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12月3日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月3日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「追及型野党の今後は? ワルを野放しにするのか、立憲民主」

■「反対ばかり」のレッテルは与党の策略

 「立憲が『反対ばかり』というレッテル貼りは、野党の牙を抜くための与党側の策略です。それに乗っかるメディアの問題もある。だからといって立憲が提案型をアピールすれば国民の支持を集められるわけではないでしょう。それに、すでに日本維新の会も、国民民主党も自分たちは政策提言型の政党だと主張しています。自民・公明の与党に加えて維新、国民も政策提言する補完勢力になり、そこに立憲までスリ寄ったら国会は完全に緊張感が失われてしまう。政権の監視は野党の重要な役割だし、大メディアがその機能を果たしていない今はなおさら、野党の追及が大事なのです。そもそも、政策提言をして与党に採用されたところで、それは野党の手柄にはなりません。教育無償化やコロナ禍での現金一律給付など、野党の提言を取り入れたり抱きついたりしてきたケースは枚挙にいとまがありませんが、それらはすべて与党の実績になるだけです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 野党が憲法53条に基づく臨時国会召集の要求をしても、与党側は都合が悪いと国会も開かない。開いたところで、政府はマトモに答弁しない。安倍元首相なんて、「桜を見る会」前夜祭の問題だけで118回も虚偽答弁していたことが衆院事務局に認定されている。国会のお墨付きを得た嘘つきなのだ。

 第2次安倍政権以降、国会は軽視され、形骸化してしまった。こういう現状を打破しないかぎり、国会論戦はセレモニーでしかなく、政策提言なんて野党の自己満足に終わる。相手の土俵に乗り、野党第1党がわざわざ負け戦をしにいってどうするのか。

■追及型からの転換より追及力を高めることが必要

 「立憲が選択すべき道は、提案型への路線変更ではなく、対決型で追及力を高めることです。共産党のような調査能力もなく、週刊誌報道に頼ったり、揚げ足取りのような批判ばかりしていたら、国民から愛想を尽かされても仕方がない。野党ヒアリングだって、官僚を吊るし上げているだけに見えることが問題であって、国会で政府がきちんと答弁しない以上、役所の担当者に直接ただすやり方があってもいい。そこで疑惑解明につながる重要な証言が出てきたこともあるのです。ただ難癖をつけているだけと見られないよう、調査能力を磨いて、理詰めで政権を追い詰めることが野党の矜持です。それを忘れたら、自公政権のデタラメを黙認する存在になってしまいます」(五十嵐仁氏=前出)

 立憲は、真摯な追及型だった辻元清美氏や川内博史氏が落選してしまったことが、つくづく惜しい。本会議の代表質問や、予算委の貴重な質問時間を自己満足の政策提言に充てているようでは、与党を喜ばせるだけだ。

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12月1日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月30日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「分配も口だけ 岸田首相、もう露呈した「空っぽ」の危うさ」

新しい資本主義の内実は大企業優先の古い資本主義

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「本来、補正予算は本予算とは別に、緊急の手当てが必要な時に組むものです。今回は、新型コロナウイルス感染拡大防止と、コロナで傷んだ経済を立て直すための経済対策が目的のはず。米国から防衛装備品を買うことが経済対策になるのでしょうか。21年度当初予算の5兆3422億円と合わせて年度を通した防衛費が初めて6兆円を超える。補正予算に紛れ込ませてゴマカす手口で、衆院選公約で掲げた『防衛費のGDP比2%以上』に近づけようというのです。岸田首相はハト派のイメージを利用して、軍国化を加速させようとしているように見える。理念がないから、米国の言いなりで戦争にも参加しかねない。ソフトなイメージにだまされていたら大変なことになります」

 補正予算の総額は35兆9895億円で、このうち経済対策に充てる分は31兆5627億円だが、規模を膨らませただけで、効果は期待薄。あちこちから言われるままにカネを無意味に使って「やってるフリ」だけなのだ。

 補正予算に計上された「分配戦略」を見ても、「看護、介護、保育、幼児教育などの現場で働く方々の収入の引き上げ」は2600億円。その一方で、マイナンバーカード保有者に最大2万円分のポイントを付与するマイナポイント事業には1兆8134億円もの予算を計上している。分配より、場当たりのバラマキ重視ということだ。

