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3月15日(日) 日本の政治を劣化させた元凶は21年前の政治改革だった [選挙制度]

 昨日の朝日新聞の朝刊の一面に大きく「安保法制 公明が大筋容認」という見出しが出ていました。いよいよ、集団的自衛権行使容認などの「戦争立法」が国会に提出されるようです。

 国会で審議されていた来年度予算案は衆院を通過し、参院に回されました。予算案の場合、衆院で可決されれば参院で可決されなくても30日経過すれば自動的に成立することになっています。
 今回の場合、3月13日に衆院を通過しましたから、4月11日には成立することになります。もはや、予算案を「人質」にとって審議を遅らせ、与党を追い詰めるという戦術はとれなくなりました。
 一時は、「政治とカネ」の問題で追及された自民党ですが、さし当り窮地を脱したようです。こうなったのは、補助金受給企業からの献金を受け取っていた政治家が次々に発覚して問題が拡散してしまい、加えて民主党の岡田代表にまで補助金受給関連企業からの献金が明るみ出て、民主党の腰が引けてしまったためでした。

 企業・団体献金を受けていれば、このような問題が生ずる可能性は避けられません。「知らなかった」と言って逃げられないような形で、現行法の「抜け穴」を塞ぐことが必要ですが、根本的には企業・団体献金をなくさなければなりません。
 もともと、政治改革が必要とされたのは金権・腐敗問題を解決することが目的でした。それを実現するために選挙制度を変え、政党助成金を導入した経過があります。
 しかし、選挙制度改革ということで小選挙区制を導入し、政党助成金の導入から5年後には廃止されるはずだった企業・団体献金はその後も残ってしまいました。その結果、日本の政治と政党は劣化し、「政治とカネ」の問題は解決せず。今日のような形で自民党内での一極集中と右傾化が進行してきたわけです。

 政治改革は失敗した、ということになります。現在、私たちが目にしている「政治とカネ」の問題の再現、「一強多弱」による野党の無力化と安倍首相の独裁化、改憲の危機の現実化と平和国家としてのあり方の大転換、キナ臭い空気の蔓延と戦争の足音の高まり、沖縄の民意無視による新基地建設の強行、福島での原発事故を忘れ去った原発再稼働への動きなど、現在の日本を覆っている暗雲は、このような失敗の帰結であったと言って良いでしょう。
 政治改革の失敗によって、安倍首相というモンスターが生まれました。その結果、平和と民主主義への脅威が、かつてなく高まっています。
 先の総選挙で自民党が小選挙区で得た有権者の支持(絶対投票率)は24.5%にすぎませんでした。有権者のたった4分の1の支持を得ただけで76%(小選挙区)の議席を獲得できるというカラクリに依存した多数支配は民主主義だと言えるのでしょうか。

 選挙自体が民主主義を破壊する制度に転嫁してしまったのが、今日の日本なのです。このようなインチキな制度を前提にした多数支配などに正当性はありませんし、民主主義と呼ぶこともできません。
 問題は、21年前の政治改革自体にあったのです。それこそが日本の政治を劣化させた元凶でした。
 「改革」とは「改悪」の別名にすぎませんでした。そのような言いかえによる誤魔化しに騙されてしまったツケを今、払わされているのではないでしょうか。

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12月3日(水) 日本政治の混迷と混乱の元凶は政治改革の失敗にある [選挙制度]

 土井たか子元社会党委員長がなくなりました。護憲と自民党政治を打破するために生涯を捧げられた土井さんのご冥福を祈りたいと思います。
 そのお別れの会で、河野洋平元衆院議長・元自民党総裁が、次のような発言をして注目されました。

 「私は土井さんをずっとみつめながら、尊敬しながら、政治活動をしてきましたけども、最後にあなたに大変申しわけないことをした。おわびしなくてはならない。謝らなければならない大きな間違いをした。
 細川護煕さんと2人で最後に政治改革、選挙制度を右にするか、左にするか、決めようという会談の最中、議長公邸にあなたは呼ばれた。直接的な言葉ではなかったけれども、『ここで変なことをしてはいけない。この問題はできるだけ慎重にやらなくてはいけませんよ』と言われた。あなたが小選挙区に対して非常な警戒心を持たれていた。
 しかし、社会全体の動きはさまざまな議論をすべて飲み込んで、最終段階になだれ込んだ。私はその流れの中で小選挙区制を選択してしまった。今日の日本の政治、劣化が指摘される、あるいは信用ができるかできないかという議論まである。そうした一つの原因が小選挙区制にあるかもしれない。そう思った時に、私は議長公邸における土井さんのあの顔つき、あの言葉を忘れることができません。」

