには野党第一党の立憲民主党の議席だけでは足りないからです。
立憲民主党の新しい代表に選ばれた野田佳彦元首相は、一方では消費税減税に消極的で原子力発電の容認や日米同盟機軸などの「現実的政策」を掲げながら、他方では野党の最大化を図るとして「誠意ある対話」を呼び掛けています。自民党を離れた保守中道勢力を引き寄せるためだとしていますが、野党連携のあり方については大きな課題を残しています。
いずれにせよ、自民党政治とサヨナラするためには、野党勢力が力を合わせて追い込むしかありません。改憲を阻止し、分断と裏切りを許さず、反腐敗包囲網を継続しつつ共闘を再建することが野党の側の課題です。
裏金事件と統一協会との癒着は自民党の最大のアキレス健になっています。総選挙でも主要な争点としなければなりません。野党が一致して自民党を孤立させ、これまで支持していた保守や中間層を離反させる可能性が生まれているのですから。
維新など「第二自民党」のすり寄りや裏切りを許さず、共産党を含む幅広い共闘の再建をめざさなければなりません。裏金事件追及の突破口を開いたのは共産党の機関紙『赤旗日曜版』でしたし、統一協会や国際勝共連合と真正面から対峙してきたのも共産党だったのですから。
この点で、立憲民主党の野田新代表が共産党と政権を共にしないという姿勢を示し、戦争法の違憲部分を「すぐに廃止できない」と表明しているのは大きな問題です。そもそも戦争法への反対は立憲民主党の立党の原点であり、野党共闘の出発点ではありませんか。そこに立ち返ることを求めたいと思います。
市民と野党の共闘では、大きな実績を積み重ねてきた東京革新懇の役割は極めて大きくなっています。過去8年の間、62自治体で40の共闘候補を擁立し、先の都知事選も野党共闘でたたかうことができました。立憲民主党の都連は共闘を否定していません。この経験と条件を活かすことが必要です。
来るべき総選挙は、国政から犯罪者集団を一掃するための貴重な機会となるでしょう。法の網の目をかいくぐって利益を図ったり目的を達成したりする悪弊は政治家や企業経営者を蝕み、不正行為は自衛隊にまで及んでいます。このような歪みを正し、立法府にふさわしい政党と議員を選ぶことでしか、政治に対する信頼を回復することはできないのですから。
2024-10-10 09:46
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10月8日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]
〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月8日付に掲載されたものです。〕
*巻頭特集:やることなすことすべて裏切り…支持率はもっと下がる 自公過半数割れに現実味
5日、1月の能登半島地震と9月の能登豪雨で被災した輪島市、珠洲市を訪問した石破首相。避難所などを視察し、被災状況を確認。「心が折れてしまいそうな人に、もう一度頑張ろうという気持ちを持ってもらえるように取り組む」「絶望の淵におられる方々に、できる限り最大限の支援をしたい」などと話した。
そう言うのなら、一刻も早く予算委員会を開いて、被災者に少しでも安心してもらえるような補正予算をしっかり成立させるのが筋だろう。
ところが、石破は補正予算審議を総選挙後に先送りし、9日に衆議院を解散しようとしているのだからメチャクチャだ。能登の被災対応は予備費の追加措置でお茶を濁す方針だが、このままでは補正予算の成立は12月になってしまう。能登の人々は安心して年を越すこともできない。
「能登では被災者も行政も突然の国政選挙に対応できる状況ではないことは、一目瞭然でしょう。いったい何のための視察なのか。いま能登で大型選挙をやれば、現場に大混乱をもたらすだけですよ。形だけの視察で、能登の復興支援より自民党の復興を優先するわけです。能登を見捨てて解散に突っ走るのは、国会審議でボロが出る前に選挙をやって、『臭いものに蓋』をしてしまいたいという保身でしかない。そもそも石破首相自身が、総裁選では『予算委員会を開くべきだ』と言っていたのに、変わり身の早さに唖然とします」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
■右顧左眄で後手後手の対応
有権者からすれば、小選挙区で裏金議員を落としたつもりが比例復活で当選し、それで「禊は済んだ」なんて涼しい顔で言われたら、たまったもんじゃない。比例重複ナシは当然の措置だ。それ以前に、やらかした議員は自分から辞退するのが筋ってもんじゃないのか。
「党員資格停止の処分を受けた下村博文氏、西村康稔氏や、党の役職停止処分中で政倫審に出席していない萩生田光一氏ら少なくとも6人が非公認となる見通しですが、甘すぎます。世論の批判をかわすために、わずか数人を人身御供にするだけでは到底、納得は得られない。国民感情からすれば、裏金議員は全員非公認が当たり前です。立法府にいながら法を犯し、脱税していた疑いがある彼らには、国会議員になる資格などありません」(五十嵐仁氏=前出)
*巻頭特集:やることなすことすべて裏切り…支持率はもっと下がる 自公過半数割れに現実味
5日、1月の能登半島地震と9月の能登豪雨で被災した輪島市、珠洲市を訪問した石破首相。避難所などを視察し、被災状況を確認。「心が折れてしまいそうな人に、もう一度頑張ろうという気持ちを持ってもらえるように取り組む」「絶望の淵におられる方々に、できる限り最大限の支援をしたい」などと話した。
そう言うのなら、一刻も早く予算委員会を開いて、被災者に少しでも安心してもらえるような補正予算をしっかり成立させるのが筋だろう。