 「岸田首相は『新しい資本主義』などと言っていますが、その中身は大企業優遇の古い資本主義そのものです。非正規社員の待遇などの格差問題を放置したまま、大企業に形ばかりの賃上げを要請するのは欺瞞と言うほかない。政界では“真面目でいい人”というのが岸田首相の人物評ですが、それは操りやすいということでもある。何でも言うことを“ハイ、ハイ”と聞き、財界の要望に押されて、むしろ新自由主義が加速していく危うさを感じます」(五十嵐仁氏=前出)



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11月25日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月25日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「自社、自公政権の自民党が「立憲共産党」を揶揄する笑止」

 そもそも連立合意する以前の1990年代、自公は与野党に分かれて罵り合っていた。自民は「政教一致批判」で創価学会の池田大作名誉会長の証人喚問まで要求、公明にとって自民は「仏敵」だったのだ。

 もっと言えば、自民は55年体制で長年対立してきた社会党(現・社民党)とすら手を組んだ。93年に誕生した8党派連立の非自民政権から社会党と新党さきがけが離脱すると、自民は水面下で、当時の村山富市・社会党委員長を首班に担ぐことを画策、94年に自社さ連立政権を樹立した。

 社会党は憲法9条を守る「護憲」が金看板。日米安保は反対が党是、「自衛隊は違憲」と主張してきた政党だ。しかし、連立発足と同時に社会党はそれらをかなぐり捨て、一方で自民は、先の大戦を「侵略戦争」とすることを受け入れたのだった。

 憲法、安保、自衛隊、歴史認識まで全く違うのに、選挙で有権者の審判を得ることなく成立させた政権こそ、野合と言わずして何と言うのか。

■「恩讐を乗り越えて」というゴマカシ

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう話す。

 「自社さ政権は当面の政策をどうするのかを事前に明らかにしないまま発足したため、村山首相が国会で、日米安保や自衛隊などに関してそれまでとは百八十度異なる答弁をすると大混乱になりました。それに比べれば、野党共闘は市民連合を介して6項目の政策合意をしていますし、共産党は当面は安保の廃棄を求めず、自衛隊の解散も求めないことを明確にしています。自社さより、よほどきちんと準備できていたじゃないですか。政党が違うのですから理念や政策が全部一致することはない。立憲と共産の共闘は、合意できるところと、違うところをもっとハッキリさせ、もっと説明すべきだったというのが反省点です」

 村山首班による自社さ連立を水面下で主導した亀井静香元衆院議員は後に、「自社さ政権は、最大野党だった自民党が、連立を離脱した社会党と組むウルトラCを考えた結果だった。自民党が政権復帰するために使える手をなんでも使うという執念から生まれたのだ」と明かしている。

 政策の一致など眼中になく、すべては、ただただ与党に戻りたいだけ。そんな自民党が「立憲共産党」と揶揄するのは笑止千万だ。自社さ政権や自公政権の成り立ちをメディアも忘れたとは言わせない。

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11月24日(水) 総選挙の結果をどうみるか(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』No.820 、2021年12月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 漁夫の利を得た「第三極」

 今回の総選挙で注目を浴びたのは、与党でなく野党共闘にも加わらない「第三極」政党の健闘でした。とりわけ維新は11議席から30増の41議席へと4倍近くも躍進し、国民民主も8議席から3増で11議席へと前進しました。この両党は独自性をアピールすることで、「漁夫の利」を得たのです。
 与党が支持できなくても、直ちに政権交代をもとめない有権者がかなり存在していました。これまでとはちがった政治を望み、政治を変えたいと願っていても、政権が代わることには不安を抱いたのではないでしょうか。このような人びとの「受け皿」になったのが「第三極」だったと思われます。
 維新は「遅れてきた右派ポピュリズム」で、岸田政権に飽き足らない極右や「改革」の旗印に幻想を抱く反自民層をひきよせたようにみえます。コロナ禍によって全国的に知名度をあげた維新副代表の吉村洋文大阪府知事の「人気」や地元大阪での地方議員や首長を総動員した組織力の成果でもあります。
 維新はこれまで自公政権の補完勢力でしたが、総選挙では意識的に対決姿勢を示して政権批判の「受け皿」をめざしました。これが功を奏しましたが、基本的には新自由主義で右からの政権批判勢力にすぎません。今回の選挙でよせられた期待にどれだけ応えられるかが、これから問われることになるでしょう。