 小選挙区制は、1994年に当時の細川首相と河野自民党総裁の合意によって導入されました。その時の衆院議長が土井さんだったのです。
 この時、土井さんは小選挙区制を警戒し、できるだけ慎重にやることを求めていたというのが、河野さんの証言です。そして、「今日の日本の政治、劣化が指摘される、あるいは信用ができるかできないかという議論まである。そうした一つの原因が小選挙区制にあるかもしれない」と、反省の弁を述べたわけです。
 河野さんは、これまで何度も小選挙区制は間違いだったと表明してきました。土井さんのお別れの会で、再び、その反省を明らかにしたことになります。

 ここで河野さんが述べられているように、今日の日本の政治の劣化や信用低下の背景には、明らかに小選挙区制の問題が大きく横たわっています。選挙制度が変わって小選挙区制が導入されなければ、日本の政治はこれほどに劣化せず、信用を失うこともなかったでしょう。
 小選挙区制によって選挙での投票は歪められ、投票しても「死票」となって当落に関係せず、少数の支持しか得られなくても絶対多数の議席を獲得できるような制度は、民主主義の名に値しません。このような選挙制度を認め、その維持・存続を許容するような人は民主主義の何たるかを分かっていないというべきでしょう。
 小選挙区制のおかげで民意と国会内での議席分布は乖離し、政党指導部の支配力は強まり、政治家の質は劣化し、政治への信頼は低下し続けています。このような選挙制度は一日も早く廃止されなければなりません。

 先日のブログで問題として指摘した多額の政党助成金の支払いも、政治改革の一環として選挙制度改革とともに導入されたものです。今日、その失敗は誰の目にも明らかになっています。
 小選挙区制が導入され政党助成金が支払われても、「政治とカネ」の問題は解決されず、政治への信頼は高まっていません。政治改革は失敗したのです。
 日本政治が陥っている今日の混迷から抜け出すためには、政治改革のやり直しが必要です。今回の総選挙を、それに向けての第一歩としなければなりません。

 そのためには、政治改革によって既得権益を得てきた政党や政治家を減らす必要があります。その点から言っても、自民党と自民党候補には決して投票してはなりません。

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11月29日(金) 参院選岡山選挙区の格差判決でついに出た違憲・選挙無効 [選挙制度]

 ついに出ました。参院選岡山選挙区の一票の格差をめぐる裁判で、違憲・選挙無効判決が。高裁レベルでは12年衆院選(2.43倍)を無効とした判断がありますが、参院選では初めてです。
 これで衆参両院ともに、選挙無効の判決が出たことになります。今後、最高裁でどうなるのか、注目されるところです。

 判決は区割りの規定を違憲と判断しましたが、無効訴訟は選挙区ごとに起こされていますので、対象となった岡山選挙区だけを無効としました。衆院の場合のように、一定の猶予期間の後に効力が発生する「将来効」ではなく、即時無効とした点も注目されます。
 それだけ厳しい判決だったと言えるでしょう。現行の選挙制度に対する司法の側のいらだちとそれを放置し続けてきた国会に対する厳しい批判が如実に示されています。
 ただし、被告の岡山県選挙管理委員会が上告するのは確実ですから、裁判はまだ続きます。この後、最高裁で確定しなければ同区選出の石井正弘参院議員(自民)の失職は確定しませんが、国会議員の正統性が大きく揺らいでいることは明らかでしょう。

 そのような正統性に疑義が持たれている国会で審議されているのが、特定秘密保護法案です。国民の知る権利や報道の自由を損ない、憲法違反の疑いが濃い法案の採決を、国民の声を無視する形で強行するようなことが許されるのでしょうか。
 議員の選出根拠と正統性を担保するための選挙制度について司法が「無効」だという判決を出しているのです。このような有害かつ無用な法案に時間を割いている余裕ないはずでしょう。
 比例代表的な制度に改める以外に、一票の価値の平等を完全に実現することは不可能です。やるべきことをやらず、やるべきでないことをやろうとしている国会の現状は極めて異常であると言わなければなりません。

 もはや、制度の骨格を維持したままで定数を削減するなどという小手先の対策は通用しません。衆参両院ともに、比例代表制的な選挙制度に向けて、直ちに抜本的な改革に着手するべきです。

 この記事を伝えた昨日の『東京新聞』の夕刊には、もう一つ、「陸自、独断で海外情報活動」「首相、防衛相 存在知らず」という注目すべき記事が出ていました。これは共同通信のスクープだと思います。
 陸上自衛隊の秘密情報部隊「別班」が勝手に海外でスパイ活動を行ってきたが、そのことは首相も防衛相も知らないという、驚くべき事実が暴露されています。本当なのでしょうか。
 すでに現状において、シビリアンコントロールを無視したこのような秘密組織が暗躍していたというのです。今後、どのような形で真相が明らかになっていくのか、大いに注目されます。

