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10月29日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月29日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「菅発言は支離滅裂 嘘に嘘を重ねる前政権の“ペテン踏襲”」

 26日にようやく召集された臨時国会で、初の所信表明演説を行った菅首相が、その夜のNHK番組に出演。日本学術会議が推薦した会員候補6人を任命しなかったことについて、所信表明では一言も触れなかった菅だが、この件について番組で問われると、ややキレ気味で「結果的に一部の大学に偏っている」「民間出身が少ない、若手が少ない」などと批判を口にし、会員は「まんべんに選んでほしい」と言い出した。

 「まったく説明になっていないし、任命拒否の理由にもならない詭弁です。推薦段階の105人の名簿は『見ていない』と言っていたのに、なぜ会員構成に偏りがあると思ったのか。名簿を見ないで『総合的、俯瞰的に判断した』と言い続けることにも矛盾がありましたが、ここへきて、『迷った結果の対応』とか、人選が偏っているなどという新たな言い訳を持ち出すのは支離滅裂です。NHKの番組では、たいして厳しい質問もされないのに、学術会議の問題で少し突っ込まれるとキレる性格も露呈した。この調子では、冷静で実のある議論は望めそうもありません。与党議員が国会審議の首相答弁を心配しているというのも当然でしょう」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 内閣府学術会議事務局が18年に首相に任命の裁量権があるとした解釈文書が、どんな経緯で、どういう法的根拠に基づいてまとめられたのか、その整合性も問われる。

 しかも、04年の資料は、立憲民主党の小西参院議員が政府に提出を求めてから、3週間以上も開示を拒否され続け、臨時国会の直前になって出してきたのだという。

法律も学問も軽んじるチンピラ、ゴロツキの所業

 「その場しのぎの嘘をつき、それがバレれば、また新たな嘘で上塗りする。それも苦しくなればゴマカし、証拠は隠蔽、改ざんして“なかったこと”にすればいいと国民をナメている。安倍政権の継承を謳う内閣が、前政権のペテンもしっかり踏襲していることが、この1カ月でハッキリしました。安倍政権では陰で汚れ仕事や裏工作に奔走していた菅氏が、首相として表に出てきたことで、不条理を通す強権があからさまになった感があります。所信表明演説を聞けば分かるように、国家観も長期的なビジョンもなく、ただ権力を振りかざすことに快感を覚える首相なのです。恐ろしいほど自制心がない。しかも、官僚が作った原稿すらマトモに読めないのですから、教養以前に基本的な知識すらない。どう考えても国のトップを担う器ではありません。このままでは、安倍政権の負の遺産と、菅首相の負の資質が絡み合い、マイナスのスパイラルに陥っていくだけです。とても国のかじ取りは任せられない。それを危惧する周囲の忖度が加速することも心配です」(五十嵐仁氏=前出)

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10月26日(月) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月25日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「菅政権の学術会議“蹂躙” 歴史に残る卑劣な手口」

 井上はそう説明したそうだ。ガキの使いじゃあるまいし、だったら、何のために梶田会長と対峙しているのか。会長も「ならば任命権者を出せ」と迫るべきだが、この政権に誠実な対応を期待するだけムダだと諦めてしまったのか。それだけ、菅政権の態度は不誠実極まりない。理由も示さず、法の趣旨に反する形で任命を勝手に拒んでおきながら、悪びれる様子は皆無だ。

 それどころか、予算を“人質”に取り、横紙破りの任命拒否の問題を、学術会議の「在り方」の問題にすり替える。政権に盾突く学者の意見を排除し、その正当化に血道を上げているから、タチが悪い。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。

 「自民党本部で約2時間半も元会長3人を吊るし上げ、行革の対象にして“兵糧攻め”を仕掛ける。学術会議への見せしめは『逆らえば痛い目に遭うぞ』と言わんばかりで、公開処刑さながら。公開処刑には観衆がつきものですが、叩けば叩くほど特定のシンパは歓喜すると思い上がっているフシすら感じます」

 菅政権はとうとう、学術会議の事務局体制を見直し、配置している官僚を大幅に削減する検討に入った。年間予算の大半を占める4億円超の人件費縮減を図るというから容赦ない。脅しに屈するまで蹂躙を続けるとは、チンピラ政権の強権性をまざまざと思い知らされる。

 彼らにすれば、学術会議は平和憲法と同様、戦前回帰の足枷。意見に〈「軍事目的の科学研究は絶対に行わない」との声明を何度も出してきました〉とある通り、先の戦時下における学者の戦争協力の反省の上に立つ学術会議は目障りな存在で、潰されて当然という乱暴な発想である。

 「15年に『放送法遵守を求める視聴者の会』が産経、読売両紙に出した意見広告を想起させます。TBS系『NEWS23』のアンカーだった岸井成格氏が安保法制について『メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ』と発言したのを個人攻撃。安倍政権への援護射撃の結果、政権に批判的なコメンテーターが次々降板する事態を招いた遠因とも言われています。メディアに続き、学問の世界まで不当な攻撃に屈すれば、時の政権とそのシンパに成功体験を与え、ますます図に乗らせることになります」(五十嵐仁氏=前出)