 次の決戦は来年の参院選

 今回の結果、決戦は来年7月の参院選と、その後の総選挙へと先送りされました。その決戦にむけて、野党共闘を本気の共闘へと質的に高めていけるかどうかが問われています。とりわけ、立憲にとっては連合の横槍を跳ね除けて本腰を入れた共闘にとりくめるかどうかが試されることになるでしょう。
 野党共闘は紆余曲折が避けられません。その発展によって政権交代が現実の課題となり、支配層は大きな危機感を抱いて必死に巻き返したというのが、現在の局面です。初めてのチャレンジで厳しい試練にさらされましたが、本格的な分断工作はこれからで臥薪嘗胆が求められます。共闘をまもり強化し、何が足りなかったのか、課題を明らかにして参院選での捲土重来を期さなければなりません。

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11月23日(火) 総選挙の結果をどうみるか(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』No.820 、2021年12月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 日本の命運を決するとして注目されていた総選挙の結果がでました。コロナ禍のもとでのはじめての国政選挙(補選などを除く)であり、市民と野党の共闘が与党とがっぷり四つに組んで政権交代を迫った初の選挙でもあります。この総選挙での各政党の議席は図(省略)のようになっています。
 自民党は議席を減らしたものの公明党は増加し、政権与党は過半数を維持しました。「めでたさも最小限の自民減」というところです。野党では立憲民主党と共産党が後退し、日本維新の会が躍進しました。その背景と要因は、どのようなものだったのでしょうか。

 自民党は最小限の敗北

 自民党は改選前の276議席より15減らして261議席になっていますから、敗北したことは明らかです。しかし、当初予想されていたほどではなく、最小限の敗北でふみとどまりました。単独過半数の233議席を超えただけでなく、常任委員会に委員長をだしても多数を占められる「絶対安定多数」の261議席に達しています。
 公明党は29議席から3増の32議席になりました。自民と公明の与党は306から293へと12議席減になっています。しかし、これに維新を加えた改憲勢力は334議席となって3分の1の310を大きく超えたことに注意しなければなりません。
 小選挙区では幹部の落選が相次ぎ、甘利明幹事長が敗北して辞意を表明し、石原伸晃元幹事長も敗北しました。野田毅元自治相、若宮健嗣万博担当相、平井卓也前デジタル相、桜田義孝元五輪担当相、塩谷立元文部科学相、金田勝年元法相、原田義昭元環境相、山本幸三元地方創生相なども負けるなど、その打撃は数字以上のものがありました。
 自民党が議席を減らしたのは、野党の分裂によるアシストがなく、安倍・菅政治の民主主義・立憲主義破壊やコロナ失政への強い批判があったためです。これまでの自公政権のあり方にたいして、有権者は明らかに「ノー」を突きつけました。
 しかし、それがこの程度にとどまったのは、自民党の「作戦勝ち」だったように思われます。菅前首相のままで総選挙をたたかっていれば、もっと多く議席を減らしていたはずです。総裁選でのメデイアジャックによって自民党への好印象と支持が高まり、それが消えないうちに、新内閣のボロが出ないうちに、コロナの感染拡大が収まっているうちに、総選挙での決着を急ぐという奇襲攻撃が功を奏したことになります。

 共闘に新たな試練

 これにたいして、野党の側は「選挙共闘」という態勢を整えて迎え撃ちましたが、大きな試練にさらされました。立憲民主が110議席から14減で96議席、共産が12議席から2減で10議席、れいわは1から3議席で2増、社民は1議席で増減なしになったからです。
 ただし、共闘が一定の成果を生んだことは明らかです。289小選挙区中217で国民をふくめた一本化が実現しました。そうでなければ、小選挙区で甘利氏や石原氏などを落とすことは不可能だったでしょう。野党共闘は62選挙区で勝利し、惜敗率80%以上が54、1万票以内での敗北が31もありました。接戦にもち込んで次回への可能性を残した点でも、共闘には大きな意義がありました。
 それが十分な成果を生まなかったのは、立憲民主と連合(日本労働組合総連合会)の対応に問題があったからです。連合が共闘の足を引っ張り、それに遠慮した立憲民主が共闘に及び腰だという姿がみえたために、政権交代の「受け皿」として有権者に十分に認知されなかったのではないでしょうか。
 連合傘下のトヨタ労組が自民党に配慮して愛知11区で候補を取り下げたり、連合東京が12区で公明支援を打ち出したりするなど、疑問だらけの対応をくり返しました。このような連合に遠慮して、10月23日夜の新宿での野党共闘を呼びかける街頭演説の後、枝野氏が志位氏と2人で並ぶことを避けるという一幕もありました。
 これではブームが起きるわけがありません。このような中途半端なものではなく、本気の共闘こそがもとめられていたのではないでしょうか。共闘に問題があったのではなく、十分に機能できなかった点にこそ問題がありました。有権者に不安を抱かせず、沸き立つような期待感を高めることができるかどうかが、これからの大きな課題だと思います。

