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4月10日(水) 自民党の裏金疑惑と岸田政権の行き詰まり [論攷]

〔以下の論攷は『八王子学術・文化日本共産党後援会ニュース』No.27、2024年4月5日付に掲載されたものです。〕

 「赤旗」の追及に「白旗」を上げた自民党、というところでしょうか。自民党の政治資金パーティ―をめぐる裏金疑惑です。政治倫理審査会(政倫審)に岸田首相や安倍派の事務総長経験者などの幹部9人が出席して釈明しましたが、誰がいつどのようにして始め、何に使ったのかなど肝心なことは何一つ解明されませんでした。
 裏金についての疑惑が晴れたというより、一層深まったというしかありません。ハッキリしたことは、政倫審ではハッキリしないということです。嘘をついたら罰せられる証人喚問が必要です。
 岸田首相は「火の玉」になって取り組むと言っていましたが、「火だるま」になってしまいました。「解党的出直し」とも言っています。でも「解党」だけで結構、「出直す」必要なし、というのが国民の「回答」でしょう。
 安倍派の事務総長経験者などの処分が検討されていますが、誰が何をやりどのような責任があるのかが不明なまま幕引きを図ろうとしているように見えます。そもそも、各自の「罪」がはっきりないのに、どのような「罰」を与えようというのでしょうか。
 今回の裏金疑惑は、個々の政治家と個別企業との間ではなく、自民党という政党全体と企業総体の献金という組織的犯罪です。その根は深く、再発を防止するためには献金自体を禁止するしかありません。そもそも30年前の政治改革で政党助成金が導入されたとき、企業・団体献金は禁止されるはずだったのですから。
 それにしても、自民党はここまで腐ってしまったのか、と暗澹たる思いでいっぱいです。 岸田首相も総理就任祝いのパーティ―や統一協会との癒着についての疑惑があり、女性局がパリで研修名目の観光をしていたころ青年局は和歌山で女性ダンサーを招いてのふしだらなパーティ―にうつつを抜かしていたのですから。
 このようなスキャンダルの背後で、大軍拡に向けての動きだけは着々と進行し、政府は殺傷兵器の最たるものである戦闘機を輸出する閣議決定を行いました。「歯止め」に実効性はなく、国会は関与できません。1976年の国会答弁で宮沢喜一外相は「わが国は武器の輸出をして金を稼ぐほど落ちぶれていない。もう少し高い理想を持った国であり続けるべきだ」と述べていました。
 平和国家としての「高い理想」を忘れて「落ちぶれて」しまったのが、今の日本です。「9条の経済効果」を失って国力を弱め、長期停滞で実質賃金は増えず、国内総生産(GDP)でドイツに抜かれて世界第4位になりました。1人当たりGDPでは27位、国際競争力では35位です。
 昨年の出生数は過去最低で、死者数から出生数を引いた減少数は過去最大になっています。日本の政治・経済・社会はどれも危機に瀕し、がけっぷちにさしかかっています。そこから抜け出すには、自民党政治を終わらせるしかありません。
 裏金疑惑で窮地に陥っている岸田首相に引導を渡す唯一可能で必要な道は、市民と野党の共闘です。非共産の壁を取り除いて野党が大同団結すれば、政権交代は可能だという発言が相次いでいることも注目されます。
 大島理森元衆院議長は「野党各党が覚悟を決めて大同団結し、無党派層も流れていったら、野党が強くなる可能性はある」(『朝日新聞』2月23日付け)と指摘し、細川護熙元首相は「細川政権の8党派の時は非自民・非共産だったが、今度は共産党だって一緒にやった方がいい。そのくらいまでも抱合するような政治改革政権を目指すのがいいのではないか」(同2月27日付け)と述べています。
 裏金疑惑の発端は共産党の『しんぶん赤旗』日曜版によるスクープでした。政党助成金を受け取らず最もクリーンな政党は共産党です。市民と野党の共闘でも大きな役割を担っていただきたいと思います。岸田政権打倒に向けての追撃戦の先頭に立って共産党が共闘をリードし、今度こそ自民党政治の息の根を止めてもらいたいと大いに期待しています。


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3月28日(木) 自民党政治の混迷と野党共闘の課題――「受け皿」を作って政権交代を(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.848 、2024年4月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 厳しい批判と攻防の構図 

 このようなスキャンダルの連発によって、岸田政権と自民党は世論の厳しい批判を浴びています。時事通信が実施した2月の世論調査で、岸田内閣の支持率は前月比1.7ポイント減の16.9%で発足以来の最低、毎日新聞では支持率14%で不支持率82%でした。不支持率の8割越えは1947年以来初めてです。
 しかし、このような支持率の低下が自民党支配の打倒に直ちに結びつくわけではありません。これまでも自民党はペテンとゴマカシによって支配の危機を乗り越え、生きながらえてきたからです。
 たとえば、金丸巨額脱税事件で国民の怒りを買い、総選挙で自民党が敗北して細川連立政権が樹立されたとき、金権腐敗打破を掲げた政治改革が選挙制度改革にすり替えられ、小選挙区比例代表並立制と政党助成金制度が導入されました。このとき政権から転落した自民党は大政党に有利な選挙制度を導入し、助成金と企業・団体献金との二重取りによって「焼け太り」してしまったのです。
 また、森喜朗首相が数々の失言によって世論の批判を浴び、内閣支持率を一けたにまで低下させたとき、総裁選を前倒しして小泉純一郎総裁を選出し、その後の総選挙で自民党は大勝して息を吹き返しました。小泉首相は「自民党をぶっ壊す」と言いながら自民党を救いました。「小泉劇場」による「目くらまし」が功を奏したわけです。
 現在、危機に陥っている自民党は、この「小泉劇場」の再現を狙っているのかもしれません。菅前首相を黒幕とする「小石河」(小泉・石破・河野)の暗躍もうわさされています。金丸巨額脱税事件での「焼け太り」や「小泉劇場」による「目くらまし」を許すことになるのか、野党や国民にとっての正念場が訪れようとしています。