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10月25日(日) ポスト安倍時代における憲法闘争の課題(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、2020年9月18日に開催された「「安倍政治」の継続許さない!―九条の会東京連絡会9・18大集会」での講演の記録です。『生きいき憲法』No.69、2020年10月14日付に掲載されました。3回に分けてアップさせていただきます。〕

3.「活憲」の政府樹立に向けて

 これからの課題は改憲を阻止する、9条を変えさせないというだけではありません。それをさらに発展させて、今の時代にふさわしい形で憲法の理念や原則を生かしていく、具体化していく。これが必要になってくると思います。
 菅内閣は改憲に向けての野望を安倍政権から引き継ぐと言っています。改憲発議を阻止し、憲法破壊の安保法などのさまざまな法制度を撤廃しなければならない。さらに、憲法理念を実現できる、その時代にふさわしい政府をつくっていく。どうしたらそれができるのかが次の課題です。

■ 実績を積み上げてきた市民と野党の共闘

 「活憲の政府」樹立に向けて、野党共闘が重要です。市民と野党の共闘で、2016年から過去4年間の実践と経験を積み上げ、成果をあげてきました。2回の参院選では、32の一人区全てで野党の統一候補を擁立し、7年前は11議席、1年前は10議席を獲得。首長選挙でも、新潟県知事選挙では野党共闘で2回戦い、1回目は勝ち、2回目は負けました。その後、高知県知事選なども戦い、岩手と埼玉では勝ちました。この4月の都知事選挙では、25の小選挙区全てで市民選対が樹立され、野党が共に手を携えて戦いました。私も「市民と野党の共闘で都政の転換を 呼びかけ人会議」の一人として、国民民主党やれいわ新選組など、各党要請に回りました。去年の12月から、これらの野党代表が集まって共闘に向けての話し合いが積み重ねられていました。
 このような実績をさらに発展させ、さらに大きな共闘の輪をつくっていくことが必要です。そして、そのための条件が、つい最近できました。

■ 立憲と国民の合流――新政府樹立への大きな一歩

 9月15日に立憲民主党、国民民主党が、ともに解党して、新たに立憲民主党が150人、国民民主党が15人という形で野党の側の再編がなされました。かつて民進党が「希望の党騒動」によって引っかき回され、野党がめちゃめちゃになって大変な状況が生まれました。分裂工作の先頭に立っていたのが前原さんで、連合の会長、神津里季生さんもこれに加わっていました。今回、神津さんは枝野さんとともに、新立憲民主党結成に大きな役割を果たしました。リベラル的で中道から左派的な、共産党とも連携する、野党共闘に積極的な新しい政党、野党第一党が実現した。かつての民主党や民進党は、右のほうにドアが開いていた。自民党とも連携する可能性があった。今度の新しい立憲民主党は右ではなく、左のほうにドアが開いている。この変化、質的な違いをしっかりと見ておく必要があります。

■ 歴史観の見直し、価値観の転換は時代の要請

 アメリカの黒人差別問題(BLM)を発端にして、差別と加害の歴史を見直すという流れが世界で生まれてきています。日本も過去の侵略戦争と植民地支配の歴史を見直さなければならない。家族観やジェンダー問題でも、しっかりとした新しい立場に立つ政権をつくらなければなりません。今回の新内閣の閣僚には女性が2人しかいないと言われて、菅さんは「華やかさより実務をとった」と答えた。女性閣僚は見栄えを良くする飾りとしか考えられていない。これでは話になりません。女性活躍の社会になるはずがない。1人10万円の給付にしても、世帯主に送られる。国勢調査も世帯ごとの調査です。こういう古い家族観に縛られているような政党、政治家による政治。ここを抜け出さなければならない。これが時代の要請だろうと思います。

■ 憲法の理念を守り育てて、後の世代に手渡すことこそ、今を生きる私たちの責務

 日本国憲法、とりわけ9条は「1周早いラストランナー」だと、私は言ってきました。一番後ろを走っているように見えて、実は1周先を走っていた。憲法の中での人権規定は当時としても極めて先進的で、今見ても遜色がない。個別具体的なことは各法に任せて、中心的な理念を定めている。だから条文は短く修正する必要がない。時代遅れにならないのです。これを守り育てて、次の時代に、後の世代にそのまま手渡すのが、今を生きる私たちの責務だろうと思います。
 自民党は今回、新しい時代に適合する新しい政党に生まれ変わる能力がないことを示しました。ならば、私たちが市民と野党の共闘で、新しい時代の新しい政治を実現する政府を樹立しようじゃありませんか。
 憲法12条には、「この憲法が保障する自由と人権は国民の不断の努力によって保持されなければならない」と書いてあります。検察庁法改定問題でも、コロナ対策でも、大きな世論、国民の声の力によって、与党を追い込んで政策を変えさせることができました。諦めずに声を上げ続ければ政治は変わる。声を上げ続けて、次の世代に顔向けできる世の中、そういう社会にしていきたいと思います。