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11月21日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月21日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「立憲はまだ甘い「小川淳也が出れば盛り上がる」とは早計」

 最大の問題は、ガタガタになった立憲を立て直せるのか、どん底まで落ち込んだ党勢を回復できるのか、ということだ。野党第1党なのに、立憲の支持率は1桁に低迷し、政党支持率は維新に負けたままだ。誰が新代表になっても、相当な覚悟を持って再生を図らないと、有権者の支持は戻らないのではないか。

 なのに、この状況でも、立憲の議員は危機感が薄いのだから、どうしようもない。なにしろ、ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で取り上げられ、知名度が上がった小川が出馬したくらいで、「これで代表選は注目される」という期待の声が上がっているのだから、考えが甘すぎる。

 たしかに、自民党は総裁選をやったことで支持率を急上昇させたが、同じように立憲の支持率が回復すると思ったら大間違いである。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「いまだに立憲民主党内には、野党第1党の“甘え”と“楽観”が蔓延しているように見えます。もし、野党第2党に転落していたら、危機感も違ったのではないか。危機感があったら、西村智奈美と小川淳也の2人が、20人の推薦人を集めるのに苦労することもなかったはずです。自民党だって総裁選に2人の女性候補を立てた。なぜ、最初から“代表選には女性にも出てもらいたい”“若い人も手をあげて欲しい”という発想にならなかったのか」

 しかも、野党は完全に分断されている。維新と国民民主は立憲と距離を置き、いつ自民党とタッグを組んでもおかしくない状況だ。そのうえ、立憲のなかで戦闘力のあった辻元清美や川内博史といった論客は、次々に落選してしまった。この状況で立憲は、本当に自民党と対峙できるのか。

 「安倍首相や菅首相は、立憲からしたら戦いやすい相手だった。でも、岸田首相は戦いづらいと思う。御用聞きのような岸田首相は、なんでものみ込んでしまう。しかも、ハト派のイメージがある。以前、枝野代表が目指すと公言していた“保守中道”のイメージです。立憲が自民党を追い込むのは、そう簡単ではない。代表を代えればどうにかなると考えているとしたら甘すぎます」(五十嵐仁氏=前出)

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11月16日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月16日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「勘違いと謀略報道 立民は“負け”を共産党のせいにするな」

 枝野も、辞任会見の質疑応答で野党共闘に関して「新代表にも同じ方向性を求めていくのか」と問われると、「戦略、戦術論としては、実態以上に(共産党と)近い関係と受け止められてしまった」とか言っていたが、それは共産に対して失礼ではないか。協力は欲しいが仲間と思われたくないというのは、あまりに都合が良すぎる。何様なのかという話だ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「共産党のせいだと責任転嫁しているようでは、話になりません。現行の小選挙区制で自公に勝つには、候補者を一本化するしかない。共産党と共闘したから、甘利前幹事長や石原元幹事長に選挙区で勝つことができたのです。共闘を解消すれば、野党が乱立して自公を利するだけ。立憲がさらに議席を減らすのは自明です。実際、衆院選の小選挙区では公示前の46から57に議席を増やしている。共闘の効果はあったのです。全体で14議席減の96議席に落ち込んだのは、比例代表で23議席も減らしたことが主因で、政党名を書いてもらえなかった立憲自身の問題です」

