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12月18日(木) 史上最低の投票率を生み出した責任の一端は維新の党にもある [解散・総選挙]

 投票率がこんなに低くて、国民の信任を得たと言えるのだろうか。衆院選の結果を見た人の多くが、そう思ったことでしょう。

 だって、選挙での投票率は小選挙区で52.66%、比例代表で52.65%にすぎず、有権者の半分弱は投票所に向かわなかったのですから。その結果、小選挙区で自民党が222議席を得たにもかかわらず有権者内での割合(絶対投票率)は24.5%、68議席を獲得して11議席も増やした比例代表にいたっては、たったの17.0%にすぎませんでした。
 つまり、有権者の4分の1、4人に1人以下の投票で自民党は過半数を越える多数議席を獲得したことになります。「こんなのインチキじゃないか」と、多くの人がそう思ったことでしょう。
 このような投票率の低さと、その報道に“ぶち切れ” たのが橋下徹大阪市長です。自分が選ばれた大阪市長選では投票率の低さが散々問題にされたのに、今度の総選挙での投票率の低さについての批判が弱いと、次のように文句を言ったそうです。

 「投票率のところの報道が弱い。メディアは過去最低の投票率だった出直し市長選を『意味がない』と散々批判したのだから、今回も、もっと批判するべきだ」と持論を展開。記者団とのやり取りでヒートアップしていき、「(衆院選は意味がないと)言えよ」と迫った。記者団から「出直し市長選について『意味がない』とは言っていない」との声が上がると、「じゃあ、出直し市長選について『意味がある』と断言しろよ」と怒りをあらわにした。やりとりをしていた記者が「(断言)しません」と返すと、橋下氏は「終わり」と “ぶち切れ” 記者団に取材を打ち切り、足早に立ち去った。

 選挙の投票率が低いことについてもっと問題にすべきであり、批判的な報道が少なすぎるという点については、私もそう思います。しかし、そのことを批判する資格が橋下さんにあるのでしょうか。
 というのは、この投票率の低さを生み出した原因の一端を、橋下さん自身も負うべき立場にあるからです。共同代表を務めている維新の党など「第三極」の凋落と不振が、今回の投票率の低下の重要な一因でした。
 今回の選挙では、前回の選挙と比べて有権者の投票数が小選挙区で488万票(6.66ポイント)、比例代表で544万票(6.66ポイント)減少しています。他方で「第三極」は、前回と比べて小選挙区で710万票、比例代表で1013万票も減らしています。

 このうち、維新の党は小選挙区で262万票、比例代表で388万票の減少です。どちらも、今回票を減らした政党の中では最大となっています(ただし、次世代の党については前回と比較できません)。
 これらの減少分がすべて棄権に回ったとは限りませんが、そのかなりの部分を占めているとの推測も一概には否定できません。前回の総選挙で期待を集めて大躍進した日本維新の会をはじめとした「第三極」が、その後有権者の期待を裏切ったために選挙に嫌気がさして投票所に足を運ばなかったことは十分に考えられるからです。

 前回の総選挙後、日本維新の会は共同代表を務めていた橋下さんによる従軍慰安婦肯定発言などを機に凋落し、もう一人の石原共同代表や平沼さんなどの極右勢力が分裂して次世代の党を結成しました。この次世代の党が支持を集められなかったことが、棄権増大の一因であったかもしれません。
 また、前回の総選挙で健闘し、小選挙区で4議席281万票、比例代表で14議席524万票を獲得したみんなの党も、今回の選挙では姿を消してしまいました。みんなの党から分かれた江田元幹事長らは結いの党を結成して日本維新の会に合流し、江田さんは橋下さんとともに維新の党の共同代表となりました。
 残った人々はみんなの党を解党して散り散りとなり、元代表の渡辺喜美さんは落選しています。まことに無残な末路ですが、そのために投票先を失って棄権してしまった支持者も少なくなかったことでしょう。

 というような事情を考えれば、橋下さんの発言は「天に唾する」ものだと言うべきです。棄権の増大と低投票率を生み出した原因の一つを自ら作っているかもしれないのに、その問題点を報道することが少なすぎると文句を言っているのですから……。
 この橋下さんの批判に応えて、ぜひメディアの皆さんには投票率がなぜこのように低くなったのか、その原因や背景を究明する報道に努めていただきたいものです。そうすれば、旧日本維新の会と現維新の党の共同代表であった橋下さん自身の責任も、自ずと浮かび上がってくるにちがいありませんから……。

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