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10月24日(土) ポスト安倍時代における憲法闘争の課題(その2) [コメント]

〔以下の論攷は、2020年9月18日に開催された「「安倍政治」の継続許さない!―九条の会東京連絡会9・18大集会」での講演の記録です。『生きいき憲法』No.69、2020年10月14日付に掲載されました。3回に分けてアップさせていただきます。〕

2. 憲法闘争の新段階

 日本国憲法は9条を含めた全体が非常に先進的でした。時代を先取りする内容で、生命力が長い。いよいよこの憲法を現実の政治に活かすことのできる時代がやってくる。コロナ禍の下で、現代社会の脆弱性や新自由主義の問題点、限界が明らかになりました。これを克服してこれからのあるべき社会の方向性を示しているのが、この日本国憲法と言っていいのではないかと思います。

■ 安倍首相が抱えてきたジレンマと挫折の背景

 安倍さんは憲法を変えることを一つの大きな目標として、画策してきた。しかし、結局挫折しました。なぜかというと、安倍改憲路線には大きなジレンマがあったからです。変えようと無理強いしたり、急いでやろうとしたりすれば批判と反発が強まって時間がかかってしまう。丁寧にやろうとすると、やはりこれも時間がかかる。急ぐことも時間をかけることもできない。安倍さん自身に強い思い入れがあるだけでなく、支持者からも大きな期待があった。ですから、改憲の可能性が薄れてきた状況でも、憲法を変えると言い続けなければならなかった。これがかえって国民の反発、批判、警戒感を高めて、改憲を困難にした。
 しかも、集団的自衛権行使一部容認の閣議決定から、安保法が制定され、9条改憲の必要性が薄れてしまった。最近もアメリカがこの法律を評価する公電を送っていたことが明らかになりました。アメリカにとって、もうこれでいいと思われるような、一緒に戦争がやれるような、そういう法的枠組みができた。これが9条改憲に向けての勢いを弱めることになった一つの大きな背景だと言えます。
 もちろん、9条を巡る世論が転換したということもあります。安倍さんが強引にやろうとすると、世論が警戒感を高め、反発を強める。そういう中で、皆さんが大きく取り組んだ3000万人署名が、一人ひとりの国民の意識を変え、世論を転換するうえで、非常に大きな力を発揮しました。憲法を変えるのではなく、壊すのではないか、それが安倍改憲の本質ではないかということを、国民はしだいに気がついてきたということではないかと思います。

■ 憲法改正の三つの限界

 憲法は不磨の大典ではありませんから、変えることは禁じられていない。96条には明文を書き換えるための手続きが定められている。だから、変えてもいい。しかし、三つの限界がある。
 一つは、憲法三原則といわれている「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「恒久平和主義」、この三つの原理は転換してはならない。これを変えると改正ではなく、新しい憲法の制定になってしまう。「議会制民主主義」や「地方自治」の原則に反するような書き換えも、壊す改憲です。「改憲の限界」と言っています。このような変更は許されません。
 二つ目は、首相が先頭に立って改憲の旗を振る。これも憲法によって禁じられていると理解するべきです。憲法99条には、「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と書いてある。国務大臣のトップ、国会議員の先頭に立つような人が憲法を尊重し擁護をしないで、一体誰がするのか。改憲の旗を振りたいなら、安倍さん、首相を辞めなさいと、私はかねがね言ってきました。
 三つ目は、憲法は国の基本法であり、あらゆる法律の基になるものです。従って、世論を分断するような形での成立はあってはならない。みんなが合意し、納得し、そして、与党を支持する人も野党を支持する人も、みんなの共同作業として憲法を書き換えるという形で改定がなされなければなりません。国民投票で一方が他方を僅差で上回るというような形では、基本法の改正としての正当性に大きな問題が残るということです。

■ 安全・平和はハードではなく、ソフトパワーで

 最近、9条を巡る状況が大きく変化してきました。もはや国の安全・平和が軍事力によって守られるような時代ではなくなってきたということです。ハードパワーではなくソフトパワーで、軍隊、基地、兵器によってではなく、話し合いと外交交渉によってしか、平和と安全は守られません。それでしか守ることのできない時代に入ってきたということをはっきりと認識しなければならない。ミサイル防衛などと言っていますが、ミサイルでミサイルを撃ち落とすなど、もう夢物語です。音速を超えるミサイルが開発されている今、撃ち落とすなんてことは技術的に不可能です。
 イージス・アショアが頓挫したことによって、敵基地攻撃論が浮上してきました。先制攻撃は国際法に違反し専守防衛の国是にも反します。膨大なお金がかかり、しかも技術的には不可能なことをやろうとしている。腰を据えて、軍事ではなく外交で、ソフトパワーこそが平和と安全を守る、そういう路線に本格的に転換しなければ、東アジアで日本は生きていくことができません。

