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5月4日(土) 偽りの政治改革を推進した佐々木毅東大名誉教授はまず自己批判するべきだ [ 政治改革]

 先日のテレビのニュースで、懐かしい顔に出会いました。佐々木毅東大名誉教授です。現在、大きな問題になっている裏金事件に関連して「政治とカネ」の問題についてコメントしていました。「悪魔は細部に宿る」などと。
 佐々木さんは、かつてリクルート事件や金丸脱税事件を契機に政治改革が大きな課題となった時、政治改革推進協議会(民間政治臨調)の主査として主要なメンバーでした。1994年に小選挙区比例代表並立制と政党助成金が導入された政治改革関連法が成立しますが、それを実現させた責任者の一人だといって良いでしょう。
 私としては懐かしかった半面、どの面下げて出てきたのかと言いたい気持ちになりました。30年前、今と同様に「政治とカネ」が問題になったとき、佐々木先生が何を言い、どのような役割を演じたのか、インタビューした記者は分かっていたのでしょうか。

 私は1997年に労働旬報社から出した拙著『徹底検証 政治改革神話』で、次のように書いて佐々木先生を批判しました。小選挙区比例代表並立制による総選挙が終わったにもかかわらず政治の現状が変わらないと指摘していたからです。
 「一旦変化が始まれば、国民は、政治家たちが当初、考えていた所よりも遥かに遠くまで彼らを連れて行くであろう」(『朝日新聞』92年3月20日付夕刊)と請け合い、「細川政権の運命は、政治改革法案を速やかに成立させることができるかどうかにかかっている」(『朝日新聞』93年8月6日付)と尻をたたいた、佐々木教授自身の責任はないのでしょうか。
 もし、「政治改革法の成立」が「戦後政治における一つの革命的な出来事」(『朝日新聞』94年2月16日付)であったとするなら、また「政治改革はまさに政治家自らが惰性を断ち切るために行った特筆すべき自己改革」(佐々木毅『政治家の条件』講談社、1995年、219ページ)であったなら、このような「革命的な出来事」や「自己改革」の成果は、一体どこに現れているのでしょうか。(同書、73頁)

 今では、この時の政治改革法の成立によって政治が改革されなかったことは明らかです。選挙制度が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に代わり、政党助成金が導入されたにもかかわらず企業・団体献金は廃止されず、政治資金パーティーという抜け穴の存続によって政治腐敗を助長することになったからです。
 朝日新聞も佐々木教授も誤っていました。私は「このような『革命的な出来事』や『自己改革』の成果は、一体どこに現れているのでしょうか」と問いかけましたが、その答えは明らかです。そのような「成果」などは全くなかったのです。
 このとき政治改革法案の成立を後押ししたメディアも研究者も、自己批判するべきでしょう。あなたたちの責任は大きい。日本の政治と自民党を腐らせた責任はあなたたちにある。
だから、その責任を取るべきです。「悪魔は細部に宿る」などと言ってごまかすことは許されません。その「悪魔」を導き入れてしまったのは、あなたたちだったのですから。

 今度こそ、本当の政治改革が求められています。30年前にすでに懸案となっていた企業団体献金は当然禁止されるべきです。前掲の拙著第4章で、私は「『政治改革のやり直し』の提案」を行い、「新選挙制度に対する提案」や「三悪(小選挙区制・政党助成金・企業団体献金)の廃止を」主張しました。27年前に出した拙著でのこれらの提案を、今こそ真剣に検討していただきたいものです。
 企業団体献金は、本来であれば企業やその従業員、団体やその構成員のために使われるべき資金が、政党や政治家の手に渡ることを意味しています。企業や団体の構成員からすれば、政党助成金という形で税金を負担していますから二重払いのようなものです。
 企業からすれば、設備投資や賃上げに回すべき原資を政治につぎ込むことになります。それが効果を生めば賄賂になり、効果を生まなければ背任になります。どちらにしても大きな問題を生むことに変わりありません。こんなことは、もうやめるべきでしょう。

 選挙での買収や飲み食いに使われる可能性のある金をせびられてきた企業の側から、もう出すのはやめにしたいと言うべきです。健全な政治を発展させる民主主義のコストどころか政治腐敗の温床となってきたことは明らかなのですから、
 もうもらうわけにはいかないと、自民党の側からも断るべきでしょう。それが正当な政治活動に使われたかどうかは疑わしく、実は民主主義を腐らせる毒薬だったのではないかという疑いが生じているのですから。
 それでもなお、企業団体献金に頼ろうとするのであれば、自民党はもはや麻薬中毒患者に落ちぶれてしまったということではないでしょうか。中毒を治すためには、政権交代によって権力の座から引きずりおろし、治療に専念させるしかありません。これは金権腐敗によって全身を蝕まれてしまった自民党が近代的でクリーンな政党へと生まれ変わるためにも必要な処置ではないでしょうか。

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