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3月17日(月) 経済財政諮問会議の変質は05年から始まっていた [論攷]

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 昨日のブログで2006年に転換したとする「2006年転換説」について書きましたが、変化の予兆は、早くも2005年11月に始まっていたようです。2005年8月の郵政選挙から3ヵ月、10月の郵政民営化関連法案の成立からわずか2週間後のことです。

 05年10月31日、小泉首相は4回目の内閣改造を行いました。この改造によって、一つの変化が生じたのです。
 構造改革の「エンジン」の一つであった竹中平蔵経財相が総務・郵政民営化担当相に横滑りしました。このときの様子について、竹中さんは著書の中で、次のように書かれています。

 私は4年半、経済財政政策担当大臣として議事の進行役にあたってきた。2005年10月31日、郵政民営化関連法案が成立してから2週間後に、小泉内閣としては最後、4回目の内閣改造が行われた。私は経済財政担当をはずれ、総務大臣を命ぜられた。総務大臣は、地方財政や行政改革を担当する大臣であり、小泉内閣では諮問会議のメンバーとなっている。改造後初の諮問会議は、内閣改造から10日後の11月9日水曜日に開催された。これまで総理の隣で司会役をしていた私は、総務大臣として初めて左サイド日銀総裁の隣の席に座った。諮問会議の景色が、これまでとはどこか違って見えた瞬間だった(竹中平蔵『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』日本経済新聞出版社、2006年、298頁)

 このように、竹中さんは「諮問会議の景色が、これまでとはどこか違って見えた瞬間だった」と述懐していますが、それは座る位置が変わったからだけではありませんでした。経済財政諮問会議の役割自体の変化をも予兆するものだったのです。
 この後、諮問会議と自民党との関係は次第に変化していきます。政策形成の主体が、諮問会議から自民党に戻り始めていたからです。
 これについて竹中さんは、前掲の著書の中で次のように述べています。

 歳出歳入一体改革という重要課題を議論する舞台が、実質的に党に移ったことで、経済財政諮問会議は春頃から急に静かな雰囲気になった。最も象徴的な変化は、諮問会議そのものが極めて短時間で終わるようになったことだった。……
 それ以前、年が明けた頃から、私は諮問会議の変質に警告を与えるために敢えて批判的な発言をしていた。
 「諮問会議は、エンジンからアリーナになった」
 という発言だった。よく、諮問会議は改革のエンジンと言われるが、いまや諮問会議はエンジンではなく、利害がぶつかり合う「場」、すなわちアリーナになった、という主張だった。改革の勢い(モメンタム)が落ちた、という言い方もしていた。……しかし、歳出歳入改革の舞台が党に移り、また時間も短く終わる諮問会議の姿は、もはやアリーナですらなくなったのか、と思えるほどだった。こういう状況は、それまで4年半諮問会議運営を担当してきた私としては非常に残念なことであった(同前、318頁)

 ここで竹中さんが指摘しているのは、「諮問会議の変質」という問題です。2006年が「明けた頃から」、それはもはや改革の「エンジン」ではなく、利害がぶつかり合う「アリーナ」に変わり、さらにその後、「改革の勢い(モメンタム)が落ち」て、「もはやアリーナですらなくなったのか、と思えるほど」の状況になりました。それは、構造改革を推進してきた竹中さんにとっては「非常に残念なこと」だったのです。
 つまり、2006年に入ってから、諮問会議は改革の「エンジン」としての機能を低下させていたということが確認できます。私の言う「2006年転換説」の根拠の一つがここにあります。

 しかし、労働の分野では、いささか事情が異なっています。労働分野の規制緩和をめざす時季はずれの「エンジン」が、新たに経済財政諮問会議に取り付けられたからです。
 それは、安倍内閣の発足と同時に改編された諮問会議に、4人の民間議員の一人として起用された八代尚宏国際基督教大学教授にほかなりません。この方は、06年12月に設置された「労働市場改革専門調査会」の会長に就任し、ホワイトカラー・エグゼンプションなどの「労働ビッグバン」を一気に進めようとします。
 しかし、翌07年1月からの「労働国会」は不発に終わり、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入も断念されます。その背景には、竹中さんが嘆くような「改革の勢い(モメンタム)が落ち」ていた経済財政諮問会議の問題もあるでしょうが、それだけではありませんでした。

 2006年における変化は極めて構造的であり、多方面で生じていたのです。ということで、この続きはまた明日……。


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SGW

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◇◇◇
趣旨の全文
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/forum2/13477.html
by SGW (2008-03-18 19:10) 

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