■ 危機は国内にこそ――防衛省は防災省へ

 しかも、毎年、大洪水に見舞われ、地震、火山の噴火、台風と、いろんな災害が起き、犠牲者が出ている。これこそ日本という国が直面している「今そこにある危機」です、これこそが「自衛」しなければならない日本社会の脅威ではないか。
 今度の総裁選で立候補した石破さんは防災省をつくるべきだと言いましたが、新しくつくる必要はない。防衛省の「衛」の字を「災」に書き換えればいい。今の自衛隊の主たる任務は外敵の侵略に対する自衛で、副次的任務が災害対応です。主と副を入れ替えればいいんです。自衛隊の任務と訓練、役割、内容を変えれば、十分対応することができるし、実態はすでに防災への自衛部隊になっている。その実態をそのまま生かすような再編・改造を行うべきだと思います。


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10月23日(金) ポスト安倍時代における憲法闘争の課題(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、2020年9月18日に開催された「「安倍政治」の継続許さない!―九条の会東京連絡会9・18大集会」での講演の記録です。『生きいき憲法』No.69、2020年10月14日付に掲載されました。3回に分けてアップさせていただきます。〕

1. 安倍政権の行き詰まりと「安倍なき安倍政権」

■ 持病再発を理由とした安倍辞任とその背景

 辞任の理由は持病の悪化でしたが、その背景には安倍政治の行き詰まりがありました。今日、安倍さんと関りのあるジャパンライフの山口元会長など14人が逮捕されました。政権に居座り続けていたら、このようなボロが出てくる。「桜を見る会」やモリカケ疑惑、河井夫妻の巨額買収事件。1億5000万円の一部が安倍陣営に還流したのではないかとも言われており、裁判の中で新しい事実が出てくる可能性もある。コロナ対策の迷走、支持率低下の中で、「あとは菅さん頼むよ」ということで、政権を投げ出したのが実情ではないかと思います。

■ 菅政権――派閥談合の「安倍なき安倍政権」

 後を継いだのが菅義偉さんです。国家観が明らかではない。ビジョンがない。出てくるのは、携帯電話の値下げをします。デジタル化を進めますという各論ばかりです。総理大臣には総論やビジョンを示してもらわなければならない。こういう人が首相になって、日本をどこに導いていくのか。はっきりしているのは安倍さんの路線を引き継ぐ、転換しないということ。それを約束して5つの派閥に担がれた。
 自民党はこれまで長期政権をどのように維持してきたかというと、ある種の「疑似政権交代」があったからです。目先を変える、右から左へ、左から右へ。金権政治の田中からクリーン三木へという形で、振り子を振らせることによって目先を変え、政権が変わったかのような印象を与えて支持を回復する。これで政権を維持する。こういう手法を使ってきた。今回は、完全に古い自民党、それも「談合政治」という形で「振り子」が振れずに菅政権へ受け継がれることになった。
 菅さん自身は無派閥だが、7つある主要な派閥の5つによって支持され、自己改革のチャンスを逸した。自浄能力のなさが露呈した。ここまで自民党は腐ってしまったのかと愕然とする。「安倍なき安倍政治」がこれから継続する。今まで安倍さんを支えてきた菅官房長官が首相に、そして二階幹事長、麻生副総理兼財務大臣もそのまま居座る。3本柱がそのままです。
 今回のシナリオを書いたのは二階さんだといわれています。菅さんはGOTOトラベルの前倒しを主張しましたが、あのときが始まりです。二階さんは全国旅行業協会の会長で、運輸・旅行関係のドン。この二階さんとの密約があったのでは、ということです。81歳の人が後ろで糸を引いて、71歳の人が暗躍する。これが今のこの国の政治の実態だ。構造の変化も新鮮さのかけらもない、行き詰まって辞めた安倍さんの後を継いだ人が、その行き詰まった路線を引き継ぐことになる。

■ 新内閣の顔ぶれと解散総選挙

 こういう中で、解散の時期についての憶測が飛んでいます。ひとつはコロナの感染状況がどうなっていくのか。もう一つは経済が復活するか、停滞したままか。そういう中で世論と支持率がどう変化するか。野党の選挙準備の態勢も影響します。
 ただ、新しい内閣を見ますと、すぐに解散するような顔ぶれではない。新入閣は5人しかいない。そのうちの一人が平沢勝栄さんで75歳。安倍さんの家庭教師だった。岸信夫防衛大臣は安倍さんの実弟。どちらも安倍さんが菅さんに頼んだのではないかと。もう一人、情実人事といわれているのが加藤勝信官房長官。安倍内閣の下で官房副長官でしたから、菅さんが使いやすいといわれていますが、母親の麻雀仲間だった安倍洋子さんに頼まれたのではないかと。
 もう一人、話題になっている人が平井デジタル担当相。国会の委員会審議の最中にワニの動画を見ていたとか、福島社民党党首の動画に「黙れ、くそばばあ」などと書き込んで問題になった人です。こんな過去のある人が今回入閣しています。

