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4月13日(火) 国民的大闘争を生み出したのは岸元首相のこだわりだったのでは? [国際]

 大森実さん関連で、もう一つ、書いておきたいことがあります。60年安保闘争にまつわるエピソードです。

 今年2010年は、1960年の安保条約改定反対闘争から50年という節目の年に当たります。この国民的な大闘争を生み出したのは、当時の首相だった岸信介のこだわりだったのではないかという気がしました。
 『毎日新聞』4月3日付の岩見隆夫さんの「近聞遠見」を読んだからです。「大森実の『エンピツ一本』」という表題のコラムには、大森実さんの著書を紹介する形で、大変、興味深い次のようなことが書かれています。

 26日死去した国際事件記者、大森実元毎日新聞外信部長が、古希を機に書き下ろした上中下3巻の自分史だ。合わせて1826ページ、通読するのに骨が折れる。
 大森ならではの取材ドラマが随所にあって、どこをピックアップすればいいか、正直迷った。次に記すのは、体当たり主義だった大森らしくない場面かもしれないが、いまにつながっている--。
 新安保条約が国会で承認されたのは1960年6月19日、50周年の記念日が近づいた。50年前、何が起きていたのか。
 不幸は、たまたまアイゼンハワー米大統領(以下アイク)のフィリピン、台湾、日本、韓国をめぐる極東旅行と時期が重なったことだった。露払いで6月10日、ハガチー大統領報道官が来日したが、羽田空港でデモ隊に包囲され立ち往生、ヘリで救出、翌日離日、いわゆるハガチー事件だ。
 アイクは12日、ホワイトハウスを出発、96人の随行記者団の中に日本人でただ一人、ワシントン支局長の大森がいた。
 中継地のアンカレジのバーで、じっこんのハガチーが大森にささやいた。
 「日本政府は、羽田空港からパレス(皇居)へのモーターケイドの道を自衛隊で固めるというんだ」
 「そんな馬鹿(ばか)な!」
 「その通りだ。断ると、こんどは、オオモリ、絶対オフレコだよ。大統領専用機を立川の米軍基地に着けろという。立川からヘリでパレスに、と言いだした」
 「ふーん」
 「お断りした。いやしくも、アメリカ合衆国の大統領が裏門からヒロヒトに会いに行くわけにはいかないよ」
 マニラに着くとアイクは熱狂的な歓迎を受けた。深夜のプレスセンターで、大森は4、5人の米人記者に囲まれる。
 「オオモリ! 大変だ、東京で女子大生が殺されたぞ!」
 「ハガチーを叩(たた)き起こせ!」
 と大森は怒鳴っていた。ハガチーがやってきて言った。
 「大変なことになってしまった。オオモリ、これはどういうことになると思うかね」
 「大統領の訪日を中止する事態を覚悟すべきだ」
 マニラから台北に向かう軍艦のなかで、ハガチーは大森のひと言で心を決めたことを告げた。
 「残念な結果になったが、君には非常に大事な瞬間に助けてもらった。ありがとう。このお返しは必ずするよ」
 アイク訪日中止が直接のきっかけで、岸政権は退陣を余儀なくされた。1年後、大統領はケネディに代わっていたが、ハガチーは約束を守る。アイクとの単独会見だ。
 大森がゲティズバーグのアイクの牧場を訪れ、まず問うた。
 「あなたの訪日と日本の条約批准が重なったのが問題だったと思わなかったのか」
 「それはまずいと思ったので、ハーター(国務長官)に時期をずらすよう何回も申し入れさせたのだが、岸(信介)首相は聞き入れてくれなかった。ほかの3国首脳もぜひあの時期にと言うので……」
 とアイクの答えだった。
 「日本の世論とデモの報告を聞いても、やっぱり」
 「あの条約の反対者は日本の少数世論で、絶対多数は歓迎しているんだと、岸首相は何度も言ってきた。私はその言葉を信じたのだ」
 アイゼンハワーは安保改定の9年後に亡くなったが、日米のズレはいまも続いている。大森を継ぐエンピツ1本はますます重要だ。

 この岩見さんのコラムの「どこをピックアップすればいいか、正直迷」いました。結局、大半を引用することになり、長くなってしまいました。
 ここで、岩見さんが紹介している事実は、①羽田空港から皇居への道を自衛隊で固めたり、大統領専用機を横田基地に着陸させ、そこからヘリで皇居に行く案を提案したこと、②アイゼンハワーの訪日中止は大森さんがアドヴァイスしたことで、それにハガチーが従ったこと、③訪日と安保条約の批准が重なったのは「まずい」と思い、「時期をずらすよう何回も申し入れさせたのだが、岸(信介)首相は聞き入れてくれなかった」ことなどです。これらの事実からは、岸首相の執念のようなものが感じられます。

 新安保条約は5月19日の深夜から20日の未明にかけて、衆院本会議で可決・成立しました。5月19日の衆院安保特別委員会で自民党は質疑を打ち切って強行採決し、議場が混乱するなか、清瀬一郎衆院議長は警官500人を導入して社会党議員の座り込みを排除して本会議を開会します。
 本会議では、野党や与党反主流派が欠席のまま、まず、会期の50日延長を議決しました。そして、5月20未明、新安保条約を討論なしで自民党単独で強行可決します。
 この力ずくの議会運営に対して、国民は議会制民主主義の破壊だとして危機感を高め、国会議事堂の周囲をデモ隊が連日取り囲みました。こうして、安保闘争は一気に国民運動としての盛り上がりを示すことになります。

 どうして、岸首相はこれほどの強硬手段を取ったのでしょうか。なぜ、5月19日にこだわったのでしょうか。
 その理由は、はっきりしています。アイゼンハワーの来日に合わせたかったのです。「たまたま……時期が重なった」わけではありません。
 安保条約が自然成立する6月19日に、アイゼンハワーは日本にやってくる予定になっていました。そして、1858年6月19日に日米修好通商条約が結ばれ、1860年5月23日(万延元年4月3日)に新見正興を正使とする幕府の遣米使節がアメリカ国務省を訪れて日米修好通商条約批准書の交換をしています。アイゼンハワーの訪日は、日米修好通商百周年記念行事の一環としてのものだったのです。

 つまり、良いところを見せたかったんでしょうね、岸さんは。アイゼンハワー米大統領に……。
 そのために、渋るアメリカから「時期をずらすよう何回も申し入れ」があったのに、野党や国民の抵抗を排して遮二無二安保条約を批准させ、自衛隊までつかって反対運動を押さえつけようとしました。それはアメリカの望むところではなかった、ということが重要です。
 岸首相は、自分の考えでそうしようとしたのであり、その執念とも言えるこだわりが様々な齟齬を生む結果になったわけです。振り回されたのは、アメリカ政府首脳と日本国民でした。

 岸首相が元A級戦犯で、対米戦争開戦時の閣僚だったことが、安保闘争に火をつけたと言われています。それだけでなく、岸さんのつまらない見栄と意地も、安保闘争の高揚に大きな意味を持ったのかもしれません。
 いずれにしても、岸元首相の責任は限りなく大きいと言うべきでしょう。こんな人が、戦前のみならず戦後においても、日本の命運を左右していたのですから、たまったものではありません。

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by モンクレール (2011-08-24 13:13) 

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