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8月14日(土) 前進する市民と野党の共闘、待たれる野党連合政権(その1) [論攷]

〔以下の講演記録は川崎区革新懇の『第18回総会記録集 2021年6月12日』に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

はじめに

転換は不可避
 みなさん、こんにちは。今日は「前進する市民と野党の共闘、待たれる野党連合政権」という表題でお話させていただきます。「待たれる野党連合政権」というテーマで話ができる時代になったということです。大変感慨深いですね。
 もう、「変えなきゃならない」「変わらなければならない」ということです。転換は不可避になってきている。それは、日本だけの問題じゃない。世界全体がそうであり、その世界全体の転換の一部として、日本の政治・経済・社会がいま変わろうとしているということなんです。
 なぜ、そうなるのか。パンデミックという感染症の大拡大は、いままでにも何回かありました。そのたびに世界史は大きく変わってきたからです。ペストが大流行した中世では、神様に頼んでも防げない、神様も信用できないということで宗教改革に結びついた。人口が減って労働力が足りなくなる。庶民の発言権が強まり領主の力が弱まって人間賛歌のルネサンスが起こる。
 第1次世界大戦の終り頃にスペイン風邪が流行りました。戦争とスペイン風邪で人間がどんどん死んでいき、非常な貧困状態に陥ってしまった。そのために、戦争が終わってからドイツに過酷な戦後賠償が請求された。これはドイツを苦しめ、ひいてはヒットラーとナチスを台頭させる歴史的な背景になりました。

新自由主義への反省
 いま、新型コロナウイルスの感染が拡大し、同じ資本主義の国々でも対応は様々で、抑え込むことに成功した国とそうでない国に分かれている。そういうなかで政治のあり方、とりわけ医療・介護・福祉などのケア労働の重要性が見直されてきました。今まで、こういうものは不要だといって削られてきた。効率最優先ですよね。健康や病気にならない、こういったものは自己責任だということで、公的な保護をどんどん切りすててきた。これが新自由主義です。
 しかし、コロナ禍のもとで新自由主義的な自己責任、効率優先というやり方は間違っていたのではないかと、今までの政治のあり方に対する反省と見直しが生まれた。アメリカでのトランプ大統領の敗北の背景になったのは、コロナを軽視して感染拡大を抑えられなかったことへの批判です。こういうこともあって、新自由主義に対する反省から、さらに資本主義という仕組みそのものが問題なのではないかという考え方も出てきています。

「新しい政治」の必要性
 こういうなかで、「古い政治はもうだめだ。新しい政治を実現しなければ、わたしたちの健康も命も生活も営業も守ることができない」ということが世界的にあきらかになった。いまG7サミットが開かれていますけれど、ここで大企業は儲けすぎだ。企業減税を一定のところでストップさせるべきだという考え方も出てきている。15%を下回らないということで合意した。
 大企業の儲けすぎを規制して、貧しい人に再配分するべきだと、こういう考え方が当たり前のこととして出てきている。気候変動をストップさせるには、資本のやりたい放題を規制しなければならない。国民の生活、命や安全を守るためには、きちんとした公的な政策が必要だということが当たり前の考え方として出てきました。
 まっとうで当たり前の政治、開発ではなく福祉、効率優先ではなくケアを重視する。貧困を解決して格差を是正し、何よりも人権を大切にする。これが共通の認識として広がってきている。こうして、国際的にも「新しい政治」に向けての動きが徐々に始まってきています。
 今までの政治的対立は左派か右派かなんです。今の政治的対立は、それに加えて新しく政治を変えていく展望を示すことができるかどうか。新旧の対立なんですよ。「古い政治よ、さようなら。新しい政治よ、こんにちは」と。いま、まさに世界はそういう方向に変わりつつある。歴史がここまですすんできたということではないでしょうか。