 共闘で「受け皿」を作れば勝てる

 支配の危機を自民党政治の打破に結び付けるための最大のカギは市民と野党の共闘です。野党は「受け皿」作りを急ぎ、一致して自民党を追い詰める必要があります。「振り子の論理」による派閥間の「疑似政権交代」によるマヤカシに騙されてはなりません。
 「疑似」ではなく「真正」の政権交代を実現するためには、野党が一本化して自民党と対決する必要があります。共闘すれば勝てるけれど、分裂すれば勝てないというのが、この間の地方選挙で示された教訓です。
 前橋市長選挙では、自民・公明に支援され4選を目指した無所属現職候補に対して野党が支援した無所属新人の元県議が初当選しました。1万4000票余もの大差でした。与野党が一本化して対決し、「保守王国」とされる群馬の県庁所在地で野党側が勝利したのです。
 これに対して、私が住んでいる八王子市長選挙では、野党側が分裂したために惜敗に終わりました。萩生田前政調会長などの自民党と公明党が支援する現職市長の後継候補が6万4000票と大きく票を減らしたにもかかわらず、「反萩生田連合」の候補が5万7000票と、7000票差で惜敗しました。
 この候補者は元都民ファーストの都議ながら無所属となって立憲・共産・生活者ネット・社民・新社会の野党だけでなく、元自民党衆院議員や2人の元自民党市議会議長の応援を得ましたが、もう一人の元都民ファーストの都議で完全無所属を掲げた候補が4万5000票を獲得したために当選できませんでした。「反萩生田」の票は2人合わせて10万2000票と自公推薦候補を大きく上回っていたにもかかわらず。
 まことに、惜しい結果でした。「野党が覚悟を決めて大同団結し」(大島理森・元衆院議長)、力を合わせて統一していれば勝てました。国会議員の応援を断ったのも問題です。主敵を絞って総力を結集し、あらゆる手段を駆使して市民と野党が共闘する大切さを痛感させられたものです。


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3月27日(水) 自民党政治の混迷と野党共闘の課題―「受け皿」を作って政権交代を(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.848 、2024年4月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 混迷を深める自民党政治
 
 「大山鳴動して鼠3匹」というところでしょうか。自民党の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑です。検察の腰砕けにはあきれてしまいました。政治家では池田佳隆衆院議員が逮捕され、大野泰正参院議員が在宅起訴、谷川弥一衆院議員が略式起訴されたにすぎません。
 疑惑の渦中にあった塩谷立元文部科学相などの安倍派トップや松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長、萩生田光一前政調会長、西村康稔前経産相、世耕弘成前参院幹事長の「安倍派5人衆」、二階派会長の二階俊博元幹事長らはおとがめなしとなってしまいました。
 自民党は「政治刷新本部」を設置して「中間とりまとめ」を発表しましたが、政治資金パーティーの禁止は運用面での取り組みにすぎず、禁止する法改正にまでは踏み込んでいません。企業・団体献金の禁止や連座制導入への言及もありません。
 また、自民党は全議員対象のアンケートを実施して調査結果を公表し、安倍派や二階派の議員らに対する聞き取り調査の結果も明らかにしました。アンケートによって不記載は85人、5億7949万円だったことが明らかになりましたが、誰の指示で、いつからどのように裏金作りをはじめたのか、そのお金を何に対してどのように使ったのかという核心部分は明らかにならず、「事実上のゼロ回答」と報じられました。
 聞き取りでも、裏金作りは約20年以上も前から始まっていたとされますが、詳細は明らかになっていません。一連の対応によって露呈したのは、自民党の自浄能力のなさです。自民党任せにせず、国会が真相解明に取り組む必要があります。
 野党は裏金作りが判明している衆院議員や参院議員83人の政治倫理審査会(政倫審)への出席を求めました。岸田首相をはじめ安倍派の幹部などが出席しましたが、自己弁護の言いっぱなしや虚偽答弁が可能な政倫審は、説明責任を果たしたという免罪符を手にして幕引きに利用されたにすぎませんでした。疑惑を深めただけで真相解明には結びつかず、参考人招致や罰則付きの証人喚問が必要になっています。

 次々に出てくる疑惑の数々

 自民党の「政治とカネ」をめぐっては、政治資金パーティーによる裏金作り以外にも、次々と新たな疑惑が生じています。政治資金収支報告書の訂正では、萩生田前政調会長が「不明」ばかりで大きな批判を浴びました。不記載額がトップだった二階元幹事長は、書籍代に3660万円も支出しており、政党から議員個人へのつかみ金となっている政策活動費が5年間で48億円という巨額に上っていることも判明しました。
 岸田首相自身にも、総理就任を祝うパーティーについての疑惑が浮上し、松野前官房長官については退任直前に官房機密費4660万円を自分に支出していたことが暴露されました。茂木敏充幹事長の選挙経費「二重計上」疑惑や甘利明元選挙対策委員長が全国を回って裏金を配っていた疑いなど、まさに「底なし沼」のような腐敗ぶりです。
 加えて、統一協会(世界平和統一家庭連合)との癒着についての新た疑惑も浮上しました。所管大臣である盛山正仁文科相が統一協会と関連する団体の集会に出席し、政策協定にあたる推薦確認書に署名していた写真が朝日新聞に掲載されたからです。これについては自民党の点検でも報告されていませんでした。
 盛山文科相は国会での質疑で「記憶にない」を連発し、岸田首相は「関係を断っている」と弁護していましたが、最近まで協会の友好団体の機関誌が送り付けられていました。立憲民主党は文科相の不信任決議案を衆院に提出しましたが、自民・公明・維新の多数で否決されています。
 この間、林芳正官房長官も推薦確認書を提示して署名を求められていたことや岸田首相も盛山文科相と一緒に写っていた協会幹部と同じ写真に写っているなど、統一協会との新たな接触も明らかになっています。まさに、際限のない癒着ぶりというほかありません。


