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9月16日(金) どのような転換点なのか―積み重なって押し寄せてきた潮目の変化 [政局]

 昨日アップした『しんぶん赤旗』でのコメントで、私は「かなり大きな転換点で、潮目が変わりました」と指摘しています。それは沖縄県知事選でのデニー知事の再選に関するものでした。
 しかし、「かなり大きな転換点」で潮目が変わったのではないかという思いは、それだけに限りません。沖縄での勝利は、積み重なって押し寄せてきた潮目の変化の一部ではないかと思っています。
 ここしばらくの出来事は、いずれも国の内外における大きな転換の始まりを示しているのではないでしょうか。それは戦後史を画するほどの大きな分かれ道になっているように見えます。
 
 第1は、戦後政治の第3段階が始まったのではないかということです。以前から、私は戦後政治の第2段階が最終局面を迎えていると指摘してきました。
 典型的なのはアメリカのトランプ政権の登場であり、各国における新自由主義的な右派ポピュリズムの隆盛でした。それがどのような形で終了し、次の第3段階がどのように始まるのかは、その時点でははっきりしていませんでした。
 しかし、今では明確に指摘することができます。アメリカにおけるトランプ大統領の落選とバイデン新政権の登場による共和党から民主党への政権交代、それに続くドイツやオーストラリア、中南米などでの右派ポピュリズムから左派リベラリズム政権への転換と新自由主義の見直しです。

 戦後政治の第1段階が修正資本主義的な公共の関与であったとすれば、第2段階は官から民への転換、規制緩和や自己責任を特徴とする弱肉強食の新自由主義でした。その見直しによる第3段階は公共の復権という形で始まっています。
 その契機となったのは新型コロナウイルスによるパンデミックでした。資本主義の限界と新自由主義の弱点が人々の命と健康への脅威という形で明確になり、とりわけケア労働やエッセンシャルワーカーの役割とそれへの公的な支援体制の必要性が痛感されました。
 人々の健康を守り、命と暮らしを支える公的な役割の重要性が浮き彫りとなり、それを軽視し削減してきた新自由主義の罪が自覚されたのです。日本でも新型コロナウイルスによる死者は累計で4万人を超え、ウクライナ戦争での戦死者に匹敵するほどの数になっています。

 第2の大転換は、近代史の見直しによる歴史的汚点の解消、差別と人権無視に対する異議申し立てと是正の動きです。これはアメリカでの黒人差別に反対するブラック・ライブズ・マター(BLM)運動を契機に始まりました。
 その後、ジェンダー平等や女性差別撤廃、LGBTQ(性的少数者)の人権擁護へと波及し、気候危機への対応や核兵器の廃止など地球レベルの問題解決に向けての動きへと広がってきています。このような世界的流れは不可逆的であり、それに合流できなければ国際社会で生き残ることはできない状況が生まれました。
 近代史の見直しは欧米諸国における人種差別や奴隷貿易への反省を呼び起こし、アメリカでは南北戦争の再審が進み、ヨーロッパでは過去の植民地との関係が見直されています。イギリスのエリザベス女王の死去がこのような動きを促進する可能性もあります。英連邦を構成するカリブ海諸国で独立の機運が高まっているようです。

 このような国際的な流れは、日本でも近代史の見直しと加害の歴史への反省を促すことになるでしょう。朝鮮や中国に対する侵略戦争と植民地支配の過去と問題点が明確にされ、改めて責任と反省が示されなければなりません。
 安倍元首相が言っていた「歴史戦」による侵略の歴史の美化は全く逆の動きでした。このような歴史修正主義が修正されなければ、世界の潮流から取り残される局面が生じたのです。
 このような観点から日韓の歴史を見直し、両国の関係改善に向けて新たな対応が求められることになるでしょう。安倍元首相の死と韓国にルーツを持つ統一協会の暗躍も、このような関係を転換させる大きな契機になる可能性があります。

 第3は、アベノミクスの破綻とその転換です。これは第1の大転換として指摘した戦後政治の第3段階の日本国内における始まりに結び付く動きです。
 今となっては、アベノミクスが大失敗したことは明らかです。実質賃金が停滞し、国民の生活が豊かになるどころか中間層が没落して貧困化が進み、格差が拡大しました。
 岸田首相は昨年の総裁選に立候補したとき「成長」だけでなく「分配」を強調し、「新しい資本主義」や「新自由主義からの転換」を主張しました。新自由主義に基づく成長路線やこれまでの「古い資本主義」が行き詰まっていることを自覚していたからです。

