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10月31日(火) 『しんぶん赤旗』に掲載された談話 [コメント]

〔以下の談話は『しんぶん赤旗』10月29日付に掲載されたものです。〕

 理念なき場当たり政権

 岸田政権の政治姿勢は、理念なき選挙目当ての場当たり的状況対応だと言えます。
 経済政策でも右往左往で根本的な改革にはほど遠いものです。「コストカット型経済の転換」と言いますが、30年間にどういう問題があったのかなどの総括はなく原因や責任については語りません。
 国民は、政権の姿勢を見抜きつつあります。「減税」の次は大軍拡のための増税が待っている。選挙が終わったら大増税が見え見えで、だから「減税メガネ」と言われるのです。
 補選の結果は、野党が連携して候補者を一本化すれば勝てること示しました。共闘による力合わせこそが自民党を追い込む最善の道で、分断は自民党を喜ばせるだけです。
 政策的にも政治的にも共産党がイニシアティブを発揮する局面です。消費税減税などを含む政策で先駆性を示し、野党共闘でもイニシアティブを発揮してきた、さらに機関車としての役割を発揮してもらいたいものです。 
 日本が戦争に突き進む中で「北極星」と言われた共産党の存在意義が、政策的にも政治的にも、大きくなってきていると思います。


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10月26日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月26日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:場当たりに混乱、錯乱かと周囲は懸念 突然「経済、経済」と力みだした岸田首相を見る目

 いくら岸田が「還元」を唱えても、ない袖は振れない。それでも政府は税収増の還元策として、所得税を1人当たり年4万円減税し、低所得や高齢の非課税世帯に7万円を給付する案を検討しているという。必要な財源は所得税分だけでも3兆円規模に膨らむ可能性がある。財政に余裕のない中、財源を赤字国債に頼れば、人気取りのツケを将来世代に回すだけだ。

 それなのに、岸田は23日の党役員会で「過去2年の税収増を分かりやすく国民に税の形で還元すべきではないか」と豪語。過去2年度分の税収の上振れ分を合わせると、優に12兆円超だ。はたして丸ごと国民に還元する気なのか。場当たり的な発言で、大風呂敷を広げるにも程がある。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「一国の総理にあるまじき無責任ぶりです。減税は法改正が必要で、実施は早くても来年夏ごろ。足元の物価高対策とはなり得ません。減税の期間も自民党内から『1年が極めて常識的』との声が上がり、終われば防衛費増額のための軍拡増税や、首相肝いりの少子化対策に伴う社会保険料の負担増が待っています。岸田首相の行き当たりばったりの減税は来年9月の総裁選での再選を目指し、今後1年の間に断行したい解散総選挙対策の域を出ない。選挙の前は票欲しさの減税、選挙が終われば増税とは、見え透いた狙い。本気で物価高による国民の負担を緩和したいなら、将来の負担増をやめればいいのです」

 岸田は還付金詐欺よりタチが悪い「還元詐欺師」のそしりを免れない。

 9月の内閣改造・党役員人事でも、最大派閥の安倍派の実質オーナーである森元首相の顔色をうかがって、覚えめでたい「5人衆」を全員留任。その一方でライバルたちをまるめ込む。来秋の総裁選に出馬できないように茂木幹事長を留任させ、河野デジタル相と高市経済安保相を閣内に取り込んだ。

 そんな権力欲ムキ出しで自分のことしか考えていない薄気味悪さから世論は離れていっているのに、「増税」イメージを払拭すれば支持率は回復すると思い込んでいるフシがあるから、岸田は相当オメデタイ。その全てがズレまくっている。

 「本来の物価高対策は金融緩和の修正です。輸入品や資源の価格を高騰させる円安政策を放置したまま、減税を実施しても効果は限定的ですが、岸田首相はわが身可愛さゆえに決断できない。安倍派に気兼ねし、安倍政権を支えてきた強固な保守層の支持を失うのが怖いからです。それが自己保身首相の限界です」(五十嵐仁氏=前出)