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10月21日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月20日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「正体露呈・目玉も空振り “ご祝儀内閣支持率”急落の必然」

 答弁能力を不安視する声は自民党内にもあり、国会論戦で馬脚を現せば、ますます支持率は下落していくだろう。

“やってる感”だけでどこまで引っ張れるか

 漠然とした期待に応えられなかった安倍第1次政権もそうだった。発足直後は65%前後と高い支持を得ていたが、能力不足や閣僚の不祥事、年金問題などで毎月のように支持率を下げ続け、回復基調になることがないまま、約1年で政権ブン投げに追い込まれた。周囲をオトモダチで固め、トップに上り詰めた高揚感だけで政権運営に乗り出した甘さは、今の菅政権にダブる。

 「学術会議の問題では、人事を振りかざして強権を発動する危険な本性があらわになった。叩き上げの『パンケーキおじさん』という国民受けを狙ったイメージ戦略は早くも崩れ、就任1カ月で地金が出た印象です。そもそも安倍長期政権の官房長官として睨みを利かせ、汚れ仕事を一手にやっていた人ですから、そういう人が表舞台に出てきて傍若無人に振る舞うことには空恐ろしさを感じる。第2次安倍政権は最低最悪と思っていましたが、下には下があるということを思い知らされました。携帯料金値下げや不妊治療の保険適用など、実利実益を目の前にぶら下げれば政権を維持できると国民をナメているのでしょうが、安倍政権から継承した“やってる感”だけでどこまで引っ張れるのか。目玉政策の『Go To キャンペーン』も混乱続きで、勝ち組だけがいい思いをする仕組みだという認識が広がっている。大マスコミは上から目線の懐柔策でコントロールできても、国会や世論はそんなに甘くありません」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 新型コロナウイルス感染拡大に目をつぶって経済を優先する「Go To トラベル」には当初から国民の不安が高かったが、スタート直前に東京を除外することになり、キャンセル発生の対応で混乱を招いた。その後も高級旅館に予約が集中して金持ち優遇の批判が起きたり、割引料金の上限がひっそり引き下げられていたりと制度設計の甘さが次々と露呈している。

 大体、コロナ禍で生活が困窮している国民は、優雅に旅行なんてしていられる状況ではないのだ。職を失い、瀬戸際に立たされている人もいる。満足に食事をとれない子どももいる。そういう困窮の実情が、菅に見えているのだろうか。


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10月20日(火) 安倍政権とは何だったのか―7年8ヵ月の総括(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』2020年11月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

2、何が長期政権をもたらしたのか

 国政選挙6連勝と内閣支持率の安定

 このような問題だらけの安倍政権が歴代最長になれた最大の要因は、国政選挙での6連勝でした。これらの選挙で一度でも負けていれば、これほどの長期政権にはならなかったでしょう。「すべては国政選挙のたびに力強い信任を与えてくださった、背中を押していただいた国民の皆様のおかげであります」と、安倍首相が辞意表明の記者会見で述べたとおりです。
 過去6回の国政選挙結果は図3(省略)のとおりです。自民党は2012年12月の衆院選で多数を回復して政権を奪還し、以後、5回の衆参両院での選挙に勝ちつづけました。2013年7月の参院選で勝利して「ネジレ国会」を解消し、2014年11月には「消費増税延期」をかかげて総選挙で大勝しています。2016年7月の参院選でも与党が勝利し、衆参両院で「改憲勢力」が3分の2を超えました。2017年10月の衆院選では、北朝鮮のミサイル発射と少子化という「国難突破」を掲げて解散し、小池東京都知事が結成した「希望の党」への参加をめぐって民進党が分裂するという混乱もあり、与党が3分の2を維持しています。
 このような選挙での勝利を支えたのが、安倍内閣に対する支持率の安定でした。『毎日新聞』の調査による第2次安倍内閣に対する支持率と不支持率は、グラフ(省略)のように推移しています。発足直後に70%という高さを記録して以来、下降しても回復し、平均して40%台を維持しています。
 内閣支持率が急減したのは4回あります。1回目は2015年から16年にかけて安保法制に対する反対運動が大きく盛り上がったときで、はじめて支持と不支持が逆転しました。2回目は2017年春から夏にかけてで、森友・加計学園問題や「共謀罪」の新設を含む改正組織犯罪処罰法への反対運動などを受けて支持率26%と最低になっています。2018年春が3回目の急落で、これは森友学園をめぐって財務省が決裁文書の改ざんを行っていたことが明らかになったためです。そして、4回目の急落が今回で、新型コロナウイルスへの対策の迷走が批判を浴び、辞任に結びつきました。