ところが、石破は補正予算審議を総選挙後に先送りし、9日に衆議院を解散しようとしているのだからメチャクチャだ。能登の被災対応は予備費の追加措置でお茶を濁す方針だが、このままでは補正予算の成立は12月になってしまう。能登の人々は安心して年を越すこともできない。
「能登では被災者も行政も突然の国政選挙に対応できる状況ではないことは、一目瞭然でしょう。いったい何のための視察なのか。いま能登で大型選挙をやれば、現場に大混乱をもたらすだけですよ。形だけの視察で、能登の復興支援より自民党の復興を優先するわけです。能登を見捨てて解散に突っ走るのは、国会審議でボロが出る前に選挙をやって、『臭いものに蓋』をしてしまいたいという保身でしかない。そもそも石破首相自身が、総裁選では『予算委員会を開くべきだ』と言っていたのに、変わり身の早さに唖然とします」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
■右顧左眄で後手後手の対応
有権者からすれば、小選挙区で裏金議員を落としたつもりが比例復活で当選し、それで「禊は済んだ」なんて涼しい顔で言われたら、たまったもんじゃない。比例重複ナシは当然の措置だ。それ以前に、やらかした議員は自分から辞退するのが筋ってもんじゃないのか。
「党員資格停止の処分を受けた下村博文氏、西村康稔氏や、党の役職停止処分中で政倫審に出席していない萩生田光一氏ら少なくとも6人が非公認となる見通しですが、甘すぎます。世論の批判をかわすために、わずか数人を人身御供にするだけでは到底、納得は得られない。国民感情からすれば、裏金議員は全員非公認が当たり前です。立法府にいながら法を犯し、脱税していた疑いがある彼らには、国会議員になる資格などありません」(五十嵐仁氏=前出)
2024-10-08 06:21
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10月7日(月) 『連合通信・隔日版』に掲載されたインタビュー [コメント]
〔以下のインタビュー記事は『聯合通信・隔日版』№9949、2024年10月 5日付に掲載されたものです。〕
石破新総裁をどう見るか
五十嵐仁法政大学名誉教授に聞く
自民党の新総裁に石破茂元幹事長が選ばれた。裏金問題や統一協会との癒着など腐敗した自民党政治を刷新するかのように装っているが、果たして期待できるのか。夕刊紙・日刊ゲンダイの政治記事に多くコメントを寄せている五十嵐仁法政大学大原社会問題研究所名誉教授(政治学)に聞いた。
――総裁選の結果をどう見ていますか?
五十嵐 自民党は、「総裁選」直後の解散・総選挙で大勝した3年前と同じことをしています。当時の菅義偉首相はコロナ対応の失敗で支持率を急激に下げ、9月3日に辞任を表明。同党は総裁選を17日に告示(今回は12日)、投開票を29日(同27日)とし、総選挙は投票日が10月31日(同27日)でした。ほぼ同じ日程です。
テレビなどのメディアは約1カ月間、総裁選の話題を垂れ流し続けました。政権批判や争点はうやむやにされ、新内閣への「ご祝儀相場」で支持率が高いうちに総選挙に流れ込んで大勝しました。これを再び繰り返そうというわけです。
石破さんが新総裁に選ばれたのは消去法です。小泉進次郎元環境相は軽過ぎ、高市早苗前経済安全保障相は〝右〟に寄り過ぎで、彼らでは来年の通常国会は持たないと判断したのです。
小泉さんは総裁選期間のわずか15日間でさえ政策論戦で持たなかった。また、首相就任後に靖国神社に参拝すると公言する高市さんでは、岸田文雄前首相が進めた、対中国包囲網を狙う日米韓の枠組みが壊れかねません。混乱は来年夏の参院選にも影響が及んでしまいます。
そのため、麻生太郎副総裁や旧安倍派は高市さんを支持しましたが、そのほかの大方の議員たちは「高市氏は安定感を欠く」と見て決選投票で石破さんに流れたのです。
3年前とは異なり、裏金や統一協会の問題で自民党が非常に厳しい状況に置かれていることも影響しました。ここは石破さんに〝火中の栗〟を拾ってもらおう、自民党の国会議員に嫌われている彼なら〝やけど〟をしてもいいか、という計算も働いたでしょう。
食言の「石破話法」
――石破氏への期待が高まっているとの世論調査結果もあります
石破新総裁は9月30日に、10月9日の衆院解散、27日投開票とする意向を表明しました。総裁選では、早期の解散・総選挙を主張する小泉さんを「国民が判断できる材料を示すのが新政権の責任」と批判しながら、結局は小泉さんと同じことをしたのです。ここに石破さんの特徴があります。
裏金議員を選挙で公認しないとか、金融所得課税を強化するとか、いい格好をして正論を言うけれど、批判されると急に腰砕けになり、トーンダウンする。私はこれを「石破話法」と呼んでいます。最低賃金を1500円に引き上げるともいいますが、具体策は何もありません。政権を担って本当にできるのかは極めて疑問です。
安倍氏以上のタカ派
さらに、「戦争する国づくり」を進めた安倍晋三元首相以上に〝タカ派〟の危険な考えを持つ人物でもあります。
総裁選で主張した「アジア版NATO」の創設や、米国内での自衛隊訓練基地の設置がそれです。「日米地位協定の改定」もその一環。日本が今まで以上に軍事分担し、米国と対等な
〝攻守同盟〟に格上げしようという、いわば戦前の日本のような軍事力で他国に関与する〝帝国主義的自立〟を目指しています。
「憲法改正」にしても、石破さんは9条2項(戦力の不保持、交戦権の否認)の削除を主張しています。世論との妥協を考えた安倍さんよりも、「普通の国」に向けて進もうとしているのです。
総選挙で自民党が勝てば、改憲論議が一層強まるのは確実。東アジアの緊張はさらに高まってしまいます。
腐敗した政治の転換を
――総選挙で問われるべき課題は何でしょう?