 なお、今後、以下のような講演会で話をする予定です。近くにお住まいで、関心のある方にご出席いただければ幸いです。

*11月30日(土) 午後2時から狛江市西河原公民館で、こまえ九条の会・平和憲法を広める狛江連絡会主催「集団的自衛権は憲法で許されるの?-許されると日本はどうなる?」
*12月4日(水) 午後6時半からさいたま市民会館うらわホールで、埼玉憲法会議主催「アベノ改憲暴走にストップを!-『戦争できる国』づくりは許さない」
*12月7日(土) 午後2時から世田谷区成城ホールで、世田谷9条の会主催「安倍首相の改憲戦略に立ち向かうために」
*12月8日(日) 午後2時から静岡市清水区生涯学習交流館で、清水区内9条の会主催「『戦争できる国』になっても良いのか-臨時国会をめぐる情勢と改憲の動き」
*12月15日(日) 午後1時から駒澤大学駒沢キャンパスで、基礎経済科学研究所主催「政治社会情勢の激変と労働組合運動の展望」
*12月21日(土) 午後1時半から茅野市で、茅野市9条の会主催「『秘密保護法』と『集団的自衛権』行使で日本はどうなるか」

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4月8日(月) まだある小選挙区制の問題点と「違憲」の意味 [選挙制度]

一昨日と昨日のブログで、小選挙区制の害悪について書きました。実は、それ以外にも問題点があります。
 それは、昨年末の総選挙で、特に顕著に示された問題点です。小選挙区制を続ければ、恐らく、同じような問題が繰り返されることになるでしょう。

 その一つは、政党や政治家のあり方を歪めてしまったということです。これは、1人しか当選できず、大政党に極めて有利な選挙制度だという特性から派生した問題点だと言えるでしょう。
 小選挙で当選するために、政党は大きくならなければなりません。このようにして二つの大政党を人為的に生み出すことも、小選挙区制を採用した目的の一つでした。
 そのために、政策や理念が曖昧な「選挙互助会」的な政党ができました。これが民主党であり、様々な政党・政派・潮流を糾合したために、きちんとした綱領も作れない、にわか普請の政党でした。

 第2に、このために政党・政策本位の選挙にはならなかったということもあります。小選挙区での当選を争ううちに「2大政党」の政策は似通ったものになり、政治家は自己の政治理念や政策よりも「当選できるかどうか」を優先するようになります。
 小政党は、小選挙区での当選可能性を高めるために、政党間での選挙協力や候補者調整を行ったりします。その結果、一致できる政治的主張や政策だけが前面に出るようになり、本来の各政党固有の主張は後景に退けられます。
 選挙でのマニフェストは一時的な約束事に過ぎなくなり、選挙後にはほとんど顧みられなくなってしまうということは、この間、私たちが目撃してきたとおりです。これでは、政党・政策本位の選挙になるはずがありません。

 第3に、「一票の価値」の是正が困難だということも、最近、注目されるようになりました。司法による「違憲状態」「違憲」「選挙無効」などの判決が相次いだからです。
 一つの選挙区に複数の定数があれば、その数を増やしたり減らしたりして、「一票の価値」の均衡を図ることが可能です。しかし、一人では定数をいじることができません。選挙区そのものにメスを入れるしかないのです。
 こうして、選挙区は切り刻まれ、行政区や生活圏とは無関係に区割りを決めざるを得なくなります。それでも平等にするのは難しく、苦心惨憺して決めても、人口移動によってすぐに不平等になってしまいます。平等にするには、このような制度をやめて比例代表に変えるしかありません。

 憲法には、前文の最初に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」と書かれています。衆参両院共に現在の国会は、ここで言うような「正当に選挙された」ものになってはいません。
 「違憲」判決が出るのは当然でしょう。そして、ここで言う「違憲」は、決して「一票の価値」に関してだけでなく、小選挙区制という制度の害悪や問題点をも含んでいるのだということを強調しておきたいと思います。

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4月7日(日) 再度確認しておきたい小選挙区制の害悪 [選挙制度]

 昨日の続きです。再度、小選挙区制の害悪を確認しておきたいと思います。
 昨日のブログでは「賛否を逆転させる可能性」について説明しました。今日は、それ以外の問題点について説明しましょう。