 還元詐欺に注がれている冷めた視線に気付いていれば、岸田の選択肢は一つ。退陣あるのみだ。


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10月21日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月21日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:こんな経済対策ではどうにもならない 中東戦争恐慌と迷走日本の今後

 民主主義のチャンピオンだったはずの米国が分断と瓦解の危機に瀕し、ロシアとウクライナの戦争も中東情勢も先行きが見通せず、世界は混迷を極めている。問題は、こういう非常時に米国に付き従うだけの日本でいいのかということだ。

 その日にもイスラエルがガザに地上侵攻を始めようかと国際社会の緊張が高まっていた16日に都内のスーパーマーケットを視察して、「野菜が高くなっている」などと能天気に話していた岸田は、さすがにマズイと思ったのか、17日から中東諸国の首脳らとの電話会談を始めた。

 すでにエジプトのシシ大統領やサウジアラビアのムハンマド皇太子、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長ら6つの国・組織の首脳と電話会談を行ったが、当事国のイスラエル、パレスチナ自治政府とは話ができていない。

 「やってる感をアピールしているだけなのです。本来なら、イスラエルとアラブ諸国の双方と関係を積み上げてきた日本の立ち位置を生かして、緊張緩和を主導することも可能なはずです。イランとも独自のパイプを維持しているし、今年はG7の議長国でもある。ところが岸田首相は、イスラエルの同盟国である米国の顔色をうかがって、主体性のある外交を展開することができない。自分の政権延命しか考えていないからです。これは経済対策にも通じるところで、国民の生活支援より支持率アップが目的になっている。こんな政権が続けば、国民は奈落の底に突き落とされてしまいますよ」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)


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10月20日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月20日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:有権者はちゃんと見抜いている「増税メガネ」の「国民に還元」という大ボラ

 物価高は食品やエネルギーだけじゃない。交通費などのサービス価格を含め、ありとあらゆるものが値上がりし、庶民があえいでいるのに、政治はこんなドタバタ劇をやっている嘆かわしさ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「見え透いたアピールで茶番です。『与党の調整を乗り越えて、首相がイニシアチブを取って減税に踏み込んだ』というシナリオなのでしょう。岸田さんは『増税クソメガネ』という悪名をかなり気にしているようですからね。しかし、今ごろイニシアチブを取ったとしても周回遅れ。物価高に苦しむ国民のことを思えば、夏には対策を打っていていいはずです」

 結論を言えば、「減税」は世論を振り向かせる“マジックワード”。岸田がこの言葉にこだわるのは、解散戦略も睨んで政権浮揚や支持率回復につなげられると考えているからだ。つまり、政権維持や保身が目的で、国民生活のことなどこれっぽっちも頭にないからなのだ。

 前出の五十嵐仁氏が言及した通りで、岸田が「税収増を国民に適切に還元する」と言い出したのは、「メガネベストドレッサー賞」政界部門に輝いた自分が「増税メガネ」と揶揄されるのに耐えられなかったからだろう。「レーシックでもすればいいのか?」と腹を立てていたとも報じられた。要は「減税」はプライド回復のためであり、人気取りのため。支持率対策から始まった話なのだ。

 「骨太の方針」の“目玉”として掲げた「少子化対策」の財源はどうなったのか。これだって、何らかの増税や事実上の増税である社会保険料の負担増が有力とされる。「大増税政権」が「増税メガネ」の汚名返上のために、国民をごまかし、「減税」をもてあそぶのはやめて欲しい。

 「たとえ今回、何らかの所得減税が決まったとしても、その減税分は後で丸々増税分となって払わされることになる。朝三暮四ならぬ、『朝二暮五』で、将来の増税分の方が規模も大きくなって、国民の背中にのしかかってくるのです。減税の甘い言葉に騙されてはいけません。岸田首相は『今だけ、ここだけ、自分だけ』の人。当面を乗り切るだけの弥縫策を連発させる中身のない空洞政権です」(五十嵐仁氏=前出)


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10月15日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月14日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:ここにも安倍以来の政治劣化 大義なき解散権を振り回す自民、煽るマスコミ