 共産と手を組んだせいで負けたと思いたいのかもしれないが、敗因というのは往々にして自らの内にあるものだ。

■批判は自公の危機感の裏返し

 引退した自民の伊吹元衆院議長も10日の福岡市内での講演で、衆院選は「自民が政権を失った(2009年の)時と似たような雰囲気があった」と話していた。その上で、「立憲はとんでもないミスをした。国家運営の基本に関わる意見が違う党が、選挙の票のために集まった」と批判していたが、危機感の裏返しだ。自民と公明だって、基本に関わる意見は違う。それなのに、ことさら野党共闘の失敗を喧伝するのは、解消してもらった方が今後の選挙が楽だからだ。

 「そういう共闘解消論に大メディアも加担している。野党も支持者もこれに惑わされないことです。立憲が見直すべきは共産よりむしろ連合との関係でしょう。連合の主体は大企業の労組ですから、コロナ禍にあえぐ一般庶民の気持ちは分からない。派遣や非正規労働者の待遇改善にも関心がありません。立憲は、連合の顔色をうかがわなくても勝てるように地方組織をしっかりつくって足腰を鍛えることに注力すべきです。労組に“おんぶに抱っこ”では、独自の政策を打ち出すこともできない。連合と共産の仲介役を担えるような地力をつけることが先決です。問われているのは共産との関係ではない。民主主義か非民主主義かの戦いで、共産との共闘を解消すれば、来年の参院選で野党はさらに惨敗し、自民独裁の暗黒国家が未来永劫、続いてしまうことになりかねません」(五十嵐仁氏=前出)

 野党第1党の座を守ることだけに汲々とすれば、かつての社会党の二の舞いになるだけ。

 公示前より減らしたといっても野党第1党である以上、新たな政治の希望を有権者に提示して欲しいし、そのためには野党共闘が欠かせない。人権より利権の自公政権が制度疲労を起こしていることは疑いようもないのだ。


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11月10日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月10日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「やがて大政翼賛会 世にもおぞましい維新と国民民主の連携」

 改憲勢力もうごめき始めた。維新と国民民主はきょう、両党の幹事長と国対委員長会談を開催。今後の国会運営で連携を強化するというが、眼目は何といっても憲法改正だ。維新代表の松井大阪市長が早々に「来年の参院選までに改憲案をまとめ、参院選と同時に国民投票を実施すべきだ」とブチ上げたのは、自民、公明、維新の3党で憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席を上回るからだ。ここに国民民主が加わることで改憲勢力は公示前の324から347に膨張。トップ5党のうち4党を改憲勢力が占めることになる。参院でも4党の会派で3分の2以上だ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。

 「維新と国民民主の連携は非常に危険です。自民党以上に急進的な維新は憲法改正に意欲を強めていて、与党に圧力をかけるでしょう。改憲勢力が多数を形成することで一気に事が進む可能性がある。維新は教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所設置を主な項目に掲げていますが、9条改憲や防衛力強化にも積極的です」

 国民投票の利便性を高める改正国民投票法が6月に成立。改憲勢力は手続き法の議論は一段落したと主張し、改憲案起草の開始に向けて攻勢を強めているのだ。今度の選挙は民主主義の天王山だったが、立憲民主が自壊していく中、案の定の危険な予兆にマトモな有権者はどう動けばいいのか。

 「国民生活にとって憲法改正は緊急を要する議題ではありません。改憲勢力に対抗するにはリベラル勢力の結集が必要です。立憲民主は政権交代を自己目的化せず、野党共闘の新しい体制構築に向けて腹を決めて議論し、この国が進むべき方向をしっかり考えてもらいたい」(五十嵐仁氏=前出)

 立憲は枝野代表の後任を選ぶ代表選日程について「11月21日告示、30日投開票」「11月22日告示、12月1日投開票」の2案を軸に調整に入った。12月6日召集が見込まれる臨時国会までに、党勢を立て直せるか。

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11月9日(火) ハト派・リベラル派の衣をまとった「安倍背後霊」政権―-岸田文雄新内閣の性格と限界(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、『治安維持府と現代』2021年秋季号、第42号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 5,奇襲と逆襲の総選挙