 ということで、第2に、「極めて少数の支持で多数を獲得できる」という点についてです。小選挙区は1人を選ぶ選挙ですから、相対多数になりさえすれば当選できます。
 例えば、10人の立候補者がいて、8人が等しく10%ずつの得票率、後の1人が11%でもう1人が9%の得票率であれば、11%を得票した人が当選します。多党乱立になり、候補者の数が増えれば増えるほど、この当選ラインは低下し、もっと少ない得票率でも当選できるでしょう。
 実際には、これほど沢山の人が立候補することは少ないかもしれませんが(前回、今回と東京1区では9人が立候補しています)、支持率が均衡する4~5人の人が立候補すれば20数%の得票率で当選できます。昨年暮れの総選挙では多党乱立となって自民党を利する結果となり、4割台の得票率(43%)で約8割(79%)の議席を獲得したことは、皆さんもよくご存知の通りです。

 第3に、「代表選出に関わらない投票(死票)が膨大に出る」という点についてです。これは、当選に生かされない「死票」が沢山出るということを示しています。
 上の例で、11%の得票率で当選した場合には89%の票が「死ぬ」ことになります。すべての選挙区でこのような事態が生ずれば、膨大な「死票」が出て、有権者の意思が代表に反映されないことになります。
 実際に、昨年の総選挙では、小選挙区で議席に結びつかなかった「死票」は合計で約3730万票にのぼり、死票率は56%と半数を超えました。選挙に投じられた半数以上の票が無意味になってしまうような仕組みが、「選挙制度」の名に値するでしょうか。

 第4に、「わずかな支持の変動で代表の構成が大きく変わってしまう」という点についてです。これも小選挙区制の特性で、そのために「オセロゲーム」のように勝者が入れ替わって「政権交代」が生じましたが、実は、そためにこそ、このような制度が導入されたという面もあります。
 たとえば、3人が立候補して、A候補が33%、B候補も33%、C候補が残りの34%を得票したとすれば、当選するのはC候補です。もし、次の選挙で、A候補が34%になり、他の2人の候補が33%であれば、今度はA候補が当選します。
 すべての選挙区で同様の現象が生まれれば、わずか得票率1%の変動で、すべての議席が入れ替わってしまうわけです。実際に、わずかな得票率の変動で、前々回の総選挙では自民大勝、前回は民主大勝で政権交代、今回は自民大勝でまたも政権交代となっています。

 実は、これ以外にも小選挙区制の問題点が明らかになってきています。導入されてから約20年、過去6回の選挙を踏まえたうえで、今日の到達点に立ってこれらの問題点について検証することが必要になっています。
 これらについても、日を改めて論ずることにしましょう。

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4月6日(土) 小選挙区制導入に責任のあるマスメデイアは廃止キャンペーンに取り組んだらどうか [選挙制度]

 昨日、研究所に日本ジャーナリスト会議(JCJ)機関紙部の方が見え、選挙制度問題について取材されました。機関紙にインタビュー記事を載せるのだそうです。

 マスメデイアの関係者がこのような形で選挙制度の問題を取り上げるのは、大変、結構なことだと思います。これに続いて、主要なマスメディアも小選挙区制導入に大きな責任があるわけですから、その廃止と抜本的な制度改革に向けてキャンペーンに取り組んだらどうでしょうか。「罪ほろぼし」のために……。
 メディアがまともな姿に立ち戻らなければ、国民からの信頼を失い、愛想を尽かされ、見放されてしまうと思います。それでなくても、インターネットの普及で新聞やテレビという従来のマスメディアの利用者は減り続けています。
 消費税の導入は、このような傾向をさらに強めるでしょう。義務的負担が増え、生活に余裕がなくなれば新聞を読む人も、テレビを見る人も減ってしまうのではないでしょうか。

 さて、昨日のブログで、「小選挙区制は、賛否を逆転させる可能性がある、極めて少数の支持で多数を獲得できる、代表選出に関わらない投票(死票)が膨大に出る、わずかな支持の変動で代表の構成が大きく変わってしまうなどの弊害」について指摘しました。これについて、説明しましょう。
 まず、「賛否を逆転させる可能性」についてです。たとえば、最も単純なモデルを示せば、下図のような有権者3人で構成される最小の選挙区が3つあるとします。
 有権者全体では○が4、●が5であるのに、各選挙区で1人ずつ代表が選ばれれば、○が2で●が1になります。全体では多数であった●が、小選挙区で選ばれると少数になってしまうのです。

 ○      ○      ●
 ↑      ↑      ↑
 ○      ○      ●
○ ●    ○ ●    ● ●

 これが、小選挙区のマジックとも言うべきものです。小選挙区で選んだだけなのに、多数が少数に、少数が多数に入れ替わってしまうのですから……。
 このような逆転現象は、理論的に可能性があるというにとどまりません。実際に、小選挙区制を採用しているイギリスの総選挙で1951年と1974年の2回、得票数と議席数が逆転するという実例がありました。
 また、2000年の米大統領選挙でもゴア候補がブッシュ候補より53万9947票も多かったのに、選挙人の数では少なくなり、ブッシュ候補が当選しました。これは、各州の選挙人団の票が勝者独占方式でしたから、小選挙区と同様の現象が生じたためです。