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1月29日(月) 裏金疑獄があぶり出した自民党の腐敗と劣化――表紙を変えて延命させてはならない(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.846、2024年2月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 表紙を変えて延命させてはならない

 今回の裏金疑獄は、「令和のリクルート事件」だと言われます。リクルート事件は1988年に発覚した戦後最大の贈収賄事件で、関連会社の未公開株が政治家や官僚などに賄賂として贈られ、竹下登首相や宮澤喜一蔵相が辞任に追い込まれました。
 竹下後継として名前が上がった伊東正義総務会長は「表紙だけ変えても中身を変えなければダメだ」と言って要請を断りました。今回の裏金疑獄は、表紙だけ変えて生き延びてきた自民党がどれほど腐りきってしまったかを白日の下にさらしました。
 その後就任した宇野宗佑首相は女性スキャンダルで海部俊樹首相に交代し、参院選で自民党は過半数を失い「ネジレ国会」になります。さらに金丸ゼネコン汚職で政権を失い、政権復帰後も橋本龍太郎首相が参院選で敗北、後を継いだ小渕恵三首相が急死し、森喜朗首相に交代したものの「神の国」発言で支持率が急落して危機に陥りました。
 このとき、「自民党をぶっ壊す」と言って登場したのが小泉純一郎首相でしたが、結局は自民党を救うことになりました。その後も1年交代の短期政権が続き、総選挙で敗れて民主党政権に代わりますが、第2次安倍政権によって政権復帰に成功します。
 このように自民党は支配の危機に陥るたびに派閥間で政権をたらい回しにする「振り子の論理」によって目先を変えながら生き延びてきました。今回もこのような疑似政権交代で生き伸びようとするにちがいありません。
 それを許さず、追い込まれ解散で野党に政権を奪われた麻生首相の二の舞を演じさせなければなりません。表紙を変えても同じことを繰り返すにちがいないないということは、これまでの歴史が教えているのですから。

 唯一の活路は共闘による政権交代

 自民党の宿痾を治癒し「政治とカネ」の問題を解決するためには、政権から追い出して政治に緊張感を取り戻すことが必要です。そのための唯一の活路は市民と野党の共闘です。憲法を尊重し、平和・民主主義・人権を守り、国民要求の実現をめざす本格的な政権交代によって希望のもてる未来を実現しなければなりません。
 戦争法反対運動以来、野党共闘は多くの経験と実績を積み重ねてきました。これに危機感を募らせた自民党の激しい巻き返しに会って、一時は困難に直面しました。しかし、12月7日に市民連合を仲立ちとした政策要望会が開かれ、立憲・共産・れいわ・社民・参院会派「沖縄の風」の5党・会派が次期総選挙に向けて5項目の共通政策を確認しました。共闘の再構築に向けて重要な一歩が踏み出されたことになります。
 ここで強調したいのは、野党共闘に背を向けることは危機に陥った自民党を救うことになるということです。政治をまともなものに立て直すためには「政治とカネ」の問題で腐りきった自民党を権力の座から追い出して責任をとらせなければなりません。そのために必要で唯一可能な方法は、市民と野党が手を結ぶことです。
 「非自民非共産」を唱えて共闘から共産党を排除する動きがありますが、これは決定的な誤りです。今回の裏金疑獄発覚の発端は共産党の「しんぶん赤旗」日曜版のスクープでした。安倍元首相の「桜を見る会」や前夜祭の問題も共産党の田村智子副委員長の国会質問から明らかになりました。統一協会や勝共連合から敵視され、真っ向から対峙してきたのも、政党助成金を受け取らず「政治とカネ」の問題で最もクリーンなのも共産党です。
 「政治とカネ」の問題を正し自民党の金権腐敗政治を断罪する最適な有資格者は共産党ではありませんか。イデオロギー的な偏見や色眼鏡で見るのではなく、事実と歴史を直視するべきでしょう。立憲と共産の連携を軸に市民が結集する共闘を再建し、「受け皿」づくりによって活路を開くことこそ、2024年の最大の課題です。
 自民党の「オウンゴール」によって大きなチャンスが生まれました。派閥による政権のたらい回しを許さず、自公政権を解散・総選挙に追い込み、政権交代を実現することで今年を良い年にしようではありませんか。後世において、あのとき希望の政治への扉が開かれ、歴史が変わったのだと言われるように。


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1月28日(日) 裏金疑獄があぶり出した自民党の腐敗と劣化――表紙を変えて延命させてはならない(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.846、2024年2月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 「政治とカネ」疑惑の発覚と広がり


 自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる「政治とカネ」の疑惑は、自民党と岸田政権を揺るがす大疑獄へと発展しました。物価高のもとで生活苦に追われる国民をしり目に、法の抜け穴を利用した不正な方法で私腹を肥やしてきた政治家への国民の怒りが爆発し、自民党と内閣に対する支持率は急落しました。
 この問題は自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)に所属する議員がパーティー券収入のノルマ超過分についてキックバック(還流)を受け、裏金化していたとされるものです。しかし、このような形で裏金を得ていたのは安倍派だけに限られず、志帥会(二階派)、宏池政策研究会(岸田派)、平成研究会(茂木派)、志公会(麻生派)という主要な5派閥すべてに共通する問題でした。
 なかでも安倍派は組織的に裏金づくりを行い、その額も過去5年間で5億円と大きく、所属議員の大半に還流しているだけでなく、政治資金収支報告書に記載しなくても良いと伝えて口止めするなど悪質なものでした。このため、岸田首相は所属閣僚4人の更迭に踏み切り、安倍派の党役員も交代しました。
 臨時国会閉幕を待って東京地検特捜部は捜査を本格化させ、立件も視野に一斉に事情聴取や家宅捜査を行いました。この事件は長年続いてきた自民党各派閥の悪弊を浮かび上がらせるものですが、このような裏金作りがいつから、どのような形でなされ、何に使われてきたのか、事実の解明と責任の追及が行われなければなりません。