 自民党総裁選直後、岸田新総裁は10月31日投票での総選挙実施という方針を明らかにしました。新しい内閣が発足する前に解散・総選挙の日程が速報されるという異常事態です。これまで解散から投票までの最短は20日でしたが、今回はこれよりも短く17日しかありません。まさに「奇襲」です。
 それは新内閣発足直後の「ご祝儀相場」で支持率が上がることを狙ったためと見られています。新政権の本質がばれないうちに選挙に打って出ようとしたのかもしれません。しかし、このような姑息な奇襲の意図は見抜かれていたのではないでしょうか。内閣発足直後の支持率は、朝日新聞の調査では45%と2001年以降最低となっています。
 この奇襲攻撃に対して、すでに野党は迎え撃って逆襲に転ずる準備を重ねてきました。市民連合と立憲・共産・社民・れいわ4党の政策合意が実現し、立憲・共産両党の党首会談では限定的な閣外協力が合意されました。各小選挙区での統一候補の擁立も進み、289小選挙区中200以上の選挙区で「1対1の構図」づくりが実現しています。
 コロナ禍から国民のいのちと暮らしを守るという課題からしても、野党共闘の実現によって与野党が正面から激突するという対決構図でも、政権交代を展望して共産党が協力するという点でも、これまでにない歴史的な総選挙となりました。まさに、日本の命運がかかった選挙となっています。その結果次第で、政治のあり方と日本の進路は大きく左右されることになるでしょう。
 しかし、総選挙の結果がどうなるにせよ、参議院は自民・公明両党が多数を占めています。たとえ、衆院で与野党の勢力が逆転し新しい政権が発足しても衆参の勢力関係が「ネジレ状態」になるだけで、法案や予算案を通すのは極めて困難です。
 もし、野党の連合政権が樹立されれば、来年7月の参院選で野党が多数を獲得して「ネジレ状態」を解消することが次の課題となります。そうならなくても、与野党が激突する激動の情勢は、来年にかけてしばらく続くことになるでしょう。

 むすび

 岸田新首相は菅前首相とは必ずしも同じではないということに注意する必要があります。菅前首相は官房長官として安倍内閣を中枢で支え、正面から安倍政治の「継承」を掲げていました。しかし、岸田新首相は「新しい資本主義」への転換を標榜しています。菅前政権のコロナ対策や説明しない政治の失敗を目撃し、そこから学んでいるという違いもあります。
 何よりも、岸田氏はハト派でリベラルとされる宏池会の会長でした。ハトとして飛び立てる翼の一部が残っているかもしれません。総裁の椅子を手に入れるために魂を売り渡さざるをえなかった屈辱をわずかでも感じていれば、「安倍政治」とは異なった方向を模索する可能性もあります。
 とりわけ、岸田新政権が経済政策で再分配重視や格差是正に転じ、中間層へのアピールを強めた場合、野党にとっては手ごわい相手となるでしょう。数十兆円規模の経済対策や子育て支援など総選挙向けの口当たりの良い「撒き餌」や、安倍・菅路線の継承という地金をごまかすための「コーティング」に惑わされてはなりません。
 自民党にとっては、このような外見をまとっている岸田氏であるからこそ、利用価値があるということになります。岸田氏からすれば、そのような外見を強めようとすれば右傾化した自民党の地金と衝突し、安倍元首相や麻生副総理、甘利幹事長などからの牽制を受けざるを得ないというジレンマに直面することになります。
 「ハト派・リベラル」の衣の下には「安倍背後霊」政権の本質が隠されているからです。そのカラクリを野党や国民は見抜くことができるでしょうか。この点においても、総選挙の結果が注目されます。    

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11月8日(月) ハト派・リベラル派の衣をまとった「安倍背後霊」政権―-岸田文雄新内閣の性格と限界(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『治安維持府と現代』2021年秋季号、第42号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 3,「食品サンプル」内閣の誕生

