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9月23日(日) こんな老朽船で嵐の海を乗り切れるのか  [論攷]

  「これで自民党は終わりだな」と、思いました。福田康夫自民党総裁が誕生したテレビ画面を見ていたときです。

 福田さんは、「負けるが勝ち」になったわけです。昨年の総裁選挙では、安倍さんに負けたわけですから……。
 あの時、圧倒的な差を付けて勝った安倍首相は入院中で姿さえ見せず、立候補できずに敗退した福田さんが後継の新総裁に選ばれました。まことに、人生とは分からないものです。

 総裁選の結果は、投票総数528票、無効票1票(多分、安倍さん)、有効票527票、福田330票(63%)、麻生197票(37%)でした。議員票は、福田さん254票で麻生さんが197票、地方票は福田さんが76票で麻生さんが65票です。
 福田さんは6割以上を得票しましたが、派閥の圧倒的支持や事前の7割という予測に比べれば、少ないように思われます。麻生さんの善戦と言いたいところですが、先のことを考えて、あまり差が付かないように調整した派閥があったのかもしれません。
 というのは、麻生さんの得票のうち、議員票が予想よりも多く、地方票が予想ほどではなかったからです。したがって、麻生さんの「善戦」は、地方票によるものではなく、圧倒的に不利と見られていた議員票で巻き返した結果でした。

 それにしても、「この10日間はいったい何だったのか」と言いたくなります。投票を受け付けたその日に勝敗が決まっており、そして、結果もまたその通りになったのですから……。
 選挙期間は3日もあれば十分だったでしょう。国会を開店休業にしてまで、これほど長くやる意味がどこにあったのでしょうか。
 次の総選挙の顔として福田さんを売り込みたいという計算が見え見えです。マスコミを占領して、少しでも自民党の宣伝に利用したいという思惑に振り回されてしまったような、苦い思いが残ります。

 それにしても、不毛な「勝負」でした。勝負というものは、思いもかけないサプライズによって予想を覆す結果になったとき、最も盛り上がるものです。
 そのような盛り上がりは、ダークホースの福田さんが立候補を表明し、本命だった麻生さんの優勢をあっと言う間に覆した最初の瞬間に訪れただけです。実は、私は最後の瞬間に「2度目のサプライズ」があり、再度の盛り上がりがあるのでは、と懸念していました。
 1回目は、麻生有利を覆すサプライズによって「古い自民党」に依拠する福田優勢を演出し、2回目は、その福田優勢を、麻生人気というもう一つのサプライズによって覆し、安倍路線を引き継ぐ麻生総裁を誕生させるのではないかと……。

 もし、そうなれば、もともと本命だった麻生さんが、そのまま当選することになります。しかも、「2度のサプライズ」によって、求められる指導者という新たな装いを凝らしながら麻生さんが登場することになります。
 そうなったら、自民党は手強い。まさか、それほどの策士はいないだろうけれど、しかし、小泉さんの例もあるからヒョッとして……。
 とまあ、チラリとそう思ったせいもありまして、9月17日のブログ「「政府の顔」と「選挙の顔」の選択」http://blog.so-net.ne.jp/igajin/2007-09-17に、「ヒョッとしたら、麻生さんの逆転もあるかもしれません」と書いたのです。

 しかし、そうはなりませんでした。「第2のサプライズ」はなく、平穏無事に、ということは、何のドラマもサプライズも、そして、盛り上がりもなく、当初の予想通り、福田さんが選ばれたというわけです。
 私の懸念はただの杞憂に終わりました。やはり、自民党は小泉前の古くて凡庸な政党に戻ったようです。
 福田さんを選んだ自民党は、「2度目のサプライズ」を演出する知恵もエネルギーも持ち合わせてはいませんでした。これなら大丈夫です。野党にとっては、付け入る隙だらけの攻撃しやすい自民党の復活ということになるでしょう。

 新しい自民党への改革路線という「劇薬」に懲り、さりとて、古い自民党に戻りきることもできないというのが、今の自民党の姿です。突然の安倍辞任による総スカンという悪印象を振り払い、党内の団結を回復することだけを最優先に、安定感と安心感を求めた結果が、今回の福田選出でした。
 福田・麻生の対決とはいっても、同じ世襲議員で元首相直系の親族、臨時国会での最大の焦点であるインド洋での給油活動の継続問題でも、「政治とカネ」や小泉改革の継承問題でも、争点を明確にできませんでした。同じ穴のムジナが争っても、「キャラが立っているか」「キャラが寝ているか」という程度の違いしかありません。
 その結果、選ばれたのが、高齢で健康不安を抱え、「もう、年も年だし」と言っていた福田さんです。まるで、使い古した老朽船で嵐の海にこぎ出そうとするようなものではないでしょうか。

 今日の『日経新聞』には、「自民党にとってはかつてない厳しい時代。今までのように派閥で総裁を決めていたら先はない」という、「東京都世田谷区の自営業の男性(60)」の「党員の声」が紹介されていました。今回の福田さんの選出は、結果的には、「派閥で総裁を決めていた」通りになりました。
 つまり、自民党に「先はない」ということになります。


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夢は夜萎む

鬼太郎とネズミ男の勝負はネズミ男の勝ち。

5年続いたコネズミ政権の後、ネズミ男の政府が2代続きます。
by 夢は夜萎む (2007-09-24 10:31) 

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