 重篤化した自民党の宿痾

 「宿痾」というのは、長い間治らない慢性の病気のことです。自民党は以前からこのような宿痾を抱えており、それが重篤化して死に至る病となるリスクが高まっています。それは右傾化と金権化でした。この宿痾によって全身がむしばまれているのが安倍派です。
 右傾化という点では改憲と軍事大国化の先兵となり、安保3文書の作成と敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有、大軍拡・大増税や改憲発議に向けての政策転換をリードしてきました。金権化という点でも、キックバックによって組織的な裏金作りを行い、収支報告書に記載せず、金集めに狂奔していた姿が明らかになりました。
 このような病気を治癒するためには、世論による批判と法的な規制が欠かせません。根本的には政権交代によって罰し、解党的な出直しを迫る必要があります。自民党は30年以上も前に、派閥による資金調達の制限や党役員と閣僚らの派閥離脱、派閥解消の決意などを掲げた「政治改革大綱」を決定していたのですから。自主的な改革や努力に任せても「百年河清を俟つ」に等しいことは、今回の事件によっても明らかです。
 政治資金集めのパーティーは事実上の献金にほかなりません。政党助成金が導入されたとき、企業・団体献金は5年以内に禁止されることになっていました。その約束が守られていれば、このような二重取りで裏金を作る悪弊は生じなかったはずです。パーティーを始めとした企業・団体献金を禁止し、政治資金の流れを透明化するための制度改正が急がれます。
 捜査の結果、政治資金規正法違反や脱税ということで逮捕され有罪となれば、議員辞職は免れず、公民権停止となって選挙に出ることもできなくなります。国民の信頼を回復するためには、少なくとも裏金受領の有無と使途を進んで明らかにして派閥を解消し、国会での証人喚問に応ずることが必要でしょう。

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11月12日(日) 「敵基地攻撃」能力の危険な企み―それは日本に何をもたらすか 実質改憲に突き進む岸田政権の狙いを暴く(その3) [論攷]

〔以下の論攷は『治安維持法と現代』No.46、2023年秋季号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 ソフトパワーこそ真の抑止力

 それではどのようにして緊張を緩和し戦争を防げば良いのでしょうか。軍拡による抑止力強化路線をやめて外交による信頼醸成路線に転換すれば良いのです。
 戦争への抑止力には軍事力などのハードパワーと外交・経済・観光などのソフトパワーがあります。力による威嚇で恐怖を強めるより話し合いや交流によって信頼感を高めるべきです。現に、米朝首脳会談や南北首脳会談の期間中、北朝鮮はミサイル発射を自制し核実験を中断しました。北朝鮮との国交回復のための交渉や6カ国協議をまた始めれば良いのです。
 軍事的抑止力は恐怖に依存し、相手によって左右され、対抗しての軍拡を生むというジレンマがあります。これに対して、どのような問題でも武力に訴えることなく話し合いで解決するというソフトパワーによる抑止力はそのようなジレンマはありません。
 国内問題への相互不干渉、紛争の平和的解決、武力による威嚇又は武力行使の放棄という9条を活かし、東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組みに学び、仮想敵を想定せずすべての国を迎え入れる包摂性、重層的な安全保障と対話の枠組み、徹底した対話による問題の解決を図るべきです。
 危機を高めないように周辺諸国との交流を深め、インバウンドを増やして仲良くすれば良いのです。周辺諸国の国民が自国政府に対して、日本を攻めるなんてとんでもない、戦争に巻き込むなと反対するような状況をつくれば、東アジアでの危機と緊張は解消するにちがいありません。

 むすび

 岸田政権の狙いは、危機を煽りながら政権基盤を安定させ、長期政権を築くことにあります。最大の問題は政権維持が自己目的化し、実現すべきビジョンや理念が欠落していることです。岸田首相は長期政権によって戦争国家を生み出そうとしているのでしょうか。
 外交・安全保障政策でも、常に受け身で能動的なビジョンがありません。能動的なのは日米同盟の強化と軍事大国路線の具体化、「同志国」との軍事協力の強化です。軍拡以外に解決策を見いだせない岸田首相に日本の未来を託すわけにはいきません。
 岸田首相には経済的な豊かさや成長に向けてのビジョンもありません。アベノミクスのツケをどう解消するのか、異次元金融緩和からの出口をどうするのか、1000兆円を超える国債をどう返していくのか、500兆円もの大企業の内部留保をどう活用するのか、物価高にあえぐ国民の生活をどう支えていくのか。全く展望が示されていないのです。
 人権と民主主義という点でも民意無視という点でも、岸田政権は暴走を続けています。G7の他の国とは異なって同性婚のルールなどはなく、性的少数者の人権を守らず選択的夫婦別姓には無関心で、奴隷貿易や侵略戦争、植民地支配など歴史の負の遺産に対する反省もしていません。マイナンバーカードとマイナ保険証、原発「処理水」の放出、インボイス制度の導入、万博とカジノの強行、沖縄・辺野古での新基地建設など、民意への逆行も目に余ります。
 こんな政権は変えるしかありません。政権を追い込んで解散・総選挙を勝ち取り、政権交代を実現することが必要です。市民と立憲野党の共闘を再建・再構築し、治安維持法が荒れ狂った戦前のような社会へと突き進む岸田政権を打倒するために、皆さんが先頭に立たれることを願ってやみません。

