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11月4日(水) 「民主主義の目覚まし時計」が鳴っている―戦争法案反対で高揚する国民運動をどう見るか(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』11月号、No.747、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 獲得された新たな運動の質

 今回のたたかいを中心になって担ったのは「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」(総がかり行動実行委員会)です。これは「戦争をさせない1000人委員会」(1000人委員会)、「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」(壊すな!実行委員会)、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」(憲法共同センター)という3つの団体の合流によって結成された共闘組織でした。
 それは、市民運動団体「壊すな!実行委員会」を仲立ちとした連合系団体「1000人委員会」と全労連系団体「憲法共同センター」との連携という内実を持っていました。このことは強調しておく必要があります。このような形での大衆運動における共同が、すでに実現していたからです。
 また、60年安保闘争や70年安保闘争との違いでは、青年や学生の参加の背景に自らの貧困と不安があるという点が大きいように思われます。かつては使命感に基づく「他者」のための運動であり、そのために潮が引くように沈静化しました。しかし、今は自らの未来を守り切り開くための「自己」のための運動なのです。中途で投げ出すわけにはいかず、これからも沈静化することはないでしょう。
 このたたかいは、高齢者と若者、組織と個人、国会周辺と地方・地域、町内、村内での運動が呼応するような形で展開されました。前者が「敷布団」で後者が「掛け布団」のような関係(上智大学の中野晃一教授)だと言われますが、両者が連動して運動の幅を広げ質を高めることになったように思われます。
 また、運動への参加の仕方では組織的な働きかけと個人的な情報の入手という特徴もありました。このような情報の発信や受信という点で大きな意味を持ったのが、インターネットやSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)などのIT(情報技術)手段です。(インター)ネットによるネット(ワーク)の形成と活用もこれまでにない特徴で、それが社会運動の武器として活用され、大きな威力を発揮した最初の事例だったのではないでしょうか。

 戦争法廃止をめざす連合政府の樹立に向けて

 戦争法が成立した日の午後、日本共産党は中央委員会総会を開いて戦争法廃止の国民連合政府の実現を目指す方針を決め、参院選などでの選挙協力を呼びかけました。素早い対応であり、的確な方針提起であったと思います。
 戦争法成立の直後から、「民主主義は止まらない」「この悔しさは忘れない」という声が上がり、コールも「戦争法案今すぐ廃案」から「安倍内閣は今すぐ退陣」へと変わりました。倒閣運動への発展・転化が生じたのです。
 今後も戦争法廃止の運動を継続させ、世論を変え、裁判にも訴えていくことが必要です。とりわけ重要なのが賛成した議員を選挙で落とす落選運動であり、戦争法の廃止を可能にするような政府の樹立です。
 参院選での与野党逆転を実現するうえでは1人区対策が重要になります。現在の参院の与野党差は28ですから15議席入れ替われば逆転しますが、野党の選挙協力が実現すれば8つの1人区で与野党が入れ替わると東京新聞は試算しています。
 今回改選される議員が当選した2010年参院選では、直前に菅首相が消費税10%発言を行って民主党が大敗し、自民党が圧勝しました。この時の共産党は3議席当選にとどまりましたが、前回の2013年参院選では5議席増の8議席になっています。これらの事情を勘案すれば、与野党逆転の可能性は十分にあると言えるでしょう。

 これからの対決の焦点

 これからは憲法9条の空文化かそれとも戦争法制の空文化か、という対決が本格化することになります。その集約点が来年の参院選であり、そこでの勝利には民主党と共産党の連携・協力が不可欠です。
 そのカギを握っているのは民主党です。民主党は「右のドア」を閉めて「左のドア」を開けるべきです。力を合わせなければ政権交代は無理であり、「反共主義」や「共産党アレルギー」では国民の期待には応えられません。未だに「裏切り」の印象が強く国民の信頼を十分に回復しているとは言えない民主党は、このことをよく考えるべきでしょう。
 この間の運動によって、政治を動かす土台とも言うべき社会が変わり始めました。政権交代の準備はもう始まっているのです。一時的なブームという上からの「風」頼みの政権交代ではなく、人々の考え方や価値観の変化をともなった下からの「草の根」の力による政権交代という条件が形成されつつあります。
 好きか嫌いかを優先するようでは政治家の資格はありません。嫌いでも国民のためになるのであれば手を組むべきです。せっかく盛り上がってきた倒閣運動です。「民主主義の目覚まし時計」を鳴らして、その高揚をもたらした安倍首相の「政治的プレゼント」を無にしてはなりません。政権交代によって、この「プレゼント」を最大限有効に活用しようではありませんか。


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