 こんなチンケな男が解散権を振り回し、政界全体が右往左往しているのだから、安倍政権以降に加速した日本政治の劣化も、行き着くところまで行ってしまったのではないか。

 岸田首相がふざけているのは、解散権を煽る一方で、国会をトコトン軽視していることだ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「安倍政権以降、政府による国会軽視が急速に進んだのは間違いありません。一国のトップが国権の最高機関である国会を軽く扱い、なんでもかんでも閣議で決めることがまかり通るようになってしまった。岸田政権もまったく同じです。国論を二分するテーマだった安倍国葬を国会に諮ることなく閣議で決定しています。敵基地攻撃能力の保有を明記した『安保3文書』の改定も閣議で決定し、国会審議は後回しだった。しかも、敵基地攻撃について国会で聞かれても『手の内を明かすことになる』と説明しようともしない。その挙げ句、解散をにおわせて国会を揺さぶっている。行政権が肥大化し、国会から議論が消えてしまった状態です」


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10月14日(土) 暴走を続ける岸田大軍拡政権に引導を渡そう(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『東京革新懇ニュース』第486号、10月5日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 時代逆行の人権と民主主義の蹂躙

 これほど恥ずかしいことが、これまであったでしょうか。5月に広島で開かれた先進国首脳会議(G7)の直前、日本以外の6か国とEUの駐日大使から性的少数者(LGBTQ)の人権を守るための法整備を促す書簡が届けられたからです。通常国会では理解増進法が成立しましたが、「不当な差別はあってはならない」などと修正され、「差別増進法」に歪められてしまいました。
 7月には国連の人権理事会作業部会によって調査団が派遣され、ジャニーズ事務所をめぐる少年タレントに対する性加害が取り上げられて注目されました。しかし、調査内容はそれにとどまらず、女性、性的少数者、障害者、アイヌなどの先住民族、被差別部落、労働組合、難民や技能実習生など200項目に及んでいます。これだけ幅広い分野で、人権侵害の疑いがあるというわけです。
 通常国会で成立した改定難民認定法も難民の人権を侵害する内容でした。ジェンダー格差の点でも日本は146か国中125位で、政治分野では138位にまで低下しています。平等実現には政治の意思が重要ですが、その分野でこそ女性の地位が決定的に低いという点に大きな問題があります。
 報道の自由度でも日本は26位でG7参加国では最低です。テレビ放送については放送法の解釈変更によってメディア支配を強めようとしていた総務省の内部文書が明らかになりましたが、高市元総務相はうやむやにしてしまいました。マスメディアの権力への監視や政権への批判力も弱体化し失われる一方です。
 岸田首相は折に触れて「法の支配」や「自由で開かれたインド太平洋」「先進国との価値観の共有」などと繰り返しています。しかし、法の土台である憲法をないがしろにし、少数者の人権や報道の自由を踏みにじっているのが実態です。他の先進国と価値観を共有せず、時代の流れに逆行しているのが岸田政権の姿なのです。
 今年の9月1日は関東大震災から100年で朝鮮人などに対する虐殺事件からも100年を迎えました。小池百合子東京都知事は今年も虐殺犠牲者に対する追悼文の送付を見送り、松野官房長官は記録が「政府内に見当たらない」と発言しています。歴史の事実を直視せず、加害の歴史への責任を回避しようとする点でも、他の先進国とは異質で時代逆行の恥ずかしい姿だというしかありません。