 ということで、この続きはまた明日。

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4月5日(金) 小選挙区制とその導入についてのマスメディアの責任も共に検証されるべきだ [選挙制度]

 「政治改革」後、すでに6回の総選挙が実施され、その結果、害悪や問題点は誰の目にも明らかになりました。このような「実験」を踏まえて、その結果どうなったかが検証されるべきでしょう。「政治改革」によって、政治は果たして「改革」されたのか、という検証が……。
 同時に、この制度についてのマスメディアの責任も検証されるべきです。その導入の旗を振ったマスメディアにも大きな責任があるのですから……。

 小選挙区制に数々の問題があり、大きな害悪を生むことは、すでに多くの国民の知るところとなっています。これについて、私もこれまで何度も書いてきました。
 ここでは一点だけ、そもそも選挙とは何かという原点から批判しておきましょう。小選挙区制は選挙の本質を歪め、最もふさわしくない制度だからです。
 選挙とは代表を選ぶ行為で、有権者が決定に直接参加できない間接民主主義に特有の制度です。有権者の代わりに代表が決定を行うわけですから、有権者と代表との間にズレや歪みが生ずることがあってはなりません。

 ところが、小選挙区制は、多数と少数を逆転させる可能性がある、極めて少数の支持で多数を獲得できる、代表選出に関わらない投票(死票)が膨大に出る、わずかな支持の変動で代表の構成が大きく変わってしまうなどの弊害があります。これについては、いずれ改めて説明することにしますが、このような弊害が明らかなのに、「政治改革」と称してこの制度が導入されました。
 しかも、その導入の先駆けとなったのが第8次選挙制度審議会で、そこには多くのマスコミ関係者が加わっていました。これは89年6月に発足し、会長の読売新聞の小林与三次社長はじめ、27人の委員のうち、11人が日本新聞協会の会長、各紙の社長、論説委員長、解説委員など、社論の形成に大きな影響を与える大手メディアの関係者だったのです。
 この8次審が90年に海部内閣に「小選挙区比例代表並立制」を答申しますが、これが小選挙区制導入の始まりになりました。その後、92年4月にこれらのメンバーと財界代表らが「民間政治臨調」を結成し、「政治改革」を推進する大キャンペーンを展開することになります。

 その結果、選挙制度が変わり、日本の政治は今日のような「焼け野原」になってしまいました。マスメディアは、戦争協力に引き続いて、またもや日本の荒廃に手を貸したと言うべきでしょう。
 それに対する反省はあるのでしょうか。今日の政治の劣化に対して、自らも大きな責任を負わなければならないという自覚を持っているのでしょうか。
 犯された過ちは、検証され、改められなければなりません。そのための材料は、豊富に存在しているはずです。

 6回も繰り返されてきた選挙において、小選挙区制はどう機能し、どのような問題を生み出したのか。その出発点に際してマスメディアが主張したメリットは実証されたのか、その主張と報道にはどのような誤りがあったのか、きちんと明らかにする調査報道が必要でしょう。
 そして、最悪の選挙制度である小選挙区制の息の根を止めてもらいたいものです。自らが生み出した「モンスター」を葬り去るのは、それを生み出した者の責任なのですから……。

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3月26日(火) 「選挙無効」判決に従って「一票の格差」を解消するには小選挙区制をなくすしかない [選挙制度]

ついに出ましたね。「選挙無効」の判決が。「勝訴」の垂れ幕や談話を用意していなかったそうですから、弁護団もこのような判決が出ることを予想していなかったということでしょうか。

 「一票の格差」が最大で2.43倍だった昨年12月の衆院選をめぐって弁護士グループが選挙の無効を求めていた訴訟で、広島高裁の筏津(いかだつ)順子裁判長は昨日、小選挙区の区割りを違憲と判断し、広島1区と2区の選挙を無効とする判決を言い渡しました。一票の格差をめぐる裁判は沢山ありますが、これまでは「違憲」が精一杯で、「選挙無効」の判決は初めてになります。
 ただし、混乱回避のために一定期間猶予する「将来効判決」が採用されました。新たな区割り作業の開始から1年となる今年11月26日を過ぎて、無効の効果が発生するというわけです。
 広島1区と2区で当選した議員は今すぐ資格を失うわけではありません。しかし、11月26日までに「一票の格差」が是正され、それに基づいて改めて選挙が行われなければ、議員ではなくなってしまいます。

