SSブログ

9月9日(日) テロ対策特措法延長阻止の意味 [国会]

 明日から臨時国会が始まります。この国会での最大の焦点は、テロ対策特措法の延長問題です。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に参加するためにオーストラリアを訪れた安倍首相は、ブッシュ米大統領との会談でインド洋での海上自衛隊(海自)の給油活動の継続を約束しました。同行記者団との懇談でも、これは「対外的な公約であり、私の責任は重い。約束を果たすため、すべての力を出す」と語りました。
 何という愚かな。一方で、できもしないことを「公約」し、他方で、対外的な「公約」だから実行しなければならないなんて……。
 「もう、約束しちゃったから、何とかして欲しい」と言いたいのでしょう。対外公約を国内政治への圧力として利用しようというわけです。これでは、「ガイアツ」による政治の歪みそのものではありませんか。

 安倍首相は、海自の活動継続のためなら手段を選ばないつもりのようです。首相は「どういう法的な担保にするかは工夫の余地がある。新法を考えるのであれば、どういう形にするかも政府・与党で考えなければならない」と述べ、新法を検討する姿勢を示したからです。
 何故、テロ特措法の延長ではなく、新法を提出しようとしているのでしょうか。与党にとってのメリットはどこにあるのでしょうか。
 その一つは、11月1日の期限が切れても、新法が審議中であることを理由に海自の活動を継続できるからです。もう一つの理由は、新法なら、民主党など野党の言い分を十分に盛り込むことができ、妥協をはかりやすいからでしょう。

 しかし、その場合であっても、民主党が賛成するとは限りません。テロ特措法の延長にしても新法の成立にしても、安倍首相にとっては極めて困難でしょう。
 民主党は、安易に妥協してはなりません。十分な審議を通じて、テロ特措法の問題点を明らかにするだけでなく、アメリカが進めてきた「テロとの戦い」の誤りや不毛性をも明らかにする必要があります。
 この問題について、今日の『東京新聞』朝刊に「米同時テロ6年 出口見えない戦い 特措法の行方」http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007090902047578.htmlという見出しの下、私と森本敏拓殖大教授の談話が出ています。私の談話は「効果疑問 延長阻むべき」という表題で、次のようになっています。

 ブッシュ米大統領が始めた「対テロ戦争」だが、軍事力では問題を解決できないどころか、憎悪や復讐(ふくしゅう)心を強め、テロの温床を拡大させた。日本はテロ特措法を延長しないことで、対米追従の姿勢から転換し、ブッシュ路線の誤りを指摘しなければならない。
 アフガニスタンやイラクにおける対テロ戦争の米軍兵士の死者は、既に9・11テロでの犠牲者数を上回った。力で抑えつけるほど反米感情は高まり、自爆テロの志願者が増えるだろう。
 アフガンでは米軍機の誤爆に多くの市民が巻き込まれ、旧タリバン勢力も復活しつつあるのが現実だ。
 自衛隊のインド洋における支援活動も、テロ対策に効果を上げているとは言えず、そこにテロ特措法の根本的な問題がある。実際、自衛隊の補給実績は減少。ブッシュ大統領が欲しいのは燃料ではなく、国際的な孤立の中での日本の協力という政治的な意味合いだ。
 また、自衛隊の活動実態をめぐっては詳しい情報が明らかでなく、「特措法が定めた範囲を踏み越えているのでは」との疑念がぬぐえない。
 日本側から給油を受けた米国などの艦船から飛び立った航空機が、アフガン以外でも活動をしていないのか。近隣にはイランやイラク、ソマリアといった国もある。
 民主党は真正面から国会審議に臨み、テロ特措法の抱える多くの問題点を明らかにした上で延長を阻むべきだ。政権交代が可能な力があるのか、試される場となるだろう。

 この私の談話と一緒に掲載された「国際協力もっと説明を」という森本教授の談話は、海自の活動の継続を求めるもので、私とは正反対の主張になっています。これについて、4点だけ疑問を提起しておきましょう。
 第1に、森本さんは、「テロ組織は、イラン経由の陸路とパキスタン経由でインド洋に出る海路を通じて麻薬を運び出し、資金や武器弾薬を入手している。特に海路は欧州、アジアでのテロ活動に使われており、だからインド洋での阻止活動には米英だけでなく仏、独、パキスタンなども参加している」と語っています。このような「海路」を通じた「テロ活動」を阻んだ実績があるのでしょうか。「インド洋での阻止活動」によって、一体何人の「テロリスト」が逮捕されたのか、ご存知なのでしょうか。

 第2に、「海上自衛隊による参加国艦船への給油活動は、米から強い要請があるのは事実だ。だが、米の外交軍事姿勢に一線を画す仏、独、イスラム教国で米国から艦船への補給を受けたくないパキスタン海軍などにとっても、日本の給油は実は非常に重要なのだ」と仰っています。それでは、「パキスタン海軍」は自衛隊からどれほどの「給油」を受けているのでしょうか。パキスタン海軍はフリゲート艦1隻しか派遣していないというのはデタラメなのでしょうか。