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11月11日(土) 「敵基地攻撃」能力の危険な企み―それは日本に何をもたらすか 実質改憲に突き進む岸田政権の狙いを暴く(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『治安維持法と現代』No.46、2023年秋季号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 実質改憲による戦後安保政策の大転換

 憲法の条文を変えることなく平和主義の大原則を実質的に転換する実質改憲が安保3文書によって具体化されました。しかし、実はそのような転換は2015年の平和安保法制(戦争法)の制定によってすでに実行されていたのです。
 このとき憲法解釈を変更し、それまで許されないとされてきた集団的自衛権の一部について行使を認め、日本が攻撃されていなくても存立危機事態と認められれば米軍と共に自衛隊が戦闘に加わることができるようになったからです。その意味で、基本は変わっていないという弁解の半分は正しいとも言えます。
 しかし、それは「枠組みを整えた」にすぎず、実行できないものでした。今回はこれを「実践面から大きく転換する」(国家安全保障戦略)ことで、集団的自衛権を実際に行使できるようにしようというのです。形としての実質改憲に内実を伴わせようというのが、岸田大軍拡の狙いなのです。
 その結果、9条による憲法上の制約や非軍事のタガが外されようとしています。米軍と共に戦える軍隊へと自衛隊を変貌させるための施策が次々と打ち出されていることに注意しなければなりません。
 アメリカとの関係では兵器の爆買いだけでなく、自衛隊の陸海空3軍による統合司令部の創設とハワイにある米インド太平洋軍司令部の横田への移転による実戦体制と連携の強化、統合防空ミサイル防衛(IAMD)での自衛隊と米軍の融合などが打ち出されています。自衛隊の強化では自主的な防衛費増や防衛財源確保法の制定、防衛産業支援のための新法の制定、自衛官の待遇改善、基地の地下化と強靭化、敵領土攻撃可能な長距離兵器の購入と開発、学術研究や空港・港湾の軍事利用などが打ち出されています。密室で検討中の殺傷兵器の輸出解禁もその一環です。
 国際的な枠組みでは、イギリスやイタリアとの戦闘機の共同開発や北大西洋条約機構(NATO)への接近、NATO加盟諸国との共同訓練の実施、日米印豪4か国のクワッドによる軍事協力の強化、日米韓3か国によるミニNATO化の動きなどもあります。まさに、「新しい戦前」を思わせるような準備が多方面で着々と進んでいるというべきでしょう。

 「台湾有事」を「日本有事」にしてはならない

 アメリカは為替レート(購買力平価)でのGDPで2016年に中国に追い抜かれ、論文数・研究者数・政府の研究予算額などでも中国の下です。経済や学術の面で優位性を失ったアメリカの危機感と焦りは大きく、その狙いは台頭する中国の頭を抑えて覇権を維持し、再びライバルとならないように日本の足を引っ張ることにあります。そのために、日本に防衛分担を強いて対中国包囲網に引きずり込もうとしているのです。
 このような軍事分担要請は中曽根康弘政権時代から強まり、その後の日米構造協議や年次改革要望書、湾岸戦争やイラク戦争などを通じて具体化されてきました。しかし、最近ではCIA長官、米国務長官や財務長官・商務長官の訪中など一定の修正がなされているようです。岸田首相が大軍拡に転じて「二階に上がったからもう良いだろう」と、梯子を外そうとしているように見えます。
 台湾との関係で中国は武力行使を排除していませんが、もし米軍との戦争が始まれば第3次世界大戦や核戦争にまで拡大する大きなリスクが生じます。米中の直接対決による「台湾有事」を発生させてはならず、もしそうなっても「日本有事」に連動させることは極力避けなければなりません。中国による台湾への武力行使は許されませんが、「一つの中国」を認める立場からすれば基本的には「国内」問題です。
 アメリカの台湾関係法は台湾防衛の軍事行動を大統領に認めていますが、義務ではなくオプション(選択)なのです。22年9月にバイデン大統領が台湾を防衛すると明言した直後、ホワイトハウスの報道官は「(防衛するかしないかはっきりさせない)あいまい戦略に変更なし」と訂正しました。軍事的な対応が前提されているわけではありません。
 中国は23年の全国人民代表大会で「平和」統一という用語を復活し、日本との間では「互いに脅威にならない」と共同声明などで何度も確認しています。中国も北朝鮮も「日本を攻める」とは言っていませんから、「仮想敵国」とするのは間違いです。台湾が攻撃されたからと言って、それが直ちに日本への攻撃を意味するわけではありません。
 「台湾有事」が勃発しても日本は参戦してはならず、「戦う決意」を迫ることも「日本有事」に連動させることも許されません。国際紛争に軍事的に関与しないというのが憲法の趣旨であり。戦争になれば日本全土が焦土となることは避けられません。しかも、そういう危機が高まった段階で、もう日本という国は立ち行かなくなります。
 実際には、日本は戦争できません。最大の貿易相手国は中国ですから、戦争の危機が高まったら貿易が途絶えてしまいます。食料や各種の製品、原材料なども来なくなってしまいます。中国を包囲し孤立させようとして経済安全保障を打ち出し、輸出の管理や規制を強めようとしていますが、それで困るのは日本の方なのです。