 民主党政権への失望と野党の対応

 民主党政権の経験やその後の民進党など野党の対応も、客観的には長期政権化を助けました。2009年に発足した民主・国民新・社民3党の連立政権は政権運営の未熟さや準備不足、経験の乏しさなどから国民の期待を裏切ったからです。その最大の問題が、民主党と自民党、公明党との間で交わした消費税増税についての「3党合意」でした。
 このような民主党への失望から自民党は政権に復帰し、安倍首相は「悪夢のような」と罵倒してその悪印象を振りまきました、支持率調査で、常に「他の政権よりよさそう」という回答が最も多かったように、相対的に「まし」だと国民に思い込ませたのです。
 国政選挙での野党の対応も、安倍首相を助けるものでした。もともと小選挙区制という選挙制度は多数党に有利ですが、野党がバラバラで立候補して競い合ったために自民党はますます有利になりました。制度の欠陥を克服するために野党は候補を一本化することが必要ですが、それが可能になったのは2016年7月参院選の1人区からです。
 2017年総選挙は小選挙区で野党候補を一本化して与党を追い詰める絶好のチャンスでした。自民党は2月に森友学園疑惑、5月に加計学園問題が表面化して支持率が急落し、7月の東京都議選では小池百合子都知事が率いる「都民ファーストの会」が躍進して都議会自民党は惨敗します。この時、安倍首相は最大の危機に直面しました。
 しかし、民主党から変わった民進党は、小池都知事の立ち上げた「希望の党」への合流を契機に分裂します。排除された枝野幸男代表を中心に立憲民主党が結成され、共産党の協力もあって一定の地歩を確保しますが、与党の大勝を許すことになりました。こうして、安倍首相は政権復帰以来、最大の危機を乗り越えることに成功したのです。

 人気とり、官邸支配とマスコミ統制

 安倍首相は極右勢力を強固な支持基盤とする「靖国派」として知られています。それは改憲への拘泥やアメリカ言いなりの安保政策に現れていますが、同時に世論受けする人気目当ての施策と強権的な手法を併用していた点を無視してはなりません。
 7年8ヵ月にわたる政権の前半から後半にかけて、イデオロギー優先の理念政治から人気取りのための利益政治へと重点が移動したように見えます。アベノミクスは反「緊縮政策」的色彩が強く、障害者差別解消法、ヘイトスピーチ対策法、部落差別解消推進法、アイヌ文化振興法などのマイノリティー支援のための法律を制定し、高等教育や幼児教育の一部無償化なども実行しました。「地方創生」「女性活躍」「働き方改革」などは看板倒れに終わりましたが、地方や女性、労働者に目配りしているという「やってる感」をアピールし、各層に配慮する姿勢を印象付ける効果がありました。
 同時に、このような政策的柔軟さは官邸支配と言われる強権的な排除や統制によって支えられています。敵と味方を区別して反対する人びとを敵視し、国会での審議を避け、平気でうそをいい、政と官の関係を歪めて「忖度」を招き、気に入らない記者を無視し、コメンテイターを交代させました。
 その結果、国会は行政監視の機能を弱め、公務員は公平・公正さを失い、メディアは自主規制して自由で中立的な報道姿勢を忘れてしまいました。このような「負の遺産」が、「安倍政治の継承」をかかげる菅新首相によって引き継がれ、さらに強化されることが危惧されています。
 それを許さないためにも、市民と野党の共闘によって安倍なき安倍亜流政権を打倒する必要があります。1年以内には必ず実施される解散・総選挙にむけて、準備を急がなければなりません。

 むすび

 来るべき総選挙は政権交代をかけた「天下分け目の合戦」となります。これははじめての野党共闘総選挙で、この共闘にはじめから共産党がふくまれているという点がこれまでにない新しさです。菅新政権の樹立とともに発足した新・立憲民主党は市民との共闘や共産党との連携を志向する野党第1党だという点で、以前の民主党や民進党とは異なっています。
 このようななかで、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」は、立憲民主党、日本共産党、社民党、国民民主党、れいわ新選組などに対して要望書を提出しました。これは4本柱15項目で、2019年の参院選前に市民連合と5野党・会派が合意した13項目の「共通政策」をさらに発展させたものです。
 コロナ危機を反映して「いのちと人間の尊厳を守る『選択肢』の提示を」との副題が付けられ、「その実現のために尽力するよう要望」しています。「利益追求・効率至上主義(新自由主義)の経済からの転換」「消費税負担の軽減」「原発のない社会と自然エネルギーによるグリーンリカバリー」「持続可能な農林水産業の支援」などもかかげられています。これにより「合戦の旗印」も明確になりました。
 次の総選挙を本格的な政権選択の選挙とし、安倍なき「安倍政治」に決着をつけなければなりません。市民連合の「要望書」にもあるように、それは「自民党政権の失政を追及する機会であると同時に、いのちと暮らしを軸に据えた新しい社会像についての国民的な合意、いわば新たな社会契約を結ぶ機会となる」のですから。そのチャンスは間もなくやってきます。


