10月14日（火） 一関から平泉へ、そして次の世代へ [日常]
────────────────────────────────────────
拙著『労働再規制－反転の構図を読みとく』（ちくま新書）刊行中。240頁、本体740円＋税。
ご注文はhttp://tinyurl.com/4moya8またはhttp://tinyurl.com/3fevcqまで。
────────────────────────────────────────
今回の東北の旅には、同行者がいました。大宮から大宮まで、S先生との「弥次喜多道中」を楽しむことができました。
ところで、昨日の記述に補足しておきましょう。本当に、新渡戸稲造は「教育の目的」の２番目に「道楽」を挙げていたのか、と尋ねる人がいたからです。
その通りです。ここに、展示されていた全文を掲げておきましょう。
教育の目的とは、第一職業、第二道楽、第三装飾、第四真理研究、第五人格修養の五目に岐れるのであるが、之を煎じつめて云はヾ、教育とは人間の製造である。
もう一つの補足は、共通論題「ワーキング・プア」の報告を聞いた感想です。拙著『労働再規制』との関わりを意識していたためか、問題解決に向けて四者連携の必要性を強く感じました。
「四者」というのは、マスコミ、研究者、労働運動、政策形成主体の四つです。労働の現場が生み出す現実の問題は、マスコミによって報じられ、研究者がその意味と解決の方向を明らかにし、それに沿って労働運動が政治に圧力をかけ、官僚や政治家などの政策形成主体が政策の転換を図るという、一連の過程によって解決されるということです。
この四者連携によって政策が変化すれば、労働の現場が変わり、また、それに応じた新たなサイクルが始まることになります。つまり、マスコミ→研究者→労働運動→政策形成というサイクルの繰り返しによって、労働現場の改善が図られるというのが望ましいモデルなのではないでしょうか。
などということを考えながら、学会の会場を抜け出しました。盛岡駅から新幹線に乗って向かったのは一関です。翌日は、久しぶりに再会したTさん夫妻と共に定期観光バスで平泉に行く計画だったからです。
翌朝、バスが出発するまでの間、近くにあった「世嬉の一酒造」の蔵元を訪問しました。ここには、資料館やレストラン、売店などもあり、観光バスが立ち寄ることもあるといいます。
自宅向けにお酒の発送を行って売店のお姉さんと仲良くなり、６種類ものお酒を試飲させていただきました。そのうえ、お土産に酒粕から作ったという飴までいただきました。ご馳走様でした。
ほろ酔い機嫌で乗り込んだバスは、奇岩と渓谷美の厳美渓（げいびけい）、坂上田村麻呂によって建立されたという達谷窟（たっこくのいわや）毘沙門堂に立ち寄った後、毛越寺（もうつうじ）に到着しました。ここには、再建された本堂、浄土庭園、大泉が池以外、何も残っていません。
広大な敷地と南大門跡の敷石が、かつての栄華を思い起こさせるのみです。平安時代の優美な作庭造園の形状を如実にとどめている枯山水風の築山、遺水などは、京都の文化的影響力の大きさを示しています。
ここ平泉にあった華麗にして荘厳な寺院群は、藤原氏と鎌倉幕府との戦によって灰燼に帰してしまいました。まさに芭蕉の詠んだとおり、「夏草や、強者どもが夢の跡」となってしまったのです。
ところが、金色堂に行って驚きました。この周辺だけは、戦火を逃れて残っていたのです。
しかも、金色堂を保護するための旧覆い堂は、鎌倉幕府によって建てられたといいます。これには、大いに感心してしまいました。
もし、このような覆い堂がなければ、厳しい風雪にさらされ、金色堂は今日のような姿を保つことはできなかったことでしょう。敗北して滅んだ藤原方も金色堂には火をかけず、攻めて打ち勝った鎌倉方も金色堂を粗略には扱わず、保護するための覆い堂を作ったのです。
それは金色に輝く堂の力だったのでしょうか。あまりの美しさに、敵味方共に失うことを恐れたのでしょう。
それは人間の心に訴える美の力だったのではないでしょうか。新しい覆い堂の中で燦然と輝く金色堂を目にしながら、私はそう思わざるを得ませんでした。
もちろん、宗教的な力が働いたとしても不思議ではありません。いにしえの人々が、この金色に輝く光の彼方に極楽浄土を夢見たとしても、それは当然のことのように思えるからです。