 岩手と立川の教訓に学ぼう

 日本は政治でも経済・社会の面でも、先進国ではなくなりつつあります。政治改革・行財政改革・構造改革など、あらゆる改革が失敗続きだったからです。これからも、平和で豊かな希望の持てる国づくりは期待できません。岸田政権の下で、政治を変えなければ生きてゆけないギリギリの崖っぷちへと、私たちは追い込まれてしまいました。
 政治を変えてこのような苦境を打開する唯一の道は、市民と野党の共闘にしかありません。それはいかに困難でも、そこにしか出口がないのであれば、それを目指すしかないのです。最近行われた岩手県知事選と立川市長選は、このような教訓と展望を示しています。
 岩手県知事選で当選した達増拓也知事は、立憲民主を基礎に国民民主や共産、社民などの県民連合が大きな力になったと述べています。立川市長選でも元立憲民主党都議の酒井候補が約1600票差で当選しました。その結果、世田谷・中野・杉並・武蔵野・小平・多摩・立川など東京西部で野党共闘の非自民首長が誕生しています。
 今年の秋には岸田政権を追い込んで解散・総選挙を勝ち取ることが必要です。来年7月には東京都知事選もあります。これらを見据えた市民と野党の共闘を草の根から再構築するために、地域や職場での共同と連携に向けての努力が欠かせません。
 立憲民主の支持団体である連合には、イデオロギー的な偏見を捨てて共闘を認め、政治や選挙については立憲民主の自主性に任せて余計な口出しをしないという節度ある対応を期待したいと思います。働く人々の利益実現や働くルールの確立を目指すという点では、全労連や共産党との大きな違いはないのですから。
 「新しい戦前」が懸念されている昨今ですが、戦前にも「反資本主義、反共産主義、反ファシズム」という「三反主義」を掲げて共産党を排除し、大政翼賛会に合流して侵略戦争に協力した無産政党がありました。社会大衆党です。立憲民主や国民民主にはこう言いたいと思います。このような戦前の過ちを、二度と繰り返すなと。

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10月13日(金) 暴走を続ける岸田大軍拡政権に引導を渡そう(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『東京革新懇ニュース』第486号、10月5日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 空振りに終わった内閣改造

 これほど評判の悪い内閣改造が、これまであったでしょうか。与党からも落胆の声が上がっているようです。「通常は『ご祝儀』を含めて改造で少しプラスになるものだが……。改造が評価されていない」と。
 毎日新聞の調査では26%あった内閣支持率が1ポイント下落して25%となり、過去最低に並んだと言います。ご祝儀どころか、罰金を取られたようなものです。いつまで続けてほしいかとの問いに「早くやめてほしい」との答えが51%で最多となっています。
 岸田首相は来年秋の総裁選挙に向けて、刷新感やイメージアップのために5人の女性閣僚を起用しました。しかし、麻生派会長の麻生太郎副総裁、茂木派会長の茂木敏充幹事長、安倍派幹部の松野博一官房長官ら「骨格」がそろって留任し、枝葉は変えても幹は変わらず同じ形に見えます。
 女性5人の起用について、岸田首相は「女性ならではの感性や共感力の発揮に期待したい」と述べ、個々人の資質や専門性を評価したものではなかったことを吐露しています。副大臣と政務官54人の人事では派閥順送りの推薦をそのまま受け入れたため、初めて女性がゼロになって大きな批判を浴びました。
 選挙対策委員長に小渕優子元経産相を起用したのも問題になっています。自身の政治団体をめぐる不明朗な会計処理が発覚し、秘書2人が有罪となって大臣を辞任した過去があるからです。このとき家宅捜索前にパソコンのデータを保存するハードディスクに電気ドリルで穴を開けたことが報じられ、「ドリル優子」などと呼ばれました。
 このように、岸田内閣の改造は不発に終わっています。自分の都合ばかり優先した内向きの人事だったからです。マイナンバーカードやマイナ保険証の強要、福島第1原発の汚染水の放出、事実上の消費増税となるインボイスの導入、県民の声を無視して強行している沖縄の辺野古新基地建設など、国民の声の無視も目に余ります。支持率が上がらないのも当然でしょう。
 特にマイナカードをめぐっては、別人の公金受取口座を誤登録して個人情報が漏洩した問題で、デジタル庁と国税庁が政府の個人情報保護委員会から行政指導されました。健康保険証の医療情報とのひもつけミスも8400件以上確認されています。トラブルは底なしで、制度の欠陥は明らかです。国民への強要を止め、保険証の廃止を撤回するべきでしょう。