 第3に、「今、インド洋から海上自衛隊が引き揚げたら、各国の活動は大きく停滞するだろう」とも仰っていますが、すでにインド洋での海上補給活動のレベルは低下しています。このような状況の下で、「各国の活動は大きく停滞する」とはどのような事態を指しているのでしょうか。

 第4に、森本先生は、「特措法延長は、決して対米追従ではなく、国際的なテロ阻止活動にとって必要だということを政府はもっと国民に説明すべきだ」とも、語っておられます。「国際的なテロ阻止活動」の重要性は、私にも十分理解できます。それに反対しているわけではありません。
 問題は、アメリカが始めた「テロとの戦い」が、「国際的なテロ阻止活動」になっていないのではないか、逆に、「国際的なテロ増大活動」になっているのではないのか、という点にあります。アフガンやイラクにおいてもテロ活動は増大し、スペイン、イギリス、インドネシア、アルジェリアなどにまで、国際テロが拡大しました。このようなアメリカの「国際的なテロ増大活動」に自衛隊が協力することは正しいのでしょうか。

 森本先生とは、一度、日本テレビの「太田総理」の番組でご一緒したことがあります。もし今度、お会いすることがありましたら、これらの点についてご意見をうかがいたいものです。

さて、臨時国会でのテロ対策特措法の延長にしても新法の制定にしても、これを断固阻止するべきだというのが、私の主張です。それには、さし当たり、3つの意味があるからです。

 第1に、日本の外交・安全保障政策の歪みをただし、憲法の枠内に引き戻すことです。「テロとの戦い」に日本も参加し、国際的な安全と平和のために貢献することは当然ですが、しかし、それは非軍事的な領域で非軍事的な手段によって行われなければなりません。
 この点で、日本は憲法9条の制約があるのだということ、だから日本は武力の行使や武力による威嚇によらない形で国際貢献を行うのだということを、改めて国際社会に明示する必要があります。
 以前はアメリカも、この「憲法上の制約」を理解していましたが、この間の日本政府の誤った対応によって軍事的貢献への「期待値」が高められ、このような「制約」に対する配慮を忘れてしまったようです。インド洋から海自が引き上げることは、このような憲法上の「制約」を、アメリカはじめ各国に思い起こさせるうえで極めて効果的でしょう。

 第2に、改憲と「戦後レジームからの脱却」という誤った「野望」を捨てていない安倍首相の命脈を絶つことです。オーストラリアでの記者懇談で、安倍首相は衆院解散について、「今、全く考えていない」と述べ、海自の活動継続ができなかった場合や参院で首相の問責決議案が可決された場合の対応としても「解散は考えていない」と明言しました。
 つまり、一方で、「対外的な公約であり、私の責任は重い」と言い、他方で、「解散は考えていない」と言ったわけです。「公約」が果たせなかった場合、首相を辞任するということでしょう。
 自分のクビを差し出す代わりに海自の活動継続を可能にして欲しいと、民主党などに取引を持ちかけるつもりなのかもしれません。そのようなことを許さず、海自をインド洋から引き揚げさせ、同時に、安倍首相に引導を渡すことが必要です。

 第3に、アメリカを「対テロ戦争」の泥沼から救い出すチャンスとすることです。アメリカはベトナム戦争の教訓に学ぶこともせず、イラクでもアフガンでも「泥沼」状態に陥りました。
 このような状態からどのようにして抜け出せるのか。ブッシュ米大統領は「出口戦略」で苦悩しているにちがいありません。
 すでに、多くの国が引き揚げています。イラクのバスラからは、イギリス軍も撤退を始めました。これに続いて日本の海上自衛隊がインド洋から引き揚げれば、ブッシュ大統領を目覚めさせることができるかもしれません。
 海自の引き揚げによって日本が手を引けば、ブッシュ大統領には政治的な打撃となるでしょうが、そのためにかえって、アメリカ軍の撤退を早めることになります。「泥沼」の中で呻吟している米軍兵士に救いの手をさしのべることになり、ひいては、ブッシュ大統領を救うことにもなるでしょう。

 なお、この問題については「テロとの戦い」の役に立たなくても、日米同盟のためには引き揚げてはならないという主張があります。アメリカにとって海自は「側にいてくれるだけでいい。黙っていてもいいんだよ」というわけです。
 これは、「テロ対策」というよりも、「アメリカ対策」のための継続論にほかなりません。しかし、同盟維持のためだからといって、何でも相手の言うことを聞かなければならないというのは暴論です。
 この程度のことでヒビが入るなどと心配するのは、日米同盟への信頼が欠けているからだと言わざるを得ません。日米間の結びつきは、海自が引き揚げたくらいでガタガタするほどヤワなものなのでしょうか。