京の都はもとより、関東からも遙か遠く離れた北辺の地に、これほどの文化と栄華が花開いたということに大きな驚きと感動を覚えました。どのような地であっても、人は育ち、文化の花は開くのです。
しかし、それを受け継ぎ、後世に伝えることは容易ではありません。日本だけでなく、世界各地の文明はやがて滅び、変遷の歴史をたどってきました。
今の世に生きる私たちも同様です。戦後60年以上にわたって育んできた平和と富、そして文化を、そのまま次の世代に引き継ぐことができるのでしょうか。
拙著『労働再規制－反転の構図を読みとく』（ちくま新書）刊行中。240頁、本体740円＋税。
ご注文はhttp://tinyurl.com/4moya8またはhttp://tinyurl.com/3fevcqまで。
────────────────────────────────────────
今回の東北の旅には、同行者がいました。大宮から大宮まで、S先生との「弥次喜多道中」を楽しむことができました。
ところで、昨日の記述に補足しておきましょう。本当に、新渡戸稲造は「教育の目的」の２番目に「道楽」を挙げていたのか、と尋ねる人がいたからです。
その通りです。ここに、展示されていた全文を掲げておきましょう。
教育の目的とは、第一職業、第二道楽、第三装飾、第四真理研究、第五人格修養の五目に岐れるのであるが、之を煎じつめて云はヾ、教育とは人間の製造である。
もう一つの補足は、共通論題「ワーキング・プア」の報告を聞いた感想です。拙著『労働再規制』との関わりを意識していたためか、問題解決に向けて四者連携の必要性を強く感じました。
「四者」というのは、マスコミ、研究者、労働運動、政策形成主体の四つです。労働の現場が生み出す現実の問題は、マスコミによって報じられ、研究者がその意味と解決の方向を明らかにし、それに沿って労働運動が政治に圧力をかけ、官僚や政治家などの政策形成主体が政策の転換を図るという、一連の過程によって解決されるということです。
この四者連携によって政策が変化すれば、労働の現場が変わり、また、それに応じた新たなサイクルが始まることになります。つまり、マスコミ→研究者→労働運動→政策形成というサイクルの繰り返しによって、労働現場の改善が図られるというのが望ましいモデルなのではないでしょうか。
などということを考えながら、学会の会場を抜け出しました。盛岡駅から新幹線に乗って向かったのは一関です。翌日は、久しぶりに再会したTさん夫妻と共に定期観光バスで平泉に行く計画だったからです。
翌朝、バスが出発するまでの間、近くにあった「世嬉の一酒造」の蔵元を訪問しました。ここには、資料館やレストラン、売店などもあり、観光バスが立ち寄ることもあるといいます。
自宅向けにお酒の発送を行って売店のお姉さんと仲良くなり、６種類ものお酒を試飲させていただきました。そのうえ、お土産に酒粕から作ったという飴までいただきました。ご馳走様でした。
ほろ酔い機嫌で乗り込んだバスは、奇岩と渓谷美の厳美渓（げいびけい）、坂上田村麻呂によって建立されたという達谷窟（たっこくのいわや）毘沙門堂に立ち寄った後、毛越寺（もうつうじ）に到着しました。ここには、再建された本堂、浄土庭園、大泉が池以外、何も残っていません。
広大な敷地と南大門跡の敷石が、かつての栄華を思い起こさせるのみです。平安時代の優美な作庭造園の形状を如実にとどめている枯山水風の築山、遺水などは、京都の文化的影響力の大きさを示しています。
ここ平泉にあった華麗にして荘厳な寺院群は、藤原氏と鎌倉幕府との戦によって灰燼に帰してしまいました。まさに芭蕉の詠んだとおり、「夏草や、強者どもが夢の跡」となってしまったのです。
ところが、金色堂に行って驚きました。この周辺だけは、戦火を逃れて残っていたのです。
しかも、金色堂を保護するための旧覆い堂は、鎌倉幕府によって建てられたといいます。これには、大いに感心してしまいました。
もし、このような覆い堂がなければ、厳しい風雪にさらされ、金色堂は今日のような姿を保つことはできなかったことでしょう。敗北して滅んだ藤原方も金色堂には火をかけず、攻めて打ち勝った鎌倉方も金色堂を粗略には扱わず、保護するための覆い堂を作ったのです。
それは金色に輝く堂の力だったのでしょうか。あまりの美しさに、敵味方共に失うことを恐れたのでしょう。