次の総選挙では、裏金、統一協会問題など、腐敗しきった自民党政治の存続を許すかどうか――これが最大の争点です。もう一つは、改憲・大軍拡を進め、生活を破壊し、国民にコメさえ食べさせられないような自公政権の存続を許すのか、ということです。
イギリスでは7月、保守党への強い失望感から、14年ぶりに政権交代が起きました。与党への失望感が強いのは日本も同じです。フランスでも野党の左派連合「新人民戦線」が勝利しました。
特に、立憲民主党にはしっかりしてもらいたい。政権が変わっても、今まで通りの自民党の政治が続くのでは、国民の期待や支持は集められません。戦争前夜のような大軍拡、国民生活破壊の政治を転換し、希望の持てる新しい日本をどうつくるのかというビジョンを示してほしいと思います。
そして、立憲民主党を支援政党としている連合は、労働組合の利益を守り発展させるためにはどのような政治的環境が望ましいかをきちんと考えて対応すべきです。そのためにも、市民と野党の共闘を分断し、自公政権を手助けすることはやめてもらいたいと思います。
石破新総裁をどう見るか
五十嵐仁法政大学名誉教授に聞く
自民党の新総裁に石破茂元幹事長が選ばれた。裏金問題や統一協会との癒着など腐敗した自民党政治を刷新するかのように装っているが、果たして期待できるのか。夕刊紙・日刊ゲンダイの政治記事に多くコメントを寄せている五十嵐仁法政大学大原社会問題研究所名誉教授(政治学)に聞いた。
――総裁選の結果をどう見ていますか?
五十嵐 自民党は、「総裁選」直後の解散・総選挙で大勝した3年前と同じことをしています。当時の菅義偉首相はコロナ対応の失敗で支持率を急激に下げ、9月3日に辞任を表明。同党は総裁選を17日に告示(今回は12日)、投開票を29日(同27日)とし、総選挙は投票日が10月31日(同27日)でした。ほぼ同じ日程です。
テレビなどのメディアは約1カ月間、総裁選の話題を垂れ流し続けました。政権批判や争点はうやむやにされ、新内閣への「ご祝儀相場」で支持率が高いうちに総選挙に流れ込んで大勝しました。これを再び繰り返そうというわけです。
石破さんが新総裁に選ばれたのは消去法です。小泉進次郎元環境相は軽過ぎ、高市早苗前経済安全保障相は〝右〟に寄り過ぎで、彼らでは来年の通常国会は持たないと判断したのです。
小泉さんは総裁選期間のわずか15日間でさえ政策論戦で持たなかった。また、首相就任後に靖国神社に参拝すると公言する高市さんでは、岸田文雄前首相が進めた、対中国包囲網を狙う日米韓の枠組みが壊れかねません。混乱は来年夏の参院選にも影響が及んでしまいます。
そのため、麻生太郎副総裁や旧安倍派は高市さんを支持しましたが、そのほかの大方の議員たちは「高市氏は安定感を欠く」と見て決選投票で石破さんに流れたのです。
3年前とは異なり、裏金や統一協会の問題で自民党が非常に厳しい状況に置かれていることも影響しました。ここは石破さんに〝火中の栗〟を拾ってもらおう、自民党の国会議員に嫌われている彼なら〝やけど〟をしてもいいか、という計算も働いたでしょう。
食言の「石破話法」
――石破氏への期待が高まっているとの世論調査結果もあります
石破新総裁は9月30日に、10月9日の衆院解散、27日投開票とする意向を表明しました。総裁選では、早期の解散・総選挙を主張する小泉さんを「国民が判断できる材料を示すのが新政権の責任」と批判しながら、結局は小泉さんと同じことをしたのです。ここに石破さんの特徴があります。
裏金議員を選挙で公認しないとか、金融所得課税を強化するとか、いい格好をして正論を言うけれど、批判されると急に腰砕けになり、トーンダウンする。私はこれを「石破話法」と呼んでいます。最低賃金を1500円に引き上げるともいいますが、具体策は何もありません。政権を担って本当にできるのかは極めて疑問です。
安倍氏以上のタカ派
さらに、「戦争する国づくり」を進めた安倍晋三元首相以上に〝タカ派〟の危険な考えを持つ人物でもあります。
総裁選で主張した「アジア版NATO」の創設や、米国内での自衛隊訓練基地の設置がそれです。「日米地位協定の改定」もその一環。日本が今まで以上に軍事分担し、米国と対等な
〝攻守同盟〟に格上げしようという、いわば戦前の日本のような軍事力で他国に関与する〝帝国主義的自立〟を目指しています。
「憲法改正」にしても、石破さんは9条2項(戦力の不保持、交戦権の否認)の削除を主張しています。世論との妥協を考えた安倍さんよりも、「普通の国」に向けて進もうとしているのです。
総選挙で自民党が勝てば、改憲論議が一層強まるのは確実。東アジアの緊張はさらに高まってしまいます。
腐敗した政治の転換を
――総選挙で問われるべき課題は何でしょう?