 また、北朝鮮との関係や拉致問題との関連を指摘する議論もあります。「テロとの戦い」でアメリカに協力しなければ、拉致問題の解決でアメリカの協力が得られないというのです。
 しかし、このような議論はすでに破綻しています。北朝鮮のテロ国家指定解除は既定路線となっており、アメリカは日本政府を「裏切った」からです。
 アメリカは、かつて頭越しでの米中和解を行い、今度もまた頭越しでの米朝和解を行いました。日本政府は、2度もアメリカに「裏切られた」ことになります。
 イラクのサマワに陸自を送り、インド洋では海自によってただの燃料補給を行うなど、「テロとの戦い」に協力したにもかかわらず、日本はアメリカによってこのような仕打ちを受けたのです。いつまで、アメリカに義理立てするつもりなのでしょうか。

 外交・安全保障政策を自主的自立的に決定することは、独立国としての最低限の条件でしょう。今度の臨時国会は、日本という国が、このような条件を備えているかどうかが試される、極めて重要な機会になるにちがいありません。


nice!(0)  コメント(5)  トラックバック(14) 

nice! 0

コメント 5

同感です

僕ちゃん、約束ちちゃったから。国民のみなたん、言うことを聞いてくだたい。という総理大臣はいないほうがましです。でも、これはコイズミが先鞭をつけた手法であることも、忘れないでおきましょう
by 同感です (2007-09-10 00:17) 

天声人後

>なお、この問題については「テロとの戦い」の役に立たなくても、日米同盟のためには引き揚げてはならないという主張があります。

テロ特措法は、日米同盟にすら資さないのではないでしょうか。
それは、単なるブッシュお助け政策に過ぎないと思います。
次期与党が予想されるアメリカ民主党の中東政策は、原油利権派のネオコンやブッシュ政権とは異なるはずです。
by 天声人後 (2007-09-10 13:40) 

UGG ブーツ

http://www.vikishoes.com
トリーバーチ 靴

http://www.vikishoes.com/5--
トリーバーチ シューズ

http://www.vikishoes.com/8--04-boots
トリーバーチ ブーツ

http://www.vikishoes.com/6-wedges
トリーバーチウェッジヒールで

http://www.vikishoes.com/7-heels
トリーバーチハイヒール

http://www.vikishoes.com/9--
トリーバーチバッグ

http://www.vikishoes.com/10--boots
UGG ブーツ
by UGG ブーツ (2011-12-13 19:24) 

スーパーコピー

2012年人気最新品★時計★全新登場
★2012年人気最新品
--------------------------
★2012年超人気!随時更新
*☆*----*----*-----☆----*☆----*☆----☆*-*☆
顧客は至上
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
※超人気最新品※┃特恵中┃
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
http://www.yahoo-watch.com/product/product_1.html
*----*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*----*
┃超人気新作N品登場☆注文を期待┃
*----*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*----*
_______________
┓┏┓┏┓
┻┗┛┗┛%品質保証 満足保障。
信用第一、高品質 安心 最低価格保証
品質がよい、価格が低い, 現物写真
期待,ご注文の方は!
■店長: 山田 慶太
当社URL:http://www.yahoo-watch.com
連絡先:yahoowatch163@gmail.com
by スーパーコピー (2012-02-25 15:03) 

ルブタン 靴 通販

あなたはブリーフケースがあまりにも厳しいと思われる場合は、ルブタン 靴 通販 ブリーフケースを運ぶためにしようとする女性のスタイルのバッグを反映しています。ルブタン シンデレラ 利点は、より合理的なあなたは多くの専門家でなければなりませんよりもビニール袋や紙袋を持って、クリスチャン ルブタン 財布 多くのオブジェクトとして配置することである。バック財布、トリーバーチ激安女性は右の上を歩くの女性と男性の対応が習慣、右の肩に戻っているはずです。ブリーフケースやハンドバッグ、変更の手と不意つかまえた。
http://www.louboutinjp.com/ ルブタン 靴 通販
http://www.louboutinjp.com/ ルブタン シンデレラ
http://www.louboutinjp.com/ クリスチャン ルブタン 財布
http://www.louboutinjp.com/brand/chanel-shoes/ CHANEL 靴 2012
http://www.louboutinjp.com/brand/christian-louboutin-mens/ ルブタン メンズ 靴
http://www.louboutinjp.com/brand/christian-louboutin-sandals/ クリスチャンルブタン サンダル
http://www.louboutinjp.com/brand/gianmarco-lorenzi/ ジャンマルコロレンツィ 店舗
http://www.louboutinjp.com/brand/miu-miu/ ミュウミュウ 靴 通販
http://www.louboutinjp.com/brand/salvatore-ferragamo/ フェラガモ 店舗
http://www.louboutinjp.com/brand/jimmy-choo/ ジミーチュウ 靴 店舗
http://www.louboutinjp.com/brand/mellisa/ メリッサ 靴 取扱店

by ルブタン 靴 通販 (2012-08-13 10:12) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 14