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11月10日(金) 「敵基地攻撃」能力の危険な企み―それは日本に何をもたらすか 実質改憲に突き進む岸田政権の狙いを暴く(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『治安維持法と現代』No.46、2023年秋季号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 虚偽と欺瞞に満ちた政策転換によって、日本は歴史的な岐路にさしかかることになりました。安保3文書によって打ち出された「敵基地攻撃」能力(「反撃」能力)の保有という新たな方針は、憲法9条に示された平和主義原則を実質的に転換するものです。
 岸田政権はアメリカの思惑を忖度しながらそれに取り入るために、日本の安全と東アジアの平和を脅かそうとしています。これからの日本は軍事的には強力でも経済的には貧しい「強兵貧国」への道を歩むことになるでしょう。
 その危険な企みの内容を明らかにし、今後の日本に何をもたらすことになるのかを国民に示していくことが、今ほど必要になっていることはありません。岸田首相は大軍拡・大増税の中身も狙いもひた隠しにし、国会での論戦から逃げ続けてきたのですから。

 「敵基地攻撃」能力保有論の虚妄と危険性

 まず指摘しなければならないのは、「敵基地攻撃」能力保有論の虚妄と危険性です。それがいかにウソとデタラメに満ちているか。数多くのウソの中でも、さしあたり以下の3点が重要です。
 第1に、「敵基地」攻撃というのはウソです。攻撃するのは「敵基地」だけではなく、「指揮統制機能等」を担う中枢部も攻撃対象になるとされているからです。日本でいえば、首相官邸のある永田町や主要官庁が存在する霞が関、防衛省のある市ヶ谷なども攻撃するということです。中国なら北京、北朝鮮なら平壌というところでしょうか。
 国境を越えた敵領土への攻撃を可能にするため、長距離巡航ミサイルや極超音速誘導弾などを開発する計画です。すぐには間に合わないため、トマホークという最新鋭の長距離巡航ミサイル「ブロックⅤ」をアメリカから400発も購入するとし、そのための予算2113億円も可決されています。
 第2に、「敵基地攻撃」能力というのは印象が良くないということで「反撃」能力と言い換えましたが、これもウソです。「反撃」というのは攻撃されてから行うものですが、実際には「着手」された段階での攻撃になるからです。
 問題は、この「着手」をどのような情報に基づいて誰がどう判断するのかという点にあります。日本はそのような能力を持っていません。トンキン湾事件をでっちあげてベトナム戦争に介入した過去のあるアメリカに頼るのでしょうか。外から見れば、先制攻撃にほかならない「着手」段階での攻撃を。
 第3に、軍事大国にはならないと約束していますが、これも大ウソです。日本は今でも世界第10位の防衛費を支出しており、トップ10に入っています。円安で順位を下げていますが、立派な軍事大国ではありませんか。
 今後5年間で43兆円の大軍拡ですが、東京新聞の試算では後年度負担金(ローン)を含めて60兆円になるとされています。そうなれば世界第3位ですから、トップ3に入ります。これを「軍事大国」ではないと弁明しても、どの国が納得するでしょうか。

 ウクライナ戦争が示す「専守防衛」の姿

 岸田首相は専守防衛の国是にはいささかも変わりがないと弁解していますが、これも大ウソです。今回の大軍拡の口実はウクライナ戦争ですが、岸田大軍拡が目指している戦争はウクライナでの戦争以上のものとなるからです。
 ウクライナが今戦っている戦争は典型的な「専守防衛」型の戦争で、基本的にはウクライナの自国領土とその周辺だけが戦場になっています。ゼレンスキー大統領がロシアの領土を攻撃しないことを約束したうえでアメリカやNATOから兵器の供与を受けていることに注目しなければなりません。
 アメリカはハイマースという長距離ロケット砲をウクライナに供与しましたが、わざわざ射程距離を短くしました。イギリスもロシア領土を攻撃しないとの約束のうえでストームシャドーという長距離巡行ミサイルを提供しています。
 F16戦闘機は飛行機ですからどこへでも飛んでいけますが、ロシアの領空には入らない約束で供与され、実際、領空には入っていません。ウクライナの首都・キーウがミサイルで攻撃されたからといって、ウクライナはモスクワをミサイル攻撃していません。正体不明の無人機(ドローン)による攻撃があるとはいえ、長距離砲で砲弾を撃ち込むことも巡航ミサイルやF16での爆撃も実施していません。
 ところが、岸田首相は「敵基地攻撃」のために相手国領土にミサイルを撃ち込むと言っており、そのための改良や装備の取得を進めようとしています。ウクライナ戦争こそが「専守防衛」だと誰も言わず、マスメディアも9条を持つ日本が専守防衛を踏み越えた戦争を戦おうとしていることも報道せず、評論家や解説者もこの事実を指摘していません。
 なぜ言わないのでしょうか。岸田大軍拡の危険性や間違いが明らかになってしまうからです。ウクライナ戦争の現実が9条に基づく防衛戦争の有効性と岸田大軍拡の危険性を雄弁に語っているのです。岸田首相は9条を踏みにじって専守防衛に反し、ウクライナがやっていない戦争をこれからやろうとしているのだということを、もっと多くの国民に知ってもらいたいものです。

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10月14日(土) 暴走を続ける岸田大軍拡政権に引導を渡そう(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『東京革新懇ニュース』第486号、10月5日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 時代逆行の人権と民主主義の蹂躙