次の総選挙では、裏金、統一協会問題など、腐敗しきった自民党政治の存続を許すかどうか――これが最大の争点です。もう一つは、改憲・大軍拡を進め、生活を破壊し、国民にコメさえ食べさせられないような自公政権の存続を許すのか、ということです。
イギリスでは7月、保守党への強い失望感から、14年ぶりに政権交代が起きました。与党への失望感が強いのは日本も同じです。フランスでも野党の左派連合「新人民戦線」が勝利しました。
特に、立憲民主党にはしっかりしてもらいたい。政権が変わっても、今まで通りの自民党の政治が続くのでは、国民の期待や支持は集められません。戦争前夜のような大軍拡、国民生活破壊の政治を転換し、希望の持てる新しい日本をどうつくるのかというビジョンを示してほしいと思います。
そして、立憲民主党を支援政党としている連合は、労働組合の利益を守り発展させるためにはどのような政治的環境が望ましいかをきちんと考えて対応すべきです。そのためにも、市民と野党の共闘を分断し、自公政権を手助けすることはやめてもらいたいと思います。
2024-10-07 06:38
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10月6日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]
〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月6日付に掲載されたものです。〕
*記事:石破新首相ウソ重ね、新たな裏切りのニオイぷんぷん…持論「党首討論は最低2時間」もウヤムヤ
予算委軽視の姿勢は許しがたいが、党首討論の充実は御説ごもっともではある。
ただ、総裁選後のこの1週間、石破首相の手のひら返しは枚挙にいとまがない。選挙中は「本当のやりとりは予算委」とか言いながら、それをすっとばして内閣発足から戦後最短となる8日での解散を表明。裏金議員の公認について「議論を徹底すべきだ」とのスタンスだったはずが、公認の方針へ急旋回。現行の健康保険証の廃止見直しに言及したのに、フタを開けてみれば廃止は既定路線だ。「党首討論は最低2時間」も信用ならない。
「総裁選が薄氷の勝利だったゆえに、党内融和路線を敷かざるを得ず、『党内野党』として主張してきたことは何ひとつ守れない。今のままでは『ウソつきの石破』とのイメージが定着し、ただでさえご祝儀感に乏しい内閣支持率は下がる一方でしょう」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
振り返れば、石破氏の政治人生は「裏切り」の連続だった。1993年に細川連立政権が誕生し、自民党が下野した際には離党して新党へ参加。麻生内閣では閣僚ながら「麻生おろし」に加担し、蛇蝎のごとく嫌われている。まったく、唯一といっていい支持基盤の国民まで裏切ってどーする。
*記事:石破新首相ウソ重ね、新たな裏切りのニオイぷんぷん…持論「党首討論は最低2時間」もウヤムヤ
予算委軽視の姿勢は許しがたいが、党首討論の充実は御説ごもっともではある。
ただ、総裁選後のこの1週間、石破首相の手のひら返しは枚挙にいとまがない。選挙中は「本当のやりとりは予算委」とか言いながら、それをすっとばして内閣発足から戦後最短となる8日での解散を表明。裏金議員の公認について「議論を徹底すべきだ」とのスタンスだったはずが、公認の方針へ急旋回。現行の健康保険証の廃止見直しに言及したのに、フタを開けてみれば廃止は既定路線だ。「党首討論は最低2時間」も信用ならない。
「総裁選が薄氷の勝利だったゆえに、党内融和路線を敷かざるを得ず、『党内野党』として主張してきたことは何ひとつ守れない。今のままでは『ウソつきの石破』とのイメージが定着し、ただでさえご祝儀感に乏しい内閣支持率は下がる一方でしょう」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
振り返れば、石破氏の政治人生は「裏切り」の連続だった。1993年に細川連立政権が誕生し、自民党が下野した際には離党して新党へ参加。麻生内閣では閣僚ながら「麻生おろし」に加担し、蛇蝎のごとく嫌われている。まったく、唯一といっていい支持基盤の国民まで裏切ってどーする。
2024-10-06 06:39
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10月4日(金) 『東京新聞』に掲載されたコメント [コメント]
〔以下のコメントは『東京新聞』10月4日付に掲載されたものです。〕
*こちら特報部:過去の言動に見えた政治姿勢
石破さん 本当にまっとうか
14年1月の特報面で「国民の声に耳を傾けようという姿勢がない」とただしたのが法政大の五十嵐仁名誉教授(政治学)。石破氏はどう映ってきたのか。「根っからのタカ派であることは明らかで、根底にあるのは国のために国民がどう尽くすか。軍事的に自立して日本の国際的地位を変えたいという思い。12年9月の総裁選で争った安倍氏と比べても、憲法に対する配慮や遠慮がない」
さらに「世論を意識して主張しても、反発を受ければすぐにトーンダウンするのが特徴だ」と続ける。
*こちら特報部:過去の言動に見えた政治姿勢
石破さん 本当にまっとうか
14年1月の特報面で「国民の声に耳を傾けようという姿勢がない」とただしたのが法政大の五十嵐仁名誉教授(政治学)。石破氏はどう映ってきたのか。「根っからのタカ派であることは明らかで、根底にあるのは国のために国民がどう尽くすか。軍事的に自立して日本の国際的地位を変えたいという思い。12年9月の総裁選で争った安倍氏と比べても、憲法に対する配慮や遠慮がない」
さらに「世論を意識して主張しても、反発を受ければすぐにトーンダウンするのが特徴だ」と続ける。
2024-10-04 15:24
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10月3日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]
〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月3日付に掲載されたものです。〕