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10月19日(月)  安倍政権とは何だったのか―7年8ヵ月の総括(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』2020年11月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 「国民のみなさまの付託に自信をもってこたえられる状況でなくなった以上、総理大臣の地位にありつづけるべきでないと、判断しました。総理大臣の職を辞することといたします。」
 8月28日の記者会見で安倍首相はこのようにのべ、総理大臣を辞任する意向を明らかにしました。第1次安倍内閣の幕切れと同様の突然の辞意表明です。いずれも直接の原因は持病の悪化とされていますが、背景には政権の行き詰まりがありました。
 安倍首相の辞任後、後継として「安倍政治の継承」を公言する菅義偉官房長官が新首相に選出されています。安倍首相の連続在職日数は2822日で歴代最長となり、第1次政権を含む通算でも最長の3188日になりました。過去のどの首相よりも長い在職記録を打ち立てたわけです。しかし、その実態はこのような記録に値するものだったのでしょうか。

1、最長にして最悪・最低の政権

 アベノミクスの虚妄

 第2次安倍政権は経済政策である「アベノミクス」と「三本の矢」をかかげ、円安の解消、株価の回復や雇用関係の改善を追い風として「一強」体制を築きました。経済は外交と共に安倍首相の得意分野とされています。しかし、実際にはどうだったのでしょうか。
 たしかに、1万円前後だった株価は2倍以上の2万3000円前後に上がり、大企業の内部留保は45%も増えました。名目賃金も上昇し、雇用も改善されました。
 しかし、その内実は実体経済を反映しない金融バブルにすぎず、大企業と富裕層をもうけさせ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の積立金運用による人為的な株高は将来的な暴落が懸念されています。アベノミクスがめざしたデフレ克服の2%の物価目標は達成されませんでした。
 少子高齢化は止まらず、労働人口は減り、実質賃金と可処分所得は低下し続けています。雇用は改善されましたが、それは非正規雇用が増大したからです。2001年4月には5%から8%へ、2019年10月にはさらに10%へと消費税を引き上げ、増税額は計13兆円となって国民の暮らしと経済を破壊し、貧困と格差を拡大しました。
 また、高齢化に伴う社会保障費を削り、生活保護費も連続的に引き下げてきました。年金、医療、介護なども削られ、コロナ禍のもとで医療体制の脆弱性と高齢者福祉の劣悪さが露わになっています。また、労働政策でも高度プロフェッショナル制度という美名のもと、過労死を促進する残業代ゼロ制度を含む「働き方改革一括法」を成立させました。

 外交・安保政策の漂流

 「日本外交の基軸」とされている日米関係では「血の同盟」を強化し、譲るばかりの「言いなり外交」に終始しました。特定秘密保護法や集団的自衛権の一部容認を定めた安保法=戦争法の制定、武器輸出三原則の撤廃にF35戦闘機など米国製兵器の爆買いを強行し、アメリカとともに海外で戦争する国づくりをすすめてきました。
 なかでも際立つのが、沖縄県民の民意を無視した名護市辺野古での米軍新基地建設です。県知事選挙や県民投票などで何度も示された「ノー」の声を無視し、2015年10月以降、歴代政権ではじめて土砂投入を強行したのが安倍政権でした。
 ロシアのプーチン大統領と個人的な関係を強めたにもかかわらず、領土問題を解決できなかっただけでなく「4島返還論」から事実上の「2島返還論」に後退し、北方領土の実効支配を強める経済協力を約束させられる始末です。
 中国にたいしては、覇権主義的な行動や国内での報道の自由の制限、香港やウイグルでの人権弾圧などの問題に毅然とした批判ができず、新型コロナウイルス対策でも中国からの入国制限が遅れました。高まる米中対立でも独自の役割をはたせずにいます。
 徴用工問題と貿易制限をめぐって韓国とは戦後最悪の状態となり、打開の見通しが立っていません。北朝鮮とも核開発とミサイル防衛を「国難」宣伝の口実に利用するばかりで、「政権の最重要課題」としてきた日本人拉致問題について新たな進展はありませんでした。