 これほど恥ずかしいことが、これまであったでしょうか。5月に広島で開かれた先進国首脳会議(G7)の直前、日本以外の6か国とEUの駐日大使から性的少数者(LGBTQ)の人権を守るための法整備を促す書簡が届けられたからです。通常国会では理解増進法が成立しましたが、「不当な差別はあってはならない」などと修正され、「差別増進法」に歪められてしまいました。
 7月には国連の人権理事会作業部会によって調査団が派遣され、ジャニーズ事務所をめぐる少年タレントに対する性加害が取り上げられて注目されました。しかし、調査内容はそれにとどまらず、女性、性的少数者、障害者、アイヌなどの先住民族、被差別部落、労働組合、難民や技能実習生など200項目に及んでいます。これだけ幅広い分野で、人権侵害の疑いがあるというわけです。
 通常国会で成立した改定難民認定法も難民の人権を侵害する内容でした。ジェンダー格差の点でも日本は146か国中125位で、政治分野では138位にまで低下しています。平等実現には政治の意思が重要ですが、その分野でこそ女性の地位が決定的に低いという点に大きな問題があります。
 報道の自由度でも日本は26位でG7参加国では最低です。テレビ放送については放送法の解釈変更によってメディア支配を強めようとしていた総務省の内部文書が明らかになりましたが、高市元総務相はうやむやにしてしまいました。マスメディアの権力への監視や政権への批判力も弱体化し失われる一方です。
 岸田首相は折に触れて「法の支配」や「自由で開かれたインド太平洋」「先進国との価値観の共有」などと繰り返しています。しかし、法の土台である憲法をないがしろにし、少数者の人権や報道の自由を踏みにじっているのが実態です。他の先進国と価値観を共有せず、時代の流れに逆行しているのが岸田政権の姿なのです。
 今年の9月1日は関東大震災から100年で朝鮮人などに対する虐殺事件からも100年を迎えました。小池百合子東京都知事は今年も虐殺犠牲者に対する追悼文の送付を見送り、松野官房長官は記録が「政府内に見当たらない」と発言しています。歴史の事実を直視せず、加害の歴史への責任を回避しようとする点でも、他の先進国とは異質で時代逆行の恥ずかしい姿だというしかありません。

 岩手と立川の教訓に学ぼう

 日本は政治でも経済・社会の面でも、先進国ではなくなりつつあります。政治改革・行財政改革・構造改革など、あらゆる改革が失敗続きだったからです。これからも、平和で豊かな希望の持てる国づくりは期待できません。岸田政権の下で、政治を変えなければ生きてゆけないギリギリの崖っぷちへと、私たちは追い込まれてしまいました。
 政治を変えてこのような苦境を打開する唯一の道は、市民と野党の共闘にしかありません。それはいかに困難でも、そこにしか出口がないのであれば、それを目指すしかないのです。最近行われた岩手県知事選と立川市長選は、このような教訓と展望を示しています。
 岩手県知事選で当選した達増拓也知事は、立憲民主を基礎に国民民主や共産、社民などの県民連合が大きな力になったと述べています。立川市長選でも元立憲民主党都議の酒井候補が約1600票差で当選しました。その結果、世田谷・中野・杉並・武蔵野・小平・多摩・立川など東京西部で野党共闘の非自民首長が誕生しています。
 今年の秋には岸田政権を追い込んで解散・総選挙を勝ち取ることが必要です。来年7月には東京都知事選もあります。これらを見据えた市民と野党の共闘を草の根から再構築するために、地域や職場での共同と連携に向けての努力が欠かせません。
 立憲民主の支持団体である連合には、イデオロギー的な偏見を捨てて共闘を認め、政治や選挙については立憲民主の自主性に任せて余計な口出しをしないという節度ある対応を期待したいと思います。働く人々の利益実現や働くルールの確立を目指すという点では、全労連や共産党との大きな違いはないのですから。
 「新しい戦前」が懸念されている昨今ですが、戦前にも「反資本主義、反共産主義、反ファシズム」という「三反主義」を掲げて共産党を排除し、大政翼賛会に合流して侵略戦争に協力した無産政党がありました。社会大衆党です。立憲民主や国民民主にはこう言いたいと思います。このような戦前の過ちを、二度と繰り返すなと。

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10月13日(金) 暴走を続ける岸田大軍拡政権に引導を渡そう(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『東京革新懇ニュース』第486号、10月5日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 空振りに終わった内閣改造

 これほど評判の悪い内閣改造が、これまであったでしょうか。与党からも落胆の声が上がっているようです。「通常は『ご祝儀』を含めて改造で少しプラスになるものだが……。改造が評価されていない」と。
 毎日新聞の調査では26%あった内閣支持率が1ポイント下落して25%となり、過去最低に並んだと言います。ご祝儀どころか、罰金を取られたようなものです。いつまで続けてほしいかとの問いに「早くやめてほしい」との答えが51%で最多となっています。
 岸田首相は来年秋の総裁選挙に向けて、刷新感やイメージアップのために5人の女性閣僚を起用しました。しかし、麻生派会長の麻生太郎副総裁、茂木派会長の茂木敏充幹事長、安倍派幹部の松野博一官房長官ら「骨格」がそろって留任し、枝葉は変えても幹は変わらず同じ形に見えます。
 女性5人の起用について、岸田首相は「女性ならではの感性や共感力の発揮に期待したい」と述べ、個々人の資質や専門性を評価したものではなかったことを吐露しています。副大臣と政務官54人の人事では派閥順送りの推薦をそのまま受け入れたため、初めて女性がゼロになって大きな批判を浴びました。
 選挙対策委員長に小渕優子元経産相を起用したのも問題になっています。自身の政治団体をめぐる不明朗な会計処理が発覚し、秘書2人が有罪となって大臣を辞任した過去があるからです。このとき家宅捜索前にパソコンのデータを保存するハードディスクに電気ドリルで穴を開けたことが報じられ、「ドリル優子」などと呼ばれました。
 このように、岸田内閣の改造は不発に終わっています。自分の都合ばかり優先した内向きの人事だったからです。マイナンバーカードやマイナ保険証の強要、福島第1原発の汚染水の放出、事実上の消費増税となるインボイスの導入、県民の声を無視して強行している沖縄の辺野古新基地建設など、国民の声の無視も目に余ります。支持率が上がらないのも当然でしょう。
 特にマイナカードをめぐっては、別人の公金受取口座を誤登録して個人情報が漏洩した問題で、デジタル庁と国税庁が政府の個人情報保護委員会から行政指導されました。健康保険証の医療情報とのひもつけミスも8400件以上確認されています。トラブルは底なしで、制度の欠陥は明らかです。国民への強要を止め、保険証の廃止を撤回するべきでしょう。