*巻頭特集:発足前からこれだけケチが付くのも珍しい 石破さんには悪いがこの内閣は長く持たない予感
総裁選の時、石破は解散時期について「早ければ早い方がいい。でも、ご判断いただく材料は整えたい」「国民に判断していただける材料を提供するのが、新しい首相の責任だ。本当のやりとりは予算委員会だと思う」と明言していた。野党と論戦をかわしてから、解散するとしていた。
なのに、野党から追及されることを恐れ、約束した予算委員会も開かず、総理就任後わずか8日で解散してしまうのだから、さすがに国民の多くは「話が違うじゃないか」と、不信を強めているに違いない。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「石破さんの国民人気が高かったのは、常に『正論』を唱え、筋を通す政治家だとみられていたからでしょう。どこか不器用で策も弄しないタイプだった。ところが、トップに就いた途端、変節し、党利党略で動いている。国民は『石破、おまえもか!』という気分だと思う。選挙は相手次第ですが、石破さんの、この変節は明らかにマイナスでしょう。石破さんの良さが消えてしまった。それでなくても、裏金事件と統一教会問題を抱えた自民党には、逆風が吹いている。石破さんは、裏金議員の公認について『徹底的に議論する』としていたが、もう公認を再検討する時間もないのではないか。世論調査では、裏金議員の公認を8割が『納得できない』としています。このまま公認したら、それも逆風になりますよ。世論調査では、石破首相に『期待する』52%、野田党首に『期待する』49%と拮抗しています」
自民党議員は「選挙が1週間遅れるごとに自民は15議席減る」と、早期解散の大合唱だったが、この早期解散は、自民党のクビを絞めることになってもおかしくない。
*巻頭特集:発足前からこれだけケチが付くのも珍しい 石破さんには悪いがこの内閣は長く持たない予感
総裁選の時、石破は解散時期について「早ければ早い方がいい。でも、ご判断いただく材料は整えたい」「国民に判断していただける材料を提供するのが、新しい首相の責任だ。本当のやりとりは予算委員会だと思う」と明言していた。野党と論戦をかわしてから、解散するとしていた。
なのに、野党から追及されることを恐れ、約束した予算委員会も開かず、総理就任後わずか8日で解散してしまうのだから、さすがに国民の多くは「話が違うじゃないか」と、不信を強めているに違いない。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「石破さんの国民人気が高かったのは、常に『正論』を唱え、筋を通す政治家だとみられていたからでしょう。どこか不器用で策も弄しないタイプだった。ところが、トップに就いた途端、変節し、党利党略で動いている。国民は『石破、おまえもか!』という気分だと思う。選挙は相手次第ですが、石破さんの、この変節は明らかにマイナスでしょう。石破さんの良さが消えてしまった。それでなくても、裏金事件と統一教会問題を抱えた自民党には、逆風が吹いている。石破さんは、裏金議員の公認について『徹底的に議論する』としていたが、もう公認を再検討する時間もないのではないか。世論調査では、裏金議員の公認を8割が『納得できない』としています。このまま公認したら、それも逆風になりますよ。世論調査では、石破首相に『期待する』52%、野田党首に『期待する』49%と拮抗しています」
自民党議員は「選挙が1週間遅れるごとに自民は15議席減る」と、早期解散の大合唱だったが、この早期解散は、自民党のクビを絞めることになってもおかしくない。
2024-10-03 10:21
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10月2日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]
〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月2日付に掲載されたものです。〕
*記事:問われる“石破語法”の実効性…総裁選で言及「保険証廃止見直し」「マイナ併用」忘るべからず
解散ニュースにかき消されている感があるが、総裁選の期間だけ聞こえの良いことを吹聴するなんて許されるはずがない。まして、新首相と女房役の官房長官が「見直し論」に口をそろえているのだから、なおさらだ。
■威勢のよさはどこへやら
「『石破語法』とでも言いましょうか、原則論は言うが、中身はなく、時に世論に迎合するが、批判は意に介さない。裏金議員の公認や金融所得課税をめぐっても、最初は威勢が良かったものの、どんどん後退。今まで『党内野党』として、とがった発言をしてきたけれども、首相の立場ではそうはいきません。これまでの『石破語法』の具体的な実効性が問われるわけです。見ものですね」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
自民党が下野していた2011年8月の本会議で石破新首相は、民主党政権の公約をコキ下ろし、「難しくてできないのではなく、そもそも、できもしないことを約束したことが問題なのである」と一刀両断していた。
保険証廃止の見直しに言及したからには、きちんと実行するのが筋だ。まさか「できもしない約束」をしたのではあるまい。
*記事:問われる“石破語法”の実効性…総裁選で言及「保険証廃止見直し」「マイナ併用」忘るべからず
解散ニュースにかき消されている感があるが、総裁選の期間だけ聞こえの良いことを吹聴するなんて許されるはずがない。まして、新首相と女房役の官房長官が「見直し論」に口をそろえているのだから、なおさらだ。
■威勢のよさはどこへやら
「『石破語法』とでも言いましょうか、原則論は言うが、中身はなく、時に世論に迎合するが、批判は意に介さない。裏金議員の公認や金融所得課税をめぐっても、最初は威勢が良かったものの、どんどん後退。今まで『党内野党』として、とがった発言をしてきたけれども、首相の立場ではそうはいきません。これまでの『石破語法』の具体的な実効性が問われるわけです。見ものですね」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