 判決は、一票の格差が拡大する中で衆院選が実施されたことを重視し、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は悪化の一途をたどっている」と指摘しています。そのうえで、「選挙権の制約、民主的政治過程のゆがみの程度は重大で、憲法上、許されるべきではない。最高裁の違憲審査権も軽視されており、選挙は無効と断ぜざるを得ない」と述べ、格差を是正しなかった国会を厳しく批判しました。
 この判決について、被告の広島県選管は上告するとみられています。しかし、上告せず、この判決を確定させ、国会の怠慢を厳しく糾弾するべきではないでしょうか。
 また、もし舞台が最高裁に移ったとしても、最高裁はこの判決を覆すべきではありません。この判決を維持して、国会に対する司法の意志を明確にするべきでしょう。

この判決を受けて、安倍首相は小選挙区の「一票の格差」を縮める0増5減を早期に実現させるよう指示したそうです。しかし、それでも定数の不均衡は残り、0増5減では違憲状態の解消に不十分との判決もありますし、将来的に不均衡が拡大していくであろうことは明らかです。
 また、このような状態が生じたのは、昨年まで政権を担っていた民主党の責任でもあります。その民主党の細野幹事長は、「格差を是正をする一番スムーズな方法は定数をいじるということ」と述べ、「定数をいじるのに増やすという判断はどの党も取らないだろうから、削減という方法が一番早い。格差を是正すると同時に、その手段として定数削減を国民の要請でもあるのでしっかりやり切ることが重要」と語っています。
 このような論理で民主党は比例代表区の定数削減をめざしてきましたが、そのようなことで小選挙区での不均衡を解消することは全く不可能です。今の国会に提案されている自民党案も、かつて民主党が提案していた案も、どちらも「一票の格差」を解消することはできません。

 この問題を根本的に解決する手段は、小選挙区制をなくす以外にないということが、どうして分からないのでしょうか。比例代表制だけにすれば、このような問題はたちどころに解決できるのに……。
 広島高裁が出した「選挙無効」の判決は、現在の国会も、それを生み出した選挙制度も、ともに正統性を持たないということを明らかにしました。それを抜本的に改革し、比例代表制的な制度にすることこそ、このような司法の要請に応える唯一の道なのです。
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12月20日(木) 小選挙区制にこのような害悪があることはとっくの昔から分かっていた [選挙制度]

 今回の総選挙の結果を見て、小選挙区制というのはこんなにひどい制度だったのかと、改めて驚いた人は多かったことと思います。しかし、小選挙区制が今回明らかになったような弊害や問題点を数多く持っていること、民主主義に反する制度であること、したがって選挙制度としては最悪のものであるということは、ずっと前から分かっていたことです。

 たとえば、私は政治改革が問題となり、選挙制度を中選挙区制から小選挙区制と比例代表制を並立させた制度に変えようとした約20年前、『一目でわかる小選挙区比例代表並立制-新しい選挙制度であなたの一票はどうなる』(労働旬報社、1993年)という本を書きました。この拙著で、小選挙区瀬の問題点を列挙して、次のように主張しています。

 ……議会への民意の正確な反映は、憲法で保障された国民主権を具体化する上での基本的な条件です。それは、他のあれこれの問題と同列に論じられるようなものではないはずです。中選挙区制の「制度疲労」を言い、それに代えて小選挙区制を含む選挙制度を導入しようとする人びとは、この一番肝心なところに口をつぐんでいます。マスコミも、なぜか、ふれようとしません。
 民意に基づく政治が民主政治ということであれば、民意をゆがめ、無視するような制度は、民主政治における制度として、基本的な必要条件を欠いているということになります、たとえば、政権交代があったとして、それが民意をゆがめたり逆転させたりした結果であれば、このような政権交代もまた、民主的なものではないということになります。(209頁)

 また、初めてこの小選挙区比例代表並立制で行われた1996年10月の総選挙の直後、『徹底検証 政治改革神話』(労働旬報社、1997年)という拙著でも、「選挙の実際を見聞きして、『これではいけない。こんな選挙はできるだけ早く終わりにしなければ』という危機感を強く抱いたことを、正直に告白しなければなりません」として、次のように指摘しました。

 ……これほど「欠陥が浮き彫り」になった選挙も珍しいといえましょう。……一度実際にやってみて、これだけ害悪がはっきり出たのですから、「悪かったら直せばよい」と言っていた人は、「柔軟な発想」で、「欠陥が浮き彫りになったから、また手直しをする。制度とはそういうものだ。小選挙区制をやめなさい」と、先頭に立って論陣をはってもらいたいと思います。(124~125頁)

 さらに、「民意を反映しない小選挙区制はワースト制度―早急に改めるべきである」『日本の論点2011』文藝春秋社(2010年11月)という拙稿でも、次のように書きました。