1、「古い政治」の破綻と行き詰まり

命を守れない自公政権
 日本でも「古い政治」の破綻と行き詰まりは明らかです。とりわけ安倍・菅政権は、政治がどのように破綻し行き詰まっていくのかを示すお手本のようなもので、めちゃくちゃです。自公政権の破綻はもはや覆いがたい。
 政治の最大の役目はなにか。命を守ることですよ。命を守れない、コロナ感染が拡大し、どんどん重症化して亡くなっている。病院に入れずに、自宅で待機している間に亡くなっている人がふえている。大阪は完全に医療崩壊状態です。今まで、維新が公立病院をどんどん減らし看護師養成学校を減らしてきて、今になって看護師が足りない、国に何とかしてくれと泣きついています。
 こういう状況の下でオリンピック・パラリンピックをやると、菅首相はG7で約束してしまった。コロナ感染といういわば「火事」が燃え盛っている中で「焼肉パーティー」をやろうというようなものです。肉を焼いておいしかったという間もなく焼け死んでしまう。
 こういう大変な状況が拡大しているにもかかわらず、6月16日に会期が終わるから通常国会をそのまま閉じようとしている。閉じるべきは国会ではなく、オリンピックでしょう。燃え広がっている「火事」の消火のために出動してきた消防隊が、「勤務時間が終わりましたから、これで帰らせてもらいます」と引き上げてしまうようなものではありませんか。それで良いのか。まだ火が燃えていて鎮火していないというのに。

コロナ対策の大失敗
 政治破綻の象徴がコロナ対策の大失敗です。菅さんは安全安心の大会を開きたいと言っていますけれど、オリンピックを開きたければ、その前提条件をちゃんと整備しておくべきだったんです。今だって緊急事態宣言の最中でしょう。コロナ感染の収束に成功していないからです。成功していれば3回目はなかった。3回目だって、当初の期間に収束していれば延長する必要はなかった。東京は2回も延長している。
 オリンピックが始まれば毎日30万人以上が動く。人流を止めると言いながら「世界の国からこんにちは」。東京に来ないでくださいと言いながら、世界各地から選手団の派遣を求める。こんなダブルスタンダードはありません。当然、感染リスクが増大する。
 先日の党首討論で、これだけ感染リスクがあるのに、それでもなおオリンピック・パラリンピックを開く理由は何かと、共産党の志位さんが質問しても菅首相は答えない。答えられないのです。国民の命よりもオリンピックが大切なのか。祭りを中止しなさいと言いながら、スポーツの祭典だけは別だという。
 人流をふやせば感染リスクがあがると言いながら、幼稚園から高校生まで90万人ほど動員してオリンピックを見せると。選手には公共交通機関を使うなと言いながら、動員する生徒や子どもたちは公共交通機関を使って競技場に行くことになる。こういうちぐはぐな、自分たちも何をやっているのかよくわかっていないのではないかというようなことをやっている。
 感染拡大を阻止するためにやるべきことをきちんとやってこなかったのが最大の問題です。PCR検査をやって実態を明らかにする、大量検査をしてどこにどういう感染者がいるかを明らかにして患者を保護し、医療体制が破綻しないように支援する。休業要請や時短要請に対しては確実に補償を行う。これらをきちんとやってこなかったから、いつまでたってもダラダラと感染が続く。それなのに、オリンピックをやりたがる。危ないという状況をつくりだしたのは菅首相じゃありませんか。オリンピックに対する国民の疑念や批判を高めてきたのは菅首相自身だ。
 オリンピック開催のための前提条件をきちんと整備することに失敗したから、いまこういう状況になっている。統治能力の欠如というほかありません。
オリンピックをやりたい、経済を何とかしたい、支持率を高めたい。こういうよこしまな考えにとらわれて、感染阻止のために全力を集中できない。「国民の皆さんに犠牲をお願いしなければならない、心苦しい」と言いながら、きちんとした説明もしなければ、責任もとらない。質問されてもはぐらかし、まともに答えようとしない。これが菅首相です。
 最近、こういう対応の仕方は「ヤギさん答弁」と言われています。法政大学の上西さんが、「朝ごはん答弁」で有名になりましたけれども、最近は「ヤギさん答弁」。白ヤギさんが出した手紙を黒ヤギさんは読まずに食べた。菅さんは聞かれたことをちゃんと受け止めずに無視して食べちゃうようなものだというのです。こういう答弁をくりかえしてきた。信用できない人のお願いや要請を、国民がまともに受け止めて従えないのは当然でしょう。