自民党が下野していた2011年8月の本会議で石破新首相は、民主党政権の公約をコキ下ろし、「難しくてできないのではなく、そもそも、できもしないことを約束したことが問題なのである」と一刀両断していた。
保険証廃止の見直しに言及したからには、きちんと実行するのが筋だ。まさか「できもしない約束」をしたのではあるまい。
2024-10-02 10:44
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9月29日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]
〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』9月29日付に掲載されたものです。〕
*巻頭特集:自民党はどこまで行っても自民党 石破新総裁、ウンザリの全舞台裏と今後
1カ月半もメディアジャックし、食傷気味だった今回の総裁選で、改めてよーく分かったのは、「自民党はどこまで行っても自民党」だということ。裏金事件を受け「派閥解消」「脱派閥」だとか叫んでいても、選挙戦の最終盤で見せつけられたのは、「最後はボス頼み」という醜悪。小泉進次郎元環境相(43)だけじゃなく、石破も最後は“麻生詣で”して頭を下げた。それでも麻生は高市へ。なりふり構わぬキングメーカー争いで、麻生派の河野太郎デジタル相(61)の票まで引きはがした。
「相当、票を動かさないと高市氏にあんな数字は出ない。麻生氏はとにかく非主流派に落ちたくないと必死だった。懲りない自民党の象徴です」(政治評論家・野上忠興氏)
もっとも、麻生が敗れ、誰が勝者かといえば、岸田首相と菅前首相だ。旧岸田派の議員や1回目で小泉を推した菅に近い議員、旧二階派が決選で石破に投票したとみられる。今後、主流派として政権運営に関わるのだろう。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
「今回は派閥の締め付けがない総裁選なんて最初言われましたが、締め付けがないように見せかけていただけ。我も我もと手を挙げたのは売名行為であり、派閥領袖の了承を得た上での立候補でした。最後の決選投票にしても、派閥の合従連衡が勝敗を左右した。自民党が変わらず派閥の論理で動いていることが皮肉にも浮き彫りになった」
ドッチラケの舞台裏にマトモな国民はウンザリだ。
*巻頭特集:自民党はどこまで行っても自民党 石破新総裁、ウンザリの全舞台裏と今後
1カ月半もメディアジャックし、食傷気味だった今回の総裁選で、改めてよーく分かったのは、「自民党はどこまで行っても自民党」だということ。裏金事件を受け「派閥解消」「脱派閥」だとか叫んでいても、選挙戦の最終盤で見せつけられたのは、「最後はボス頼み」という醜悪。小泉進次郎元環境相(43)だけじゃなく、石破も最後は“麻生詣で”して頭を下げた。それでも麻生は高市へ。なりふり構わぬキングメーカー争いで、麻生派の河野太郎デジタル相(61)の票まで引きはがした。
「相当、票を動かさないと高市氏にあんな数字は出ない。麻生氏はとにかく非主流派に落ちたくないと必死だった。懲りない自民党の象徴です」(政治評論家・野上忠興氏)
もっとも、麻生が敗れ、誰が勝者かといえば、岸田首相と菅前首相だ。旧岸田派の議員や1回目で小泉を推した菅に近い議員、旧二階派が決選で石破に投票したとみられる。今後、主流派として政権運営に関わるのだろう。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
「今回は派閥の締め付けがない総裁選なんて最初言われましたが、締め付けがないように見せかけていただけ。我も我もと手を挙げたのは売名行為であり、派閥領袖の了承を得た上での立候補でした。最後の決選投票にしても、派閥の合従連衡が勝敗を左右した。自民党が変わらず派閥の論理で動いていることが皮肉にも浮き彫りになった」
ドッチラケの舞台裏にマトモな国民はウンザリだ。
2024-09-29 04:04
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9月27日(金) 政権担当能力を失った自民党にさらなる追撃を(その2) [論攷]
〔以下の論攷は『学習の友』No. 854、2024年10月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕
自民党は何を狙っているのか
岸田政権の行き詰まりによって自民党は窮地に追い込まれました。裏金事件や統一協会との癒着は岸田政権になってからのものではなく、長年にわたる自民党政治によってもたらされたからです。端的に言えば、金権化という宿痾を治癒できず、憲法の国民主権や平和主義原則を軽んじ、基本的人権を踏みにじってきた歴代自民党政権による反憲法政治の行き着いた先にほかなりません。
私は27年前に『徹底検証 政治改革神話』(労働旬報社、1997年)という本を出しました。その帯には、「『政治改革』やり直しの提言」と書かれています。この「提言」は実行されませんでした。今回の裏金事件は、そのツケが回って来たということです。
その結果、政治的危機に直面した自民党は岸田首相を切り捨て、危機を乗り切ってきた「成功体験」に学ぼうとしました。たとえばロッキード事件での「ダーティー田中」から「クリーン三木」への転換、森喜朗首相から小泉純一郎首相への交代という「小泉劇場」による幻惑、そして、直近ではコロナ対策の失敗から政権を投げ出した菅義偉首相から岸田首相への交代による総選挙での勝利です。
いずれも「振り子の論理」による「疑似政権交代」を演出することで支持を回復しましたが、実際には自民党政治の枠内での政権たらいまわしにすぎません。今回も同様の狙いの下に、総裁選挙に国民の目を引き付け、報道機関を利用したメディアジャックによって支持率の回復を図ろうとしました。