 岸田新首相は自らの政権について「新時代共創内閣」と名付けました。国民と共に新しい時代を創造する内閣だとの意味を込めたのでしょう。しかし、その実態は「食品サンプル」のような内閣です。色々と「美味しそう」な料理が並び、見栄えは良いけれども食べることができないからです。
 総選挙が終われば内閣改造となります。食べられたとしても約1ヵ月の「賞味期限」しかありません。しかも、予算委員会での質疑もなく、解散されれば事実上の選挙戦に突入します。各省庁を代表して国会での質問に答えたり、職務に専念したりする時間などありません。初めから「食べられないこと」が分かっているから、閣僚としての資質や適性などを無視して「美味しそう」に見える人を並べたわけです。
 岸田首相がもっともこだわったのは派閥の均衡で、その次には老荘青のバランスと入閣待機組の処遇だったと思われます。その結果、派閥の構成は最大派閥の細田派が4人、麻生派は3人、竹下派も4人、二階派は2人、岸田派は3人。無派閥から3人が入閣し、石破派と石原派からの起用はありませんでした。
 首相を含めた21人の閣僚のうち、13人が初入閣となり、当選3回の若手を起用したのは、清新でさわやかな外見を凝らして生まれ変わった姿を示そうとしたからです。しかし、そのために「この人誰?」というなじみのない大臣が続出し、新内閣に対する「ご祝儀」が少なくなりました。支持率でも株価でも。
 新閣僚も「政治とカネ」の問題などで疑惑をもたれている人は少なくありません。牧島かれんデジタル相については早速NTTからの接待疑惑が報じられました。その他、金子恭之総務相、末松信介文科相、後藤茂之厚労相、金子原二郎農水相、西銘恒三郎復興・沖縄北方相、二之湯智国家公安委員長・防災相などの名前も浮かんでいます。『週刊文春』が「疑惑の玉手箱」と書き、ボロが出る前に総選挙を実施したいと岸田首相が焦るのも当然でしょう。
 過去の侵略戦争を肯定し美化する「靖国」派の議員も目白押しで、日本会議国会議員懇談会と神道政治連盟国会議員懇談会のいずれかに所属する自民党の閣僚は20人中17人に上っています。岸田首相自身、日本会議国会議員懇談会の副幹事長を務めていました。

 4,色あせた「岸田カラー」

 岸田首相には前任者の菅首相とは異なった特徴があります。「聞く力」をアピールし、民主主義の危機、新自由主義の弊害、再分配や格差の是正、収入増などを強調する姿勢です。所信表明演説でも、「信頼と共感」「中間層を拡大する『新しい資本主義』」「国民との丁寧な対話」などの言葉が散りばめられていました。
 このような言説は岸田政権が「安倍・菅政治」の後に登場したことを反映しています。前任者の政治運営によって生じた欠陥と問題点を無視できないからです。国民の声を聞かず、公文書の偽造で民主主義の危機をもたらし、信頼と共感を失い丁寧な説明を避けてきたために大きな批判を招きました。
 共同通信の調査では、安倍・菅政権の路線を「転換するべきだ」との回答が69.7%にのぼり、朝日新聞の調査でも「引き継がない方がよい」が55%と半数を超えています。これでは「継承」を謳うことはできません。とはいえ、はっきりとした転換によって「岸田カラー」を打ち出すこともできないところに、岸田首相のジレンマがあります。
 典型的な例は、「成長と分配の好循環」の前提として「アベノミクスの3本の矢」である金融政策、財政政策、成長戦略の推進を挙げていることです。コロナ対策についても失敗への反省がありません。森友文書の再調査についても否定し、日本学術会議会員6人の任命拒否については見直す意向を示していません。選択的夫婦別姓についてもトーンダウンしました。「聞く耳」は形ばかりで実体がないのです。
 安倍元首相が執念を燃やした改憲路線についても任期中に目途をつけるとして、総選挙向けの重点政策で「早期の憲法改正を実現する」ことを掲げ、「防衛関係費の増額を目指す」として日米同盟の強化と軍事大国化路線も引き継ぎ、辺野古の埋め立て続行を明言しています。「軽武装・ハト派」という宏池会の看板はイメージだけで内実がなく、色あせたものとなっています。
 総裁選の時と首相になってからの発言の違いも注目されます。当初の令和版所得倍増計画は姿を消し、新自由主義については「転換」ではなく「弊害」の指摘にとどまり、金融所得課税は実施しないことになりました。これらの発言も、総裁になるための見掛け倒しの看板にすぎなかったのです。
 「安倍色」を「岸田色」に塗り替えて独自性を示すチャンスを逸したということになります。安倍・麻生・甘利の「3A」が「おんぶお化け」のようにとりついているため、地金はそのままに、表面の「コーティング」でごまかさざるを得なかったのです。ここに「安倍背後霊」政権を担うことになった岸田首相の限界があります。
 実は、「岸田色」を打ち出すのは簡単でした。「憲法9条は変えない」「平和国家としてのブランドを守る」と言いさえすればよかったのです。宏池会の元会長で大先輩に当たる古賀誠氏は『憲法9条は世界遺産』という本まで書いているのですから。でも、そうしていたら、今の自民党では総裁になれなかったでしょうけど。

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