 前のめりになっている改憲・大軍拡

 これほどひどい発言が、これまであったでしょうか。憲法違反の軍事と戦争への前のめりもこれまでになくひどいものです。自民党の麻生副総裁は台湾を訪問し、有事の際には実際に「戦う覚悟」が抑止力になると講演しました。戦争や武力の行使だけではなく武力による威嚇も「放棄」した憲法9条を持つ日本の与党幹部として、断じて許されない発言です。
 先の内閣改造でも、改憲・軍拡の推進に向けての布陣が鮮明になっています。これまで自民党の憲法改正実現本部事務総長代行を務め、安保3文書の取りまとめや殺傷兵器の輸出を主張してきた木原実氏を防衛相に起用し、自民党の憲法改正実現本部事務総長や衆院憲法審査会で与党筆頭理事として改憲の旗を振ってきた新藤義孝氏を入閣させました。改憲タカ派の高市早苗経済安全保障担当相と萩生田光一政調会長も留任しています。
 来年度予算の概算要求でも防衛費の突出は顕著で、今年度を1兆円も上回る7.7兆円に達しました。安倍政権時代の1.5倍にもなる額です。防衛予算は2020年に文部科学省の予算を上回り、来年度予算では1兆8000億円もの差がついています。教育より軍事を優先する岸田政権の姿勢を象徴する異次元の大軍拡予算になりました。
 しかも、額を明示しない「事項要求」が多用され、さらに増えることは確実です。全国の自衛隊施設の強靭化、陸海空3自衛隊の統合的な運用のための統合司令部創設、日米融合の統合防空ミサイル防衛(IAMD)の本格的な強化のための予算なども計上されています。実際に戦える自衛隊に向けて着々と手が打たれているというわけです。
 外交面では、8月の日米韓首脳会談で首脳・外相・防衛相・防衛担当者による会談を毎年定期開催することが合意され、3か国の軍事同盟体制の強化が図られました。岸田首相の北大西洋条約機構(NATO)への急接近、日米韓による「ミニNATO化」、イギリスなどNATO加盟国はじめオーストラリアやインドなどクワッド加盟国との軍事協力も進んでいます。
 改憲・大軍拡を阻止して憲法の平和原則を守る課題は、日本の安全を守るうえで急務になっています。同時にそれは、日本周辺の緊張を緩和して安全保障環境を改善するために不可欠の課題でもあります。岸田大軍拡の内容や実態を学び、保守層や無党派層を含め、戦争だけはだめだという人々を幅広く結集することが今ほど大切になっているときはありません。

 混乱と危機に瀕する国民生活

 これほど酷い混乱と危機が、これまで国民生活を脅かしたことがあったでしょうか。物価高の大波が押し寄せて国民の生活と営業を直撃しています。それでなくとも、コロナ禍による外出制限や行動抑制によって国民生活は大きな困難にさらされ、経済は大打撃をこうむってきました。
 世界も同様で、100以上の国や地域では消費税を引き下げて生活を支える措置をとっています。しかし、岸田政権は税金を下げるどころか、10月からは事実上の消費増税となるインボイス制度を導入しようとしています。個人事業主やフリーランス、零細企業は大きな打撃を受け、廃業や倒産が続出するのではないでしょうか。
 このような困難に拍車をかけているのがアベノミクスの失敗です。インフレになれば物が買われるから景気が良くなるというリフレーション理論や、富める者が富めば貧しい人にもおこぼれが回るというトリクルダウン理論は幻にすぎませんでした。日銀による異次元の金融緩和で円安が進行し、ウクライナ戦争による物資不足とも相まってガソリンなど生活必需品の価格高騰が止まりません。
 福島第1原発の汚染水放出に対して中国は日本の水産物の輸入を全面的に禁止する対抗措置を取りました。岸田政権が「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という約束を破り、福島の漁業者の了解だけでなく中国に対する根回しもせずに一方的に放出を強行した結果です。「風評」被害対策だけでなく、このような「実害」に対しても解決のための外交努力が欠かせません。
 このようななかで日本の国力は低下し続け、国内総生産(GDP)でドイツに抜かれて第4位になろうとしています。1人当たりではすでに27位と過去最低で、国際競争力では35位という有様です。実質賃金は低迷し、税金と社会保険料の負担は増すばかりで、貧困率は15.4%とG7加盟国で最悪になりました。
 これからも収入は増えず、軍拡のための大増税や少子化対策を名目とした社会保険料の引き上げが予定されています。これらを合わせた国民負担率は50%に近づいており、江戸時代の「五公五民」に逆戻りしそうです。
 食料自給率も38%にすぎずエネルギー自給率は12%、物価の高騰で食の窮乏化が深刻になっています。民間のフードバンクで命をつなぎ、子ども食堂に頼るのは子どもだけではありません。食料支援に学生や若者が列をなしています。衣食住などの生活必需品が満たされない絶対的貧困が再び頭をもたげ始めました、
 これからの日本は「物の豊かさ」ではなく「心の豊かさ」を求める時代に変わっていくと主張された時もありました。もはや絶対的貧困は解決され、これからの問題は相対的貧困だと言われていた時もありました。そんな時代が懐かしくなるような、深刻な貧しさが私たちの前に立ち現れつつあります。