 選挙の基本は、議会に民意の縮図を作ることである。そのような民意に基づいて政権を構成し、政治運営を行うことこそ、議院内閣制の本旨である。政治主導を言うのであれば、まず、「国権の最高機関」である国会と民意との距離を可能な限り縮めることから始めるべきだろう。比例代表定数の削減など、とんでもない。このような逆立ちした改革案は、国会の議席分布と民意との乖離を更に広げ、政治の閉塞状況を強めるだけである。
 国会を民意の縮図とするためには、民意を反映しない小選挙区制を改め、世界の先進国の多くと同様に比例代表制的な選挙制度に変えなければならない。そうすれば、選挙区定数(「一票の価値」)の不平等という難問もまた、たちどころに解決されるにちがいない。

 今年になってからも、「選挙制度改革をめぐる動き」『法と民主主義』2012年5月号(No.468)という拙稿で、次のように書いています。

 ……選挙とは、国会や議会でものごとを決める人を選ぶことだから、選挙にとって一番大切なのは民意をそのまま議会に反映させることであり、民意の縮図を作ることである。
 ところが、「政治改革」によって小選挙区制が導入され、選挙によって民意を集約しようとした。そのために、少数意見は選挙の過程で切り捨てられてしまい、議会には歪んだ民意しか出てこなくなった。民主党政権であれ自民党政権であれ、民意が反映されず、政治が国民の願いから乖離してしまう最大の原因はここにある。
 あらためて小選挙区制の害悪をあげれば、①大量の「死票」が出ることのほか、②「二大政党化」による小政党の排除、③理念・政策に基づかない「選挙互助会」的政党(民主党)の登場、④選挙での選択肢の減少、⑤風向きによる短期間での多数政党の交代、⑥大連立や翼賛化への誘惑と連立・連携の困難というジレンマなどがある。主要政党が二つであるため、政権の交代が政権の「キャッチボール」にしかならないという不毛性、政治の劣化と閉塞性は、まさにこのような小選挙区制の害悪から生じている。

 5月23日には、衆院政治倫理の確立・公職選挙法改正特別委員会に参考人として呼ばれ、国会でもこう陳述しました。

 小選挙区制は最悪の選挙制度であり、ぜひ廃止してもらいたい。
 小選挙区の制度的欠陥は第1に、多数と少数が逆転するからくりが仕組まれていることです。イギリスでは1951年と1974年の二度、総得票数と議席数が逆転しています。民主主義を口にするなら認めてはなりません。
 第2は、少数(の得票)が多数(の議席)に読み替えられるという問題です。2009年総選挙で、民主党は47%の得票率で74%の議席を得ています。
 第3に、多くの死票が出て選挙結果に生かされません。09年総選挙では、46%が死票になっています。
 第4に、「過剰勝利」と「過剰敗北」によって選挙の結果が激変します。
 第5に、政党規模に対して中立ではなく、小政党に不利になります。このように、小選挙区制は人為的に民意を歪める根本的な欠陥をもっています。
 実際にどのような問題が生じてきたか。政権の選択肢が事実上、2つしか存在しません。小選挙区で当選するための「選挙互助会」的な政党ができました。「風向き」によって短期間で多数政党が交代します。二大政党の間の有権者を奪い合うために相互の政策が似通ってくる。地域や民意とも離れ、議員の質も低下しています。
 ……
 比例定数の削減案も出ていますが、日本の国会議員は国際的に見ても多くない。現在より少なくするのは反対です。身を切る改革と言われているが実際は民意を切る改悪です。比例定数の削減は小選挙区の比率を高め、問題点や害悪を増大させるだけでしょう。

 今回の総選挙が始まってからも、このような問題が生じるであろうとことは明白でした。12月14日のブログ「今回の総選挙でも明らかになりつつある小選挙区制の害悪」で、私はこう書いています。

 総選挙の最終盤でも、自民党の好調さが伝えられています。このまま行けば、自民党は衆院でV字回復することになるでしょう。
 ……
 今回の選挙では、このような多数の政党が候補者を擁立する小選挙区が沢山あります。そこで、公明党のアシストを受けた自民党が評判の悪い民主党より相対的に多数の得票をすれば、当選できるということになります。
 このようにして、中小の政党に投じられた票は無駄にされるでしょう。今回の選挙では、今まで以上に「死票」が多く出ると予想されています。
 「死票」とは、議席に結びつかない票であり、議員を通じて国会に代表されることのない民意です。制度によって「殺されて」しまう民意であると言っても良いでしょう。
 このような状態を、いつまで続けるつもりなのでしょうか。これでは、せっかく選挙をやりながら、民意をドブに捨てているようなものではありませんか。
 たとえ、それが議席に結びついた場合でも、大きな問題があります。相対的に多数であるにすぎない得票を絶対的な多数に読み替え、有権者の意思を大きく歪めてしまうからです。
 民主党に嘘をつかれ裏切られて、懲らしめたいと軽い気持ちで自民党に投じられた票が、いつの間にか膨らんで巨大な議席を与えることになってしまいます。そうなってから、「そんなつもりではなかったのに」と慌ててみても、もう遅いのです。