 立憲主義の破壊と政治の腐敗

 過去のどの首相よりも安倍首相が強く推し進めたのが、立憲主義と民主主義の破壊であり、国政の私物化と官邸支配による官僚とマスコミに対する統制でした。これによって議会制民主主義の土台が掘り崩され、国会は空洞化し、「ヒラメ官僚」と「忖度政治」がはびこり、ジャーナリズムが委縮して報道の自由が脅かされています。
 安倍首相は2014年7月の「閣議決定」で集団的自衛権の行使一部容認に道をひらきました。内閣法制局長官を交代させて180度転換する「解釈改憲」でした。これに基づいて15年9月に制定されたのが、安保法制=戦争法です。これは法の制定によって憲法を空洞化する「立法改憲」です。
 さらに、2017年5月3日には「2020年を新憲法施行の年にしたい」と表明し、9条に自衛隊を明記して海外での武力行使を可能とするねらいを明らかにしました。これは憲法の条文を書き換える「明文改憲」にほかなりません。広範な国民の運動でこの目論見は挫折しましたが、後継の菅新政権もこの路線を継承しようとしています。
 安倍政権のもとで進行した国政の私物化と政治腐敗もかつてないものでした。「森友・加計学園」疑惑、「桜を見る会」問題、ジャパンライフとの関係の疑惑はその代表的なものです。どれについても、安倍首相夫妻やその友人の関与が疑われ。国会での偽証、公文書の隠ぺいと捏造・書き換えなどが相次ぎ、それを悔やんで自死した財務省の職員さえでています。
 公職選挙法違反容疑で逮捕された河井克行前法相夫妻の買収事件と1憶5000万円資金疑惑、統合型リゾート(IR)誘致をめぐる秋元司議員の逮捕、選挙民買収疑惑の菅原一秀議員などのスキャンダルも相次ぎ、辞任した閣僚は10人を数えます。しかし、安倍首相は「責任はある」というだけで最後まで任命責任をとりませんでした。

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10月17日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月17日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「浮かれる国民 Go Toは強権政治の「パンとサーカス」」

 教育基本法14条は、特定政党を支持するなどの政治教育を禁じている。15日の毎日新聞には「思想統制のようで気味が悪い」「政府の対応は明らかにやり過ぎで国民目線からずれている」といった国立大教授らの声が掲載されていた。

 だが政府は「問題ない」との認識だ。15日の会見で加藤官房長官は「協力を求める趣旨で、強制を伴うものではない」「弔意表明を行うかは関係機関で自主的に判断される」と発言、内心の自由や教育の中立性の侵害にはあたらないと強調した。小渕恵三(2000年)、鈴木善幸(04年)、橋本龍太郎(06年)の過去の元首相の合同葬でも同様の対応をしたとして、「前例踏襲」であるとも説明した。

 政府は問題の沈静化に躍起のようだが、ならば過去には大きな問題にならず、なぜ今回はこれほどの大騒ぎになったのかをよく考えるべきだ。「政府方針に従わない官僚は異動してもらう」と言い放った首相が、学術会議の任命拒否で学問分野の人事にまで介入したのである。日本学術会議法という法律を無視するだけでなく、憲法が保障する「学問の自由」すら平気で侵す。法治主義をないがしろにする強権政権が、弔意表明は「要望であり強制ではない」と言い繕ったって、誰が信じられるものか。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「そもそも特定の政治家の葬儀に国が費用を出すのが間違いなんですよ。時代が変わってきている。宗教行事や特定の政治家の行事に対し税金を使うことに、もっと厳密になるべきだという民主主義意識の高まりもあります。学問の自由を脅かす政治介入があり、政権への批判や疑念が膨らんでいるところへ、今度は文科省が教育現場に弔意を求めた。反発を招くのは当然です。私は安倍政権が戦後最低最悪の政権だと思っていましたが、下には下がいた。安倍前首相は隠れて強権的な権力行使をしてきましたが、菅首相は堂々と表に出す。傍若無人というか自制心がないというか。本当に危険な人物です」

 ただでさえコロナ禍で9600万円もの国費をかけて合同葬を行うことには批判的な世論もあるのに、菅政権は何から何までトチ狂っている。


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10月16日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月16日付に掲載されたものです。〕

*記事「菅首相「国会答弁」を猛特訓 学術会議問題もはや説明不能」

 週刊文春によると、菅首相は今、「国会答弁」を猛特訓しているそうだ。帝国ホテルの会議室に秘書官と5時間も籠もっているという。

 首相周辺では、予算委員会を目立たなくする「ウルトラC」も模索されているようだ。

 「臨時国会に予算案は提出されませんが、さすがに予算委員会を開かないわけにはいかないでしょう。でも、菅さんの周辺は、少しでも菅さんの出番を減らしたいはず。本来、衆参2日ずつ計4日間、開くべきでしょうが、今回は1・5日ずつ計3日間に縮小することも考えているはず。時期も、アメリカ大統領選にぶつけるつもりでしょう。ニュースが大統領選一色になり、予算委員会の扱いは小さくなりますからね」(政界関係者)

 しかし、果たして姑息な手を使って乗り切れるのかどうか。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「トップリーダーの務めは、言葉の力で国民を鼓舞し、励まし、勇気を与えることです。しかも、このコロナ禍です。国民は不安を強め、倒産、失業、自殺が増えているのだからなおさらです。なのに、菅首相はいまだに所信表明もしていない。会見や国会から逃げるようでは、総理の資格はありませんよ」

 今ごろ、国会答弁の特訓をしているようでは話にならない。


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