総裁選の期間は過去最長となり、石破茂元幹事長など過去最多の10人以上もの議員が立候補の意思を表明しました。いずれも総裁選への注目を高めるための策謀です。多数の出馬表明は派閥の縛りがなくなったからではなく、派閥の縛りがなくなったかのように装うためでした。旧派閥の領袖の支持を取り付けるために躍起となり、水面下での合従連衡によって多数派工作がなされたのはこれまでと変わりません。
候補者が多くなれば、それだけメディアの注目を浴び、露出度も高まります。こうして国民の関心や興味を引き付けようというのが、自民党の狙いでした。それを知ってか知らずか、テレビなどは完全にハイ・ジャックされ広告塔状態に陥ってしまいました。NHKが高校野球を中断して小林鷹之議員の出馬表明を生中継したのは象徴的な事例です。
解散・総選挙のプロセスはすでに始まっている
岸田退陣は総選挙での敗北を避けるためのものでした。自民党の狙いは、総裁選への注目度を高めて危機を乗り切ろうというものです。いずれも、焦点は総選挙に向けて結ばれています。岸田退陣表明以降、すでに総選挙への取り組みは始まっており、総裁選はそのプロセスの一環にすぎません。
立候補の意思を表明した12人は、いずれも世論の反応を見るための「観測気球」でした。「選挙の顔」選びですから、政治家としての力量などの中身ではなく、選挙で票を集められる人気のある人が選ばれるでしょう。拙著で指摘したように、小泉進次郎元環境相による「『小泉劇場』の再現を狙っている」(『追撃 自民党大軍拡・腐敗政治』学習の友社、115頁)ように見えます。
10人以上も声を上げたのに、誰1人として憲法を守るという人はいませんでした。改憲論の大合唱です。憲法尊重養護義務を定めた99条に違反する人ばかりです。続投を断念した岸田首相が改憲の論点整 理を指示し、早期の発議に向けて縛りをかけたのも異常です。
岸田首相退陣の理由が裏金事件や統一協会の問題であったにもかかわらず、その再調査や統一協会との絶縁を表明する人も、これらの問題に厳しい対応を打ち出す人もいません。みな「臭いものにふた」をする「同じ穴のムジナ」にすぎないのです。
新総裁の選出と新内閣の成立によって「刷新感」を演出し、「ご祝儀相場」で支持率を引き上げ、ボロが出ないうちに解散を打って総選挙になだれ込む作戦だと思われます。それがどのような経過をたどるかは不明ですが、2021年の菅首相から岸田首相への交代が参考になります。
菅首相は9月3日に退陣を表明し、総裁選は今回より2日遅い9月29日に実施されました。その後、10月4日の臨時国会召集、岸田内閣発足、所信表明演説と続き、解散は10月14日、総選挙の投票日は31日でした。「2匹目のドジョウ」を狙って似た経過をたどるとすれば、総選挙の投票日は早ければ10月27日、遅くても11月10日になる可能性が高いと思われます。
追撃戦の課題と展望
岸田首相の退陣によって、政権交代に向けての歴史的なチャンスが生まれました。解散・総選挙に向けての追撃戦を展開することで、このチャンスを活かさなければなりません。大軍拡・腐敗政治によってやりたい放題の悪政を押し付けてきた自民党に、その罪を自覚できるだけの強烈な罰を与えるには政権から追い出すのが最善です。
とはいえ、それは簡単なことではありません。1割台にまで支持率を低下させた森元首相から政権を引き継いだ小泉首相が「自民党をぶっ壊す」と言って自民党を救った前例があります。3割台にまで支持率を減らして退陣せざるを得なくなった菅元首相から政権を引き継いだ岸田首相も、劇的に支持率を回復させて総選挙で勝利しました。この「成功体験」を繰り返そうとしているのが今の自民党です。
この自民党の狙いを見破り、国民に幅広く知らせることが何よりも重要でしょう。情報戦で勝利しなければなりません、メディアに対する監視と批判を強め、私たち自身の情報リテラシーを高めてだまされないようにすることも大切です。SNSなどを通じた情報発信力や都知事選で注目を集めた「1人街宣」、集団でのスタンディングなども有効でしょう。
また、野党には政権交代を視野に入れた幅広い連携を求めたいと思います。通常国会で実現した裏金事件での真相究明のための連携を総選挙でも継続してもらいたいものです。裏金事件や統一協会との腐れ縁に怒りを強めている保守層にも、今度だけは自民党にきついお灸をすえなければならないと訴えるべきでしょう。イギリスでの政権交代は、労働党への支持の高まりというより、保守党に対する失望によるものだったのですから。
市民と共産党を含む野党の共闘を再建するための働きかけを強めることも必要です、立憲民主党には改憲と戦争法に反対した立党の原点を忘れず共闘の立場に立つ代表の選出を求め、各選挙区だけでなく可能な限り全国的な「連携と力合わせ」によって有権者の期待を高める必要があります。支持団体の連合には共闘を妨害したり足を引っ張ったりしないように働きかけ、選挙は政党に任せて余計な口出しはするなと言うべきです。
たとえ自民党が議席を減らしても、維新の会のような「第2自民党」がすり寄るのでは政権交代を実現できません。議席の減らし方によっては国民民主党や前原グループ(教育無償化を実現する会)が加わる可能性もあります。このような形で自民・公明の連立政権を助けないようにけん制する必要もあります。
絶好のチャンスをどう生かすかが問われています。腐れ切った自民党大軍拡・腐敗政治に対する追撃戦で勝利し、政権交代に向けて希望の扉を開かなければなりません。そのための決戦が間もなくやってくるにちがいないのですから。
自民党は何を狙っているのか
岸田政権の行き詰まりによって自民党は窮地に追い込まれました。裏金事件や統一協会との癒着は岸田政権になってからのものではなく、長年にわたる自民党政治によってもたらされたからです。端的に言えば、金権化という宿痾を治癒できず、憲法の国民主権や平和主義原則を軽んじ、基本的人権を踏みにじってきた歴代自民党政権による反憲法政治の行き着いた先にほかなりません。
私は27年前に『徹底検証 政治改革神話』(労働旬報社、1997年)という本を出しました。その帯には、「『政治改革』やり直しの提言」と書かれています。この「提言」は実行されませんでした。今回の裏金事件は、そのツケが回って来たということです。