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10月11日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月11日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:時代遅れのイベントに国民負担増の無間地獄 岸田首相よ、減税の前に大阪万博の中止だろう

■減税は法人と一部の特権階級だけ

 岸田は今般の経済対策について、「税制、給付、社会保障におけるさまざまな軽減措置、インフラ投資、その他あらゆる手法を動員して思い切った対策にしたい」と言っているが、これまでブチ上げてきた「新しい資本主義」は新しくなく、「異次元の少子化対策」がちっとも異次元じゃなかったことを考えれば、「思い切った対策」も推して知るべしというものだ。

 「減税といっても、設備投資減税や賃上げ税制など法人向けのメニューか、ストックオプション減税のような一部の特権階級が対象のものばかりで、一般国民にはほとんど関係ない。『増税メガネ』、さらには『増税クソメガネ』という不名誉なあだ名を返上したくて、減税を強調しているのでしょうが、広く国民全体に恩恵がある消費税減税は決してやろうとしない時点で、岸田首相が言う『減税』はマヤカシなのです。それは、反対の声が多いインボイス制度を強行して消費税の税収を増やそうとしていることを見ても分かる。本気で国民負担を減らす気があるのなら、減税アピールの前に巨額の税金を投入する大阪万博の中止や縮小を決めるべきではないでしょうか」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 準備の大幅な遅れが問題になっている2025年大阪・関西万博の会場建設費は、18年当初の見積額が1250億円だったが、20年時点で1850億円に上振れ。建築資材の高騰や工事の遅れでさらに膨れ上がる見込みだ。この建設費は国、大阪府市、経済界が3分の1ずつ負担することになっている。つまり、3分の2が税金で賄われるのだ。建設費が上振れすれば、その分、国民負担も増える。

 「万博などという時代遅れのイベントにどれだけ税金を積み増すのか。これだけ遅れが出ているのに無理して開催したところで、五輪も万博も利権の祭典でしかないことに国民は気づいている。得をするのは一部のステークホルダーだけで、多くの国民にとっては負担増になるだけなのです。岸田政権は一事が万事で、支持率目当てで一部の支持層に税金をバラまき、結果として国民負担を増やしている。20兆円規模の補正予算を組んでせっせと法人減税をするなどという話は典型です。20兆円は国債発行で賄うのでしょうが、それは将来的に国民負担になるだけなのです。1兆円減税するから後で20兆円払えと言っているようなもので、デタラメもいいところ。岸田政権の『減税』にダマされてはいけません」(五十嵐仁氏=前出)

 岸田は8月末の万博関係者会議の席上、「内閣総理大臣として政府の先頭に立って取り組む」とか言っていたが、それだけの権限があるのなら、先頭に立って万博中止を決めたらどうなのか。マヤカシの減税アピールより、よほど支持率アップに効果があるのではないか。

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10月9日(月) 『しんぶん赤旗』日曜版に掲載された談話 [コメント]