 このように、小選挙区制の害悪を指摘し続けてきた私からすれば、「(得票数を)減らしたのに、(議席数を)増やした」という手品のようなとんでもない結果が生じても、何ら驚くには当たりません。「それ、見たことか」と言いたい気持ちでいっぱいです。
 しかし、本当は、このような予測が当たらなければ良かったのです。小選挙区制が導入されるときに主張されたメリットが全くの期待はずれで、懸念された弊害が増幅された形で明瞭になってしまったのは、日本政治の不幸であり、ひいては日本国民の不幸だからです。
 とはいえ、このような弊害が多くの国民の知るところとなった現在こそ、重要なチャンスが訪れたということもできます。この機会に選挙制度の抜本的な改革を行って小選挙区制を廃止すれば、このような日本政治と国民の不幸から抜け出すことができるかもしれないのですから……。

 この機会を逃すべきではありません。民意を大きく歪め、大量の「死票」を生んで民意を殺すような制度を廃止し、日本の政治に民主主義を取り戻すことこそ、新政権が取り組むべき最優先の課題ではないでしょうか。

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12月18日(火) 千葉4区での野田首相の当選を違憲・無効とするべきだ [選挙制度]

 「違憲状態」のままでの選挙がいかなる意味で正当性を持ち得るのか。今回の総選挙では、このこともまた深刻に問われる結果となりました。
 最高裁が「違憲状態」だとの判決を出し、選挙直前に「0増5減」を決めてお茶を濁したものの区割りを変える余裕がなく、「違憲状態」のままで衆院選が実施されたからです。

 このような、人口比例に基づかない選挙区の区割りで「一票の格差」が是正されずに実施された衆院選は違憲だとして、弁護士グループが一斉に提訴しました。東京1区など計27選挙区での選挙無効を求めたもので、全国14の高裁・高裁支部すべてに提出されています。
 昨年3月、最高裁は格差が最大2.30倍だった2009年の衆院選を違憲状態だと判断しています。今回も是正が間に合わないまま選挙が行われましたが、有権者の数が最も少なかった高知3区と最も多かった千葉4区の格差は2.43倍に広がりました。
 弁護士グループは、公職選挙法の規定に基づいて高裁と最高裁は百日以内に速やかに無効判決を出すべきだと主張しています。他方、別グループに属する広島県の弁護士らも、今回の衆院選の無効を求める訴訟を広島高裁に起こしました。

 「違憲状態」とした昨年の最高裁判決から1年半以上も経っています。すぐに是正に取り組めば充分に間に合ったはずですから、是正のための合理的期間は過ぎていると判断され、「違憲」とされても仕方ないでしょう。
 これまでの判例では、格差が著しく不平等な場合が「違憲状態」、その状態が相当期間続いている場合が「違憲」とされてきました。最高裁判決では衆院選についてこれまで「違憲」が2回、「違憲状態」が3回出ていますが、選挙を「無効」だとした判決はありません。
 今回も「違憲状態」から一歩進めて「違憲」判決が出る可能性が高く、「無効」判決が出る可能性も皆無ではありません。ただし、選挙を「無効」だとした場合、選挙後の首班指名や法律の制定など全ての根拠が失われることになります。

 最高裁は、一方では「無効」判決を出して立法府の怠慢を厳しく批判したいと考えても、他方では全体を「無効」とした場合の影響の大きさを考慮して躊躇するかもしれません。このジレンマを解決するには、大きな影響を与えない形で「無効」判決を出せばよいのです。
 選挙全体を無効とせず、特定の選挙区を選んで「違憲」かつ「無効」とし、当選を取り消すのです。その特定の選挙区としては、一票の価値が最も軽くなっている千葉4区が最適でしょう。
 ここでの選挙を「無効」とし、野田首相の当選を取り消すべきです。やろうと思えばすぐにできたはずなのに、消費増税への言い訳のために「身を切る改革」論を振りかざして野党が反対する比例定数の削減を抱き合わせ、「一票の格差」是正をサボり続けてきたのは野田首相ですから、当選無効のペナルティを課す対象としては最もふさわしいでしょう。

 これを「一罰百戒」とするべきです。裁判所は野田首相に厳しい罰を与え、立法府に対して怠慢をいさめ、小選挙区制の廃止など選挙制度の抜本的な改革を促すべきではないでしょうか。

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