その結果、政治的危機に直面した自民党は岸田首相を切り捨て、危機を乗り切ってきた「成功体験」に学ぼうとしました。たとえばロッキード事件での「ダーティー田中」から「クリーン三木」への転換、森喜朗首相から小泉純一郎首相への交代という「小泉劇場」による幻惑、そして、直近ではコロナ対策の失敗から政権を投げ出した菅義偉首相から岸田首相への交代による総選挙での勝利です。
いずれも「振り子の論理」による「疑似政権交代」を演出することで支持を回復しましたが、実際には自民党政治の枠内での政権たらいまわしにすぎません。今回も同様の狙いの下に、総裁選挙に国民の目を引き付け、報道機関を利用したメディアジャックによって支持率の回復を図ろうとしました。
総裁選の期間は過去最長となり、石破茂元幹事長など過去最多の10人以上もの議員が立候補の意思を表明しました。いずれも総裁選への注目を高めるための策謀です。多数の出馬表明は派閥の縛りがなくなったからではなく、派閥の縛りがなくなったかのように装うためでした。旧派閥の領袖の支持を取り付けるために躍起となり、水面下での合従連衡によって多数派工作がなされたのはこれまでと変わりません。
候補者が多くなれば、それだけメディアの注目を浴び、露出度も高まります。こうして国民の関心や興味を引き付けようというのが、自民党の狙いでした。それを知ってか知らずか、テレビなどは完全にハイ・ジャックされ広告塔状態に陥ってしまいました。NHKが高校野球を中断して小林鷹之議員の出馬表明を生中継したのは象徴的な事例です。
解散・総選挙のプロセスはすでに始まっている
岸田退陣は総選挙での敗北を避けるためのものでした。自民党の狙いは、総裁選への注目度を高めて危機を乗り切ろうというものです。いずれも、焦点は総選挙に向けて結ばれています。岸田退陣表明以降、すでに総選挙への取り組みは始まっており、総裁選はそのプロセスの一環にすぎません。
立候補の意思を表明した12人は、いずれも世論の反応を見るための「観測気球」でした。「選挙の顔」選びですから、政治家としての力量などの中身ではなく、選挙で票を集められる人気のある人が選ばれるでしょう。拙著で指摘したように、小泉進次郎元環境相による「『小泉劇場』の再現を狙っている」(『追撃 自民党大軍拡・腐敗政治』学習の友社、115頁)ように見えます。
10人以上も声を上げたのに、誰1人として憲法を守るという人はいませんでした。改憲論の大合唱です。憲法尊重養護義務を定めた99条に違反する人ばかりです。続投を断念した岸田首相が改憲の論点整 理を指示し、早期の発議に向けて縛りをかけたのも異常です。
岸田首相退陣の理由が裏金事件や統一協会の問題であったにもかかわらず、その再調査や統一協会との絶縁を表明する人も、これらの問題に厳しい対応を打ち出す人もいません。みな「臭いものにふた」をする「同じ穴のムジナ」にすぎないのです。
新総裁の選出と新内閣の成立によって「刷新感」を演出し、「ご祝儀相場」で支持率を引き上げ、ボロが出ないうちに解散を打って総選挙になだれ込む作戦だと思われます。それがどのような経過をたどるかは不明ですが、2021年の菅首相から岸田首相への交代が参考になります。
菅首相は9月3日に退陣を表明し、総裁選は今回より2日遅い9月29日に実施されました。その後、10月4日の臨時国会召集、岸田内閣発足、所信表明演説と続き、解散は10月14日、総選挙の投票日は31日でした。「2匹目のドジョウ」を狙って似た経過をたどるとすれば、総選挙の投票日は早ければ10月27日、遅くても11月10日になる可能性が高いと思われます。
追撃戦の課題と展望
岸田首相の退陣によって、政権交代に向けての歴史的なチャンスが生まれました。解散・総選挙に向けての追撃戦を展開することで、このチャンスを活かさなければなりません。大軍拡・腐敗政治によってやりたい放題の悪政を押し付けてきた自民党に、その罪を自覚できるだけの強烈な罰を与えるには政権から追い出すのが最善です。
とはいえ、それは簡単なことではありません。1割台にまで支持率を低下させた森元首相から政権を引き継いだ小泉首相が「自民党をぶっ壊す」と言って自民党を救った前例があります。3割台にまで支持率を減らして退陣せざるを得なくなった菅元首相から政権を引き継いだ岸田首相も、劇的に支持率を回復させて総選挙で勝利しました。この「成功体験」を繰り返そうとしているのが今の自民党です。
この自民党の狙いを見破り、国民に幅広く知らせることが何よりも重要でしょう。情報戦で勝利しなければなりません、メディアに対する監視と批判を強め、私たち自身の情報リテラシーを高めてだまされないようにすることも大切です。SNSなどを通じた情報発信力や都知事選で注目を集めた「1人街宣」、集団でのスタンディングなども有効でしょう。
また、野党には政権交代を視野に入れた幅広い連携を求めたいと思います。通常国会で実現した裏金事件での真相究明のための連携を総選挙でも継続してもらいたいものです。裏金事件や統一協会との腐れ縁に怒りを強めている保守層にも、今度だけは自民党にきついお灸をすえなければならないと訴えるべきでしょう。イギリスでの政権交代は、労働党への支持の高まりというより、保守党に対する失望によるものだったのですから。
市民と共産党を含む野党の共闘を再建するための働きかけを強めることも必要です、立憲民主党には改憲と戦争法に反対した立党の原点を忘れず共闘の立場に立つ代表の選出を求め、各選挙区だけでなく可能な限り全国的な「連携と力合わせ」によって有権者の期待を高める必要があります。支持団体の連合には共闘を妨害したり足を引っ張ったりしないように働きかけ、選挙は政党に任せて余計な口出しはするなと言うべきです。
たとえ自民党が議席を減らしても、維新の会のような「第2自民党」がすり寄るのでは政権交代を実現できません。議席の減らし方によっては国民民主党や前原グループ(教育無償化を実現する会)が加わる可能性もあります。このような形で自民・公明の連立政権を助けないようにけん制する必要もあります。
絶好のチャンスをどう生かすかが問われています。腐れ切った自民党大軍拡・腐敗政治に対する追撃戦で勝利し、政権交代に向けて希望の扉を開かなければなりません。そのための決戦が間もなくやってくるにちがいないのですから。
2024-09-27 05:45
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