〔以下の談話は『しんぶん赤旗』日曜版10月8日号に掲載されたものです。〕

 統一協会 自民に政策指南
 中曽根内閣 提言受け次々実行
 「ここまで深く影響受けていたのか」と驚いた

 「80年代ビジョンの会」が、中曽根内閣に出した「自民党と新内閣への提言」を読んで、「日本の保守政治はここまで深く統一協会の影響を受け、指南されていたのか」と驚きました。ビジョンの会の提言は多くがその後実現されているからです。
 提言は「日韓関係」の「緊密化を図ること」を求めています。当時、首相だった中曽根氏が訪米前に訪韓し、軍事独裁政権の全斗煥大統領と会談したことが大変注目されました。歴史教科書で日本軍国主義のアジアへの「侵略」を「進出」に書き換えたことが大問題となり、日韓関係が悪化していた時期です。全斗煥大統領に尽くしていた文鮮明=統一協会が、中曽根氏に「修復」を求めたためです。
 中曽根内閣は「ブレーン政治」だと言われ、いろんな審議会をつくって識者を集め、反国民的な政策を実行していきました。その「ブレーン」には、ビジョンの会のメンバー=統一協会と関係がある学者、財界人、メディア幹部らがずらりと並んでいる。当時は私もわかりませんでした。驚くべきことです。
 中曽根氏は自民党内では少数派閥で、党内基盤はかならずしも強くありませんでした。だから統一協会・勝共連合の力を頼りにし、期待したのではないか。統一協会側には、政権中枢に浸透できるというメリットがありました。
 「毎日」(1月31日付)によると、文鮮明発言録(615巻)のなかで、最も多く名前が出てくる日本の首相は中曽根氏で693回。岸信介元首相よりも多く、突出しています。歴史観や反共意識などのスタンスが非常に近かった中曽根氏に、統一協会としては期待感も高かったのではないか。
 1986年に衆参同日選挙があるのですが、文鮮明は自民党のために「60億円以上使った」(「毎日」1月30日付)と話したと報道されています。この選挙で大勝して、中曽根氏は総裁任期も延長して続投します。
 私は当時、『戦後保守政治の転換―「86年体制」とは何か』という本を出して、中曽根政治の分析をしました。「戦後政治の総決算路線」をかかげた中曽根氏は、この時に軽武装・経済重視・消極的改憲路線から、軍事大国化・新自由主義経済・積極的改憲への大転換を果たしたのです。
 問題は、この背後でひそかに、政策面や選挙支援など統一協会・勝共連合の「魔の手」が広く及んでいたことです。
 韓国発祥の統一協会がこれだけ日本の政治に食い込み、政策を左右するというのは、まさに「内政干渉」です。彼らはその後の各内閣にも政策提言を出している。歴代の自民党政権と統一協会・勝共連合の深い闇の関係をあらいざらい明らかにしなければなりません。


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10月7日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月7日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:自民党から減税議論百出 今だけ「庶民の味方ヅラ」に庶民は辟易

 しょせん岸田にとって国民生活はそっちのけ。わが身大事で1年後の総裁選で再選を果たすための解散戦略しか考えちゃいない。だから「増税メガネ」にムキになって「減税」議論で反撃しても、その場しのぎの弥縫策しか出てこないのだ。

 「5年間で総額43兆円まで増やす『防衛費増強』や、年3兆円台半ばの予算が必要な『次元の異なる少子化対策』の財源議論は先送り。まだ財源が見つからないうちに『減税』だけを切り分けて考えるのは、虫がよすぎます。差し当たり選挙前は『減税』でゴマカせばいいと国民を見くびり、選挙に勝てば防衛大増税と少子化対策と引き換えの高齢者福祉カットが必ず待っている。今だけ、言葉だけ、そぶりだけの減税は朝三暮四ならぬ、『朝二暮五』で大増税路線にまっしぐら。国民はトチの実を欲しがる猿以下になってはいけません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 増税メガネの減税詐欺を、国民はすでにお見通しだ。ヨコシマな意図にはもう辟易で、「ようやるわ、コイツら」とあきれるしかない。


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