それは人間の心に訴える美の力だったのではないでしょうか。新しい覆い堂の中で燦然と輝く金色堂を目にしながら、私はそう思わざるを得ませんでした。
もちろん、宗教的な力が働いたとしても不思議ではありません。いにしえの人々が、この金色に輝く光の彼方に極楽浄土を夢見たとしても、それは当然のことのように思えるからです。
京の都はもとより、関東からも遙か遠く離れた北辺の地に、これほどの文化と栄華が花開いたということに大きな驚きと感動を覚えました。どのような地であっても、人は育ち、文化の花は開くのです。
しかし、それを受け継ぎ、後世に伝えることは容易ではありません。日本だけでなく、世界各地の文明はやがて滅び、変遷の歴史をたどってきました。
今の世に生きる私たちも同様です。戦後60年以上にわたって育んできた平和と富、そして文化を、そのまま次の世代に引き継ぐことができるのでしょうか。
2008-10-14 21:31
nice!(0)
コメント(5)
トラックバック(0)
民主党の前田雄吉衆院議員が
マルチ商法業界から資金提供を受けて
業界擁護の国会質問を繰り返していた問題が発覚しましたが、
これは民主党にとってダメージとなるのでしょうか。
仮にダメージになるとしたら、
衆院解散は民主党としても先延ばしを望むことになるのでしょうか。
五十嵐先生のご見解をお聞かせください。
by 赤旗購読者 (2008-10-14 23:10)
いいサイトをご紹介しますね
興味があったら、名前をクリックしてくださいね
モンクレール http://www.monclershop.jp
モンクレール http://www.monclersales.jp
モンクレール http://www.moncler.ne.jp
モンクレール http://www.monclerstore.jp
モンクレール http://www.monclersale.jp
トリーバーチ http://www.toryburchshop.jp
tory burch http://www.toryburchshop.jp
ugg http://www.aguboots.jp
ugg http://www.brandfans.jp
アバクロ http://www.brandfans.jp
アバクロエドハーディー http://www.brandfans.jp
by モンクレール (2011-01-05 16:06)
トリーバーチ ブーツ http://www.vikishoes.com/8--04-boots
UGG ブーツ http://www.vikishoes.com/10--boots
トリーバーチ 靴 http://www.vikishoes.com
トリーバーチバッグ http://www.vikishoes.com/9--
人気シューズネットショップは大手ファッションのネットショップです.色々なシューズ レディース,アンクルブーツ,ロングブーツ,ブーツ レディース,パンプス,フラットシューズ,カジュアルシューズをはんばいしています,価格特恵、只今、全品無料になっております.お買い得ですよ.
by リーバーチ ブーツ (2011-11-26 17:49)
シューズ レディース http://www.ninkishop.co
シューズ メンズ http://www.ninkishop.co/6-men-shoes
レディース 靴 http://www.ninkishop.co/7-women-shoes
パンプス http://www.ninkishop.co/17--
靴 紳士 http://www.ninkishop.co/16--
ウェッジソール http://www.ninkishop.co/20--
by レディース 靴 (2012-02-20 16:25)
結婚式 ドレス http://www.elegantjp.com/3074-weddingdress
パーティードレス http://www.elegantjp.com/
二次会 ドレス http://www.elegantjp.com/3072-meetdress
披露宴 ドレス http://www.elegantjp.com/3073-joydress
イブニング ドレス http://www.elegantjp.com/
by 披露宴 ドレス (2012-12-21 16:23)