 前のめりになっている改憲・大軍拡

 これほどひどい発言が、これまであったでしょうか。憲法違反の軍事と戦争への前のめりもこれまでになくひどいものです。自民党の麻生副総裁は台湾を訪問し、有事の際には実際に「戦う覚悟」が抑止力になると講演しました。戦争や武力の行使だけではなく武力による威嚇も「放棄」した憲法9条を持つ日本の与党幹部として、断じて許されない発言です。
 先の内閣改造でも、改憲・軍拡の推進に向けての布陣が鮮明になっています。これまで自民党の憲法改正実現本部事務総長代行を務め、安保3文書の取りまとめや殺傷兵器の輸出を主張してきた木原実氏を防衛相に起用し、自民党の憲法改正実現本部事務総長や衆院憲法審査会で与党筆頭理事として改憲の旗を振ってきた新藤義孝氏を入閣させました。改憲タカ派の高市早苗経済安全保障担当相と萩生田光一政調会長も留任しています。
 来年度予算の概算要求でも防衛費の突出は顕著で、今年度を1兆円も上回る7.7兆円に達しました。安倍政権時代の1.5倍にもなる額です。防衛予算は2020年に文部科学省の予算を上回り、来年度予算では1兆8000億円もの差がついています。教育より軍事を優先する岸田政権の姿勢を象徴する異次元の大軍拡予算になりました。
 しかも、額を明示しない「事項要求」が多用され、さらに増えることは確実です。全国の自衛隊施設の強靭化、陸海空3自衛隊の統合的な運用のための統合司令部創設、日米融合の統合防空ミサイル防衛(IAMD)の本格的な強化のための予算なども計上されています。実際に戦える自衛隊に向けて着々と手が打たれているというわけです。
 外交面では、8月の日米韓首脳会談で首脳・外相・防衛相・防衛担当者による会談を毎年定期開催することが合意され、3か国の軍事同盟体制の強化が図られました。岸田首相の北大西洋条約機構(NATO)への急接近、日米韓による「ミニNATO化」、イギリスなどNATO加盟国はじめオーストラリアやインドなどクワッド加盟国との軍事協力も進んでいます。
 改憲・大軍拡を阻止して憲法の平和原則を守る課題は、日本の安全を守るうえで急務になっています。同時にそれは、日本周辺の緊張を緩和して安全保障環境を改善するために不可欠の課題でもあります。岸田大軍拡の内容や実態を学び、保守層や無党派層を含め、戦争だけはだめだという人々を幅広く結集することが今ほど大切になっているときはありません。

 混乱と危機に瀕する国民生活

 これほど酷い混乱と危機が、これまで国民生活を脅かしたことがあったでしょうか。物価高の大波が押し寄せて国民の生活と営業を直撃しています。それでなくとも、コロナ禍による外出制限や行動抑制によって国民生活は大きな困難にさらされ、経済は大打撃をこうむってきました。
 世界も同様で、100以上の国や地域では消費税を引き下げて生活を支える措置をとっています。しかし、岸田政権は税金を下げるどころか、10月からは事実上の消費増税となるインボイス制度を導入しようとしています。個人事業主やフリーランス、零細企業は大きな打撃を受け、廃業や倒産が続出するのではないでしょうか。
 このような困難に拍車をかけているのがアベノミクスの失敗です。インフレになれば物が買われるから景気が良くなるというリフレーション理論や、富める者が富めば貧しい人にもおこぼれが回るというトリクルダウン理論は幻にすぎませんでした。日銀による異次元の金融緩和で円安が進行し、ウクライナ戦争による物資不足とも相まってガソリンなど生活必需品の価格高騰が止まりません。
 福島第1原発の汚染水放出に対して中国は日本の水産物の輸入を全面的に禁止する対抗措置を取りました。岸田政権が「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という約束を破り、福島の漁業者の了解だけでなく中国に対する根回しもせずに一方的に放出を強行した結果です。「風評」被害対策だけでなく、このような「実害」に対しても解決のための外交努力が欠かせません。
 このようななかで日本の国力は低下し続け、国内総生産(GDP)でドイツに抜かれて第4位になろうとしています。1人当たりではすでに27位と過去最低で、国際競争力では35位という有様です。実質賃金は低迷し、税金と社会保険料の負担は増すばかりで、貧困率は15.4%とG7加盟国で最悪になりました。
 これからも収入は増えず、軍拡のための大増税や少子化対策を名目とした社会保険料の引き上げが予定されています。これらを合わせた国民負担率は50%に近づいており、江戸時代の「五公五民」に逆戻りしそうです。
 食料自給率も38%にすぎずエネルギー自給率は12%、物価の高騰で食の窮乏化が深刻になっています。民間のフードバンクで命をつなぎ、子ども食堂に頼るのは子どもだけではありません。食料支援に学生や若者が列をなしています。衣食住などの生活必需品が満たされない絶対的貧困が再び頭をもたげ始めました、
 これからの日本は「物の豊かさ」ではなく「心の豊かさ」を求める時代に変わっていくと主張された時もありました。もはや絶対的貧困は解決され、これからの問題は相対的貧困だと言われていた時もありました。そんな時代が懐かしくなるような、深刻な貧しさが私たちの前に立ち現れつつあります。


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