 しかし、総裁選で安倍元首相に頼ったところに岸田首相の弱点と限界がありました。その後、安倍さんからねじ込まれてアベノミクスからの転換路線を再び転換して元に戻してしまったからです。
 その安倍元首相は銃撃死によってこの世を去りました。異次元の金融緩和による「黒田円安」によって経済は大混乱に陥り、物価高の大波が押し寄せてきています。
 もはや猶予はならず、アベノミクスから転換して物価高を抑えることは緊急課題となっています。しかし、もともと異次元金融緩和からの「出口戦略」は極めて困難だと見られていましたから、その前途は容易ではありません。

 第4は、専守防衛から先制攻撃へという安全保障政策の大転換です。60年安保闘争後、自民党は明文改憲路線から解釈改憲と実質改憲を組み合わせた軽武装路線を選択してきましたが、それを根本的に転換しようとしています。
 必要最小限度の実力組織である自衛隊は、いまや不必要最大限度の国軍になろうとしています。専守防衛による自衛路線は、「反撃(敵基地攻撃)能力」の保有とそれに向けたGDP比2%を目標にした大軍拡によって投げ捨てられつつあります。
 国境を越えて敵基地を攻撃できるような能力を獲得すれば、それはもはや「自衛」隊ではなくなります。わが国が攻撃される前に、着手された段階で指揮統制機能を破壊するために敵国の中枢部を攻撃すれば、それは国連憲章で禁止されている「先制攻撃」にほかなりません。

 総批判を浴びて国際社会から孤立するような安全保障戦略の大転換が着手されたということになります。明文改憲をちらつかせながら、実質的に憲法9条の内実を掘り崩すという実質改憲の極限形態が訪れようとしているのです。
 憲法9条が維持されているから、ということで安心してはなりません。9条を隠れ蓑に、その存在を目くらましとして使い、内外の批判をかわしながら平和憲法の下での軍事大国化を目指そうとしているのです。
 岸田首相はハトの仮面をかぶった獰猛なタカです。その本質を見極め、9条の書き換えと改憲発議を許さないだけでなく、憲法9条の空洞化を許さず、平和国家としての実質を守ることの重要性を忘れてはなりません。

 第5は、戦後一貫して支配政党であった自民党の全般的危機と瓦解の兆候です。統一協会との癒着の露見によって、自民党は中央と地方で音を立てて崩れ始めています。
 日本は韓国に奉仕するべきだと言って多額の献金を吸い上げる、家庭を大切にと言いながら信者の家庭をぶっ壊す、選択的夫婦別姓に反対だと言いながら文鮮明と韓鶴子の教祖夫妻は別姓であるなど、その主張や「教義」をめぐっては数々の矛盾があります。それに目をつぶって「愛国」よりも「反共」を優先して統一協会との癒着を深め、その「信者」を戦力として利用してきたのが自民党でした。
 その「売国政党」の哀れな末路を、私たちはこれから目にすることになるのではないでしょうか。自民党は「点検」結果を公表して幕引きを図ろうとしていますが、「そうは問屋が卸さない」と思われます。

 「点検」は自己申告ですから漏れがあり、「正直者が馬鹿を見る」形となって、その後も五月雨式に事実が判明しています。しかも、癒着の中心にいた安倍元首相も、その前の清和会の代表だった細田衆院議長も除外され、地方議員は最初から対象になっていません。
 ボロボロと事実が明らかになるのはワイドショーなどのテレビ番組や雑誌などにとっては「おいしいネタ」で、これからも追及は続くでしょう。10月からは臨時国会が始まり、来年になれば通常国会もあって「逃げられない」状態で、自民党は次第に窮地に追い込まれていく可能性があります。
 通常国会が開かれている最中の4月には統一地方選挙があり、地方での自民党と統一協会の癒着や暗躍の実態が争点になるのは避けられません。時事通信の調査では、内閣支持率(9月9~12日調査)が前月比12ポイント減の32.3%に急落して政権発足後最低(不支持は11.5ポイント増の40%)で、ひょっとすると解散に追い込まれるかもしれません。

 これらの「大転換」が積み重なり、時代を画す劇的な変化が生まれる可能性が高まっているように思われます。その結果、これまで考えられなかったような全く新しい政治と社会が生み出されるかもしれません。
 主体的な面でも、政治を変える唯一の活路である野党共闘の再建・復活に向けての芽が出て来ました。沖縄県知事選挙の最終盤、デニー候補を支援する立憲野党4党と沖縄社会大衆党の党首が勢ぞろいして支持を訴えた場面は象徴的でした。
 統一協会や国葬問題についてのヒアリングでも野党共闘による成果が生まれてきています。野党連合政権の樹立に向けての再スタートが切られたということでしょうか。

 ぜひ、そうあって欲しいと思います。そうでなければ、日本も世界も救わないのですから。

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