判断ミスと愚策の連続
 判断ミスや愚策の連続は安倍前首相から始まっている。
 去年からのことを思い返してみればアベノマスク。あのちっちゃいマスクを付けたのは、安倍さんだけではありませんか。小中高の一斉休校も、子どもを犠牲にしただけで何の効果もなかった。
 典型的な愚策は「GOTOキャンペーン」です。「GOTOトラベル」に「GOTOイート」。まだ感染が収まっていないのに前倒しでやっちゃった。「不要不急の外出を控えてください」と言いながら、「旅行に行こう」ですよ。「なんじゃこれは」です。
 自民党の二階幹事長は「全国旅行業協会」の会長さんなんですね。だから、なんとか旅行業界を活性化しなければならないと考えた。そこで「GOTOキャンペーン」を前倒しして第2波、第3波をひきおこし、慌てて緊急事態宣言の再発令ですよ。そして、まん延防止等重点措置という新しい方策まで打ち出した。今や、まん延防止措置がまん延している状況です。
 本当に、馬鹿なことを平気でやってきた。去年の暮れの臨時国会も、再拡大のリスクが高まっているときに閉じてしまい、延長しなかった。今回と同じです。結局、そのあとに第3次補正予算をくんで1月末くらいから実施した。ちゃんと国会を開いていれば、もっと早く手当てできたはずです。しかも、このときの補正予算も、結局コロナ対策に2割強で、あとはポストコロナの経済対策だ。まだ収まってもいないのに、その先のことを考えている。本当にもう、アホかと言いたい。
 私のところに、昨日も夕刊紙の『日刊ゲンダイ』から電話があって、「こんなのでオリンピックできるんですか」と聞かれました。できるはずないのにやる気でいる。戦時中と同じで、全滅覚悟の「バンザイ突撃」です、これをまたやろうとしている。愚かな戦争指導者の下で、日本は破滅の危機に瀕した。今も同じように破滅の危機に瀕している。
 オリンピックも愚策の「遺産」として残るのではないか。おそらく原発のように。東京電力柏崎・刈羽発電所で、工事が終わったと言っていたのに終わってない箇所が70カ所もあった。嘘とでたらめ。オリンピックはどうなるかわからないけれど、通常の医療業務、コロナ対策、ワクチン接種、熱中症、オリンピックへの対応、これら全部の負担がお医者さんや看護師さんに押し寄せる。「勘弁してくれ」という悲鳴が上がっているなかで強行する。まさに「呪われたオリンピック」と言うしかない。招致に当たっての買収疑惑、「アンダーコントロール」という嘘、エンブレムの模倣、新国立競技場の設計変更、オリンピック組織委員会森会長の女性蔑視発言と不明朗な後継者選びがあって選びなおす。これでもか、これでもかという形で問題が出ている。歴史に残る「負の遺産」になるでしょう。

政治の腐敗と私物化、時代遅れ
 政治の腐敗と私物化も深刻です。これは政・財・官の構造的癒着によるもので、長期政権が背景にある。森・加計・桜問題などという数々の疑惑が安倍政権の時に生じました。河井夫妻による買収疑惑では1億5000万円が自民党から支出された。それを誰が決めたのか。二階幹事長は「私じゃない」と言い、菅さんも「私じゃない」と言う。じゃ安倍さんしかいないじゃないですか。こういう問題がおこっているわけです。
 菅政権の下でも息子さんの接待疑惑が発覚した。それに関連して出てきたのが総務省官僚への接待です。32人が接待を受けていた。菅原前経済産業相の略式起訴もあった。次々と出てきている。横浜で問題になっているのが太陽光発電の会社のテクノシステムで、神奈川選出の国会議員と深いかかわりがあり、小泉親子の強力な支援者。こういうつながりを背景に補助金をかすめ取った詐欺罪で3人が逮捕されました。スキャンダルや政治とカネの問題、長期政権に伴う政治の私物化、公私混同が生まれている。
 もう一つ、最近の自民党議員の頭の中はどうなっているのかと言いたくなるような問題も表面化しています。時代遅れもいいところで、日本国憲法制定以前だ。戦前どころか江戸末期の「尊王攘夷」思想のようなもの。「夷敵」の排撃ではなく「異論」の排撃。日本学術会議会員6人の任命拒否事件です。
 学術や科学技術、専門家に対する菅政権の軽視はコロナ対策でもはっきりしています。学術を尊重せず、言うことを聞かないからと排除する。日本学術会議から「学術」をとったら「日本会議」になっちゃう。政府にたてつかない、文句を言わずに軍事研究を一生懸命やるような組織・団体に変質させようとしている。
 古い思考の中でも、特に異端に対する差別、少数者や外国人、女性、性的なマイノリティなどへのヘイトが目立ちます。こういう考え方は改定入管法やLGBT法をめぐる自民党議員の発言などに端的に示されている。改定入管法は結局取り下げということになりました。こういう時代遅れ、時代錯誤の人たちは、もう取り替えなければなりません。その絶好のチャンスが秋に行われる総選挙ということになります。

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